修飾リボヌクレアーゼ
本発明は概して、ヒトリボヌクレアーゼと水溶性ポリマーとの複合物、複合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。特に、本発明は、ヒトリボヌクレアーゼおよび1つまたは複数の水溶性ポリマー組成物の複合物(例えば、血清中半減期および薬物動態プロファイル、インビボでの生物活性、安定性を増加させるための、および/またはインビボでそのタンパク質に対する宿主免疫応答を低下させるための)、ならびに疾患(例えば、癌)の治療、処置、および/または予防における複合物の使用方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として参照により本明細書に組み入れられている、2006年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/816,179号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)と水溶性ポリマーとの複合物、複合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。特に、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)と1つまたは複数の水溶性ポリマー組成物との複合物(例えば、血清中半減期および薬物動態プロファイル、インビボでの生物活性、安定性を増加させるための、および/またはインビボでそのタンパク質に対する宿主免疫応答を低下させるための)、ならびに疾患(例えば、癌)の治療、処置、および/または予防における複合物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「癌」は一般的に、身体の隣接組織または他の部分へ広がることができる、制御されない異常な細胞増殖により引き起こされる100を超える疾患の一つを指す。癌細胞は、中で癌細胞が一塊になっている固形腫瘍を形成するか、または白血病におけるように、分散した細胞として存在することができる。正常細胞は通常、成熟に達するまで、およびその後、損傷したかまたは死んだ細胞と置き換わるために必要に応じてのみ分裂する。癌細胞は、それらが際限なく分裂し、ついには隣接細胞を押しのけて身体の他の部分へ広がるため、「悪性」と呼ばれることが多い。一つの器官から別の器官へ、または身体の一つの部分から別の部分へ広がる癌細胞の傾向によって、過剰増殖するが身体の他の器官または部分へは広がらない良性腫瘍細胞からそれらは区別される。悪性癌細胞は、最終的に、血流またはリンパ系を介して、転移し、身体の他の部分へ広がり、そこで、増加して新しい腫瘍を形成することができる。この種の腫瘍進行が、癌を死に至る病とさせている。癌の診断および処置に大きな進歩があったとはいえ、多くの人々が毎年癌で死亡しており、典型的には、その死は従来の治療に抵抗性である転移および癌によるものである。
【0004】
大抵の薬物による癌治療は、分裂している細胞に対して選択性の化学療法剤(例えば、細胞毒性剤)に依存する。しかしながら、特定の癌は、既存の化学療法剤に応答しない。従って、医学界内と一般人の間の両方で、癌処置のための新規な化学療法剤の開発が非常に必要とされ、望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、薬物動態学、薬物動力学、および/または免疫原性の低減に関する臨床的性質を向上させるための、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ(hRNアーゼ))の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションに関する。好ましい態様において、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))へのコンジュゲーションに関する。本発明は、利用されるhRNアーゼの型によって制限されない。実際、本発明の組成物および方法に任意のhRNアーゼを用いることができる。任意のhRNアーゼには、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、hRNアーゼ8)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0006】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解(ribonucleolytic)活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながらインビボで循環半減期を増加させるためのhRNアーゼのポリマーコンジュゲーションを提供する。従って、そのように修飾されたhRNアーゼは、癌を処置する(例えば、治療的または予防的に)ために用いることが可能である(例えば、非修飾hRNアーゼより低下した投薬量、および/または少ない頻度の投薬で)。
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながらインビボで循環半減期を増加させるための、ウシリボヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼA)のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼAは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するタンパク質の領域において水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。いくつかの好ましい態様において、リボヌクレアーゼAは、RIからの回避に関与しないタンパク質の領域(例えば、リボヌクレアーゼAのRIへの結合に影響を及ぼさない領域)において水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。このように、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの態様において、水溶性ポリマーのリボヌクレアーゼAへのコンジュゲーションは、たとえそのコンジュゲーションがリボヌクレアーゼがRIを回避するのを助けるものではないにしても、生物活性(例えば、癌細胞を死滅させること)を有する。
【0008】
生物活性(例えば、リボ核酸分解活性および/または癌細胞を死滅させる潜在能力)を保持しながら循環半減期を増加させることに加えて、ポリマーコンジュゲーションにより得られる他の利点には、抗体結合の減少、有効性(例えば、癌細胞の死滅または増殖阻止について)の増加、免疫原性の減少、および循環器系表面への結合の低下が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0009】
いくつかの態様において、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されるように、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)にコンジュゲートした水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))を提供する。いくつかの態様において、非コンジュゲート型hRNアーゼと比較して、水溶性ポリマーへのコンジュゲーション後、RNアーゼ活性の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれ以上が保持される。いくつかの態様において、hRNアーゼは、水溶性ポリマーへのコンジュゲーション後、多かれ(例えば、97%より多く)少なかれ(例えば、1%未満)、リボ核酸分解活性を保持し得る。いくつかの態様において、本発明の複合物は、少なくとも1つの所望の性質(例えば、複合物の非存在下での処置と比較した、癌細胞を死滅させる(例えば、リボ核酸分解活性があろうがなかろうが)能力)を保持する。
【0010】
本発明は、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)複合物の投与の経路または型によって制限されない。実際、様々な投与経路が有用であると考えられ、点眼、経口、経皮的および/または局所的、経鼻、肺へ(例えば、吸入器によって)、粘膜(例えば、膣または鼻の粘膜)、直腸、耳経由で、注射による(例えば、静脈内に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内に、腫瘍へ直接など)などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、1つまたは複数の他の化学療法剤(例えば、抗癌剤)が、本発明のhRNアーゼ複合物(例えば、PEG-hRNアーゼ複合物)と共投与される。本発明は、共投与される化学療法剤の型に限定されない。実際、様々な化学療法剤が、本発明の組成物との共投与に有用であると考えられ、化学物質、ペプチド、タンパク質、およびリポペプチド(例えば、宿主において癌細胞に接触すると、様々な技術(例えば、アポトーシスを誘導する)のいずれかによって、宿主細胞もしくは組織を損傷することなく、または有害な宿主応答を誘発することなく、その細胞を死滅させることができる)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0011】
本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)がコンジュゲートしている水溶性ポリマーの型によって制限されない。例えば、水溶性ポリマーには、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシエチル化ポリオール、およびポリ(ビニルアルコール)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。ポリ(アルキレンオキシド)には、PEG、ポロキサマー、およびポロキサミンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明は、利用されるコンジュゲーション(例えば、hRNアーゼ分子を1つまたは複数の水溶性ポリマー(例えば、PEG)に接続するための)の型によって制限されない。いくつかの態様において、ポリ(アルキレンオキシド)は、アミド結合(例えば、ポリ(アルキレンオキシド)の活性エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)から形成される)を介して遊離アミノ基にコンジュゲートしている。いくつかの態様において、エステル結合は、コンジュゲーション後、複合物に残存する。いくつかの態様において、結合は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)分子に存在するリシン残基を通じて生じる。いくつかの態様において、コンジュゲーションは、短時間作用型の、分解性結合を通じて生じる。本発明は、利用される分解性結合の型によって制限されない。実際、様々な結合が本発明に有用であると考えられ、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、およびケタール結合を含む生理学的に開裂可能な結合が挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、hRNアーゼは、米国特許第4,424,311号;同第5,672,662号;同第6,515,100号;同第6,664,331号;同第6,737,505号;同第6,894,025号;同第6,864,350号;同第6,864,327号;同第6,610,281号;同第6,541,543号;同第6,515,100号;同第6,448,369号;同第6,437,025号;同第6,432,397号;同第6,362,276号;同第6,362,254号;同第6,348,558号;同第6,214,966号;同第5,990,237号;同第5,932,462号;同第5,900,461号;同第5,739,208号;同第5,446,090号、および同第6,828,401号;ならびにWO 02/02630およびWO 03/031581に記載された方法、試薬、および/または結合のいずれかを利用してPEGにコンジュゲートしており、それらの特許出願のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。いくつかの態様において、本発明の複合物は、第三者(例えば、NEKTAR, San Carlos, CA)により作製される。いくつかの態様において、複合物は、ポリマーとリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)との間の結合に存在する開裂可能な結合を含む(例えば、開裂した時に、ポリマーまたは結合の一部たりともhRNアーゼ分子上に残存しないように)。いくつかの態様において、複合物は、ポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含む(例えば、開裂した時に、ポリマーまたは結合のほんの一部がhRNアーゼ分子上に残存するように)。いくつかの態様において、PEG-リボヌクレアーゼ複合物は、コンジュゲーション後精製される。本発明は、利用される精製過程の型によって制限されない。実際、様々な過程を利用することができ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および当技術分野において周知の他の方法が挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明は、利用されるPEG分子の型によって制限されない。実際、様々なPEG分子が、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)分子へのコンジュゲーションに有用であると考えられ、限定されるわけではないが、直鎖状もしくは直鎖型(straight chained)PEG、または分枝型PEGを含み、約1kDa〜約500kDaの分子量を有してよいが(例えば、いくつかの態様において、10〜50kDaである)、hRNアーゼ分子にコンジュゲートしたPEG分子は、より大きくても(例えば、500kDaより大きい)、より小さくても(例えば、1kDa未満)よい。
【0012】
本発明はまた、本発明のリボヌクレアーゼ複合物(例えば、PEG-hRNアーゼ複合物)を含む組成物(薬学的調製物)(例えば、薬学的に許容される担体を含む)の有効量を被験体に投与することによる、被験体(例えば、哺乳動物)での癌の予防的または治療的な処置方法を提供する。本発明は、処置される癌の型によって制限されない。実際、様々な癌が、本発明のリボ核酸分解性複合物により処置可能である(例えば、死滅させられるか、または増殖阻害される)と考えられ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、癌腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体(例えば、非天然のhRNアーゼ)にコンジュゲートしたポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物であって、複合物が分解性結合(例えば、エステル結合)を含み、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体の核酸分解活性の少なくとも一部が保持される、組成物を提供する。いくつかの態様において、分解性結合を通じてポリエチレングリコールにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より長いインビボ半減期を有する(例えば、hRNアーゼ-PEG複合物とリボヌクレアーゼインヒビター(RI)との間の親和性の減少により)。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、RNAを分解する能力がある(例えば、リボヌクレアーゼの酵素活性によって)。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体をポリエチレングリコールへコンジュゲートすることにより、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体について達成できる濃度よりもhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体のより高い血清中濃度が可能になる。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、組換えhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体である。いくつかの態様において、hRNアーゼは、天然由来である。いくつかの態様において、組換えhRNアーゼは末端システインを有する。本発明は、hRNアーゼ分子に付着した水溶性ポリマー(例えば、PEG)の数によって制限されない。いくつかの態様において、単一の水溶性ポリマーがhRNアーゼ分子に付着している。いくつかの態様において、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上の水溶性ポリマー(例えば、PEG)がhRNアーゼ分子に付着している。いくつかの態様において、複合物は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体の分子あたり1個〜約4個のポリマー分子を含む。いくつかの態様において、PEG-hRNアーゼ複合物またはPEG-hRNアーゼ類似体複合物は、コンジュゲーションの度合いが混在している(例えば、集団のhRNアーゼメンバーにコンジュゲートした様々な数の水溶性ポリマーを有するPEG-hRNアーゼ複合物の集団)。いくつかの態様において、PEG-hRNアーゼ複合物またはPEG-hRNアーゼ類似体複合物は、分画された複合物である(例えば、hRNアーゼ分子の大部分(例えば、50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い;またはそれ以上)が、同数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上)の水溶性ポリマーを有する、PEG-hRNアーゼ複合物の集団)。いくつかの態様において、1個、2個、3個、またはそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子(例えば、hRNアーゼ)の数によって制限されない。実際、2個、3個、4個、5個、6個、またはさらに多くのリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のオリゴマーが含まれるがそれに限定されるわけではない、様々なオリゴマーが1つまたは複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしてもよい。
【0014】
いくつかの態様において、本発明は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されている、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体にコンジュゲートしたポリエチレングリコール(PEG)、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物(例えば、癌の処置用)を提供する。いくつかの態様において、複合物は、分解性結合(例えば、エステル結合)を含む。いくつかの態様において、ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より免疫原性が低い。いくつかの態様において、ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より高い半減期および血清中濃度を有する(例えば、hRNアーゼ-PEG複合物とリボヌクレアーゼインヒビター(RI)との間の親和性の減少により)。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、複数の複合物を含み、必ずではないが好ましくは、それぞれがhRNアーゼに共有結合的に付着した1〜3個の水溶性ポリマーを有する組成物を提供する。そこでは各水溶性ポリマーは、好ましくは、5,000ダルトンより大きく約100,000ダルトンまでの範囲の公称平均分子量を有する。いくつかの態様において、複合物の水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)である。いくつかの態様において、水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)である。いくつかの態様において、本発明は、単一の水溶性ポリマー(例えば、モノPEG化されている)を含んだ複数のhRNアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複数のhRNアーゼは、hRNアーゼのモノマー、ダイマー、トリマー、および/またはより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0016】
いくつかの態様において、本発明は、ポリマーに共有結合的に付着したhRNアーゼを含む複数の複合物を生じるのに十分な条件下で、1つまたは複数の活性化された水溶性ポリマーをhRNアーゼに接触させる段階を含む、ポリマー複合物を調製するための方法を提供する。例えば、いくつかの態様において、本発明は、コンジュゲーション条件下でhRNアーゼをポリマー試薬と接触させる段階を含む、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物を調製するための方法を提供する。本発明は、hRNアーゼを水溶性ポリマーにコンジュゲートするために利用される方法によって制限されない。実際、還元的アミノ化を含む様々な化学作用を用いてもよいが、それに限定されるわけではない。
【0017】
同様に、本発明は、コンジュゲーションに用いられるポリマーの型によって制限されない。実際、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)、およびそれらの組み合わせを含む様々なポリマーを用いてもよいが、それに限定されるわけではない。しかしながら、ポリ(エチレングリコール)誘導体などのポリ(アルキレンオキシド)が本発明においてポリマーとして用いられることが、特に好ましい。いくつかの態様において、本発明の複合物を作製するために、活性化された水溶性ポリマーとhRNアーゼを接触させる。水溶性ポリマーの活性化は、得られるポリマーが、pH、温度などの適切な条件下でhRNアーゼがポリマーに共有結合的に付着するように共有結合を形成する限り、任意の技術分野で公知の方法によって達成され得る(例えば、活性化された水溶性ポリマーをhRNアーゼに接触させる段階は、活性化された水溶性ポリマーがhRNアーゼの所望の位置に共有結合的な付着を形成するのに十分な条件下で実行することができる)。
【0018】
定義
本明細書に用いられる場合、「被験体」という用語は、本発明の方法または組成物により処置されるべき個体(例えば、ヒト、動物、または他の生物体)を指す。被験体には、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、最も好ましくは、ヒトが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明の関連において、「被験体」という用語は、一般的に、癌の処置を受けるであろう、または癌の処置を受けている個体を指す。本明細書に用いられる場合、「被験体」および「患者」という用語は、特に断りのない限り交換可能に用いられる。
【0019】
本明細書に用いられる場合、「診断される」という用語は、疾患(例えば、癌)の、その徴候および症状(例えば、従来の治療に対する抵抗性)、または遺伝学的分析、病理学的分析、組織学的分析などによる認識を指す。
【0020】
本明細書に用いられる場合、「インビトロ」という用語は、人工的環境、および人工的環境内で起こる過程または反応を指す。インビトロ環境には、試験管および細胞培養が挙げられるが、それに限定されるわけではない。「インビボ」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で起こる過程または反応を指す。
【0021】
本明細書に用いられる場合、「有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果(例えば、癌細胞の死滅または増殖阻害)をもたらすのに十分な組成物(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1)を含む組成物)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与、適用、または投薬で投与することができ、特定の処方または投与経路に限定されることを意図されない。
【0022】
本明細書に用いられる場合、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ(例えば、生分解性結合を含むhRNアーゼ-PEG複合物)、薬学的組成物、もしくは他の薬剤、または生理学的システム(例えば、被験体、またはインビボ、インビトロ、もしくはエクスビボの細胞、組織、および器官)へ治療的処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為を指す。ヒト身体への例示的な投与経路は、眼(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、粘膜(例えば、口腔粘膜または頬)、直腸、耳、注射による(例えば、静脈内に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内になど)などを通じてであり得る。
【0023】
本明細書に用いられる場合、「共投与」という用語は、被験体に対して、少なくとも2つの作用物質を投与することまたは治療を施すことを指す。いくつかの態様において、2つもしくはそれ以上の作用物質または治療の共投与は同時である。他の態様において、第一作用物質/治療は、第二作用物質/治療の前に投与される。当業者は、用いられる様々な作用物質または治療の処方および/または投与経路を変えてもよいことを理解している。共投与の適切な投薬量については、当業者が容易に決定することができる。いくつかの態様において、作用物質または治療を共投与する場合、それぞれの作用物質または治療は、それらの単独での投与に適切であるものより低い投薬量で投与される。従って、作用物質もしくは治療の共投与が、有害(例えば、毒性)である可能性のある作用物質の必要投薬量を低下させる態様において、または処置の標的(例えば、癌細胞)が、1つもしくは複数の作用物質の単独投与での処置に対して感受性がより低く(例えば、抵抗性に)なってきている(例えば、1つもしくは複数の他の作用物質と組み合わせると、そのような処置の標的が感受性の増加を示す(例えば、非抵抗性である))場合、共投与は特に望ましい。
【0024】
本明細書に用いられる場合、「毒性」という用語は、その毒物の投与前の同じ細胞または組織と比較した、被験体、細胞、または組織への任意の損傷効果または有害効果を指す。
【0025】
「結合」または「リンカー」という用語は、ポリマーセグメントおよびhRNアーゼの末端、またはhRNアーゼの求電子基もしくは求核基などの相互接続部分を連結するために任意で用いられる原子、または原子の一群を指すために本明細書で用いられる。本発明のリンカーは、加水分解に安定であってもよく、または分解性(例えば、生理学的加水分解性、または酵素分解性)結合を含んでもよい。
【0026】
本明細書に用いられる場合、「分解性結合」という用語は、ポリマー(例えば、本発明のPEG-hRNアーゼ複合物)に関して用いられる場合、生理学的に開裂可能な結合(例えば、加水分解され得る(例えば、インビボで)、または他の方法で逆戻りできる(例えば、酵素的開裂によって)結合)を含む複合物を指す。そのような生理学的に開裂可能な結合には、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、およびケタール結合が挙げられるが、それに限定されるわけではない(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,838,076号参照)。同様に、複合物は、ポリマーとhRNアーゼとの間の結合に存在する開裂可能な結合を含んでもよいか、またはポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含んでもよい(例えば、開裂した時に、ポリマーのほんの一部がhRNアーゼ分子上に残存するように)(例えば、米国特許出願第20050158273号および第20050181449号参照、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられている)。例えば、エステル結合を含むPEGポリマーは、PEG-hRNアーゼ複合物を生成するためのhRNアーゼへのコンジュゲーションに利用することができる(例えば、Kuzlowski et al., Biodrugs, 15, 419-429 (2001)参照)。本発明の分解性結合を含む複合物は、ポリマーが取り除かれている(例えば、完全に、または部分的に取り除かれている)hRNアーゼを生じる(例えば、インビボで結合の加水分解後)能力がある。
【0027】
「生理学的に開裂可能な」または「加水分解性」または「分解性」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解する)結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2つの中心原子を接続する結合の一般的な型にだけでなく、これらの中心原子に付着した置換基にも依存すると考えられる。適当な加水分解に不安定かまたは弱い結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0028】
「酵素分解性結合」とは、1つまたは複数の酵素による分解を受けやすい結合を意味する。
【0029】
「加水分解に安定な」結合(linkage)または結合(bond)は、水中で実質的に安定である(すなわち、生理学的条件下で任意のかなりの程度まで長時間に渡って加水分解を受けない)化学結合(例えば、典型的には、共有結合)を指す。加水分解に安定な結合の例には、炭素-炭素結合(例えば、脂肪鎖における)、エーテル、アミド、ウレタンなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0030】
本明細書に用いられる場合、「関心対象部位」という用語は、リボヌクレアーゼに関して用いられる場合、修飾されるか、または修飾(例えば、リボヌクレアーゼ変種を創造するための欠失、置換、もしくは他の型の突然変異のための、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーションのための)の標的にされるリボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)内の領域、小領域、および/またはアミノ酸残基を指す。従って、「関心対象部位」は、その修飾(例えば、リボヌクレアーゼ変種を創造するための欠失、置換、もしくは他の型の突然変異について、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーションについて)後にリボヌクレアーゼ内に保持されることが望まれる、本明細書に記載されたリボヌクレアーゼの特性(例えば、生物活性(例えば、リボ核酸分解活性、癌細胞を死滅させる活性、オリゴマー形成能力など))に基づいて、「高い関心対象部位」、「中程度の関心対象部位」、または「低い関心対象部位」と特徴付けられてもよい。例えば、対象となり得る部位は、図1に描かれている。リボヌクレアーゼ内の残基の修飾における関心のレベルは、以下の記号を用いて示されている:低い関心対象部位(「−」)、中程度の関心対象部位(「0」)、および高い関心対象部位(「+」)。さらに、二次構造が示されている:「a」または「a#」=αヘリックス;「b」または「b#」=βシート。基質RNAに結合するリボヌクレアーゼの部位もまた標識されている:「B1」および「B2」=基質(塩基)結合部位、「P1」=主要な活性部位、ならびに「P2」および「P-1」=基質(リン酸)結合部位。ジスルフィド結合に関与するシステイン残基は、「disulf」により標識されている。リボヌクレアーゼインヒビターに対する、同定されている接触点は、「RI」で標識されている。アンジオゲニンについて、推定の受容体結合部位は、「Rec」と標識されている。
【0031】
本明細書に用いられる場合、「薬学的組成物」という用語は、組成物をインビトロ、インビボ、もしくはエクスビボでの診断的または治療的な使用に特に適するものにさせる、不活性または活性な担体との活性作用物質の組み合わせ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1))を指す。
【0032】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、被験体に投与された場合、有害反応(例えば、毒性反応、アレルギー性反応、または免疫学的反応)を実質的に生じない組成物を指す。
【0033】
本明細書に用いられる場合、「局所的に」という用語は、本発明の組成物の、皮膚表面ならびに粘膜細胞および粘膜組織(例えば、歯槽粘膜、頬粘膜、舌粘膜、咀嚼粘膜、膣粘膜、または鼻粘膜、ならびに空洞器官または体腔を裏打ちする他の組織および細胞)への適用を指す。
【0034】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的な薬学的担体のいずれかを指し、リン酸緩衝食塩水、水、乳濁液(例えば、油/水または水/油乳濁液など)、および様々な型の湿潤剤、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、ラウリル硫酸ナトリウム、等張性吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。組成物はまた、安定剤および保存剤を含んでもよい。担体、安定剤、および補助剤の例は、当技術分野において記載されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, Pa. (1975)参照)。
【0035】
本明細書に用いられる場合、「非ヒト動物」という用語は、すべての非ヒト動物を指し、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、トリなどの脊椎動物が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0036】
