修飾RSVFタンパク質及びその使用方法
本発明は、概して、修飾又は変異された、呼吸器合胞体ウイルス融合(F)タンパク質、並びにRSV感染の治療及び/又は予防のための、ワクチンなどの免疫原性組成物を含む、それらの作製方法及び使用方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/121,126号、2009年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/169,077号、及び2009年7月10日に出願された米国仮特許出願第61/224,787号に対する優先権を主張し、その各々が、全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、修飾又は変異呼吸器合胞体ウイルス融合(F)タンパク質、並びにRSV感染の治療及び/又は予防のための、ワクチンなどの免疫原性組成物を含む、それらの作製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のニューモウイルス属(Pneumovirus)のメンバーである。ヒトRSV(HRSV)は、低年齢小児における重篤な下気道疾患の主な原因であり、ヒトにおける高い罹患率及び死亡率に関与している。RSVはまた、免疫障害のある成人における、及び高齢者における重要な病原体としても認識されている。自然感染後の感染宿主におけるRSV抵抗性は不完全なため、小児期及び成人期の間にRSVは複数回感染し得る。
【0004】
このウイルスは、一本鎖ネガティブセンスRNAから構成されるゲノムを有し、それがウイルスタンパク質と緊密に結合してヌクレオカプシドを形成している。ウイルスエンベロープは、ウイルスによりコードされた構造タンパク質を含む細胞膜由来の脂質二重層から構成される。ウイルスポリメラーゼがビリオンでパッケージングされ、ゲノムRNAをmRNAに転写する。RSVゲノムは、3つの膜貫通型構造タンパク質F、G、及びSH、2つのマトリクスタンパク質M及びM2、3つのヌクレオカプシドタンパク質N、P、及びL、並びに2つの非構造タンパク質NS1及びNS2をコードする。
【0005】
HRSVと細胞膜との融合は、細胞表面で起こるものと考えられており、感染初期における細胞質へのウイルスリボ核タンパク質の導入に必須の工程である。この過程は融合(F)タンパク質によって媒介され、Fタンパク質はまた、感染細胞の膜を隣接細胞の膜と融合することによる特徴的な合胞体の形成も促進し、この合胞体の形成は、顕著な細胞変性効果であるとともに、さらなるウイルス伝播機構でもある。従って、宿主免疫においては融合活性の中和が重要である。実際、Fタンパク質に対して作られたモノクローナル抗体は、ウイルス感染力を中和し、膜融合を阻害することが示されている(Calder et al., 2000, Virology 271: 122-131)。
【0006】
RSVのFタンパク質は、他のパラミクソウイルスのF糖タンパク質と構造上の特徴及び限定的だが重要なアミノ酸配列同一性を共有している。これは、574アミノ酸の不活性前駆体(F0)として合成され、小胞体においてアスパラギンに対して共翻訳によりグリコシル化され、そこで集合してホモオリゴマーとなる。細胞表面に達する前に、F0前駆体はプロテアーゼにより切断され、N末端からのF2とC末端からのF1となる。F2鎖及びF1鎖は、1又は複数のジスルフィド結合により共有結合したままである。
【0007】
イムノアフィニティー精製した完全長Fタンパク質は、他の完全長ウイルス膜糖タンパク質で観察されるものと類似したミセルの形態(ロゼットとしてもまた特徴付けられる)で蓄積することが分かっている(Wrigley et al., 1986, in Electron Microscopy of Proteins, Vol 5, p. 103-163, Academic Press, London)。電子顕微鏡下では、ロゼット中の分子は、逆円錐形のロッド(約70%)又はロリポップ形(約30%)のいずれかの構造であって、その広いほうの端部がロゼットの中心から離れる方に突出している構造として現れる。ロッドの立体構造状態は、融合前の不活性状態におけるF糖タンパク質に関連している一方、ロリポップの立体構造状態は、融合後の活性状態におけるF糖タンパク質に関連している。
【0008】
Calder et al., 2000, Virology 271:122-131により示されるとおり、電子顕微鏡写真を使用して前融合と後融合との(或いは、前融合性及び融合性と表される)コンホメーションを区別することができる。前融合コンホメーションはまた、リポソーム会合アッセイによっても融合性(後融合)コンホメーションと区別することができる。加えて、前融合コンホメーションと融合性コンホメーションとは、RSV Fタンパク質の前融合又は融合性のいずれか一方の形態に存在するが、他方の形態には存在しないコンホメーションエピトープを特異的に認識する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して区別することができる。かかるコンホメーションエピトープは、分子の表面上にある抗原決定基の選択的な露出に起因するものであり得る。或いは、コンホメーションエピトープは、直鎖状ポリペプチドにおいて非連続的なアミノ酸が並ぶことにより生じ得る。
【0009】
過去に、F前駆体が2つの部位で切断されることが示されており(部位I、残基109位の後、及び部位II、残基136位の後)、双方ともフューリン様プロテアーゼによって認識されるモチーフが先行する。部位IIは融合ペプチドに隣接し、膜融合には双方の部位でのFタンパク質の切断が必要である(Gonzalez-Reyes et al., 2001, PNAS 98(17): 9859-9864)。双方の部位における切断が完了したときに、円錐形ロッドからロリポップ形ロッドへの移行があると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載されるとおり、本発明者らは、驚くことに、RSV Fタンパク質の構造に対して特定の修飾が加えられると、融合(F)タンパク質の高レベルの発現が実現され得ることを発見した。かかる修飾はまた、意外にも、宿主細胞におけるRSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する。加えて、本発明の修飾Fタンパク質は、前融合「ロッド」形態との対照としての後融合「ロリポップ」形態を呈する能力の向上を示す。従って、一態様において、本発明の修飾Fタンパク質はまた、野生型Fタンパク質と比較して免疫原性の向上を呈することもできる。こうした修飾は、RSVの治療及び/又は予防用ワクチンの開発並びに前記ワクチンの使用方法に多大な応用を有する。本発明は、野生型RSV Fタンパク質と比較して、発現の増加、細胞毒性の低減、及び/又は免疫原性特性の亢進を示す組換えRSV Fタンパク質を提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、野生型RSV Fタンパク質と比較して修飾された、又は変異したアミノ酸配列を含む組換えRSV Fタンパク質を提供する。一般に、こうした修飾又は変異は、野生型RSV Fタンパク質と比較して、RSV Fタンパク質の発現を増加させ、細胞毒性を低減し、及び/又は免疫原性特性を亢進する。特定の例示的実施形態において、RSV Fタンパク質はヒトRSV Fタンパク質である。
【0012】
RSV Fタンパク質は、好ましくは、野生型RSV Fタンパク質(例えば配列番号2に例示される)と比較して修飾された、又は変異したアミノ酸配列を含む。一実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のP102位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のI379位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のM447位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。
【0013】
一実施形態において、RSV Fタンパク質は、上記に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、上記に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。
【0014】
具体的な一実施形態において、本発明は、102位のプロリンがアラニンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、379位のイソロイシンがバリンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、447位のメチオニンがバリンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。特定の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。特定の他の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。例示的実施形態において、RSVタンパク質は配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
一実施形態において、RSV Fタンパク質のコード配列は、好適な宿主細胞におけるその発現を亢進させるようにさらに最適化される。一実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。例示的実施形態において、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0016】
一実施形態において、コドン最適化RSV F遺伝子のコード配列は配列番号3である。別の実施形態において、コドン最適化RSV Fタンパク質は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
一実施形態において、RSV Fタンパク質は、F2のクリプティックポリ(A)部位に少なくとも1つの修飾をさらに含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、一次切断部位(CS)に1又は複数のアミノ酸変異をさらに含む。一実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR133位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR135位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。さらに別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR136位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。
【0018】
具体的な一実施形態において、本発明は、133位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、135位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、136位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。特定の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。特定の他の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。例示的実施形態において、RSVタンパク質は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号2、配列番号4、及び配列番号6のアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分に欠失をさらに含む。例示的実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する。代替的実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
さらに、本発明の範囲内には、上記に示すものに対応する改変を含む、ヒトRSV Fタンパク質(配列番号2)以外のRSV Fタンパク質が含まれる。かかるRSV Fタンパク質には、限定はされないが、ヒトRSVのA株、ヒトRSVのB株、ウシRSVの株、及びトリRSVの株由来のRSV Fタンパク質が含まれ得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、宿主細胞における発現の増加を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。他の実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、宿主細胞における細胞毒性の低減を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。さらに他の実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、免疫原性特性の亢進を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載されるとおりの1又は複数の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む免疫原性組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、1又は複数の修飾又は変異RSV Fタンパク質から構成されるミセル(例えばRSV Fミセル)を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を提供する。いくつかの実施形態において、VLPは、1又は複数のさらなるタンパク質をさらに含む。
【0024】
一実施形態において、VLPは、マトリクス(M)タンパク質をさらに含む。一実施形態において、Mタンパク質は、RSVのヒト株に由来する。別の実施形態において、Mタンパク質は、RSVのウシ株に由来する。他の実施形態において、マトリクスタンパク質は、インフルエンザウイルス株由来のM1タンパク質であってもよい。一実施形態において、インフルエンザウイルス株はトリインフルエンザウイルス株である。他の実施形態において、Mタンパク質は、ニューカッスル病ウイルス(NDV)株に由来してもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、VLPは、RSV糖タンパク質Gをさらに含む。別の実施形態において、VLPは、RSV糖タンパク質SHをさらに含む。さらに別の実施形態において、VLPは、RSVヌクレオカプシドNタンパク質をさらに含む。
【0026】
修飾又は変異RSV Fタンパク質は、RSV感染の予防及び/又は治療に使用し得る。従って、別の態様において、本発明は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む組成物の免疫学的有効量を、ヒト又は動物対象などの対象に投与する工程を含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、本発明のワクチン製剤の成分の1又は複数で充填された1又は複数の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に対して感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導するワクチン又は抗原組成物を製剤化する方法であって、製剤に対し、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの有効用量を添加することを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、感染はRSV感染である。
【0031】
本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質は、感染病原体に対する免疫又は実質的な免疫を付与する免疫応答を刺激する組成物の調製に有用である。従って、一実施形態において、本発明は、対象における感染又はその疾患症状の少なくとも1つの対する免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0032】
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0033】
本発明の組成物は、脊椎動物(例えばヒト)に投与されるとき、脊椎動物において実質的な免疫を誘導することができる。従って、一実施形態において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に、RSVに対するワクチン接種をする方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの防御誘導量を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、対象における感染又はその症状の少なくとも1つに対する防御抗体応答を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、少なくとも1つのVLPの有効用量を投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸を提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を含む単離された細胞を提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。一実施形態において、ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、RSV Fタンパク質を作製する方法であって:(a)本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び(b)前記RSV Fタンパク質の産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;を含む方法を提供する。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。別の実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。さらなる実施形態において、宿主細胞は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトした昆虫細胞である。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、RSV Fタンパク質ミセルを作製する方法であって:(a)本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び(b)前記RSV Fタンパク質ミセルの産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;を含む方法を提供する。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。一実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。例示的実施形態において、宿主細胞は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトした昆虫細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面の簡単な説明
【図1】野生型HRSV F0タンパク質の構造を示す。
【図2】実施例3に記載の、切断部位変異を有する修飾RSV F0タンパク質の構造を示す。
【図3】修飾HRSV Fタンパク質BV #541(配列番号6)の一次切断部位における保存的置換(R133Q、R135Q及びR136Q)を示す。
【図4】修飾HRSV Fタンパク質BV #541(配列番号6)の配列及び構造を示す。
【図5】修飾HRSV Fタンパク質BV #622(配列番号10)の配列及び構造を示す。
【図6】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #622のSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。
【図7】修飾HRSV Fタンパク質BV #683(配列番号8)の構造を示す。
【図8】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #622及びBV #683の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)、及びそれらの構造を示す。
【図9】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析を示す。
【図10】精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683の、走査デンシトメトリー(左)及びウエスタンブロット(右)による純度分析において用いたSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。
【図11】ネガティブ染色電子顕微鏡で撮影した精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683ミセル(ロゼット)の像を示す。
【図12】HRSV Fタンパク質BV #683ミセルの粒径分析を示す。
【図13】粗細胞培養回収物(細胞内)又は30%スクロース勾配分離によるペレット状試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない修飾HRSV Fタンパク質BV #622及びBV #623(配列番号21)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びにBV #622及びBV #623の構造を示す。
【図14】粗細胞培養回収物(細胞内)試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない、修飾HRSV Fタンパク質BV #622、ダブルタンデムキメラBV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683、BV #684(YIAL L−ドメインを有するBV #541)、及びBV #685(YKKL L−ドメインを有するBV #541)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びに分析した各修飾HRSV Fタンパク質の構造を示す。
【図15】30%スクロース勾配分離によるペレット状試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない、修飾RSV Fタンパク質BV #622(配列番号10)、ダブルタンデムキメラBV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683(配列番号8)、BV #684(YIAL L−ドメインを有するBV #541)、及びBV #685(YKKL L−ドメインを有するBV #541)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びに分析した各修飾HRSV Fタンパク質の構造を示す。
【図16】実施例9に記載の各修飾RSV Fタンパク質についての構造、クローン名、説明、ウエスタンブロット及びSDS−PAGEクーマシー結果、及び結論を示す。
【図17】実施例10に記載のRSVチャレンジ試験の実験手順を示す。
【図18】PBS、生RSV、FI−RSV、1ugのPFP、1ugのPFP+ミョウバン、10ugのPFP、10ugのPFP+ミョウバン、30ugのPFP、及び陽性対照(抗Fヒツジ)で免疫したマウスの、31日目及び46日目におけるRSV中和アッセイの結果を示す。
【図19】感染性RSVのチャレンジ後4日目における、PBS、生RSV、FI−RSV、1ugのPFP、1ugのPFP+ミョウバン、10ugのPFP、10ugのPFP+ミョウバン、及び30ugのPFPで免疫したマウスの肺組織におけるRSV力価を示す。
【図20】2〜8℃で0、1、2、4、及び5週間保存した精製組換えRSV Fタンパク質BV #683の、クーマシーで染色したSDS−PAGEゲルを示す。
【図21】生RSV(RSV)、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴うか又は伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(PFP及びPFP+アルミニウムアジュバント)、及びPBS対照による免疫後のRSV A及びRSV B中和抗体応答を示す。
【図22】生RSV、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴うか又は伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(F−ミセル(30ug)及びF−ミセル(30ug)+アルミニウムアジュバント)、及びPBS対照で免疫したラットにおけるRSVによるチャレンジ後の肺病理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
定義
本明細書において、用語「アジュバント」は、製剤中で特定の免疫原(例えば修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLP)と組み合わせて使用されるとき、得られる免疫応答を増強するか、あるいは改変若しくは修飾する化合物を指す。免疫応答の修飾には、抗体応答及び細胞性免疫応答の一方又は双方の特異性の強化又は拡大が含まれる。免疫応答の修飾はまた、特定の抗原特異的免疫応答の低下又は抑制も意味し得る。
【0043】
本明細書において用語「抗原製剤」又は「抗原組成物」は、脊椎動物、特に鳥類又は哺乳類に投与されると免疫応答を誘導し得る調製物を指す。
【0044】
本明細書において用語「トリインフルエンザウイルス」は、主として鳥類に見られるが、ヒト又は他の動物にも感染し得るインフルエンザウイルスを指す。あるケースでは、トリインフルエンザウイルスはヒトからヒトに伝染又は伝播し得る。ヒトに感染するトリインフルエンザウイルスは、インフルエンザの大流行を引き起こし、すなわちヒトにおける罹患率及び/又は死亡率の原因となる可能性を有する。大流行は、新種のインフルエンザウイルス株(ヒトが自然免疫を有しないウイルス)が現れたときに起こり、個々の地域を越えて、場合によっては全世界的に伝播し、多くの人に同時に感染する。
【0045】
本明細書において「有効用量」は、概して、免疫を誘導し、感染を予防及び/又は改善するか、又は感染若しくは疾患の少なくとも1つの症状を軽減し、及び/又は別の用量の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの効力を亢進させるのに十分な、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指す。有効用量は、感染又は疾患の発症を遅延させ、又は最小限に抑えるのに十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指すこともある。有効用量はまた、感染又は疾患の治療又は管理において治療利益を提供するのに十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指すこともある。さらに、有効用量は、単独で、又は他の療法との組み合わせで、感染又は疾患の治療又は管理において治療利益を提供する本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPに関する量である。有効用量はまた、後の感染病原体又は疾患への曝露に対する対象の(例えば、ヒトの)自己免疫応答を亢進させるのに十分な量であってもよい。免疫レベルは、例えば、中和分泌及び/又は血清抗体の量を、例えばプラーク中和、相補体固定、酵素結合免疫吸着、若しくはマイクロ中和アッセイによって計測することによって、又は細胞性応答、限定はされないが、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞及び/又は他の細胞性応答などを計測することによって、モニタすることができる。T細胞応答は、例えば、蛍光フローサイトメトリーか、又はT細胞アッセイ、限定はされないが、T細胞増殖アッセイ、T細胞傷害性アッセイ、テトラマーアッセイ、及び/又はELISPOTアッセイなどにより特異的マーカーを使用して、例えばCD4+及びCD8+細胞の存在量を計測することにより、モニタすることができる。ワクチンの場合、「有効用量」は、疾患を予防し、及び/又は症状の重症度を軽減する用量である。
【0046】
本明細書において、用語「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するのに必要な又は十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指す。組成物の有効量は、選択された結果を実現する量とすることもでき、及びかかる量は、当業者によりルーチン実験の問題として決定されることが可能である。例えば、感染を予防、治療、及び/又は改善するための有効量は、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPに曝露後、免疫系の活性化を引き起こし、それにより抗原特異的な免疫応答を生じさせるために必要な量であり得る。この用語はまた、「十分量」と同義語でもある。
【0047】
本明細書において、用語「発現」は、ポリ核酸がmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリ核酸がゲノムDNAに由来する場合、発現は、適切な真核宿主細胞又は生物が選択される場合には、mRNAのスプライシングを含み得る。本発明の文脈では、この用語はまた、RSV F遺伝子mRNA及びその発現後に得られるRSV Fタンパク質の産生も包含する。
【0048】
本明細書において、用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」は、RSV融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全て又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。同様に、用語「Gタンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」は、RSV付着タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全て又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。多数のRSV融合及び付着タンパク質が記載されており、当業者に公知である。全体として参照により本明細書に援用される国際公開第2008/114149号が、例示的なF及びGタンパク質変異体(例えば、天然に存在する変異体)について詳説している。
【0049】
本明細書において、用語「免疫原」又は「抗原」は、免疫応答の誘発能を有するタンパク質、ペプチド、ペプチド、核酸などの物質を指す。双方の用語とも、エピトープも包含し、同義的に用いられる。
【0050】
本明細書において用語「免疫刺激剤」は、生体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)を介した免疫応答を亢進させる化合物を指す。こうした分子は、免疫刺激活性、免疫強化活性、及び炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカイン、例えば、インターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等を含む。免疫刺激剤分子は本発明のVLPと同じ製剤で投与されてもよく、又は別個に投与されてもよい。タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを投与して、免疫刺激効果をもたらすことができる。
【0051】
本明細書において、用語「免疫原性製剤」は、脊椎動物、例えば哺乳動物に投与されると免疫応答を誘導し得る調製物を指す。
【0052】
本明細書での使用時、用語「感染病原体」は、脊椎動物に感染を引き起こす微生物を指す。通常、生物は、ウイルス、細菌、寄生体、原生動物及び/又は真菌である。
【0053】
本明細書において、用語「変異した」、「修飾された」、「変異」、又は「修飾」は、改変された核酸又はポリペプチドをもたらす核酸及び/又はポリペプチドの任意の修飾を指し示す。変異は、例えば、遺伝子のタンパク質コード領域内に生じる改変、並びに限定はされないが、調節配列又はプロモーター配列などのタンパク質コード配列の外側の領域における改変を含むポリヌクレオチドの単一又は複数の残基の点変異、欠失、又は挿入を含む。遺伝子改変は、いかなるタイプの変異であってもよい。例えば、変異は、遺伝子の一部又は全ての点変異、フレームシフト変異、挿入、又は欠失を構成し得る。いくつかの実施形態において、変異は天然に生じるものである。他の実施形態において、変異は人工的な変異圧の結果である。さらに他の実施形態において、RSV Fタンパク質における変異は、遺伝子操作の結果である。
【0054】
本明細書において、用語「多価」は、複数のタイプ又は株の感染病原体又は疾患に対する1又は複数の抗原タンパク質/ペプチド又は免疫原を有する組成物を指す。
【0055】
本明細書において、用語「薬学的に許容可能なワクチン」は、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含有する製剤を指し、これは脊椎動物に投与することが可能な形態であり、且つこれは感染又は疾患を予防及び/又は改善し、及び/又は感染又は疾患の少なくとも1つの症状を軽減し、及び/又は別の用量の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの効力を亢進させる免疫を誘導するのに十分な防御免疫応答を誘導するものである。典型的には、ワクチンは従来の生理食塩水又は緩衝水溶液媒質を含み、そこに本発明の組成物が懸濁又は溶解される。この形態において、本発明の組成物を感染の予防、改善又はその他の形での治療に好都合に用いることができる。宿主に導入されると、ワクチンは、限定はされないが、抗体及び/又はサイトカインの産生、及び/又は細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞の活性化及び/又は他の細胞性応答を含めた免疫応答を引き起こすことができる。
【0056】
本明細書において、語句「防御免疫応答」又は「防御応答」は、脊椎動物(例えば、ヒト)が呈する、感染病原体又は疾患に対する抗体により媒介される免疫応答であって、感染を予防若しくは改善し、又はその疾患症状の少なくとも1つを軽減する免疫応答を指す。本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPは、例えば、感染病原体を中和し、感染病原体が細胞に侵入するのを阻止し、感染病原体の複製を阻止し、及び/又は宿主細胞を感染及び破壊から保護する抗体の産生を刺激することができる。この用語はまた、脊椎動物(例えば、ヒト)が呈する、感染病原体又は疾患に対するTリンパ球及び/又は他の白血球細胞により媒介される免疫応答であって、感染又は疾患を予防若しくは改善し、又はその少なくとも1つの症状を軽減する免疫応答を指すこともできる。
【0057】
本明細書において、用語「脊椎動物」又は「対象」又は「患者」は、限定なしに、ヒト、並びにチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類を含めた他の霊長類を含む脊索動物亜門(subphylum cordata)の任意のメンバーを指す。ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの農場動物;イヌ及びネコなどの家畜化された哺乳動物;マウス、ラット(コットンラットを含む)及びモルモットなどのげっ歯類を含めた実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及び他のキジ類の鳥、アヒル、ガチョウなどの、家禽、野鳥及び狩猟鳥を含む鳥類もまた、非限定的な例である。用語「哺乳動物」及び「動物」は、この定義に含まれる。成体及び新生児の双方の個体が包含されることが意図される。特に、乳児及び低年齢幼児が、RSVワクチンに適した対象又は患者である。
【0058】
本明細書において、用語「ウイルス様粒子」(VLP)は、少なくとも1つの属性がウイルスに類似しているが、伝染性であると実証されたことがない構造を指す。本発明に係るウイルス様粒子は、ウイルス様粒子のタンパク質をコードする遺伝情報を有しない。一般に、ウイルス様粒子はウイルスゲノムを欠いており、従って非伝染性である。加えて、ウイルス様粒子は多くの場合に異種発現によって大量に産生することができ、且つ容易に精製することができる。
【0059】
本明細書において、用語「キメラVLP」は、少なくとも2つの異なる感染病原体由来のタンパク質、又はその一部分を含有するVLPを指す(異種タンパク質)。通常、タンパク質のうちの一つは、宿主細胞からのVLPの形成を駆動することのできるウイルスに由来する。例示を目的とした例は、BRSV Mタンパク質及び/又はHRSV G若しくはFタンパク質である。用語のRSV VLPとキメラVLPとは、適切な場合には同義的に用いることができる。
【0060】
本明細書において、用語「ワクチン」は、死滅させた、若しくは弱毒化した病原体の、又は誘導された抗原決定基の調製物であって、病原体に対する抗体又は免疫の形成を誘導するために使用される調製物を指す。ワクチンは、疾患、例えばインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザに対する免疫を提供するために投与される。加えて、用語「ワクチン」はまた、脊椎動物に投与されることで防御免疫、すなわち、感染に付随する疾患を予防し、又はその重症度を軽減する免疫をもたらす免疫原(例えば、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLP)の懸濁液又は溶液も指す。本発明は、免疫原性であり、且つ感染に付随する疾患に対する防御を提供し得るワクチン組成物を提供する。
【0061】
RSV Fタンパク質
