説明

修飾ベータ−サブユニット結合モチーフを含む2成分DNAPOLIIIレプリカーゼおよびその使用

本発明は、修飾DNAポリメラーゼIIIレプリカーゼ、およびそれをさまざまな核酸複製用途を用いる方法を提供する。修飾レプリカーゼは、2成分、特にαサブユニットを含むポリメラーゼ成分、およびβサブユニットを含むスライディングクランプ成分を含む。2成分ポリメラーゼはクランプローダーを欠く。修飾レプリカーゼのαサブユニットは、β−サブユニット結合部位の一つ以上に、一つ以上の偏移を有する。結果として、変異αサブユニットはβ−サブユニットに対して上昇した親和性を有し、および2成分レプリカーゼは合成持続性の上昇を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA Pol IIIレプリカーゼ、そのβ−サブユニット結合モチーフ、DNA Pol IIIレプリカーゼとのβサブユニット結合を変化させる修飾、DNA Pol IIIレプリカーゼ活性および熱安定性を変化させる修飾,および核酸分子の持続性酵素的複製および増幅に関する。
関連特許
【0002】
本明細書は、全体が明示的に参照により本開示に含まれる2005年4月7日出願の米国特許出願公開第11/101,977号明細書の一部継続出願である。本明細書はまた、35 U.S.C.119(e)の下に、2005年11月29日出願の米国仮出願第60/741,009号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
DNAポリメラーゼは、核酸配列決定、核酸定量(リアルタイムPCR、NASBA)、核酸増幅(PCR、RDA、SDA)、およびcDNAへのRNAの逆転写を含むがそれらに限定されない、分子生物学におけるいくつかの用途を有する。
【0004】
DNAポリメラーゼIIIホロ酵素(「Pol III」)は、コーンバーグ(Kornberg)によって最初に精製され、および大腸菌(E.coli)染色体の主なレプリカーゼと決定された(Kornberg,A.,『DNA複製補遺1982』(1982 Supplement to DNA Replication),フリーマン・パフリケーションズ社(Freeman Publications),サンフランシスコ(San Francisco),pp 122−125,参照により本開示に含まれる)。該ホロ酵素は、3つの別々の機能成分を形成する10種類の異なるサブユニットから成る(マクヘンリー(McHenry)他,J.Bio Chem.,252:6478−6484(1977);マキ(Maki),他,J.Biol.Chem.,263:6551−6559(1988)、それぞれ参照により本開示に含まれる)。3つの機能成分は、(i)「コア」(すなわちポリメラーゼ)、(ii)β複合体(すなわちスライディングクランプ)、および(III)γ複合体(すなわちクランプローダー)である。「コア」内には3つのサブユニットが存在する:αサブユニット(dnaEにコードされる)はDNAポリメラーゼ活性を有する触媒サブユニットに相当する;εサブユニット(dnaQ、mutDにコードされる)はプルーフリーディング3’−5’エキソヌクレアーゼである(ショイエルマン(Scheuermann),他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81 :7747−7751(1984);およびディフランシスコ(DiFrancesco),他,J.Biol.Chem.,259:5567−5573(1984)、それぞれ参照により本開示に含まれる)、およびθサブユニット(holEにコードされる)はεを刺激する(スタッドウェル−ヴァーガン(Studwell−Vaughan)他,J.Biol.Chem.,268:11785−11791(1993)、参照により本開示に含まれる)。αサブユニットはεと密な1:1複合体を形成し(マキ(Maki),他,J.Biol.Chem.,260:12987−12992(1985)参照により本開示に含まれる)、およびθはεと1:1複合体を形成する(Studwell−Vaughan 他,前掲)。
【0005】
大腸菌(E.coli)DNA Pol IIIレプリカーゼは、ssDNA結合タンパク質(「SSB」)で被覆された独特にプライミングされたバクテリオファージ一本鎖DNA(「ssDNA」)ゲノムを、30℃にて少なくとも毎秒500ヌクレオチドの速度で、5kb環状DNAから一度も解離せずに、非常に効率的におよび完全に複製する(フェイ(Fay),他,J.Biol.Chem.,256:976−983(1981);オドネル(O’Donnell),他,J.Biol.Chem.,260:12884−12889(1985);およびモク(Mok),他,J.Biol.Chem.,262:16644−16654(1987)、それぞれ参照により本開示に含まれる)。さらに、大腸菌(E.coli)DHA Pol III レプリカーゼはDNA複製において高い信頼性を示す。
【0006】
好熱性細菌を含むいくつかのグラム陰性およびグラム陽性細菌に由来するDNAポリメラーゼIIIレプリカーゼが記載されており(たとえば、ブラード(Bullard)他,J.Biol.Chem.,277:13401−13408,2002; およびブルック(Bruck)他,J.Biol.Chem.,277:17334−17348,2002を参照; それぞれ参照により本開示に含まれる)、および大腸菌(E.coli) DNA Pol IIIに見られる3成分構成を示す。たとえばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)では、DNA Pol IIIレプリカーゼは(i)polC遺伝子にコードされるαサブユニット(イプシロンおよびシータサブユニットを含まない)、(ii)β−スライディングクランプ、および(III)τ/δ/δ’複合体(すなわち、クランプローダー)から成る(ブルック(Bruck)I,オドネル(O’Donnell)M.,J Biol Chem.2000 Sep 15;275(37):28971−83,参照により本開示に含まれる)。
【0007】
文献は、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素の3つの主要な機能成分、すなわち、ポリメラーゼコア(αサブユニットを含む)、合成持続性クランプ、およびクランプローダーが、ゲノムレプリカーゼに特徴的な速い伸長速度および低いエラー率を有する機能する持続性DNAレプリカーゼに必要であると一致して教示している。(たとえば、米国特許第6,555,349; 6,221,642; 5,668,004; 5,583,026; 6,677,146; および 6,238,905号明細書を参照;またオドネル(O’Donnell),Bioessays,14:105−111,1992; オドネル(O’Donnell) 他,J.Biol.Chem.,260:12875−12883,1985; マクヘンリー(McHenry),Mol.Microbiol.,49:1157−1165,2003; マクヘンリー(McHenry),J.Biol.Chem.,266:19127−19130,1991; スタッドウェル(Studwell)他,J.Biol.Chem.,265:1171−1178,1990; ブラード(Bullard)他,J.Biol.Chem.,277:13401−13408,2002; およびブルック(Bruck)他,J.Biol.Chem.,277:17334−17348,2002を参照;それぞれ参照により本開示に含まれる)。コーンバーグ(Kornberg)他による大腸菌(E.coli) DNA Pol IIIに関する原報は、単離αサブユニットおよび単離コアポリメラーゼのポリメラーゼ活性は「ギャップ埋め」検定法を用いて非常に高い酵素濃度でしか測定できず、および最大伸長速度20b/secしか生じなかったことを最初に示した。この非持続性の低速合成、およびそれを達成するために必要な高いタンパク質濃度は、分子生物学用途における単離αサブユニットまたはDNAポリメラーゼコア部分構築物の使用を不可能にする。さまざまな細菌に由来するDNA Pol IIIに関するより多数の近年の報告は、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素のαサブユニットもコア複合体も単独では、速い伸長速度を有する持続性モードで機能できず、ホロ酵素の3成分部分構築物が必要であるという定説をさらに強固にしている。たとえば、ブルック(Bruck)他(J.Biol.Chem.,275: 28971− 28983,2000,参照により本開示に含まれる)は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来Pol IIIのアルファサブユニット(polC)は単独ではDNAポリメラーゼとして機能しないことを報告しており、一方、ブラード(Bullard)他,J.Biol.Chem.,277:13401−13408,2002,およびブルック(Bruck)他,J.Biol.Chem.,277:17334−17348,2002(それぞれ参照により本開示に含まれる)はそれぞれ、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)およびアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)においてレプリカーゼ活性にPol IIIの3成分が必要であることを報告している。
【0008】
DNA Pol III レプリカーゼの合成持続性は、ホロ酵素中のDNAポリメラーゼコア(アルファ、イプシロン、シータ)とのβ−スライディングクランプ結合に由来し、およびDNA上のDNAポリメラーゼコアとのβ−スライディングクランプ結合はクランプローダーを必要とすると考えられており、したがって3成分説である。βサブユニットはDNAを取り囲む2量体を形成し、およびそれによって、結合したコアポリメラーゼをそのDNA基質へ繋ぐ。大腸菌(E.coli) DNA Pol III アルファ (Eco DnaE)中の2ヶ所が、β−スライディングクランプと結合すると報告されている。第一は、上流がへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合領域とおよび下流がOB折りたたみ領域と隣接している残基920−924(QADMF)の間に位置する内部結合部位である。他のβ−サブユニット結合タンパク質の調査は、共通β−サブユニット結合モチーフQL(S/D)LFを示唆している。第二のモチーフは、配列QVELEFを有し、および大腸菌(E.coli) DnaEのカルボキシ末端に残基1154と1159の間に位置する。このカルボキシ末端モチーフはまた、大腸菌(E.coli)τサブユニットとの高い親和性を示す。ロペズ(Lopez)他,PNAS 100: 14689− 14694,2003; ドーマン(Dohrman)他,JMB 308,228−239,2005; ダルリンプル(Dalrymple)他,PNAS 98:11627−11632,2001; キム(Kim)他,JBC 271:20699−20704,1996を参照(それぞれ参照により本開示に含まれる)。
【0009】
大腸菌(E.coli)DnaE中のβ−サブユニット結合部位(「β−結合部位」)の欠失および変異分析は、どちらの配列も離散性ポリメラーゼ(ギャップ埋め)活性に必要でない一方、内部部位は効率的なβ−サブユニット結合活性(「β−結合活性」)におよびホロ酵素の持続性ポリメラーゼ活性に必要であることを示している。ドーマン(Dohrman)他,JMB 308,228−239,2005を参照 (参照として本開示に含まれる)。カルボキシ末端モチーフは、対照的に、in vitroでβサブユニットへの結合に、またはホロ酵素の持続性ポリメラーゼ活性に必要でないことが示された。にもかかわらず、該モチーフにおける変異は、大腸菌(E.coli)染色体においてDnaEα変異体を補完するサブユニットの能力を、おそらくτとの結合における妨害のために、部分的に損なうことが見出された。加えて、大腸菌(E.coli)共通配列QLDLFでの内部配列QADMFの置換は、βに対する親和性が大幅に上昇したαポリメラーゼサブユニットを生じた。対照的に、同じ共通配列でのカルボキシ末端モチーフの置換は、βサブユニットに対する親和性がわずかに上昇したが、τサブユニットに対する結合親和性が400倍低いαサブユニットを生じた。内部共通配列を有する変異体αサブユニットはβに対して大幅に上昇した親和性をin vitroで示したが、その特異的ポリメラーゼ活性、伸長速度および合成持続性は、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素に組み込まれた際、野生型αサブユニットのものより大きくなかった。カルボキシ末端にβ結合共通配列を有する第二の変異体αサブユニットは、ベータに対してわずかに高い親和性を示したものであるが、同じくin vitro複製検定法において特異的活性、合成持続性および伸長速度に改善を何ら示さなかった。したがって、当業者は、β−結合部位の親和性を高める変異はin vitroで野生型酵素に対する変異DNAポリメラーゼホロ酵素IIIの性能を改善しないことを教示される。
【0010】
これらの結果は、持続性DNA複製に対するカルボキシ末端モチーフの、非常に限られた、必須でない寄与を示唆する。しかし、αのカルボキシ末端への結合についてのτとβの間の競合は、DNA合成のモードを調節するのに関与すると仮説が立てられている。特に、αのカルボキシ末端でのτによるβの置換は、DNA Pol IIIホロ酵素がニックに遭遇する際の持続性合成の中断を媒介すると示唆されている。加えて、βサブユニット相互作用とDNA結合の間の関連が示唆されている。特に、内部部位は2個の潜在的DNA結合配列と隣接しており、DNAへのαサブユニット結合がβサブユニット結合に、およびその逆に影響しうると示唆する。したがって、カルボキシ末端ベータ結合モチーフの親和性における変化は、持続性DNA複製の最中および完了後にそれぞれ、DNA Pol IIIホロ酵素分解の正確な組立に影響しうる。
【0011】
Pol IIIレプリカーゼの組立および機能は、成分サブユニットの互いへの親和性に依存するように見え、および同一サブユニット部位への結合についてのある程度の競合が関与する。たとえば、クランプローダー複合体(デルタサブユニット)およびαサブユニットはβスライディングクランプの同一のポケットに結合する一方、τおよびβサブユニットはαのカルボキシ末端部位について競合するように見える。加えて、DNA修復および複製に関与する他の酵素、たとえばDNAリガーゼ、MutS、DNAポリメラーゼI、IIおよびIVもまた、ベータ上の同一の疎水性ポケットとの結合についてアルファサブユニットと競合する。結合部位変異およびサブユニット親和性における変化は、DNA Pol IIIレプリカーゼ組立および機能に対して有害と立証される可能性があり、および現在までに試験された変異体は、ホロ酵素活性を損なったのみであることがわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以前に報告された大腸菌(E.coli) DnaEにおけるβ−結合部位の欠失および変異分析が、DNA Pol IIIホロ酵素作用の機構に光を投じている一方、組み換えDNA Pol III レプリカーゼの合理的設計においてβ−結合部位修飾に関して容易に明らかな有用性は無く、なぜなら修飾はホロ酵素の完全性および持続性活性を損なうだけであるように見えていたためである。加えて、修復型ポリメラーゼはDNA Pol III活性をin vitroで支持するよりもはるかに高い塩濃度を必要とすることを考慮すると、修復型ポリメラーゼとのβ−スライディングクランプの併用は不可能であった。全体的に、Pol III αサブユニット中のβ−結合部位の同定および分析は、PCR用途においてより高い合成持続性、特異的活性および熱安定性を有する組み換えDNAポリメラーゼの設計に用途を見出していない。