本明細書に用いられる場合、「キット」という用語は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。反応材料(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1))を含む組成物)に関連して、そのような送達システムは、一つの場所から別の場所への反応試薬および/またはサポート材料(例えば、材料を用いるための書面の使用説明書など)の貯蔵、輸送、または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連した反応試薬および/またはサポート材料を含む1つまたは複数の閉鎖容器(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる場合、「細分化された(fragmented)キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素のサブポーション(subportion)を含む2つまたはそれ以上の別々の容器を含む送達システムを指す。容器は、意図されたレシピエントへ一緒にまたは別々に送達されてもよい。例えば、第一の容器は、特定用途のための、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1)を含む組成物を含むことができ、一方、第二の容器は第二の薬剤(例えば、第二の化学療法剤)を含む。実際、それぞれが全キット構成要素のサブポーションを含む2つまたはそれ以上の別々の容器を含む任意の送達システムが、「細分化されたキット」という用語に含まれる。対照的に、「複合キット」は、特定用途に必要とされる反応材料の構成要素の全部を単一の容器に(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一の箱に)含む送達システムを指す。「キット」という用語は、細分化されたキットおよび複合キットの両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ヒト膵臓リボヌクレアーゼにおけるアミノ酸残基、加えて低い関心対象部位(−)、中程度の関心対象部位(0)、または高い関心対象部位(+)として描かれた、そこに位置する、修飾されるかまたは修飾の標的となる部位(「関心対象部位」)を示す。
【図2】N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)直鎖状30kDa mPEGとコンジュゲートしたRNアーゼAの4つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼA;(2)RNアーゼ:PEG(1:1)反応;(3)RNアーゼ:PEG(1:3)反応;および(4)RNアーゼ:PEG(1:10)反応。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図3】アルデヒド直鎖状30kDa mPEGとコンジュゲートしたRNアーゼの4つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼA;(2)RNアーゼ:PEG(1:2)反応;(3)RNアーゼ:PEG(1:4)反応;および(4)RNアーゼ:PEG(1:8)反応。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図4】PEGの存在について試験された陽イオン交換カラムからの画分を示す。
【図5】2つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼAおよび(2)部分的に精製されたRNアーゼ:PEG(1:4)。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図6】以下のRNアーゼ1複合物のSDS PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼ1;(2)野生型RNアーゼ1;(3)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH5;(4)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH5;(5)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH5;(6)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH6;(7)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH6;(8)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH6;(9)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH7;(10)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH7;(11)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH7。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図7】実施例4の直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ1の精製手順の第一段階(陰イオン交換)の試料のSDS-PAGEを示す:(1)陰イオン交換カラム上に負荷された試料;(2)陰イオン交換カラムからの通過流;(3)陰イオン交換カラムから溶出された物質。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図8】実施例4の直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ複合物の精製手順の第二段階(陽イオン交換クロマトグラフィー)からの試料のSDS-PAGEを示す:(1)陽イオン交換カラム上に負荷された試料;(2〜17)陽イオン交換カラムからの画分。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図9】複合物の精製が完了した後のSDS-PAGEを示す:(1)最終精製生成物(ブチルアルデヒド直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ複合物)。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図10】RNアーゼ1-アルデヒド30kDa PEG複合物およびRNアーゼ1-アルデヒド40kDa PEG複合物の両方の酵素活性を示す。
【図11】癌の異種移植片モデルにおける、シスプラチンに対する直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ1複合物の有効性、および被験体体重の変化により反映される作用物質の毒性を示す。
【図12】癌の異種移植片モデルにおける、シスプラチンに対する分枝型40kDa PEG:RNアーゼ1複合物の有効性、および被験体体重の変化により反映される作用物質の毒性を示す。
【図13】癌の異種移植片モデルにおける、ドキソルビシンに対する分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
哺乳動物細胞において、ウシRNアーゼAおよびヒトリボヌクレアーゼ1(hRNアーゼ1)などの膵臓型リボヌクレアーゼは、RNAのリボヌクレオチドへの分解を触媒する分泌型酵素である。それらの活性は、遍在性のサイトゾルタンパク質であるリボヌクレアーゼインヒビター(RI)に結合することにより阻害される。RIは、内因性の膵臓型RNアーゼに高親和性で結合し、それらの活性を中和し、それにより細胞(例えば、正常細胞または癌細胞)に対して無毒性にする。RNアーゼ活性が阻害される場合、細胞のRNAは損傷を受けず、細胞は生存可能なままである。正常細胞において、リボヌクレアーゼ活性は堅固に制御されるが、リボヌクレアーゼ活性が制御されない場合には、リボヌクレアーゼ活性は細胞のRNAを破壊し、細胞の死または死滅に至る。
【0039】
リボヌクレアーゼを、ヒト細胞、特に癌細胞に対して毒性にするためにいくつかのアプローチが用いられている。第一のアプローチは、ヒトに対して進化的に遠く、かつヒトRIタンパク質によって阻害されないリボヌクレアーゼについて選択した。例えば、カエル(ヒョウガエル(Rana pipiens))リボヌクレアーゼは、ヒト細胞に置かれた場合、ヒトRIによる有意な阻害を示さず、それにより活性を保ち(例えば、RNAを分解し)、細胞死へと導く。
【0040】
第二のアプローチは、組換えDNAテクノロジーを利用して、高レベルのリボ核酸分解活性を示す(例えば、それらはヒトRIによって有意には阻害されないという理由で)、哺乳動物リボヌクレアーゼ突然変異体を作製する。これらの突然変異型酵素は、酵素がRIとの会合および結合を回避するかまたは他の生物活性(例えば、癌細胞を死滅させる能力)を有するため、癌細胞内で高レベルのリボ核酸分解活性を供給する。この制御されていない活性は、特に、癌細胞に対して致死性であり得る。この突然変異アプローチは、哺乳動物タンパク質のウシRNアーゼAおよびヒトRNアーゼ1で実証されており、米国特許第5,389,537号および同第6,280,991号に記載され、それらの特許の開示は全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0041】
哺乳動物(例えば、ヒト)の膵臓リボヌクレアーゼは、約14kDaの分子量を有する低分子タンパク質である。これらのタンパク質は、腎臓を介して非常に迅速に排出される。従って、それらの有効性(例えば、それらのリボ核酸分解活性)および安全性プロファイルを授ける特徴に有意には影響を及ぼすことなく、リボヌクレアーゼの薬物動態プロファイルを向上させることが望ましい。この目的を達成するために、機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなくかつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、ヒトリボヌクレアーゼの水溶性ポリマーへのコンジュゲーションは、いくつかの態様において、そのタンパク質の酵素活性を安定化することによるかまたは他の機構によりリボヌクレアーゼがRIから回避することで、リボヌクレアーゼの有効性および薬物動態(例えば、内部移行、持続的な酵素活性、細胞分解の能力など)を向上させる。
【0042】
本発明は、これらのタンパク質の酵素活性の損失または他の所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させる能力および/またはオリゴマー形成能力)の喪失がなく、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1))を修飾する方法、およびそのような修飾リボヌクレアーゼを含む組成物を提供する(例えば、実施例1〜7参照)。従って、いくつかの態様において、本発明は、非修飾hRNアーゼと比較して、インビボで細胞(例えば、癌細胞)への毒性がより強い修飾リボヌクレアーゼ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体)を提供する。いくつかの態様において、修飾リボヌクレアーゼは、非癌性細胞と比較して癌性細胞への毒性がより強く、特定の腫瘍を標的にすることが可能である。いくつかの態様において、修飾リボヌクレアーゼは、ほとんど副作用を示さず、ヒト免疫応答を刺激しないかまたは非修飾hRNアーゼより免疫応答への刺激は少ない(例えば、実施例6および7参照)。従って、本発明は、リボ核酸分解活性の検出可能な量(例えば、1%より多い;5%より多い;10%より多い;20%より多い;30%より多い;40%より多い;50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い)を維持しながら(例えば、それにより細胞(例えば、癌細胞)特異的毒性または腫瘍増殖阻害活性をもたらす)、低免疫原性および低副作用を示す、野生型または突然変異型のリボヌクレアーゼに由来する修飾リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ(例えば、水溶性ポリマー複合物))を提供する(例えば、実施例6および7参照)。
【0043】
「ヒトリボヌクレアーゼ」、「hRNアーゼ」という用語および機能的同義語は、野生型ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、hRNアーゼ8))、ならびに任意のhRNアーゼ突然変異体もしくは変種、任意の組換え酵素もしくは関連酵素、またはインビボおよびインビトロでリボ核酸分解活性もしくは他の所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させること、RNAを分解する能力)を保持する、hRNアーゼの任意の合成バージョンまたは断片を含む。変種は、そのタンパク質の翻訳後プロセシングにより(例えば、生産株に存在する酵素によるかもしくは製造過程の任意の段階で導入される酵素もしくは試薬によって)、または構造遺伝子の突然変異により、作製してもよい。突然変異には、部位欠失、挿入、ドメイン除去、および置換の突然変異を挙げてもよい。
【0044】
「hRNアーゼ類似体」という用語は、野生型ではないhRNアーゼの任意の型を含むと定義される。本発明に企図されるhRNアーゼおよびhRNアーゼ類似体を、組換え技術によって発現させてもよく(例えば、細胞培養物、もしくはマウスなどの高等組換え種から、または別な方法で、哺乳動物細胞宿主、昆虫、細菌、酵母、爬虫類、真菌などに発現させる)、または合成的に構築してもよい。これは、合成ペプチドおよびポリペプチドを含む活性保持している合成的な構築物、またはその酵素活性に関与するhRNアーゼポリペプチドの部分の組換え発現、またはキメラタンパク質を含むより大きなタンパク質もしくはポリペプチドの一部としての組換え発現を含む。
【0045】
従って、hRNアーゼの活性型のみを含む、組換え産生されたかまたは合成的に製造されたhRNアーゼ調製物を用いることができる。均一なhRNアーゼおよび均一で完全に活性なhRNアーゼ(例えば、発現した野生型タンパク質またはその類似体から調製される組成物を含む)の組換え発現は、記載されている(例えば、2005年11月24日に公開された米国特許出願公開第20050261232号参照、その開示は全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
【0046】
いくつかの態様において、本発明は、疾患、特に癌およびウイルス感染を予防、処置、または治療するのにhRNアーゼ類似体を利用する。組成物はまた、診断用の適用(例えば、薬物スクリーニングまたは癌の特徴付けに関連して)および研究適用にも用いられる。いくつかの態様において、hRNアーゼは、それらが送達される細胞に対して毒性であるように操作される(例えば、組換えDNA技術(例えば、hRNアーゼ類似体の遺伝子操作)によって)。従って、いくつかの態様において、hRNアーゼ自体は(例えば、水溶性ポリマーとの共有結合的コンジュゲーションに加えて)、hRNアーゼの天然インヒビターに対して感受性がより低いように、および/または宿主免疫システムを回避するように、操作される。
【0047】
本発明は、本明細書に記載された方法による修飾に利用されるリボヌクレアーゼの型によって制限されない。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはウシリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはカエルリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒトリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼは好酸球由来の神経毒(EDN/RNアーゼ2)である(例えば、Domachowske et al., Nucleic Acids Res 26(23):5327-32 (1998)参照)。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはアンジオゲニンである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒト好酸球カチオン性タンパク質(ECP)である(例えば、Sorrentino and Glitz, FEBS Lett. 288(1-2):23-6 (1991)参照)。
【0048】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながら、インビボでの循環半減期を増加させるためのウシリボヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼA)のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼAは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するそのタンパク質の領域において、水溶性ポリマーへコンジュゲートしている。いくつかの好ましい態様において、リボヌクレアーゼAは、RIからの回避に関与しないそのタンパク質の領域(例えば、リボヌクレアーゼAのRIへの結合に影響を及ぼさない領域)において、水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。RIからの回避に関与しない領域の例には、1位、49位、75位、または113位のアミノ酸残基を含む領域が挙げられるが、それに限定されるわけではない。従って、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの態様において、水溶性ポリマーのリボヌクレアーゼAへのコンジュゲーションは、たとえコンジュゲーションがリボヌクレアーゼがRIを回避するのを助けないとしても、生物活性(例えば、癌細胞を死滅させること)を有する。
【0049】
いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒトリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマーのコンジュゲーションのためにhRNアーゼにおける独自の官能基の組み込みを利用する。例えば、いくつかの態様において、水溶性ポリマーへのコンジュゲーションに遊離チオール基を供給するために、システイン分子をhRNアーゼの中へと操作する(例えば、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させる能力)の損失を伴わずに)。遊離チオール基は、RNアーゼの他の所に見出されず、それにより、均一なコンジュゲーションを生じる能力を提供する。他の態様において、組換えDNA技術を利用して、直交性官能基を有する非天然アミノ酸を、対象となるhRNアーゼへ組み込むために修飾されたコドンまたは新規コドンを供給する(例えば、リボ核酸分解活性の損失を伴わずに)。
【0050】
好ましい態様において、ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)における修飾(例えば、欠失、突然変異、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーション)に望ましい残基は、リボヌクレアーゼの三次構造および/または安定性の崩壊を避けるように選択される。いくつかの態様において、これらの残基は、そのタンパク質の表面上にある(例えば、溶媒(例えば、水または緩衝液)に通常曝された残基)。例えば、いくつかの態様において、修飾される残基の型には、結晶構造において不規則に見えるアミノ酸、リボヌクレアーゼインヒビタータンパク質に接触する残基、および三次構造(例えば、αヘリックスおよびβシート)に関与しないアミノ酸、構造(例えば、αヘリックスおよびβシート)間のループ領域のアミノ酸、加えてそのタンパク質の末端(N末端およびC末端)近くのアミノ酸が挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、追加のアミノ酸残基がN末端またはC末端のいずれか一方に付加される(例えば、RNアーゼ類似体を作製するために、および/または水溶性ポリマーのコンジュゲーションのために)。
【0051】
いくつかの態様において、リボヌクレアーゼは、水溶性ポリマーに付着場所(例えば、アミノ酸の側鎖内の原子へ)を提供するために、例えば、リシン、システイン、および/またはアルギニンなどの1つまたは複数のアミノ酸残基を含むように修飾される。アミノ酸残基を付加するための技術は当業者に周知である(例えば、March, Advanced Organic Chemistry: Reactions Mechanisms and Structure, 4th Ed.(New York: Wiley-Interscience, 1992参照)。
【0052】
本発明は、本明細書に記載されたリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)に施される修飾の型によって制限されない。いくつかの態様において、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)は、デキストラン、糖質、アルブミン、担体タンパク質、および抗体(例えば、リボヌクレアーゼの半減期を延ばすために用いられる非ターゲティング抗体)を含む群より選択される1つまたは複数の部分の付着によって修飾される。
【0053】
いくつかの態様において、その側鎖が溶媒(例えば、緩衝液または水)の手の届きやすい三次構造におけるアミノ酸が、三次構造を妨害することなく修飾される。例えば、βシート内の位置している場所でジスルフィドを形成するシステイン残基(例えば、Cys84)を記載する文献報告によって明らかなように、三次構造内のすべての変化が良くないとは限らない。
【0054】
いくつかの態様において、修飾された場合に、酵素活性および/もしくは基質結合性を破壊するかまたは有意に阻害するhRNアーゼ内のアミノ酸は、修飾の標的にならない。いくつかの態様において、修飾された場合に、酵素活性および/もしくは基質結合性を破壊するかまたは有意に阻害するhRNアーゼ内のアミノ酸が、特異的に修飾の標的になる。
【0055】
ヒト膵臓リボヌクレアーゼについてのアミノ酸残基は図1に提供されている。本発明は、各アミノ酸の修飾の有用性の順位を提供する(例えば、修飾に対する関心によって(例えば、機能性リボヌクレアーゼ(例えば、所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させることおよび/またはリボ核酸分解活性)を含む)をもたらすように)示される)。アミノ酸は以下のとおり図1に標識されている。
・低い関心(−)
・中程度の関心(0)、または
・高い関心(+)。
【0056】
1つまたは複数の修飾部位を用いてもよいことは理解されると考えられる。好ましくは、選択される部位は高い関心対象部位である。しかしながら、1つもしくは複数の中程度の関心対象部位または低い関心対象部位を、意図された適用に望ましくかつ適切に用いることができる。いくつかの態様において、ヒトRNアーゼは、メチオニン(例えば、野生型ヒトRNアーゼの一部ではない)がそのタンパク質の最初のアミノ酸として組み入れられているように、(例えば、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで)作製される(例えば、そのタンパク質(例えば、大腸菌(E. coli)に産生された組換えヒトリボヌクレアーゼ)を産生するために用いられる方法によって)。従って、いくつかの態様において、図1に描かれたアミノ酸残基の番号付けは、1という数値だけずれる場合がある(例えば、メチオニンがそのタンパク質へ組み入れられた場合には、図1に示されたヒトRNアーゼのアミノ酸残基の番号付けは1だけずれる(すなわち、メチオニンは1位に組み入れられているため、図1に描かれたアミノ酸の番号付けは1だけ不足していると考えられ、例えば、残基番号10は1位に組み入れられたメチオニンのために、実際には残基番号11になると考えられる))。同様に、図1に描かれた位置はまた、RNアーゼA(例えば、ウシ)における対応する数値位置に適用してもよい。
【0057】
いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマーにコンジュゲートしているタンパク質を作製するために、S-ペプチドおよびS-タンパク質を生じ得るhRNアーゼの消化を利用する(例えば、Hamachi et al., Bioorg Med Chem Lett 9, 1215-1218 (1999); Goldberg and Baldwin, Proc Natl Acad Sci, 96, 2019-2024 (1999); Asai et al., J Immun Meth, 299, 63-76 (2005); Backer et al., J Cont Release, 89, 499-511 (2003); Backer et al., Bioconj Chem, 15, 1021-1029 (2004)参照)。例えば、サブチリシンによるウシRNアーゼAの消化は、主に、Ala20とSer21の間の切断による2つの断片を生じる。短い方の断片(アミノ酸1〜20位)はS-ペプチドと呼ばれ、長い方の断片(アミノ酸20〜124位)はS-タンパク質と呼ばれる。2つの断片は中性pHで強固に結合し、時としてRNアーゼSまたはRNアーゼS'と呼ばれる。RNアーゼSは活性なリボヌクレアーゼである。S-ペプチド-S-タンパク質相互作用は、アフィニティー精製、および造影剤または薬物を標的にするための三次ドッキング系に用いられている。従って、いくつかの態様において、本発明は、ヒトリボヌクレアーゼのために類似したS-ペプチド-S-タンパク質の生成を提供する。
【0058】
いくつかの態様において、S-ペプチド成分の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションによって、S-タンパク質と組み合わされた際、RNアーゼS酵素内でリボヌクレアーゼの活性が維持されることが企図される。例えば、hRNアーゼ1の最初の20個のアミノ酸内にリシン残基があるが(1位、6位、および7位に)、これらの残基のいずれも、リシン41位における酵素活性にとって重要でないように思われる。従って、いくつかの態様において、S-ペプチド内のリシン分子の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションがS-タンパク質との会合前に起こり、それにより41位のリシンが修飾されない(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしていない)ままであり、それにより酵素活性を保持する水溶性ポリマーへコンジュゲートしたRNアーゼSを生じる。いくつかの態様において、S-タンパク質成分がコンジュゲーションに用いられ、その後、S-ペプチド部分に付加され、RNアーゼS酵素機能を獲得する。
【0059】
本発明は、本明細書に記載されたヒトリボヌクレアーゼへのコンジュゲーションに利用される水溶性ポリマーの型によって制限されない。実際、任意の生体適合性の水溶性ポリマーを用いてもよい。いくつかの態様において、水溶性ポリマーは、非ペプチド性、無毒性、非天然、および/または生体適合性である。水溶性ポリマーは、ポリマーの単独での使用に関係したか、または生体組織に関連して(例えば、患者への投与)別の物質(例えば、hRNアーゼ1などのhRNアーゼにコンジュゲートした)に関係した有益な効果が、例えば医師などの臨床医によって評価されるいかなる有害な効果をも上回る場合には、生体適合性と見なされる。非免疫原性に関して、ポリマーは、インビボでのポリマーの意図された使用が望ましくない免疫応答(例えば、抗体の形成)を生じない場合、または免疫応答が生じ、臨床医の評価としてそのような応答が臨床的に有意もしくは重要であるとは判断されない場合には、非免疫原性と見なされる。従って、いくつかの好ましい態様において、水溶性ポリマーは生体適合性かつ非免疫原性である。
【0060】
本発明の水溶性ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼに付着した場合、ポリマーが生理学的環境などの水性環境で沈殿しないように選択される。いくつかの態様において、ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質へのコンジュゲーションの方法に基づいて選択される。例えば、還元的アルキル化を利用する方法のために選択されるポリマーは、重合の程度が制御できるように単一の反応性アルデヒドを有するべきである。ポリマーは、分枝型または非分枝型でもよい。好ましくは、最終生成物の調製物の治療的使用について、ポリマーは薬学的に許容されるものである。ポリマー/タンパク質複合物が治療的に用いられるかどうかというような考慮、ならびに、もしそうであれば、望ましい投薬量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、および他の考慮に基づいて、当業者は望ましいポリマーを選択することができると考えられる。例えば、これらは、当技術分野において周知の方法を用いて、複合物のリボ核酸分解活性についてインビトロでアッセイすることにより確認することができる。
【0061】
水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)などのポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、および前述のいずれかの組み合わせを含む群より選択してもよいが、それに限定されるわけではない。
【0062】
ポリマーは、直鎖状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)でも分枝型でもよい。さらに、ポリマーは、分岐型(例えば、フォーク型PEG、またはポリオールコアに付着したPEG)、樹状型であってもよく、かつ/または分解性結合を含んでもよい。ポリマーの内部構造は、いくつかの異なるパターン(例えば、限定されるわけではないが、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーを含むパターン)のいずれかに編成できると考えられる。
【0063】
さらに、ポリマーを、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)内の所望の残基に結合するのに適切な、適した活性化基で「活性化」してもよい。「活性化」ポリマーは、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)との反応のための反応基を有するポリマーを指す。本発明で有用である(例えば、水溶性ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために)と考えられる活性化ポリマー、およびそれらのタンパク質へのコンジュゲーションの方法の例は、当技術分野において公知であり、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);およびRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)に詳細に記載されており;それぞれはすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0064】
ポリマーは任意の分子量であってよい。例えば、ポリエチレングリコールについて、好ましい分子量は、約2kDa〜約150kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製において、いくつかの分子が規定された分子量より大きい、いくらか小さいであろうことを示す)。所望の治療的プロファイル(例えば、望まれる徐放の持続期間、生物活性に関してもしあればその効果、取り扱いやすさ、抗原性の程度または欠如、および本発明の治療的組成物(例えば、hRNアーゼタンパク質または類似体を含む)へのポリエチレングリコールの他の公知の効果)に応じて他のサイズを用いてもよい。
【0065】
ポリエチレングリコール(PEG)が水溶性ポリマーとして利用される場合、PEGは、その末端の1つを不活性基でキャッピングされてもよい。例えば、PEG分子は、mPEGとも呼ばれるメトキシ-PEGであってもよい。それは、ポリマーの一方の末端がメトキシ(すなわち、-OCH3)基であり、他方の末端が化学修飾され得る官能基(例えば、ヒドロキシル)で、標的タンパク質(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)上の反応基へのコンジュゲーションに用いられる、PEGの型である。いくつかの態様において、米国特許出願公開第20040235734号に記載されたPEGポリマーが用いられる。
【0066】
いくつかの態様において、PEGポリマーは、1つまたは複数の弱いかまたは分解性の結合を含んでもよい。例えば、PEGポリマーは、エステル結合(例えば、時間が経てば(例えば、患者内に存在する場合)加水分解してもよい)を含んでもよい。いくつかの態様において、分解性結合を含むPEGポリマーの加水分解は、2つまたはそれ以上の断片(例えば、親分子より低い分子量の)を生じる。
【0067】
本発明は、分解性結合の型によって制限されない。実際、PEGポリマーは、炭酸結合;イミン結合;リン酸エステル結合;ヒドラゾン結合;アセタール結合;オルトエステル結合;アミド結合;ウレタン結合;ペプチド結合;およびオリゴヌクレオチド結合を含む様々な分解性結合の1つまたは複数を含むことができるが、それに限定されるわけではない。
【0068】
ポリマー自体の内部に1つまたは複数の分解性結合を含有することによって、本発明の複合物の薬物動態特性を制御する機構を追加することが企図される。例えば、いくつかの態様において、投与される際は複合物の酵素活性は皆無かそれに近いが、結合が分解する(例えば、加水分解する)ような条件に曝された場合に酵素のリボ核酸分解活性が活性化される、本発明のhRNアーゼ-PEG複合物を患者に投与してもよい。従って、いくつかの態様において、PEG分子内の分解性結合を、複合物の特異性および有効性を増加させるのに用いることができる。
【0069】
本発明の複合物がポリマー(例えば、PEG)とヒトリボヌクレアーゼタンパク質との間に結合を含んでもよいことが企図される。いくつかの態様において、結合は安定な結合(例えば、アミド結合、カルバメート結合、アミン結合、チオエーテル/スルフィド結合、またはカルバミド結合)である。いくつかの態様において、結合は、加水分解で分解可能である(例えば、hRNアーゼの放出(例えば、ポリマー(例えば、PEG)の一部もhRNアーゼ上に残存することなく)を可能にするために)。本発明は、利用される分解性結合の型によって制限されない。実際、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシロキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドを含むがそれに限定されるわけではない、様々な結合が本明細書で企図される。これらの結合は、hRNアーゼタンパク質(例えば、C末端カルボキシル基、もしくはアミノ酸側鎖の水酸基で)および/またはポリマーのいずれかの修飾により調製してもよい(例えば、当技術分野における公知の方法を用いて)。
【0070】
水溶性ポリマー(例えば、PEG)のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)タンパク質分子に対する割合は様々であってもよく、反応混合物におけるそれらの濃度も同様である。一般的に、最適な比率(例えば、過剰な未反応タンパク質またはポリマーが皆無かそれに近い場合の反応(例えば、ポリマーが1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の部位にコンジュゲートする)の効率に関して)を決定することができる(例えば、選択されたポリマー(例えば、PEG)の分子量、利用されるコンジュゲーション化学作用、標的にされる関心対象部位の数などを用いて)。例えば、いくつかの態様において、非特異的コンジュゲーション反応(例えば、PEG化反応)を行い、その後で、精製(各hRNアーゼにコンジュゲートしたポリマー(例えば、PEG)の数に基づいてhRNアーゼを分離するために)を行うことができる。
【0071】