2つの構造膜タンパク質であるF及びGタンパク質は、RSVの表面上で発現し、中和抗体の標的であることが示されている(Sullender, W., 2000, Clinical Microbiology Review 13, 1-15)。これらの2つのタンパク質はまた、ウイルス認識及び標的細胞への侵入にも主として関与している;Gタンパク質は特定の細胞受容体に結合し、Fタンパク質はウイルスの細胞との融合を促進する。Fタンパク質はまた、感染細胞の表面上でも発現し、合胞体の形成をもたらす他の細胞との続く融合にも関与している。従って、Fタンパク質に対する抗体は、ウイルスを中和し、又はウイルスの細胞への侵入を阻止し、又は合胞体の形成を防止することができる。サブタイプAとBとの抗原性及び構造の違いが、Gタンパク質及びFタンパク質の双方について記載されているが、Gタンパク質にはより大きい抗原性の違いが存在し、ここではアミノ酸配列が53%しか相同でなく、抗原性における関連性は5%である(Walsh et al. (1987) J. Infect. Dis. 155, 1198-1204;及びJohnson et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 5625-5629)。逆に、Fタンパク質に対して生じる抗体は、サブタイプA及びBウイルスの間で高度な交差反応性を示す。
【0062】
RSV Fタンパク質は、ビリオンのエンベロープタンパク質と宿主細胞の細胞膜との間の融合によるRSVの貫通を誘導する。感染後期には、細胞表面上で発現したFタンパク質が隣接細胞との融合を媒介し、合胞体を形成し得る。Fタンパク質は、N末端の切断されたシグナルペプチドとC末端近傍の膜アンカーとを有するI型膜貫通表面タンパク質である。RSV Fは、集合してホモ三量体となる不活性F0前駆体として合成され、細胞エンドプロテアーゼによりトランス−ゴルジ複合体において切断を受けて活性化され、2つのジスルフィド結合したサブユニットであるF1及びF2サブユニットを生じる。切断により作られるF1サブユニットのN末端は、標的膜に直接挿入して融合を開始する疎水性ドメイン(融合ペプチド)を含む。F1サブユニットはまたヘプタッドリピートも含み、これらは融合中に会合し、ウイルス膜と細胞膜とをごく近接させるコンホメーションシフトを駆動する(Collins and Crowe, 2007, Fields Virology, 5th ed., D.M Kipe et al., Lipincott, Williams and Wilkons, p. 1604)。配列番号2(GenBank受託番号AAB59858)は代表的なRSV Fタンパク質を示し、これは配列番号1(GenBank受託番号M11486)に示される遺伝子によりコードされる。
【0063】
事実上、RSV Fタンパク質は、574アミノ酸長の、FOと命名される単一のポリペプチド前駆体として発現する。生体内では、FOは小胞体においてオリゴマー化し、2つの保存されたフューリンコンセンサス配列(フューリン切断部位)であるRARR(配列番号23)(二次)とKKRKRR(配列番号24)(一次)とにおいてフューリンプロテアーゼによるタンパク分解性のプロセシングを受けることで、2つのジスルフィド結合した断片からなるオリゴマーを生成する。これらの断片のうち小さいほうはF2と称され、FO前駆体のN末端部分から生じる。当業者は、略称FO、F1及びF2が、科学論文では一般にF0、F1及びF2と表されることを認識するであろう。大きいほうのC末端F1断片は、24アミノ酸の細胞質テールに隣接する疎水性アミノ酸の配列を介してFタンパク質を膜に固定する。3つのF2−F1二量体が会合して成熟Fタンパク質を形成し、これは、標的細胞膜と接触すると誘発されてコンホメーション変化を起こす準安定前融合性(「前融合」)コンホメーションをとる。このコンホメーション変化により、融合ペプチドとして知られる疎水性配列が露出し、これが宿主細胞膜と結合して、ウイルスの膜、又は感染細胞の標的細胞膜との融合を促進する。
【0064】
F1断片は、HRA及びHRBと命名される少なくとも2つのヘプタッドリピートドメインを含み、これらはそれぞれ、融合ペプチドドメイン及び膜貫通アンカードメインに近接して位置する。前融合コンホメーションでは、F2−F1二量体は球状ヘッドとストークの構造を形成し、ここでHRAドメインは、球状ヘッドにおいてセグメント化された(伸展した)コンホメーションにある。対照的に、HRBドメインは、ヘッド領域から伸展する三本鎖コイルドコイルストークを形成する。前融合コンホメーションから後融合コンホメーションに移行する間、HRAドメインは折り畳まれ、HRBドメインに近接するようになって逆平行の6つのヘリックス束を形成する。後融合状態では、融合ペプチドドメインと膜貫通ドメインとが隣り合って並び、膜融合が促進される。
【0065】
上記に提供されるコンホメーションについての説明は、結晶学的データの分子モデリングに基づいているが、前融合コンホメーションと後融合コンホメーションとの構造上の差異は、結晶学に頼ることなくモニタすることができる。例えば、その技術的教示を目的として参照により本明細書に援用されるCalder et al., Virology, 271:122-131 (2000)及びMorton et al., Virology, 311: 275-288に示されるとおり、電子顕微鏡写真を使用して前融合と後融合との(或いは、前融合性及び融合性と表される)コンホメーションを区別することができる。前融合コンホメーションはまた、同様にその技術的教示を目的として参照により本明細書に援用されるConnolly et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:17903-17908 (2006)に記載のリポソーム会合アッセイによっても、融合性(後融合)コンホメーションと区別することができる。加えて、前融合コンホメーションと融合性コンホメーションとは、RSV Fタンパク質の前融合又は融合性のいずれか一方の形態に存在するが、他方の形態には存在しないコンホメーションエピトープを特異的に認識する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して区別することができる。かかるコンホメーションエピトープは、分子の表面上にある抗原決定基の選択的な露出に起因するものであり得る。或いは、コンホメーションエピトープは、直鎖状ポリペプチド中では非連続的なアミノ酸が、並ぶことにより生じ得る。
【0066】
修飾又は変異RSV Fタンパク質
本発明者らは、驚くことに、RSV Fタンパク質の構造に対して特定の修飾が加えられると、融合(F)タンパク質の高レベルの発現が実現され得ることを発見した。かかる修飾はまた、意外にも、宿主細胞におけるRSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する。加えて、本発明の修飾Fタンパク質は、前融合「ロッド」形態との対照としての後融合「ロリポップ」形態を呈する能力の向上を示す。従って、一態様において、本発明の修飾Fタンパク質はまた、野生型Fタンパク質(例えば配列番号2により例示される、これはGenBank受託番号AAB59858に対応する)と比較して免疫原性の向上(例えば亢進)を呈することもできる。こうした修飾は、RSVの治療及び/又は予防用ワクチンの開発及び前記ワクチンの使用方法に多大な応用を有する。
【0067】
本発明に従えば、天然又は野生型RSV Fタンパク質に対して任意の数の変異を加えることができ、及び好ましい態様では、複数の変異を加えることにより、天然又は野生型RSV Fタンパク質と比較して発現及び/又は免疫原性特性の向上をもたらすことができる。かかる変異には、点変異、フレームシフト変異、欠失、及び挿入が含まれ、1又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ等)の変異が好ましい。
【0068】
天然Fタンパク質ポリペプチドは、RSV A株、RSV B株、HRSV A株、HRSV B株、BRSV株、若しくはトリRSV株の任意のFタンパク質から、又はその変異体(上記に定義されるとおり)から選択することができる。特定の例示的実施形態において、天然Fタンパク質ポリペプチドは、配列番号2(GenBank受託番号AAB59858)によって表されるFタンパク質である。本開示の理解を促進するため、全てのアミノ酸残基位置が、株にかかわらず、例示的Fタンパク質のアミノ酸位置に対して示される(すなわち、アミノ酸残基位置がそれに対応する)。他のRSV株由来のFタンパク質の同等のアミノ酸位置については、当業者は、容易に利用可能な周知のアラインメントアルゴリズムを用いて(BLASTなど、例えばデフォルトパラメータを使用して)選択されたRSV株のアミノ酸配列を例示的配列のアミノ酸配列と整列させることにより容易に決定することができる。種々のRSV株由来のFタンパク質ポリペプチドの多数のさらなる例が、国際公開第2008/114149号(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。さらなる変異体が遺伝的浮動を通じて生じることがあり、又は部位特異的若しくはランダム変異誘発を用いて、又は2個以上の既存の変異体の組換えにより、人工的に産生され得る。かかるさらなる変異体もまた、本明細書に開示される修飾又は変異RSV Fタンパク質との関連において好適である。
【0069】
変異は、当業者に公知の任意の方法論を用いて本発明のRSV Fタンパク質に導入され得る。変異は、例えば、二価金属イオン補因子としてのマンガンの存在下でPCR反応を行うことにより、ランダムに導入されてもよい。或いは、コードDNA分子に沿った任意の特定の部位における全ての可能なクラスの塩基対変化を可能にするオリゴヌクレオチド特異的変異誘発を使用して、変異体又は修飾RSV Fタンパク質を作製してもよい。一般に、この技法には、目的のRSV Fタンパク質をコードする一本鎖ヌクレオチド配列と(1又は複数のミスマッチを除いて)相補的なオリゴヌクレオチドのアニーリングが関わる。次にミスマッチオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼにより伸長され、一方の鎖の配列中に所望の変化を含む二本鎖DNA分子が生成される。配列の変化は、例えば、アミノ酸の欠失、置換、又は挿入をもたらすことができる。次に二本鎖ポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに挿入することができ、このようにして変異体又は修飾ポリペプチドが産生され得る。上述のオリゴヌクレオチド特異的変異誘発は、例えばPCRにより行うことができる。
【0070】
さらなるRSVタンパク質
本発明はまた、RSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つから脊椎動物(例えばヒト)を防御するためのワクチン又は抗原製剤に製剤化することのできる、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSVウイルス様粒子(VLP)も包含する。いくつかの実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPはさらに、M、N、G、及びSHなどのさらなるRSVタンパク質を含む。他の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPはさらに、インフルエンザウイルスタンパク質HA、NA、及びM1などの異種ウイルス株由来のタンパク質を含む。一実施形態において、インフルエンザウイルスタンパク質M1は、トリインフルエンザウイルス株に由来する。
【0071】
RSV Nタンパク質はゲノムRNA及び複製中間体抗ゲノムRNAの双方と緊密に結合してRNアーゼ抵抗性ヌクレオカプシドを形成する。配列番号16(野生型)及び18(コドン最適化型)がRSV Nタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示し、配列番号15(野生型)及び17(コドン最適化型)が、RSV Nタンパク質をコードする代表的な核酸配列を示す。本発明には、配列番号18と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV Nタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0072】
RSV Mタンパク質は、ウイルスの形態形成においてRSV Fタンパク質及び他の因子と相互作用する、細胞膜に蓄積するグリコシル化されていない内在性のビリオンタンパク質である。特定の好ましい実施形態において、RSV Mタンパク質はウシRSV(BRSV)Mタンパク質である。配列番号12(野生型)及び14(コドン最適化型)がBRSV Mタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示し、配列番号11(野生型)及び13(コドン最適化型)が、BRSV Mタンパク質をコードする代表的な核酸配列を示す。本発明には、配列番号12及び14と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV(限定はされないが、BRSVを含む)Mタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0073】
RSV Gタンパク質は、切断されていないシグナルペプチド及び膜アンカーの双方として機能する単一の疎水性領域をN末端近傍に有し、分子のC末端3分の2が外側に向いた状態にあるII型膜貫通糖タンパク質である。RSV Gはまた、シグナル/アンカー内にあるORFの第2のAUGにおける(ほぼアミノ酸48位における)翻訳開始から生じる分泌タンパク質としても発現する。RSV Gの外部ドメインのほとんどは、RSV株間で高い多様性がある(同上、p. 1607)。配列番号26が代表的なRSV Gタンパク質を示し、これは配列番号25に示される遺伝子配列によってコードされる。本発明には、配列番号26と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV Gタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0074】
RSVのSHタンパク質は、64個(RSV亜群A)又は65個(RSV亜群B)のアミノ酸残基を含むII型膜貫通タンパク質である。いくつかの研究では、RSV SHタンパク質がウイルス融合において、又は膜貫通性の変化において役割を有し得ることが示唆されている。しかしながら、SH遺伝子を持たないRSVが生存可能であり、合胞体形成を引き起こし、及び野生型ウイルスと同じく良好に成長することから、SHタンパク質がウイルスの宿主細胞への侵入又は合胞体形成に必須ではないことが示される。RSVのSHタンパク質については、TNF−αシグナル伝達を阻害する能力が示されている。配列番号27が、RSV SHタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示す。本発明には、配列番号27と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV SHタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0075】
RSVワクチン
現在、RSV疾患の予防に対して唯一認可が下りている手法は、受動免疫法である。IgGの防御的役割を示唆する初期のエビデンスは、フェレット(Prince, G. A., Ph.D. diss., University of California, Los Angeles, 1975)及びヒト(Lambrecht et al., (1976) J. Infect. Dis. 134, 211-217;及びGlezen et al. (1981) J. Pediatr. 98,708-715)における移行抗体(maternal antibldy)が関わる観察から得られた。Hemming et al.(Morell et al., eds., 1986, Clinical Use of Intravenous Immunoglobulins, Academic Press, London 285-294頁)は、新生児敗血症を有することが疑われる新生児における静注用免疫グロブリン(IVIG)の薬物動態が関わる研究のなかで、RSV感染の治療又は予防にRSV抗体が有用である可能性を認識した。彼らは、呼吸器分泌物からRSVが得られた1人の乳児が、IVIG注入後に急速に回復したことを指摘した。続くIVIGロットの分析から、著しく高いRSV中和抗体力価が明らかとなった。次に、この同じ研究者グループは、RSV中和抗体を濃縮した高度免疫血清又は免疫グロブリンの、RSV感染からコットンラット及び霊長類を防御する能力を調べた(Prince et al. (1985) Virus Res. 3, 193-206;Prince et al. (1990) J. Virol. 64, 3091-3092。これらの研究の結果から、予防的に投与されたRSV中和抗体がコットンラットにおいて気道でのRSV複製を阻害することが示唆された。治療的に投与されるとき、RSV抗体は、コットンラット及び非ヒト霊長類モデルの双方において肺でのウイルス複製を低減した。さらに、免疫血清又は免疫グロブリンの受動注入が、続いてRSVによりチャレンジしたコットンラットにおいて肺病理の亢進をもたらすことはなかった。
【0076】
RSV感染は、脊椎動物に中和抗体を提供することにより予防することができるため、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むワクチンは、脊椎動物に投与されると、生体内で中和抗体を誘導し得る。修飾又は変異RSV Fタンパク質は、有利にはRSV感染の予防及び/又は治療に使用される。従って、本開示の別の態様は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法に関する。前記方法は、対象(ヒト又は動物対象など)に修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む組成物の免疫学的有効量を投与する工程を含む。組成物の免疫学的有効量の投与が、修飾又は変異RSV Fタンパク質に存在するエピトープに特異的な免疫応答を誘発する。かかる免疫応答には、B細胞応答(例えば、中和抗体の産生)及び/又はT細胞応答(例えば、サイトカインの産生)が含まれ得る。好ましくは、修飾又は変異RSV Fタンパク質により誘発される免疫応答は、修飾又は変異RSV Fタンパク質に存在する少なくとも1つのコンホメーションエピトープに特異的なエレメントを含む。一実施形態において、免疫応答は、「ロリポップ」後融合活性状態に見られるRSV Fタンパク質に存在するエピトープに特異的である。RSV Fタンパク質及び組成物は、RSVとの接触後にウイルス性疾患を亢進させることなく、対象に投与されることができる。好ましくは、本明細書に開示される修飾又は変異RSV Fタンパク質及び好適に製剤化された免疫原性組成物は、RSV感染を軽減若しくは予防し、及び/又はRSV感染後の病理学的応答を軽減若しくは予防するTh1バイアス免疫応答を誘発する。
【0077】
一実施形態において、本発明のRSV Fタンパク質はミセル(例えばロゼット)の形態で見られる。本発明に従い得ることのできるミセルは、ロゼット様構造を有する免疫原性的に活性のFスパイクタンパク質凝集体からなる。ロゼットは、電子顕微鏡で見ることができる(Calder et al., 2000, Virology 271: 122-131)。好ましくは、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む本発明のミセルは、後融合活性状態を示す「ロリポップ」形態を呈する。一実施形態において、ミセルは宿主細胞における発現後に精製される。対象に投与されると、本発明のミセルは好ましくは中和抗体を誘導する。いくつかの実施形態において、ミセルはアジュバントと共に投与され得る。他の実施形態において、ミセルはアジュバントなしで投与され得る。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、RSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つから脊椎動物(例えばヒト)を防御するためのワクチン又は抗原製剤に製剤化することのできる、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSVウイルス様粒子(VLP)を包含する。本発明はまた、宿主細胞にトランスフェクトされるとRSVタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を産生し得る、異なるRSVウイルス株に由来する野生型及び変異RSV遺伝子又はそれらの組み合わせを含むRSV VLP及びベクターにも関する。
【0079】
いくつかの実施形態において、RSVウイルス様粒子は、少なくとも1つのウイルスマトリクスタンパク質(例えばRSV Mタンパク質)をさらに含み得る。一実施形態において、Mタンパク質はRSVのヒト株に由来する。別の実施形態において、Mタンパク質はRSVのウシ株に由来する。他の実施形態において、マトリクスタンパク質は、インフルエンザウイルス株由来のM1タンパク質であってもよい。一実施形態において、インフルエンザウイルス株はトリインフルエンザ株である。好ましい実施形態において、トリインフルエンザ株はH5N1株A/Indonesia/5/05である。他の実施形態において、マトリクスタンパク質はニューカッスル病ウイルス(NDV)由来であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV Gタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、Gタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、Gタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV Gは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV SHタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、SHタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、SHタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV SHは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV Nタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、Nタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、Nタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV Nは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0083】
さらなる実施形態において、本発明のVLPは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)などの1又は複数の異種免疫原を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、1又は複数のVLPにおける同じ、及び/又は異なる株由来の異なるRSV M、F、N、SH、及び/又はGタンパク質の組み合わせも含む。加えて、VLPは、免疫応答を亢進させるための1又は複数のさらなる分子を含むことができる。
【0085】
本発明の別の実施形態において、RSV VLPは、核酸、siRNA、マイクロRNA、化学療法剤、造影剤、及び/又は患者に送達される必要がある他の薬剤などの薬剤を含むことができる。
【0086】
本発明のVLPは、ワクチン及び免疫原性組成物の調製に有用である。VLPの一つの重要な特徴は、脊椎動物の免疫系が目的のタンパク質に対する免疫応答を誘導するように目的の表面タンパク質を発現する能力である。しかしながら、全てのタンパク質がVLPの表面上で発現することができるとは限らない。特定のタンパク質がVLPの表面上で発現しない、又は発現しにくい理由は多くあり得る。一つの理由は、タンパク質が宿主細胞の膜に特異的でないこと、又はタンパク質が膜貫通ドメインを有しないことである。例として、インフルエンザ赤血球凝集素のカルボキシル末端近傍の配列は、成熟インフルエンザのエンベロープを有するヌクレオカプシドの脂質二重層へのHAの取り込みに重要であり、かつインフルエンザマトリクスタンパク質M1とのHA三量体相互作用の組み立てに重要であり得る(Ali, et al., (2000) J. Virol. 74, 8709-19)。
【0087】
従って、本発明の一実施形態は、RSV由来の修飾又は変異Fタンパク質と、通常は細胞表面上で効率的に発現しない、又は通常のRSVタンパク質ではない少なくとも1つの免疫原とを含むキメラVLPを含む。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質は、目的の免疫原と融合し得る。別の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質は、異種ウイルス表面膜タンパク質、例えばMMTVエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールを介して免疫原と会合する。
【0088】
本発明の他のキメラVLPは、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを含む。異種感染病原体の例には、限定はされないが、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び/又は寄生体が含まれる。一実施形態において、別の感染病原体由来の免疫原は異種ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のタンパク質はエンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、別の異種感染病原体由来のタンパク質はVLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。一実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と共発現する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質は修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが修飾又は変異RSV Fタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する別の感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。
【0089】
本発明はまた、本発明のVLP上又はVLP内で発現するタンパク質の変異体も包含する。変異体は、構成タンパク質のアミノ酸配列の改変を含み得る。タンパク質に関連して用語「変異体」は、参照配列に対して1又は複数のアミノ酸が改変されているアミノ酸配列を指す。変異体は「保存的な」変化を有することができ、ここでは置換されたアミノ酸が同様の構造的又は化学的特性を有し、例えばロイシンのイソロイシンとの置換である。或いは、変異体は「非保存的な」変化を有することもでき、例えばグリシンのトリプトファンとの置換である。類似した小さい変異としてはまた、アミノ酸欠失又は挿入、又はその双方が含まれ得る。生物学的又は免疫学的活性を失うことなくどのアミノ酸残基が置換、挿入、又は欠失され得るかを判断する際の指針は、当該技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えばDNASTARソフトウェアを使用して見出すことができる。
【0090】
天然変異体は、タンパク質における変異に起因して生じ得る。こうした変異は、感染病原体、例えばインフルエンザの個々の群内における抗原性のばらつきをもたらし得る。従って、例えばインフルエンザ株に感染した人は、当該ウイルスに対する抗体を作り出し、新しいウイルス株が現れると、古い株に対する抗体はもはや新しいウイルスを認識せず、再感染が起こり得る。本発明は、VLPを作製するための感染病原体由来のタンパク質の全ての抗原性の及び遺伝的なばらつきを包含する。
【0091】
クローニング、変異、細胞培養などの、本発明に適用可能な分子生物学的技法について記載している一般的なテキストには、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif.(Berger);Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 2000(「Sambrook」)及びCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.,との合弁事業(「Ausubel」)が含まれる。これらのテキストは、変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、並びに例えばRSVのF及び/又はG分子のクローニング及び変異導入等に関連する他の多くの関連トピックについて記載している。従って、本発明はまた、本発明のVLP上又はVLP内で発現するタンパク質の特性を改良又は改変するためのタンパク質工学及び組換えDNA技術の公知の方法の使用も包含する。様々なタイプの変異誘発を使用して、タンパク質分子をコードする変異核酸を産生及び/又は単離し、及び/又は本発明のVLP内又はVLP上のタンパク質をさらに修飾し/変異させることができる。これには、限定はされないが、部位特異的ランダム点変異誘発、相同組換え(DNAシャフリング)、ウラシル含有鋳型を使用する変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA変異誘発、ギャップドデュプレックスDNAを使用する変異誘発などが含まれる。さらなる好適な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用する変異誘発、制限選択及び制限精製、欠失変異誘発、全遺伝子合成による変異誘発、二本鎖切断修復などが含まれる。例えばキメラコンストラクトが関わる変異誘発もまた、本発明に含まれる。一実施形態において、変異誘発は、天然に存在する分子、又は改変された若しくは変異した天然に存在する分子の既知の情報、例えば、配列、配列比較、物理的特性、結晶構造などを指針とし得る。
【0092】
本発明は、実質的な生物活性を示し、例えば、本発明のVLP上又はVLP内で発現すると有効な抗体応答を誘発することが可能なタンパク質変異体をさらに含む。かかる変異体は、当該技術分野において公知の通則に従い活性に対してほとんど影響を有しないように選択される欠失、挿入、逆位、反復、及び置換を含む。
【0093】
タンパク質のクローニング方法は、当該技術分野において公知である。例えば、特定のRSVタンパク質をコードする遺伝子は、RSVウイルスに感染させた細胞から抽出したポリアデニル化mRNAからRT−PCRによって単離することができる。得られる産物遺伝子は、DNAインサートとしてベクターにクローニングすることができる。用語「ベクター」は、核酸を増殖させたり、及び/又は生物、細胞、若しくは細胞成分間で移動したりすることができる手段を指す。ベクターには、自己複製する、又は宿主細胞の染色体に組み込まれることのできるプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体などが含まれる。ベクターはまた、自己複製しないネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ株内のDNAとRNAとの双方から構成されるポリヌクレオチド、ポリ−リジン結合DNA又はRNA、ペプチド結合DNA又はRNA、リポソーム結合DNAなどであってもよい。全てではないが、多くの共通する実施形態では、本発明のベクターはプラスミド又はバクミドである。
【0094】
従って、本発明は、本発明のVLPの形成を誘導する細胞内で発現することのできる発現ベクターにクローニングされた、キメラ分子を含めたタンパク質をコードするヌクレオチドを含む。「発現ベクター」は、発現の促進、並びにそこに組み込まれた核酸の複製が可能なプラスミドなどのベクターである。典型的には、発現させる核酸は、プロモーター及び/又はエンハンサーに「作動可能に連結」されており、プロモーター及び/又はエンハンサーによる転写調節制御を受ける。一実施形態において、ヌクレオチドは修飾又は変異RSV Fタンパク質(上記に考察されるとおり)をコードする。別の実施形態において、ベクターは、M及び/又はG RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、M及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、M、G及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、BRSV Mタンパク質及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、BRSV M及び/又はGタンパク質、又はインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ヌクレオチドは、修飾又は変異RSV F及び/又はRSV Gタンパク質をインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質と共にコードする。別の実施形態において、発現ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じさせるが、しかしコードされるタンパク質の特性若しくは活性又はタンパク質の作られ方は改変させないような改変を含む変異を含み得る。ヌクレオチド変異体は、様々な理由(、例えば、特定の宿主に対してコドン発現を最適化するため)により産生され得る(ヒトmRNAにおけるコドンをSf9細胞などの昆虫細胞に好ましいものに変化させる。全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0118191号を参照のこと。
【0096】
加えて、ヌクレオチドを配列決定して、正しいコード領域がクローニングされたこと、及びいかなる不要な変異も含まないことを確実にすることができる。ヌクレオチドは、任意の細胞において発現させるため発現ベクター(例えばバキュロウイルス)にサブクローニングすることができる。上記は、RSVウイルスタンパク質をクローニングすることのできる方法の一例に過ぎない。当業者は、さらなる方法を利用することができ、それが可能であることを理解するであろう。
【0097】
本発明はまた、F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子を含めたRSV構造遺伝子をコードするRSVヌクレオチドを含むコンストラクト及び/又はベクターも提供する。ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターであってもよい。F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子を含めたRSV構造遺伝子を含むコンストラクト及び/又はベクターは、適切なプロモーターに作動可能に連結されなければならず、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(又は他のバキュロウイルス)、ファージλPLプロモーター、大腸菌(E. coli)lac、phoA及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、並びにレトロウイルスLTRのプロモーターなどが非限定的な例である。他の好適なプロモーターは、宿主細胞及び/又は所望の発現速度に応じて当業者に周知であろう。発現コンストラクトは、転写開始、終結のための部位、及び転写領域のなかに、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含み得る。コンストラクトによって発現する転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始端に翻訳開始コドンを、及び終端に適切に位置決めされた終止コドンを含み得る。
【0098】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。かかるマーカーには、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸還元酵素、G418又はネオマイシン耐性、並びに大腸菌(E. coli)及び他の細菌における培養のためのテトラサイクリン、カナマイシン又はアンピシリン耐性遺伝子が含まれる。ベクターのなかで好ましいのは、バキュロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鷄痘ウイルス、アライグマポックスウイルス、豚痘ウイルス等)、アデノウイルス(例えば、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルス、及びレトロウイルスなどのウイルスベクターである。本発明で使用することのできる他のベクターは、pQE70、pQE60及びpQE-9、pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5を含む、細菌において使用されるベクターを含む。好ましい真核生物ベクターのなかには、pFastBac1 pWINEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLがある。他の好適なベクターは当業者に容易に明らかであろう。一実施形態において、修飾又は変異RSV F遺伝子、及びM、G、N、SH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子の遺伝子を含めたRSV遺伝子をコードするヌクレオチドを含むベクターは、pFastBacである。
【0099】
上述の組換えコンストラクトを使用して、修飾又は変異RSV Fタンパク質及び少なくとも1つの免疫原を含めたRSVタンパク質をトランスフェクトし、感染させ、又は形質転換させて、それを発現させることが可能となり得る。一実施形態において、組換えコンストラクトは、真核細胞及び/又は原核細胞中に、修飾又は変異RSV F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意の分子を含む。このように、本発明は、修飾又は変異RSV F;及び限定はされないが、RSV G、N、及びSH、又はその一部分などの少なくとも1つの免疫原、及び/又は上記に記載される任意の分子を含めたRSV構造遺伝子をコードする核酸を含むあるベクター(又は複数のベクター)であって、VLPの形成を可能にする条件下で宿主細胞においてRSV F、G、N、M、又はSH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意の分子を含めた遺伝子の発現を可能にするベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0100】