【0013】
以前の報告とは対照的に、同時係属の米国特許出願公開第11/101,977号明細書は、細菌dnaEにコードされるおよびpolCにコードされるαサブユニット、およびそれを含むコアポリメラーゼは、単独でおよびβ−スライディングクランプとの組み合わせで、最小の機能性DNA Pol IIIレプリカーゼとして適当な条件下でin vitroにて機能しうることを確証する。そのような単一成分(αまたはコア単独)および2成分(αまたはコア、加えてβ−スライディングクランプ)Pol IIIレプリカーゼは、Pol IIIクランプローダーを欠く。したがって、さまざまなPol IIIホロ酵素サブユニットのベータ結合についての競合する相互作用は、機能性2成分ポリメラーゼホロ酵素を組み立てるには無関係である。
【0014】
本発明は、そのような2成分DNA Pol IIIレプリカーゼ組成物では、βサブユニットに対する親和性を高めるためおよびレプリカーゼの合成持続性を高めるために、変異がαサブユニット成分の一つ以上のβ−結合モチーフへ導入されうるという別の発見から始まる。これは、βサブユニットに対する単離αサブユニットの親和性をin vitroで高める変異はホロ酵素活性に対応する上昇を生じていない、DNA Pol III ホロ酵素に関する報告と対照的である。加えて、ここで実証される通り、本2成分DNA Pol IIIレプリカーゼにおけるアルファサブユニットへのベータのより密な結合は、PCRといった高温ストレスを伴う用途における、複合体の熱安定性を改善する。したがって、β−結合部位の操作は、2成分DNA Pol III レプリカーゼに新しく関連して有用性を見出している。
【0015】
本発明のアルファサブユニットは、ここで記載される通り現存のβ−結合部位の修飾によって得られ、ここでは「修飾αサブユニット」と呼ばれる。本発明の2成分DNA Pol IIIレプリカーゼは、そのような修飾αサブユニットを含み、「修飾Pol IIIレプリカーゼ」と呼ばれる。
【0016】
ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼは、修飾αサブユニットを含む第一の成分を含む。一部の好ましい実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの第一の成分は、本質的に修飾αサブユニットから成る。一部の好ましい実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの第一の成分は、DNA Pol IIIレプリカーゼのコアポリメラーゼ複合体の一つ以上の別のサブユニットを含む。しかし、ここで開示されるすべての修飾Pol IIIレプリカーゼはクランプローダーを欠く。
【0017】
ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼはまた、第二の成分を含む。修飾Pol IIIレプリカーゼの第二の成分は、本質的に合成持続性クランプから成る。好ましい一実施形態では、合成持続性クランプは、本質的にDNA Pol IIIβサブユニットから成る。
【0018】
ここで用いられる修飾Pol IIIレプリカーゼは、ここで定義される通りの機能性レプリカーゼである。
【0019】
修飾αサブユニットは、好ましくは、グラム陰性細菌のdnaEにコードされるαサブユニット、またはグラム陽性細菌のpolCにコードされるαサブユニットに由来する。好ましい修飾αサブユニットは、非中温性細菌、好ましくは好極限性菌に由来するものを含む。本発明における使用に特に好ましいのは、好熱菌に由来する修飾αサブユニットである。驚くべきことに、好熱菌に由来する修飾αサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼは、適当な条件下では、反復DNA複製反応を温度サイクルモードで維持するための、熱安定性の向上を示し、二本鎖DNA分子のin vitroでの増幅に繋がる。好熱菌に由来する修飾αサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼは、ここでは「熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼ」と呼ばれる。
【0020】
一態様では、本発明は、対応する野生型αサブユニットとは異なるβ−結合部位を含む、修飾dnaEにコードされるαサブユニットおよびpolCにコードされるαサブユニットを対象とする。2つのβ−結合部位が大腸菌(E.coli)DnaEで以前に同定されており、および1つのβ−結合部位がグラム陽性細菌のPolCαサブユニットについて提案されている。グラム陽性細菌のPolCαサブユニットに存在する新規の第二のβ−結合部位の同定がここで開示される。この新規のベータ結合部位は、PolCアルファサブユニット中のへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合領域から上流に位置する。以前に同定された部位、およびここで開示される新規のβ−結合部位は、修飾αサブユニットを、およびそのようにして本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼの第一の成分を生じるために操作されうる。
【0021】
修飾αサブユニットのβ−結合部位は、その野生型対応物と、配列に基づいて識別可能である。異なるβ−結合部位は、2成分Pol IIIレプリカーゼ組成物で示される通り、修飾αサブユニットに、対応する野生型αサブユニットのものとは異なるβ−結合活性を与える。本発明の修飾αサブユニットをコードする核酸もまた提供される。
【0022】
一実施形態では、本発明は、一つ以上の変異一つ以上のβ−結合部位を含む修飾αサブユニットを提供する。好ましい一実施形態では、変異β−結合部位は、本質的に、GMMGLFS,QEAVPF,GLVGLFA,EEVVPF,GALDAFG,TQNSLFG,GVKVII,GAFDFT,(S/A/G)LL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G),(S/A/G)QL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G),(S/A/G)NL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G),QL(G/A/L)L(P/A/G)F,G(L/A)(L/A)(G/A)LFGの群から選択される配列を含むかまたはそれから成る。
【0023】
一実施形態では、本発明は、グラム陽性細菌のpolCにコードされるαサブユニットのβ−結合部位に一つ以上の変異を含む修飾αサブユニットを提供する。好ましい一実施形態では、一つ以上の変異は、グラム陰性細菌由来のdnaEにコードされるαサブユニットの内部β−結合部位に存在する。別の一実施形態では、一つ以上の変異は、グラム陰性細菌由来のdnaEにコードされるαサブユニットのカルボキシ末端β−結合部位に存在する。好ましい一実施形態では、修飾αサブユニットは、グラム陰性細菌由来のDnaEの、カルボキシ末端β−結合部位に一つ以上の変異、および内部β−結合部位に一つ以上の変異を有する。変異は同一または別々でありうる。
【0024】
一実施形態では、本発明は、グラム陽性細菌のpolCにコードされるαサブユニットのβ−結合部位に一つ以上の変異を含む修飾αサブユニットを提供する。一実施形態では、一つ以上の変異は、PolCのカルボキシ末端β−結合部位に存在する。別の一実施形態では、一つ以上の変異は、ここに記載のPolCの内部β−結合部位に存在する。別の一実施形態では、一つ以上の変異は、PolCの内部β−結合部位およびカルボキシ末端β−結合部位の両方に存在する。変異は同一または別々でありうる。
【0025】
一態様では、本発明は、ここで開示される修飾αサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼを対象とする。
【0026】
一態様では、本発明は、組成物中の修飾Pol IIIレプリカーゼの使用、および、PCRおよびDNA配列決定といったDNA増幅の方法を含む核酸複製のための方法を対象とする。
【0027】
したがって、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む複製反応混合物中で核酸分子を複製反応に供することを含む、核酸分子を複製するための方法がここで提供される。
【0028】
好ましい一実施形態では、複製される核酸分子はDNA分子である。さらに好ましい一実施形態では、DNA分子は二本鎖である。他の実施形態では、DNA分子は一本鎖である。さらに好ましい一実施形態では、二本鎖DNA分子は直鎖DNA分子である。他の実施形態では、DNA分子は非直鎖、たとえば環状またはスーパーコイルDNAである。
【0029】
好ましい一実施形態では、核酸分子を複製するための方法は、核酸分子、好ましくはDNAを配列決定するのに有用な配列決定法である。好ましい一実施形態では、方法は、配列決定反応混合物中で核酸分子を配列決定反応に供することを含む。配列決定反応混合物は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、修飾Pol IIIレプリカーゼは、配列決定反応混合物中で3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去することができる3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、 サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する、修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。
【0030】
別の好ましい一実施形態では、核酸分子を複製するための方法は、核酸分子、好ましくはDNAを増幅するのに有用な増幅法である。好ましい一実施形態では、方法は、増幅反応混合物中で核酸分子を増幅反応に供することを含む。増幅反応混合物は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、修飾Pol IIIレプリカーゼは、増幅反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0031】
好ましい一実施形態では、増幅法は、温度サイクルモードで好ましくは二本鎖である核酸分子、好ましくはDNAを増幅するのに有用な、熱サイクル増幅法である。好ましい一実施形態では、方法は、熱サイクル増幅反応混合物中で核酸分子を熱サイクル増幅反応に供することを含む。熱サイクル増幅反応混合物は、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、熱サイクル増幅反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属に、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する、修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応混合物はさらに、ここで開示される通り、熱安定剤を含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属に、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応混合物はさらに、ここで開示される通り、DNA不安定化剤を含む。
【0032】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅法は、好ましくは二本鎖である、核酸分子、好ましくはDNAを、PCRによって増幅するのに有用なPCR法である。好ましい一実施形態では、方法は、PCR反応混合物中で核酸分子をPCRに供することを含む。好ましい一実施形態では、PCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、PCR反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましい一実施形態では、PCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、熱安定剤を含む。さらに好ましい一実施形態では、PCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、DNA不安定化剤を含む。
【0033】
好ましい一実施形態では、PCR法は迅速PCR法である。好ましい一実施形態では、方法は、迅速PCR反応混合物中で核酸分子を迅速PCRに供することを含む。迅速PCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは,熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、迅速PCR反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。好ましい一実施形態では、迅速PCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、熱安定剤を含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、迅速PCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、DNA不安定化剤を含む。迅速PCR法は、好ましくは、変性のための第一の温度、およびプライマーアニーリングおよびプライマー伸長の両方のための第二の温度を用いる、反復2温度サイクルから成る2段階PCR法である。
【0034】
別の好ましい一実施形態では、PCR法はロングレンジPCR法である。好ましい一実施形態では、方法は、ロングレンジPCR反応混合物中で核酸分子をロングレンジPCRに供することを含む。ロングレンジPCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、ロングレンジPCR反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifexaeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましい一実施形態では、ロングレンジPCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、熱安定剤を含む。さらに好ましい一実施形態では、ロングレンジPCR反応混合物はさらに、ここで開示される通り、DNA不安定化剤を含む。