いくつかの態様において、複合物は組成物内に存在する。例えば、いくつかの態様において、組成物は複数の複合物を含み、各タンパク質がそのタンパク質に共有結合的に付着した1〜3個の水溶性ポリマーを含む。いくつかの態様において、組成物は複数の複合物を含み、各タンパク質がそのタンパク質に付着した1個、2個、3個、4個。5個、6個、またはそれ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、組成物は複合物集団を含み、複合物の大部分(例えば、65%より多い、70%より多い、75%より多い、80%より多い、85%より多い、90%より多い、95%より多い、97%より多い、98%より多い、99%より多い)が、同数(例えば、1個、2個、3個、またはそれ以上)のポリマー(例えば、PEG分子)に共有結合的に付着している。いくつかの態様において、1個、2個、3個、またはそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子(例えば、hRNアーゼ)の数によって制限されない。実際、2個、3個、4個、5個、6個の、またはさらに多いリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のオリゴマーを含むがそれに限定されるわけではない、様々なオリゴマーが、1つまたは複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしてもよい。いくつかの態様において、本発明は、単一の水溶性ポリマー(例えば、モノPEG化されている)を含む複数のhRNアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複数のhRNアーゼは、hRNアーゼのモノマー、ダイマー、トリマー、および/またはより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0072】
好ましい態様において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、酵素(例えば、リボ核酸分解)活性の重要な部分を保持する。いくつかの態様において、複合物は、非修飾(例えば、コンジュゲートされていない)リボヌクレアーゼの酵素活性の約1%〜約95%を有する。いくつかの態様において、複合物は、非修飾リボヌクレアーゼより高い活性を有する。いくつかの態様において、修飾ヒトリボヌクレアーゼは、リボ核酸分解活性を有する非修飾の親リボヌクレアーゼの活性に対して、約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%、またはそれ以上を有する(例えば、当業者に周知のインビトロアッセイで測定した場合)。
【0073】
他の好ましい態様において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、もう一つの所望の性質(例えば、リボ核酸分解活性以外の(例えば、癌細胞を死滅させる能力))の重要な部分を保持する。機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明は任意の特定の作用機構に限定されないが、いくつかの態様において、修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、リボ核酸分解活性の非存在下で(例えば、非修飾リボヌクレアーゼの70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満)、標的細胞(例えば、癌細胞または微生物に(例えば、ウイルスに)感染した細胞)を死滅させる能力がある(例えば、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質の他の特性により)。
【0074】
本発明は、水溶性ポリマーを本発明のヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために利用される方法によって制限されない。多数の型の化学作用が当技術分野において公知であり、本発明の組成物の作製に用いることができる。これらの方法は詳細に記載されている(例えば、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);およびRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)参照)。いくつかの態様において、本発明は、本発明の活性化ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするのに有用な、コンジュゲーション化学作用を利用する。
【0075】
例えば、N末端にコンジュゲートされたhRNアーゼ(例えば、N末端にPEG化されたhRNアーゼ)を得るために、還元的アルキル化を用いてもよい。ポリマー(例えば、PEG)とタンパク質部分との間を連結基を伴わずに付着させるための方法は、Francis et al., Stability of protein pharmaceuticals: in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization (Eds. Ahern., T. and Manning, M.C.) Plenum, N.Y., 1991に記載されている。いくつかの態様において、カルボキシメチルmPEGのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルの使用を含む方法が用いられる(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、1998年10月20日に発行された米国特許第5,824,784号参照)。
【0076】
いくつかの態様において、PEG-リボヌクレアーゼ複合物は、コンジュゲーション後、精製される。本発明は、利用される精製過程の型によって制限されない。実際、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および当技術分野において周知の他の方法を含むがそれに限定されるわけではない、様々な過程を利用してもよい。
【0077】
例えば、いくつかの態様において、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物を精製して、1つまたは複数の異なる型の複合物(例えば、単一ポリマーに共有結合した複合物)を得ることができる。いくつかの態様において、コンジュゲーション反応の生成物を精製して、(例えば、平均して)一ヒトリボヌクレアーゼあたり概して1個、2個、3個、4個、またはそれ以上のポリマー(例えば、PEG)を得る。いくつかの態様において、異なる数のポリマーに共有結合的に付着したリボヌクレアーゼを分離/分画するために、またはコンジュゲートされていないタンパク質から、もしくはコンジュゲートされていないポリマーから複合物を分離するために、ゲル濾過クロマトグラフィーが用いられる。ゲル濾過カラムは当技術分野において周知であり、多数の供給元から入手できる(例えば、Amersham Biosciences, Piscataway, NJからのSUPERDEXおよびSEPHADEXカラム)。
【0078】
いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、癌を処置するために患者へ投与される。従って、いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を投与する段階を含む、癌を処置する方法を提供する。
【0079】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物の用量は、被験体の年齢、体重、および全身状態、加えて処置されるべき状態(例えば、癌)の重症度、ならびに投与されるポリマー-リボヌクレアーゼ複合物の型に依存して異なってもよい。有効量(例えば、治療的有効量)は当業者に公知である。一般的に、治療的有効量は、1回または複数回の投薬で患者に投与される、1日あたり約0.001mg〜約500mg(例えば、0.01mg〜100mg)の範囲であるが、本発明は、利用される用量によって制限されない(例えば、0.001mg未満または500mgより多い量が1回または複数回の投薬で患者に投与される場合がある)。または、投薬は、週に1回もしくは複数回、または月に1回もしくは複数回、または前述の投薬のいずれかの組み合わせで与えられてもよい。
【0080】
いくつかの態様において、複合物は、1つまたは複数の他の薬剤と共投与される。いくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物が別の薬剤(例えば、抗癌剤)と共投与される場合、薬剤の一方または両方のより少ない用量を、治療的恩恵を損なうことなく、患者へ投与してもよい(例えば、それにより、望ましくない副作用を減少させるか、または薬物抵抗性の可能性を低減する)。本発明は、癌の処置に限定されない。実際、本発明の組成物は、本発明の組成物および方法を用いて恩恵を受けることができる(例えば、治療または予防することができる)任意の状態または疾患を処置するために、被験体に投与してもよい。本発明は、癌、腫瘍発生の処置、および転換した表現型の予防のための治療法および薬学的組成物を提供する。
【0081】
いくつかの態様において、本発明は癌の治療を提供する。いくつかの態様において、治療は、癌の処置のために水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を提供する。
【0082】
いくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物は、癌患者において、全身的にまたは局所的に投与され、腫瘍細胞を死滅させる、腫瘍細胞増殖および血管新生を阻害する、ならびに/または腫瘍細胞死を誘導することができる。それらは、静脈内に、髄腔内に、腹腔内に、および経口で投与することが可能である。さらに、それらは、単独で、または抗増殖性薬物もしくは他の抗癌剤と組み合わせて、投与することが可能である。
【0083】
組み合わせを企図する場合、本発明が組み合わせの特定の性質によって制限されることは意図されない。本発明は、単純な混合物および化学的ハイブリッドとしての組み合わせを企図する。
【0084】
本発明が治療用調製物の特定の性質によって制限されることは意図されない。例えば、そのような組成物は、生理学的に許容できる液体、ゲル、または固体の担体、希釈剤、補助剤、および賦形剤と共に供給することができる。
【0085】
これらの治療用調製物は、他の治療剤と同様の方法で、家畜についてなどの獣医学的使用、およびヒトにおける臨床的使用として、哺乳動物に投与することができる。一般的に、治療有効性に必要とされる投薬量は、投与の使用および様式の型、加えて個体宿主の個別的要求によって異なると考えられる。
【0086】
そのような組成物は、典型的には、液体溶液もしくは液体懸濁液として、または固形に調製される。癌のための経口製剤は、通常、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、結合剤、増量剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、および賦形剤などの通常用いられる添加剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、または粉末の形態を取り、典型的には1%〜95%、好ましくは2%〜70%の活性成分を含む。水溶性ポリマーを含む薬学的組成物に用いられる特定の賦形剤、抗菌剤、抗酸化剤、および界面活性剤は、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20040235734号に記載されている。
【0087】
組成物はまた、液体溶液または液体懸濁液のいずれかなどの注射可能物質として調製することができる。注射前の液体の溶液または懸濁液に適した固形を調製してもよい。
【0088】
本発明の組成物は、生理学的に許容および適合できる希釈剤または賦形剤と混合されることが多い。適した希釈剤および賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、およびそれらの組み合わせである。加えて、必要に応じて、組成物は、湿潤剤または乳化剤、安定剤またはpH緩衝剤などの少量の補助剤を含んでもよい。
【0089】
局所的投与などの他の投与様式に適する追加の製剤には、軟膏、チンキ、クリーム、ローション、および場合によっては、坐剤が挙げられる。軟膏およびクリームについて、伝統的な結合剤、担体、および賦形剤には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれてもよい。
【0090】
本発明の方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。
【0091】
例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、結腸癌、および/または膵臓癌)を処置するための水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物との併用に有用である化合物についてスクリーニングするため;癌の処置に関する化合物の有効性を評価するため;または化合物が癌と戦う機構(例えば、化合物がそのように戦うのは、アポトーシスを誘導することによるのか、分化を誘導することによるのか、増殖を減少させることによるのかどうかなど)を研究するため、本発明の方法をインビトロで用いることができる。例えば、いったん化合物が癌細胞の血管新生、増殖、および/または死滅(例えば、アポトーシスを引き起こす)を阻害するように水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と組み合わせて働く化合物であると同定されたならば、当業者は、化合物が癌細胞の死滅/アポトーシスを誘導するため、および/または癌細胞の血管新生、増殖を減少させる程度を評価するためにインビトロで本発明の方法を適用することができる。あるいは、当業者は、化合物が機能するのは、アポトーシスを誘導することによるのか、増殖および/もしくは血管新生を減少させることによるのか、またはこれらの方法の組み合わせによるのかを決定するために、本発明の方法を適用することができる。
【0092】
あるいは、本発明の方法を、癌(例えば、限定されるわけではないが、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、および結腸癌が挙げられる)を処置するためにインビボで用いることができる。例えば、癌細胞がヒト被験体に存在する場合に、本発明の方法をインビボで実行する場合、治療的有効量の化合物をヒト被験体に投与することにより(例えば、治療用物質(例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む)を腫瘍へ直接注射することによるか、または全身投与を通じて)、接触させることができる。
【0093】
本発明は、そのもう一つの局面において、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、結腸癌、または他の癌などの癌を処置する方法に関する。方法は、癌細胞の血管新生、増殖を阻害する、および/または癌細胞の死を引き起こすのに有効な化合物の量を被験体に投与する段階を含む。
【0094】
本発明は、処置される癌の型によって制限されない。実際、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、癌腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍を含むがそれに限定されるわけではない様々な癌を、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を用いて処置することができる。
【0095】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を投与してもよい、適した被験体には、例えば、ラット、マウス、ネコ、イヌ、サル、およびヒトなどの哺乳動物が挙げられる。適したヒト被験体には、例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、結腸癌、および乳癌)に罹るリスクがあると以前に決定されている者、および癌に罹っていると診断されている者が挙げられる。
【0096】
癌に罹るリスクがあると決定された被験体において、本発明の組成物は、癌細胞が発生した場合には、好ましくは、癌細胞の血管新生、増殖を減少させる、および/または癌細胞の死滅(例えば、アポトーシス)を誘導するのに有効な条件下で、被験体に投与される。
【0097】
本明細書における組成物は、所望の用途に適切な、任意の適した形態に作り上げてもよい。適した剤形の例には、経口、非経口、または局所用の剤形が挙げられる。
【0098】
経口用に適した剤形には、錠剤、分散性粉末、顆粒、カプセル、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。錠剤用の不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、およびタルクが挙げられる。錠剤はまた、デンプンおよびアルギン酸などの造粒剤ならびに崩壊剤;デンプン、ゼラチン、およびアラビアゴムなどの結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクなどの平滑剤を含んでもよい。錠剤は、コーティングしなくてもよいし、崩壊および吸収を遅らせるために公知の技術によってコーティングしてもよい。カプセルに用いることができる不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびカオリンが挙げられる。懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤は、従来の賦形剤、例えば、メチルセルロース、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム;レシチンおよびステアリン酸ポリオキシエチレンなどの湿潤剤;エチル-p-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含んでもよい。
【0099】
非経口投与に適した剤形には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液などが挙げられる。それらはまた、使用直前に滅菌した注射可能な媒質に溶解または懸濁することができる滅菌した固体組成物の形態で製造してもよい。それらは、当技術分野において公知の懸濁剤または分散剤を含んでもよい。非経口投与の例は、脳室内投与、脳内投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、直腸投与、および皮下投与である。
【0100】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物に加えて、薬学的組成物は、他の活性物質、特に、癌の処置に有用であると同定されている活性物質を含むことができる。これらの活性物質は、複数の型の癌を処置するのにも有用であるような広範囲に渡る抗癌剤であり得るか、またはより特異的であってもよい(例えば、そのもう一つの活性物質が特定の型の癌(例えば、腺癌)を処置するのに有用であるが、第二の型の癌(例えば、口腔扁平上皮癌)を処置するのに有用ではない場合)。そのもう一つの活性物質はまた、それらの抗癌性質に加えて非抗癌性の薬理学的性質を有し得る。例えば、もう一つの活性物質は、抗炎症性を有することができるか、あるいはそのような抗炎症性がなくてもよい。
【0101】
本発明に従って投与される水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物の実際の好ましい量は、製剤化された特定の組成物および投与様式によって異なってもよいことが理解されると考えられる。組成物の作用を改変し得る多くの因子(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、被験体の状態、薬物組み合わせおよび薬物反応感度、ならびに重症度)を、当業者は考慮することができる。投与は、最大耐容量内で連続的に、または周期的に実施することができる。所与の一連の条件に対する最適な投与速度については、従来の用量投与試験を用いて当業者が確認することができる。
【0102】
幅広い範囲の治療剤が本発明と共に用いられる。例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と共投与できる任意の治療剤は、本発明での使用に適している。
【0103】
本発明のいくつかの態様は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物(ならびにその鏡像異性体、誘導体、および薬学的に許容される塩)、および少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法薬などの従来の抗癌剤および/または放射線治療)を被験体に投与する段階を提供する。
【0104】
本発明と共に用いるのに適した抗癌剤には、アポトーシスを誘導する薬剤、核酸損傷を誘発する/引き起こす薬剤、核酸合成を阻害する薬剤、微小管形成に影響を及ぼす薬剤、およびタンパク質合成または安定性に影響を及ぼす薬剤が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0105】
本発明の組成物および方法に用いるのに適した抗癌剤のクラスには、限定されるわけではないが、以下が挙げられる:1)微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビンデシンなど)、微小管安定剤(例えば、パクリタキセル(Taxol)およびドセタキセルなど)を含むアルカロイド、およびエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)およびテニポシド(VM-26)など)およびトポイソメラーゼIを標的にする作用物質(例えば、カンプトテシンおよびイシリノテカン(CPT-11)など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含む、クロマチン機能阻害剤;2)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、およびブスルファン(Myleran)など)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびセムスチンなど)、および他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、およびマイトマイシンなど)を含む、共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤);3)核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(Actinomycin D)など)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(DaunomycinおよびCerubidine)、ドキソルビシン(Adriamycin)、およびイダルビシン(Idamycin)など)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン(Mitoxantrone)などのアントラサイクリン類似体など)、ブレオマイシン(Blenoxane)など、およびプリカマイシン(Mithramycin)などを含む、非共有結合性DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質);4)抗葉酸剤(例えば、メトトレキセート、Folex、およびMexateなど)、プリン代謝拮抗物質(例えば、6-メルカプトプリン(6-MP,Purinethol)、6-チオグアニン(6-TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2'-デオキシコフォルマイシン(Pentostatin)など)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル(Adrucil)、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(Floxuridine)など))、およびシトシンアラビノシド(例えば、Cytosar(ara-C)およびフルダラビンなど)を含む、代謝拮抗物質;5)L-アスパラギナーゼを含む酵素、およびヒドロキシウレアなど;6)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェンなど)などのグルココルチコイド、非ステロイド抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミドなど)、およびアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(Arimidex)など)を含む、ホルモン;7)白金化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど);8)抗癌薬、毒素、および/または放射性核種などとコンジュゲートしたモノクローナル抗体;9)生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-αなど)およびインターロイキン(例えば、IL-2など)など);10)養子免疫治療;11)造血成長因子;12)腫瘍細胞分化を誘導する作用物質(例えば、オールトランスレチノイン酸など);13)遺伝子治療技術;14)アンチセンス治療技術;15)腫瘍ワクチン;16)腫瘍転移に向けられる治療(例えば、バチマスタット(Batimistat)など);ならびに17)血管新生の他の阻害剤。
【0106】
好ましい態様において、本発明は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物、ならびに細胞を死滅させる(例えば、アポトーシスを誘導する)、および/または癌細胞増殖を阻止する少なくとも1つの従来の抗癌剤の被験体への投与を提供する。いくつかの好ましい態様において、被験体は、転移により特徴付けられる疾患を有する。さらに他の好ましい態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物およびタキサン(例えば、ドセタキセル)の有効量を、Bcl-2ファミリータンパク質(例えば、Bcl-2および/またはBcl-XL)の過剰発現によって特徴付けられる疾患を有する被験体への投与を提供する。
【0107】
タキサン(例えば、ドセタキセル)は、抗癌化学療法剤の有効なクラスである。(例えば、K.D. Miller and G.W. Sledge, Jr. Cancer Investigation, 17:121-136 (1999)参照)。本発明は、任意の特定の機構に限定するつもりはないが、タキサン媒介性の細胞死は、細胞間の微小管安定化、引き続いてアポトーシス経路の誘導を通じて進行すると考えられる。(例えば、S. Haldar et al., Cancer Research, 57:229-233 (1997)参照)。
【0108】
いくつかの他の態様において、具体的には、シスプラチンおよびタキソールを、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と共に用いることが企図される。シスプラチンおよびタキソールは、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する明確な作用を有する(例えば、Lanni et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94:9679 (1997); Tortora et al., Cancer Research 57:5107 (1997);およびZaffaroni et al., Brit. J. Cancer 77:1378 (1998)参照)。しかしながら、これらを始めとする化学療法剤での処置は、有意な毒性を負うことなく達成することは困難である。現在用いられている薬剤は、一般的に、水難溶性で、極めて有毒であり、罹患細胞だけでなく正常細胞にも影響を及ぼす用量で与えられる。例えば、発見された最も有望な抗癌化合物の一つであるパクリタキセル(Taxol)は、水に難溶性である。パクリタキセルは、B16黒色腫、L1210白血病、MX-1乳腺腫瘍、およびCS-1結腸腫瘍異種移植片などの幅広い種類の腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示している。しかしながら、パクリタキセルの低い水溶解度は、ヒト投与にとって問題である。従って、現在用いられているパクリタキセル製剤は、その薬物を可溶化するためのクレマフォア(cremaphor)を必要とする。ヒト臨床用量範囲は、200〜500mgである。この用量は、エタノール:クレマフォアの1:1溶液に溶解され、静脈内に与えられる1リットルの液体へ希釈される。現在用いられているクレマフォアは、ポリエトキシル化ヒマシ油である。それは、クレマフォア混合物に溶解し、大容量の水性媒体で希釈することにより注入で与えられる。直接投与(例えば、皮下)は、局所的毒性および低レベルの活性を生じる。
【0109】
癌治療関連で日常的に用いられる任意の薬剤が本発明に用いられる。開示された水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物組成物との投与に適した従来の抗癌剤には、アドリアマイシン、5-フルオロウラシル、エトポシド、カンプトテシン、メトトレキセート、アクチノマイシン-D、マイトマイシンC、またはより好ましくは、シスプラチンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。これらの薬剤を、本明細書に記載した免疫療法剤とそれを組み合わせることによって、併用治療用組成物またはキットとして調製し、用いてもよい。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む治療的処置はさらに、DNA損傷を促進するために核酸(例えば、DNA)を直接、架橋結合する1つまたは複数の薬剤を含む(例えば、相乗的または追加的な治療特性を有する薬剤の組み合わせをもたらす)。例えば、シスプラチンおよび他のDNAアルキル化剤などの薬剤を用いることができる。シスプラチンは、癌を処置するのに広く用いられており、3週間ごとに5日間、20mg/M2の有効な用量が計3コースで臨床適用に用いられる。本発明の組成物は、任意の適した方法によって送達することができ、その方法には、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、または局所的(例えば、粘膜表面へ)注射が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0111】
DNAを損傷する薬剤はまた、DNA複製、有糸分裂、および染色体分配を妨げる化合物を含む。そのような化学療法化合物には、ドキソルビシンとしても知られているアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。これらの化合物は、新生物の処置のための臨床設定に広く用いられ、静脈内へ、21日間隔でアドリアマイシン25〜75M/2から、エトポシド35〜50Mg/M2までの範囲の用量で、静脈内のボーラス注入で投与されるか、または静脈内用量の二倍量を経口で投与される。
【0112】
核酸前駆体およびサブユニットの合成ならびに忠実性を乱す薬剤もまた、DNA損傷をもたらし、本発明に化学療法剤として用いられる。いくつかの核酸前駆体が開発されている。特に有用なのは、広範な試験を受けており、かつ容易に入手できる薬剤である。従って、5-フルオロウラシル(5-FU)などの薬剤は、新生物組織によって優先的に使われ、このことによりこの薬剤は新生物細胞へのターゲティングに対し特に有用となっている。送達される用量は、3〜15mg/kg/日の範囲であり得るが、病期、治療への細胞の被適用性(amenability)、薬剤に対する抵抗性の量を含む様々な因子によって他の用量が大幅に異なる場合がある。
【0113】
好ましい態様において、本発明に用いられる抗癌剤(例えば、本明細書で考察された抗血管新生因子)は、抗癌効果の忠実性を損なうことなく被験体、組織、または細胞へ送達することができるように水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物との共投与を受け入れられるものである。白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキセート、ならびに他の類似した抗癌剤などの癌治療剤のより詳細な説明について、当業者は、かなり多数の教育的なマニュアルを参照する。それらのマニュアルには、Physician's Desk referenceおよびGoodman and Gilman's 「Pharmaceutical Basis of Therapeutics」ninth edition, Eds. Hardman et al., 1996が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0114】
いくつかの態様において、薬物は、光開裂性リンカーでヒトリボヌクレアーゼへ付着している。例えば、本発明と共に用いられるいくつかのヘテロ二官能性の光開裂性リンカーが記載されている(例えば、Ottl et al., Bioconjugate Chem., 9:143 (1998)参照)。これらのリンカーは水溶性でも有機可溶性でもあり得る。それらは、アミンまたはアルコールと反応することができる活性化エステル、およびチオール基と反応することができるエポキシドを含む。その2つの基の間に、3,4-ジメトキシ6-ニトロフェニル光異化性基があり、近紫外光(365nm)に曝されると、無傷の形態でアミンまたはアルコールを放出する。従ってそのようなリンカーを用いて本発明の組成物に連結している場合、治療剤は、標的領域に近紫外光を暴露することによって、生物学的に活性のある形態かまたは活性化可能な形態で放出され得る。
【0115】
例示的態様において、ヒトリボヌクレアーゼの活性基は、有機可溶性リンカーの活性化エステルと反応する。次に、この生成物は、適切なデンドリマーの部分的にチオレート化された表面(デンドリマーの第1級アミンは、半化学量論量の2-イミノチオランとの反応によりチオール含有基へ部分的に変換することができる)と反応する。このようにコンジュゲートすると、薬物は、不活性であり、正常細胞を傷つけないと考えられる。複合物が腫瘍細胞内に局在している場合、複合物は適切な近UV波長のレーザー光に曝されて、活性薬物をその細胞へ放出する。
【0116】
光開裂性リンカーに代わるものは、酵素開裂性リンカーである。いくつかの酵素開裂性リンカーが、有効な抗腫瘍複合物として実証されており、ドキソルビシンなどの癌治療用物質を水溶性ポリマーに適切な短いペプチドリンカーで付着させることにより、調製することができる(例えば、Vasey et al., Clin. Cancer Res., 5:83 (1999)参照)。リンカーは細胞の外側で安定であるが、いったん細胞内に入ると、チオールプロテアーゼにより切断される。好ましい態様において、複合物PK1が用いられる。光開裂性リンカーストラテジーに代わるものとして、Gly-Phe-Leu-Glyなどの酵素分解性リンカーを用いてもよい。
【0117】
本発明は、治療技術の性質によって制限されない。例えば、本発明と共に用いられる他の複合物には、BNCTのためのコンジュゲートしたホウ素ダスターの使用(例えば、Capala et al., Bioconjugate Chem., 7:7 (1996)参照)、放射性同位元素の使用、およびリシンなどの毒素のコンジュゲーションが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0118】