真核宿主細胞のなかには、酵母、昆虫、鳥類、植物、C.エレガンス(C. elegans)(すなわち線虫)及び哺乳動物宿主細胞がある。昆虫細胞の非限定的な例は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf)細胞、例えばSf9、Sf21、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)細胞、例えばHigh Five細胞、及びショウジョウバエ属(Drosophila)S2細胞である。真菌(酵母を含む)宿主細胞の例は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)(K.ラクチス(K. lactis))、C.アルビカンス(C. albicans)及びC.グラブラタ(C. glabrata)を含むカンジダ属(Candida)の種、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(S.ポンベ(S. pombe))、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、及びヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)である。哺乳動物細胞の例は、COS細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウスL細胞、LNCaP細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、及びアフリカミドリザル細胞、CV1細胞、ヒーラー細胞、MDCK細胞、ベロ及びHep−2細胞である。アフリカツメガエル卵母細胞、又は両生類起源の他の細胞もまた、用いられ得る。原核宿主細胞の例としては、細菌細胞、例えば、大腸菌(E. coli)、B.スブチリス(B. subtilis)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)及びマイコバクテリアが含まれる。
【0101】
ベクター、例えば、修飾又は変異RSV Fタンパク質;及び限定はされないが、RSV G、N、又はSH又はその一部分を含めた少なくとも1つの免疫原、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子のポリヌクレオチドを含むベクターは、当該技術分野において周知の方法により宿主細胞にトランスフェクトされ得る。例えば、真核細胞への核酸の導入は、リン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、及びポリアミントランスフェクション試薬を用いるトランスフェクションによることができる。一実施形態において、ベクターは組換えバキュロウイルスである。別の実施形態において、組換えバキュロウイルスは真核細胞にトランスフェクトされる。好ましい実施形態において、細胞は昆虫細胞である。別の実施形態において、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0102】
本発明はまた、VLP産生の効率を高め得るコンストラクト及び方法も提供する。例えば、RSV F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子に対してリーダー配列を付加すると、細胞内でのタンパク質輸送の効率を向上させることができる。例えば、異種シグナル配列を、F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子と融合させることができる。一実施形態において、シグナル配列は、昆虫細胞の遺伝子から誘導し、M、F、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子と融合させることができる。別の実施形態において、シグナルペプチドはキチナーゼシグナル配列であり、これはバキュロウイルス発現系で効率的に機能する。
【0103】
VLP産生の効率を高める別の方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、N、SH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含めたRSVをコードするヌクレオチドを、特定の細胞型に対してコドン最適化することである。Sf9細胞における発現についてのコドン最適化核酸の例については、配列番号3、5、7、9、13、17、19、及び25を参照のこと。
【0104】
本発明はまた、VLPを産生する方法も提供し、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質、及び限定はされないが、RSV M、G、N、SH、又はその一部分を含めた少なくとも1つのさらなるタンパク質、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含むRSV遺伝子を、VLPの形成を可能にする条件下で発現させることを含む。選択された発現系及び宿主細胞に応じて、VLPは、組換えタンパク質が発現してVLPが形成される条件下で発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を成長させることにより産生される。一実施形態において、本発明は、VLPを産生する方法であって、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトする工程、及びVLPの形成を可能にする条件下で修飾又は変異RSV Fタンパク質を発現させる工程を含む方法を含む。別の実施形態において、真核細胞は、酵母、昆虫、両生類、鳥類又は哺乳動物細胞からなる群から選択される。適切な成長条件の選択は、当該技術分野の技術又は当該技術分野の通常の技術の当業者の範囲内である。
【0105】
本発明のVLPを産生するように操作された細胞を成長させる方法には、限定はされないが、バッチ、フェドバッチ、連続及び灌流細胞培養技法が含まれる。細胞培養とは、細胞が増殖し、且つ精製及び単離されるタンパク質(例えば組換えタンパク質)を発現するバイオリアクター(発酵チャンバ)内での細胞の成長及び増殖を意味する。典型的には、細胞培養は、バイオリアクターにおける無菌の、制御された温度及び気圧条件下で実施される。バイオリアクターは細胞を培養するために使用されるチャンバであり、温度、気圧、撹拌及び/又はpHなどの環境条件を監視することができるものである。一実施形態において、バイオリアクターはステンレス鋼チャンバである。別の実施形態において、バイオリアクターは予め滅菌されたプラスチック袋(例えばCellbag(登録商標)、Wave Biotech、Bridgewater、NJ)である。他の実施形態において、予め滅菌されたプラスチック袋は、約50L〜1000Lの袋である。
【0106】
次にVLPは、勾配遠心分離、例えば、塩化セシウム、スクロース及びイオジキサノール、並びに、例えばイオン交換及びゲルろ過クロマトグラフィーを含めた標準的な精製技法により、その完全性を保つ方法を用いて単離される。
【0107】
以下は、本発明のVLPを作製し、単離し、及び精製することができる方法の例である。通常、VLPは、細胞が細胞培養(上記を参照)で成長するとVLPを作り出すように操作された組換え細胞系から産生される。当業者は、本発明のVLPの作製及び精製に利用することのできるさらなる方法があり、従って本発明は記載される方法に限定されないことを理解するであろう。
【0108】
本発明のVLPの産生は、Sf9細胞(非感染)を振盪フラスコに播種し、細胞の成長及び増加に伴い細胞を拡大及びスケールアップする(例えば125mlフラスコから50Lのウェーブバッグ(Wave bag)に)ことから開始され得る。細胞を成長させるために使用される培地は、適切な細胞系に対して配合される(好ましくは無血清培地、例えば昆虫培地ExCe11-420、JRH)。次に、細胞を最も効率的な感染多重度(例えば、細胞当たり約1〜約3プラーク形成単位)で組換えバキュロウイルスに感染させる。感染が起こると、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子がウイルスゲノムから発現し、VLP内に自己組織化し、感染の約24〜72時間後に細胞から分泌される。通常、感染は、細胞が成長の対数期中期にあるとき最も効率的であり(4〜8×106細胞/ml)、少なくとも約90%が生存可能である。
【0109】
本発明のVLPは、感染の約48〜96時間後、細胞培養培地中のVLPのレベルがほぼ最大になったときに、しかし広範な細胞溶解の前に、回収することができる。回収時点でのSf9細胞密度及び生存率は、色素排除アッセイにより示されるとき約0.5×106細胞/ml〜約1.5×106細胞/mlで、少なくとも20%の生存率であり得る。次に、培地を取り除き、清澄化する。培地にNaClを約0.4〜約1.0M、好ましくは約0.5Mの濃度まで添加して、VLPの凝集を回避することができる。本発明のVLPを含む細胞培養培地からの細胞及び細胞デブリの除去は、使い捨ての予め滅菌された中空糸0.5又は1.00μmフィルタカートリッジ又は同様のデバイスによるタンジェンシャルフローろ過(TFF)により達成することができる。
【0110】
次に、清澄化した培養培地中のVLPを、使い捨ての予め滅菌された500,000分子量カットオフ中空糸カートリッジを使用することによる限外ろ過により濃縮することができる。濃縮したVLPは、0.5MのNaClを含有する10容量pH7.0〜8.0のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で透析ろ過し、残留培地成分を除去することができる。
【0111】
濃縮し、透析ろ過したVLPは、0.5MのNaClを含むpH7.2のPBS緩衝液中の20%〜60%不連続スクロース勾配で、約4℃〜約10℃において6,500×gで18時間遠心することによりさらに精製することができる。通常、VLPは、約30%〜約40%スクロースに、又は界面に(20%及び60%ステップ勾配において)特徴的な目に見えるバンドを形成し、これを勾配から回収して保存することができる。この生成物は、精製プロセスにおける次の工程のため、調製物中に200mMのNaClを含むまで希釈することができる。この生成物はVLPを含有するとともに、無傷のバキュロウイルス粒子を含有し得る。
【0112】
VLPのさらなる精製は、陰イオン交換クロマトグラフィー、又は44%等密度スクロースクッション遠心分離により実現することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、スクロース勾配(上記を参照)からの試料が、陰イオンを含む媒質(例えばMatrix Fractogel EMD TMAE)が入ったカラムに負荷され、VLPを他の混入物(例えばバキュロウイルス及びDNA/RNA)と分離することができる塩勾配(約0.2M〜約1.0MのNaCl)を介して溶出される。スクロースクッション方法では、VLPを含む試料が44%スクロースクッションに添加され、30,000gで約18時間遠心される。VLPは44%スクロースの最上部にバンドを形成し、一方、バキュロウイルスは底に沈殿し、及び他の夾雑タンパク質は最上部の0%スクロース層に留まる。VLPピーク又はバンドは回収される。
【0113】
必要であれば、無傷のバキュロウイルスは不活性化されてもよい。不活性化は、化学的な方法、例えばホルマリン又はβ−プロピオラクトン(BPL)により達成することができる。無傷のバキュロウイルスの除去及び/又は不活性化はまた、大部分は、上記に例示されるとおりの当該技術分野において公知の選択的沈殿及びクロマトグラフ方法を用いることにより達成することができる。不活性化の方法は、VLPを含む試料を0.2%のBPL中で3時間、約25℃〜約27℃でインキュベートすることを含む。バキュロウイルスはまた、VLPを含む試料を0.05%BPLにおいて4℃で3日間、次に37℃で1時間インキュベートすることにより不活性化することもできる。
【0114】
不活性化/除去工程後、VLPを含む生成物は別の透析ろ過工程に通して不活性化工程からの任意の試薬及び/又は任意の残留スクロースを除去し、VLPを所望の緩衝液(例えばPBS)中に入れることができる。VLPを含む溶液は当該技術分野において公知の方法により滅菌し(例えば滅菌ろ過)、冷蔵庫又は冷凍庫で保管することができる。
【0115】
上記の技法は、様々な規模にわたり実践することができる。例えば、T型フラスコ、振盪フラスコ、スピナーボトル、工業規模のバイオリアクターに至るまでである。バイオリアクターは、ステンレス鋼タンク又は予め滅菌されたプラスチック袋(例えば、Wave Biotech、Bridgewater、NJにより販売されるシステム)のいずれかを含み得る。当業者は、こうした目的に最も望ましいものが何か、分かるであろう。
【0116】
バキュロウイルス発現ベクターの展開及び産生並びに細胞の組換えバキュロウイルス感染による組換えRSV VLPの産生は、先述のとおり昆虫細胞、例えばSf9昆虫細胞で達成することができる。一実施形態において、細胞は、RSV VLPを産生するように操作された組換えバキュロウイルスに感染したSF9である。
【0117】
医薬製剤又はワクチン製剤及び投与
本明細書で有用な医薬組成物は、任意の好適な希釈剤又は賦形剤を含めた、それ自体が組成物を投与される脊椎動物に有害な免疫応答の生成を誘導することはない任意の薬学的作用物質を含み、且つ過度の毒性なしに投与され得る薬学的に許容可能な担体と、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPとを含有する。本明細書において、用語「薬学的に許容可能な」とは、連邦政府若しくは州政府の規制当局により承認されているか、又はU.S. Pharmacopia、European Pharmacopia若しくはその他の、哺乳動物、及びより詳細にはヒトにおける使用についての一般的に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。これらの組成物は、脊椎動物において防御免疫応答を誘導するためのワクチン及び/又は抗原組成物として有用であり得る。
【0118】
本発明は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質、及び限定はされないが、RSV M、G、N、SH、又はその一部分を含めた少なくとも1つのさらなるタンパク質、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含する。一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのさらなる免疫原とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのRSV Mタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのBRSV Mタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのインフルエンザM1タンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのトリインフルエンザM1タンパク質とを含むVLPを含む。
【0119】
別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Gタンパク質を含めたRSV Gタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Nタンパク質を含めたRSV Nタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV SHタンパク質を含めたRSV SHタンパク質をさらに含むVLPを含む。
【0120】
別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、修飾又は変異RSV Fタンパク質及び/又はRSV由来のG、H、又はSHタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0121】
本発明はまた、上記に記載したとおりの修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物も包含する。
【0122】
一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのさらなるタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV Gタンパク質を含めたRSV Gタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Nタンパク質を含めたRSV Nタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV SHタンパク質を含めたRSV SHタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、BRSV Mタンパク質とHRSV A群由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、BRSV Mタンパク質とHRSV B群由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでMタンパク質はインフルエンザHAタンパク質と融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、RSV由来のキメラF及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでキメラインフルエンザHAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、RSV由来のキメラF及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0123】
本発明はまた、少なくとも1つのRSVタンパク質を含むキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物も包含する。一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体又は罹患細胞由来の少なくとも1つの免疫原とを含むVLPを含む。別の実施形態において、異種感染病原体由来の免疫原はウイルスタンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のウイルスタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のウイルスタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。
【0124】
本発明はまた、ヒト対象などの脊椎動物を免疫するためのキットであって、少なくとも1つのRSVタンパク質を含むVLPを含むキットも包含する。一実施形態において、キットは、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む。一実施形態において、キットは、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、キットは、RSV Gタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでMタンパク質はBRSV Mと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、RSV F及び/又はGタンパク質と、異種感染病原体由来の免疫原とを含むVLPを含むキットを包含する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでHAタンパク質は、RSV F又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでHAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0125】
一実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、上記に記載したとおりの修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。
【0126】
本発明の免疫原性製剤は、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。薬学的に許容可能な担体には、限定はされないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液、及びそれらの組み合わせが含まれる。薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び他の賦形剤についての十分な議論は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co. N.J. 最新版)に示されている。製剤は、投与様式に適合していなければならない。好ましい実施形態において、製剤はヒトへの投与に好適であり、好ましくは無菌で、非粒子状で、及び/又は非発熱性である。
【0127】
組成物はまた、必要であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有することができる。組成物は、再構成するのに好適な凍結乾燥粉末などの固形形態、液体溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤、又は粉末であってもよい。経口製剤は、医薬品級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含むことができる。
【0128】
本発明はまた、本発明のワクチン製剤の成分の1又は複数で充填された1又は複数の容器を含む医薬パック又はキットも提供する。好ましい実施形態において、キットは2つの容器を含み、一方は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含み、他方はアジュバントを含む。かかる1つ若しくは複数の容器は、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定される形式の注意書きを伴ってもよく、この注意書きは、機関によるヒト投与に対する製造、使用又は販売の許可を反映するものである。
【0129】
本発明はまた、製剤が、組成物の分量を示すアンプル又はサシェットなどの気密密閉容器にパッケージされることも提供する。一実施形態において、組成物は液体として、別の実施形態では乾燥滅菌された凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として気密密閉容器に供給され、例えば水又は生理食塩水により、対象への投与に適切な濃度に再構成することができる。
【0130】
代替的実施形態において、組成物は、組成物の分量及び濃度を示す気密密閉容器に液体形態で供給される。好ましくは、組成物の液体形態は、気密密閉容器に少なくとも約50μg/ml、より好ましくは少なくとも約100μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも500μg/ml、又は少なくとも1μg/ml供給される。
【0131】
例として、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むキメラRSV VLPは、各々が1又は複数のRSV株に対する応答である免疫応答を刺激するのに十分な有効量又は有効分量(上記に定義されるとおり)で投与される。本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPの投与が、RSVに対する免疫を誘発する。典型的には、用量は、例えば、年齢、健康状態、体重、性別、食習慣、投与時間、及び他の臨床的要因に基づき、この範囲内で調整することができる。予防ワクチン製剤は、例えば、皮下又は筋肉内注射により針及びシリンジ、又は無針注射デバイスを使用して全身投与される。或いは、ワクチン製剤は、点鼻液、大粒子エアロゾル(約10ミクロンより大きい)、又は上気道への噴霧のいずれかにより鼻腔内投与される。上記の送達経路のいずれも免疫応答を生じさせるが、鼻腔内投与は、RSV及びインフルエンザを含めた多くのウイルスの侵入部位における粘膜免疫の誘発というさらなる利益をもたらす。
【0132】
従って、本発明はまた、哺乳動物に対して感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導するワクチン又は抗原組成物を製剤化する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの有効用量を製剤に添加する工程を含む方法も含む。一実施形態において、感染はRSV感染である。
【0133】
単回用量による免疫の刺激は可能であるが、同じ、又は異なる経路によりさらなる投薬量を投与して所望の効果を実現することができる。例えば新生児及び乳児では、十分なレベルの免疫を誘発するために複数回投与が必要となり得る。投与は、必要に応じて小児期全体を通じて間隔を置きながら継続することで、感染、例えばRSV感染に対する十分なレベルの防御を維持することができる。同様に、特に反復される又は重篤な感染に罹りやすい成人、例えば、ヘルスケア従事者、デイケア従事者、低年齢小児の家族構成員、高齢者、及び心肺機能不全を有する個人などは、防御免疫応答を確立し、及び/又は維持するために複数回の免疫を必要とし得る。誘導される免疫のレベルは、例えば分泌液中及び血清中の中和抗体量を計測することによりモニタし、及び所望の防御レベルを誘発及び維持する必要に応じて投薬量を調整し、又はワクチン接種を反復することができる。
【0134】
修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む組成物(例えばワクチン及び/又は抗原製剤)の投与方法には、限定はされないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば、鼻腔内及び経口若しくは経肺経路又は坐薬により)が含まれる。特定の実施形態において、本発明の組成物は、筋肉内に、静脈内に、皮下に、経皮的に又は皮内に投与される。組成物は、任意の従来の経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、結腸、結膜、鼻咽腔、中咽頭、腟、尿道、膀胱及び腸粘膜等)を通じた吸収により投与されてもよく、及び他の生物学的に活性な薬剤と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の鼻腔内又は他の粘膜投与経路は、他の投与経路より実質的に高い抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。別の実施形態において、本発明の組成物の鼻腔内又は他の粘膜投与経路は、他のRSV株に対する交差防御を誘導し得る抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。投与は全身的であっても、又は局所的であってもよい。
【0135】
さらに別の実施形態において、ワクチン及び/又は免疫原性製剤は、免疫部位に免疫応答を誘発するため、粘膜組織を標的とするような方法で投与される。例えば、特定の粘膜を標的化する特性を有するアジュバントを含有する組成物の経口投与を用いることにより、消化管関連リンパ組織(GALT)などの粘膜組織を免疫化の標的とすることができる。鼻咽頭リンパ組織(NALT)及び気管支関連リンパ組織(BALT)などのさらなる粘膜組織もまた、標的化することができる。
【0136】
本発明のワクチン及び/又は免疫原性製剤はまた、ある投薬スケジュールで、例えば、ワクチン組成物の初回投与と、それに続く追加免疫投与で投与されてもよい。詳細な実施形態において、組成物の第2の用量は、初回投与後2週間から1年間まで、好ましくは約1、約2、約3、約4、約5ヶ月から約6ヶ月までのどこかで投与される。加えて、第3の用量が、第2の用量後に、且つ初回投与後約3ヶ月から約2年間、又はさらにより長く、好ましくは約4、約5、又は約6ヶ月、又は約7ヶ月から約1年間で投与されてもよい。第3の用量は、場合により、第2の用量後に対象の血清及び/又は尿中の、又は粘膜分泌物中の特定の免疫グロブリンが検出されない、又は低い検出レベルであるときに投与されてもよい。好ましい実施形態において、第2の用量は第1の投与の約1ヶ月後に投与され、第3の用量は第1の投与の約6ヶ月後に投与される。別の実施形態において、第2の用量は第1の投与の約6ヶ月後に投与される。別の実施形態において、本発明の組成物は、併用療法の一部として投与することができる。例えば、本発明の組成物は、他の免疫原性組成物、抗ウイルス薬及び/又は抗生物質と共に製剤化することができる。
【0137】
医薬組成物の投薬量は、例えば、初めに予防的又は治療的免疫応答を誘発するのに有効な用量を、例えば、ウイルス特異的免疫グロブリンの血清力価を計測することによるか、又は血清試料、若しくは尿試料中、又は粘膜分泌物中の抗体の阻害率を計測することによって特定することにより、当業者が容易に決定することができる。投薬量は動物試験から決定することができる。ワクチンの効力を調べるために使用される動物の非限定的なリストには、モルモット、ハムスター、フェレット、チンチラ、マウス及びコットンラットが含まれる。ほとんどの動物は感染病原体にとって天然宿主ではないが、しかし疾患の様々な面の研究においてなお機能することができる。例えば、上記の動物のいずれも、ワクチン候補、例えば、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPを投与することにより、誘導された免疫応答を部分的に特徴付け、及び/又は任意の中和抗体が産生されたかどうかを決定することができる。例えば、マウスはサイズが小さいため多くの研究はマウスモデルで行われており、その費用の低さから、研究者は研究を大規模で行うことが可能である。
【0138】
加えて、当業者がヒト臨床試験を実施してヒトに好ましい有効用量を決定することができる。かかる臨床試験はルーチンであり、当該技術分野において周知である。用いられる正確な用量はまた、投与経路に依存し得る。有効用量は、インビトロ又は動物試験系から得られた用量反応曲線から推定してもよい。
【0139】
同様に当該技術分野において周知のとおり、特定の組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる非特異的な免疫応答刺激剤を使用することにより亢進させることができる。アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の全般的な増加を促進するために実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。長年、免疫プロトコルでは応答を刺激するためアジュバントが使用されており、そのため、アジュバントは当業者に周知である。いくつかのアジュバントは、抗原の提示のされ方に影響を与える。例えば、ミョウバンによりタンパク質抗原を沈殿させると、免疫応答は増加する。抗原の乳化もまた、抗原提示の持続期間を延ばす。全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用されるVogel et al., 「A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients (2nd Edition)」に記載される任意のアジュバントを含むことが、本発明の範囲内に想定される。
【0140】
例示的に、アジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死滅させた結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する非特異的な免疫応答刺激剤)、不完全フロイントアジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。他のアジュバントには、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、MDP化合物、例えば、thur−MDP及びnor−MDP、CGP(MTP−PE)、リピドA、及びモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。細菌から抽出された3つの成分であるMPLと、トレハロースジミコレート(TDM)と、細胞壁骨格(CWS)とを2%スクアレン/Tween 80乳剤中に含有するRIBIもまた企図される。MF-59、Novasomes(登録商標)、MHC抗原もまた使用され得る。
【0141】
本発明の一実施形態において、アジュバントは、水層により分離された、実質的に球状のシェルの形態で配置された約2〜10の二重層が、脂質二重層がない大きい無定形の中心腔を取り囲む、少重膜(paucilamellar)脂質小胞である。少重膜脂質小胞は、非特異的刺激剤として、抗原用の担体として、さらなるアジュバントの担体として、及びそれらの組み合わせとして、いくつかの様式で免疫応答を刺激するよう働き得る。例えば、抗原が小胞に対して細胞外に留まるように抗原を予め形成された小胞と混ぜ合わせることによってワクチンが調製されるとき、少重膜脂質小胞は非特異的免疫刺激剤として働く。抗原を小胞の中心腔内に封入することにより、小胞は免疫刺激剤及び抗原用担体の双方として働く。別の実施形態において、小胞は主に非リン脂質小胞から構成される。他の実施形態において、小胞はNovasomes(登録商標)である。Novasomes(登録商標)は、約100nm〜約500nmの範囲の少重膜非リン脂質小胞である。これは、Brij 72、コレステロール、オレイン酸及びスクアレンを含む。Novasomesは、インフルエンザ抗原に有効なアジュバントであることが示されている(全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される米国特許第5,629,021号、同第6,387,373号、及び同第4,911,928号を参照のこと)。
【0142】
本発明の組成物はまた、「免疫刺激剤」と共に製剤化することもできる。これらは、免疫系の応答を増加させる生体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)である。免疫刺激剤には、限定はされないが、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等の、免疫刺激、免疫強化、及び炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカインが含まれる。免疫刺激分子は、本発明の組成物と同じ製剤で投与することができ、又は別個に投与することもできる。タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを投与して、免疫刺激効果をもたらすことができる。従って一実施形態において、本発明は、アジュバント及び/又は免疫刺激剤を含む抗原製剤及びワクチン製剤を含む。
【0143】
免疫応答の刺激方法
本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPは、感染病原体に対する免疫又は実質的な免疫を付与する免疫応答を刺激する組成物の調製に有用である。粘膜免疫及び細胞性免疫の双方が、感染病原体及び疾患に対する免疫に寄与し得る。上気道において局所的に分泌される抗体は、自然感染に対する抵抗性の主因子である。分泌性免疫グロブリンA(sIgA)が上気道の防御に関わり、及び血清IgGが下気道の防御に関わる。感染によって誘導された免疫応答は、同じウイルス又は抗原的に類似したウイルス株による再感染を防御する。例えば、RSVは頻繁な予測不可能な変化を受ける;従って、自然感染後、宿主の免疫により提供される防御の有効期間は、コミュニティに循環するウイルスの新株に対しては数年間のみ有効であり得る。
【0144】
従って、本発明は、対象における感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を包含する。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と少なくとも1つのさらなるタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Mタンパク質、例えばBRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Nタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Gタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV SHタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV A群及び/又はB群由来のF及び/又はGタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質又はMMTVエンベロープタンパク質、例えばインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA及び/又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質又はMMTVエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、対象は哺乳動物である。別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。別の実施形態において、RSV VLPは、アジュバント又は免疫刺激剤と共に製剤化される。
【0145】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、SH、及び/又はNタンパク質を含む。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導する方法は、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでVLPは、BRSV M(キメラMを含む)と、RSV F、G、及び/又はNタンパク質とから本質的になる。VLPは、さらなるRSVタンパク質及び/又はタンパク質夾雑物を無視できる濃度で含み得る。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導する方法は、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでVLPは、BRSV M(キメラMを含む)、RSV G及び/又はFからなる。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法は、RSVタンパク質を含むRSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでRSVタンパク質は、BRSV M(キメラMを含む)、キメラF、G、及び/又はNタンパク質を含めたF、G、及び/又はNタンパク質からなる。これらのVLPは、BRSV M(キメラMを含む)、RSV F、G、及び/又はNタンパク質を含有し、細胞タンパク質、バキュロウイルスタンパク質、脂質、炭水化物等のさらなる細胞構成要素を含有し得るが、さらなるRSVタンパク質(BRSV M(キメラMを含む)、BRSV/RSV F、G、及び/又はNタンパク質の断片以外のもの)は含有しない。別の実施形態において、対象は脊椎動物である。一実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。別の実施形態において、前記方法は、製剤を1回用量で投与することによりRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、製剤を複数回用量で投与することによりRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する工程を含む。