【0035】
一実施形態では、ここで複製反応に用いられるプライマーはDNAである。別の一実施形態では、複製反応に用いられるプライマーはRNAである。
【0036】
一態様では、本発明は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む、核酸複製のための複製反応混合物を提供する。本発明の好ましい複製反応混合物は、DNA複製に有用である。複製反応混合物は、テンプレート核酸およびプライマーを含む荷電反応混合物を含むがそれらに限定されない。複製反応混合物はまた、テンプレートの複製を与えるために、テンプレート核酸および/またはプライマーの添加、および随意的に希釈を必要とする、前反応混合物を含む。
【0037】
好ましい一実施形態では、複製反応混合物は、核酸配列決定、好ましくはDNA配列決定に有用な配列決定反応混合物である。配列決定反応混合物は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、修飾Pol IIIレプリカーゼは、配列決定反応混合物中で3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去できる3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。
【0038】
別の好ましい一実施形態では、複製反応混合物は、核酸増幅、好ましくはDNA増幅に有用な増幅反応混合物である。増幅反応混合物は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、修飾Pol IIIレプリカーゼは、増幅反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0039】
好ましい一実施形態では、増幅反応混合物は、温度サイクルモードで好ましくは二本鎖である核酸、好ましくはDNAを増幅するのに有用な、熱サイクル増幅反応混合物である。好ましくは、熱サイクル増幅反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、熱サイクル増幅反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属に、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、 サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは、熱サイクル増幅反応混合物はさらに、ここで開示される熱安定剤を含む。好ましくは、熱サイクル増幅反応混合物はまた、ここで開示されるDNA不安定化剤を含む。
【0040】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応混合物は、好ましくは二本鎖である、核酸、好ましくはDNAを、PCRによって増幅するのに有用なPCR反応混合物である。PCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、PCR反応混合物中で3−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは、PCR混合物はさらに、ここで開示される熱安定剤を含む。好ましくは、PCR反応混合物はまた、ここで開示されるDNA不安定化剤を含む。
【0041】
好ましい一実施形態では、PCR反応混合物は、迅速PCR法に有用な迅速PCR反応混合物である。迅速PCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、迅速PCR反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは、迅速PCR反応混合物はさらに、ここで開示される熱安定剤を含む。好ましくは、迅速PCR反応混合物はまた、ここで開示されるDNA不安定化剤を含む。
【0042】
別の好ましい一実施形態では、PCR反応混合物は、ロングレンジPCR法に有用なロングレンジPCR反応混合物である。ロングレンジPCR反応混合物は、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、ロングレンジPCR反応混合物中で3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、 サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは、ロングレンジPCR反応混合物はさらに、ここで開示される熱安定剤を含む。好ましくは、ロングレンジPCR反応混合物はまた、ここで開示されるDNA不安定化剤を含む。
【0043】
好ましい一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物は、反応混合物またはそれに由来する荷電反応混合物が、ハイブリダイズしたプライマーを毎秒100塩基より大、より好ましくは150より大、より好ましくは200より大、より好ましくは250より大、より好ましくは300より大、より好ましくは350より大、より好ましくは400より大、より好ましくは450より大、より好ましくは500より大、より好ましくは550より大、より好ましくは600より大、より好ましくは650より大、より好ましくは700より大の速度で伸長することによってDNAテンプレートを複製できる修飾Pol IIIレプリカーゼ活性を有するように、ある量の修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。
【0044】
好ましくは、βサブユニットは、反応混合物中にモル比(α:β)1:1ないし1:10、好ましくは1:3ないし1:5で存在する。
【0045】
好ましい一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物は、双性イオン緩衝液を含む。好ましい一実施形態では、双性イオン緩衝液は、約pH7.5〜8.9のpHを有する。好ましい一実施形態では、双性イオン緩衝液は、弱有機酸および弱有機塩基の組み合わせを含む。
【0046】
好ましい一実施形態では、ここで提供される熱サイクル増幅反応混合物は、修飾Pol IIIレプリカーゼの熱安定性を高める熱安定剤(ここでは代替的に「安定剤」と呼ばれる)を含む。
【0047】
好ましい一実施形態では、ここで提供される熱サイクル増幅反応混合物はテンプレート変性に必要な温度を低下させるDNA不安定化剤を含む。
【0048】
好ましい一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物は、CaCl2を欠く。
【0049】
好ましい一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物は、γサブユニットおよび/またはτサブユニットを欠く。
【0050】
一態様では、本発明は、ここで開示される核酸複製反応混合物を含む核酸複製反応チューブを提供する。複製反応混合物を含むチューブとは、反応混合物が入ったチューブである。
【0051】
好ましい一実施形態では、核酸複製反応チューブは、ここで開示される配列決定反応混合物を含む配列決定反応チューブである。
【0052】
別の好ましい一実施形態では、核酸複製反応チューブは、ここで開示される増幅反応混合物を含む増幅反応チューブである。
【0053】
好ましい一実施形態では、増幅反応チューブは、ここで開示される熱サイクル増幅反応混合物を含む熱サイクル増幅反応チューブである。
【0054】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応チューブは、本明細書で開示されるPCR反応混合物を含むPCR反応チューブである。
【0055】
好ましい一実施形態では、PCR反応チューブは、ここで開示される迅速PCR反応混合物を含む迅速PCR反応チューブである。
【0056】
別の好ましい一実施形態では、PCR反応チューブは、ここで開示されるロングレンジPCR反応混合物を含むロングレンジPCR反応チューブである。
【0057】
一態様では、本発明は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む、核酸複製に有用な核酸複製キットを提供する。好ましい一実施形態では、複製キットはここで開示される複製反応混合物を含む。キットは、修飾Pol IIIレプリカーゼ、および、修飾Pol IIIレプリカーゼを含まずおよびここで開示される反応混合物を生じるために使用前に修飾Pol IIIレプリカーゼの添加を必要とする混合物を提供しうる。好ましい一実施形態では、複製キットはDNA複製に有用である。本発明のキットはさらに、情報パンフレットおよび包装材を含みうる。
【0058】
好ましい一実施形態では、核酸複製キットは、核酸配列決定、好ましくはDNA配列決定に有用な配列決定キットである。配列決定キットは、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。
【0059】
別の好ましい一実施形態では、核酸複製キットは、核酸増幅、好ましくはDNA増幅に有用な増幅キットである。増幅キットはここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましくは、増幅キットは、ここで開示される核酸増幅反応混合物を含む。
【0060】
好ましい一実施形態では、増幅キットは、温度サイクルモードで好ましくは二本鎖である核酸、好ましくはDNAを増幅するのに有用な、熱サイクル増幅キットである。熱サイクル増幅キットは、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、 サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、 サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは,熱サイクル増幅キットは、ここで開示される熱サイクル増幅反応混合物を含む。
【0061】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅キットは、好ましくは二本鎖である、核酸、好ましくはDNAを、PCRによって増幅するためのPCRキットである。PCRキットは、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくはPCRキットは、本明細書で開示されるPCR反応混合物を含む。
【0062】
好ましい一実施形態では、PCRキットは迅速PCRキットである。迅速PCRキットは、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくは迅速PCRキットは、ここで開示される迅速PCR反応混合物を含む。
【0063】
別の好ましい一実施形態では、PCRキットはロングレンジPCRキットである。ロングレンジPCRキットは、ここで開示される熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属に由来する、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む。さらに好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属、好ましくはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する修飾polCにコードされるαサブユニットを含む。好ましくはロングレンジPCRキットは、ここで開示されるロングレンジPCR反応混合物を含む。
【0064】
好ましい一実施形態では、ここで提供される核酸複製キットは核酸複製反応混合物を含み、その複製反応混合物は、反応混合物をテンプレートDNA、およびそれにハイブリダイズ可能なプライマーと混合でき、および随意的に適当に希釈して荷電反応混合物を生じ、ここでハイブリダイズしたプライマーを毎秒100塩基より大、より好ましくは150より大、より好ましくは200より大、より好ましくは250より大、より好ましくは300より大、より好ましくは350より大、より好ましくは400より大、より好ましくは450より大、より好ましくは500より大、より好ましくは550より大、より好ましくは600より大、より好ましくは650より大、より好ましくは700より大の速度で伸長することによって修飾Pol IIIレプリカーゼがDNAテンプレートを複製できるように、ある量の修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。さらに、荷電反応混合物は、好ましくは修飾αサブユニット濃度1ng/μLないし100ng/μL、より好ましくは2ng/μLないし50ng/μL、および非常に好ましくは4ng/μLないし10ng/μLを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
ここでは、特定の細菌属または種「の」または「に由来する」遺伝子とは、直接に特定の細菌属または種のまたはそれに由来することを意味しない。むしろ、その語句は、特定の細菌属または種の内因性遺伝子との、特定の遺伝子の対応をいう。
【0066】
ここでは、「熱安定性」修飾Pol IIIレプリカーゼとは、加熱による不活性化に耐性である修飾Pol IIIレプリカーゼをいう。修飾Pol IIIレプリカーゼとは、DNAポリメラーゼであり、プライマーを5’から3’方向へ伸長することによって一本鎖DNAテンプレートと相補的なDNA分子の構成を合成する。ここでは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、熱不安定性修飾Pol IIIレプリカーゼよりも熱不活性化に耐性である。しかし、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、熱不活性化に対して完全に耐性である必要は無く、および、したがって、熱処理はそのDNAポリメラーゼ活性をある程度低下させうる。熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは典型的にはまた、熱不安定性修飾Pol IIIレプリカーゼよりも、合成機能について高い最適温度を有する。熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼの成分は、典型的には好熱性細菌から単離される。
【0067】
ここでは、「熱不安定性」修飾Pol IIIレプリカーゼとは、熱による不活性化に耐性でない修飾Pol IIIレプリカーゼをいう。熱不安定性DNAポリメラーゼの一例はT5DNAポリメラーゼであり、その活性は、酵素を温度90℃に30秒間曝露することによって完全に不活性化される。ここでは、熱不安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼよりも熱不活性化に対して耐性が低い。熱不安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは典型的にはまた、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼよりも低い最適温度を有する可能性が高い。熱不安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、典型的には中温性細菌から単離される。