抗菌治療剤もまた、本発明の治療剤として水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と組み合わせて用いることができる。微生物の機能を奪うか、阻害するか、または別の方法で弱毒化することができる任意の薬剤、加えてそのような活性を有すると考えられる任意の薬剤を用いてもよい。抗菌剤には、単独または組み合わせて用いられる、天然および合成の抗生物質、抗体、阻害タンパク質、アンチセンス核酸、膜破壊剤などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。実際、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが含まれるがそれには限定されるわけではない、任意の型の抗生物質を用いてもよい。
【0119】
なおさらなる態様において、本発明のもう一つの構成要素は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物が、特定の細胞型(例えば、腫瘍細胞)を特異的に標的にすることができるターゲティング剤と会合することである。一般的に、ターゲティング剤は、ターゲティング剤の細胞表面部分との相互作用を通じて新生物細胞を標的にし、受容体依存性エンドサイトーシスによってその細胞の中へ取り込まれる。
【0120】
標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に位置することが知られている任意の部分が本発明と共に用いられる。例えば、そのような部分に対して方向付けられた抗体が、その部分を含む細胞表面へ本発明の組成物を標的にする。あるいは、ターゲティング部分は、細胞表面上に存在する受容体へ向けられるリガンドであってもよく、またはその逆でもよい。同様に、ビタミンもまた、特定の細胞へ本発明の治療用物質を標的にするのに用いてもよい。
【0121】
本発明のいくつかの態様において、ターゲティング部分はまた、例えば腫瘍特異的抗原など、ターゲティング剤(リガンド)が結合する受容体を発現していることに特徴付けられる特定の腫瘍を同定するための作用物質として機能してもよい。その腫瘍特異的抗原には、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、チロシナーゼ、ras、シアリルルイス抗原、erb、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、MN、gp100、gp75、p97、プロテイナーゼ3、ムチン、CD81、CID9、CD63が挙げられるが、それに限定されるわけではなく;CD53、CD38、CO-029、CA125、GD2、GM2およびO-アセチルGD3、M-TAA、M-fetal、またはM-urinaryが本発明と共に用いられる。あるいは、ターゲティング部分は、腫瘍抑制因子、サイトカイン、ケモカイン、腫瘍特異的受容体リガンド、受容体、アポトーシスの誘導因子、または分化誘導剤であってもよい。
【0122】
ターゲティングを企図される腫瘍抑制タンパク質には、p16、p21、p27、p53、p73、Rb、ウィルムス腫瘍(WT-1)、DCC、神経線維腫症1型(NF-1)、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病腫瘍抑制因子、マスピン、Brush-1、BRCA-1、BRCA-2、多発性腫瘍抑制因子(MTS)、ヒト黒色腫のgp95/p97抗原、腎細胞癌関連G250抗原、KS 1/4 汎癌腫(pan-carcinoma)抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺特異的抗原、黒色腫抗原gp75、CD9、CD63、CD53、CD37、R2、CD81、CO029、TI-1、L6、およびSASが挙げられるが、それに限定されるわけではない。もちろん、これらは単に例示的な腫瘍抑制因子であり、本発明を、腫瘍抑制因子として当業者に知られているかまたは知られるようになる任意の他の作用物質と関連して用いてもよいことが構想される。
【0123】
本発明の好ましい態様において、ターゲティングは、癌遺伝子(例えば、bcl-2および/またはbcl-XL)によって発現する因子に向けられる。これらには、Srcファミリーのメンバーなどの膜結合型および細胞質型の両方のチロシンキナーゼ、Mosなどのセリン/トレオニンキナーゼ、血小板由来成長因子(PDDG)などの成長因子および受容体、rasファミリーを含む低分子量GTPアーゼ(Gタンパク質)、サイクリン依存性プロテインキナーゼ(cdk)、c-myc、N-myc、およびL-mycを含むmycファミリーメンバーのメンバー、ならびにbcl-2およびファミリーメンバーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0124】
本発明に関連して用いられる受容体およびそれらの関連リガンドには、葉酸受容体、アドレナリン受容体、成長ホルモン受容体、黄体ホルモン受容体、エストロゲン受容体、上皮成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0125】
本発明のターゲティング局面に用いられるホルモンおよびそれらの受容体には、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、α-エンドルフィン、αメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)、コレシストキニン、エンドセリンI、ガラニン、胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン、インスリン、アミリン、リポトロピン、GLP-1(7-37)ニューロフィジン、およびソマトスタチンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0126】
加えて、本発明は、ターゲティング剤として用いられるビタミン(脂溶性ビタミンおよび非脂溶性ビタミンの両方)が、ビタミンの受容体を有するか、または別な方法でこれらのビタミンを取り込む細胞を標的にするのに用いてもよいことを企図する。この局面に特に好ましいのは、ビタミンDおよびその類似体、ビタミンE、ビタミンAなどの脂溶性ビタミン、またはビタミンCなどの水溶性ビタミンである。
【0127】
本発明のいくつかの態様において、癌細胞の標的化基のかなり多数が水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼと会合している。従って、ターゲティング基と会合した水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物は、癌細胞を標的にすることに対して特異的である(すなわち、癌細胞に付着して、健康な細胞には付着しない可能性がはるかに高い)。
【0128】
本発明の好ましい態様において、ターゲティング基は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼに、短い結合(例えば、直接結合)、中位の結合(例えば、Pierce Chemical Companyから販売されているSPDPなどの小分子二官能性リンカーを用いて)、または長い結合(例えば、Shearwater Polymersから販売されているPEG二官能性リンカー)のいずれかで会合している(例えば、共有結合または非共有結合で)。
【0129】
本発明の好ましい態様において、ターゲティング剤は、抗体、または抗体の抗原結合断片(例えば、Fabユニット)である。例えば、多くの癌(乳房HER2腫瘍を含む)の表面上に見い出されるよく研究された抗原は、糖タンパク質p185であり、それはもっぱら悪性細胞にだけ発現している(Press et al., Oncogene 5:953 (1990))。組換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(rhuMabHER2)は、HER2を過剰発現している乳癌細胞の増殖を阻害することが正に示されており、進行乳癌の処置について第III相臨床試験で評価中である(従来の化学療法剤と併用して)(Pegrarn et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 14:106 (1995))。Parkらは、rhuMabHER2のFab断片を小さい単層リポソームへ付着させており、その後、それに化学療法剤ドキソルビシン(dox)を負荷し、HER2を過剰発現している腫瘍の異種移植片へ標的化させることができる(Park et al., Cancer Lett., 118:153 (1997)およびKirpotin et al., Biochem., 36:66 (1997))。これらのdox負荷「免疫リポソーム」は、それに対応する、標的にされていないdox負荷リポソームまたは遊離doxと比較して、腫瘍に対する細胞毒性の増加、および遊離doxと比較して全身毒性の減少を示した。
【0130】
いくつかの態様において、ターゲティング剤は抗体様部分である。いくつかの抗体様部分は、本発明に有用であると考えられ、それらには、アンキリン、アビマー、およびリポカリンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0131】
抗体は、様々な生物学的標的(例えば、病原体、腫瘍細胞、正常組織)上の抗原または免疫原(例えば、腫瘍、組織、または病原体特異的抗原)のターゲティングを可能にするように作製することができる。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0132】
いくつかの好ましい態様において、抗体は、腫瘍特異的エピトープ(例えば、TAG-72(Kjeldsen et al., Cancer Res. 48:2214-2220 (1988);米国特許第5,892,020号;同第5,892,019号;および同第5,512,443号);ヒト癌抗原(米国特許第5,693,763号;同第5,545,530号;および同第5,808,005号);骨癌細胞由来のTP1およびTP3抗原(米国特許第5,855,866号);腺癌細胞由来のトムゼン-フリーデンライヒ(Thomsen-Friedenreich)(TF)抗原(米国特許第5,110,911号);ヒト前立腺癌由来の「KC-4抗原」(米国特許第4,708,930号および同第4,743,543号);ヒト結腸直腸癌抗原(米国特許第4,921,789号);嚢胞腺癌由来のCA125抗原(米国特許第4,921,790号);ヒト乳癌由来のDF3抗原(米国特許第4,963,484号および同第5,053,489号);ヒト乳房腫瘍抗原(米国特許第4,939,240号);ヒト黒色腫のp97抗原(米国特許第4,918,164号);癌腫またはオロソムコイド関連抗原(CORA)(米国特許第4,914,021号);ヒト扁平上皮肺癌と反応するが、ヒト小細胞肺癌とは反応しないヒト肺癌抗原(米国特許第4,892,935号);ヒト乳癌の糖タンパク質におけるTおよびTnハプテン(Springer et al., Carbohydr. Res. 178:271-292 (1988));名付けられたMSA乳癌糖タンパク質(Tjandra et al., Br. J. Surg. 75:811-817 (1988));MFGM乳癌抗原(Ishida et al., Tumor Biol. 10:12-22 (1989));DU-PAN-2膵臓癌抗原(Lan et al., Cancer Res. 45:305-310 (1985));CA125卵巣癌抗原(Hanisch et al., Carbohydr. Res. 178:29-47 (1988));YH206肺癌抗原(Hinoda et al., Cancer J., 42:653-658 (1988)))を認識する。前述の参考文献のそれぞれは、参照により本明細書に具体的に組み入れられている。
【0133】
乳癌について、細胞表面は、葉酸、EGF、FGF、ならびに腫瘍関連抗原MUC1、cMet受容体、およびCD56(NCAM)に対する抗体(または抗体断片)で標的にされてもよい。
【0134】
本発明のいくつかの態様において、ターゲティング剤は、好ましくは、核酸(例えば、RNAまたはDNA)である。いくつかの態様において、核酸ターゲティング剤は、特定の核酸(例えば、染色体DNA、mRNA、またはリボソームRNA)と塩基対形成することによりハイブリダイズするように設計される。他の態様において、核酸は、リガンドまたは生物学的標的を結合する。以下のタンパク質を結合する核酸が同定されている:逆転写酵素、HIVのRevおよびTatタンパク質(Tuerk et al., Gene, 137(1):33-9 (1993));ヒト神経成長因子(Binkley et al., Nuc. Acids Res., 23(16):3198-205 (1995));および血管内皮成長因子(Jellinek et al., Biochem., 83(34):10450-6 (1994))。リガンドを結合する核酸は、好ましくは、SELEX手順(例えば、米国特許第5,475,096号;同第5,270,163号;および同第5,475,096号;ならびにPCT公開公報WO 97/38134、同WO 98/33941、および同WO 99/07724参照、それらのすべては参照により本明細書に組み入れられている)によって同定されるが、多くの方法が当技術分野において公知である。
【0135】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を実証し、さらに例証するために提供され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0136】
実施例1
ウシRNアーゼAのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)直鎖状20k mPEGでのPEG化
NHS mPEGを乾燥粉末として、RNアーゼA(50mM HEPES、5mM CaCl2、5mM MgCl2、pH7.5)へ、RNアーゼ:PEGの3つの異なる比:1:1、1:3、および1:10で加えた。反応混合物を、時折ボルテックスしながら室温で1時間、その後、ボルテックスせずに4℃で一晩、インキュベートした。
【0137】
SDS PAGEで分析すると、1:1 RNアーゼ:PEG反応は、主に未反応のRNアーゼおよび1:1 RNアーゼ:PEG複合物を有した(図2参照)。1:1、1:2、および1:3 RNアーゼ:PEGのRNアーゼ:PEG複合物は、1:3および1:10 RNアーゼ:PEG反応についての主な生成物である。
【0138】
実施例2
RNアーゼのアルデヒド直鎖状30k mPEGでのPEG化
アルデヒドmPEGを、RNアーゼA(50mM HEPES、pH5.0、20mM NaCNBH3)へ3つの異なる比:1:2、1:4、および1:8 RNアーゼ:PEGで加えた。反応混合物を、ゆっくり撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。SDS-PAGEで分析すると、1:1、1:2、および1:3 RNアーゼ:PEGの複合物が、コンジュゲーション反応のそれぞれに様々な程度で存在していた(図3参照)。1:1および1:2 RNアーゼ:PEG複合物は、1:4 RNアーゼ:PEGの反応混合物中におおよそ等しい量で存在する。
【0139】
1:4 RNアーゼ:PEG反応混合生成物を一晩透析し(20mM 酢酸Na、pH5.0)、陽イオン交換カラムに流した(SP-Sepharose fast flow; Pharmacia;20mM酢酸ナトリウム、1M NaCl、pH5.0で溶出した)。画分を収集し、PEGの存在について試験した(50mL H2O中1g NaI+0.5g I2)。2組のPEG含有種がカラム上で分離され、カラム上の2つの別々のピークとして示された(図4参照)。第二ピークからの4つの画分を混合し、比較のためにRNアーゼAの試料と共にSDS-PAGEを行った。半精製した試料は、RNアーゼに対して様々な数のPEGを有する多様な複合物を含む(図5参照)。従って、いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、複合物の集団には、1:1、1:2、1:3のRNアーゼ:PEGの比、および/またはRNアーゼの分子あたり3個より多いPEG分子を有する複合物が存在する)、RNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複合物の集団は、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を主に含む(例えば、集団におけるRNアーゼ分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、またはそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)集団を作製するために精製することができる(例えば、本明細書に記載の方法を用いて)。
【0140】
実施例3
ヒトRNアーゼ1のブチルアルデヒドmPEGでのPEG化
野生型膵臓リボヌクレアーゼ1のPEG化を、ブチルアルデヒドmPEG(例えば、直鎖状30kDa、分枝型40kDa、または分枝型60kDa)で行った。PEG:RNアーゼの1:3比を用いて、反応を、3つの異なるpH条件で行った。用いた緩衝液は、クエン酸(pH5またはpH6での0.1Mクエン酸、0.15M NaCl)およびリン酸ナトリウム(pH7での0.1M NaH2PO4、0.15M NaCl)であった。
【0141】
12ミリグラムのブチルアルデヒド直鎖状30kDa mPEGを、pH5.0のクエン酸中RNアーゼ1(9.86mg/mL溶液の203μl)に加えた。反応物を一晩インキュベートした。水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5M溶液の2μl;Aldrich)を加え、反応物を30分間、インキュベートした。Tris-HCl(1M溶液の10μl)を反応物に加え、反応物を室温でさらに30分間、インキュベートした。その他の反応については、異なるpH(緩衝液の選択によって調節される)および異なるmPEGを用いて同じ条件下で行った。
【0142】
各反応混合物、加えて野生型RNアーゼ1の対照、および分子量ラダーを含むSDS-PAGEを行った。試料をすべて(分子量ラダーを除く)、90℃で5分間、加熱し、12% BisTris CRITERION XT gel(BioRad)上へローディングした。ゲルをXTMES緩衝液(BioRad)を用いて200Vで50分間、泳動した。希釈緩衝液は、PBS、pH7.44であり、ローディング緩衝液は、50%試料緩衝液、40%脱イオン水、および10%還元剤であった。
【0143】
記載された反応条件下で、反応の完成度(反応の完了時点におけるポリマーにコンジュゲートしたRNアーゼ1タンパク質のパーセンテージ)は、pH5>pH6>pH7の順番に従う(図6参照)。30kDaおよび40kDa mPEGを利用する反応は、60kDa mPEGを用いる反応よりさらに完成度が高かった(例えば、より多くのRNアーゼ:PEG複合物を含んだ)。反応はそれぞれ、単一のRNアーゼへの単一のPEGの複合物の多数集団を含んだ(図6参照)。
【0144】
いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、複合物の集団には、1:1、1:2、1:3のRNアーゼ:PEGの比、および/またはRNアーゼの分子あたり3個より多いPEG分子を有する複合物が存在する)、ヒトRNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団が同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を含む、ヒトRNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複合物の集団は、複合物集団をさらに精製するために(例えば、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を主に含む集団(例えば、集団におけるRNアーゼ分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、またはそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)を作製するために)、精製することができる(例えば、本明細書に記載された方法を用いて)。
【0145】
実施例4
RNアーゼ1ならびにブチルアルデヒド直鎖状30kおよび分枝型40k mPEGの複合物のスケールアップ製造および精製
PEG対RNアーゼ1の1:1比を以下の反応に用いた。pH5の0.1Mクエン酸、0.15M NaCl中10.28mg/mLのRNアーゼ1を含む溶液の8ミリリットルを、30kDa mPEG(164.5mg)かまたは40kDa mPEG(219.4mg)のいずれかに加え、4℃で一晩インキュベートした。
【0146】
水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5Mの80μl)を加え、混合物を室温で30分間、インキュベートした。Tris(1M、pH7の400μl)を加え、溶液を室温で30分間インキュベートした。
【0147】
各反応物を、5% 20mM Tris酢酸、2.0M NaCl、pH8.0の40mLで希釈し、1M NaOHの〜600μlの液滴添加によりpHを〜8へ調整した。反応物を陰イオン交換カラムに流し、通過流を収集した。
【0148】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質および精製生成物を特徴付けるために用いた。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0149】
9.2℃において溶液のpHは8.45であり、約300μlの酢酸で10.1℃においてpHを5.01へ調整した。溶液を、20mM Tris酢酸、pH5.0中で平衡化した陽イオン交換カラム上へ負荷し、Tris酢酸緩衝液中の塩化ナトリウム勾配で溶出して、複合物および野生型RNアーゼ1のベースライン分離を達成した。
【0150】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質および精製生成物を特徴付けるために用いた(図8参照)。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0151】
カラム画分の純度を、少なくとも95%純度の画分をプールするためにSDS-PAGEによって分析した(図9参照)。各試料におけるタンパク質の濃度を、280nmでのε1cm0.1%=0.174の吸光減衰係数を用いて測定した。濃度は2.06mg/mLであった。最終容量は62mLであり、127mgの収量を示した。
【0152】
実施例5
酵素活性の測定
PEG-RNアーゼ複合物の酵素活性を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた蛍光アッセイ法を用いて測定した。アッセイの基質、5'FAM-ArUAA-3'TAMRA(IDT)は切断されるまで蛍光を発しない。
【0153】
緩衝液(100mM NaCl、100mM Tris、pH7.0、100マイクログラム/mL BSAの160マイクロリットル)を、96ウェル、非結合性表面、黒色のポリスチレンプレートのウェルへ加えた。活性が測定されることになっているRNアーゼを加える(典型的には、約2×10-10M溶液の10μl)。その後、基質(5'FAM-ArUAA-3'TAMRAの1.33μMの30μl)を各ウェルへ加え、試料を混合した。プレートを、蛍光プレートリーダー上ですぐに読み取る。
【0154】
F0測定(酵素無し)およびFmax測定(典型的には、200μlアッセイあたりRNアーゼAの0.1mg/mL溶液の10μl)のための対照ウェルを含めた。kcat/KM=1.7×107M-1sec-1を有する野生型ヒトRNアーゼ1と比較して、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物のkcat/KMは、2.7×107M-1sec-1であった。分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物のkcat/KMは、2.62×107M-1sec-1であった(図10参照)。従って、本発明は、いくつかの態様において、PEG分子のヒトRNアーゼへのコンジュゲーションが、酵素活性を保持するヒトRNアーゼ分子を供給するということを提供する。
【0155】
実施例6
非小細胞肺癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNアーゼ1複合物の特徴付け
非小細胞肺癌細胞株(A549)由来の細胞を、9個のT175フラスコ中、F12K培地および10%ウシ胎児血清において細胞がコンフルエントになるまで増殖させた。4.5×106個の細胞(100μl中)を週齢4〜5週間の雄ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan, Madison WI)の右後方脇腹へ注射した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、媒体(リン酸緩衝食塩水、PBS)で毎週処置される1組の動物を含む処置群へ分けた。媒体および試験作用物質を腹腔内注射によってすべてに投与した。各動物の体重を、処置中、週2回測定した。腫瘍については、カリパスを用いて週2回、測定した。腫瘍容積(mm3)については、楕円球形についての以下の式を用いることにより決定した。
腫瘍増殖阻害パーセントについては、以下の式を用いて計算した。
【0156】
直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性は、シスプラチンに対して示されている(図11参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、シスプラチンを週1回、6mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0157】
分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性もまた、シスプラチンに対して示されている(図12参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、シスプラチンを週1回、6mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0158】
従って、本発明は、ヒトRNアーゼ-PEG複合物を含む組成物であって、複合物が腫瘍増殖阻害性質を有する、組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより低い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより高い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより低い、宿主被験体に対する毒性を示す(例えば、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物または分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明は、シスプラチンと比較して優れた腫瘍増殖阻害(例えば、非小細胞肺腫瘍の)を示すと同時に、シスプラチンより宿主に対する毒性が低い複合物を提供する(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。
【0159】
実施例7
乳癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNアーゼ1複合物の特徴付け
乳癌細胞株(MDA-MB-231)由来の細胞を、7個のT175フラスコ中、RPMI-1640培地および10%ウシ胎児血清において細胞がコンフルエントになるまで増殖させた。5.6×106個の細胞(100μl中)を週齢4〜5週間の雌ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan, Madison WI)の右後方脇腹へ注射した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、媒体(リン酸緩衝食塩水、PBS)で毎週処置される1組の動物を含む処置群へ分けた。媒体および試験作用物質を腹腔内注射によってすべてに投与した。各動物の体重を、処置中、週2回測定した。腫瘍については、カリパスを用いて週2回測定した。腫瘍容積(mm3)および腫瘍増殖阻害パーセントについては、上記の式を用いて決定した。
【0160】
分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性は、ドキソルビシンに対して示されている(図13参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、ドキソルビシンを週1回、3mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0161】
従って、本発明は、ヒトRNアーゼ-PEG複合物を含む組成物であって、複合物が腫瘍増殖阻害性質を有する、組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明の複合物は、ドキソルビシンより高い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、ドキソルビシンより低い、宿主被験体に対する毒性を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明は、ドキソルビシンと比較して優れた腫瘍増殖阻害(例えば、乳癌腫瘍の)を示すと同時に、ドキソルビシンより宿主に対する毒性が低い複合物を提供する(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。従って、本発明は、被験体において腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。本発明は、増殖が本発明の組成物により阻害される腫瘍の型によって制限されない。実際、肺癌、乳癌、上皮癌、前立腺癌、ならびにシスプラチンおよびドキソルビシンで処置可能である(例えば、その増殖が阻害される)ことが知られた他の癌を含むがそれに限定されるわけではない、様々な腫瘍を本発明の組成物および方法を用いて処置することができる。
【0162】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられている。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の記載された組成物および方法の様々な改変およびバリエーションは、当業者にとって明らかであると考えられる。本発明は特定の好ましい態様に関して記載されているが、主張される本発明が、そのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは理解されるはずである。実際、当業者にとって明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として参照により本明細書に組み入れられている、2006年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/816,179号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)と水溶性ポリマーとの複合物、複合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。特に、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)と1つまたは複数の水溶性ポリマー組成物との複合物(例えば、血清中半減期および薬物動態プロファイル、インビボでの生物活性、安定性を増加させるための、および/またはインビボでそのタンパク質に対する宿主免疫応答を低下させるための)、ならびに疾患(例えば、癌)の治療、処置、および/または予防における複合物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「癌」は一般的に、身体の隣接組織または他の部分へ広がることができる、制御されない異常な細胞増殖により引き起こされる100を超える疾患の一つを指す。癌細胞は、中で癌細胞が一塊になっている固形腫瘍を形成するか、または白血病におけるように、分散した細胞として存在することができる。正常細胞は通常、成熟に達するまで、およびその後、損傷したかまたは死んだ細胞と置き換わるために必要に応じてのみ分裂する。癌細胞は、それらが際限なく分裂し、ついには隣接細胞を押しのけて身体の他の部分へ広がるため、「悪性」と呼ばれることが多い。一つの器官から別の器官へ、または身体の一つの部分から別の部分へ広がる癌細胞の傾向によって、過剰増殖するが身体の他の器官または部分へは広がらない良性腫瘍細胞からそれらは区別される。悪性癌細胞は、最終的に、血流またはリンパ系を介して、転移し、身体の他の部分へ広がり、そこで、増加して新しい腫瘍を形成することができる。この種の腫瘍進行が、癌を死に至る病とさせている。癌の診断および処置に大きな進歩があったとはいえ、多くの人々が毎年癌で死亡しており、典型的には、その死は従来の治療に抵抗性である転移および癌によるものである。
【0004】
大抵の薬物による癌治療は、分裂している細胞に対して選択性の化学療法剤(例えば、細胞毒性剤)に依存する。しかしながら、特定の癌は、既存の化学療法剤に応答しない。従って、医学界内と一般人の間の両方で、癌処置のための新規な化学療法剤の開発が非常に必要とされ、望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、薬物動態学、薬物動力学、および/または免疫原性の低減に関する臨床的性質を向上させるための、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ(hRNアーゼ))の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションに関する。好ましい態様において、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))へのコンジュゲーションに関する。本発明は、利用されるhRNアーゼの型によって制限されない。実際、本発明の組成物および方法に任意のhRNアーゼを用いることができる。任意のhRNアーゼには、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、hRNアーゼ8)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0006】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解(ribonucleolytic)活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながらインビボで循環半減期を増加させるためのhRNアーゼのポリマーコンジュゲーションを提供する。従って、そのように修飾されたhRNアーゼは、癌を処置する(例えば、治療的または予防的に)ために用いることが可能である(例えば、非修飾hRNアーゼより低下した投薬量、および/または少ない頻度の投薬で)。
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながらインビボで循環半減期を増加させるための、ウシリボヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼA)のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼAは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するタンパク質の領域において水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。いくつかの好ましい態様において、リボヌクレアーゼAは、RIからの回避に関与しないタンパク質の領域(例えば、リボヌクレアーゼAのRIへの結合に影響を及ぼさない領域)において水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。このように、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの態様において、水溶性ポリマーのリボヌクレアーゼAへのコンジュゲーションは、たとえそのコンジュゲーションがリボヌクレアーゼがRIを回避するのを助けるものではないにしても、生物活性(例えば、癌細胞を死滅させること)を有する。