【0146】
本発明はまた、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む、感染病原体によって引き起こされた対象における感染又はその症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導することを含む。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、同じ又は異種の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、異種感染病原体由来のタンパク質は、ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、RSVタンパク質と融合する感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、RSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、RSVタンパク質、又はその一部分は、RSV F、G、N及び/又はPに由来する。別の実施形態において、キメラVLPは、RSV由来のN及び/又はPタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、キメラVLPは、同じ及び/又は異種の感染病原体由来の2つ以上のタンパク質を含む。別の実施形態において、キメラVLPは2つ以上の感染病原体タンパク質を含み、それにより多価VLPを作り出す。
【0147】
本発明の組成物は、脊椎動物(例えばヒト)において、脊椎動物に投与されると実質的な免疫を誘導することができる。実質的な免疫は、脊椎動物における感染を防御若しくは改善し、又は感染の症状を少なくとも軽減する本発明の組成物に対する免疫応答によってもたらされる。あるケースでは、脊椎動物を感染させる場合、感染は無症状であり得る。応答は完全防御応答ではないこともあり得る。その場合、脊椎動物を感染病原体に感染させる場合、脊椎動物は、非免疫脊椎動物と比較して症状の軽減又は症状の持続時間の短縮を経験し得る。
【0148】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に、RSVに対するワクチン接種をする方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの防御誘導量を哺乳動物に投与する工程を含む方法を含む。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Gタンパク質、例えばHRSV Gタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV A群由来のNタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV B群由来のNタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、RSV由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、Mタンパク質の膜貫通及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、インフルエンザHA及び/又はNAタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、HAタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA及び/又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0149】
本発明はまた、感染病原体によって引き起こされた対象における感染、又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法も包含する。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質と、別の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とをさらに含むVLPを投与する工程を含む。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質と、同じ又は異種の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とをさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、RSV Mタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、RSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、RSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、RSVタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、RSVタンパク質と融合する感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、RSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、BRSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、RSVタンパク質、又はその一部分は、RSV F、G、N及び/又はPに由来する。別の実施形態において、VLPは、RSV由来のN及び/又はPタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、VLPは、感染病原体由来の2つ以上のタンパク質を含む。別の実施形態において、VLPは2つ以上の感染病原体タンパク質を含み、それにより多価VLPを作り出す。
【0150】
別の実施形態において、本発明は、対象における感染又はその少なくとも1つの症状に対する防御抗体応答を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は上記に記載したとおりの修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。
【0151】
本明細書において、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的に又は部分的にコードされる1又は複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、それが次に、それぞれ、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対が1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)とを有する。各鎖のN末端が、主に抗原認識に関与する約100〜110個又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化によって産生される多数の十分に特徴付けられた断片として、存在する。
【0152】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む少なくとも1つの有効用量RSV Fミセルを投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、少なくとも1つの有効用量VLPを投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは、上記に記載したとおりの修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む。細胞媒介免疫はまた、RSV感染からの回復において役割を果たし、RSV関連合併症を予防し得る。RSV特異的細胞リンパ球が、感染した対象の血液及び下気道分泌物中に検出されている。RSV感染細胞の細胞溶解は、RSV特異的抗体及び相補体と協働してCTLにより媒介される。一次的な細胞傷害性応答は、感染した又はワクチン接種された個人において6〜14日後の血液中に検出可能であり、21日目までに消失する(Ennis et al., 1981)。細胞媒介免疫はまた、RSV感染からの回復において役割を果たすことができ、RSV関連合併症を予防し得る。RSV特異的細胞リンパ球が、感染した対象の血液及び下気道分泌物中で検出されている。
【0153】
上述されるとおり、本発明の免疫原性組成物は、対象におけるRSV感染の少なくとも1つの症状を予防又は軽減する。RSVの症状は当該技術分野において周知である。それらには、鼻漏、咽頭痛、頭痛、嗄声、咳、喀痰、発熱、ラ音、喘鳴音、及び呼吸困難が含まれる。従って、本発明の方法は、RSV感染に関連する少なくとも1つの症状の予防又は軽減を含む。症状の軽減は、主観的又は客観的に、例えば、対象による自己評価、臨床医の評価によるか、又は、例えば、クオリティ・オブ・ライフ評価、RSV感染若しくはさらなる症状の進行遅延、RSV症状の重症度の軽減又は好適なアッセイ(例えば抗体価及び/又はT細胞活性化アッセイ)を含めた適切なアッセイ又は計測(例えば体温)を行うことにより判断されてもよい。客観的な評価は、動物評価及びヒト評価の双方を含む。
【0154】
限定として解釈されてはならない以下の例により、本発明をさらに説明する。本願全体を通じて引用される全ての参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容、並びに図及び配列表は、全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0155】
実施例1
組換えバクミドの生成、昆虫細胞のトランスフェクションによる組換えウイルスストックの作製、プラーク精製、及び一次ウイルスストックによる昆虫細胞の感染。
組換えウイルスを構築するため、目的のウイルス遺伝子をSf9昆虫細胞発現に対してコドン最適化し、pFastBac(商標)ベクターにクローニングした。
【0156】
所望のコンストラクトを確認して精製した後、各コンストラクトにつきMAX Efficiency(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞の1本のバイアルを氷上で解凍した。約1ng(5μl)の所望のpFastBac(商標)コンストラクトプラスミドDNAを細胞に添加し、軽く混合した。細胞を氷上で30分間インキュベートした。それに続き、細胞を42℃で45秒間、振盪なしに熱ショック処理した。次に、試験管を氷に移して2分間冷却した。続いて900μlの室温S.O.C.培地を各試験管に添加した。試験管を37℃、225rpmで4時間振盪機にかけた。各pFastBac(商標)の形質転換について、S.O.C.培地を使用して細胞の10倍段階希釈(10−1、10−2及び10−3)を調製した。次に、100μlの各希釈を、50μg/mlのカナマイシン、7μg/mlのゲンタマイシン、10μg/mlのテトラサイクリン、100μg/mlのブルオ−ガル、及び40μg/mlのIPTGを含有するLB寒天プレートに植菌した。プレートを37℃で48時間インキュベートした。白色コロニーを分析用に選んだ。
【0157】
上記から種々のバクミドDNAを各コンストラクトについて作製し、単離した。それらのDNAを沈殿させてSf9細胞に5時間添加した。
【0158】
次に、30mlのSf9昆虫細胞(2×106細胞/ml)を、0.3mlのプラーク溶出液により目的のウイルスタンパク質を発現するバキュロウイルスに感染させ、48〜72時間インキュベートした。約1mlの粗培養物(細胞+培地)及び清澄化した培養回収物を発現解析のために保存し、残りは精製目的のために保存した。
【0159】
実施例2
修飾HRSV Fタンパク質の発現、精製、及び分析
目的の修飾HRSV Fタンパク質をコードする遺伝子を重複オリゴヌクレオチドとしてインビトロで合成し、宿主細胞にクローニングして発現させた。修飾RSV F遺伝子のクローニング及び発現は、当該技術分野において公知の方法に従い実現した。
【0160】
目的のウイルスタンパク質を含有する組換えプラークを選び、確認した。次にSf9昆虫細胞を感染させることにより組換えウイルスを増幅した。あるケースでは、Sf9昆虫細胞は、修飾Fタンパク質を発現する組換えウイルスと、他のウイルスタンパク質(例えば、BRSV Mタンパク質及び/又はHRSV Nタンパク質)を発現する別の組換えウイルスとによって重感染させた。昆虫細胞の培養物を、様々なコンストラクトを有するバキュロウイルスに約3MOI(感染多重度=ウイルスffu又はpfu/細胞)で感染させた。感染後48〜72で培養物及び上清を回収した。粗回収物の約30mLを、約800×gで15分間の遠心により清澄化した。修飾HRSV Fタンパク質を含有する得られた粗細胞回収物を、以下に記載するとおり精製した。
【0161】
感染Sf9昆虫細胞培養回収物から目的の修飾HRSV Fタンパク質を精製した。膜タンパク質抽出プロトコルにおいて非イオン性界面活性剤テルギトール(Tergitol)(登録商標)NP-9(ノニルフェノールエトキシレート)を使用した。粗抽出物を、陰イオン交換クロマトグラフィー、レンチルレクチン親和性/HIC、及び陽イオン交換クロマトグラフィーに通すことによってさらに精製した。
【0162】
タンパク質発現をSDS−PAGEにより分析し、クーマシー染色によって全タンパク質を染色した。粗回収物からの等量の細胞試料及びβME(β−メルカプトエタノール)を含有する2×試料緩衝液を、約15〜20μl(約7.5〜10μlの培養物)/レーンでSDSレムリゲルに負荷した。
【0163】
あるケースでは、クロマトグラフィーの代わりに、粗細胞回収物中の修飾HRSV Fタンパク質を30%スクロース勾配分離方法により濃縮し、次に、クーマシーで染色したSDS−PAGE、又は抗RSV Fモノクローナル抗体を使用したウエスタンブロットにより分析した。
【0164】
修飾組換えFタンパク質、精製組換えFタンパク質、又はスクロース勾配により濃縮された組換えFタンパク質を含有する粗細胞回収物は、抗RSV Fモノクローナル抗体及び/又は抗RSV Fポリクローナル抗体を使用するウエスタンブロットによりさらに分析することができる。
【0165】
実施例3
Fタンパク質BV #541をコードする修飾HRSV F遺伝子
完全長HRSV Fタンパク質を発現させる最初の試みでは、高レベルの実現は不成功であることが判明した。発現に使用したF遺伝子配列は、配列番号1(野生型HRSV F遺伝子、GenBank受託番号M11486)であった。これは、574アミノ酸の不活性前駆体(F0)をコードする。この前駆体は、成熟する間にフューリン様プロテアーゼにより2回切断され、N末端からのサブユニットF2とC末端からのF1との2つのジスルフィド結合したポリペプチドをもたらす(図1)。2つの切断部位は残基109位及び136位であり、これらにフューリン認識モチーフが先行する(RARR、aa 106〜109(配列番号23)及びKKRKRR、aa 131〜136(配列番号24))。配列番号1のF遺伝子配列は、Sf9昆虫細胞における発現について準最適コドン使用頻度を含み、3個のエラーを内包して、最適以下の折り畳みを呈し得るタンパク質(配列番号2、GenBank受託番号AAB59858)を産生する。加えて、F2サブユニットをコードする領域に可能性のあるポリ(A)アデニリル化部位(ATAAAA)が同定された。さらに、野生型F遺伝子配列は約65%のATリッチであり、一方、Sf9昆虫細胞発現系における遺伝子配列の所望のGC−AT比は約1:1である。
【0166】
HRSV Fタンパク質の不十分な発現レベルを解消しようとする試みとして、新しいF遺伝子配列を以下のように設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;及び
(d)F遺伝子が、不活性化された一次切断部位を有する修飾Fタンパク質をコードする。
【0167】
3つの修正したアミノ酸エラーはP102A、I379V、及びM447Vであった。アミノ酸配列を変化させることなしにHRSV F遺伝子におけるクリプティックポリ(A)部位を修正した。
【0168】
コドン最適化スキームは、以下の基準に基づいた:(1)Levin, D.B. et al.(Journal of General Virology, 2000, vol. 81, pp. 2313-2325)に記載の、所与のアミノ酸に対する昆虫細胞の鱗翅目(Lepidopteran)種における特定のコドンについてのアミノアシル−tRNAの存在量、(2)遺伝子配列における約1:1のGC−AT比の維持、(3)パリンドローム又はステムループDNA構造の最小限の導入、及び(4)転写及び転写後抑制エレメント配列の最小限の導入。最適化されたF遺伝子配列の例を配列番号19(RSV−F BV #368)として示した。
【0169】
HRSV Fタンパク質の一次切断部位(1°CS、KKRKRR、aa 131〜136)を不活性化するため、フューリン認識部位をKKQKQQ(配列番号28)又はGRRQQR(配列番号29)のいずれかに変異させた。かかる切断部位変異を有するいくつかの修飾Fタンパク質を評価して切断防止効率を判断した。図2は、評価した修飾Fタンパク質のいくつかを示す。結果は、3つの保存的アミノ酸変化R133Q、R135Q、及びR136QによりHRSV Fタンパク質の一次切断部位が不活性化され得ることを示している。これらの、極性的に帯電した分子であるアルギニン(R)から、極性的に中性の分子であるグルタミン(Q)への保存的アミノ酸変化により、これらの部位で荷電状態が変わり、Fタンパク質3D構造はなお維持されながら、フューリン様プロテアーゼによる切断が防止された(図3を参照)。1°CSでの切断の防止により、Fタンパク質の膜融合活性の低減が生じた。
【0170】
上述した全ての修飾を有するように設計した非限定的な例示的修飾HRSV F遺伝子配列を図4に示す。この修飾F遺伝子(配列番号5、RSV−F BV #541)は、配列番号6の修飾Fタンパク質をコードする。遺伝子配列は、重複オリゴヌクレオチドとしてインビトロで合成し、宿主細胞にクローニングして発現させた。修飾HRSV Fタンパク質BV #541を感染Sf9昆虫細胞培養回収物から精製し、クーマシーにより染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。Fタンパク質RSV−F BV #541(例えばFタンパク質541)の発現レベルは、Sf9昆虫細胞における野生型F0タンパク質と比較して向上した。
【0171】
実施例4
F1サブユニット融合ドメイン部分欠失を有する修飾HRSV Fタンパク質
RSV Fタンパク質の発現をさらに向上させるため、以下の修飾を含む、さらに修飾したHRSV F遺伝子を設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;及び
(d)F1サブユニット融合ドメインをコードするヌクレオチド配列を部分的に欠失させた。一実験では、F1サブユニット融合ドメインの最初の10アミノ酸(配列番号2のアミノ酸137〜146位に対応する)をコードするヌクレオチド配列を欠失させた。
【0172】
配列番号9(RSV−F BV #622、例えばFタンパク質622)として指定された、配列番号10の修飾Fタンパク質をコードする、前記修飾を含む非限定的な例示的修飾RSV F遺伝子を図5に示す。感染Sf9昆虫細胞培養回収物から修飾HRSV Fタンパク質BV #622を精製し、クーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。図6のSDS−PAGEに示されるとおり、HRSV Fタンパク質BV #622の高発現レベルが観察された。
【0173】
実施例5
不活性化した一次切断部位とF1融合ドメイン部分欠失との双方を有する修飾HRSV Fタンパク質
不活性化した一次切断部位とF1融合ドメイン部分欠失との組み合わせが、特にSf9昆虫細胞におけるRSV Fタンパク質の発現をさらに促進し得るかどうかを判断するため、以下の修飾を含む別の修飾RSV F遺伝子を設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;
(d)一次切断部位を不活性化した;及び
(e)F1サブユニット融合ドメインをコードするヌクレオチド配列を部分的に欠失させた。一実験において、F1サブユニット融合ドメインの最初の10アミノ酸(配列番号2のアミノ酸137〜146位に対応する)をコードするヌクレオチド配列を欠失させた。
【0174】
配列番号7(RSV−F BV #683、例えばFタンパク質683)として指定された、配列番号8の修飾Fタンパク質をコードする、前記修飾を含む非限定的な例示的修飾RSV F遺伝子を図7に示す。感染Sf9昆虫細胞培養回収物から修飾RSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683)を精製し、クーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。図8のSDS−PAGEに示されるとおり、発現レベルのさらなる亢進が実現された。
【0175】
実施例6
修飾HRSV Fタンパク質BV #683の発現及び精製
修飾HRSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683、配列番号8)を、実施例1に記載されるとおりバキュロウイルス発現系で発現させて、HRSV Fタンパク質BV #683を発現する組換えプラークを選んで確認した。次にSf9昆虫細胞を感染させることにより組換えウイルスを増幅した。昆虫細胞の培養物をバキュロウイルスに3MOI(感染多重度=ウイルスffu又はpfu/細胞)で感染させた。感染の48〜72時間後に培養物及び上清を回収した。粗回収物の約30mLを、約800×gで15分間遠心することにより清澄化した。HRSV Fタンパク質BV #683を含む得られた粗細胞回収物を以下に記載されるとおり精製した。
【0176】
感染Sf9昆虫細胞培養回収物からHRSV Fタンパク質BV #683を精製した。膜タンパク質抽出プロトコルでは非イオン性界面活性剤テルギトール(Tergitol)(登録商標)NP-9(ノニルフェノールエトキシレート)を使用した。陰イオン交換クロマトグラフィー、レンチルレクチン親和性/HIC及び陽イオン交換クロマトグラフィーを通過させることにより、粗抽出物をさらに精製した。
【0177】
精製したHRSV Fタンパク質BV #683を、実施例2に記載されるとおり、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットにより分析した。結果を図9に示した。HRSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683、配列番号8)の優れた発現レベルが実現された。粗細胞培養物で発現レベルは10mg/Lを上回り、回収されたFタンパク質BV #683は約3.5mg/L細胞培養物であると推定された。あるケースでは、20mg/Lを上回る発現レベルが実現され、約5mg/Lの修飾Fタンパク質BV #683が回収された(図10を参照)。回収されたFタンパク質BV #683の純度は、走査デンシトメトリーにより測定するとき、約98%に達した(図10を参照)。
【0178】
実施例7
精製HRSV Fタンパク質BV #683ミセル(ロゼット)
精製HRSV Fタンパク質BV #683を、ネガティブ染色電子顕微鏡法により分析した(図11を参照)。Fタンパク質は、野生型HRSV Fタンパク質(Calder et al., 2000, Virology 271, pp. 122-131)、及び他の完全長ウイルス膜糖タンパク質(Wrigley et al., Academic Press, London, 1986, vol. 5, pp. 103-163)について観察されるものと同様に、ミセル(ロゼット)の形態に凝集した。電子顕微鏡下では、Fスパイクは、幅広のほうの端部がロゼットの中心から離れる方に突出しているロリポップ形状のロッド形態を呈する。単一の三量体の長さは約20nmであり、ミセル粒径は約40nmであった(図12を参照)。これらの結果は、HRSV Fタンパク質BV #683が、天然の活性タンパク質についての3D構造を修正したことを示している。
【0179】
要約すれば、修飾組換えHRSV Fタンパク質(例えば、BV #683)を設計し、発現させて精製した。この修飾完全長Fはグリコシル化されている。一次切断部位及び融合ドメインの修飾が共になってFタンパク質の発現レベルを大幅に亢進する。加えて、この修飾Fタンパク質は、ジスルフィド結合したF1サブユニットとF2サブユニットとに切断され得る。F1及びF2サブユニットの三量体はロリポップ形状の19.6nmのスパイク及び40.2nmの粒子を形成する。さらに、この修飾Fタンパク質は、Sf9昆虫細胞において高度に発現する。精製後には98%超のミセルの純度が実現される。この修飾タンパク質のスパイクがロリポップ形態を有し、さらに40nmのミセル粒子を形成することができるという事実は、修飾Fタンパク質BV #683が天然タンパク質の3D構造を修正したことを示している。
【0180】
実施例8
VLP産生における修飾HRSV Fタンパク質のBRSV M及び/又はHRSV Nとの共発現
本発明はまた、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPも提供する。かかるVLPは、ウイルスタンパク質抗原に対する中和抗体を誘導するのに有用であり、従ってRSVに対する免疫を確立するために投与することができる。例えば、かかるVLPは、修飾RSV Fタンパク質とBRSV M及び/又はHRSV Nタンパク質とを含み得る。BRSV M(配列番号14)又はHRSV N(配列番号18)タンパク質をコードする遺伝子のコドンは、昆虫細胞における発現に対して最適化され得る。例えば、最適化されたBRSV M遺伝子配列が配列番号13に示され、最適化されたRSV N遺伝子配列が配列番号17に示される。
【0181】
一実験では、修飾Fタンパク質BV #622及び別の修飾Fタンパク質BV #623(配列番号21、双方の切断部位が不活性化されるように修飾されている)を、単独で発現させるか、或いはHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現させた。VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)及び30%スクロース勾配分離から回収したVLPペレットの双方を、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を用いるウエスタンブロットにより分析した。図13は、修飾Fタンパク質BV #622及びBV #623の構造、並びにSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示す。BV #622は高度にそれ自体で発現し、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現したが、一方、BV #623は極めて不十分な発現であり、双方の切断部位の不活性化がFタンパク質発現を阻害することを示している。
【0182】
別の実験では、修飾Fタンパク質BV #622、ダブルタンデム遺伝子BV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683、BV #684(BV #541、YIAL L−ドメインがC末端に導入されている)、及びBV #685(BV #541、YKKL L−ドメインがC末端に導入されている)を、単独で発現させるか、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現させた。L−ドメイン(後期ドメイン)はレトロウイルスの保存配列であり、細胞タンパク質と共に作用して細胞の表面からビリオンを効率的に放出させるGag内に存在する(Ott et al., 2005, Journal of Virology 79: 9038-9045)。各修飾Fタンパク質の構造を図14に示す。VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)及び30%スクロース勾配分離から回収されたVLPペレットの双方を、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットにより分析した。図14は、VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)のSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示し、図15は、30%スクロース勾配分離から回収されたVLPペレットのSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示す。BV #622及びBV #683は高度にそれ自体で発現し、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現したが、一方、BV #636、BV #684、及びBV #685は不十分な発現であった。
【0183】
実施例9
高発現を伴うキメラHRSV Fタンパク質のスクリーニング
昆虫細胞において可溶形態で高度に発現することができ、より良好な収率でVLPを形成することができるさらなるRSV Fタンパク質をスクリーニングするための試行がなされた。様々なF遺伝子を設計し、発現させて分析した。ウエスタンブロット及びSDS−PAGEの双方を使用して発現を評価した。
【0184】
図16a〜図16dは、各キメラHRSV Fクローンについての構造、クローン名、説明、ウエスタンブロット/クーマシー分析の結果、及び結論を要約する。
【0185】
結果が示すとおり、野生型完全長Fタンパク質は発現が不良であった;F1サブユニットを含有するが、しかしF2サブユニットを含有しないキメラHRSV Fタンパク質は良好に発現することができたが、産物は不溶性であるか(これはミスフォールディングに起因した可能性がある)、又は重感染後、他のウイルスタンパク質と集合してVLPを良好な収量で形成することができないかのいずれかであった。一次切断部位の不活性化だけでは、発現の実質的な増加は生じなかったが、一次切断部位の不活性化を、クリプティックポリ(A)部位の欠失及びGenBankアミノ酸エラーの修正などの他の修飾と組み合わせると(例えば、BV #541)、より良好な発現が実現された。BV #541のC末端にYKKL L−ドメインを導入すると、BRSV M及びHRSV Nタンパク質との共発現において修飾Fタンパク質を含有するVLPの分泌が約2〜3倍に亢進された。結果から、BV #541遺伝子とBRSV M遺伝子とからなるダブルタンデムキメラ遺伝子が、BV #541とBRSV Mタンパク質の重感染と比較して細胞内及びVLP収量の双方の向上を示したことがさらに分かり、BRSV Mタンパク質がタンデム発現時に昆虫細胞における修飾HRSV Fタンパク質を含有するVLPの産生を促進し得ることを示している。BV #541と、BRSV Mと、HRSV Nとからなるトリプルタンデムキメラ遺伝子は、上述のダブルタンデムキメラ遺伝子又はBV #541と、BRSV Mと、HRSV Nタンパク質の重感染と比較してさらにより高い細胞内及びはるかに良好なVLP収量を有した。さらに、結果から、キメラHRSV Fタンパク質BV#683(例えばFタンパク質683、配列番号8)が最良の細胞内発現を有することが示唆された。BV#683とBRSV M遺伝子とからなるダブルタンデムキメラ遺伝子の発現、又はBV#683と、BRSV Mと、HRSV N遺伝子とからなるトリプルタンデムキメラ遺伝子もまた、本明細書で具体化される。これらのダブル及びトリプルタンデムキメラ遺伝子は、重感染と比較してVLP産生をさらに向上させるはずである。
【0186】
実施例10
マウスにおけるRSV中和アッセイ及びRSVチャレンジ試験
RSV感染の予防における修飾HRSV Fタンパク質BV #683を含むワクチンの効率を試験するため、マウスにおいて中和アッセイ及びRSVチャレンジ試験を行った。実験手順を図17に示す。
【0187】
マウス群(n=10)に、プラセボ(PBS溶液)、生RSV(鼻腔内投与)、ホルマリン不活性化RSVワクチン(FI−RSV)、1ugの精製F粒子(PFP、修飾Fタンパク質BV #683)、ミョウバンを伴う1ugの精製F粒子(PFP+ミョウバン)、10ugの精製F粒子、ミョウバンを伴う10ugの精製F粒子(PFP+ミョウバン)、又は30ugの精製F粒子を、0日目及び21日目に筋肉内注射(生RSVを除く)した。免疫した各群を42日目(2回目の免疫後21日目)に生RSVによりチャレンジした。0日目、31日目(2回目の免疫後10日目)、及び46日目(生RSVによるチャレンジ後4日目)に、各群からマウス血清を回収した。
【0188】
各治療群からのマウス血清を、抗RSV中和抗体の存在についてアッセイした。免疫したマウスからの血清の希釈液を感染性RSVと共に96ウェルマイクロタイタープレートにおいてインキュベートした。血清は1:20〜1:2560に希釈した。各ウェルにおいて50ulの希釈血清を50ulの生RSVウイルス(400pfu)と混合した。ウイルス/血清混合液を最初に室温で60分間インキュベートし、次に100ulのHEp−2細胞と混合して4日間インキュベートした。次に感染性ウイルスプラークの数を、クリスタルバイオレットで染色した後に計数した。各血清試料についての中和価は、100%のRSV中和(例えば、プラークなし)をもたらした血清の最高希釈度の逆数として定義し、各動物について決定した。31日目(追加免疫後10日目)及び46日目(生RSVによるチャレンジ後4日目)の幾何平均血清中和抗体価をワクチン群ごとにグラフ化した。図18は、中和アッセイの結果を示す。結果から、10ug又は30ugの精製Fタンパク質が、生RSVと比較してはるかに高い中和価をもたらすことが示される。加えて、ミョウバンアジュバントの共投与に伴いPFPの中和価は亢進される。
【0189】
免疫化が、免疫した動物の肺におけるRSV複製を予防及び/又は阻害することができるかどうかを決定するためRSVチャレンジ試験を行った。HEp−2細胞を用いるプラークアッセイにより、免疫したマウスの肺におけるRSVの量を測定した。42日目(2回目の免疫後11日目)に上述したマウスの免疫群を1×106pfuの感染性RSVロング株に鼻腔内感染させた。46日目(RSV感染後4日目)、マウスの肺を摘出し、計量し、及びホモジナイズした。ホモジナイズした肺組織を清澄化した。清澄化溶液の上清を希釈し、HEp−2細胞を使用するプラークアッセイに供して肺組織におけるRSV力価を測定した(pfu/g肺組織として計算した)。結果を図19に示し、組換えRSV Fタンパク質BV #683で免疫したマウスの全てが肺においてRSVを検出不可能であったとともに、アジュバントを伴わない1ugの精製組換えRSV Fタンパク質BV #683であってもRSV複製の阻害に優れた効率を示した(プラセボと比較して1000倍超低減した)ことを示している。
【0190】
上記で使用したRSV PFPワクチンの安定性を決定するため、ワクチンを2〜8℃で0、1、2、4、及び5週間保存し、次にクーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した(図20)。結果は、このRSV PFPワクチンが2〜8℃で極めて安定しており、検出可能な分解はないことを示している。
【0191】
実施例11
コットンラットにおける組換えRSV Fミセル活性
この例では、動物群は、生RSV(RSV)、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴う及び伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(PFP及びPFP+アルミニウムアジュバント)、並びにPBS対照による0日目及び21日目の免疫化を含んだ。
【0192】
図21に示されるとおり、アルミニウムを伴う及び伴わない30ugのF−ミセルワクチン(RSV−Fタンパク質BV #683、すなわちFタンパク質683、配列番号8)による免疫化は、RSV A及びRSV Bのいずれに対する曝露後も、ロバストな中和抗体応答をもたらした。加えて、アルミニウムが抗体応答を有意に亢進することが観察された。さらに、RSV A及びRSV Bにおいて、それぞれ46日目又は49日目の追加免疫後に中和抗体が増加した。
【0193】
ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)で免疫したラットにおいては重大な肺病理が観察された一方、F−ミセルワクチンによる疾患の亢進は認められなかった(図22)。F−ミセルワクチン及びアジュバントを伴うF−ミセルワクチンの使用により、一次RSV感染(PBS+RSVチャレンジ)対照群(5.8)より低い炎症スコアがもたらされた(それぞれ4.0及び2.8)。上述のとおり、FI−RSV治療群は、一次RSV感染(PBS+RSVチャレンジ)対照群より高い炎症スコアを有した(9.0対5.8)。さらに、FI−RSV治療群は、非チャレンジプラセボ対照、生RSV+RSVチャレンジ、F−ミセル+RSVチャレンジ、及びF−ミセル+アルミニウム+RSVチャレンジと比べて有意に高い平均炎症スコア(9.0)を有した。
【0194】
前述の詳細な説明は理解を明瞭にするために与えられているに過ぎず、当業者には変更が明らかであろうから、そこから不必要な限定が理解されてはならない。これは、本明細書に提供される情報のいずれかがここに特許請求される発明の先行技術若しくは従来技術であること、又は明確に若しくは黙示的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0195】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0196】
本願は、読者の注意が具体的な実施形態に向くよう節ごとに分割されているが、かかる節が実施形態間の区分であると解釈されてはならない。各節及びそこに記載される実施形態の教示は、他の節に適用可能である。
【0197】