【0068】
ここでは、「プライマー」の語はまた、複数のプライマーをいう可能性がある。「プライマー」はオリゴヌクレオチドプライマーを含み、オリゴヌクレオチドプライマーはDNAおよびRNAオリゴヌクレオチドを含む。
修飾Pol IIIレプリカーゼ
【0069】
本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼは、「機能性」レプリカーゼ、すなわち、DNAポリメラーゼIIIサブユニットの機能性の部分組立物である。機能性とは、レプリカーゼ活性をいい、プライマー伸長速度によって特徴づけることができる。本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼは、プライマー伸長検定法において、毎秒75塩基より大の伸長速度で機能する能力によって特徴づけられる。本発明の特に好ましい修飾DNA Pol IIIレプリカーゼは、毎秒100塩基より大、より好ましくは150より大、より好ましくは200より大、より好ましくは250より大、より好ましくは300より大、より好ましくは350より大、より好ましくは400より大、より好ましくは450より大、より好ましくは500より大、より好ましくは550より大、より好ましくは600より大、より好ましくは650より大、より好ましくは700より大の伸長速度で機能する。さらに、そのような好ましい修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましい伸長速度で濃度2pmol/μL以下にて機能できる。
【0070】
好ましくは、βサブユニットは、モル比(α:β)1:1ないし1:10、好ましくは1:3ないし1:5の範囲の反応混合物中にある。
【0071】
したがって、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIIIαサブユニットに由来する修飾DNA Pol IIIレプリカーゼは,文献で実証されおよび2005年4月7日出願の同時係属出願第11/101,977号明細書で確認された通り非機能性であり、本発明の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼに含まれない。
【0072】
「大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIIIαサブユニット」はここでは、大腸菌(Escherichia coli)の未変化DNAポリメラーゼIIIαサブユニットを意味する。たとえば、マキ(Maki)他,1985,前掲を参照。「修飾」大腸菌(E.coli) DNAポリメラーゼIIIαサブユニットはここでは、少なくとも一つのβサブユニット結合部位に少なくとも一つの変異を有する、大腸菌(Escherichia coli)のDNAポリメラーゼIIIαサブユニットを意味する。
【0073】
本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼは、修飾Pol IIIαサブユニットを含む第一の成分を含む。一部の好ましい実施形態では、第一の成分は本質的に、修飾Pol IIIαサブユニットから成る。一部の好ましい実施形態では、第一の成分は、DNA Pol IIIのコアポリメラーゼ複合体の一つ以上の別のサブユニットを含む。第二の成分は本質的に、合成持続性クランプから成る。合成持続性クランプは、DNA Pol IIIβサブユニットを含む。一部の好ましい実施形態では、合成持続性クランプは本質的に、DNA Pol IIIβサブユニットから成る。修飾Pol IIIレプリカーゼの第一のおよび第二の成分は、好ましくは同一種に由来する。本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼは、クランプローダー成分を欠く。一部の実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、同一であるかまたは異なりうる、二つ以上の第一の成分を含む。
【0074】
好ましい一実施形態では、ここで用いられる修飾Pol IIIレプリカーゼの修飾αサブユニットは、グラム陰性細菌のdnaEにコードされるαサブユニットに由来する。
【0075】
別の好ましい一実施形態では、ここで用いられる修飾Pol IIIレプリカーゼの修飾αサブユニットは、グラム陽性細菌のpolCにコードされるαサブユニットに由来する。
【0076】
好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの修飾αサブユニットは、アクイフェックス(Aquifex)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)、サーマス(Thermus)、カルボキシドサーマス(Carboxydothermus)、サーモクリニス(Thermocrinis)、デイノコッカス(Deinococcus)およびサーモトガ(Thermotoga)属といった、しかしそれらに限定されない、分類学的に系統樹真正細菌の基部に位置する好極限性細菌のdnaEにコードされるまたはpolCにコードされるαサブユニットに由来する。
【0077】
特に好ましいのは、アクイフェックス・エオリカス(Aquifexaeolicus)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiurans)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、ゲオバシラス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・ルーバー(Thermus ruber)、サーマス・ブロキアナス(Thermus brockianus)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana) およびサーモトガ(Thermotoga)属の他の種、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、およびサーモクリニス(Thermocridis)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)、サーモシネココッカス(Thermosynchecoccus)属の種、カルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)およびこれらの種の変異体から成る群から選択される細菌または藍藻に由来する修飾αサブユニットである。特に好ましいのは、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)、アクイフェックス・ピオゲネス(Aquifex pyogenes)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana) およびサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)である。
【0078】
好極限性細菌とは、高放射線、極端な低湿度、高温(60℃超)または低温(10℃未満)、および高浸透圧(塩濃度0.5M超)といった、通常の生理条件の範囲外の極端な環境条件下で成長および増殖する細菌である。
【0079】
好極限性細菌のdnaEにコードされるおよびpolCにコードされるαサブユニットの中でも、好熱性細菌由来のものが特に好ましい。
【0080】
特に好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの修飾αサブユニットは、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)のdnaEにコードされるαサブユニットに由来する。
【0081】
本発明で用いられる修飾dnaEにコードされるαサブユニットは、好ましくは内因性の亜鉛依存性3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0082】
一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの第一の成分は、さらに、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するεサブユニットを含む。
【0083】
αサブユニットの例は、たとえば、それぞれ明示的に参照により本開示に含まれる、2001年5月29日発行の米国特許第6,238,905号明細書;2000年8月18日出願の米国特許出願公開第09/642,218号明細書;2000年11月21日出願の米国特許出願公開第09/716,964号明細書;1998年9月11日出願の米国特許出願公開第09/151,888号明細書;および2001年3月28日出願の米国特許出願公開第09/818,780号明細書に見出される。
【0084】
ここで修飾Pol IIIレプリカーゼにおける使用のために修飾されうるαサブユニットには、同時係属出願の米国特許出願公開第11/101,977号明細書に開示される通りのタンパク質モチーフの存在および配列によって特徴づけられるものが含まれる。
【0085】
ここで修飾Pol IIIレプリカーゼにおける使用のために修飾されうるαサブユニットにはまた、同時係属出願の米国特許出願公開第11/101,977号明細書に開示される方法によって精製されるもの、および同時係属出願の第11/101,977号明細書に開示される検定法によって望まれる性質を有すると同定されるものが含まれる。
【0086】
一実施形態では、反応混合物中の修飾Pol IIIレプリカーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、εサブユニットによって与えられる。別の一実施形態では、反応混合物中の修飾Pol IIIレプリカーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、修飾αサブユニットによって与えられる。修飾αサブユニットの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、ここで開示される通り、亜鉛濃度を操作することによって調節でき、および異なる反応混合物では異なりうる。
【0087】
一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、反応混合物中で3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去することができる有意な3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示さない。好ましい一実施形態では、有意な3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く修飾Pol IIIレプリカーゼは、グラム陰性細菌のdnaEにコードされるαサブユニットに由来する修飾αサブユニットを含む。
【0088】
一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼの第一の成分は、Pol IIIDNAポリメラーゼコアの別のサブユニット、たとえばθを含む。
【0089】
一実施形態では、修飾Pol IIIの第一の成分は、細菌dnaQ遺伝子にコードされるεサブユニットを含む。εサブユニットの例は、たとえば、2000年8月18日出願の米国特許出願公開第09/642,218号明細書;2000年11月21日出願の米国特許出願公開第09/716,964号明細書;1998年9月11日出願の米国特許出願公開第09/151,888号明細書;および2001年3月28日出願の米国特許出願公開第09/818,780号明細書に見出される。
【0090】
βサブユニットの例は、たとえば、それぞれ明示的に全体が参照により本開示に含まれる、2000年8月18日出願の米国特許出願公開第09/642,218号明細書;2000年11月21日出願の米国特許出願公開第09/716,964号明細書;1998年9月11日出願の米国特許出願公開第09/151,888号明細書;および2001年3月28日出願の米国特許出願公開第09/818,780号明細書に見出される。
【0091】
本発明の修飾Pol IIIレプリカーゼの第一のおよび第二の成分は、同時インキュベートでき、および溶液中で2成分ポリメラーゼを形成させることができる。同時インキュベート溶液は、反応混合物となることができ、または、好ましくは、成分が反応混合物への添加前に結合されうる。一実施形態では、二種類以上の第一の成分が、第二の成分と同時インキュベートされる。
修飾アルファサブユニット
【0092】
ここでは修飾αサブユニットは、本分野で以前に記載されたものおよびここで同定されるグラム陽性PolCアルファサブユニットについての新規のβ−結合部位を含む、現存するβ−結合部位の修飾によって得られる。表1は、グラム陰性DnaEおよびグラム陽性PolCアルファサブユニットの両方での、内部ベータ−結合モチーフの代表的一覧を提供する。
【表1】


【0093】
背景技術で言及された通り、先行技術文献は、内部DnaEタンパク質β結合部位について共通配列QL(S/D)LFを定義する。たとえば、ダルリンプル(Dalrymple)他,PNAS 98:11627− 11632,2001を参照。図1を参照して、隣接領域のアミノ酸配列を整列すると、いくつかのグラム陰性およびグラム陽性細菌に由来するDnaEタンパク質中のこの内部部位を特定できた。驚くべきことに、配列整列の結果は、DnaE内部β結合部位について共通アミノ酸配列の逸脱を容認するような、βサブユニット結合モチーフ内の一次配列保存は無いことを明らかにした。細菌DnaEタンパク質中の内部β結合モチーフの唯一の一致した性質は、β結合モチーフの両側に隣接する、C−末端フェニルアラニン残基および2個の低分子量アミノ酸(プロリン、グリシン、セリンまたはスレオニン)の存在である。この驚くべき知見は、本分野の教示と相反する。図1に含まれていない、αサブユニットについてのβ−結合部位のアミノ酸配列は、図にあるものとの配列比較によって、およびOB折りたたみおよびへリックス−ヘアピン−へリックス領域を同定する構造分析によって同定されうる(ドーマン(Dohrmann)他,J Mol Biol.2005 Jul 8;350(2):228−39を参照)。図2および3も参照。DnaEのカルボキシ末端のβ−結合部位配列はよく記録されている。たとえば、キム(Kim) 他,JBC 271:20690−20698,1996を参照。
グラム陰性細菌の好熱性DNA POL IIIの好ましい修飾αサブユニットβ−結合部位配列
【0094】

【0095】

【0096】

β−クランプ結合改善のための別の変異体モチーフ:
【0097】
(S/A/G)LL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G)