【0008】
生物活性(例えば、リボ核酸分解活性および/または癌細胞を死滅させる潜在能力)を保持しながら循環半減期を増加させることに加えて、ポリマーコンジュゲーションにより得られる他の利点には、抗体結合の減少、有効性(例えば、癌細胞の死滅または増殖阻止について)の増加、免疫原性の減少、および循環器系表面への結合の低下が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0009】
いくつかの態様において、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されるように、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)にコンジュゲートした水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))を提供する。いくつかの態様において、非コンジュゲート型hRNアーゼと比較して、水溶性ポリマーへのコンジュゲーション後、RNアーゼ活性の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれ以上が保持される。いくつかの態様において、hRNアーゼは、水溶性ポリマーへのコンジュゲーション後、多かれ(例えば、97%より多く)少なかれ(例えば、1%未満)、リボ核酸分解活性を保持し得る。いくつかの態様において、本発明の複合物は、少なくとも1つの所望の性質(例えば、複合物の非存在下での処置と比較した、癌細胞を死滅させる(例えば、リボ核酸分解活性があろうがなかろうが)能力)を保持する。
【0010】
本発明は、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)複合物の投与の経路または型によって制限されない。実際、様々な投与経路が有用であると考えられ、点眼、経口、経皮的および/または局所的、経鼻、肺へ(例えば、吸入器によって)、粘膜(例えば、膣または鼻の粘膜)、直腸、耳経由で、注射による(例えば、静脈内に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内に、腫瘍へ直接など)などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、1つまたは複数の他の化学療法剤(例えば、抗癌剤)が、本発明のhRNアーゼ複合物(例えば、PEG-hRNアーゼ複合物)と共投与される。本発明は、共投与される化学療法剤の型に限定されない。実際、様々な化学療法剤が、本発明の組成物との共投与に有用であると考えられ、化学物質、ペプチド、タンパク質、およびリポペプチド(例えば、宿主において癌細胞に接触すると、様々な技術(例えば、アポトーシスを誘導する)のいずれかによって、宿主細胞もしくは組織を損傷することなく、または有害な宿主応答を誘発することなく、その細胞を死滅させることができる)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0011】
本発明は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)がコンジュゲートしている水溶性ポリマーの型によって制限されない。例えば、水溶性ポリマーには、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシエチル化ポリオール、およびポリ(ビニルアルコール)が挙げられるが、それに限定されるわけではない。ポリ(アルキレンオキシド)には、PEG、ポロキサマー、およびポロキサミンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明は、利用されるコンジュゲーション(例えば、hRNアーゼ分子を1つまたは複数の水溶性ポリマー(例えば、PEG)に接続するための)の型によって制限されない。いくつかの態様において、ポリ(アルキレンオキシド)は、アミド結合(例えば、ポリ(アルキレンオキシド)の活性エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)から形成される)を介して遊離アミノ基にコンジュゲートしている。いくつかの態様において、エステル結合は、コンジュゲーション後、複合物に残存する。いくつかの態様において、結合は、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)分子に存在するリシン残基を通じて生じる。いくつかの態様において、コンジュゲーションは、短時間作用型の、分解性結合を通じて生じる。本発明は、利用される分解性結合の型によって制限されない。実際、様々な結合が本発明に有用であると考えられ、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、およびケタール結合を含む生理学的に開裂可能な結合が挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、hRNアーゼは、米国特許第4,424,311号;同第5,672,662号;同第6,515,100号;同第6,664,331号;同第6,737,505号;同第6,894,025号;同第6,864,350号;同第6,864,327号;同第6,610,281号;同第6,541,543号;同第6,515,100号;同第6,448,369号;同第6,437,025号;同第6,432,397号;同第6,362,276号;同第6,362,254号;同第6,348,558号;同第6,214,966号;同第5,990,237号;同第5,932,462号;同第5,900,461号;同第5,739,208号;同第5,446,090号、および同第6,828,401号;ならびにWO 02/02630およびWO 03/031581に記載された方法、試薬、および/または結合のいずれかを利用してPEGにコンジュゲートしており、それらの特許出願のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。いくつかの態様において、本発明の複合物は、第三者(例えば、NEKTAR, San Carlos, CA)により作製される。いくつかの態様において、複合物は、ポリマーとリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)との間の結合に存在する開裂可能な結合を含む(例えば、開裂した時に、ポリマーまたは結合の一部たりともhRNアーゼ分子上に残存しないように)。いくつかの態様において、複合物は、ポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含む(例えば、開裂した時に、ポリマーまたは結合のほんの一部がhRNアーゼ分子上に残存するように)。いくつかの態様において、PEG-リボヌクレアーゼ複合物は、コンジュゲーション後精製される。本発明は、利用される精製過程の型によって制限されない。実際、様々な過程を利用することができ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および当技術分野において周知の他の方法が挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明は、利用されるPEG分子の型によって制限されない。実際、様々なPEG分子が、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)分子へのコンジュゲーションに有用であると考えられ、限定されるわけではないが、直鎖状もしくは直鎖型(straight chained)PEG、または分枝型PEGを含み、約1kDa〜約500kDaの分子量を有してよいが(例えば、いくつかの態様において、10〜50kDaである)、hRNアーゼ分子にコンジュゲートしたPEG分子は、より大きくても(例えば、500kDaより大きい)、より小さくても(例えば、1kDa未満)よい。
【0012】
本発明はまた、本発明のリボヌクレアーゼ複合物(例えば、PEG-hRNアーゼ複合物)を含む組成物(薬学的調製物)(例えば、薬学的に許容される担体を含む)の有効量を被験体に投与することによる、被験体(例えば、哺乳動物)での癌の予防的または治療的な処置方法を提供する。本発明は、処置される癌の型によって制限されない。実際、様々な癌が、本発明のリボ核酸分解性複合物により処置可能である(例えば、死滅させられるか、または増殖阻害される)と考えられ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、癌腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体(例えば、非天然のhRNアーゼ)にコンジュゲートしたポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物であって、複合物が分解性結合(例えば、エステル結合)を含み、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体の核酸分解活性の少なくとも一部が保持される、組成物を提供する。いくつかの態様において、分解性結合を通じてポリエチレングリコールにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より長いインビボ半減期を有する(例えば、hRNアーゼ-PEG複合物とリボヌクレアーゼインヒビター(RI)との間の親和性の減少により)。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、RNAを分解する能力がある(例えば、リボヌクレアーゼの酵素活性によって)。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体をポリエチレングリコールへコンジュゲートすることにより、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体について達成できる濃度よりもhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体のより高い血清中濃度が可能になる。いくつかの態様において、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、組換えhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体である。いくつかの態様において、hRNアーゼは、天然由来である。いくつかの態様において、組換えhRNアーゼは末端システインを有する。本発明は、hRNアーゼ分子に付着した水溶性ポリマー(例えば、PEG)の数によって制限されない。いくつかの態様において、単一の水溶性ポリマーがhRNアーゼ分子に付着している。いくつかの態様において、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上の水溶性ポリマー(例えば、PEG)がhRNアーゼ分子に付着している。いくつかの態様において、複合物は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体の分子あたり1個〜約4個のポリマー分子を含む。いくつかの態様において、PEG-hRNアーゼ複合物またはPEG-hRNアーゼ類似体複合物は、コンジュゲーションの度合いが混在している(例えば、集団のhRNアーゼメンバーにコンジュゲートした様々な数の水溶性ポリマーを有するPEG-hRNアーゼ複合物の集団)。いくつかの態様において、PEG-hRNアーゼ複合物またはPEG-hRNアーゼ類似体複合物は、分画された複合物である(例えば、hRNアーゼ分子の大部分(例えば、50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い;またはそれ以上)が、同数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上)の水溶性ポリマーを有する、PEG-hRNアーゼ複合物の集団)。いくつかの態様において、1個、2個、3個、またはそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子(例えば、hRNアーゼ)の数によって制限されない。実際、2個、3個、4個、5個、6個、またはさらに多くのリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のオリゴマーが含まれるがそれに限定されるわけではない、様々なオリゴマーが1つまたは複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしてもよい。
【0014】
いくつかの態様において、本発明は、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されている、hRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体にコンジュゲートしたポリエチレングリコール(PEG)、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物(例えば、癌の処置用)を提供する。いくつかの態様において、複合物は、分解性結合(例えば、エステル結合)を含む。いくつかの態様において、ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より免疫原性が低い。いくつかの態様において、ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体は、コンジュゲートされていないhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体より高い半減期および血清中濃度を有する(例えば、hRNアーゼ-PEG複合物とリボヌクレアーゼインヒビター(RI)との間の親和性の減少により)。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、複数の複合物を含み、必ずではないが好ましくは、それぞれがhRNアーゼに共有結合的に付着した1〜3個の水溶性ポリマーを有する組成物を提供する。そこでは各水溶性ポリマーは、好ましくは、5,000ダルトンより大きく約100,000ダルトンまでの範囲の公称平均分子量を有する。いくつかの態様において、複合物の水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)である。いくつかの態様において、水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)である。いくつかの態様において、本発明は、単一の水溶性ポリマー(例えば、モノPEG化されている)を含んだ複数のhRNアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複数のhRNアーゼは、hRNアーゼのモノマー、ダイマー、トリマー、および/またはより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0016】
いくつかの態様において、本発明は、ポリマーに共有結合的に付着したhRNアーゼを含む複数の複合物を生じるのに十分な条件下で、1つまたは複数の活性化された水溶性ポリマーをhRNアーゼに接触させる段階を含む、ポリマー複合物を調製するための方法を提供する。例えば、いくつかの態様において、本発明は、コンジュゲーション条件下でhRNアーゼをポリマー試薬と接触させる段階を含む、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物を調製するための方法を提供する。本発明は、hRNアーゼを水溶性ポリマーにコンジュゲートするために利用される方法によって制限されない。実際、還元的アミノ化を含む様々な化学作用を用いてもよいが、それに限定されるわけではない。
【0017】
同様に、本発明は、コンジュゲーションに用いられるポリマーの型によって制限されない。実際、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)、およびそれらの組み合わせを含む様々なポリマーを用いてもよいが、それに限定されるわけではない。しかしながら、ポリ(エチレングリコール)誘導体などのポリ(アルキレンオキシド)が本発明においてポリマーとして用いられることが、特に好ましい。いくつかの態様において、本発明の複合物を作製するために、活性化された水溶性ポリマーとhRNアーゼを接触させる。水溶性ポリマーの活性化は、得られるポリマーが、pH、温度などの適切な条件下でhRNアーゼがポリマーに共有結合的に付着するように共有結合を形成する限り、任意の技術分野で公知の方法によって達成され得る(例えば、活性化された水溶性ポリマーをhRNアーゼに接触させる段階は、活性化された水溶性ポリマーがhRNアーゼの所望の位置に共有結合的な付着を形成するのに十分な条件下で実行することができる)。
【0018】
定義
本明細書に用いられる場合、「被験体」という用語は、本発明の方法または組成物により処置されるべき個体(例えば、ヒト、動物、または他の生物体)を指す。被験体には、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、最も好ましくは、ヒトが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本発明の関連において、「被験体」という用語は、一般的に、癌の処置を受けるであろう、または癌の処置を受けている個体を指す。本明細書に用いられる場合、「被験体」および「患者」という用語は、特に断りのない限り交換可能に用いられる。
【0019】
本明細書に用いられる場合、「診断される」という用語は、疾患(例えば、癌)の、その徴候および症状(例えば、従来の治療に対する抵抗性)、または遺伝学的分析、病理学的分析、組織学的分析などによる認識を指す。
【0020】
本明細書に用いられる場合、「インビトロ」という用語は、人工的環境、および人工的環境内で起こる過程または反応を指す。インビトロ環境には、試験管および細胞培養が挙げられるが、それに限定されるわけではない。「インビボ」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で起こる過程または反応を指す。
【0021】
本明細書に用いられる場合、「有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果(例えば、癌細胞の死滅または増殖阻害)をもたらすのに十分な組成物(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1)を含む組成物)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与、適用、または投薬で投与することができ、特定の処方または投与経路に限定されることを意図されない。
【0022】
本明細書に用いられる場合、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ(例えば、生分解性結合を含むhRNアーゼ-PEG複合物)、薬学的組成物、もしくは他の薬剤、または生理学的システム(例えば、被験体、またはインビボ、インビトロ、もしくはエクスビボの細胞、組織、および器官)へ治療的処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為を指す。ヒト身体への例示的な投与経路は、眼(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、粘膜(例えば、口腔粘膜または頬)、直腸、耳、注射による(例えば、静脈内に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内になど)などを通じてであり得る。
【0023】
本明細書に用いられる場合、「共投与」という用語は、被験体に対して、少なくとも2つの作用物質を投与することまたは治療を施すことを指す。いくつかの態様において、2つもしくはそれ以上の作用物質または治療の共投与は同時である。他の態様において、第一作用物質/治療は、第二作用物質/治療の前に投与される。当業者は、用いられる様々な作用物質または治療の処方および/または投与経路を変えてもよいことを理解している。共投与の適切な投薬量については、当業者が容易に決定することができる。いくつかの態様において、作用物質または治療を共投与する場合、それぞれの作用物質または治療は、それらの単独での投与に適切であるものより低い投薬量で投与される。従って、作用物質もしくは治療の共投与が、有害(例えば、毒性)である可能性のある作用物質の必要投薬量を低下させる態様において、または処置の標的(例えば、癌細胞)が、1つもしくは複数の作用物質の単独投与での処置に対して感受性がより低く(例えば、抵抗性に)なってきている(例えば、1つもしくは複数の他の作用物質と組み合わせると、そのような処置の標的が感受性の増加を示す(例えば、非抵抗性である))場合、共投与は特に望ましい。
【0024】
本明細書に用いられる場合、「毒性」という用語は、その毒物の投与前の同じ細胞または組織と比較した、被験体、細胞、または組織への任意の損傷効果または有害効果を指す。
【0025】
「結合」または「リンカー」という用語は、ポリマーセグメントおよびhRNアーゼの末端、またはhRNアーゼの求電子基もしくは求核基などの相互接続部分を連結するために任意で用いられる原子、または原子の一群を指すために本明細書で用いられる。本発明のリンカーは、加水分解に安定であってもよく、または分解性(例えば、生理学的加水分解性、または酵素分解性)結合を含んでもよい。
【0026】
本明細書に用いられる場合、「分解性結合」という用語は、ポリマー(例えば、本発明のPEG-hRNアーゼ複合物)に関して用いられる場合、生理学的に開裂可能な結合(例えば、加水分解され得る(例えば、インビボで)、または他の方法で逆戻りできる(例えば、酵素的開裂によって)結合)を含む複合物を指す。そのような生理学的に開裂可能な結合には、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、およびケタール結合が挙げられるが、それに限定されるわけではない(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,838,076号参照)。同様に、複合物は、ポリマーとhRNアーゼとの間の結合に存在する開裂可能な結合を含んでもよいか、またはポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含んでもよい(例えば、開裂した時に、ポリマーのほんの一部がhRNアーゼ分子上に残存するように)(例えば、米国特許出願第20050158273号および第20050181449号参照、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられている)。例えば、エステル結合を含むPEGポリマーは、PEG-hRNアーゼ複合物を生成するためのhRNアーゼへのコンジュゲーションに利用することができる(例えば、Kuzlowski et al., Biodrugs, 15, 419-429 (2001)参照)。本発明の分解性結合を含む複合物は、ポリマーが取り除かれている(例えば、完全に、または部分的に取り除かれている)hRNアーゼを生じる(例えば、インビボで結合の加水分解後)能力がある。
【0027】
「生理学的に開裂可能な」または「加水分解性」または「分解性」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解する)結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2つの中心原子を接続する結合の一般的な型にだけでなく、これらの中心原子に付着した置換基にも依存すると考えられる。適当な加水分解に不安定かまたは弱い結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0028】
「酵素分解性結合」とは、1つまたは複数の酵素による分解を受けやすい結合を意味する。
【0029】
「加水分解に安定な」結合(linkage)または結合(bond)は、水中で実質的に安定である(すなわち、生理学的条件下で任意のかなりの程度まで長時間に渡って加水分解を受けない)化学結合(例えば、典型的には、共有結合)を指す。加水分解に安定な結合の例には、炭素-炭素結合(例えば、脂肪鎖における)、エーテル、アミド、ウレタンなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0030】
本明細書に用いられる場合、「関心対象部位」という用語は、リボヌクレアーゼに関して用いられる場合、修飾されるか、または修飾(例えば、リボヌクレアーゼ変種を創造するための欠失、置換、もしくは他の型の突然変異のための、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーションのための)の標的にされるリボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)内の領域、小領域、および/またはアミノ酸残基を指す。従って、「関心対象部位」は、その修飾(例えば、リボヌクレアーゼ変種を創造するための欠失、置換、もしくは他の型の突然変異について、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーションについて)後にリボヌクレアーゼ内に保持されることが望まれる、本明細書に記載されたリボヌクレアーゼの特性(例えば、生物活性(例えば、リボ核酸分解活性、癌細胞を死滅させる活性、オリゴマー形成能力など))に基づいて、「高い関心対象部位」、「中程度の関心対象部位」、または「低い関心対象部位」と特徴付けられてもよい。例えば、対象となり得る部位は、図1に描かれている。リボヌクレアーゼ内の残基の修飾における関心のレベルは、以下の記号を用いて示されている:低い関心対象部位(「−」)、中程度の関心対象部位(「0」)、および高い関心対象部位(「+」)。さらに、二次構造が示されている:「a」または「a#」=αヘリックス;「b」または「b#」=βシート。基質RNAに結合するリボヌクレアーゼの部位もまた標識されている:「B1」および「B2」=基質(塩基)結合部位、「P1」=主要な活性部位、ならびに「P2」および「P-1」=基質(リン酸)結合部位。ジスルフィド結合に関与するシステイン残基は、「disulf」により標識されている。リボヌクレアーゼインヒビターに対する、同定されている接触点は、「RI」で標識されている。アンジオゲニンについて、推定の受容体結合部位は、「Rec」と標識されている。
【0031】
本明細書に用いられる場合、「薬学的組成物」という用語は、組成物をインビトロ、インビボ、もしくはエクスビボでの診断的または治療的な使用に特に適するものにさせる、不活性または活性な担体との活性作用物質の組み合わせ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1))を指す。
【0032】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、被験体に投与された場合、有害反応(例えば、毒性反応、アレルギー性反応、または免疫学的反応)を実質的に生じない組成物を指す。
【0033】
本明細書に用いられる場合、「局所的に」という用語は、本発明の組成物の、皮膚表面ならびに粘膜細胞および粘膜組織(例えば、歯槽粘膜、頬粘膜、舌粘膜、咀嚼粘膜、膣粘膜、または鼻粘膜、ならびに空洞器官または体腔を裏打ちする他の組織および細胞)への適用を指す。
【0034】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的な薬学的担体のいずれかを指し、リン酸緩衝食塩水、水、乳濁液(例えば、油/水または水/油乳濁液など)、および様々な型の湿潤剤、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、ラウリル硫酸ナトリウム、等張性吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。組成物はまた、安定剤および保存剤を含んでもよい。担体、安定剤、および補助剤の例は、当技術分野において記載されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, Pa. (1975)参照)。
【0035】
本明細書に用いられる場合、「非ヒト動物」という用語は、すべての非ヒト動物を指し、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、トリなどの脊椎動物が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0036】
本明細書に用いられる場合、「キット」という用語は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。反応材料(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1))を含む組成物)に関連して、そのような送達システムは、一つの場所から別の場所への反応試薬および/またはサポート材料(例えば、材料を用いるための書面の使用説明書など)の貯蔵、輸送、または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連した反応試薬および/またはサポート材料を含む1つまたは複数の閉鎖容器(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる場合、「細分化された(fragmented)キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素のサブポーション(subportion)を含む2つまたはそれ以上の別々の容器を含む送達システムを指す。容器は、意図されたレシピエントへ一緒にまたは別々に送達されてもよい。例えば、第一の容器は、特定用途のための、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼ(例えば、PEGにコンジュゲートしたhRNアーゼ1)を含む組成物を含むことができ、一方、第二の容器は第二の薬剤(例えば、第二の化学療法剤)を含む。実際、それぞれが全キット構成要素のサブポーションを含む2つまたはそれ以上の別々の容器を含む任意の送達システムが、「細分化されたキット」という用語に含まれる。対照的に、「複合キット」は、特定用途に必要とされる反応材料の構成要素の全部を単一の容器に(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一の箱に)含む送達システムを指す。「キット」という用語は、細分化されたキットおよび複合キットの両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ヒト膵臓リボヌクレアーゼにおけるアミノ酸残基、加えて低い関心対象部位(−)、中程度の関心対象部位(0)、または高い関心対象部位(+)として描かれた、そこに位置する、修飾されるかまたは修飾の標的となる部位(「関心対象部位」)を示す。
【図2】N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)直鎖状30kDa mPEGとコンジュゲートしたRNアーゼAの4つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼA;(2)RNアーゼ:PEG(1:1)反応;(3)RNアーゼ:PEG(1:3)反応;および(4)RNアーゼ:PEG(1:10)反応。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図3】アルデヒド直鎖状30kDa mPEGとコンジュゲートしたRNアーゼの4つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼA;(2)RNアーゼ:PEG(1:2)反応;(3)RNアーゼ:PEG(1:4)反応;および(4)RNアーゼ:PEG(1:8)反応。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図4】PEGの存在について試験された陽イオン交換カラムからの画分を示す。
【図5】2つの試料について泳動されたSDS-PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼAおよび(2)部分的に精製されたRNアーゼ:PEG(1:4)。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図6】以下のRNアーゼ1複合物のSDS PAGEを示す:(1)野生型RNアーゼ1;(2)野生型RNアーゼ1;(3)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH5;(4)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH5;(5)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH5;(6)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH6;(7)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH6;(8)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH6;(9)RNアーゼ1+30kDa PEG、pH7;(10)RNアーゼ1+40kDa PEG、pH7;(11)RNアーゼ1+60kDa PEG、pH7。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図7】実施例4の直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ1の精製手順の第一段階(陰イオン交換)の試料のSDS-PAGEを示す:(1)陰イオン交換カラム上に負荷された試料;(2)陰イオン交換カラムからの通過流;(3)陰イオン交換カラムから溶出された物質。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図8】実施例4の直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ複合物の精製手順の第二段階(陽イオン交換クロマトグラフィー)からの試料のSDS-PAGEを示す:(1)陽イオン交換カラム上に負荷された試料;(2〜17)陽イオン交換カラムからの画分。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図9】複合物の精製が完了した後のSDS-PAGEを示す:(1)最終精製生成物(ブチルアルデヒド直鎖状30kDa mPEG-RNアーゼ複合物)。分子量ラダーは比較として提供されている(MWマーカー)。
【図10】RNアーゼ1-アルデヒド30kDa PEG複合物およびRNアーゼ1-アルデヒド40kDa PEG複合物の両方の酵素活性を示す。
【図11】癌の異種移植片モデルにおける、シスプラチンに対する直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ1複合物の有効性、および被験体体重の変化により反映される作用物質の毒性を示す。
【図12】癌の異種移植片モデルにおける、シスプラチンに対する分枝型40kDa PEG:RNアーゼ1複合物の有効性、および被験体体重の変化により反映される作用物質の毒性を示す。