本発明はその特定の実施形態に関連して記載されているが、さらなる変更が可能であり、本願が、概して本発明の原理に従う、且つ本発明が関わる技術分野の範囲内の公知の又は慣習的な実施の範囲内に含まれるとおりの、及び以上に示され、且つ以下の添付の特許請求の範囲に従う本質的な特徴が適用され得るとおりの、本開示からのかかる逸脱を含む、本発明の任意の変形例、使用、又は適応を網羅するよう意図されることは理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/121,126号、2009年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/169,077号、及び2009年7月10日に出願された米国仮特許出願第61/224,787号に対する優先権を主張し、その各々が、全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、修飾又は変異呼吸器合胞体ウイルス融合(F)タンパク質、並びにRSV感染の治療及び/又は予防のための、ワクチンなどの免疫原性組成物を含む、それらの作製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のニューモウイルス属(Pneumovirus)のメンバーである。ヒトRSV(HRSV)は、低年齢小児における重篤な下気道疾患の主な原因であり、ヒトにおける高い罹患率及び死亡率に関与している。RSVはまた、免疫障害のある成人における、及び高齢者における重要な病原体としても認識されている。自然感染後の感染宿主におけるRSV抵抗性は不完全なため、小児期及び成人期の間にRSVは複数回感染し得る。
【0004】
このウイルスは、一本鎖ネガティブセンスRNAから構成されるゲノムを有し、それがウイルスタンパク質と緊密に結合してヌクレオカプシドを形成している。ウイルスエンベロープは、ウイルスによりコードされた構造タンパク質を含む細胞膜由来の脂質二重層から構成される。ウイルスポリメラーゼがビリオンでパッケージングされ、ゲノムRNAをmRNAに転写する。RSVゲノムは、3つの膜貫通型構造タンパク質F、G、及びSH、2つのマトリクスタンパク質M及びM2、3つのヌクレオカプシドタンパク質N、P、及びL、並びに2つの非構造タンパク質NS1及びNS2をコードする。
【0005】
HRSVと細胞膜との融合は、細胞表面で起こるものと考えられており、感染初期における細胞質へのウイルスリボ核タンパク質の導入に必須の工程である。この過程は融合(F)タンパク質によって媒介され、Fタンパク質はまた、感染細胞の膜を隣接細胞の膜と融合することによる特徴的な合胞体の形成も促進し、この合胞体の形成は、顕著な細胞変性効果であるとともに、さらなるウイルス伝播機構でもある。従って、宿主免疫においては融合活性の中和が重要である。実際、Fタンパク質に対して作られたモノクローナル抗体は、ウイルス感染力を中和し、膜融合を阻害することが示されている(Calder et al., 2000, Virology 271: 122-131)。
【0006】
RSVのFタンパク質は、他のパラミクソウイルスのF糖タンパク質と構造上の特徴及び限定的だが重要なアミノ酸配列同一性を共有している。これは、574アミノ酸の不活性前駆体(F0)として合成され、小胞体においてアスパラギンに対して共翻訳によりグリコシル化され、そこで集合してホモオリゴマーとなる。細胞表面に達する前に、F0前駆体はプロテアーゼにより切断され、N末端からのF2とC末端からのF1となる。F2鎖及びF1鎖は、1又は複数のジスルフィド結合により共有結合したままである。
【0007】
イムノアフィニティー精製した完全長Fタンパク質は、他の完全長ウイルス膜糖タンパク質で観察されるものと類似したミセルの形態(ロゼットとしてもまた特徴付けられる)で蓄積することが分かっている(Wrigley et al., 1986, in Electron Microscopy of Proteins, Vol 5, p. 103-163, Academic Press, London)。電子顕微鏡下では、ロゼット中の分子は、逆円錐形のロッド(約70%)又はロリポップ形(約30%)のいずれかの構造であって、その広いほうの端部がロゼットの中心から離れる方に突出している構造として現れる。ロッドの立体構造状態は、融合前の不活性状態におけるF糖タンパク質に関連している一方、ロリポップの立体構造状態は、融合後の活性状態におけるF糖タンパク質に関連している。
【0008】
Calder et al., 2000, Virology 271:122-131により示されるとおり、電子顕微鏡写真を使用して前融合と後融合との(或いは、前融合性及び融合性と表される)コンホメーションを区別することができる。前融合コンホメーションはまた、リポソーム会合アッセイによっても融合性(後融合)コンホメーションと区別することができる。加えて、前融合コンホメーションと融合性コンホメーションとは、RSV Fタンパク質の前融合又は融合性のいずれか一方の形態に存在するが、他方の形態には存在しないコンホメーションエピトープを特異的に認識する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して区別することができる。かかるコンホメーションエピトープは、分子の表面上にある抗原決定基の選択的な露出に起因するものであり得る。或いは、コンホメーションエピトープは、直鎖状ポリペプチドにおいて非連続的なアミノ酸が並ぶことにより生じ得る。
【0009】
過去に、F前駆体が2つの部位で切断されることが示されており(部位I、残基109位の後、及び部位II、残基136位の後)、双方ともフューリン様プロテアーゼによって認識されるモチーフが先行する。部位IIは融合ペプチドに隣接し、膜融合には双方の部位でのFタンパク質の切断が必要である(Gonzalez-Reyes et al., 2001, PNAS 98(17): 9859-9864)。双方の部位における切断が完了したときに、円錐形ロッドからロリポップ形ロッドへの移行があると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載されるとおり、本発明者らは、驚くことに、RSV Fタンパク質の構造に対して特定の修飾が加えられると、融合(F)タンパク質の高レベルの発現が実現され得ることを発見した。かかる修飾はまた、意外にも、宿主細胞におけるRSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する。加えて、本発明の修飾Fタンパク質は、前融合「ロッド」形態との対照としての後融合「ロリポップ」形態を呈する能力の向上を示す。従って、一態様において、本発明の修飾Fタンパク質はまた、野生型Fタンパク質と比較して免疫原性の向上を呈することもできる。こうした修飾は、RSVの治療及び/又は予防用ワクチンの開発並びに前記ワクチンの使用方法に多大な応用を有する。本発明は、野生型RSV Fタンパク質と比較して、発現の増加、細胞毒性の低減、及び/又は免疫原性特性の亢進を示す組換えRSV Fタンパク質を提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、野生型RSV Fタンパク質と比較して修飾された、又は変異したアミノ酸配列を含む組換えRSV Fタンパク質を提供する。一般に、こうした修飾又は変異は、野生型RSV Fタンパク質と比較して、RSV Fタンパク質の発現を増加させ、細胞毒性を低減し、及び/又は免疫原性特性を亢進する。特定の例示的実施形態において、RSV Fタンパク質はヒトRSV Fタンパク質である。
【0012】
RSV Fタンパク質は、好ましくは、野生型RSV Fタンパク質(例えば配列番号2に例示される)と比較して修飾された、又は変異したアミノ酸配列を含む。一実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のP102位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のI379位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のM447位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。
【0013】
一実施形態において、RSV Fタンパク質は、上記に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、上記に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。
【0014】
具体的な一実施形態において、本発明は、102位のプロリンがアラニンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、379位のイソロイシンがバリンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、447位のメチオニンがバリンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。特定の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。特定の他の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。例示的実施形態において、RSVタンパク質は配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
一実施形態において、RSV Fタンパク質のコード配列は、好適な宿主細胞におけるその発現を亢進させるようにさらに最適化される。一実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。例示的実施形態において、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0016】
一実施形態において、コドン最適化RSV F遺伝子のコード配列は配列番号3である。別の実施形態において、コドン最適化RSV Fタンパク質は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
一実施形態において、RSV Fタンパク質は、F2のクリプティックポリ(A)部位に少なくとも1つの修飾をさらに含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、一次切断部位(CS)に1又は複数のアミノ酸変異をさらに含む。一実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR133位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR135位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。さらに別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)又はコドン最適化RSV Fタンパク質(配列番号4)のR136位に対応するアミノ酸に修飾又は変異を含む。
【0018】
具体的な一実施形態において、本発明は、133位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。別の具体的な実施形態において、本発明は、135位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、136位のアルギニンがグルタミンに置換されているRSV Fタンパク質に関する。特定の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に2つ以上の修飾又は変異を含む。特定の他の実施形態において、RSV Fタンパク質は、これらの具体的な実施形態に記載される位置に対応するアミノ酸に3つの修飾又は変異を含む。例示的実施形態において、RSVタンパク質は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号2、配列番号4、及び配列番号6のアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分に欠失をさらに含む。例示的実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有する。代替的実施形態において、RSV Fタンパク質は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
さらに、本発明の範囲内には、上記に示すものに対応する改変を含む、ヒトRSV Fタンパク質(配列番号2)以外のRSV Fタンパク質が含まれる。かかるRSV Fタンパク質には、限定はされないが、ヒトRSVのA株、ヒトRSVのB株、ウシRSVの株、及びトリRSVの株由来のRSV Fタンパク質が含まれ得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、宿主細胞における発現の増加を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。他の実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、宿主細胞における細胞毒性の低減を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。さらに他の実施形態において、本発明は、配列番号2に示されるものなどの野生型RSV Fタンパク質と比較して、免疫原性特性の亢進を示す修飾又は変異RSV Fタンパク質に関する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載されるとおりの1又は複数の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む免疫原性組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、1又は複数の修飾又は変異RSV Fタンパク質から構成されるミセル(例えばRSV Fミセル)を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を提供する。いくつかの実施形態において、VLPは、1又は複数のさらなるタンパク質をさらに含む。
【0024】
一実施形態において、VLPは、マトリクス(M)タンパク質をさらに含む。一実施形態において、Mタンパク質は、RSVのヒト株に由来する。別の実施形態において、Mタンパク質は、RSVのウシ株に由来する。他の実施形態において、マトリクスタンパク質は、インフルエンザウイルス株由来のM1タンパク質であってもよい。一実施形態において、インフルエンザウイルス株はトリインフルエンザウイルス株である。他の実施形態において、Mタンパク質は、ニューカッスル病ウイルス(NDV)株に由来してもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、VLPは、RSV糖タンパク質Gをさらに含む。別の実施形態において、VLPは、RSV糖タンパク質SHをさらに含む。さらに別の実施形態において、VLPは、RSVヌクレオカプシドNタンパク質をさらに含む。
【0026】
修飾又は変異RSV Fタンパク質は、RSV感染の予防及び/又は治療に使用し得る。従って、別の態様において、本発明は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む組成物の免疫学的有効量を、ヒト又は動物対象などの対象に投与する工程を含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、本発明のワクチン製剤の成分の1又は複数で充填された1又は複数の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に対して感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導するワクチン又は抗原組成物を製剤化する方法であって、製剤に対し、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの有効用量を添加することを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、感染はRSV感染である。
【0031】
本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質は、感染病原体に対する免疫又は実質的な免疫を付与する免疫応答を刺激する組成物の調製に有用である。従って、一実施形態において、本発明は、対象における感染又はその疾患症状の少なくとも1つの対する免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0032】
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0033】
本発明の組成物は、脊椎動物(例えばヒト)に投与されるとき、脊椎動物において実質的な免疫を誘導することができる。従って、一実施形態において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に、RSVに対するワクチン接種をする方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの防御誘導量を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、対象における感染又はその症状の少なくとも1つに対する防御抗体応答を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、少なくとも1つのVLPの有効用量を投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸を提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を含む単離された細胞を提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。例示的実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする単離された核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。一実施形態において、ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、RSV Fタンパク質を作製する方法であって:(a)本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び(b)前記RSV Fタンパク質の産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;を含む方法を提供する。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。別の実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。さらなる実施形態において、宿主細胞は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトした昆虫細胞である。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、RSV Fタンパク質ミセルを作製する方法であって:(a)本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び(b)前記RSV Fタンパク質ミセルの産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;を含む方法を提供する。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードする核酸は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号9からなる群から選択される。一実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞である。例示的実施形態において、宿主細胞は、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトした昆虫細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面の簡単な説明
【図1】野生型HRSV F0タンパク質の構造を示す。
【図2】実施例3に記載の、切断部位変異を有する修飾RSV F0タンパク質の構造を示す。
【図3】修飾HRSV Fタンパク質BV #541(配列番号6)の一次切断部位における保存的置換(R133Q、R135Q及びR136Q)を示す。
【図4】修飾HRSV Fタンパク質BV #541(配列番号6)の配列及び構造を示す。
【図5】修飾HRSV Fタンパク質BV #622(配列番号10)の配列及び構造を示す。
【図6】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #622のSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。
【図7】修飾HRSV Fタンパク質BV #683(配列番号8)の構造を示す。
【図8】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #622及びBV #683の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)、及びそれらの構造を示す。
【図9】βMEの存在下又は不在下での、精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析を示す。
【図10】精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683の、走査デンシトメトリー(左)及びウエスタンブロット(右)による純度分析において用いたSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。
【図11】ネガティブ染色電子顕微鏡で撮影した精製組換えHRSV Fタンパク質BV #683ミセル(ロゼット)の像を示す。
【図12】HRSV Fタンパク質BV #683ミセルの粒径分析を示す。
【図13】粗細胞培養回収物(細胞内)又は30%スクロース勾配分離によるペレット状試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない修飾HRSV Fタンパク質BV #622及びBV #623(配列番号21)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びにBV #622及びBV #623の構造を示す。
【図14】粗細胞培養回収物(細胞内)試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない、修飾HRSV Fタンパク質BV #622、ダブルタンデムキメラBV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683、BV #684(YIAL L−ドメインを有するBV #541)、及びBV #685(YKKL L−ドメインを有するBV #541)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びに分析した各修飾HRSV Fタンパク質の構造を示す。
【図15】30%スクロース勾配分離によるペレット状試料中の、HRSV NとBRSV Mタンパク質の共発現を伴うか又は伴わない、修飾RSV Fタンパク質BV #622(配列番号10)、ダブルタンデムキメラBV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683(配列番号8)、BV #684(YIAL L−ドメインを有するBV #541)、及びBV #685(YKKL L−ドメインを有するBV #541)の、SDS−PAGEクーマシー染色ゲル(左)及びウエスタンブロット(右)分析、並びに分析した各修飾HRSV Fタンパク質の構造を示す。
【図16】実施例9に記載の各修飾RSV Fタンパク質についての構造、クローン名、説明、ウエスタンブロット及びSDS−PAGEクーマシー結果、及び結論を示す。
【図17】実施例10に記載のRSVチャレンジ試験の実験手順を示す。
【図18】PBS、生RSV、FI−RSV、1ugのPFP、1ugのPFP+ミョウバン、10ugのPFP、10ugのPFP+ミョウバン、30ugのPFP、及び陽性対照(抗Fヒツジ)で免疫したマウスの、31日目及び46日目におけるRSV中和アッセイの結果を示す。
【図19】感染性RSVのチャレンジ後4日目における、PBS、生RSV、FI−RSV、1ugのPFP、1ugのPFP+ミョウバン、10ugのPFP、10ugのPFP+ミョウバン、及び30ugのPFPで免疫したマウスの肺組織におけるRSV力価を示す。
【図20】2〜8℃で0、1、2、4、及び5週間保存した精製組換えRSV Fタンパク質BV #683の、クーマシーで染色したSDS−PAGEゲルを示す。
【図21】生RSV(RSV)、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴うか又は伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(PFP及びPFP+アルミニウムアジュバント)、及びPBS対照による免疫後のRSV A及びRSV B中和抗体応答を示す。
【図22】生RSV、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴うか又は伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(F−ミセル(30ug)及びF−ミセル(30ug)+アルミニウムアジュバント)、及びPBS対照で免疫したラットにおけるRSVによるチャレンジ後の肺病理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
定義
本明細書において、用語「アジュバント」は、製剤中で特定の免疫原(例えば修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLP)と組み合わせて使用されるとき、得られる免疫応答を増強するか、あるいは改変若しくは修飾する化合物を指す。免疫応答の修飾には、抗体応答及び細胞性免疫応答の一方又は双方の特異性の強化又は拡大が含まれる。免疫応答の修飾はまた、特定の抗原特異的免疫応答の低下又は抑制も意味し得る。
【0043】
本明細書において用語「抗原製剤」又は「抗原組成物」は、脊椎動物、特に鳥類又は哺乳類に投与されると免疫応答を誘導し得る調製物を指す。
【0044】
本明細書において用語「トリインフルエンザウイルス」は、主として鳥類に見られるが、ヒト又は他の動物にも感染し得るインフルエンザウイルスを指す。あるケースでは、トリインフルエンザウイルスはヒトからヒトに伝染又は伝播し得る。ヒトに感染するトリインフルエンザウイルスは、インフルエンザの大流行を引き起こし、すなわちヒトにおける罹患率及び/又は死亡率の原因となる可能性を有する。大流行は、新種のインフルエンザウイルス株(ヒトが自然免疫を有しないウイルス)が現れたときに起こり、個々の地域を越えて、場合によっては全世界的に伝播し、多くの人に同時に感染する。
【0045】
本明細書において「有効用量」は、概して、免疫を誘導し、感染を予防及び/又は改善するか、又は感染若しくは疾患の少なくとも1つの症状を軽減し、及び/又は別の用量の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの効力を亢進させるのに十分な、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指す。有効用量は、感染又は疾患の発症を遅延させ、又は最小限に抑えるのに十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指すこともある。有効用量はまた、感染又は疾患の治療又は管理において治療利益を提供するのに十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指すこともある。さらに、有効用量は、単独で、又は他の療法との組み合わせで、感染又は疾患の治療又は管理において治療利益を提供する本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPに関する量である。有効用量はまた、後の感染病原体又は疾患への曝露に対する対象の(例えば、ヒトの)自己免疫応答を亢進させるのに十分な量であってもよい。免疫レベルは、例えば、中和分泌及び/又は血清抗体の量を、例えばプラーク中和、相補体固定、酵素結合免疫吸着、若しくはマイクロ中和アッセイによって計測することによって、又は細胞性応答、限定はされないが、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞及び/又は他の細胞性応答などを計測することによって、モニタすることができる。T細胞応答は、例えば、蛍光フローサイトメトリーか、又はT細胞アッセイ、限定はされないが、T細胞増殖アッセイ、T細胞傷害性アッセイ、テトラマーアッセイ、及び/又はELISPOTアッセイなどにより特異的マーカーを使用して、例えばCD4+及びCD8+細胞の存在量を計測することにより、モニタすることができる。ワクチンの場合、「有効用量」は、疾患を予防し、及び/又は症状の重症度を軽減する用量である。
【0046】
本明細書において、用語「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するのに必要な又は十分な、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの量を指す。組成物の有効量は、選択された結果を実現する量とすることもでき、及びかかる量は、当業者によりルーチン実験の問題として決定されることが可能である。例えば、感染を予防、治療、及び/又は改善するための有効量は、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPに曝露後、免疫系の活性化を引き起こし、それにより抗原特異的な免疫応答を生じさせるために必要な量であり得る。この用語はまた、「十分量」と同義語でもある。
【0047】
本明細書において、用語「発現」は、ポリ核酸がmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリ核酸がゲノムDNAに由来する場合、発現は、適切な真核宿主細胞又は生物が選択される場合には、mRNAのスプライシングを含み得る。本発明の文脈では、この用語はまた、RSV F遺伝子mRNA及びその発現後に得られるRSV Fタンパク質の産生も包含する。
【0048】
本明細書において、用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」は、RSV融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全て又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。同様に、用語「Gタンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」は、RSV付着タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全て又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。多数のRSV融合及び付着タンパク質が記載されており、当業者に公知である。全体として参照により本明細書に援用される国際公開第2008/114149号が、例示的なF及びGタンパク質変異体(例えば、天然に存在する変異体)について詳説している。
【0049】
本明細書において、用語「免疫原」又は「抗原」は、免疫応答の誘発能を有するタンパク質、ペプチド、ペプチド、核酸などの物質を指す。双方の用語とも、エピトープも包含し、同義的に用いられる。
【0050】
本明細書において用語「免疫刺激剤」は、生体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)を介した免疫応答を亢進させる化合物を指す。こうした分子は、免疫刺激活性、免疫強化活性、及び炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカイン、例えば、インターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等を含む。免疫刺激剤分子は本発明のVLPと同じ製剤で投与されてもよく、又は別個に投与されてもよい。タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを投与して、免疫刺激効果をもたらすことができる。
【0051】
本明細書において、用語「免疫原性製剤」は、脊椎動物、例えば哺乳動物に投与されると免疫応答を誘導し得る調製物を指す。
【0052】
本明細書での使用時、用語「感染病原体」は、脊椎動物に感染を引き起こす微生物を指す。通常、生物は、ウイルス、細菌、寄生体、原生動物及び/又は真菌である。
【0053】
本明細書において、用語「変異した」、「修飾された」、「変異」、又は「修飾」は、改変された核酸又はポリペプチドをもたらす核酸及び/又はポリペプチドの任意の修飾を指し示す。変異は、例えば、遺伝子のタンパク質コード領域内に生じる改変、並びに限定はされないが、調節配列又はプロモーター配列などのタンパク質コード配列の外側の領域における改変を含むポリヌクレオチドの単一又は複数の残基の点変異、欠失、又は挿入を含む。遺伝子改変は、いかなるタイプの変異であってもよい。例えば、変異は、遺伝子の一部又は全ての点変異、フレームシフト変異、挿入、又は欠失を構成し得る。いくつかの実施形態において、変異は天然に生じるものである。他の実施形態において、変異は人工的な変異圧の結果である。さらに他の実施形態において、RSV Fタンパク質における変異は、遺伝子操作の結果である。
【0054】
本明細書において、用語「多価」は、複数のタイプ又は株の感染病原体又は疾患に対する1又は複数の抗原タンパク質/ペプチド又は免疫原を有する組成物を指す。
【0055】
本明細書において、用語「薬学的に許容可能なワクチン」は、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含有する製剤を指し、これは脊椎動物に投与することが可能な形態であり、且つこれは感染又は疾患を予防及び/又は改善し、及び/又は感染又は疾患の少なくとも1つの症状を軽減し、及び/又は別の用量の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの効力を亢進させる免疫を誘導するのに十分な防御免疫応答を誘導するものである。典型的には、ワクチンは従来の生理食塩水又は緩衝水溶液媒質を含み、そこに本発明の組成物が懸濁又は溶解される。この形態において、本発明の組成物を感染の予防、改善又はその他の形での治療に好都合に用いることができる。宿主に導入されると、ワクチンは、限定はされないが、抗体及び/又はサイトカインの産生、及び/又は細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞の活性化及び/又は他の細胞性応答を含めた免疫応答を引き起こすことができる。
【0056】
本明細書において、語句「防御免疫応答」又は「防御応答」は、脊椎動物(例えば、ヒト)が呈する、感染病原体又は疾患に対する抗体により媒介される免疫応答であって、感染を予防若しくは改善し、又はその疾患症状の少なくとも1つを軽減する免疫応答を指す。本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPは、例えば、感染病原体を中和し、感染病原体が細胞に侵入するのを阻止し、感染病原体の複製を阻止し、及び/又は宿主細胞を感染及び破壊から保護する抗体の産生を刺激することができる。この用語はまた、脊椎動物(例えば、ヒト)が呈する、感染病原体又は疾患に対するTリンパ球及び/又は他の白血球細胞により媒介される免疫応答であって、感染又は疾患を予防若しくは改善し、又はその少なくとも1つの症状を軽減する免疫応答を指すこともできる。
【0057】
本明細書において、用語「脊椎動物」又は「対象」又は「患者」は、限定なしに、ヒト、並びにチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類を含めた他の霊長類を含む脊索動物亜門(subphylum cordata)の任意のメンバーを指す。ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの農場動物;イヌ及びネコなどの家畜化された哺乳動物;マウス、ラット(コットンラットを含む)及びモルモットなどのげっ歯類を含めた実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及び他のキジ類の鳥、アヒル、ガチョウなどの、家禽、野鳥及び狩猟鳥を含む鳥類もまた、非限定的な例である。用語「哺乳動物」及び「動物」は、この定義に含まれる。成体及び新生児の双方の個体が包含されることが意図される。特に、乳児及び低年齢幼児が、RSVワクチンに適した対象又は患者である。
【0058】
本明細書において、用語「ウイルス様粒子」(VLP)は、少なくとも1つの属性がウイルスに類似しているが、伝染性であると実証されたことがない構造を指す。本発明に係るウイルス様粒子は、ウイルス様粒子のタンパク質をコードする遺伝情報を有しない。一般に、ウイルス様粒子はウイルスゲノムを欠いており、従って非伝染性である。加えて、ウイルス様粒子は多くの場合に異種発現によって大量に産生することができ、且つ容易に精製することができる。
【0059】
本明細書において、用語「キメラVLP」は、少なくとも2つの異なる感染病原体由来のタンパク質、又はその一部分を含有するVLPを指す(異種タンパク質)。通常、タンパク質のうちの一つは、宿主細胞からのVLPの形成を駆動することのできるウイルスに由来する。例示を目的とした例は、BRSV Mタンパク質及び/又はHRSV G若しくはFタンパク質である。用語のRSV VLPとキメラVLPとは、適切な場合には同義的に用いることができる。
【0060】
本明細書において、用語「ワクチン」は、死滅させた、若しくは弱毒化した病原体の、又は誘導された抗原決定基の調製物であって、病原体に対する抗体又は免疫の形成を誘導するために使用される調製物を指す。ワクチンは、疾患、例えばインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザに対する免疫を提供するために投与される。加えて、用語「ワクチン」はまた、脊椎動物に投与されることで防御免疫、すなわち、感染に付随する疾患を予防し、又はその重症度を軽減する免疫をもたらす免疫原(例えば、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLP)の懸濁液又は溶液も指す。本発明は、免疫原性であり、且つ感染に付随する疾患に対する防御を提供し得るワクチン組成物を提供する。
【0061】
RSV Fタンパク質