【0098】
QL(G/A/L)L(P/A/G)F
【0099】
G(L/A)(L/A)(G/A)LFG
【0100】
(S/A/G)QL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G)
【0101】
(S/A/G)NL(G/A/P/Q/N/S/T)LF(S/A/G)
【0102】
いくつかの研究は、さまざまなα−サブユニットβ−結合部位配列に相当するペプチドを含むさまざまなペプチドの、β−サブユニットに対する親和性を比較している。内部ベータ結合部位、およびカルボキシ末端(τ−結合部位)に変異を有するα−サブユニットのβ−サブユニットに対する親和性を調べる別の研究が行われている。これらの研究は、本発明におけるβ−結合部位修飾の選択の情報を与えうる。特に、β−サブユニットに対してαサブユニットの現存するβ−結合配列よりも高い親和性を示す配列は、βサブユニット結合を改善するためにそのような現存するβ−結合部位を置換するのに使用でき、点変異、複数変異、および完全モチーフ置換を含むがそれらに限定されない。
核酸複製
【0103】
一態様では、本発明は、修飾Pol IIIレプリカーゼを含む複製反応混合物中で核酸分子を複製反応に供することを含む、核酸分子を複製するための方法を提供する。
【0104】
「核酸複製」は、テンプレート核酸分子が、全体、または一部複製される過程である。したがって、核酸複製反応の産物は、複製されているテンプレート核酸分子に完全にまたは一部が相補的でありうる。核酸複製は、テンプレート核酸とハイブリダイズしているプライマーを5’−3’方向へ、テンプレート核酸の塩基と相補的なヌクレオチドを伸長産物の各位で組み込んで伸長することによって行われる。プライマーは、たとえば、一本鎖DNAテンプレートの一部とハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドでありうる。プライマーはまた、たとえば、一本鎖DNAテンプレートの別の領域と相補的でありおよび自己プライミングできる、一本鎖DNAテンプレートの一部でありうる。核酸複製反応の範囲に含まれるのは、等温複製反応、配列決定反応、増幅反応、熱サイクル増幅反応、PCR、迅速PCR、およびロングレンジPCRである。
【0105】
核酸複製反応で複製された核酸は、好ましくはDNAであり、および複製は好ましくは、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性が関与する。
【0106】
好ましい一実施形態では、複製反応混合物は、pK約7.0〜8.5である弱有機酸(たとえば、HEPES、DIPSO、TAPS、HEPBS、HEPPSO、TRICINE、POPSO、MOBS、TAPSO、TABSおよびTES)およびpK約6.8〜8.5である弱有機塩基(たとえば、トリス、Bis−トリス−プロパン、イミダゾール、TMNO、4−メチルイミダゾール、トリエタノールアミンおよび時エタノールアミン)の組み合わせを含む、緩衝液のpHが有機塩基を用いた滴定によって約pH7.5〜8.9に設定され、および有機酸の濃度が約10〜40mM、より好ましくは約20〜30mM.である、双性イオン緩衝液を含む。
【0107】
特に好ましい一実施形態では、複製反応混合物および修飾Pol IIIレプリカーゼの組み合わせが下記の組み合わせから選択される:(i)HEPES−Bis−トリス−プロパン(20mM,pH 7.5)と、サーマス(Thermus)属、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)種由来の修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼ;および(ii)TAPS−トリス(20mM,pH 8.7)と、アクイフェックス(Aquifex)属、好ましくはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する修飾dnaEにコードされるαサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼ。
【0108】
好ましい一実施形態では、核酸複製反応混合物は、反応混合物中の修飾Pol IIIレプリカーゼの最適活性のために含まれている、Zn2+、Mg2+、K+、およびNH42+から成る群から選択される一つ以上のイオンを含む。イオンは好ましくは、反応混合物中の修飾Pol IIIレプリカーゼの最適活性のための最適濃度を決定するために予備検定で滴定される。特に好ましい一実施形態では、核酸複製反応混合物はCa2+イオンを欠く。
【0109】
一部の好ましい実施形態では、核酸複製反応混合物はカリウムイオンを含む。カリウムイオンは好ましくは、使用される修飾Pol IIIレプリカーゼについて最適濃度を決定するために最初に滴定される。一般的に、複製反応混合物のK+濃度は、好ましくは0ないし約100mM、より好ましくは約5〜25mMである。カリウムイオンは好ましくは、KCl、K2SO4、または酢酸カリウムの形で提供される。K+と共に提供される特定のカウンター陰イオンは、修飾Pol IIIレプリカーゼの活性に影響する可能性があり、および好ましくは、特定の複製反応のための特定の修飾Pol IIIレプリカーゼにどのカウンター陰イオンが最適であるかを決定するために予備検定が行われる。一般的に、硫酸または塩化物カウンター陰イオンが、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾 Pol III レプリカーゼと共に好ましくは用いられ、硫酸が塩化物よりも好ましい。加えて、カリウムイオンは、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの複製反応混合物での使用には好ましくない。
【0110】
一部の好ましい実施形態では、核酸複製反応混合物はアンモニウムイオンを含む。アンモニウムイオンは好ましくは、使用される修飾Pol IIIレプリカーゼについて最適濃度を決定するために最初に滴定される。一般的に、複製反応混合物のNH42+濃度は、好ましくは0ないし約15mMである。アンモニウムイオンは好ましくは、硫酸アンモニウムの形で提供される。アンモニウムイオンは好ましくは、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼと共に複製反応混合物に含まれる。加えて、アンモニウムイオンは、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの複製反応混合物での使用には好ましくない。
【0111】
一部の好ましい実施形態では、複製反応混合物は亜鉛イオンを含む。亜鉛イオンは好ましくは、使用される修飾Pol IIIレプリカーゼについて最適濃度を決定するために最初に滴定される。一般的に、複製反応混合物のZn2+濃度は、好ましくは0ないし約50μM、より好ましくは約5〜15μMである。亜鉛イオンは好ましくは、ZnSO4、ZnCl2および酢酸亜鉛から成る群から選択される塩の形で提供される。Zn2+と共に提供される特定のカウンター陰イオンは、修飾Pol IIIレプリカーゼの活性に影響する可能性があり、および好ましくは、特定の複製反応のための特定の修飾Pol IIIレプリカーゼにどのカウンターイオンが最適であるかを決定するために予備検定が行われる。一般的に、塩化物または酢酸カウンター陰イオンがサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの複製反応混合物中で好ましくは用いられ、および硫酸カウンター陰イオンがアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの複製反応混合物中で好ましくは用いられる。
【0112】
一般的に、Zn2+は、いくつかのαサブユニット(たとえば、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)dnaE)の3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を上昇させうるため、配列決定反応混合物における使用には好ましくない。任意の特定の最小機能性Pol IIIレプリカーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性に対するZn2+の影響、およびそれを用いる配列決定反応に対するZn2+の影響は、本分野で公知である標準的なエキソヌクレアーゼ活性検定法を用いて評価されうる。
【0113】
一部の好ましい実施形態では、複製反応混合物はマグネシウムイオンを含む。マグネシウムイオンは好ましくは、使用される修飾Pol IIIレプリカーゼについて最適濃度を決定するために最初に滴定される。一般的に、複製反応混合物のMg2+濃度は、好ましくは0ないし約15mM、より好ましくは約4〜10mMである。一般的に、核酸配列決定反応を含む、等温核酸複製反応は、好ましい濃度範囲の上限のMg2+濃度によりよく適応する。マグネシウムイオンは好ましくは、MgCl2、MgSO4、および酢酸マグネシウムから成る群から選択される塩の形で提供される。Mg2+と共に提供される特定のカウンター陰イオンは、修飾Pol IIIレプリカーゼの活性に影響する可能性があり、および好ましくは、特定の複製反応のための特定の修飾Pol IIIレプリカーゼにどのカウンターイオンが最適であるかを決定するために予備検定が行われる。一般的に、酢酸または塩化物カウンター陰イオンが、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来修飾Pol IIIレプリカーゼと好ましくは用いられ、酢酸が塩化物よりも好ましい。加えて、硫酸カウンター陰イオンが、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼと好ましくは用いられる。
【0114】
特に好ましい一実施形態では、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための複製反応混合物は、TAPS−トリス (20mM,pH8.7)、 25mM K2SO4、10mM NH4(OAc)2、および 10mM MgSO4を含む。
【0115】
別の特に好ましい一実施形態では、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための複製反応混合物は、HEPES−Bis−トリス−プロパン(20mM、pH7.5)、および10mM Mg(OAc)2を含む。
【0116】
一実施形態では、複製のための一本鎖核酸テンプレートを提供するのに必要な変性温度を低下させるために、複製反応にヘリカーゼが含まれる。
【0117】
一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物はATPを欠く。
【0118】
一実施形態では、ここで提供される複製反応混合物はSSBを欠き、SSBは複製反応混合物中に存在するならば、複製反応混合物中に用いられる特定の修飾Pol IIIレプリカーゼのDNAポリメラーゼ活性を低下させる。好ましい一実施形態では、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)polCにコードされるαサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼを含む複製反応混合物はSSBを欠く。
【0119】
ここでは、使用される修飾Pol IIIレプリカーゼが好熱性細菌に由来する核酸複製反応で、反応混合物は好ましくは約7.2〜8.9のpHを有する。一部の好ましい実施形態では、反応混合物はZn2+濃度0ないし約50μM、より好ましくは約5〜15μMである。一部の好ましい実施形態では、反応混合物は、Mg2+濃度0ないし約15mM、より好ましくは約4〜10mMである。一部の好ましい実施形態では、反応混合物は、K+濃度0ないし約100mM、より好ましくは約5〜25mMである。一部の好ましい実施形態では、反応混合物は、NH42+濃度0ないし約12mM、より好ましくは約5〜12mMである。一部の好ましい実施形態では、反応混合物は、これらの陽イオンをそれらの好ましい濃度範囲で組み合わせて有する。
【0120】
ここでは核酸複製反応では、プライマー伸長が行われる温度は、好ましくは約55℃〜72℃、より好ましくは約60℃〜68℃である。
【0121】
好ましい一実施形態では、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長が熱サイクル増幅反応において行われる温度は、約55℃〜72℃、より好ましくは約60℃〜68℃、より好ましくは約60℃〜65℃であるが、最適温度は、本分野で公知である通り、プライマー長、塩基含量、テンプレートに対するプライマー相補性の程度、および他の因子によって決定される。
【0122】
好ましい一実施形態では、変性が熱サイクル増幅反応において行われる温度は、約86℃〜95℃、より好ましくは87℃〜93℃であり、ここで開示される通りDNA不安定化剤を含む熱サイクル増幅反応混合物と組み合わせた使用にはその範囲の下限の温度が好ましい。好ましい熱サイクル増幅方法は、約10ないし約100サイクル、より好ましくは約25ないし約50サイクル、およびピーク温度約86℃〜95℃、より好ましくは87℃〜93℃を含むポリメラーゼ連鎖反応を含み、ここで開示される通りDNA不安定化剤を含むPCR反応混合物と組み合わせた使用にはその範囲の下限の温度が好ましい。
核酸増幅
【0123】
一態様では、本発明は、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む増幅反応混合物中で核酸分子を増幅反応に供することを含む、核酸分子を増幅するための方法を提供する。好ましくは、増幅反応は、ここに記載される増幅反応チューブ中で行われる。
【0124】
核酸分子は、文献に記載された手動または自動化増幅方法の任意のものに従って増幅されうる。ここで用いられる「増幅」は、目的のヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための任意のin vitro法をいう。増幅される核酸は好ましくはDNAであり、および増幅は好ましくは、ここで記載される修飾Pol IIIレプリカーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性が関与する。
【0125】
一実施形態では、核酸増幅は、DNA分子またはプライマーへのヌクレオチドの組み込みを結果として生じ、それによって核酸テンプレートと相補的な新しいDNA分子を形成する。生じたDNA分子およびそのテンプレートは、別のDNA分子を合成するためのテンプレートとして使用されうる。ここでは、一つの増幅反応は、多数回のDNA複製から成りうる。DNA増幅反応は、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を含む。一つのPCR反応は、DNA分子の変性および合成の10から100「サイクル」から成りうる。そのような方法は、PCR(参照により本開示に含まれる、米国特許第4,683,195および4,683,202号明細書に記載の通り)、鎖置換増幅(「SDA」)(参照により本開示に含まれる、米国特許第5,455,166号明細書に記載の通り)、および核酸配列準拠増幅(「NASBA」)(参照により本開示に含まれる、米国特許第5,409,818号明細書に記載の通り)を含むがそれらに限定されない。たとえば、増幅は、低い熱で溶解するDNAにおける効率増大のためにヘリカーゼを使用することさえできる、ローリングサークル複製系によって達成されうる(参照により本開示に含まれる、ユザコウ(Yuzhakou)他,Cell 86:877−886 (1996) およびモク(Mok)他,J.Biol.Chem.262:16558−16565 (1987)を参照)。