【図13】癌の異種移植片モデルにおける、ドキソルビシンに対する分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
哺乳動物細胞において、ウシRNアーゼAおよびヒトリボヌクレアーゼ1(hRNアーゼ1)などの膵臓型リボヌクレアーゼは、RNAのリボヌクレオチドへの分解を触媒する分泌型酵素である。それらの活性は、遍在性のサイトゾルタンパク質であるリボヌクレアーゼインヒビター(RI)に結合することにより阻害される。RIは、内因性の膵臓型RNアーゼに高親和性で結合し、それらの活性を中和し、それにより細胞(例えば、正常細胞または癌細胞)に対して無毒性にする。RNアーゼ活性が阻害される場合、細胞のRNAは損傷を受けず、細胞は生存可能なままである。正常細胞において、リボヌクレアーゼ活性は堅固に制御されるが、リボヌクレアーゼ活性が制御されない場合には、リボヌクレアーゼ活性は細胞のRNAを破壊し、細胞の死または死滅に至る。
【0039】
リボヌクレアーゼを、ヒト細胞、特に癌細胞に対して毒性にするためにいくつかのアプローチが用いられている。第一のアプローチは、ヒトに対して進化的に遠く、かつヒトRIタンパク質によって阻害されないリボヌクレアーゼについて選択した。例えば、カエル(ヒョウガエル(Rana pipiens))リボヌクレアーゼは、ヒト細胞に置かれた場合、ヒトRIによる有意な阻害を示さず、それにより活性を保ち(例えば、RNAを分解し)、細胞死へと導く。
【0040】
第二のアプローチは、組換えDNAテクノロジーを利用して、高レベルのリボ核酸分解活性を示す(例えば、それらはヒトRIによって有意には阻害されないという理由で)、哺乳動物リボヌクレアーゼ突然変異体を作製する。これらの突然変異型酵素は、酵素がRIとの会合および結合を回避するかまたは他の生物活性(例えば、癌細胞を死滅させる能力)を有するため、癌細胞内で高レベルのリボ核酸分解活性を供給する。この制御されていない活性は、特に、癌細胞に対して致死性であり得る。この突然変異アプローチは、哺乳動物タンパク質のウシRNアーゼAおよびヒトRNアーゼ1で実証されており、米国特許第5,389,537号および同第6,280,991号に記載され、それらの特許の開示は全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0041】
哺乳動物(例えば、ヒト)の膵臓リボヌクレアーゼは、約14kDaの分子量を有する低分子タンパク質である。これらのタンパク質は、腎臓を介して非常に迅速に排出される。従って、それらの有効性(例えば、それらのリボ核酸分解活性)および安全性プロファイルを授ける特徴に有意には影響を及ぼすことなく、リボヌクレアーゼの薬物動態プロファイルを向上させることが望ましい。この目的を達成するために、機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなくかつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、ヒトリボヌクレアーゼの水溶性ポリマーへのコンジュゲーションは、いくつかの態様において、そのタンパク質の酵素活性を安定化することによるかまたは他の機構によりリボヌクレアーゼがRIから回避することで、リボヌクレアーゼの有効性および薬物動態(例えば、内部移行、持続的な酵素活性、細胞分解の能力など)を向上させる。
【0042】
本発明は、これらのタンパク質の酵素活性の損失または他の所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させる能力および/またはオリゴマー形成能力)の喪失がなく、リボヌクレアーゼ(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1))を修飾する方法、およびそのような修飾リボヌクレアーゼを含む組成物を提供する(例えば、実施例1〜7参照)。従って、いくつかの態様において、本発明は、非修飾hRNアーゼと比較して、インビボで細胞(例えば、癌細胞)への毒性がより強い修飾リボヌクレアーゼ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたhRNアーゼまたはhRNアーゼ類似体)を提供する。いくつかの態様において、修飾リボヌクレアーゼは、非癌性細胞と比較して癌性細胞への毒性がより強く、特定の腫瘍を標的にすることが可能である。いくつかの態様において、修飾リボヌクレアーゼは、ほとんど副作用を示さず、ヒト免疫応答を刺激しないかまたは非修飾hRNアーゼより免疫応答への刺激は少ない(例えば、実施例6および7参照)。従って、本発明は、リボ核酸分解活性の検出可能な量(例えば、1%より多い;5%より多い;10%より多い;20%より多い;30%より多い;40%より多い;50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い)を維持しながら(例えば、それにより細胞(例えば、癌細胞)特異的毒性または腫瘍増殖阻害活性をもたらす)、低免疫原性および低副作用を示す、野生型または突然変異型のリボヌクレアーゼに由来する修飾リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ(例えば、水溶性ポリマー複合物))を提供する(例えば、実施例6および7参照)。
【0043】
「ヒトリボヌクレアーゼ」、「hRNアーゼ」という用語および機能的同義語は、野生型ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、hRNアーゼ8))、ならびに任意のhRNアーゼ突然変異体もしくは変種、任意の組換え酵素もしくは関連酵素、またはインビボおよびインビトロでリボ核酸分解活性もしくは他の所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させること、RNAを分解する能力)を保持する、hRNアーゼの任意の合成バージョンまたは断片を含む。変種は、そのタンパク質の翻訳後プロセシングにより(例えば、生産株に存在する酵素によるかもしくは製造過程の任意の段階で導入される酵素もしくは試薬によって)、または構造遺伝子の突然変異により、作製してもよい。突然変異には、部位欠失、挿入、ドメイン除去、および置換の突然変異を挙げてもよい。
【0044】
「hRNアーゼ類似体」という用語は、野生型ではないhRNアーゼの任意の型を含むと定義される。本発明に企図されるhRNアーゼおよびhRNアーゼ類似体を、組換え技術によって発現させてもよく(例えば、細胞培養物、もしくはマウスなどの高等組換え種から、または別な方法で、哺乳動物細胞宿主、昆虫、細菌、酵母、爬虫類、真菌などに発現させる)、または合成的に構築してもよい。これは、合成ペプチドおよびポリペプチドを含む活性保持している合成的な構築物、またはその酵素活性に関与するhRNアーゼポリペプチドの部分の組換え発現、またはキメラタンパク質を含むより大きなタンパク質もしくはポリペプチドの一部としての組換え発現を含む。
【0045】
従って、hRNアーゼの活性型のみを含む、組換え産生されたかまたは合成的に製造されたhRNアーゼ調製物を用いることができる。均一なhRNアーゼおよび均一で完全に活性なhRNアーゼ(例えば、発現した野生型タンパク質またはその類似体から調製される組成物を含む)の組換え発現は、記載されている(例えば、2005年11月24日に公開された米国特許出願公開第20050261232号参照、その開示は全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
【0046】
いくつかの態様において、本発明は、疾患、特に癌およびウイルス感染を予防、処置、または治療するのにhRNアーゼ類似体を利用する。組成物はまた、診断用の適用(例えば、薬物スクリーニングまたは癌の特徴付けに関連して)および研究適用にも用いられる。いくつかの態様において、hRNアーゼは、それらが送達される細胞に対して毒性であるように操作される(例えば、組換えDNA技術(例えば、hRNアーゼ類似体の遺伝子操作)によって)。従って、いくつかの態様において、hRNアーゼ自体は(例えば、水溶性ポリマーとの共有結合的コンジュゲーションに加えて)、hRNアーゼの天然インヒビターに対して感受性がより低いように、および/または宿主免疫システムを回避するように、操作される。
【0047】
本発明は、本明細書に記載された方法による修飾に利用されるリボヌクレアーゼの型によって制限されない。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはウシリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはカエルリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒトリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼは好酸球由来の神経毒(EDN/RNアーゼ2)である(例えば、Domachowske et al., Nucleic Acids Res 26(23):5327-32 (1998)参照)。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはアンジオゲニンである。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒト好酸球カチオン性タンパク質(ECP)である(例えば、Sorrentino and Glitz, FEBS Lett. 288(1-2):23-6 (1991)参照)。
【0048】
いくつかの態様において、本発明は、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させること)を保持しながら、インビボでの循環半減期を増加させるためのウシリボヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼA)のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの態様において、リボヌクレアーゼAは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するそのタンパク質の領域において、水溶性ポリマーへコンジュゲートしている。いくつかの好ましい態様において、リボヌクレアーゼAは、RIからの回避に関与しないそのタンパク質の領域(例えば、リボヌクレアーゼAのRIへの結合に影響を及ぼさない領域)において、水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。RIからの回避に関与しない領域の例には、1位、49位、75位、または113位のアミノ酸残基を含む領域が挙げられるが、それに限定されるわけではない。従って、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの態様において、水溶性ポリマーのリボヌクレアーゼAへのコンジュゲーションは、たとえコンジュゲーションがリボヌクレアーゼがRIを回避するのを助けないとしても、生物活性(例えば、癌細胞を死滅させること)を有する。
【0049】
いくつかの態様において、リボヌクレアーゼはヒトリボヌクレアーゼである。いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマーのコンジュゲーションのためにhRNアーゼにおける独自の官能基の組み込みを利用する。例えば、いくつかの態様において、水溶性ポリマーへのコンジュゲーションに遊離チオール基を供給するために、システイン分子をhRNアーゼの中へと操作する(例えば、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させる能力)の損失を伴わずに)。遊離チオール基は、RNアーゼの他の所に見出されず、それにより、均一なコンジュゲーションを生じる能力を提供する。他の態様において、組換えDNA技術を利用して、直交性官能基を有する非天然アミノ酸を、対象となるhRNアーゼへ組み込むために修飾されたコドンまたは新規コドンを供給する(例えば、リボ核酸分解活性の損失を伴わずに)。
【0050】
好ましい態様において、ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)における修飾(例えば、欠失、突然変異、および/または水溶性ポリマーへのコンジュゲーション)に望ましい残基は、リボヌクレアーゼの三次構造および/または安定性の崩壊を避けるように選択される。いくつかの態様において、これらの残基は、そのタンパク質の表面上にある(例えば、溶媒(例えば、水または緩衝液)に通常曝された残基)。例えば、いくつかの態様において、修飾される残基の型には、結晶構造において不規則に見えるアミノ酸、リボヌクレアーゼインヒビタータンパク質に接触する残基、および三次構造(例えば、αヘリックスおよびβシート)に関与しないアミノ酸、構造(例えば、αヘリックスおよびβシート)間のループ領域のアミノ酸、加えてそのタンパク質の末端(N末端およびC末端)近くのアミノ酸が挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、追加のアミノ酸残基がN末端またはC末端のいずれか一方に付加される(例えば、RNアーゼ類似体を作製するために、および/または水溶性ポリマーのコンジュゲーションのために)。
【0051】
いくつかの態様において、リボヌクレアーゼは、水溶性ポリマーに付着場所(例えば、アミノ酸の側鎖内の原子へ)を提供するために、例えば、リシン、システイン、および/またはアルギニンなどの1つまたは複数のアミノ酸残基を含むように修飾される。アミノ酸残基を付加するための技術は当業者に周知である(例えば、March, Advanced Organic Chemistry: Reactions Mechanisms and Structure, 4th Ed.(New York: Wiley-Interscience, 1992参照)。
【0052】
本発明は、本明細書に記載されたリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)に施される修飾の型によって制限されない。いくつかの態様において、本発明のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)は、デキストラン、糖質、アルブミン、担体タンパク質、および抗体(例えば、リボヌクレアーゼの半減期を延ばすために用いられる非ターゲティング抗体)を含む群より選択される1つまたは複数の部分の付着によって修飾される。
【0053】
いくつかの態様において、その側鎖が溶媒(例えば、緩衝液または水)の手の届きやすい三次構造におけるアミノ酸が、三次構造を妨害することなく修飾される。例えば、βシート内の位置している場所でジスルフィドを形成するシステイン残基(例えば、Cys84)を記載する文献報告によって明らかなように、三次構造内のすべての変化が良くないとは限らない。
【0054】
いくつかの態様において、修飾された場合に、酵素活性および/もしくは基質結合性を破壊するかまたは有意に阻害するhRNアーゼ内のアミノ酸は、修飾の標的にならない。いくつかの態様において、修飾された場合に、酵素活性および/もしくは基質結合性を破壊するかまたは有意に阻害するhRNアーゼ内のアミノ酸が、特異的に修飾の標的になる。
【0055】
ヒト膵臓リボヌクレアーゼについてのアミノ酸残基は図1に提供されている。本発明は、各アミノ酸の修飾の有用性の順位を提供する(例えば、修飾に対する関心によって(例えば、機能性リボヌクレアーゼ(例えば、所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させることおよび/またはリボ核酸分解活性)を含む)をもたらすように)示される)。アミノ酸は以下のとおり図1に標識されている。
・低い関心(−)
・中程度の関心(0)、または
・高い関心(+)。
【0056】
1つまたは複数の修飾部位を用いてもよいことは理解されると考えられる。好ましくは、選択される部位は高い関心対象部位である。しかしながら、1つもしくは複数の中程度の関心対象部位または低い関心対象部位を、意図された適用に望ましくかつ適切に用いることができる。いくつかの態様において、ヒトRNアーゼは、メチオニン(例えば、野生型ヒトRNアーゼの一部ではない)がそのタンパク質の最初のアミノ酸として組み入れられているように、(例えば、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで)作製される(例えば、そのタンパク質(例えば、大腸菌(E. coli)に産生された組換えヒトリボヌクレアーゼ)を産生するために用いられる方法によって)。従って、いくつかの態様において、図1に描かれたアミノ酸残基の番号付けは、1という数値だけずれる場合がある(例えば、メチオニンがそのタンパク質へ組み入れられた場合には、図1に示されたヒトRNアーゼのアミノ酸残基の番号付けは1だけずれる(すなわち、メチオニンは1位に組み入れられているため、図1に描かれたアミノ酸の番号付けは1だけ不足していると考えられ、例えば、残基番号10は1位に組み入れられたメチオニンのために、実際には残基番号11になると考えられる))。同様に、図1に描かれた位置はまた、RNアーゼA(例えば、ウシ)における対応する数値位置に適用してもよい。
【0057】
いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマーにコンジュゲートしているタンパク質を作製するために、S-ペプチドおよびS-タンパク質を生じ得るhRNアーゼの消化を利用する(例えば、Hamachi et al., Bioorg Med Chem Lett 9, 1215-1218 (1999); Goldberg and Baldwin, Proc Natl Acad Sci, 96, 2019-2024 (1999); Asai et al., J Immun Meth, 299, 63-76 (2005); Backer et al., J Cont Release, 89, 499-511 (2003); Backer et al., Bioconj Chem, 15, 1021-1029 (2004)参照)。例えば、サブチリシンによるウシRNアーゼAの消化は、主に、Ala20とSer21の間の切断による2つの断片を生じる。短い方の断片(アミノ酸1〜20位)はS-ペプチドと呼ばれ、長い方の断片(アミノ酸20〜124位)はS-タンパク質と呼ばれる。2つの断片は中性pHで強固に結合し、時としてRNアーゼSまたはRNアーゼS'と呼ばれる。RNアーゼSは活性なリボヌクレアーゼである。S-ペプチド-S-タンパク質相互作用は、アフィニティー精製、および造影剤または薬物を標的にするための三次ドッキング系に用いられている。従って、いくつかの態様において、本発明は、ヒトリボヌクレアーゼのために類似したS-ペプチド-S-タンパク質の生成を提供する。
【0058】
いくつかの態様において、S-ペプチド成分の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションによって、S-タンパク質と組み合わされた際、RNアーゼS酵素内でリボヌクレアーゼの活性が維持されることが企図される。例えば、hRNアーゼ1の最初の20個のアミノ酸内にリシン残基があるが(1位、6位、および7位に)、これらの残基のいずれも、リシン41位における酵素活性にとって重要でないように思われる。従って、いくつかの態様において、S-ペプチド内のリシン分子の水溶性ポリマーへのコンジュゲーションがS-タンパク質との会合前に起こり、それにより41位のリシンが修飾されない(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしていない)ままであり、それにより酵素活性を保持する水溶性ポリマーへコンジュゲートしたRNアーゼSを生じる。いくつかの態様において、S-タンパク質成分がコンジュゲーションに用いられ、その後、S-ペプチド部分に付加され、RNアーゼS酵素機能を獲得する。
【0059】
本発明は、本明細書に記載されたヒトリボヌクレアーゼへのコンジュゲーションに利用される水溶性ポリマーの型によって制限されない。実際、任意の生体適合性の水溶性ポリマーを用いてもよい。いくつかの態様において、水溶性ポリマーは、非ペプチド性、無毒性、非天然、および/または生体適合性である。水溶性ポリマーは、ポリマーの単独での使用に関係したか、または生体組織に関連して(例えば、患者への投与)別の物質(例えば、hRNアーゼ1などのhRNアーゼにコンジュゲートした)に関係した有益な効果が、例えば医師などの臨床医によって評価されるいかなる有害な効果をも上回る場合には、生体適合性と見なされる。非免疫原性に関して、ポリマーは、インビボでのポリマーの意図された使用が望ましくない免疫応答(例えば、抗体の形成)を生じない場合、または免疫応答が生じ、臨床医の評価としてそのような応答が臨床的に有意もしくは重要であるとは判断されない場合には、非免疫原性と見なされる。従って、いくつかの好ましい態様において、水溶性ポリマーは生体適合性かつ非免疫原性である。
【0060】
本発明の水溶性ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼに付着した場合、ポリマーが生理学的環境などの水性環境で沈殿しないように選択される。いくつかの態様において、ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質へのコンジュゲーションの方法に基づいて選択される。例えば、還元的アルキル化を利用する方法のために選択されるポリマーは、重合の程度が制御できるように単一の反応性アルデヒドを有するべきである。ポリマーは、分枝型または非分枝型でもよい。好ましくは、最終生成物の調製物の治療的使用について、ポリマーは薬学的に許容されるものである。ポリマー/タンパク質複合物が治療的に用いられるかどうかというような考慮、ならびに、もしそうであれば、望ましい投薬量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、および他の考慮に基づいて、当業者は望ましいポリマーを選択することができると考えられる。例えば、これらは、当技術分野において周知の方法を用いて、複合物のリボ核酸分解活性についてインビトロでアッセイすることにより確認することができる。
【0061】
水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)などのポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、および前述のいずれかの組み合わせを含む群より選択してもよいが、それに限定されるわけではない。
【0062】
ポリマーは、直鎖状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)でも分枝型でもよい。さらに、ポリマーは、分岐型(例えば、フォーク型PEG、またはポリオールコアに付着したPEG)、樹状型であってもよく、かつ/または分解性結合を含んでもよい。ポリマーの内部構造は、いくつかの異なるパターン(例えば、限定されるわけではないが、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーを含むパターン)のいずれかに編成できると考えられる。
【0063】
さらに、ポリマーを、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)内の所望の残基に結合するのに適切な、適した活性化基で「活性化」してもよい。「活性化」ポリマーは、リボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)との反応のための反応基を有するポリマーを指す。本発明で有用である(例えば、水溶性ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために)と考えられる活性化ポリマー、およびそれらのタンパク質へのコンジュゲーションの方法の例は、当技術分野において公知であり、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);およびRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)に詳細に記載されており;それぞれはすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0064】
ポリマーは任意の分子量であってよい。例えば、ポリエチレングリコールについて、好ましい分子量は、約2kDa〜約150kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製において、いくつかの分子が規定された分子量より大きい、いくらか小さいであろうことを示す)。所望の治療的プロファイル(例えば、望まれる徐放の持続期間、生物活性に関してもしあればその効果、取り扱いやすさ、抗原性の程度または欠如、および本発明の治療的組成物(例えば、hRNアーゼタンパク質または類似体を含む)へのポリエチレングリコールの他の公知の効果)に応じて他のサイズを用いてもよい。
【0065】
ポリエチレングリコール(PEG)が水溶性ポリマーとして利用される場合、PEGは、その末端の1つを不活性基でキャッピングされてもよい。例えば、PEG分子は、mPEGとも呼ばれるメトキシ-PEGであってもよい。それは、ポリマーの一方の末端がメトキシ(すなわち、-OCH3)基であり、他方の末端が化学修飾され得る官能基(例えば、ヒドロキシル)で、標的タンパク質(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)上の反応基へのコンジュゲーションに用いられる、PEGの型である。いくつかの態様において、米国特許出願公開第20040235734号に記載されたPEGポリマーが用いられる。
【0066】
いくつかの態様において、PEGポリマーは、1つまたは複数の弱いかまたは分解性の結合を含んでもよい。例えば、PEGポリマーは、エステル結合(例えば、時間が経てば(例えば、患者内に存在する場合)加水分解してもよい)を含んでもよい。いくつかの態様において、分解性結合を含むPEGポリマーの加水分解は、2つまたはそれ以上の断片(例えば、親分子より低い分子量の)を生じる。
【0067】
本発明は、分解性結合の型によって制限されない。実際、PEGポリマーは、炭酸結合;イミン結合;リン酸エステル結合;ヒドラゾン結合;アセタール結合;オルトエステル結合;アミド結合;ウレタン結合;ペプチド結合;およびオリゴヌクレオチド結合を含む様々な分解性結合の1つまたは複数を含むことができるが、それに限定されるわけではない。
【0068】
ポリマー自体の内部に1つまたは複数の分解性結合を含有することによって、本発明の複合物の薬物動態特性を制御する機構を追加することが企図される。例えば、いくつかの態様において、投与される際は複合物の酵素活性は皆無かそれに近いが、結合が分解する(例えば、加水分解する)ような条件に曝された場合に酵素のリボ核酸分解活性が活性化される、本発明のhRNアーゼ-PEG複合物を患者に投与してもよい。従って、いくつかの態様において、PEG分子内の分解性結合を、複合物の特異性および有効性を増加させるのに用いることができる。
【0069】
本発明の複合物がポリマー(例えば、PEG)とヒトリボヌクレアーゼタンパク質との間に結合を含んでもよいことが企図される。いくつかの態様において、結合は安定な結合(例えば、アミド結合、カルバメート結合、アミン結合、チオエーテル/スルフィド結合、またはカルバミド結合)である。いくつかの態様において、結合は、加水分解で分解可能である(例えば、hRNアーゼの放出(例えば、ポリマー(例えば、PEG)の一部もhRNアーゼ上に残存することなく)を可能にするために)。本発明は、利用される分解性結合の型によって制限されない。実際、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシロキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドを含むがそれに限定されるわけではない、様々な結合が本明細書で企図される。これらの結合は、hRNアーゼタンパク質(例えば、C末端カルボキシル基、もしくはアミノ酸側鎖の水酸基で)および/またはポリマーのいずれかの修飾により調製してもよい(例えば、当技術分野における公知の方法を用いて)。
【0070】
水溶性ポリマー(例えば、PEG)のリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)タンパク質分子に対する割合は様々であってもよく、反応混合物におけるそれらの濃度も同様である。一般的に、最適な比率(例えば、過剰な未反応タンパク質またはポリマーが皆無かそれに近い場合の反応(例えば、ポリマーが1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の部位にコンジュゲートする)の効率に関して)を決定することができる(例えば、選択されたポリマー(例えば、PEG)の分子量、利用されるコンジュゲーション化学作用、標的にされる関心対象部位の数などを用いて)。例えば、いくつかの態様において、非特異的コンジュゲーション反応(例えば、PEG化反応)を行い、その後で、精製(各hRNアーゼにコンジュゲートしたポリマー(例えば、PEG)の数に基づいてhRNアーゼを分離するために)を行うことができる。
【0071】
いくつかの態様において、複合物は組成物内に存在する。例えば、いくつかの態様において、組成物は複数の複合物を含み、各タンパク質がそのタンパク質に共有結合的に付着した1〜3個の水溶性ポリマーを含む。いくつかの態様において、組成物は複数の複合物を含み、各タンパク質がそのタンパク質に付着した1個、2個、3個、4個。5個、6個、またはそれ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、組成物は複合物集団を含み、複合物の大部分(例えば、65%より多い、70%より多い、75%より多い、80%より多い、85%より多い、90%より多い、95%より多い、97%より多い、98%より多い、99%より多い)が、同数(例えば、1個、2個、3個、またはそれ以上)のポリマー(例えば、PEG分子)に共有結合的に付着している。いくつかの態様において、1個、2個、3個、またはそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子(例えば、hRNアーゼ)の数によって制限されない。実際、2個、3個、4個、5個、6個の、またはさらに多いリボヌクレアーゼ(例えば、hRNアーゼ)のオリゴマーを含むがそれに限定されるわけではない、様々なオリゴマーが、1つまたは複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしてもよい。いくつかの態様において、本発明は、単一の水溶性ポリマー(例えば、モノPEG化されている)を含む複数のhRNアーゼ(例えば、hRNアーゼ1)を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複数のhRNアーゼは、hRNアーゼのモノマー、ダイマー、トリマー、および/またはより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0072】
好ましい態様において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、酵素(例えば、リボ核酸分解)活性の重要な部分を保持する。いくつかの態様において、複合物は、非修飾(例えば、コンジュゲートされていない)リボヌクレアーゼの酵素活性の約1%〜約95%を有する。いくつかの態様において、複合物は、非修飾リボヌクレアーゼより高い活性を有する。いくつかの態様において、修飾ヒトリボヌクレアーゼは、リボ核酸分解活性を有する非修飾の親リボヌクレアーゼの活性に対して、約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%、またはそれ以上を有する(例えば、当業者に周知のインビトロアッセイで測定した場合)。
【0073】
他の好ましい態様において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、もう一つの所望の性質(例えば、リボ核酸分解活性以外の(例えば、癌細胞を死滅させる能力))の重要な部分を保持する。機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明は任意の特定の作用機構に限定されないが、いくつかの態様において、修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物)は、リボ核酸分解活性の非存在下で(例えば、非修飾リボヌクレアーゼの70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満)、標的細胞(例えば、癌細胞または微生物に(例えば、ウイルスに)感染した細胞)を死滅させる能力がある(例えば、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質の他の特性により)。
【0074】
本発明は、水溶性ポリマーを本発明のヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために利用される方法によって制限されない。多数の型の化学作用が当技術分野において公知であり、本発明の組成物の作製に用いることができる。これらの方法は詳細に記載されている(例えば、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);およびRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)参照)。いくつかの態様において、本発明は、本発明の活性化ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするのに有用な、コンジュゲーション化学作用を利用する。
【0075】
例えば、N末端にコンジュゲートされたhRNアーゼ(例えば、N末端にPEG化されたhRNアーゼ)を得るために、還元的アルキル化を用いてもよい。ポリマー(例えば、PEG)とタンパク質部分との間を連結基を伴わずに付着させるための方法は、Francis et al., Stability of protein pharmaceuticals: in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization (Eds. Ahern., T. and Manning, M.C.) Plenum, N.Y., 1991に記載されている。いくつかの態様において、カルボキシメチルmPEGのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルの使用を含む方法が用いられる(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、1998年10月20日に発行された米国特許第5,824,784号参照)。
【0076】
いくつかの態様において、PEG-リボヌクレアーゼ複合物は、コンジュゲーション後、精製される。本発明は、利用される精製過程の型によって制限されない。実際、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および当技術分野において周知の他の方法を含むがそれに限定されるわけではない、様々な過程を利用してもよい。
【0077】