2つの構造膜タンパク質であるF及びGタンパク質は、RSVの表面上で発現し、中和抗体の標的であることが示されている(Sullender, W., 2000, Clinical Microbiology Review 13, 1-15)。これらの2つのタンパク質はまた、ウイルス認識及び標的細胞への侵入にも主として関与している;Gタンパク質は特定の細胞受容体に結合し、Fタンパク質はウイルスの細胞との融合を促進する。Fタンパク質はまた、感染細胞の表面上でも発現し、合胞体の形成をもたらす他の細胞との続く融合にも関与している。従って、Fタンパク質に対する抗体は、ウイルスを中和し、又はウイルスの細胞への侵入を阻止し、又は合胞体の形成を防止することができる。サブタイプAとBとの抗原性及び構造の違いが、Gタンパク質及びFタンパク質の双方について記載されているが、Gタンパク質にはより大きい抗原性の違いが存在し、ここではアミノ酸配列が53%しか相同でなく、抗原性における関連性は5%である(Walsh et al. (1987) J. Infect. Dis. 155, 1198-1204;及びJohnson et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 5625-5629)。逆に、Fタンパク質に対して生じる抗体は、サブタイプA及びBウイルスの間で高度な交差反応性を示す。
【0062】
RSV Fタンパク質は、ビリオンのエンベロープタンパク質と宿主細胞の細胞膜との間の融合によるRSVの貫通を誘導する。感染後期には、細胞表面上で発現したFタンパク質が隣接細胞との融合を媒介し、合胞体を形成し得る。Fタンパク質は、N末端の切断されたシグナルペプチドとC末端近傍の膜アンカーとを有するI型膜貫通表面タンパク質である。RSV Fは、集合してホモ三量体となる不活性F0前駆体として合成され、細胞エンドプロテアーゼによりトランス−ゴルジ複合体において切断を受けて活性化され、2つのジスルフィド結合したサブユニットであるF1及びF2サブユニットを生じる。切断により作られるF1サブユニットのN末端は、標的膜に直接挿入して融合を開始する疎水性ドメイン(融合ペプチド)を含む。F1サブユニットはまたヘプタッドリピートも含み、これらは融合中に会合し、ウイルス膜と細胞膜とをごく近接させるコンホメーションシフトを駆動する(Collins and Crowe, 2007, Fields Virology, 5th ed., D.M Kipe et al., Lipincott, Williams and Wilkons, p. 1604)。配列番号2(GenBank受託番号AAB59858)は代表的なRSV Fタンパク質を示し、これは配列番号1(GenBank受託番号M11486)に示される遺伝子によりコードされる。
【0063】
事実上、RSV Fタンパク質は、574アミノ酸長の、FOと命名される単一のポリペプチド前駆体として発現する。生体内では、FOは小胞体においてオリゴマー化し、2つの保存されたフューリンコンセンサス配列(フューリン切断部位)であるRARR(配列番号23)(二次)とKKRKRR(配列番号24)(一次)とにおいてフューリンプロテアーゼによるタンパク分解性のプロセシングを受けることで、2つのジスルフィド結合した断片からなるオリゴマーを生成する。これらの断片のうち小さいほうはF2と称され、FO前駆体のN末端部分から生じる。当業者は、略称FO、F1及びF2が、科学論文では一般にF0、F1及びF2と表されることを認識するであろう。大きいほうのC末端F1断片は、24アミノ酸の細胞質テールに隣接する疎水性アミノ酸の配列を介してFタンパク質を膜に固定する。3つのF2−F1二量体が会合して成熟Fタンパク質を形成し、これは、標的細胞膜と接触すると誘発されてコンホメーション変化を起こす準安定前融合性(「前融合」)コンホメーションをとる。このコンホメーション変化により、融合ペプチドとして知られる疎水性配列が露出し、これが宿主細胞膜と結合して、ウイルスの膜、又は感染細胞の標的細胞膜との融合を促進する。
【0064】
F1断片は、HRA及びHRBと命名される少なくとも2つのヘプタッドリピートドメインを含み、これらはそれぞれ、融合ペプチドドメイン及び膜貫通アンカードメインに近接して位置する。前融合コンホメーションでは、F2−F1二量体は球状ヘッドとストークの構造を形成し、ここでHRAドメインは、球状ヘッドにおいてセグメント化された(伸展した)コンホメーションにある。対照的に、HRBドメインは、ヘッド領域から伸展する三本鎖コイルドコイルストークを形成する。前融合コンホメーションから後融合コンホメーションに移行する間、HRAドメインは折り畳まれ、HRBドメインに近接するようになって逆平行の6つのヘリックス束を形成する。後融合状態では、融合ペプチドドメインと膜貫通ドメインとが隣り合って並び、膜融合が促進される。
【0065】
上記に提供されるコンホメーションについての説明は、結晶学的データの分子モデリングに基づいているが、前融合コンホメーションと後融合コンホメーションとの構造上の差異は、結晶学に頼ることなくモニタすることができる。例えば、その技術的教示を目的として参照により本明細書に援用されるCalder et al., Virology, 271:122-131 (2000)及びMorton et al., Virology, 311: 275-288に示されるとおり、電子顕微鏡写真を使用して前融合と後融合との(或いは、前融合性及び融合性と表される)コンホメーションを区別することができる。前融合コンホメーションはまた、同様にその技術的教示を目的として参照により本明細書に援用されるConnolly et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:17903-17908 (2006)に記載のリポソーム会合アッセイによっても、融合性(後融合)コンホメーションと区別することができる。加えて、前融合コンホメーションと融合性コンホメーションとは、RSV Fタンパク質の前融合又は融合性のいずれか一方の形態に存在するが、他方の形態には存在しないコンホメーションエピトープを特異的に認識する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して区別することができる。かかるコンホメーションエピトープは、分子の表面上にある抗原決定基の選択的な露出に起因するものであり得る。或いは、コンホメーションエピトープは、直鎖状ポリペプチド中では非連続的なアミノ酸が、並ぶことにより生じ得る。
【0066】
修飾又は変異RSV Fタンパク質
本発明者らは、驚くことに、RSV Fタンパク質の構造に対して特定の修飾が加えられると、融合(F)タンパク質の高レベルの発現が実現され得ることを発見した。かかる修飾はまた、意外にも、宿主細胞におけるRSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する。加えて、本発明の修飾Fタンパク質は、前融合「ロッド」形態との対照としての後融合「ロリポップ」形態を呈する能力の向上を示す。従って、一態様において、本発明の修飾Fタンパク質はまた、野生型Fタンパク質(例えば配列番号2により例示される、これはGenBank受託番号AAB59858に対応する)と比較して免疫原性の向上(例えば亢進)を呈することもできる。こうした修飾は、RSVの治療及び/又は予防用ワクチンの開発及び前記ワクチンの使用方法に多大な応用を有する。
【0067】
本発明に従えば、天然又は野生型RSV Fタンパク質に対して任意の数の変異を加えることができ、及び好ましい態様では、複数の変異を加えることにより、天然又は野生型RSV Fタンパク質と比較して発現及び/又は免疫原性特性の向上をもたらすことができる。かかる変異には、点変異、フレームシフト変異、欠失、及び挿入が含まれ、1又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ等)の変異が好ましい。
【0068】
天然Fタンパク質ポリペプチドは、RSV A株、RSV B株、HRSV A株、HRSV B株、BRSV株、若しくはトリRSV株の任意のFタンパク質から、又はその変異体(上記に定義されるとおり)から選択することができる。特定の例示的実施形態において、天然Fタンパク質ポリペプチドは、配列番号2(GenBank受託番号AAB59858)によって表されるFタンパク質である。本開示の理解を促進するため、全てのアミノ酸残基位置が、株にかかわらず、例示的Fタンパク質のアミノ酸位置に対して示される(すなわち、アミノ酸残基位置がそれに対応する)。他のRSV株由来のFタンパク質の同等のアミノ酸位置については、当業者は、容易に利用可能な周知のアラインメントアルゴリズムを用いて(BLASTなど、例えばデフォルトパラメータを使用して)選択されたRSV株のアミノ酸配列を例示的配列のアミノ酸配列と整列させることにより容易に決定することができる。種々のRSV株由来のFタンパク質ポリペプチドの多数のさらなる例が、国際公開第2008/114149号(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。さらなる変異体が遺伝的浮動を通じて生じることがあり、又は部位特異的若しくはランダム変異誘発を用いて、又は2個以上の既存の変異体の組換えにより、人工的に産生され得る。かかるさらなる変異体もまた、本明細書に開示される修飾又は変異RSV Fタンパク質との関連において好適である。
【0069】
変異は、当業者に公知の任意の方法論を用いて本発明のRSV Fタンパク質に導入され得る。変異は、例えば、二価金属イオン補因子としてのマンガンの存在下でPCR反応を行うことにより、ランダムに導入されてもよい。或いは、コードDNA分子に沿った任意の特定の部位における全ての可能なクラスの塩基対変化を可能にするオリゴヌクレオチド特異的変異誘発を使用して、変異体又は修飾RSV Fタンパク質を作製してもよい。一般に、この技法には、目的のRSV Fタンパク質をコードする一本鎖ヌクレオチド配列と(1又は複数のミスマッチを除いて)相補的なオリゴヌクレオチドのアニーリングが関わる。次にミスマッチオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼにより伸長され、一方の鎖の配列中に所望の変化を含む二本鎖DNA分子が生成される。配列の変化は、例えば、アミノ酸の欠失、置換、又は挿入をもたらすことができる。次に二本鎖ポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに挿入することができ、このようにして変異体又は修飾ポリペプチドが産生され得る。上述のオリゴヌクレオチド特異的変異誘発は、例えばPCRにより行うことができる。
【0070】
さらなるRSVタンパク質
本発明はまた、RSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つから脊椎動物(例えばヒト)を防御するためのワクチン又は抗原製剤に製剤化することのできる、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSVウイルス様粒子(VLP)も包含する。いくつかの実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPはさらに、M、N、G、及びSHなどのさらなるRSVタンパク質を含む。他の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPはさらに、インフルエンザウイルスタンパク質HA、NA、及びM1などの異種ウイルス株由来のタンパク質を含む。一実施形態において、インフルエンザウイルスタンパク質M1は、トリインフルエンザウイルス株に由来する。
【0071】
RSV Nタンパク質はゲノムRNA及び複製中間体抗ゲノムRNAの双方と緊密に結合してRNアーゼ抵抗性ヌクレオカプシドを形成する。配列番号16(野生型)及び18(コドン最適化型)がRSV Nタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示し、配列番号15(野生型)及び17(コドン最適化型)が、RSV Nタンパク質をコードする代表的な核酸配列を示す。本発明には、配列番号18と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV Nタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0072】
RSV Mタンパク質は、ウイルスの形態形成においてRSV Fタンパク質及び他の因子と相互作用する、細胞膜に蓄積するグリコシル化されていない内在性のビリオンタンパク質である。特定の好ましい実施形態において、RSV Mタンパク質はウシRSV(BRSV)Mタンパク質である。配列番号12(野生型)及び14(コドン最適化型)がBRSV Mタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示し、配列番号11(野生型)及び13(コドン最適化型)が、BRSV Mタンパク質をコードする代表的な核酸配列を示す。本発明には、配列番号12及び14と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV(限定はされないが、BRSVを含む)Mタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0073】
RSV Gタンパク質は、切断されていないシグナルペプチド及び膜アンカーの双方として機能する単一の疎水性領域をN末端近傍に有し、分子のC末端3分の2が外側に向いた状態にあるII型膜貫通糖タンパク質である。RSV Gはまた、シグナル/アンカー内にあるORFの第2のAUGにおける(ほぼアミノ酸48位における)翻訳開始から生じる分泌タンパク質としても発現する。RSV Gの外部ドメインのほとんどは、RSV株間で高い多様性がある(同上、p. 1607)。配列番号26が代表的なRSV Gタンパク質を示し、これは配列番号25に示される遺伝子配列によってコードされる。本発明には、配列番号26と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV Gタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0074】
RSVのSHタンパク質は、64個(RSV亜群A)又は65個(RSV亜群B)のアミノ酸残基を含むII型膜貫通タンパク質である。いくつかの研究では、RSV SHタンパク質がウイルス融合において、又は膜貫通性の変化において役割を有し得ることが示唆されている。しかしながら、SH遺伝子を持たないRSVが生存可能であり、合胞体形成を引き起こし、及び野生型ウイルスと同じく良好に成長することから、SHタンパク質がウイルスの宿主細胞への侵入又は合胞体形成に必須ではないことが示される。RSVのSHタンパク質については、TNF−αシグナル伝達を阻害する能力が示されている。配列番号27が、RSV SHタンパク質の代表的なアミノ酸配列を示す。本発明には、配列番号27と少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又は約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるRSV SHタンパク質、並びにその全ての断片及び変異体(キメラタンパク質を含む)が包含される。
【0075】
RSVワクチン
現在、RSV疾患の予防に対して唯一認可が下りている手法は、受動免疫法である。IgGの防御的役割を示唆する初期のエビデンスは、フェレット(Prince, G. A., Ph.D. diss., University of California, Los Angeles, 1975)及びヒト(Lambrecht et al., (1976) J. Infect. Dis. 134, 211-217;及びGlezen et al. (1981) J. Pediatr. 98,708-715)における移行抗体(maternal antibldy)が関わる観察から得られた。Hemming et al.(Morell et al., eds., 1986, Clinical Use of Intravenous Immunoglobulins, Academic Press, London 285-294頁)は、新生児敗血症を有することが疑われる新生児における静注用免疫グロブリン(IVIG)の薬物動態が関わる研究のなかで、RSV感染の治療又は予防にRSV抗体が有用である可能性を認識した。彼らは、呼吸器分泌物からRSVが得られた1人の乳児が、IVIG注入後に急速に回復したことを指摘した。続くIVIGロットの分析から、著しく高いRSV中和抗体力価が明らかとなった。次に、この同じ研究者グループは、RSV中和抗体を濃縮した高度免疫血清又は免疫グロブリンの、RSV感染からコットンラット及び霊長類を防御する能力を調べた(Prince et al. (1985) Virus Res. 3, 193-206;Prince et al. (1990) J. Virol. 64, 3091-3092。これらの研究の結果から、予防的に投与されたRSV中和抗体がコットンラットにおいて気道でのRSV複製を阻害することが示唆された。治療的に投与されるとき、RSV抗体は、コットンラット及び非ヒト霊長類モデルの双方において肺でのウイルス複製を低減した。さらに、免疫血清又は免疫グロブリンの受動注入が、続いてRSVによりチャレンジしたコットンラットにおいて肺病理の亢進をもたらすことはなかった。
【0076】
RSV感染は、脊椎動物に中和抗体を提供することにより予防することができるため、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むワクチンは、脊椎動物に投与されると、生体内で中和抗体を誘導し得る。修飾又は変異RSV Fタンパク質は、有利にはRSV感染の予防及び/又は治療に使用される。従って、本開示の別の態様は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法に関する。前記方法は、対象(ヒト又は動物対象など)に修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む組成物の免疫学的有効量を投与する工程を含む。組成物の免疫学的有効量の投与が、修飾又は変異RSV Fタンパク質に存在するエピトープに特異的な免疫応答を誘発する。かかる免疫応答には、B細胞応答(例えば、中和抗体の産生)及び/又はT細胞応答(例えば、サイトカインの産生)が含まれ得る。好ましくは、修飾又は変異RSV Fタンパク質により誘発される免疫応答は、修飾又は変異RSV Fタンパク質に存在する少なくとも1つのコンホメーションエピトープに特異的なエレメントを含む。一実施形態において、免疫応答は、「ロリポップ」後融合活性状態に見られるRSV Fタンパク質に存在するエピトープに特異的である。RSV Fタンパク質及び組成物は、RSVとの接触後にウイルス性疾患を亢進させることなく、対象に投与されることができる。好ましくは、本明細書に開示される修飾又は変異RSV Fタンパク質及び好適に製剤化された免疫原性組成物は、RSV感染を軽減若しくは予防し、及び/又はRSV感染後の病理学的応答を軽減若しくは予防するTh1バイアス免疫応答を誘発する。
【0077】
一実施形態において、本発明のRSV Fタンパク質はミセル(例えばロゼット)の形態で見られる。本発明に従い得ることのできるミセルは、ロゼット様構造を有する免疫原性的に活性のFスパイクタンパク質凝集体からなる。ロゼットは、電子顕微鏡で見ることができる(Calder et al., 2000, Virology 271: 122-131)。好ましくは、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む本発明のミセルは、後融合活性状態を示す「ロリポップ」形態を呈する。一実施形態において、ミセルは宿主細胞における発現後に精製される。対象に投与されると、本発明のミセルは好ましくは中和抗体を誘導する。いくつかの実施形態において、ミセルはアジュバントと共に投与され得る。他の実施形態において、ミセルはアジュバントなしで投与され得る。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、RSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つから脊椎動物(例えばヒト)を防御するためのワクチン又は抗原製剤に製剤化することのできる、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSVウイルス様粒子(VLP)を包含する。本発明はまた、宿主細胞にトランスフェクトされるとRSVタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)を産生し得る、異なるRSVウイルス株に由来する野生型及び変異RSV遺伝子又はそれらの組み合わせを含むRSV VLP及びベクターにも関する。
【0079】
いくつかの実施形態において、RSVウイルス様粒子は、少なくとも1つのウイルスマトリクスタンパク質(例えばRSV Mタンパク質)をさらに含み得る。一実施形態において、Mタンパク質はRSVのヒト株に由来する。別の実施形態において、Mタンパク質はRSVのウシ株に由来する。他の実施形態において、マトリクスタンパク質は、インフルエンザウイルス株由来のM1タンパク質であってもよい。一実施形態において、インフルエンザウイルス株はトリインフルエンザ株である。好ましい実施形態において、トリインフルエンザ株はH5N1株A/Indonesia/5/05である。他の実施形態において、マトリクスタンパク質はニューカッスル病ウイルス(NDV)由来であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV Gタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、Gタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、Gタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV Gは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV SHタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、SHタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、SHタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV SHは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、VLPは、RSV Nタンパク質をさらに含み得る。一実施形態において、Nタンパク質は、HRSV A群由来であってもよい。別の実施形態において、Nタンパク質は、HRSV B群由来であってもよい。さらに別の実施形態において、RSV Nは、HRSV A群及び/又はB群に由来してもよい。
【0083】
さらなる実施形態において、本発明のVLPは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)などの1又は複数の異種免疫原を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、1又は複数のVLPにおける同じ、及び/又は異なる株由来の異なるRSV M、F、N、SH、及び/又はGタンパク質の組み合わせも含む。加えて、VLPは、免疫応答を亢進させるための1又は複数のさらなる分子を含むことができる。
【0085】
本発明の別の実施形態において、RSV VLPは、核酸、siRNA、マイクロRNA、化学療法剤、造影剤、及び/又は患者に送達される必要がある他の薬剤などの薬剤を含むことができる。
【0086】
本発明のVLPは、ワクチン及び免疫原性組成物の調製に有用である。VLPの一つの重要な特徴は、脊椎動物の免疫系が目的のタンパク質に対する免疫応答を誘導するように目的の表面タンパク質を発現する能力である。しかしながら、全てのタンパク質がVLPの表面上で発現することができるとは限らない。特定のタンパク質がVLPの表面上で発現しない、又は発現しにくい理由は多くあり得る。一つの理由は、タンパク質が宿主細胞の膜に特異的でないこと、又はタンパク質が膜貫通ドメインを有しないことである。例として、インフルエンザ赤血球凝集素のカルボキシル末端近傍の配列は、成熟インフルエンザのエンベロープを有するヌクレオカプシドの脂質二重層へのHAの取り込みに重要であり、かつインフルエンザマトリクスタンパク質M1とのHA三量体相互作用の組み立てに重要であり得る(Ali, et al., (2000) J. Virol. 74, 8709-19)。
【0087】
従って、本発明の一実施形態は、RSV由来の修飾又は変異Fタンパク質と、通常は細胞表面上で効率的に発現しない、又は通常のRSVタンパク質ではない少なくとも1つの免疫原とを含むキメラVLPを含む。一実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質は、目的の免疫原と融合し得る。別の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質は、異種ウイルス表面膜タンパク質、例えばMMTVエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールを介して免疫原と会合する。
【0088】
本発明の他のキメラVLPは、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを含む。異種感染病原体の例には、限定はされないが、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び/又は寄生体が含まれる。一実施形態において、別の感染病原体由来の免疫原は異種ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のタンパク質はエンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、別の異種感染病原体由来のタンパク質はVLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。一実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と共発現する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質は修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する。別の実施形態において、別の感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが修飾又は変異RSV Fタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、修飾又は変異RSV Fタンパク質と融合する別の感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。
【0089】
本発明はまた、本発明のVLP上又はVLP内で発現するタンパク質の変異体も包含する。変異体は、構成タンパク質のアミノ酸配列の改変を含み得る。タンパク質に関連して用語「変異体」は、参照配列に対して1又は複数のアミノ酸が改変されているアミノ酸配列を指す。変異体は「保存的な」変化を有することができ、ここでは置換されたアミノ酸が同様の構造的又は化学的特性を有し、例えばロイシンのイソロイシンとの置換である。或いは、変異体は「非保存的な」変化を有することもでき、例えばグリシンのトリプトファンとの置換である。類似した小さい変異としてはまた、アミノ酸欠失又は挿入、又はその双方が含まれ得る。生物学的又は免疫学的活性を失うことなくどのアミノ酸残基が置換、挿入、又は欠失され得るかを判断する際の指針は、当該技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えばDNASTARソフトウェアを使用して見出すことができる。
【0090】
天然変異体は、タンパク質における変異に起因して生じ得る。こうした変異は、感染病原体、例えばインフルエンザの個々の群内における抗原性のばらつきをもたらし得る。従って、例えばインフルエンザ株に感染した人は、当該ウイルスに対する抗体を作り出し、新しいウイルス株が現れると、古い株に対する抗体はもはや新しいウイルスを認識せず、再感染が起こり得る。本発明は、VLPを作製するための感染病原体由来のタンパク質の全ての抗原性の及び遺伝的なばらつきを包含する。
【0091】
クローニング、変異、細胞培養などの、本発明に適用可能な分子生物学的技法について記載している一般的なテキストには、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif.(Berger);Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 2000(「Sambrook」)及びCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.,との合弁事業(「Ausubel」)が含まれる。これらのテキストは、変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、並びに例えばRSVのF及び/又はG分子のクローニング及び変異導入等に関連する他の多くの関連トピックについて記載している。従って、本発明はまた、本発明のVLP上又はVLP内で発現するタンパク質の特性を改良又は改変するためのタンパク質工学及び組換えDNA技術の公知の方法の使用も包含する。様々なタイプの変異誘発を使用して、タンパク質分子をコードする変異核酸を産生及び/又は単離し、及び/又は本発明のVLP内又はVLP上のタンパク質をさらに修飾し/変異させることができる。これには、限定はされないが、部位特異的ランダム点変異誘発、相同組換え(DNAシャフリング)、ウラシル含有鋳型を使用する変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA変異誘発、ギャップドデュプレックスDNAを使用する変異誘発などが含まれる。さらなる好適な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用する変異誘発、制限選択及び制限精製、欠失変異誘発、全遺伝子合成による変異誘発、二本鎖切断修復などが含まれる。例えばキメラコンストラクトが関わる変異誘発もまた、本発明に含まれる。一実施形態において、変異誘発は、天然に存在する分子、又は改変された若しくは変異した天然に存在する分子の既知の情報、例えば、配列、配列比較、物理的特性、結晶構造などを指針とし得る。
【0092】
本発明は、実質的な生物活性を示し、例えば、本発明のVLP上又はVLP内で発現すると有効な抗体応答を誘発することが可能なタンパク質変異体をさらに含む。かかる変異体は、当該技術分野において公知の通則に従い活性に対してほとんど影響を有しないように選択される欠失、挿入、逆位、反復、及び置換を含む。
【0093】
タンパク質のクローニング方法は、当該技術分野において公知である。例えば、特定のRSVタンパク質をコードする遺伝子は、RSVウイルスに感染させた細胞から抽出したポリアデニル化mRNAからRT−PCRによって単離することができる。得られる産物遺伝子は、DNAインサートとしてベクターにクローニングすることができる。用語「ベクター」は、核酸を増殖させたり、及び/又は生物、細胞、若しくは細胞成分間で移動したりすることができる手段を指す。ベクターには、自己複製する、又は宿主細胞の染色体に組み込まれることのできるプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体などが含まれる。ベクターはまた、自己複製しないネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ株内のDNAとRNAとの双方から構成されるポリヌクレオチド、ポリ−リジン結合DNA又はRNA、ペプチド結合DNA又はRNA、リポソーム結合DNAなどであってもよい。全てではないが、多くの共通する実施形態では、本発明のベクターはプラスミド又はバクミドである。
【0094】
従って、本発明は、本発明のVLPの形成を誘導する細胞内で発現することのできる発現ベクターにクローニングされた、キメラ分子を含めたタンパク質をコードするヌクレオチドを含む。「発現ベクター」は、発現の促進、並びにそこに組み込まれた核酸の複製が可能なプラスミドなどのベクターである。典型的には、発現させる核酸は、プロモーター及び/又はエンハンサーに「作動可能に連結」されており、プロモーター及び/又はエンハンサーによる転写調節制御を受ける。一実施形態において、ヌクレオチドは修飾又は変異RSV Fタンパク質(上記に考察されるとおり)をコードする。別の実施形態において、ベクターは、M及び/又はG RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、M及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、M、G及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、BRSV Mタンパク質及び/又はN RSVタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ベクターは、BRSV M及び/又はGタンパク質、又はインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質をコードするヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態において、ヌクレオチドは、修飾又は変異RSV F及び/又はRSV Gタンパク質をインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質と共にコードする。別の実施形態において、発現ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じさせるが、しかしコードされるタンパク質の特性若しくは活性又はタンパク質の作られ方は改変させないような改変を含む変異を含み得る。ヌクレオチド変異体は、様々な理由(、例えば、特定の宿主に対してコドン発現を最適化するため)により産生され得る(ヒトmRNAにおけるコドンをSf9細胞などの昆虫細胞に好ましいものに変化させる。全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0118191号を参照のこと。
【0096】
加えて、ヌクレオチドを配列決定して、正しいコード領域がクローニングされたこと、及びいかなる不要な変異も含まないことを確実にすることができる。ヌクレオチドは、任意の細胞において発現させるため発現ベクター(例えばバキュロウイルス)にサブクローニングすることができる。上記は、RSVウイルスタンパク質をクローニングすることのできる方法の一例に過ぎない。当業者は、さらなる方法を利用することができ、それが可能であることを理解するであろう。
【0097】
本発明はまた、F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子を含めたRSV構造遺伝子をコードするRSVヌクレオチドを含むコンストラクト及び/又はベクターも提供する。ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターであってもよい。F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子を含めたRSV構造遺伝子を含むコンストラクト及び/又はベクターは、適切なプロモーターに作動可能に連結されなければならず、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(又は他のバキュロウイルス)、ファージλPLプロモーター、大腸菌(E. coli)lac、phoA及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、並びにレトロウイルスLTRのプロモーターなどが非限定的な例である。他の好適なプロモーターは、宿主細胞及び/又は所望の発現速度に応じて当業者に周知であろう。発現コンストラクトは、転写開始、終結のための部位、及び転写領域のなかに、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含み得る。コンストラクトによって発現する転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始端に翻訳開始コドンを、及び終端に適切に位置決めされた終止コドンを含み得る。
【0098】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。かかるマーカーには、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸還元酵素、G418又はネオマイシン耐性、並びに大腸菌(E. coli)及び他の細菌における培養のためのテトラサイクリン、カナマイシン又はアンピシリン耐性遺伝子が含まれる。ベクターのなかで好ましいのは、バキュロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鷄痘ウイルス、アライグマポックスウイルス、豚痘ウイルス等)、アデノウイルス(例えば、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルス、及びレトロウイルスなどのウイルスベクターである。本発明で使用することのできる他のベクターは、pQE70、pQE60及びpQE-9、pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5を含む、細菌において使用されるベクターを含む。好ましい真核生物ベクターのなかには、pFastBac1 pWINEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLがある。他の好適なベクターは当業者に容易に明らかであろう。一実施形態において、修飾又は変異RSV F遺伝子、及びM、G、N、SH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子の遺伝子を含めたRSV遺伝子をコードするヌクレオチドを含むベクターは、pFastBacである。
【0099】
上述の組換えコンストラクトを使用して、修飾又は変異RSV Fタンパク質及び少なくとも1つの免疫原を含めたRSVタンパク質をトランスフェクトし、感染させ、又は形質転換させて、それを発現させることが可能となり得る。一実施形態において、組換えコンストラクトは、真核細胞及び/又は原核細胞中に、修飾又は変異RSV F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意の分子を含む。このように、本発明は、修飾又は変異RSV F;及び限定はされないが、RSV G、N、及びSH、又はその一部分などの少なくとも1つの免疫原、及び/又は上記に記載される任意の分子を含めたRSV構造遺伝子をコードする核酸を含むあるベクター(又は複数のベクター)であって、VLPの形成を可能にする条件下で宿主細胞においてRSV F、G、N、M、又はSH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意の分子を含めた遺伝子の発現を可能にするベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0100】