【0126】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応において変性が行われる温度は、約86℃〜95℃、より好ましくは87℃〜93℃であり、ここで開示される通りDNA不安定化剤を含む熱サイクル増幅反応混合物と組み合わせた使用にはその範囲の下限の温度が好ましい。好ましい熱サイクル増幅方法は、約10ないし約100サイクル、より好ましくは約25ないし約50サイクル、およびピーク温度約86℃〜93℃、より好ましくは87℃〜93℃を含むポリメラーゼ連鎖反応を含み、ここで開示される通りDNA不安定化剤を含むPCR反応混合物と組み合わせた使用にはその範囲の下限の温度が好ましい。特に好ましい一実施形態では、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属の、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種のdnaEαサブユニットを含む。
【0127】
好ましい一実施形態では、一つ以上の高温変性段階を含む増幅反応で用いられる増幅反応混合物は、ここで記載されおよびより詳細に例示される通り、修飾Pol IIIレプリカーゼの熱安定性に寄与する安定剤をさらに含む。
【0128】
好ましい一実施形態では、ここで提供される増幅混合物はSSBを欠き、SSBは複製反応混合物中に存在するならば、複製反応混合物中に用いられる特定の修飾Pol IIIレプリカーゼのDNAポリメラーゼ活性を阻害する。
【0129】
好ましい一実施形態では、PCR反応は修飾Pol IIIレプリカーゼを適当な安定剤と共に用いて行われ、(a)標的配列の末端が十分詳細に判っていてそれらとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーが合成されうるならば、および(b)連鎖反応を開始するために少量の標的配列が利用可能であるならば、含まれる反応段階の数に対して指数的な量で、少なくとも一つの標的核酸配列を生じる。連鎖反応の産物は、使用した特異的プライマーの末端と対応する末端を有する、不連続の核酸二重鎖となる。
【0130】
目的の標的核酸配列を含むかまたは含むと考えられるならば、精製形または非精製形の、核酸の任意の起源が、開始核酸として使用されうる。したがって、処理は、たとえば、DNAまたは、メッセンジャーRNAを含むRNAを使用でき、そのDNAまたはRNAは一本鎖または二本鎖でありうる。加えて、それぞれの鎖を1本含むDNA−RNAハイブリッドもまた使用されうる。これらの核酸のうちの任意のものの混合物もまた使用でき、または、同一または異なるプライマーを用いた前の増幅反応から生じた核酸もそのように使用されうる。増幅される核酸は好ましくはDNAである。増幅すべき標的核酸配列は、より大きい分子の一部だけでもよく、または標的配列が核酸全体を構成するように最初は不連続な分子として存在できる。増幅すべき標的配列が最初に純粋な形で存在する必要は無い;標的配列は、たとえばヒトDNA全体に含まれるβ−グロビン遺伝子の一部のように、または特定の生物試料の非常に小さい画分を構成しうるにすぎない特定の微生物に由来する核酸配列の一部のように、複雑な混合物のより小さい画分でありうる。開始核酸は、同一または別々でありうる、二つ以上の目的の標的核酸配列を含みうる。したがって、本方法は、大量の一つの標的核酸配列を作製するためだけでなく、同一のまたは異なる核酸分子上に位置する複数の標的核酸配列を同時に増幅するためにも有用である。
【0131】
核酸は任意の起源から得ることができ、および、プラスミドおよびクローンDNAまたはRNA、および細菌、酵母、ウイルス、および植物または動物といったより高等な生物を含む任意の起源のDNAまたはRNAを含む。DNAまたはRNAは、たとえば、血液または他の体液、または絨毛膜絨毛または羊膜細胞といった組織材料から、たとえばマニアチス(Maniatis)他,『分子クローニング:実験の手引き』(Molecular Cloning: A Laboratory Manual),(ニューヨーク(New York):コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory)) pp 280−281(1982)に記載されたようなさまざまな方法によって抽出されうる。
【0132】
任意の特異的(すなわち、標的)核酸配列が、本方法によって作製されうる。目的配列の別々の鎖にハイブリダイズするような、および一つのプライマーから合成された伸長産物がテンプレート(相補鎖)から分離された際に他のプライマーが規定の長さの核酸へ伸長するためのテンプレートとして役立ちうるような配列の相対的な位置にハイブリダイズするような、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーが作製されうるように、標的配列の両端の十分な数の塩基が十分詳細に知られてさえいればよい。標的配列の両端の塩基がよく知られているほど、標的核酸配列に対するプライマーの特異性は高く、および、したがって、その処理の効率は高い。以後用いられるプライマーの語は、特に、増幅すべき断片の末端配列に関する情報に何らかの曖昧さがある場合は、二つ以上のプライマーをいうことができると理解される。たとえば、核酸配列がタンパク質配列情報から推測される場合は、遺伝コードの縮重に基づくすべての可能なコドン変異に相当する配列を含むプライマーの集合が、各鎖について使用されうる。この集合からの一つのプライマーが、増幅すべき目的配列の末端と相同となる。
【0133】
一部の代替的実施形態では、ランダムプライマー、好ましくは六量体が、テンプレート核酸分子を増幅するために用いられる。そのような実施形態では、増幅される正確な配列は規定されていない。
【0134】
加えて、単一プライマーを用いる片側増幅を実施しうることが当業者に理解される。
【0135】
オリゴヌクレオチドプライマーは、たとえば、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法またはその自動化実施形態といった任意の適当な方法を用いて調製されうる。そのような自動化された一実施形態では、ジエチロホスホロアミダイトが開始材料として用いられ、および参照により本開示に含まれるビューケージ(Beaucage)他,Tetrahedron Letters,22:1859−1862 (1981)に記載された通り合成されうる。修飾固相担体上でオリゴヌクレオチドを合成するための一つの方法が、参照により本開示に含まれる米国特許第4,458,006号明細書に記載されている。生物起源(たとえば制限エンドヌクレアーゼ消化物)から単離されているプライマーを用いることもまた可能である。
【0136】
好ましいプライマーは、約15〜100、より好ましくは約20〜50、非常に好ましくは約20〜40塩基の長さを有する。特に、ここでの使用に好ましいプライマーは、Pol Iポリメラーゼに好ましいものよりも長い。
【0137】
標的核酸配列は、テンプレートとしてその配列を含む核酸を用いて増幅される。核酸が2つの鎖を含む場合、プライマー伸長産物の合成と別個の段階としてまたは同時に、テンプレートとして使用できる前に核酸の鎖を分離する必要がある。この鎖分離は、物理的、化学的、または酵素的方法を含む、任意の適当な変性方法によって達成されうる。核酸の鎖を分離する一つの物理的方法は、完全に(>99%)変性するまで核酸を加熱することを含む。典型的な熱変性は、温度範囲約80℃ないし105℃、好ましくは約90℃ないし約98℃、さらにより好ましくは93℃ないし94℃を、時間範囲約1ないし10分間を含みうる。鎖分離はまた、ヘリカーゼとして知られる類の酵素、または、ヘリカーゼ活性を有しおよびDNAを変性させることが知られている酵素RecAによっても誘導されうる。ヘリカーゼを用いて核酸の鎖を分離するのに適当な反応条件は、参照により本開示に含まれるCold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology,Vol.XLIII 『DNA:複製および組み換え』"DNA: Replication and Recombination" (ニューヨーク(New York):コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory),1978)によって記載され、 および RecAを用いるための方法は、C.ラディング(Radding),Ann.Rev.Genetics,16:405−37 (1982)で総説されている。本発明での使用に好ましいヘリカーゼは、dnaBにコードされる。
【0138】
増幅すべき配列を含む元の核酸が一本鎖である場合、その相補鎖が、オリゴヌクレオチドプライマーを加えることによって合成される。適当な単一プライマーが添加される場合、プライマー伸長産物は、プライマー、修飾Pol IIIレプリカーゼ、および下記の4種類のヌクレオチドの存在下で合成される。産物は、一本鎖核酸と部分的に相補となり、および核酸鎖とハイブリダイズして、不等な鎖長の二重鎖を形成し、二重鎖はついで上記の通り一本鎖へ分離して、2種類の分離した相補一本鎖を生じうる。
【0139】
元の核酸が増幅すべき配列を構成する場合、生じるプライマー伸長産物は、元の核酸の鎖と完全に相補となり、およびそれとハイブリダイズして、等しい鎖長の二重鎖を形成し、一本鎖分子へ分離される。
【0140】
核酸の相補鎖が分離される際、核酸が元は二本鎖であっても一本鎖であっても、鎖は別の核酸鎖の合成のためのテンプレートとして使用可能である。この合成は、任意の適当な方法を用いて実施されうる。一般的に、反応は緩衝水溶液中で起こる。一部の好ましい実施形態では、緩衝液pHは約8.5から8.9であり、Pol I酵素の好ましいpH範囲とは著しく異なる。好ましくは、モル過剰(クローン核酸については通常プライマー:テンプレート約1000:1、およびゲノム核酸については通常プライマー:テンプレート約106:1)の2種類のオリゴヌクレオチドプライマーが、分離されたテンプレート鎖を含む緩衝液に添加される。しかし、ここでの処理が消化用途に用いられる場合、相補鎖の量は不明でありうるため、相補鎖の量に相対的なプライマーの量が確実に決定できないことが理解される。実際問題としては、しかし、増幅すべき配列が複雑な長鎖核酸鎖の混合物に含まれる場合、添加されるプライマーの量は一般的に相補鎖(テンプレート)の量に対してモル過剰となる。その過程の効率を改善するためには、モル大過剰が好ましい。
【0141】
ヌクレオシド三リン酸、好ましくはdATP、dCTP、dGTP、dTTP、および/またはdUTPもまた、適当な量で合成混合物に添加される。
【0142】
新たに合成された鎖およびその相補核酸鎖は、二本鎖分子を形成し、それが処理の次の段階で用いられる。次の段階では、二本鎖分子の鎖が、上記の手順のうち任意のものを用いて分離され、一本鎖分子を提供する。
【0143】
新しい核酸が、その一本鎖分子上で合成される。上記の条件下で反応が進むための必要に応じて、別のポリメラーゼ、ヌクレオチド、およびプライマーが添加されうる。再び、合成はオリゴヌクレオチドプライマーの一方の端で開始され、およびテンプレートの一本鎖に沿って進行し、別の核酸を生じる。
【0144】
鎖分離および伸長産物合成の段階は、目的の量の特異的核酸配列を生じるのに必要なだけ反復されうる。生じる特異的核酸配列の量は、指数的に増大する。
【0145】
最初の核酸または核酸混合物から二つ以上の特異的核酸配列を生じることが望まれる場合、適当な数の異なるオリゴヌクレオチドプライマーが用いられる。たとえば、2種類の異なる特異的核酸配列を生ずべき場合、4種類のプライマーが用いられる。プライマーのうち2種類は特異的核酸配列の一つに特異的であり、および残り2種類のプライマーは、第二の特異的核酸配列に特異的である。この方法で、2種類の異なる特異的配列のそれぞれが、本処理によって指数的に産生されうる。もちろん、異なるテンプレート核酸配列の末端配列が同一である場合、プライマー配列は互いに同一およびテンプレート末端配列に対し相補となる。
【0146】
加えて、上述の通り、代替的一実施形態では、ランダムプライマー、好ましくは六量体、が、テンプレート核酸分子を増幅するのに用いられる。
【0147】
加えて、単一プライマーを用いる片側増幅が実施されうる。
【0148】
本発明は、各段階後に新しい試薬が添加される段階法で、またはすべての試薬が最初の段階で加えられて同時に、または所定数の段階後に新しい試薬が添加されて一部段階的におよび一部同時に、実施されうる。別の材料、たとえば、安定剤が、必要に応じて添加されうる。目的量の特異的核酸配列を生じるために適当な長さの時間の経過後、反応は、任意の公知の方法で酵素を不活性化することによって、または反応の成分を分離することによって停止されうる。
【0149】
このように、本発明に記載の核酸分子の増幅において、核酸分子は、好ましくは熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを、好ましくは安定剤を含む適当な増幅反応混合物中に含む組成物と接触させられる。
【0150】
一実施形態では、本発明は、「ロングレンジPCR」と一般に呼ばれる用法によって核酸高分子を増幅する方法を提供する(バーンズ(Barnes),W.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:2216−2220 (1994) (「バーンズ」);チェン(Cheng),S.他.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:5695−5699 (1994)、参照により本開示に含まれる)。約5〜6キロベースより大の核酸分子を増幅するために有用な一つの方法では、標的核酸分子が接触させられる組成物は、修飾Pol IIIレプリカーゼだけでなく、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示す(「エキソ+」ポリメラーゼ)低濃度の第二のDNAポリメラーゼ(好ましくは熱安定性修復型ポリメラーゼ、またはpolCαサブユニット)もまた、濃度約0.0002〜200単位/ミリリットル、好ましくは約0.002〜100単位/mL、より好ましくは約0.002〜20単位/mL、さらにより好ましくは約0.002〜2.0単位/mL、および非常に好ましくは濃度約0.40単位/mLにて含む。本方法での使用のために好ましいエキソ+ポリメラーゼは、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima) PolC、Pfu/DEEPVENTまたはTli/NENT? (バーンズ(Barnes); 米国特許第5,436,149号明細書、参照により本開示に含まれる);サーモトガ(Thermotoga)種由来熱安定性ポリメラーゼ、たとえばTma Pol I (米国特許第 5,512,462号明細書、参照により本開示に含まれる); およびTne(3’exo+)といったサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)から単離されたある種の熱安定性ポリメラーゼおよびその変異体である。サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)のPolC産物もまた好ましい。本方法で修飾Pol IIIレプリカーゼを第二のポリメラーゼと併用することによって、長さ少なくとも35〜100キロベースのDNA配列が、顕著に改善した信頼性で、高濃度まで増幅されうる。