例えば、いくつかの態様において、水溶性ポリマー-hRNアーゼ複合物を精製して、1つまたは複数の異なる型の複合物(例えば、単一ポリマーに共有結合した複合物)を得ることができる。いくつかの態様において、コンジュゲーション反応の生成物を精製して、(例えば、平均して)一ヒトリボヌクレアーゼあたり概して1個、2個、3個、4個、またはそれ以上のポリマー(例えば、PEG)を得る。いくつかの態様において、異なる数のポリマーに共有結合的に付着したリボヌクレアーゼを分離/分画するために、またはコンジュゲートされていないタンパク質から、もしくはコンジュゲートされていないポリマーから複合物を分離するために、ゲル濾過クロマトグラフィーが用いられる。ゲル濾過カラムは当技術分野において周知であり、多数の供給元から入手できる(例えば、Amersham Biosciences, Piscataway, NJからのSUPERDEXおよびSEPHADEXカラム)。
【0078】
いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、癌を処置するために患者へ投与される。従って、いくつかの態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を投与する段階を含む、癌を処置する方法を提供する。
【0079】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物の用量は、被験体の年齢、体重、および全身状態、加えて処置されるべき状態(例えば、癌)の重症度、ならびに投与されるポリマー-リボヌクレアーゼ複合物の型に依存して異なってもよい。有効量(例えば、治療的有効量)は当業者に公知である。一般的に、治療的有効量は、1回または複数回の投薬で患者に投与される、1日あたり約0.001mg〜約500mg(例えば、0.01mg〜100mg)の範囲であるが、本発明は、利用される用量によって制限されない(例えば、0.001mg未満または500mgより多い量が1回または複数回の投薬で患者に投与される場合がある)。または、投薬は、週に1回もしくは複数回、または月に1回もしくは複数回、または前述の投薬のいずれかの組み合わせで与えられてもよい。
【0080】
いくつかの態様において、複合物は、1つまたは複数の他の薬剤と共投与される。いくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物が別の薬剤(例えば、抗癌剤)と共投与される場合、薬剤の一方または両方のより少ない用量を、治療的恩恵を損なうことなく、患者へ投与してもよい(例えば、それにより、望ましくない副作用を減少させるか、または薬物抵抗性の可能性を低減する)。本発明は、癌の処置に限定されない。実際、本発明の組成物は、本発明の組成物および方法を用いて恩恵を受けることができる(例えば、治療または予防することができる)任意の状態または疾患を処置するために、被験体に投与してもよい。本発明は、癌、腫瘍発生の処置、および転換した表現型の予防のための治療法および薬学的組成物を提供する。
【0081】
いくつかの態様において、本発明は癌の治療を提供する。いくつかの態様において、治療は、癌の処置のために水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を提供する。
【0082】
いくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物は、癌患者において、全身的にまたは局所的に投与され、腫瘍細胞を死滅させる、腫瘍細胞増殖および血管新生を阻害する、ならびに/または腫瘍細胞死を誘導することができる。それらは、静脈内に、髄腔内に、腹腔内に、および経口で投与することが可能である。さらに、それらは、単独で、または抗増殖性薬物もしくは他の抗癌剤と組み合わせて、投与することが可能である。
【0083】
組み合わせを企図する場合、本発明が組み合わせの特定の性質によって制限されることは意図されない。本発明は、単純な混合物および化学的ハイブリッドとしての組み合わせを企図する。
【0084】
本発明が治療用調製物の特定の性質によって制限されることは意図されない。例えば、そのような組成物は、生理学的に許容できる液体、ゲル、または固体の担体、希釈剤、補助剤、および賦形剤と共に供給することができる。
【0085】
これらの治療用調製物は、他の治療剤と同様の方法で、家畜についてなどの獣医学的使用、およびヒトにおける臨床的使用として、哺乳動物に投与することができる。一般的に、治療有効性に必要とされる投薬量は、投与の使用および様式の型、加えて個体宿主の個別的要求によって異なると考えられる。
【0086】
そのような組成物は、典型的には、液体溶液もしくは液体懸濁液として、または固形に調製される。癌のための経口製剤は、通常、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、結合剤、増量剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、および賦形剤などの通常用いられる添加剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、または粉末の形態を取り、典型的には1%〜95%、好ましくは2%〜70%の活性成分を含む。水溶性ポリマーを含む薬学的組成物に用いられる特定の賦形剤、抗菌剤、抗酸化剤、および界面活性剤は、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20040235734号に記載されている。
【0087】
組成物はまた、液体溶液または液体懸濁液のいずれかなどの注射可能物質として調製することができる。注射前の液体の溶液または懸濁液に適した固形を調製してもよい。
【0088】
本発明の組成物は、生理学的に許容および適合できる希釈剤または賦形剤と混合されることが多い。適した希釈剤および賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、およびそれらの組み合わせである。加えて、必要に応じて、組成物は、湿潤剤または乳化剤、安定剤またはpH緩衝剤などの少量の補助剤を含んでもよい。
【0089】
局所的投与などの他の投与様式に適する追加の製剤には、軟膏、チンキ、クリーム、ローション、および場合によっては、坐剤が挙げられる。軟膏およびクリームについて、伝統的な結合剤、担体、および賦形剤には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれてもよい。
【0090】
本発明の方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。
【0091】
例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、結腸癌、および/または膵臓癌)を処置するための水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物との併用に有用である化合物についてスクリーニングするため;癌の処置に関する化合物の有効性を評価するため;または化合物が癌と戦う機構(例えば、化合物がそのように戦うのは、アポトーシスを誘導することによるのか、分化を誘導することによるのか、増殖を減少させることによるのかどうかなど)を研究するため、本発明の方法をインビトロで用いることができる。例えば、いったん化合物が癌細胞の血管新生、増殖、および/または死滅(例えば、アポトーシスを引き起こす)を阻害するように水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と組み合わせて働く化合物であると同定されたならば、当業者は、化合物が癌細胞の死滅/アポトーシスを誘導するため、および/または癌細胞の血管新生、増殖を減少させる程度を評価するためにインビトロで本発明の方法を適用することができる。あるいは、当業者は、化合物が機能するのは、アポトーシスを誘導することによるのか、増殖および/もしくは血管新生を減少させることによるのか、またはこれらの方法の組み合わせによるのかを決定するために、本発明の方法を適用することができる。
【0092】
あるいは、本発明の方法を、癌(例えば、限定されるわけではないが、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、および結腸癌が挙げられる)を処置するためにインビボで用いることができる。例えば、癌細胞がヒト被験体に存在する場合に、本発明の方法をインビボで実行する場合、治療的有効量の化合物をヒト被験体に投与することにより(例えば、治療用物質(例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む)を腫瘍へ直接注射することによるか、または全身投与を通じて)、接触させることができる。
【0093】
本発明は、そのもう一つの局面において、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、結腸癌、または他の癌などの癌を処置する方法に関する。方法は、癌細胞の血管新生、増殖を阻害する、および/または癌細胞の死を引き起こすのに有効な化合物の量を被験体に投与する段階を含む。
【0094】
本発明は、処置される癌の型によって制限されない。実際、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、癌腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍を含むがそれに限定されるわけではない様々な癌を、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を用いて処置することができる。
【0095】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物を投与してもよい、適した被験体には、例えば、ラット、マウス、ネコ、イヌ、サル、およびヒトなどの哺乳動物が挙げられる。適したヒト被験体には、例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、結腸癌、および乳癌)に罹るリスクがあると以前に決定されている者、および癌に罹っていると診断されている者が挙げられる。
【0096】
癌に罹るリスクがあると決定された被験体において、本発明の組成物は、癌細胞が発生した場合には、好ましくは、癌細胞の血管新生、増殖を減少させる、および/または癌細胞の死滅(例えば、アポトーシス)を誘導するのに有効な条件下で、被験体に投与される。
【0097】
本明細書における組成物は、所望の用途に適切な、任意の適した形態に作り上げてもよい。適した剤形の例には、経口、非経口、または局所用の剤形が挙げられる。
【0098】
経口用に適した剤形には、錠剤、分散性粉末、顆粒、カプセル、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。錠剤用の不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、およびタルクが挙げられる。錠剤はまた、デンプンおよびアルギン酸などの造粒剤ならびに崩壊剤;デンプン、ゼラチン、およびアラビアゴムなどの結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクなどの平滑剤を含んでもよい。錠剤は、コーティングしなくてもよいし、崩壊および吸収を遅らせるために公知の技術によってコーティングしてもよい。カプセルに用いることができる不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびカオリンが挙げられる。懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤は、従来の賦形剤、例えば、メチルセルロース、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム;レシチンおよびステアリン酸ポリオキシエチレンなどの湿潤剤;エチル-p-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含んでもよい。
【0099】
非経口投与に適した剤形には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液などが挙げられる。それらはまた、使用直前に滅菌した注射可能な媒質に溶解または懸濁することができる滅菌した固体組成物の形態で製造してもよい。それらは、当技術分野において公知の懸濁剤または分散剤を含んでもよい。非経口投与の例は、脳室内投与、脳内投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、直腸投与、および皮下投与である。
【0100】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物に加えて、薬学的組成物は、他の活性物質、特に、癌の処置に有用であると同定されている活性物質を含むことができる。これらの活性物質は、複数の型の癌を処置するのにも有用であるような広範囲に渡る抗癌剤であり得るか、またはより特異的であってもよい(例えば、そのもう一つの活性物質が特定の型の癌(例えば、腺癌)を処置するのに有用であるが、第二の型の癌(例えば、口腔扁平上皮癌)を処置するのに有用ではない場合)。そのもう一つの活性物質はまた、それらの抗癌性質に加えて非抗癌性の薬理学的性質を有し得る。例えば、もう一つの活性物質は、抗炎症性を有することができるか、あるいはそのような抗炎症性がなくてもよい。
【0101】
本発明に従って投与される水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む組成物の実際の好ましい量は、製剤化された特定の組成物および投与様式によって異なってもよいことが理解されると考えられる。組成物の作用を改変し得る多くの因子(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、被験体の状態、薬物組み合わせおよび薬物反応感度、ならびに重症度)を、当業者は考慮することができる。投与は、最大耐容量内で連続的に、または周期的に実施することができる。所与の一連の条件に対する最適な投与速度については、従来の用量投与試験を用いて当業者が確認することができる。
【0102】
幅広い範囲の治療剤が本発明と共に用いられる。例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と共投与できる任意の治療剤は、本発明での使用に適している。
【0103】
本発明のいくつかの態様は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物(ならびにその鏡像異性体、誘導体、および薬学的に許容される塩)、および少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法薬などの従来の抗癌剤および/または放射線治療)を被験体に投与する段階を提供する。
【0104】
本発明と共に用いるのに適した抗癌剤には、アポトーシスを誘導する薬剤、核酸損傷を誘発する/引き起こす薬剤、核酸合成を阻害する薬剤、微小管形成に影響を及ぼす薬剤、およびタンパク質合成または安定性に影響を及ぼす薬剤が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0105】
本発明の組成物および方法に用いるのに適した抗癌剤のクラスには、限定されるわけではないが、以下が挙げられる:1)微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビンデシンなど)、微小管安定剤(例えば、パクリタキセル(Taxol)およびドセタキセルなど)を含むアルカロイド、およびエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)およびテニポシド(VM-26)など)およびトポイソメラーゼIを標的にする作用物質(例えば、カンプトテシンおよびイシリノテカン(CPT-11)など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含む、クロマチン機能阻害剤;2)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、およびブスルファン(Myleran)など)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびセムスチンなど)、および他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、およびマイトマイシンなど)を含む、共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤);3)核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(Actinomycin D)など)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(DaunomycinおよびCerubidine)、ドキソルビシン(Adriamycin)、およびイダルビシン(Idamycin)など)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン(Mitoxantrone)などのアントラサイクリン類似体など)、ブレオマイシン(Blenoxane)など、およびプリカマイシン(Mithramycin)などを含む、非共有結合性DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質);4)抗葉酸剤(例えば、メトトレキセート、Folex、およびMexateなど)、プリン代謝拮抗物質(例えば、6-メルカプトプリン(6-MP,Purinethol)、6-チオグアニン(6-TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2'-デオキシコフォルマイシン(Pentostatin)など)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル(Adrucil)、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(Floxuridine)など))、およびシトシンアラビノシド(例えば、Cytosar(ara-C)およびフルダラビンなど)を含む、代謝拮抗物質;5)L-アスパラギナーゼを含む酵素、およびヒドロキシウレアなど;6)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェンなど)などのグルココルチコイド、非ステロイド抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミドなど)、およびアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(Arimidex)など)を含む、ホルモン;7)白金化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど);8)抗癌薬、毒素、および/または放射性核種などとコンジュゲートしたモノクローナル抗体;9)生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-αなど)およびインターロイキン(例えば、IL-2など)など);10)養子免疫治療;11)造血成長因子;12)腫瘍細胞分化を誘導する作用物質(例えば、オールトランスレチノイン酸など);13)遺伝子治療技術;14)アンチセンス治療技術;15)腫瘍ワクチン;16)腫瘍転移に向けられる治療(例えば、バチマスタット(Batimistat)など);ならびに17)血管新生の他の阻害剤。
【0106】
好ましい態様において、本発明は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物、ならびに細胞を死滅させる(例えば、アポトーシスを誘導する)、および/または癌細胞増殖を阻止する少なくとも1つの従来の抗癌剤の被験体への投与を提供する。いくつかの好ましい態様において、被験体は、転移により特徴付けられる疾患を有する。さらに他の好ましい態様において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物およびタキサン(例えば、ドセタキセル)の有効量を、Bcl-2ファミリータンパク質(例えば、Bcl-2および/またはBcl-XL)の過剰発現によって特徴付けられる疾患を有する被験体への投与を提供する。
【0107】
タキサン(例えば、ドセタキセル)は、抗癌化学療法剤の有効なクラスである。(例えば、K.D. Miller and G.W. Sledge, Jr. Cancer Investigation, 17:121-136 (1999)参照)。本発明は、任意の特定の機構に限定するつもりはないが、タキサン媒介性の細胞死は、細胞間の微小管安定化、引き続いてアポトーシス経路の誘導を通じて進行すると考えられる。(例えば、S. Haldar et al., Cancer Research, 57:229-233 (1997)参照)。
【0108】
いくつかの他の態様において、具体的には、シスプラチンおよびタキソールを、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と共に用いることが企図される。シスプラチンおよびタキソールは、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する明確な作用を有する(例えば、Lanni et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94:9679 (1997); Tortora et al., Cancer Research 57:5107 (1997);およびZaffaroni et al., Brit. J. Cancer 77:1378 (1998)参照)。しかしながら、これらを始めとする化学療法剤での処置は、有意な毒性を負うことなく達成することは困難である。現在用いられている薬剤は、一般的に、水難溶性で、極めて有毒であり、罹患細胞だけでなく正常細胞にも影響を及ぼす用量で与えられる。例えば、発見された最も有望な抗癌化合物の一つであるパクリタキセル(Taxol)は、水に難溶性である。パクリタキセルは、B16黒色腫、L1210白血病、MX-1乳腺腫瘍、およびCS-1結腸腫瘍異種移植片などの幅広い種類の腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示している。しかしながら、パクリタキセルの低い水溶解度は、ヒト投与にとって問題である。従って、現在用いられているパクリタキセル製剤は、その薬物を可溶化するためのクレマフォア(cremaphor)を必要とする。ヒト臨床用量範囲は、200〜500mgである。この用量は、エタノール:クレマフォアの1:1溶液に溶解され、静脈内に与えられる1リットルの液体へ希釈される。現在用いられているクレマフォアは、ポリエトキシル化ヒマシ油である。それは、クレマフォア混合物に溶解し、大容量の水性媒体で希釈することにより注入で与えられる。直接投与(例えば、皮下)は、局所的毒性および低レベルの活性を生じる。
【0109】
癌治療関連で日常的に用いられる任意の薬剤が本発明に用いられる。開示された水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物組成物との投与に適した従来の抗癌剤には、アドリアマイシン、5-フルオロウラシル、エトポシド、カンプトテシン、メトトレキセート、アクチノマイシン-D、マイトマイシンC、またはより好ましくは、シスプラチンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。これらの薬剤を、本明細書に記載した免疫療法剤とそれを組み合わせることによって、併用治療用組成物またはキットとして調製し、用いてもよい。
【0110】
本発明のいくつかの態様において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物を含む治療的処置はさらに、DNA損傷を促進するために核酸(例えば、DNA)を直接、架橋結合する1つまたは複数の薬剤を含む(例えば、相乗的または追加的な治療特性を有する薬剤の組み合わせをもたらす)。例えば、シスプラチンおよび他のDNAアルキル化剤などの薬剤を用いることができる。シスプラチンは、癌を処置するのに広く用いられており、3週間ごとに5日間、20mg/M2の有効な用量が計3コースで臨床適用に用いられる。本発明の組成物は、任意の適した方法によって送達することができ、その方法には、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、または局所的(例えば、粘膜表面へ)注射が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0111】
DNAを損傷する薬剤はまた、DNA複製、有糸分裂、および染色体分配を妨げる化合物を含む。そのような化学療法化合物には、ドキソルビシンとしても知られているアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。これらの化合物は、新生物の処置のための臨床設定に広く用いられ、静脈内へ、21日間隔でアドリアマイシン25〜75M/2から、エトポシド35〜50Mg/M2までの範囲の用量で、静脈内のボーラス注入で投与されるか、または静脈内用量の二倍量を経口で投与される。
【0112】
核酸前駆体およびサブユニットの合成ならびに忠実性を乱す薬剤もまた、DNA損傷をもたらし、本発明に化学療法剤として用いられる。いくつかの核酸前駆体が開発されている。特に有用なのは、広範な試験を受けており、かつ容易に入手できる薬剤である。従って、5-フルオロウラシル(5-FU)などの薬剤は、新生物組織によって優先的に使われ、このことによりこの薬剤は新生物細胞へのターゲティングに対し特に有用となっている。送達される用量は、3〜15mg/kg/日の範囲であり得るが、病期、治療への細胞の被適用性(amenability)、薬剤に対する抵抗性の量を含む様々な因子によって他の用量が大幅に異なる場合がある。
【0113】
好ましい態様において、本発明に用いられる抗癌剤(例えば、本明細書で考察された抗血管新生因子)は、抗癌効果の忠実性を損なうことなく被験体、組織、または細胞へ送達することができるように水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物との共投与を受け入れられるものである。白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキセート、ならびに他の類似した抗癌剤などの癌治療剤のより詳細な説明について、当業者は、かなり多数の教育的なマニュアルを参照する。それらのマニュアルには、Physician's Desk referenceおよびGoodman and Gilman's 「Pharmaceutical Basis of Therapeutics」ninth edition, Eds. Hardman et al., 1996が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0114】
いくつかの態様において、薬物は、光開裂性リンカーでヒトリボヌクレアーゼへ付着している。例えば、本発明と共に用いられるいくつかのヘテロ二官能性の光開裂性リンカーが記載されている(例えば、Ottl et al., Bioconjugate Chem., 9:143 (1998)参照)。これらのリンカーは水溶性でも有機可溶性でもあり得る。それらは、アミンまたはアルコールと反応することができる活性化エステル、およびチオール基と反応することができるエポキシドを含む。その2つの基の間に、3,4-ジメトキシ6-ニトロフェニル光異化性基があり、近紫外光(365nm)に曝されると、無傷の形態でアミンまたはアルコールを放出する。従ってそのようなリンカーを用いて本発明の組成物に連結している場合、治療剤は、標的領域に近紫外光を暴露することによって、生物学的に活性のある形態かまたは活性化可能な形態で放出され得る。
【0115】
例示的態様において、ヒトリボヌクレアーゼの活性基は、有機可溶性リンカーの活性化エステルと反応する。次に、この生成物は、適切なデンドリマーの部分的にチオレート化された表面(デンドリマーの第1級アミンは、半化学量論量の2-イミノチオランとの反応によりチオール含有基へ部分的に変換することができる)と反応する。このようにコンジュゲートすると、薬物は、不活性であり、正常細胞を傷つけないと考えられる。複合物が腫瘍細胞内に局在している場合、複合物は適切な近UV波長のレーザー光に曝されて、活性薬物をその細胞へ放出する。
【0116】
光開裂性リンカーに代わるものは、酵素開裂性リンカーである。いくつかの酵素開裂性リンカーが、有効な抗腫瘍複合物として実証されており、ドキソルビシンなどの癌治療用物質を水溶性ポリマーに適切な短いペプチドリンカーで付着させることにより、調製することができる(例えば、Vasey et al., Clin. Cancer Res., 5:83 (1999)参照)。リンカーは細胞の外側で安定であるが、いったん細胞内に入ると、チオールプロテアーゼにより切断される。好ましい態様において、複合物PK1が用いられる。光開裂性リンカーストラテジーに代わるものとして、Gly-Phe-Leu-Glyなどの酵素分解性リンカーを用いてもよい。
【0117】
本発明は、治療技術の性質によって制限されない。例えば、本発明と共に用いられる他の複合物には、BNCTのためのコンジュゲートしたホウ素ダスターの使用(例えば、Capala et al., Bioconjugate Chem., 7:7 (1996)参照)、放射性同位元素の使用、およびリシンなどの毒素のコンジュゲーションが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0118】
抗菌治療剤もまた、本発明の治療剤として水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物と組み合わせて用いることができる。微生物の機能を奪うか、阻害するか、または別の方法で弱毒化することができる任意の薬剤、加えてそのような活性を有すると考えられる任意の薬剤を用いてもよい。抗菌剤には、単独または組み合わせて用いられる、天然および合成の抗生物質、抗体、阻害タンパク質、アンチセンス核酸、膜破壊剤などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。実際、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが含まれるがそれには限定されるわけではない、任意の型の抗生物質を用いてもよい。
【0119】
なおさらなる態様において、本発明のもう一つの構成要素は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物が、特定の細胞型(例えば、腫瘍細胞)を特異的に標的にすることができるターゲティング剤と会合することである。一般的に、ターゲティング剤は、ターゲティング剤の細胞表面部分との相互作用を通じて新生物細胞を標的にし、受容体依存性エンドサイトーシスによってその細胞の中へ取り込まれる。
【0120】
標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に位置することが知られている任意の部分が本発明と共に用いられる。例えば、そのような部分に対して方向付けられた抗体が、その部分を含む細胞表面へ本発明の組成物を標的にする。あるいは、ターゲティング部分は、細胞表面上に存在する受容体へ向けられるリガンドであってもよく、またはその逆でもよい。同様に、ビタミンもまた、特定の細胞へ本発明の治療用物質を標的にするのに用いてもよい。
【0121】
本発明のいくつかの態様において、ターゲティング部分はまた、例えば腫瘍特異的抗原など、ターゲティング剤(リガンド)が結合する受容体を発現していることに特徴付けられる特定の腫瘍を同定するための作用物質として機能してもよい。その腫瘍特異的抗原には、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、チロシナーゼ、ras、シアリルルイス抗原、erb、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、MN、gp100、gp75、p97、プロテイナーゼ3、ムチン、CD81、CID9、CD63が挙げられるが、それに限定されるわけではなく;CD53、CD38、CO-029、CA125、GD2、GM2およびO-アセチルGD3、M-TAA、M-fetal、またはM-urinaryが本発明と共に用いられる。あるいは、ターゲティング部分は、腫瘍抑制因子、サイトカイン、ケモカイン、腫瘍特異的受容体リガンド、受容体、アポトーシスの誘導因子、または分化誘導剤であってもよい。
【0122】
ターゲティングを企図される腫瘍抑制タンパク質には、p16、p21、p27、p53、p73、Rb、ウィルムス腫瘍(WT-1)、DCC、神経線維腫症1型(NF-1)、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病腫瘍抑制因子、マスピン、Brush-1、BRCA-1、BRCA-2、多発性腫瘍抑制因子(MTS)、ヒト黒色腫のgp95/p97抗原、腎細胞癌関連G250抗原、KS 1/4 汎癌腫(pan-carcinoma)抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺特異的抗原、黒色腫抗原gp75、CD9、CD63、CD53、CD37、R2、CD81、CO029、TI-1、L6、およびSASが挙げられるが、それに限定されるわけではない。もちろん、これらは単に例示的な腫瘍抑制因子であり、本発明を、腫瘍抑制因子として当業者に知られているかまたは知られるようになる任意の他の作用物質と関連して用いてもよいことが構想される。
【0123】
本発明の好ましい態様において、ターゲティングは、癌遺伝子(例えば、bcl-2および/またはbcl-XL)によって発現する因子に向けられる。これらには、Srcファミリーのメンバーなどの膜結合型および細胞質型の両方のチロシンキナーゼ、Mosなどのセリン/トレオニンキナーゼ、血小板由来成長因子(PDDG)などの成長因子および受容体、rasファミリーを含む低分子量GTPアーゼ(Gタンパク質)、サイクリン依存性プロテインキナーゼ(cdk)、c-myc、N-myc、およびL-mycを含むmycファミリーメンバーのメンバー、ならびにbcl-2およびファミリーメンバーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0124】
本発明に関連して用いられる受容体およびそれらの関連リガンドには、葉酸受容体、アドレナリン受容体、成長ホルモン受容体、黄体ホルモン受容体、エストロゲン受容体、上皮成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体などが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0125】
本発明のターゲティング局面に用いられるホルモンおよびそれらの受容体には、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、α-エンドルフィン、αメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)、コレシストキニン、エンドセリンI、ガラニン、胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン、インスリン、アミリン、リポトロピン、GLP-1(7-37)ニューロフィジン、およびソマトスタチンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0126】
加えて、本発明は、ターゲティング剤として用いられるビタミン(脂溶性ビタミンおよび非脂溶性ビタミンの両方)が、ビタミンの受容体を有するか、または別な方法でこれらのビタミンを取り込む細胞を標的にするのに用いてもよいことを企図する。この局面に特に好ましいのは、ビタミンDおよびその類似体、ビタミンE、ビタミンAなどの脂溶性ビタミン、またはビタミンCなどの水溶性ビタミンである。
【0127】