真核宿主細胞のなかには、酵母、昆虫、鳥類、植物、C.エレガンス(C. elegans)(すなわち線虫)及び哺乳動物宿主細胞がある。昆虫細胞の非限定的な例は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf)細胞、例えばSf9、Sf21、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)細胞、例えばHigh Five細胞、及びショウジョウバエ属(Drosophila)S2細胞である。真菌(酵母を含む)宿主細胞の例は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)(K.ラクチス(K. lactis))、C.アルビカンス(C. albicans)及びC.グラブラタ(C. glabrata)を含むカンジダ属(Candida)の種、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(S.ポンベ(S. pombe))、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、及びヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)である。哺乳動物細胞の例は、COS細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウスL細胞、LNCaP細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、及びアフリカミドリザル細胞、CV1細胞、ヒーラー細胞、MDCK細胞、ベロ及びHep−2細胞である。アフリカツメガエル卵母細胞、又は両生類起源の他の細胞もまた、用いられ得る。原核宿主細胞の例としては、細菌細胞、例えば、大腸菌(E. coli)、B.スブチリス(B. subtilis)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)及びマイコバクテリアが含まれる。
【0101】
ベクター、例えば、修飾又は変異RSV Fタンパク質;及び限定はされないが、RSV G、N、又はSH又はその一部分を含めた少なくとも1つの免疫原、及び/又は上記に記載される任意のキメラ分子のポリヌクレオチドを含むベクターは、当該技術分野において周知の方法により宿主細胞にトランスフェクトされ得る。例えば、真核細胞への核酸の導入は、リン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、及びポリアミントランスフェクション試薬を用いるトランスフェクションによることができる。一実施形態において、ベクターは組換えバキュロウイルスである。別の実施形態において、組換えバキュロウイルスは真核細胞にトランスフェクトされる。好ましい実施形態において、細胞は昆虫細胞である。別の実施形態において、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0102】
本発明はまた、VLP産生の効率を高め得るコンストラクト及び方法も提供する。例えば、RSV F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子に対してリーダー配列を付加すると、細胞内でのタンパク質輸送の効率を向上させることができる。例えば、異種シグナル配列を、F、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子と融合させることができる。一実施形態において、シグナル配列は、昆虫細胞の遺伝子から誘導し、M、F、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子と融合させることができる。別の実施形態において、シグナルペプチドはキチナーゼシグナル配列であり、これはバキュロウイルス発現系で効率的に機能する。
【0103】
VLP産生の効率を高める別の方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、N、SH又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含めたRSVをコードするヌクレオチドを、特定の細胞型に対してコドン最適化することである。Sf9細胞における発現についてのコドン最適化核酸の例については、配列番号3、5、7、9、13、17、19、及び25を参照のこと。
【0104】
本発明はまた、VLPを産生する方法も提供し、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質、及び限定はされないが、RSV M、G、N、SH、又はその一部分を含めた少なくとも1つのさらなるタンパク質、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含むRSV遺伝子を、VLPの形成を可能にする条件下で発現させることを含む。選択された発現系及び宿主細胞に応じて、VLPは、組換えタンパク質が発現してVLPが形成される条件下で発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を成長させることにより産生される。一実施形態において、本発明は、VLPを産生する方法であって、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質をコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトする工程、及びVLPの形成を可能にする条件下で修飾又は変異RSV Fタンパク質を発現させる工程を含む方法を含む。別の実施形態において、真核細胞は、酵母、昆虫、両生類、鳥類又は哺乳動物細胞からなる群から選択される。適切な成長条件の選択は、当該技術分野の技術又は当該技術分野の通常の技術の当業者の範囲内である。
【0105】
本発明のVLPを産生するように操作された細胞を成長させる方法には、限定はされないが、バッチ、フェドバッチ、連続及び灌流細胞培養技法が含まれる。細胞培養とは、細胞が増殖し、且つ精製及び単離されるタンパク質(例えば組換えタンパク質)を発現するバイオリアクター(発酵チャンバ)内での細胞の成長及び増殖を意味する。典型的には、細胞培養は、バイオリアクターにおける無菌の、制御された温度及び気圧条件下で実施される。バイオリアクターは細胞を培養するために使用されるチャンバであり、温度、気圧、撹拌及び/又はpHなどの環境条件を監視することができるものである。一実施形態において、バイオリアクターはステンレス鋼チャンバである。別の実施形態において、バイオリアクターは予め滅菌されたプラスチック袋(例えばCellbag(登録商標)、Wave Biotech、Bridgewater、NJ)である。他の実施形態において、予め滅菌されたプラスチック袋は、約50L〜1000Lの袋である。
【0106】
次にVLPは、勾配遠心分離、例えば、塩化セシウム、スクロース及びイオジキサノール、並びに、例えばイオン交換及びゲルろ過クロマトグラフィーを含めた標準的な精製技法により、その完全性を保つ方法を用いて単離される。
【0107】
以下は、本発明のVLPを作製し、単離し、及び精製することができる方法の例である。通常、VLPは、細胞が細胞培養(上記を参照)で成長するとVLPを作り出すように操作された組換え細胞系から産生される。当業者は、本発明のVLPの作製及び精製に利用することのできるさらなる方法があり、従って本発明は記載される方法に限定されないことを理解するであろう。
【0108】
本発明のVLPの産生は、Sf9細胞(非感染)を振盪フラスコに播種し、細胞の成長及び増加に伴い細胞を拡大及びスケールアップする(例えば125mlフラスコから50Lのウェーブバッグ(Wave bag)に)ことから開始され得る。細胞を成長させるために使用される培地は、適切な細胞系に対して配合される(好ましくは無血清培地、例えば昆虫培地ExCe11-420、JRH)。次に、細胞を最も効率的な感染多重度(例えば、細胞当たり約1〜約3プラーク形成単位)で組換えバキュロウイルスに感染させる。感染が起こると、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、N、SH、又はその一部分、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子がウイルスゲノムから発現し、VLP内に自己組織化し、感染の約24〜72時間後に細胞から分泌される。通常、感染は、細胞が成長の対数期中期にあるとき最も効率的であり(4〜8×106細胞/ml)、少なくとも約90%が生存可能である。
【0109】
本発明のVLPは、感染の約48〜96時間後、細胞培養培地中のVLPのレベルがほぼ最大になったときに、しかし広範な細胞溶解の前に、回収することができる。回収時点でのSf9細胞密度及び生存率は、色素排除アッセイにより示されるとき約0.5×106細胞/ml〜約1.5×106細胞/mlで、少なくとも20%の生存率であり得る。次に、培地を取り除き、清澄化する。培地にNaClを約0.4〜約1.0M、好ましくは約0.5Mの濃度まで添加して、VLPの凝集を回避することができる。本発明のVLPを含む細胞培養培地からの細胞及び細胞デブリの除去は、使い捨ての予め滅菌された中空糸0.5又は1.00μmフィルタカートリッジ又は同様のデバイスによるタンジェンシャルフローろ過(TFF)により達成することができる。
【0110】
次に、清澄化した培養培地中のVLPを、使い捨ての予め滅菌された500,000分子量カットオフ中空糸カートリッジを使用することによる限外ろ過により濃縮することができる。濃縮したVLPは、0.5MのNaClを含有する10容量pH7.0〜8.0のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で透析ろ過し、残留培地成分を除去することができる。
【0111】
濃縮し、透析ろ過したVLPは、0.5MのNaClを含むpH7.2のPBS緩衝液中の20%〜60%不連続スクロース勾配で、約4℃〜約10℃において6,500×gで18時間遠心することによりさらに精製することができる。通常、VLPは、約30%〜約40%スクロースに、又は界面に(20%及び60%ステップ勾配において)特徴的な目に見えるバンドを形成し、これを勾配から回収して保存することができる。この生成物は、精製プロセスにおける次の工程のため、調製物中に200mMのNaClを含むまで希釈することができる。この生成物はVLPを含有するとともに、無傷のバキュロウイルス粒子を含有し得る。
【0112】
VLPのさらなる精製は、陰イオン交換クロマトグラフィー、又は44%等密度スクロースクッション遠心分離により実現することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、スクロース勾配(上記を参照)からの試料が、陰イオンを含む媒質(例えばMatrix Fractogel EMD TMAE)が入ったカラムに負荷され、VLPを他の混入物(例えばバキュロウイルス及びDNA/RNA)と分離することができる塩勾配(約0.2M〜約1.0MのNaCl)を介して溶出される。スクロースクッション方法では、VLPを含む試料が44%スクロースクッションに添加され、30,000gで約18時間遠心される。VLPは44%スクロースの最上部にバンドを形成し、一方、バキュロウイルスは底に沈殿し、及び他の夾雑タンパク質は最上部の0%スクロース層に留まる。VLPピーク又はバンドは回収される。
【0113】
必要であれば、無傷のバキュロウイルスは不活性化されてもよい。不活性化は、化学的な方法、例えばホルマリン又はβ−プロピオラクトン(BPL)により達成することができる。無傷のバキュロウイルスの除去及び/又は不活性化はまた、大部分は、上記に例示されるとおりの当該技術分野において公知の選択的沈殿及びクロマトグラフ方法を用いることにより達成することができる。不活性化の方法は、VLPを含む試料を0.2%のBPL中で3時間、約25℃〜約27℃でインキュベートすることを含む。バキュロウイルスはまた、VLPを含む試料を0.05%BPLにおいて4℃で3日間、次に37℃で1時間インキュベートすることにより不活性化することもできる。
【0114】
不活性化/除去工程後、VLPを含む生成物は別の透析ろ過工程に通して不活性化工程からの任意の試薬及び/又は任意の残留スクロースを除去し、VLPを所望の緩衝液(例えばPBS)中に入れることができる。VLPを含む溶液は当該技術分野において公知の方法により滅菌し(例えば滅菌ろ過)、冷蔵庫又は冷凍庫で保管することができる。
【0115】
上記の技法は、様々な規模にわたり実践することができる。例えば、T型フラスコ、振盪フラスコ、スピナーボトル、工業規模のバイオリアクターに至るまでである。バイオリアクターは、ステンレス鋼タンク又は予め滅菌されたプラスチック袋(例えば、Wave Biotech、Bridgewater、NJにより販売されるシステム)のいずれかを含み得る。当業者は、こうした目的に最も望ましいものが何か、分かるであろう。
【0116】
バキュロウイルス発現ベクターの展開及び産生並びに細胞の組換えバキュロウイルス感染による組換えRSV VLPの産生は、先述のとおり昆虫細胞、例えばSf9昆虫細胞で達成することができる。一実施形態において、細胞は、RSV VLPを産生するように操作された組換えバキュロウイルスに感染したSF9である。
【0117】
医薬製剤又はワクチン製剤及び投与
本明細書で有用な医薬組成物は、任意の好適な希釈剤又は賦形剤を含めた、それ自体が組成物を投与される脊椎動物に有害な免疫応答の生成を誘導することはない任意の薬学的作用物質を含み、且つ過度の毒性なしに投与され得る薬学的に許容可能な担体と、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPとを含有する。本明細書において、用語「薬学的に許容可能な」とは、連邦政府若しくは州政府の規制当局により承認されているか、又はU.S. Pharmacopia、European Pharmacopia若しくはその他の、哺乳動物、及びより詳細にはヒトにおける使用についての一般的に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。これらの組成物は、脊椎動物において防御免疫応答を誘導するためのワクチン及び/又は抗原組成物として有用であり得る。
【0118】
本発明は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質、及び限定はされないが、RSV M、G、N、SH、又はその一部分を含めた少なくとも1つのさらなるタンパク質、及び/又は上記に記載される任意のキメラ又は異種分子を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含する。一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのさらなる免疫原とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのRSV Mタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのBRSV Mタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのインフルエンザM1タンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、少なくとも1つの修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのトリインフルエンザM1タンパク質とを含むVLPを含む。
【0119】
別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Gタンパク質を含めたRSV Gタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Nタンパク質を含めたRSV Nタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV SHタンパク質を含めたRSV SHタンパク質をさらに含むVLPを含む。
【0120】
別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、修飾又は変異RSV Fタンパク質及び/又はRSV由来のG、H、又はSHタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0121】
本発明はまた、上記に記載したとおりの修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物も包含する。
【0122】
一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、少なくとも1つのさらなるタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV Gタンパク質を含めたRSV Gタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV Nタンパク質を含めたRSV Nタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、限定はされないが、HRSV、BRSV又はトリRSV SHタンパク質を含めたRSV SHタンパク質をさらに含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、BRSV Mタンパク質とHRSV A群由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、BRSV Mタンパク質とHRSV B群由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを含む。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでMタンパク質はインフルエンザHAタンパク質と融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、RSV由来のキメラF及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでキメラインフルエンザHAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV Mと、RSV由来のキメラF及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPなどのキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物を包含し、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0123】
本発明はまた、少なくとも1つのRSVタンパク質を含むキメラVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物も包含する。一実施形態において、薬学的に許容可能なワクチン組成物は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体又は罹患細胞由来の少なくとも1つの免疫原とを含むVLPを含む。別の実施形態において、異種感染病原体由来の免疫原はウイルスタンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のウイルスタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、異種感染病原体由来のウイルスタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。
【0124】
本発明はまた、ヒト対象などの脊椎動物を免疫するためのキットであって、少なくとも1つのRSVタンパク質を含むVLPを含むキットも包含する。一実施形態において、キットは、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む。一実施形態において、キットは、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、キットは、RSV Gタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでMタンパク質はBRSV Mと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、RSV F及び/又はGタンパク質と、異種感染病原体由来の免疫原とを含むVLPを含むキットを包含する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでHAタンパク質は、RSV F又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、本発明は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを含むキットを包含し、ここでHAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0125】
一実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。別の実施形態において、本発明は、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、上記に記載したとおりの修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を含む免疫原性製剤を含む。
【0126】
本発明の免疫原性製剤は、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。薬学的に許容可能な担体には、限定はされないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液、及びそれらの組み合わせが含まれる。薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び他の賦形剤についての十分な議論は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co. N.J. 最新版)に示されている。製剤は、投与様式に適合していなければならない。好ましい実施形態において、製剤はヒトへの投与に好適であり、好ましくは無菌で、非粒子状で、及び/又は非発熱性である。
【0127】
組成物はまた、必要であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含有することができる。組成物は、再構成するのに好適な凍結乾燥粉末などの固形形態、液体溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤、又は粉末であってもよい。経口製剤は、医薬品級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含むことができる。
【0128】
本発明はまた、本発明のワクチン製剤の成分の1又は複数で充填された1又は複数の容器を含む医薬パック又はキットも提供する。好ましい実施形態において、キットは2つの容器を含み、一方は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含み、他方はアジュバントを含む。かかる1つ若しくは複数の容器は、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定される形式の注意書きを伴ってもよく、この注意書きは、機関によるヒト投与に対する製造、使用又は販売の許可を反映するものである。
【0129】
本発明はまた、製剤が、組成物の分量を示すアンプル又はサシェットなどの気密密閉容器にパッケージされることも提供する。一実施形態において、組成物は液体として、別の実施形態では乾燥滅菌された凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として気密密閉容器に供給され、例えば水又は生理食塩水により、対象への投与に適切な濃度に再構成することができる。
【0130】
代替的実施形態において、組成物は、組成物の分量及び濃度を示す気密密閉容器に液体形態で供給される。好ましくは、組成物の液体形態は、気密密閉容器に少なくとも約50μg/ml、より好ましくは少なくとも約100μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも500μg/ml、又は少なくとも1μg/ml供給される。
【0131】
例として、本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むキメラRSV VLPは、各々が1又は複数のRSV株に対する応答である免疫応答を刺激するのに十分な有効量又は有効分量(上記に定義されるとおり)で投与される。本発明の修飾又は変異RSV Fタンパク質、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPの投与が、RSVに対する免疫を誘発する。典型的には、用量は、例えば、年齢、健康状態、体重、性別、食習慣、投与時間、及び他の臨床的要因に基づき、この範囲内で調整することができる。予防ワクチン製剤は、例えば、皮下又は筋肉内注射により針及びシリンジ、又は無針注射デバイスを使用して全身投与される。或いは、ワクチン製剤は、点鼻液、大粒子エアロゾル(約10ミクロンより大きい)、又は上気道への噴霧のいずれかにより鼻腔内投与される。上記の送達経路のいずれも免疫応答を生じさせるが、鼻腔内投与は、RSV及びインフルエンザを含めた多くのウイルスの侵入部位における粘膜免疫の誘発というさらなる利益をもたらす。
【0132】
従って、本発明はまた、哺乳動物に対して感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導するワクチン又は抗原組成物を製剤化する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの有効用量を製剤に添加する工程を含む方法も含む。一実施形態において、感染はRSV感染である。
【0133】
単回用量による免疫の刺激は可能であるが、同じ、又は異なる経路によりさらなる投薬量を投与して所望の効果を実現することができる。例えば新生児及び乳児では、十分なレベルの免疫を誘発するために複数回投与が必要となり得る。投与は、必要に応じて小児期全体を通じて間隔を置きながら継続することで、感染、例えばRSV感染に対する十分なレベルの防御を維持することができる。同様に、特に反復される又は重篤な感染に罹りやすい成人、例えば、ヘルスケア従事者、デイケア従事者、低年齢小児の家族構成員、高齢者、及び心肺機能不全を有する個人などは、防御免疫応答を確立し、及び/又は維持するために複数回の免疫を必要とし得る。誘導される免疫のレベルは、例えば分泌液中及び血清中の中和抗体量を計測することによりモニタし、及び所望の防御レベルを誘発及び維持する必要に応じて投薬量を調整し、又はワクチン接種を反復することができる。
【0134】
修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPを含む組成物(例えばワクチン及び/又は抗原製剤)の投与方法には、限定はされないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば、鼻腔内及び経口若しくは経肺経路又は坐薬により)が含まれる。特定の実施形態において、本発明の組成物は、筋肉内に、静脈内に、皮下に、経皮的に又は皮内に投与される。組成物は、任意の従来の経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、結腸、結膜、鼻咽腔、中咽頭、腟、尿道、膀胱及び腸粘膜等)を通じた吸収により投与されてもよく、及び他の生物学的に活性な薬剤と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の鼻腔内又は他の粘膜投与経路は、他の投与経路より実質的に高い抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。別の実施形態において、本発明の組成物の鼻腔内又は他の粘膜投与経路は、他のRSV株に対する交差防御を誘導し得る抗体又は他の免疫応答を誘導し得る。投与は全身的であっても、又は局所的であってもよい。
【0135】
さらに別の実施形態において、ワクチン及び/又は免疫原性製剤は、免疫部位に免疫応答を誘発するため、粘膜組織を標的とするような方法で投与される。例えば、特定の粘膜を標的化する特性を有するアジュバントを含有する組成物の経口投与を用いることにより、消化管関連リンパ組織(GALT)などの粘膜組織を免疫化の標的とすることができる。鼻咽頭リンパ組織(NALT)及び気管支関連リンパ組織(BALT)などのさらなる粘膜組織もまた、標的化することができる。
【0136】
本発明のワクチン及び/又は免疫原性製剤はまた、ある投薬スケジュールで、例えば、ワクチン組成物の初回投与と、それに続く追加免疫投与で投与されてもよい。詳細な実施形態において、組成物の第2の用量は、初回投与後2週間から1年間まで、好ましくは約1、約2、約3、約4、約5ヶ月から約6ヶ月までのどこかで投与される。加えて、第3の用量が、第2の用量後に、且つ初回投与後約3ヶ月から約2年間、又はさらにより長く、好ましくは約4、約5、又は約6ヶ月、又は約7ヶ月から約1年間で投与されてもよい。第3の用量は、場合により、第2の用量後に対象の血清及び/又は尿中の、又は粘膜分泌物中の特定の免疫グロブリンが検出されない、又は低い検出レベルであるときに投与されてもよい。好ましい実施形態において、第2の用量は第1の投与の約1ヶ月後に投与され、第3の用量は第1の投与の約6ヶ月後に投与される。別の実施形態において、第2の用量は第1の投与の約6ヶ月後に投与される。別の実施形態において、本発明の組成物は、併用療法の一部として投与することができる。例えば、本発明の組成物は、他の免疫原性組成物、抗ウイルス薬及び/又は抗生物質と共に製剤化することができる。
【0137】
医薬組成物の投薬量は、例えば、初めに予防的又は治療的免疫応答を誘発するのに有効な用量を、例えば、ウイルス特異的免疫グロブリンの血清力価を計測することによるか、又は血清試料、若しくは尿試料中、又は粘膜分泌物中の抗体の阻害率を計測することによって特定することにより、当業者が容易に決定することができる。投薬量は動物試験から決定することができる。ワクチンの効力を調べるために使用される動物の非限定的なリストには、モルモット、ハムスター、フェレット、チンチラ、マウス及びコットンラットが含まれる。ほとんどの動物は感染病原体にとって天然宿主ではないが、しかし疾患の様々な面の研究においてなお機能することができる。例えば、上記の動物のいずれも、ワクチン候補、例えば、本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPを投与することにより、誘導された免疫応答を部分的に特徴付け、及び/又は任意の中和抗体が産生されたかどうかを決定することができる。例えば、マウスはサイズが小さいため多くの研究はマウスモデルで行われており、その費用の低さから、研究者は研究を大規模で行うことが可能である。
【0138】
加えて、当業者がヒト臨床試験を実施してヒトに好ましい有効用量を決定することができる。かかる臨床試験はルーチンであり、当該技術分野において周知である。用いられる正確な用量はまた、投与経路に依存し得る。有効用量は、インビトロ又は動物試験系から得られた用量反応曲線から推定してもよい。
【0139】
同様に当該技術分野において周知のとおり、特定の組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる非特異的な免疫応答刺激剤を使用することにより亢進させることができる。アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の全般的な増加を促進するために実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。長年、免疫プロトコルでは応答を刺激するためアジュバントが使用されており、そのため、アジュバントは当業者に周知である。いくつかのアジュバントは、抗原の提示のされ方に影響を与える。例えば、ミョウバンによりタンパク質抗原を沈殿させると、免疫応答は増加する。抗原の乳化もまた、抗原提示の持続期間を延ばす。全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用されるVogel et al., 「A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients (2nd Edition)」に記載される任意のアジュバントを含むことが、本発明の範囲内に想定される。
【0140】
例示的に、アジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死滅させた結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する非特異的な免疫応答刺激剤)、不完全フロイントアジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。他のアジュバントには、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、MDP化合物、例えば、thur−MDP及びnor−MDP、CGP(MTP−PE)、リピドA、及びモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。細菌から抽出された3つの成分であるMPLと、トレハロースジミコレート(TDM)と、細胞壁骨格(CWS)とを2%スクアレン/Tween 80乳剤中に含有するRIBIもまた企図される。MF-59、Novasomes(登録商標)、MHC抗原もまた使用され得る。
【0141】
本発明の一実施形態において、アジュバントは、水層により分離された、実質的に球状のシェルの形態で配置された約2〜10の二重層が、脂質二重層がない大きい無定形の中心腔を取り囲む、少重膜(paucilamellar)脂質小胞である。少重膜脂質小胞は、非特異的刺激剤として、抗原用の担体として、さらなるアジュバントの担体として、及びそれらの組み合わせとして、いくつかの様式で免疫応答を刺激するよう働き得る。例えば、抗原が小胞に対して細胞外に留まるように抗原を予め形成された小胞と混ぜ合わせることによってワクチンが調製されるとき、少重膜脂質小胞は非特異的免疫刺激剤として働く。抗原を小胞の中心腔内に封入することにより、小胞は免疫刺激剤及び抗原用担体の双方として働く。別の実施形態において、小胞は主に非リン脂質小胞から構成される。他の実施形態において、小胞はNovasomes(登録商標)である。Novasomes(登録商標)は、約100nm〜約500nmの範囲の少重膜非リン脂質小胞である。これは、Brij 72、コレステロール、オレイン酸及びスクアレンを含む。Novasomesは、インフルエンザ抗原に有効なアジュバントであることが示されている(全ての目的のために全体として参照により本明細書に援用される米国特許第5,629,021号、同第6,387,373号、及び同第4,911,928号を参照のこと)。
【0142】
本発明の組成物はまた、「免疫刺激剤」と共に製剤化することもできる。これらは、免疫系の応答を増加させる生体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)である。免疫刺激剤には、限定はされないが、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等の、免疫刺激、免疫強化、及び炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン及びケモカインが含まれる。免疫刺激分子は、本発明の組成物と同じ製剤で投与することができ、又は別個に投与することもできる。タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを投与して、免疫刺激効果をもたらすことができる。従って一実施形態において、本発明は、アジュバント及び/又は免疫刺激剤を含む抗原製剤及びワクチン製剤を含む。
【0143】
免疫応答の刺激方法
本発明の修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又はVLPは、感染病原体に対する免疫又は実質的な免疫を付与する免疫応答を刺激する組成物の調製に有用である。粘膜免疫及び細胞性免疫の双方が、感染病原体及び疾患に対する免疫に寄与し得る。上気道において局所的に分泌される抗体は、自然感染に対する抵抗性の主因子である。分泌性免疫グロブリンA(sIgA)が上気道の防御に関わり、及び血清IgGが下気道の防御に関わる。感染によって誘導された免疫応答は、同じウイルス又は抗原的に類似したウイルス株による再感染を防御する。例えば、RSVは頻繁な予測不可能な変化を受ける;従って、自然感染後、宿主の免疫により提供される防御の有効期間は、コミュニティに循環するウイルスの新株に対しては数年間のみ有効であり得る。
【0144】
従って、本発明は、対象における感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を包含する。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と少なくとも1つのさらなるタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Mタンパク質、例えばBRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Nタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Gタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV SHタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV A群及び/又はB群由来のF及び/又はGタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質又はMMTVエンベロープタンパク質、例えばインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA及び/又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質又はMMTVエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザウイルスに由来するHA又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、対象は哺乳動物である。別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。別の実施形態において、RSV VLPは、アジュバント又は免疫刺激剤と共に製剤化される。