【0151】
ロングレンジPCRの考察については、たとえば、明示的に参照により本開示に含まれる、デイビーズ(Davies)他,Methods Mol Biol.2002; 187:51−5を参照。
【0152】
好ましくは、本発明の増幅方法は、2修飾Pol IIIレプリカーゼとの安定剤の使用を含む。安定剤は好ましくは増幅反応混合物中に含まれ、および、これらの反応混合物中での修飾Pol IIIレプリカーゼの熱安定性を高める。
【0153】
本発明の増幅反応混合物は、最大25%の共溶媒(反応混合物に添加されるすべての共溶媒の合計)、最大5%のクラウディング剤(反応混合物に添加されるすべてのクラウディング剤の合計)および最大2Mのオキサイド(反応混合物に添加されるすべてのオキサイドの合計)を含みうる。
【0154】
特に好ましい一実施形態では、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための増幅反応混合物は、TAPS−トリス(20mM,pH8.7)、 25mM K2SO4,10mM NH4(OAc)2,15μmol ZnSO4,および 4mM MgSO4を含む。
【0155】
別の特に好ましい一実施形態では、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための増幅反応混合物は、HEPES−Bis−トリス−プロパン(20mM,pH7.5)、0.5μmol ZnCl2またはZn(OAc)2,および 6mM Mg(OAc)2を含む。
【0156】
一つ以上の高温変性段階が89℃未満で実施される一実施形態では、熱サイクル増幅法は、熱サイクル増幅反応混合物中でのヘリカーゼの使用、および好ましくは細菌dnaB遺伝子にコードされるヘリカーゼを含む。ヘリカーゼは、好ましくは、89℃以上の一つ以上の変性段階を含む熱サイクル増幅方法では使用されない。
【0157】
一実施形態では、ここでの核酸複製方法は、ATPを欠く核酸複製混合物の使用を含む。
【0158】
一実施形態では、ここでの核酸複製方法は、SSBを欠く核酸複製混合物の使用を含み、SSBは複製反応混合物中に存在するならば、複製反応混合物中に用いられる特定の最小機能性Pol IIIレプリカーゼのDNAポリメラーゼ活性を阻害する。
安定剤
【0159】
好ましくは、少なくとも2種類、およびより好ましくは少なくとも3種類の安定剤の組み合わせが、熱サイクル増幅反応混合物中に含まれる。好ましい実施形態では、安定剤は、たとえばポリオール(たとえばグリセロール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール)といった少なくとも一つの共溶媒、たとえばポリエチレングリコール(PEG)、フィコール、ポリビニルアルコールまたはポリプロピレングリコールといった少なくとも一つのクラウディング剤、および、糖、有機第四アミンたとえばベタイン、およびそのN−オキサイド、および界面活性剤から成る群から選択される第3の成分を含む。特に好ましい実施形態では、安定剤は、共溶媒、クラウディング剤、および第四アミンN−オキサイド、たとえばトリメチルアミン−N−オキサイド(TMNO)またはモルホリノ−N−オキサイドを含む。さらに好ましい実施形態では、反応混合物はさらに、第4の安定剤、非常に好ましくは第2のポリオールを含む。他の好ましい4種類の安定剤の組み合わせは、3種類の異なる共溶媒、および一つの第四アミンN−オキサイドを含む。
【0160】
高温変性段階を用いる核酸複製反応は、反応混合物に一つ以上の安定剤を含めることで利益を受けうる。本発明に従って好ましい安定剤は、ポリオールといった共溶媒およびポリエチレングリコールといったクラウディング剤を、典型的には一つ以上のオキサイド、糖、界面活性剤、ベタインおよび/または塩と共に含む。前記の成分の組み合わせが非常に好ましい。
【0161】
ここでは、「クラウディング高分子剤」または「クラウディング剤」とは、タンパク質凝集を少なくとも部分的に模倣する高分子をいう。本発明における使用のためのクラウディング剤の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、PVP、フィコール、およびプロピレングリコールを含む。
【0162】
ここでは、「界面活性剤」とは、水の表面張力を低下させる任意の物質をいい、および陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、および双性イオン性界面活性剤を含むがそれらに限定されない。本発明における使用のための界面活性剤の例は、ツイーン(Tween)20、NP−40およびツヴィッタージェント(Zwittergent)3−10を含む。
【0163】
ここでは、「ポリオール」とは多価アルコール、すなわち、3個以上の水酸基を含むアルコールをいう。3個の水酸基を有するもの(三価)はグリセロール類である;3個より多数を有するものは糖アルコールと呼ばれ、一般式CH2OH(CHOH)nCH2OHであり、ここでnは2ないし5でありうる。
【表2】

【表3】

【0164】
本発明の実施形態は一般的に、温度を基礎とする核酸増幅を促進するためにGroupsI〜VII群(表2参照)から選択される少なくとも2種類、およびより好ましくは少なくとも3種類の異なる安定剤を組み合わせることを含む。本発明の好ましい実施形態は、II群の少なくとも一つと、III群の一つとの、増幅反応混合物内での組み合わせを含み、特にII群のものはグリセロールおよび/またはソルビトールである。特に好ましい組み合わせは、II群の異なる2つの、III群の1つおよびVII群の1つとの組み合わせを含む。
核酸配列決定
【0165】
一態様では、本発明は、修飾Pol IIIレプリカーゼを含む配列決定反応混合物中で核酸を配列決定反応に供することを含む、核酸、好ましくはDNAを配列決定するための方法を提供する。
【0166】
好ましくは、使用する修飾Pol IIIレプリカーゼは、配列決定反応混合物中で3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去することができる3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。
【0167】
したがって、polCにコードされるαサブユニットを含む修飾Pol IIIレプリカーゼは、その高レベルの亜鉛非依存性3’−5’エキソヌクレアーゼ活性のために、配列決定反応における使用には一般的に好ましくない。
【0168】
好ましい一実施形態では、修飾Pol IIIレプリカーゼは、好ましくはサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属の、好ましくはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種の、dnaEαサブユニットを含む。
【0169】
特に、本発明に用いられるdnaEαサブユニットの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、一般的に3’末端ジデオキシヌクレオチドを除去することができ、一方、εサブユニットの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は一般的にそのような末端ジデオキシヌクレオチド除去の能力は無い。したがって、配列決定反応混合物中のεサブユニットによって与えられる3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する修飾Pol IIIレプリカーゼは、一般的にここでの配列決定反応に有用である。さらに、望ましくないdnaEαサブユニット3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、化学的方法(すなわち、緩衝液条件、より具体的には、Zn2+濃度およびpH)によって、好ましくは低減または完全に阻害される。
【0170】
核酸分子は、文献に記載された手動または自動化配列決定法のうち任意のものに従って配列決定されうる。そのような方法は、ジデオキシ配列決定法(「サンガー配列決定」; 参照により本開示に含まれる、サンガー(Sanger),F.,他,J.Mol.Biol.,94:444−448 (1975); サンガー(Sanger),F.,他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:5463−5467 (1977); 米国特許第 4,962,022 および 5,498,523号明細書)、 およびPCRを基礎とする方法、およびより複雑なPCRを基礎とする核酸フィンガープリント法、たとえばランダム増幅多形DNA(「RAPD」)分析(ウィリアムズ(Williams),J.G.K.,他,Nucl.Acids Res.,18(22):6531−6535,(1990)、参照により本開示に含まれる)、任意プライミングPCR (「AP−PCR」)(ウェルシュ(Welsh),J.,他,Nucl.Acids Res.,18(24):7213−7218,(1990)、参照により本開示に含まれる)、DNA増幅フィンガープリント法(「DAF」)(カエタノ−アノレス(Caetano−Anolles)他,Bio/Technology,9:553−557,(1991)、参照により本開示に含まれる)、マイクロサテライトPCRまたはマイクロサテライト領域DNA指定増幅(「DAMD」) (ヒース(Heath),D.D.,他,Nucl.Acids Res.,21(24): 5782−5785,(1993)、参照により本開示に含まれる)、および増幅断片長多形(「AFLP」)分析(ヴォス(Vos),P.,他,Nucl.Acids Res.,23(21):4407−4414 (1995);リン(Lin),J.J.,他,FOCUS,17(2):66−70,(1995)、参照により本開示に含まれる)を含むがそれらに限定されない。
【0171】
配列決定すべき核酸分子が、配列決定反応混合物中の修飾Pol IIIレプリカーゼと一旦接触させられると、配列決定反応は上記で開示されるプロトコルまたは本分野で公知であるその他に従って進行しうる。
【0172】
特に好ましい一実施形態では、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための配列決定反応混合物は、TAPS−トリス (20mM,pH8.7)、 25mM K2SO4,10mM NH4(OAc)2,および 10mM MgSO4を含む。好ましくは、反応混合物は、αサブユニットの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を制限するように亜鉛を欠く。
【0173】
別の特に好ましい一実施形態では、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)に由来する修飾Pol IIIレプリカーゼとの使用のための配列決定反応混合物は、HEPES−Bis−トリス−プロパン(20mM,pH7.5)、および10mM Mg(OAc)2を含む。好ましくは、反応混合物は、αサブユニットの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を制限するように亜鉛を欠く。
キット
【0174】
一態様では、本発明は、ここで開示される最小Pol IIIを利用する、核酸複製のためのキットを提供する。キットは、ここで開示される修飾Pol IIIレプリカーゼを含む。
【0175】
好ましい一実施形態では、核酸増幅キットは、緩衝液および安定剤、またはここに記載の通り安定剤を含む緩衝液を含む。安定剤は、熱安定性修飾Pol IIIレプリカーゼを用いる熱サイクル反応用のキットにおいて特に好ましい。
【0176】
本発明に記載の核酸配列決定キットは、修飾Pol IIIレプリカーゼおよび好ましくはジデオキシヌクレオチド三リン酸を含む。配列決定キットは、ピロホスファターゼ、配列決定ゲルを処方するためのアガロースまたはポリアクリルアミド媒体といった、標準的な核酸配列決定プロトコルを実施するのに必要な別の試薬および化合物、および配列決定された核酸の検出に必要な他の成分をさらに含みうる(DNA配列決定の方法を対象とする米国特許第4,962,020および5,498,523号明細書を参照)。
【0177】
核酸増幅キットは、好ましくは、修飾Pol IIIレプリカーゼおよびdNTPを含む。増幅キットはさらに、標準的な核酸増幅プロトコルを実施するために必要な別の試薬および化合物を含みうる(PCRによるDNA増幅の方法を対象とする米国特許第4,683,195および4,683,202号明細書を参照;参照により本開示に含まれる)。
【0178】
一実施形態では、キットはATPを欠き、およびATPはキットによって提供される核酸複製反応で使用されない。
【0179】
別の好ましい実施形態では、本発明の核酸複製キットは、3−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する第二のDNAポリメラーゼをさらに含みうる。好ましいのは、Pfu/DEEPVENT、TliNENT?、Tma、Tne(3’エキソ+)、およびその変異体および誘導体である。PolCもまた好ましい。
【0180】
本発明のキットは、情報パンフレットを含みうる。
ベクターおよび宿主細胞
【0181】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子を含むベクター、およびそのようなベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチド分子のうち任意のものを、一般的に選択可能マーカーおよび複製開始点を含むベクターに含めることができる。ベクターはさらに、細菌分子またはウイルス分子に由来するもののような、適当な転写および/または翻訳調節配列を含む。そのような調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、および適当な配列を含む。プロモーターヌクレオチド配列がコード配列の転写を導く場合、プロモーターヌクレオチド配列は、コードDNA配列に調節可能に結合している。
【0182】