本発明のいくつかの態様において、癌細胞の標的化基のかなり多数が水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼと会合している。従って、ターゲティング基と会合した水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼ複合物は、癌細胞を標的にすることに対して特異的である(すなわち、癌細胞に付着して、健康な細胞には付着しない可能性がはるかに高い)。
【0128】
本発明の好ましい態様において、ターゲティング基は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼに、短い結合(例えば、直接結合)、中位の結合(例えば、Pierce Chemical Companyから販売されているSPDPなどの小分子二官能性リンカーを用いて)、または長い結合(例えば、Shearwater Polymersから販売されているPEG二官能性リンカー)のいずれかで会合している(例えば、共有結合または非共有結合で)。
【0129】
本発明の好ましい態様において、ターゲティング剤は、抗体、または抗体の抗原結合断片(例えば、Fabユニット)である。例えば、多くの癌(乳房HER2腫瘍を含む)の表面上に見い出されるよく研究された抗原は、糖タンパク質p185であり、それはもっぱら悪性細胞にだけ発現している(Press et al., Oncogene 5:953 (1990))。組換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(rhuMabHER2)は、HER2を過剰発現している乳癌細胞の増殖を阻害することが正に示されており、進行乳癌の処置について第III相臨床試験で評価中である(従来の化学療法剤と併用して)(Pegrarn et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 14:106 (1995))。Parkらは、rhuMabHER2のFab断片を小さい単層リポソームへ付着させており、その後、それに化学療法剤ドキソルビシン(dox)を負荷し、HER2を過剰発現している腫瘍の異種移植片へ標的化させることができる(Park et al., Cancer Lett., 118:153 (1997)およびKirpotin et al., Biochem., 36:66 (1997))。これらのdox負荷「免疫リポソーム」は、それに対応する、標的にされていないdox負荷リポソームまたは遊離doxと比較して、腫瘍に対する細胞毒性の増加、および遊離doxと比較して全身毒性の減少を示した。
【0130】
いくつかの態様において、ターゲティング剤は抗体様部分である。いくつかの抗体様部分は、本発明に有用であると考えられ、それらには、アンキリン、アビマー、およびリポカリンが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0131】
抗体は、様々な生物学的標的(例えば、病原体、腫瘍細胞、正常組織)上の抗原または免疫原(例えば、腫瘍、組織、または病原体特異的抗原)のターゲティングを可能にするように作製することができる。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0132】
いくつかの好ましい態様において、抗体は、腫瘍特異的エピトープ(例えば、TAG-72(Kjeldsen et al., Cancer Res. 48:2214-2220 (1988);米国特許第5,892,020号;同第5,892,019号;および同第5,512,443号);ヒト癌抗原(米国特許第5,693,763号;同第5,545,530号;および同第5,808,005号);骨癌細胞由来のTP1およびTP3抗原(米国特許第5,855,866号);腺癌細胞由来のトムゼン-フリーデンライヒ(Thomsen-Friedenreich)(TF)抗原(米国特許第5,110,911号);ヒト前立腺癌由来の「KC-4抗原」(米国特許第4,708,930号および同第4,743,543号);ヒト結腸直腸癌抗原(米国特許第4,921,789号);嚢胞腺癌由来のCA125抗原(米国特許第4,921,790号);ヒト乳癌由来のDF3抗原(米国特許第4,963,484号および同第5,053,489号);ヒト乳房腫瘍抗原(米国特許第4,939,240号);ヒト黒色腫のp97抗原(米国特許第4,918,164号);癌腫またはオロソムコイド関連抗原(CORA)(米国特許第4,914,021号);ヒト扁平上皮肺癌と反応するが、ヒト小細胞肺癌とは反応しないヒト肺癌抗原(米国特許第4,892,935号);ヒト乳癌の糖タンパク質におけるTおよびTnハプテン(Springer et al., Carbohydr. Res. 178:271-292 (1988));名付けられたMSA乳癌糖タンパク質(Tjandra et al., Br. J. Surg. 75:811-817 (1988));MFGM乳癌抗原(Ishida et al., Tumor Biol. 10:12-22 (1989));DU-PAN-2膵臓癌抗原(Lan et al., Cancer Res. 45:305-310 (1985));CA125卵巣癌抗原(Hanisch et al., Carbohydr. Res. 178:29-47 (1988));YH206肺癌抗原(Hinoda et al., Cancer J., 42:653-658 (1988)))を認識する。前述の参考文献のそれぞれは、参照により本明細書に具体的に組み入れられている。
【0133】
乳癌について、細胞表面は、葉酸、EGF、FGF、ならびに腫瘍関連抗原MUC1、cMet受容体、およびCD56(NCAM)に対する抗体(または抗体断片)で標的にされてもよい。
【0134】
本発明のいくつかの態様において、ターゲティング剤は、好ましくは、核酸(例えば、RNAまたはDNA)である。いくつかの態様において、核酸ターゲティング剤は、特定の核酸(例えば、染色体DNA、mRNA、またはリボソームRNA)と塩基対形成することによりハイブリダイズするように設計される。他の態様において、核酸は、リガンドまたは生物学的標的を結合する。以下のタンパク質を結合する核酸が同定されている:逆転写酵素、HIVのRevおよびTatタンパク質(Tuerk et al., Gene, 137(1):33-9 (1993));ヒト神経成長因子(Binkley et al., Nuc. Acids Res., 23(16):3198-205 (1995));および血管内皮成長因子(Jellinek et al., Biochem., 83(34):10450-6 (1994))。リガンドを結合する核酸は、好ましくは、SELEX手順(例えば、米国特許第5,475,096号;同第5,270,163号;および同第5,475,096号;ならびにPCT公開公報WO 97/38134、同WO 98/33941、および同WO 99/07724参照、それらのすべては参照により本明細書に組み入れられている)によって同定されるが、多くの方法が当技術分野において公知である。
【0135】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を実証し、さらに例証するために提供され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0136】
実施例1
ウシRNアーゼAのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)直鎖状20k mPEGでのPEG化
NHS mPEGを乾燥粉末として、RNアーゼA(50mM HEPES、5mM CaCl2、5mM MgCl2、pH7.5)へ、RNアーゼ:PEGの3つの異なる比:1:1、1:3、および1:10で加えた。反応混合物を、時折ボルテックスしながら室温で1時間、その後、ボルテックスせずに4℃で一晩、インキュベートした。
【0137】
SDS PAGEで分析すると、1:1 RNアーゼ:PEG反応は、主に未反応のRNアーゼおよび1:1 RNアーゼ:PEG複合物を有した(図2参照)。1:1、1:2、および1:3 RNアーゼ:PEGのRNアーゼ:PEG複合物は、1:3および1:10 RNアーゼ:PEG反応についての主な生成物である。
【0138】
実施例2
RNアーゼのアルデヒド直鎖状30k mPEGでのPEG化
アルデヒドmPEGを、RNアーゼA(50mM HEPES、pH5.0、20mM NaCNBH3)へ3つの異なる比:1:2、1:4、および1:8 RNアーゼ:PEGで加えた。反応混合物を、ゆっくり撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。SDS-PAGEで分析すると、1:1、1:2、および1:3 RNアーゼ:PEGの複合物が、コンジュゲーション反応のそれぞれに様々な程度で存在していた(図3参照)。1:1および1:2 RNアーゼ:PEG複合物は、1:4 RNアーゼ:PEGの反応混合物中におおよそ等しい量で存在する。
【0139】
1:4 RNアーゼ:PEG反応混合生成物を一晩透析し(20mM 酢酸Na、pH5.0)、陽イオン交換カラムに流した(SP-Sepharose fast flow; Pharmacia;20mM酢酸ナトリウム、1M NaCl、pH5.0で溶出した)。画分を収集し、PEGの存在について試験した(50mL H2O中1g NaI+0.5g I2)。2組のPEG含有種がカラム上で分離され、カラム上の2つの別々のピークとして示された(図4参照)。第二ピークからの4つの画分を混合し、比較のためにRNアーゼAの試料と共にSDS-PAGEを行った。半精製した試料は、RNアーゼに対して様々な数のPEGを有する多様な複合物を含む(図5参照)。従って、いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、複合物の集団には、1:1、1:2、1:3のRNアーゼ:PEGの比、および/またはRNアーゼの分子あたり3個より多いPEG分子を有する複合物が存在する)、RNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複合物の集団は、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を主に含む(例えば、集団におけるRNアーゼ分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、またはそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)集団を作製するために精製することができる(例えば、本明細書に記載の方法を用いて)。
【0140】
実施例3
ヒトRNアーゼ1のブチルアルデヒドmPEGでのPEG化
野生型膵臓リボヌクレアーゼ1のPEG化を、ブチルアルデヒドmPEG(例えば、直鎖状30kDa、分枝型40kDa、または分枝型60kDa)で行った。PEG:RNアーゼの1:3比を用いて、反応を、3つの異なるpH条件で行った。用いた緩衝液は、クエン酸(pH5またはpH6での0.1Mクエン酸、0.15M NaCl)およびリン酸ナトリウム(pH7での0.1M NaH2PO4、0.15M NaCl)であった。
【0141】
12ミリグラムのブチルアルデヒド直鎖状30kDa mPEGを、pH5.0のクエン酸中RNアーゼ1(9.86mg/mL溶液の203μl)に加えた。反応物を一晩インキュベートした。水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5M溶液の2μl;Aldrich)を加え、反応物を30分間、インキュベートした。Tris-HCl(1M溶液の10μl)を反応物に加え、反応物を室温でさらに30分間、インキュベートした。その他の反応については、異なるpH(緩衝液の選択によって調節される)および異なるmPEGを用いて同じ条件下で行った。
【0142】
各反応混合物、加えて野生型RNアーゼ1の対照、および分子量ラダーを含むSDS-PAGEを行った。試料をすべて(分子量ラダーを除く)、90℃で5分間、加熱し、12% BisTris CRITERION XT gel(BioRad)上へローディングした。ゲルをXTMES緩衝液(BioRad)を用いて200Vで50分間、泳動した。希釈緩衝液は、PBS、pH7.44であり、ローディング緩衝液は、50%試料緩衝液、40%脱イオン水、および10%還元剤であった。
【0143】
記載された反応条件下で、反応の完成度(反応の完了時点におけるポリマーにコンジュゲートしたRNアーゼ1タンパク質のパーセンテージ)は、pH5>pH6>pH7の順番に従う(図6参照)。30kDaおよび40kDa mPEGを利用する反応は、60kDa mPEGを用いる反応よりさらに完成度が高かった(例えば、より多くのRNアーゼ:PEG複合物を含んだ)。反応はそれぞれ、単一のRNアーゼへの単一のPEGの複合物の多数集団を含んだ(図6参照)。
【0144】
いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、複合物の集団には、1:1、1:2、1:3のRNアーゼ:PEGの比、および/またはRNアーゼの分子あたり3個より多いPEG分子を有する複合物が存在する)、ヒトRNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、複合物の集団が同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を含む、ヒトRNアーゼ:PEG複合物を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複合物の集団は、複合物集団をさらに精製するために(例えば、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNアーゼ分子を主に含む集団(例えば、集団におけるRNアーゼ分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、またはそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)を作製するために)、精製することができる(例えば、本明細書に記載された方法を用いて)。
【0145】
実施例4
RNアーゼ1ならびにブチルアルデヒド直鎖状30kおよび分枝型40k mPEGの複合物のスケールアップ製造および精製
PEG対RNアーゼ1の1:1比を以下の反応に用いた。pH5の0.1Mクエン酸、0.15M NaCl中10.28mg/mLのRNアーゼ1を含む溶液の8ミリリットルを、30kDa mPEG(164.5mg)かまたは40kDa mPEG(219.4mg)のいずれかに加え、4℃で一晩インキュベートした。
【0146】
水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5Mの80μl)を加え、混合物を室温で30分間、インキュベートした。Tris(1M、pH7の400μl)を加え、溶液を室温で30分間インキュベートした。
【0147】
各反応物を、5% 20mM Tris酢酸、2.0M NaCl、pH8.0の40mLで希釈し、1M NaOHの〜600μlの液滴添加によりpHを〜8へ調整した。反応物を陰イオン交換カラムに流し、通過流を収集した。
【0148】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質および精製生成物を特徴付けるために用いた。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0149】
9.2℃において溶液のpHは8.45であり、約300μlの酢酸で10.1℃においてpHを5.01へ調整した。溶液を、20mM Tris酢酸、pH5.0中で平衡化した陽イオン交換カラム上へ負荷し、Tris酢酸緩衝液中の塩化ナトリウム勾配で溶出して、複合物および野生型RNアーゼ1のベースライン分離を達成した。
【0150】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質および精製生成物を特徴付けるために用いた(図8参照)。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0151】
カラム画分の純度を、少なくとも95%純度の画分をプールするためにSDS-PAGEによって分析した(図9参照)。各試料におけるタンパク質の濃度を、280nmでのε1cm0.1%=0.174の吸光減衰係数を用いて測定した。濃度は2.06mg/mLであった。最終容量は62mLであり、127mgの収量を示した。
【0152】
実施例5
酵素活性の測定
PEG-RNアーゼ複合物の酵素活性を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた蛍光アッセイ法を用いて測定した。アッセイの基質、5'FAM-ArUAA-3'TAMRA(IDT)は切断されるまで蛍光を発しない。
【0153】
緩衝液(100mM NaCl、100mM Tris、pH7.0、100マイクログラム/mL BSAの160マイクロリットル)を、96ウェル、非結合性表面、黒色のポリスチレンプレートのウェルへ加えた。活性が測定されることになっているRNアーゼを加える(典型的には、約2×10-10M溶液の10μl)。その後、基質(5'FAM-ArUAA-3'TAMRAの1.33μMの30μl)を各ウェルへ加え、試料を混合した。プレートを、蛍光プレートリーダー上ですぐに読み取る。
【0154】
F0測定(酵素無し)およびFmax測定(典型的には、200μlアッセイあたりRNアーゼAの0.1mg/mL溶液の10μl)のための対照ウェルを含めた。kcat/KM=1.7×107M-1sec-1を有する野生型ヒトRNアーゼ1と比較して、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物のkcat/KMは、2.7×107M-1sec-1であった。分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物のkcat/KMは、2.62×107M-1sec-1であった(図10参照)。従って、本発明は、いくつかの態様において、PEG分子のヒトRNアーゼへのコンジュゲーションが、酵素活性を保持するヒトRNアーゼ分子を供給するということを提供する。
【0155】
実施例6
非小細胞肺癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNアーゼ1複合物の特徴付け
非小細胞肺癌細胞株(A549)由来の細胞を、9個のT175フラスコ中、F12K培地および10%ウシ胎児血清において細胞がコンフルエントになるまで増殖させた。4.5×106個の細胞(100μl中)を週齢4〜5週間の雄ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan, Madison WI)の右後方脇腹へ注射した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、媒体(リン酸緩衝食塩水、PBS)で毎週処置される1組の動物を含む処置群へ分けた。媒体および試験作用物質を腹腔内注射によってすべてに投与した。各動物の体重を、処置中、週2回測定した。腫瘍については、カリパスを用いて週2回、測定した。腫瘍容積(mm3)については、楕円球形についての以下の式を用いることにより決定した。
腫瘍増殖阻害パーセントについては、以下の式を用いて計算した。
【0156】
直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性は、シスプラチンに対して示されている(図11参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、シスプラチンを週1回、6mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0157】
分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性もまた、シスプラチンに対して示されている(図12参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、シスプラチンを週1回、6mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0158】
従って、本発明は、ヒトRNアーゼ-PEG複合物を含む組成物であって、複合物が腫瘍増殖阻害性質を有する、組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより低い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより高い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、シスプラチンより低い、宿主被験体に対する毒性を示す(例えば、直鎖状30kDa PEG:RNアーゼ複合物または分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明は、シスプラチンと比較して優れた腫瘍増殖阻害(例えば、非小細胞肺腫瘍の)を示すと同時に、シスプラチンより宿主に対する毒性が低い複合物を提供する(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。
【0159】
実施例7
乳癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNアーゼ1複合物の特徴付け
乳癌細胞株(MDA-MB-231)由来の細胞を、7個のT175フラスコ中、RPMI-1640培地および10%ウシ胎児血清において細胞がコンフルエントになるまで増殖させた。5.6×106個の細胞(100μl中)を週齢4〜5週間の雌ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan, Madison WI)の右後方脇腹へ注射した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、媒体(リン酸緩衝食塩水、PBS)で毎週処置される1組の動物を含む処置群へ分けた。媒体および試験作用物質を腹腔内注射によってすべてに投与した。各動物の体重を、処置中、週2回測定した。腫瘍については、カリパスを用いて週2回測定した。腫瘍容積(mm3)および腫瘍増殖阻害パーセントについては、上記の式を用いて決定した。
【0160】
分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物の有効性は、ドキソルビシンに対して示されている(図13参照)。複合物を、動物の体重1kgあたり複合物全体の75mgで投与し(75mg/kg 1×週)、一方、ドキソルビシンを週1回、3mg/kgで用いた。nの値は、実験の特定の処置群における動物の数を表す。
【0161】
従って、本発明は、ヒトRNアーゼ-PEG複合物を含む組成物であって、複合物が腫瘍増殖阻害性質を有する、組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明の複合物は、ドキソルビシンより高い腫瘍増殖阻害を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明の複合物は、ドキソルビシンより低い、宿主被験体に対する毒性を示す(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。いくつかの態様において、本発明は、ドキソルビシンと比較して優れた腫瘍増殖阻害(例えば、乳癌腫瘍の)を示すと同時に、ドキソルビシンより宿主に対する毒性が低い複合物を提供する(例えば、分枝型40kDa PEG:RNアーゼ複合物)。従って、本発明は、被験体において腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。本発明は、増殖が本発明の組成物により阻害される腫瘍の型によって制限されない。実際、肺癌、乳癌、上皮癌、前立腺癌、ならびにシスプラチンおよびドキソルビシンで処置可能である(例えば、その増殖が阻害される)ことが知られた他の癌を含むがそれに限定されるわけではない、様々な腫瘍を本発明の組成物および方法を用いて処置することができる。
【0162】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられている。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の記載された組成物および方法の様々な改変およびバリエーションは、当業者にとって明らかであると考えられる。本発明は特定の好ましい態様に関して記載されているが、主張される本発明が、そのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは理解されるはずである。実際、当業者にとって明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、組成物。
【請求項2】
生物活性が酵素活性である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生物活性がリボ核酸分解(ribonucleolytic)活性である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
生物活性が腫瘍増殖阻害である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
コンジュゲーションがリボヌクレアーゼへの水溶性ポリマーの共有結合を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリエチレングリコールがメトキシ-PEG(mPEG)である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
ポリエチレングリコールが2kDa〜150kDaの分子量を有する、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
ヒトリボヌクレアーゼがヒトリボヌクレアーゼ1(hRNアーゼ1)である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ヒトリボヌクレアーゼが、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、およびhRNアーゼ8からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与する段階を含む、被験体を処置する方法であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、方法。
【請求項13】
癌の処置のために組成物を被験体へ投与する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
単一の水溶性ポリマーにコンジュゲートした非ヒトリボヌクレアーゼの集団を含む組成物であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、組成物。
【請求項15】
生物活性が酵素活性である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
生物活性がリボ核酸分解活性である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
生物活性が腫瘍増殖阻害である、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
コンジュゲーションがリボヌクレアーゼへの水溶性ポリマーの共有結合を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリエチレングリコールがメトキシ-PEG(mPEG)である、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレングリコールが2kDa〜150kDaの分子量を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
水溶性ポリマーにコンジュゲートした非ヒトリボヌクレアーゼの集団を含む組成物であって、該水溶性ポリマーが、リボヌクレアーゼインヒビター回避に関連していないリボヌクレアーゼの領域で該非ヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている、組成物。
【請求項24】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与する段階を含む、癌を有する被験体を処置する方法であって、該組成物が、該癌に関連した腫瘍増殖が阻害される条件下で該被験体に投与される、方法。
【請求項25】
組成物が、ポリエチレングリコールにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼ1を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ポリエチレングリコールが20kDa〜100kDaである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ポリエチレングリコールが、直鎖状のポリエチレングリコールおよび分枝型のポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ポリエチレングリコールが分枝型の40kDaポリエチレングリコールである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
組成物の被験体への投与が、シスプラチンまたはドキソルビシンの該被験体への投与より該被験体に対して低い毒性を有する、請求項25記載の方法。
【請求項1】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、組成物。
【請求項2】
生物活性が酵素活性である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生物活性がリボ核酸分解(ribonucleolytic)活性である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
生物活性が腫瘍増殖阻害である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
コンジュゲーションがリボヌクレアーゼへの水溶性ポリマーの共有結合を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリエチレングリコールがメトキシ-PEG(mPEG)である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
ポリエチレングリコールが2kDa〜150kDaの分子量を有する、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
ヒトリボヌクレアーゼがヒトリボヌクレアーゼ1(hRNアーゼ1)である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ヒトリボヌクレアーゼが、hRNアーゼ2、hRNアーゼ3、hRNアーゼ4、hRNアーゼ5、hRNアーゼ6、hRNアーゼ7、およびhRNアーゼ8からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与する段階を含む、被験体を処置する方法であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、方法。
【請求項13】
癌の処置のために組成物を被験体へ投与する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
単一の水溶性ポリマーにコンジュゲートした非ヒトリボヌクレアーゼの集団を含む組成物であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、組成物。
【請求項15】
生物活性が酵素活性である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
生物活性がリボ核酸分解活性である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
生物活性が腫瘍増殖阻害である、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
コンジュゲーションがリボヌクレアーゼへの水溶性ポリマーの共有結合を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリエチレングリコールがメトキシ-PEG(mPEG)である、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレングリコールが2kDa〜150kDaの分子量を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
水溶性ポリマーにコンジュゲートした非ヒトリボヌクレアーゼの集団を含む組成物であって、該水溶性ポリマーが、リボヌクレアーゼインヒビター回避に関連していないリボヌクレアーゼの領域で該非ヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている、組成物。
【請求項24】
水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与する段階を含む、癌を有する被験体を処置する方法であって、該組成物が、該癌に関連した腫瘍増殖が阻害される条件下で該被験体に投与される、方法。
【請求項25】
組成物が、ポリエチレングリコールにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼ1を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ポリエチレングリコールが20kDa〜100kDaである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ポリエチレングリコールが、直鎖状のポリエチレングリコールおよび分枝型のポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ポリエチレングリコールが分枝型の40kDaポリエチレングリコールである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
組成物の被験体への投与が、シスプラチンまたはドキソルビシンの該被験体への投与より該被験体に対して低い毒性を有する、請求項25記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−541333(P2009−541333A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516598(P2009−516598)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/014982
【国際公開番号】WO2007/149594
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506344848)クインテセンス バイオサイエンシーズ インコーポレーティッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/014982
【国際公開番号】WO2007/149594
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506344848)クインテセンス バイオサイエンシーズ インコーポレーティッド (3)
【Fターム(参考)】
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