本発明の標的ポリペプチドをコードするサブユニット分子のクローニングに適したベクターの選択は、ベクターで形質転換される宿主細胞、および、該当する場合には、標的ポリペプチドを発現すべき宿主細胞に依存する。適当な宿主細胞は上記で考察されているが、しかし原核生物、酵母、およびその他の類似の生物を含む。具体例は、大腸菌(Escherichia)、バチルス(Bacillus)およびサルモネラ(Salmonella)属の細菌、およびシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の仲間;サッカロマイセス(Sacchoromyces)、ピキア(Pichia)、およびクリベロマイセス(Kluveromyces)属の酵母を含む。
【0183】
本発明の修飾αサブユニットは、融合タンパク質構造を生じるように、異種タンパク質またはペプチドをコードする配列と組み換えによって結合されうる。そのような異種タンパク質またはペプチドは、たとえば、精製の促進、分泌の増大、または安定性の上昇を可能にするように含められうる。たとえば、修飾αサブユニットがシグナルペプチドを含む融合タンパク質として翻訳されるように、シグナルペプチド(分泌リーダー)をコードする核酸配列が、修飾αサブユニット配列のフレーム内に融合されうる。
【0184】
特定のベクターへの挿入、特定の発現系または宿主での使いやすさ(たとえば、制限部位を修飾することによる)、などを促進するための、本発明の修飾α−サブユニットをコードするポリヌクレオチド分子の修飾が公知であり、および本発明における使用が考えられている。修飾α−サブユニットポリペプチドの産生のための遺伝工学法は、無細胞発現系で、細胞系で、宿主細胞で、組織で、および動物モデルでのポリヌクレオチド分子の発現を含む。
抗体
【0185】
本発明の新規のポリペプチド、およびその断片は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を生じるのに使用されうる。好ましくは、修飾β−結合部位を含むペプチドが、抗体の調製に使用される。抗体の設計および産生のための方法は本分野で公知であり、たとえば、『抗体:実験の手引き』(Antibodies: A Laboratory Manual)ハーロー(Harlow)およびランド(Land)(編)、1988コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス社(Cold Spring Harbor Laboratory Press),コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク;『モノクローナル抗体、ハイブリドーマ:生物分析の新次元』(Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analysis),ケネット(Kennet)他(編)、1980 プレナム・プレス社(Plenum Press),ニューヨークを参照。
【0186】
本明細書で引用された文献は全体が明示的に参照により本開示に含まれる。
【実施例】
【0187】
実施例1:PCR比較−変異対非変異2成分Pol III系
【0188】
下記の実施例は、βサブユニットを、図4に開示される通り一つ以上の内部β−結合領域に少なくとも一つのアミノ酸変異を有するαサブユニットと組み合わせて含む、2成分Tth DNA Pol III系を用いて標的核酸を増幅する有用性を説明するために提供される。実験は、変異αサブユニットを含む2成分Tth DNA Pol III系を、非変異αサブユニットを含む2成分Tth DNA Pol III系に対して比較する。反応混合物は、20 mM Hepes−Bis−トリスプロパンpH7.5、200μM dNTPs、200nMヒトベータグロビン遺伝子プライマー混合物、50ngヒトゲノムDNAテンプレート、表1に示される少なくとも一つの安定剤の組み合わせ、および修飾2成分組立物についてβサブユニット1、1.25、1.5および1.75ug、およびそれぞれ非修飾2成分DNA Pol III組立物についてβサブユニット1.6、2.0、2.4、2.8ugを含む。図8に示す通り、反応当たりの修飾Tth Pol IIIポリメラーゼの量は非修飾Tth Pol IIIポリメラーゼの量より1.6倍低いにもかかわらず、修飾2成分ポリメラーゼを用いるすべての反応は、より多くの特異的PCR産物を生じる。これは、修飾2成分Tth Pol IIIポリメラーゼのより良好な合成持続性および特異的活性を示す。

実施例2:PCR比較−変異対非変異Pol IIIホロ酵素系
【0189】
下記の実施例は、ここに開示される通り内部β−結合部位に変異を有するαサブユニットがTtH DNA Pol IIIホロ酵素系に添加される場合の、非変異αサブユニットを含むTth DNA Pol IIIホロ酵素系と比較して、不利な増幅収量を説明するために提供される。反応混合物は、20 mM Hepes−Bis−トリスプロパンpH7.5、200μM dNTPs,200 nM Uni−ori プライマー混合物、PBSプラスミドDNAテンプレート1ng、表2および3に示される少なくとも一つの安定剤の組み合わせ、βサブユニット2〜5mg/mL、δサブユニット0.1〜0.3mg/mL、δ’サブユニット0.1〜0.3mg/mL、およびDNAX複合体(γサブユニット+Tサブユニット)0.2〜0.5mg/mLを含む。変異および非変異TtH DNA Pol IIIホロ酵素系の両方で、対応するαサブユニットは、反応混合物濃度2〜5 mg/mLを有する。最終反応容量50μLが得られる。反応は95℃ないし4℃の範囲の複数の温度サイクルに曝露される。
【0190】
より高い増幅産物収量が、非変異αサブユニットを含むPol IIIホロ酵素系について得られる。
実施例3:伸長速度比較−変異対非変異2成分Pol III系
【0191】
2種類の2成分TtH DNA Pol III系の伸長速度が、プライミングされた一本鎖M13mp18DNA(7.2kb)をテンプレートとして用いる複製検定法で比較された。第一の2成分系は、ここで開示される通り内部β−結合部位に変異を有するαサブユニットを含む;第二の系は、非変異αサブユニットを含む。この検定法では、各系が7.2kb長一本鎖テンプレートDNAの複製を完了する時点が測定される。塩基数でのテンプレートサイズを、複製を完了するのに要した秒での反応時間で割って、2成分TtH DNA Pol III系の伸長速度を与える。反応混合物は、反応緩衝液、dNTPs、プライミングされたM13DNAテンプレート、およびTthβサブユニット2〜5mg/mLを含む。各反応混合物は、対応するαサブユニット2〜5 mg/mLを含む。
【0192】
より速い伸長速度が、変異αサブユニットを含む2成分TtH DNA Pol III系によって示される。
実施例4:2成分Pol III増幅比較(合成α対変異合成α)
【0193】
精製Tth DNAポリメラーゼIIIベータサブユニットとの組み合わせで、精製非変異未変化Tth DNAポリメラーゼIIIアルファサブユニット(Tth nDnaE)が、精製変異Tth DNA ポリメラーゼIIIアルファサブユニット(TthmuDnaE)と比較された。この一連の実験では、ベータサブユニット(β)の濃度は815ng/反応にて一定に保たれた一方、2つのアルファサブユニット(α)の2濃度(250ng/反応および125ng/反応)が試験された。2つの標的、3kb pBS2および 5kbラムダは、温度サイクル増幅プロトコルを用いて増幅された。反応混合物およびサイクル条件は下記の通り設定された:
【0194】
pBS2反応

【0195】
5kbラムダ反応

【0196】
図5および6で見られる通り、変異合成アルファ/ベータの組み合わせは、3kb pBS2および5kbラムダ標的の両方について、合成アルファ/ベータの組み合わせよりも多くの増幅産物を生じた。
実施例5:2成分Pol III伸長速度比較(合成α対変異合成α)
【0197】
この実験では、2成分Pol III系内での合成アルファおよび変異合成アルファの比較が行われた。2種類のアルファは、ベータと組み合わせた際の、5kbラムダ単位複製配列を生じる能力について試験された。すべての場合で、ベータ対アルファタンパク質濃度比は4:1であった。反応およびサイクル条件は下記の通り設定された:

【0198】
反応混合物は、40秒または70秒のどちらかの伸長時間でサイクルされた。図7に見られる通り、合成アルファ/ベータおよび変異合成アルファ/ベータの組み合わせの両方が、完全な5kb単位複製配列を伸長時間70秒で生じた。しかし、変異合成アルファ/ベータの組み合わせだけが、5kb単位複製配列を伸長時間40秒で生じた。
【0199】
本明細書でのすべての引用は全体が参照により本開示に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は、グラム陰性細菌由来のさまざまなDNAポリメラーゼIIIアルファサブユニット(DnaE)について内部βサブユニット−結合部位配列の整列を示す。DnaEのカルボキシ末端に位置する第二のβ−結合部位配列(β/τ−結合部位)は示されていない。
【図2】図2は、ここで記載の通り、大腸菌(E.coli)およびTthにおけるへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合領域およびOB折りたたみ領域、およびベータ−結合部位との関係を示す。
【図3】図3は、Tmaにおけるへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合領域およびOB折りたたみ領域、およびベータ−結合領域との関係を示す。
【図4】図4は、本発明に記載の修飾Tthアルファサブユニットのアミノ酸配列に対して、Tthアルファサブユニットの野生型C−末端アミノ酸配列を比較する。
【図5】図5は、DNA増幅における修飾Pol IIIレプリカーゼおよびPol IIIレプリカーゼについての結果比較を示す。修飾Pol IIIレプリカーゼは合成トリプル変異体αと呼ばれる。
【図6】図6は、DNA増幅における修飾Pol IIIレプリカーゼおよびPol IIIレプリカーゼについての結果比較を示す。修飾Pol IIIレプリカーゼは合成トリプル変異体αと呼ばれる。
【図7】図7は、DNA増幅における修飾Pol IIIレプリカーゼおよびPol IIIレプリカーゼについての結果比較を示す。修飾Pol IIIレプリカーゼは変異体αと呼ばれる。
【図8】図8は、DNA増幅においてPol IIIレプリカーゼと比較した、修飾Pol IIIレプリカーゼを用いて得られる合成持続性および産物収量の改善を示す。
【図9】図9は、DNA増幅においてPol IIIレプリカーゼと比較した、修飾Pol IIIレプリカーゼを用いて得られる熱安定性の改善を示す。
【図10】図10は、DNA増幅においてPol IIIレプリカーゼと比較した、修飾Pol IIIレプリカーゼを用いて得られる熱安定性の改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陽性細菌由来のpolCにコードされるαサブユニットの内部β−結合部位配列中に一つ以上の変異を含む修飾αサブユニット。
【請求項2】
polCにコードされるαサブユニットのカルボキシ末端β−結合部位中に一つ以上の変異をさらに含む、請求項1に記載の修飾αサブユニット。
【請求項3】
第一の成分を含み、前記第一の成分が修飾αサブユニットを含む、修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項4】
修飾αサブユニットが修飾dnaEにコードされるαサブユニットである、請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項5】
修飾dnaEにコードされるαサブユニットがサーマス(Thermus)またはアクイフェックス(Aquifex)属に由来する、請求項4に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項6】
修飾dnaEにコードされるαサブユニットが、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)種に由来する、請求項5に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項7】
修飾αサブユニットが修飾polCにコードされるαサブユニットである、請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項8】
修飾polCにコードされるαサブユニットが、サーモトガ(Thermotoga)、ハイドロゲノバクター(Hydrogenobacter)またはカルボキシドサーマス(Carboxydothermus)属に由来する、請求項7に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項9】
修飾polCにコードされるαサブユニットが、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、またはカルボキシドサーマス・ハイドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)種に由来する、請求項8に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼ。
【請求項10】
核酸分子を複複製反応混合物中での複製反応に供することを含み、その複製反応混合物は請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼを含み、前記核酸分子が前記複製反応において前記複製反応混合物中で前記修飾DNA Pol III レプリカーゼによって複製される、核酸分子を複製するための方法。
【請求項11】
請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼを含む核酸複製反応混合物。
【請求項12】
請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼを含む、核酸複製に有用な核酸複製キット。
【請求項13】
請求項3に記載の修飾DNA Pol IIIレプリカーゼを含む核酸複製反応チューブ。
【請求項14】
(i)テンプレートDNA分子、(ii)随意的に、前記テンプレートDNA分子とハイブリダイズ可能なプライマー、(III)請求項3に記載の修飾Pol III レプリカーゼ、および(iv)前記修飾Pol IIIレプリカーゼを用いる複製反応の産物である、前記テンプレートDNA分子の少なくとも一つの完全コピー、を含む核酸複製反応混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−535497(P2008−535497A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505653(P2008−505653)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/013493
【国際公開番号】WO2006/108179
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(307036096)キアゲン ノース アメリカン ホールディングス, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】