【0145】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセルの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法であって、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは、修飾又は変異RSV Fタンパク質、M、G、SH、及び/又はNタンパク質を含む。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導する方法は、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでVLPは、BRSV M(キメラMを含む)と、RSV F、G、及び/又はNタンパク質とから本質的になる。VLPは、さらなるRSVタンパク質及び/又はタンパク質夾雑物を無視できる濃度で含み得る。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導する方法は、RSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでVLPは、BRSV M(キメラMを含む)、RSV G及び/又はFからなる。別の実施形態において、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する方法は、RSVタンパク質を含むRSV VLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含み、ここでRSVタンパク質は、BRSV M(キメラMを含む)、キメラF、G、及び/又はNタンパク質を含めたF、G、及び/又はNタンパク質からなる。これらのVLPは、BRSV M(キメラMを含む)、RSV F、G、及び/又はNタンパク質を含有し、細胞タンパク質、バキュロウイルスタンパク質、脂質、炭水化物等のさらなる細胞構成要素を含有し得るが、さらなるRSVタンパク質(BRSV M(キメラMを含む)、BRSV/RSV F、G、及び/又はNタンパク質の断片以外のもの)は含有しない。別の実施形態において、対象は脊椎動物である。一実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。別の実施形態において、前記方法は、製剤を1回用量で投与することによりRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、製剤を複数回用量で投与することによりRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導する工程を含む。
【0146】
本発明はまた、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む、感染病原体によって引き起こされた対象における感染又はその症状の少なくとも1つに対する免疫を誘導することを含む。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、異種感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。一実施形態において、前記方法は、修飾又は変異RSV Fタンパク質と、同じ又は異種の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、異種感染病原体由来のタンパク質は、ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、BRSV Mタンパク質、RSV F、G及び/又はNタンパク質などのRSVタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、RSVタンパク質と融合する感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、RSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、RSVタンパク質、又はその一部分は、RSV F、G、N及び/又はPに由来する。別の実施形態において、キメラVLPは、RSV由来のN及び/又はPタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、キメラVLPは、同じ及び/又は異種の感染病原体由来の2つ以上のタンパク質を含む。別の実施形態において、キメラVLPは2つ以上の感染病原体タンパク質を含み、それにより多価VLPを作り出す。
【0147】
本発明の組成物は、脊椎動物(例えばヒト)において、脊椎動物に投与されると実質的な免疫を誘導することができる。実質的な免疫は、脊椎動物における感染を防御若しくは改善し、又は感染の症状を少なくとも軽減する本発明の組成物に対する免疫応答によってもたらされる。あるケースでは、脊椎動物を感染させる場合、感染は無症状であり得る。応答は完全防御応答ではないこともあり得る。その場合、脊椎動物を感染病原体に感染させる場合、脊椎動物は、非免疫脊椎動物と比較して症状の軽減又は症状の持続時間の短縮を経験し得る。
【0148】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSVウイルス感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に、RSVに対するワクチン接種をする方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの防御誘導量を哺乳動物に投与する工程を含む方法を含む。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質をさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、前記方法は、RSV Gタンパク質、例えばHRSV Gタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV A群由来のNタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、HRSV B群由来のNタンパク質を含むVLPを投与する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のキメラMタンパク質と、RSV由来のF及び/又はGタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、Mタンパク質の膜貫通及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、インフルエンザHA及び/又はNAタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでF及び/又はGタンパク質は、HAタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。別の実施形態において、前記方法は、BRSV由来のMタンパク質と、キメラRSV F及び/又はGタンパク質と、場合によりインフルエンザHA及び/又はNAタンパク質とを含むVLPを投与する工程を含み、ここでHA及び/又はNAタンパク質は、RSV F及び/又はGタンパク質の膜貫通ドメイン及び細胞質テールと融合する。
【0149】
本発明はまた、感染病原体によって引き起こされた対象における感染、又はその疾患症状の少なくとも1つに対する実質的な免疫を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法も包含する。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質などのRSV Mタンパク質と、別の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とをさらに含むVLPを投与する工程を含む。一実施形態において、前記方法は、BRSV Mタンパク質と、同じ又は異種の感染病原体由来の少なくとも1つのタンパク質とをさらに含むVLPを投与する工程を含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、ウイルスタンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、エンベロープ関連タンパク質である。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、VLPの表面上で発現する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、脊椎動物において防御免疫応答を生じさせ得るエピトープを含む。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、RSV Mタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、BRSV Mタンパク質と会合することができる。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質は、RSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、RSVタンパク質と融合する。別の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質の一部分のみが、RSVタンパク質の一部分と融合する。別の実施形態において、RSVタンパク質と融合する感染病原体由来のタンパク質の一部分は、VLPの表面上で発現する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、RSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、感染病原体由来のタンパク質と融合するRSVタンパク質、又はその一部分は、BRSV Mタンパク質と会合する。他の実施形態において、RSVタンパク質、又はその一部分は、RSV F、G、N及び/又はPに由来する。別の実施形態において、VLPは、RSV由来のN及び/又はPタンパク質をさらに含む。別の実施形態において、VLPは、感染病原体由来の2つ以上のタンパク質を含む。別の実施形態において、VLPは2つ以上の感染病原体タンパク質を含み、それにより多価VLPを作り出す。
【0150】
別の実施形態において、本発明は、対象における感染又はその少なくとも1つの症状に対する防御抗体応答を誘導する方法であって、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質、修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むRSV Fミセル、又は上記に記載したとおりの修飾若しくは変異RSV Fタンパク質を含むVLPの少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。
【0151】
本明細書において、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的に又は部分的にコードされる1又は複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、それが次に、それぞれ、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対が1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)とを有する。各鎖のN末端が、主に抗原認識に関与する約100〜110個又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化によって産生される多数の十分に特徴付けられた断片として、存在する。
【0152】
一実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質の少なくとも1つの有効用量を投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む少なくとも1つの有効用量RSV Fミセルを投与する工程を含む方法を含む。さらに別の実施形態において、本発明は、対象におけるRSV感染又はその疾患症状の少なくとも1つに対する防御細胞性応答を誘導する方法であって、少なくとも1つの有効用量VLPを投与する工程を含む方法を含み、ここでVLPは、上記に記載したとおりの修飾又は変異RSV Fタンパク質を含む。細胞媒介免疫はまた、RSV感染からの回復において役割を果たし、RSV関連合併症を予防し得る。RSV特異的細胞リンパ球が、感染した対象の血液及び下気道分泌物中に検出されている。RSV感染細胞の細胞溶解は、RSV特異的抗体及び相補体と協働してCTLにより媒介される。一次的な細胞傷害性応答は、感染した又はワクチン接種された個人において6〜14日後の血液中に検出可能であり、21日目までに消失する(Ennis et al., 1981)。細胞媒介免疫はまた、RSV感染からの回復において役割を果たすことができ、RSV関連合併症を予防し得る。RSV特異的細胞リンパ球が、感染した対象の血液及び下気道分泌物中で検出されている。
【0153】
上述されるとおり、本発明の免疫原性組成物は、対象におけるRSV感染の少なくとも1つの症状を予防又は軽減する。RSVの症状は当該技術分野において周知である。それらには、鼻漏、咽頭痛、頭痛、嗄声、咳、喀痰、発熱、ラ音、喘鳴音、及び呼吸困難が含まれる。従って、本発明の方法は、RSV感染に関連する少なくとも1つの症状の予防又は軽減を含む。症状の軽減は、主観的又は客観的に、例えば、対象による自己評価、臨床医の評価によるか、又は、例えば、クオリティ・オブ・ライフ評価、RSV感染若しくはさらなる症状の進行遅延、RSV症状の重症度の軽減又は好適なアッセイ(例えば抗体価及び/又はT細胞活性化アッセイ)を含めた適切なアッセイ又は計測(例えば体温)を行うことにより判断されてもよい。客観的な評価は、動物評価及びヒト評価の双方を含む。
【0154】
限定として解釈されてはならない以下の例により、本発明をさらに説明する。本願全体を通じて引用される全ての参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容、並びに図及び配列表は、全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0155】
実施例1
組換えバクミドの生成、昆虫細胞のトランスフェクションによる組換えウイルスストックの作製、プラーク精製、及び一次ウイルスストックによる昆虫細胞の感染。
組換えウイルスを構築するため、目的のウイルス遺伝子をSf9昆虫細胞発現に対してコドン最適化し、pFastBac(商標)ベクターにクローニングした。
【0156】
所望のコンストラクトを確認して精製した後、各コンストラクトにつきMAX Efficiency(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞の1本のバイアルを氷上で解凍した。約1ng(5μl)の所望のpFastBac(商標)コンストラクトプラスミドDNAを細胞に添加し、軽く混合した。細胞を氷上で30分間インキュベートした。それに続き、細胞を42℃で45秒間、振盪なしに熱ショック処理した。次に、試験管を氷に移して2分間冷却した。続いて900μlの室温S.O.C.培地を各試験管に添加した。試験管を37℃、225rpmで4時間振盪機にかけた。各pFastBac(商標)の形質転換について、S.O.C.培地を使用して細胞の10倍段階希釈(10−1、10−2及び10−3)を調製した。次に、100μlの各希釈を、50μg/mlのカナマイシン、7μg/mlのゲンタマイシン、10μg/mlのテトラサイクリン、100μg/mlのブルオ−ガル、及び40μg/mlのIPTGを含有するLB寒天プレートに植菌した。プレートを37℃で48時間インキュベートした。白色コロニーを分析用に選んだ。
【0157】
上記から種々のバクミドDNAを各コンストラクトについて作製し、単離した。それらのDNAを沈殿させてSf9細胞に5時間添加した。
【0158】
次に、30mlのSf9昆虫細胞(2×106細胞/ml)を、0.3mlのプラーク溶出液により目的のウイルスタンパク質を発現するバキュロウイルスに感染させ、48〜72時間インキュベートした。約1mlの粗培養物(細胞+培地)及び清澄化した培養回収物を発現解析のために保存し、残りは精製目的のために保存した。
【0159】
実施例2
修飾HRSV Fタンパク質の発現、精製、及び分析
目的の修飾HRSV Fタンパク質をコードする遺伝子を重複オリゴヌクレオチドとしてインビトロで合成し、宿主細胞にクローニングして発現させた。修飾RSV F遺伝子のクローニング及び発現は、当該技術分野において公知の方法に従い実現した。
【0160】
目的のウイルスタンパク質を含有する組換えプラークを選び、確認した。次にSf9昆虫細胞を感染させることにより組換えウイルスを増幅した。あるケースでは、Sf9昆虫細胞は、修飾Fタンパク質を発現する組換えウイルスと、他のウイルスタンパク質(例えば、BRSV Mタンパク質及び/又はHRSV Nタンパク質)を発現する別の組換えウイルスとによって重感染させた。昆虫細胞の培養物を、様々なコンストラクトを有するバキュロウイルスに約3MOI(感染多重度=ウイルスffu又はpfu/細胞)で感染させた。感染後48〜72で培養物及び上清を回収した。粗回収物の約30mLを、約800×gで15分間の遠心により清澄化した。修飾HRSV Fタンパク質を含有する得られた粗細胞回収物を、以下に記載するとおり精製した。
【0161】
感染Sf9昆虫細胞培養回収物から目的の修飾HRSV Fタンパク質を精製した。膜タンパク質抽出プロトコルにおいて非イオン性界面活性剤テルギトール(Tergitol)(登録商標)NP-9(ノニルフェノールエトキシレート)を使用した。粗抽出物を、陰イオン交換クロマトグラフィー、レンチルレクチン親和性/HIC、及び陽イオン交換クロマトグラフィーに通すことによってさらに精製した。
【0162】
タンパク質発現をSDS−PAGEにより分析し、クーマシー染色によって全タンパク質を染色した。粗回収物からの等量の細胞試料及びβME(β−メルカプトエタノール)を含有する2×試料緩衝液を、約15〜20μl(約7.5〜10μlの培養物)/レーンでSDSレムリゲルに負荷した。
【0163】
あるケースでは、クロマトグラフィーの代わりに、粗細胞回収物中の修飾HRSV Fタンパク質を30%スクロース勾配分離方法により濃縮し、次に、クーマシーで染色したSDS−PAGE、又は抗RSV Fモノクローナル抗体を使用したウエスタンブロットにより分析した。
【0164】
修飾組換えFタンパク質、精製組換えFタンパク質、又はスクロース勾配により濃縮された組換えFタンパク質を含有する粗細胞回収物は、抗RSV Fモノクローナル抗体及び/又は抗RSV Fポリクローナル抗体を使用するウエスタンブロットによりさらに分析することができる。
【0165】
実施例3
Fタンパク質BV #541をコードする修飾HRSV F遺伝子
完全長HRSV Fタンパク質を発現させる最初の試みでは、高レベルの実現は不成功であることが判明した。発現に使用したF遺伝子配列は、配列番号1(野生型HRSV F遺伝子、GenBank受託番号M11486)であった。これは、574アミノ酸の不活性前駆体(F0)をコードする。この前駆体は、成熟する間にフューリン様プロテアーゼにより2回切断され、N末端からのサブユニットF2とC末端からのF1との2つのジスルフィド結合したポリペプチドをもたらす(図1)。2つの切断部位は残基109位及び136位であり、これらにフューリン認識モチーフが先行する(RARR、aa 106〜109(配列番号23)及びKKRKRR、aa 131〜136(配列番号24))。配列番号1のF遺伝子配列は、Sf9昆虫細胞における発現について準最適コドン使用頻度を含み、3個のエラーを内包して、最適以下の折り畳みを呈し得るタンパク質(配列番号2、GenBank受託番号AAB59858)を産生する。加えて、F2サブユニットをコードする領域に可能性のあるポリ(A)アデニリル化部位(ATAAAA)が同定された。さらに、野生型F遺伝子配列は約65%のATリッチであり、一方、Sf9昆虫細胞発現系における遺伝子配列の所望のGC−AT比は約1:1である。
【0166】
HRSV Fタンパク質の不十分な発現レベルを解消しようとする試みとして、新しいF遺伝子配列を以下のように設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;及び
(d)F遺伝子が、不活性化された一次切断部位を有する修飾Fタンパク質をコードする。
【0167】
3つの修正したアミノ酸エラーはP102A、I379V、及びM447Vであった。アミノ酸配列を変化させることなしにHRSV F遺伝子におけるクリプティックポリ(A)部位を修正した。
【0168】
コドン最適化スキームは、以下の基準に基づいた:(1)Levin, D.B. et al.(Journal of General Virology, 2000, vol. 81, pp. 2313-2325)に記載の、所与のアミノ酸に対する昆虫細胞の鱗翅目(Lepidopteran)種における特定のコドンについてのアミノアシル−tRNAの存在量、(2)遺伝子配列における約1:1のGC−AT比の維持、(3)パリンドローム又はステムループDNA構造の最小限の導入、及び(4)転写及び転写後抑制エレメント配列の最小限の導入。最適化されたF遺伝子配列の例を配列番号19(RSV−F BV #368)として示した。
【0169】
HRSV Fタンパク質の一次切断部位(1°CS、KKRKRR、aa 131〜136)を不活性化するため、フューリン認識部位をKKQKQQ(配列番号28)又はGRRQQR(配列番号29)のいずれかに変異させた。かかる切断部位変異を有するいくつかの修飾Fタンパク質を評価して切断防止効率を判断した。図2は、評価した修飾Fタンパク質のいくつかを示す。結果は、3つの保存的アミノ酸変化R133Q、R135Q、及びR136QによりHRSV Fタンパク質の一次切断部位が不活性化され得ることを示している。これらの、極性的に帯電した分子であるアルギニン(R)から、極性的に中性の分子であるグルタミン(Q)への保存的アミノ酸変化により、これらの部位で荷電状態が変わり、Fタンパク質3D構造はなお維持されながら、フューリン様プロテアーゼによる切断が防止された(図3を参照)。1°CSでの切断の防止により、Fタンパク質の膜融合活性の低減が生じた。
【0170】
上述した全ての修飾を有するように設計した非限定的な例示的修飾HRSV F遺伝子配列を図4に示す。この修飾F遺伝子(配列番号5、RSV−F BV #541)は、配列番号6の修飾Fタンパク質をコードする。遺伝子配列は、重複オリゴヌクレオチドとしてインビトロで合成し、宿主細胞にクローニングして発現させた。修飾HRSV Fタンパク質BV #541を感染Sf9昆虫細胞培養回収物から精製し、クーマシーにより染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。Fタンパク質RSV−F BV #541(例えばFタンパク質541)の発現レベルは、Sf9昆虫細胞における野生型F0タンパク質と比較して向上した。
【0171】
実施例4
F1サブユニット融合ドメイン部分欠失を有する修飾HRSV Fタンパク質
RSV Fタンパク質の発現をさらに向上させるため、以下の修飾を含む、さらに修飾したHRSV F遺伝子を設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;及び
(d)F1サブユニット融合ドメインをコードするヌクレオチド配列を部分的に欠失させた。一実験では、F1サブユニット融合ドメインの最初の10アミノ酸(配列番号2のアミノ酸137〜146位に対応する)をコードするヌクレオチド配列を欠失させた。
【0172】
配列番号9(RSV−F BV #622、例えばFタンパク質622)として指定された、配列番号10の修飾Fタンパク質をコードする、前記修飾を含む非限定的な例示的修飾RSV F遺伝子を図5に示す。感染Sf9昆虫細胞培養回収物から修飾HRSV Fタンパク質BV #622を精製し、クーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。図6のSDS−PAGEに示されるとおり、HRSV Fタンパク質BV #622の高発現レベルが観察された。
【0173】
実施例5
不活性化した一次切断部位とF1融合ドメイン部分欠失との双方を有する修飾HRSV Fタンパク質
不活性化した一次切断部位とF1融合ドメイン部分欠失との組み合わせが、特にSf9昆虫細胞におけるRSV Fタンパク質の発現をさらに促進し得るかどうかを判断するため、以下の修飾を含む別の修飾RSV F遺伝子を設計した:
(a)3つのGenBank配列決定エラーを修正した;
(b)F2サブユニットをコードする領域におけるクリプティックポリ(A)部位を修飾した;
(c)F遺伝子コドンを最適化した;
(d)一次切断部位を不活性化した;及び
(e)F1サブユニット融合ドメインをコードするヌクレオチド配列を部分的に欠失させた。一実験において、F1サブユニット融合ドメインの最初の10アミノ酸(配列番号2のアミノ酸137〜146位に対応する)をコードするヌクレオチド配列を欠失させた。
【0174】
配列番号7(RSV−F BV #683、例えばFタンパク質683)として指定された、配列番号8の修飾Fタンパク質をコードする、前記修飾を含む非限定的な例示的修飾RSV F遺伝子を図7に示す。感染Sf9昆虫細胞培養回収物から修飾RSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683)を精製し、クーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した。精製及びSDS−PAGE分析の方法は、実施例2に記載している。図8のSDS−PAGEに示されるとおり、発現レベルのさらなる亢進が実現された。
【0175】
実施例6
修飾HRSV Fタンパク質BV #683の発現及び精製
修飾HRSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683、配列番号8)を、実施例1に記載されるとおりバキュロウイルス発現系で発現させて、HRSV Fタンパク質BV #683を発現する組換えプラークを選んで確認した。次にSf9昆虫細胞を感染させることにより組換えウイルスを増幅した。昆虫細胞の培養物をバキュロウイルスに3MOI(感染多重度=ウイルスffu又はpfu/細胞)で感染させた。感染の48〜72時間後に培養物及び上清を回収した。粗回収物の約30mLを、約800×gで15分間遠心することにより清澄化した。HRSV Fタンパク質BV #683を含む得られた粗細胞回収物を以下に記載されるとおり精製した。
【0176】
感染Sf9昆虫細胞培養回収物からHRSV Fタンパク質BV #683を精製した。膜タンパク質抽出プロトコルでは非イオン性界面活性剤テルギトール(Tergitol)(登録商標)NP-9(ノニルフェノールエトキシレート)を使用した。陰イオン交換クロマトグラフィー、レンチルレクチン親和性/HIC及び陽イオン交換クロマトグラフィーを通過させることにより、粗抽出物をさらに精製した。
【0177】
精製したHRSV Fタンパク質BV #683を、実施例2に記載されるとおり、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットにより分析した。結果を図9に示した。HRSV Fタンパク質BV #683(例えばFタンパク質683、配列番号8)の優れた発現レベルが実現された。粗細胞培養物で発現レベルは10mg/Lを上回り、回収されたFタンパク質BV #683は約3.5mg/L細胞培養物であると推定された。あるケースでは、20mg/Lを上回る発現レベルが実現され、約5mg/Lの修飾Fタンパク質BV #683が回収された(図10を参照)。回収されたFタンパク質BV #683の純度は、走査デンシトメトリーにより測定するとき、約98%に達した(図10を参照)。
【0178】
実施例7
精製HRSV Fタンパク質BV #683ミセル(ロゼット)
精製HRSV Fタンパク質BV #683を、ネガティブ染色電子顕微鏡法により分析した(図11を参照)。Fタンパク質は、野生型HRSV Fタンパク質(Calder et al., 2000, Virology 271, pp. 122-131)、及び他の完全長ウイルス膜糖タンパク質(Wrigley et al., Academic Press, London, 1986, vol. 5, pp. 103-163)について観察されるものと同様に、ミセル(ロゼット)の形態に凝集した。電子顕微鏡下では、Fスパイクは、幅広のほうの端部がロゼットの中心から離れる方に突出しているロリポップ形状のロッド形態を呈する。単一の三量体の長さは約20nmであり、ミセル粒径は約40nmであった(図12を参照)。これらの結果は、HRSV Fタンパク質BV #683が、天然の活性タンパク質についての3D構造を修正したことを示している。
【0179】
要約すれば、修飾組換えHRSV Fタンパク質(例えば、BV #683)を設計し、発現させて精製した。この修飾完全長Fはグリコシル化されている。一次切断部位及び融合ドメインの修飾が共になってFタンパク質の発現レベルを大幅に亢進する。加えて、この修飾Fタンパク質は、ジスルフィド結合したF1サブユニットとF2サブユニットとに切断され得る。F1及びF2サブユニットの三量体はロリポップ形状の19.6nmのスパイク及び40.2nmの粒子を形成する。さらに、この修飾Fタンパク質は、Sf9昆虫細胞において高度に発現する。精製後には98%超のミセルの純度が実現される。この修飾タンパク質のスパイクがロリポップ形態を有し、さらに40nmのミセル粒子を形成することができるという事実は、修飾Fタンパク質BV #683が天然タンパク質の3D構造を修正したことを示している。
【0180】
実施例8
VLP産生における修飾HRSV Fタンパク質のBRSV M及び/又はHRSV Nとの共発現
本発明はまた、修飾又は変異RSV Fタンパク質を含むVLPも提供する。かかるVLPは、ウイルスタンパク質抗原に対する中和抗体を誘導するのに有用であり、従ってRSVに対する免疫を確立するために投与することができる。例えば、かかるVLPは、修飾RSV Fタンパク質とBRSV M及び/又はHRSV Nタンパク質とを含み得る。BRSV M(配列番号14)又はHRSV N(配列番号18)タンパク質をコードする遺伝子のコドンは、昆虫細胞における発現に対して最適化され得る。例えば、最適化されたBRSV M遺伝子配列が配列番号13に示され、最適化されたRSV N遺伝子配列が配列番号17に示される。
【0181】
一実験では、修飾Fタンパク質BV #622及び別の修飾Fタンパク質BV #623(配列番号21、双方の切断部位が不活性化されるように修飾されている)を、単独で発現させるか、或いはHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現させた。VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)及び30%スクロース勾配分離から回収したVLPペレットの双方を、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を用いるウエスタンブロットにより分析した。図13は、修飾Fタンパク質BV #622及びBV #623の構造、並びにSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示す。BV #622は高度にそれ自体で発現し、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現したが、一方、BV #623は極めて不十分な発現であり、双方の切断部位の不活性化がFタンパク質発現を阻害することを示している。
【0182】
別の実験では、修飾Fタンパク質BV #622、ダブルタンデム遺伝子BV #636(BV #541+BRSV M)、BV #683、BV #684(BV #541、YIAL L−ドメインがC末端に導入されている)、及びBV #685(BV #541、YKKL L−ドメインがC末端に導入されている)を、単独で発現させるか、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現させた。L−ドメイン(後期ドメイン)はレトロウイルスの保存配列であり、細胞タンパク質と共に作用して細胞の表面からビリオンを効率的に放出させるGag内に存在する(Ott et al., 2005, Journal of Virology 79: 9038-9045)。各修飾Fタンパク質の構造を図14に示す。VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)及び30%スクロース勾配分離から回収されたVLPペレットの双方を、クーマシーで染色したSDS−PAGE、及び抗RSV Fモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットにより分析した。図14は、VLPを含有する粗細胞回収物(細胞内)のSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示し、図15は、30%スクロース勾配分離から回収されたVLPペレットのSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析の結果を示す。BV #622及びBV #683は高度にそれ自体で発現し、又はHRSV Nタンパク質及びBRSV Mタンパク質と共発現したが、一方、BV #636、BV #684、及びBV #685は不十分な発現であった。
【0183】
実施例9
高発現を伴うキメラHRSV Fタンパク質のスクリーニング
昆虫細胞において可溶形態で高度に発現することができ、より良好な収率でVLPを形成することができるさらなるRSV Fタンパク質をスクリーニングするための試行がなされた。様々なF遺伝子を設計し、発現させて分析した。ウエスタンブロット及びSDS−PAGEの双方を使用して発現を評価した。
【0184】
図16a〜図16dは、各キメラHRSV Fクローンについての構造、クローン名、説明、ウエスタンブロット/クーマシー分析の結果、及び結論を要約する。
【0185】
結果が示すとおり、野生型完全長Fタンパク質は発現が不良であった;F1サブユニットを含有するが、しかしF2サブユニットを含有しないキメラHRSV Fタンパク質は良好に発現することができたが、産物は不溶性であるか(これはミスフォールディングに起因した可能性がある)、又は重感染後、他のウイルスタンパク質と集合してVLPを良好な収量で形成することができないかのいずれかであった。一次切断部位の不活性化だけでは、発現の実質的な増加は生じなかったが、一次切断部位の不活性化を、クリプティックポリ(A)部位の欠失及びGenBankアミノ酸エラーの修正などの他の修飾と組み合わせると(例えば、BV #541)、より良好な発現が実現された。BV #541のC末端にYKKL L−ドメインを導入すると、BRSV M及びHRSV Nタンパク質との共発現において修飾Fタンパク質を含有するVLPの分泌が約2〜3倍に亢進された。結果から、BV #541遺伝子とBRSV M遺伝子とからなるダブルタンデムキメラ遺伝子が、BV #541とBRSV Mタンパク質の重感染と比較して細胞内及びVLP収量の双方の向上を示したことがさらに分かり、BRSV Mタンパク質がタンデム発現時に昆虫細胞における修飾HRSV Fタンパク質を含有するVLPの産生を促進し得ることを示している。BV #541と、BRSV Mと、HRSV Nとからなるトリプルタンデムキメラ遺伝子は、上述のダブルタンデムキメラ遺伝子又はBV #541と、BRSV Mと、HRSV Nタンパク質の重感染と比較してさらにより高い細胞内及びはるかに良好なVLP収量を有した。さらに、結果から、キメラHRSV Fタンパク質BV#683(例えばFタンパク質683、配列番号8)が最良の細胞内発現を有することが示唆された。BV#683とBRSV M遺伝子とからなるダブルタンデムキメラ遺伝子の発現、又はBV#683と、BRSV Mと、HRSV N遺伝子とからなるトリプルタンデムキメラ遺伝子もまた、本明細書で具体化される。これらのダブル及びトリプルタンデムキメラ遺伝子は、重感染と比較してVLP産生をさらに向上させるはずである。
【0186】
実施例10
マウスにおけるRSV中和アッセイ及びRSVチャレンジ試験
RSV感染の予防における修飾HRSV Fタンパク質BV #683を含むワクチンの効率を試験するため、マウスにおいて中和アッセイ及びRSVチャレンジ試験を行った。実験手順を図17に示す。
【0187】
マウス群(n=10)に、プラセボ(PBS溶液)、生RSV(鼻腔内投与)、ホルマリン不活性化RSVワクチン(FI−RSV)、1ugの精製F粒子(PFP、修飾Fタンパク質BV #683)、ミョウバンを伴う1ugの精製F粒子(PFP+ミョウバン)、10ugの精製F粒子、ミョウバンを伴う10ugの精製F粒子(PFP+ミョウバン)、又は30ugの精製F粒子を、0日目及び21日目に筋肉内注射(生RSVを除く)した。免疫した各群を42日目(2回目の免疫後21日目)に生RSVによりチャレンジした。0日目、31日目(2回目の免疫後10日目)、及び46日目(生RSVによるチャレンジ後4日目)に、各群からマウス血清を回収した。
【0188】
各治療群からのマウス血清を、抗RSV中和抗体の存在についてアッセイした。免疫したマウスからの血清の希釈液を感染性RSVと共に96ウェルマイクロタイタープレートにおいてインキュベートした。血清は1:20〜1:2560に希釈した。各ウェルにおいて50ulの希釈血清を50ulの生RSVウイルス(400pfu)と混合した。ウイルス/血清混合液を最初に室温で60分間インキュベートし、次に100ulのHEp−2細胞と混合して4日間インキュベートした。次に感染性ウイルスプラークの数を、クリスタルバイオレットで染色した後に計数した。各血清試料についての中和価は、100%のRSV中和(例えば、プラークなし)をもたらした血清の最高希釈度の逆数として定義し、各動物について決定した。31日目(追加免疫後10日目)及び46日目(生RSVによるチャレンジ後4日目)の幾何平均血清中和抗体価をワクチン群ごとにグラフ化した。図18は、中和アッセイの結果を示す。結果から、10ug又は30ugの精製Fタンパク質が、生RSVと比較してはるかに高い中和価をもたらすことが示される。加えて、ミョウバンアジュバントの共投与に伴いPFPの中和価は亢進される。
【0189】
免疫化が、免疫した動物の肺におけるRSV複製を予防及び/又は阻害することができるかどうかを決定するためRSVチャレンジ試験を行った。HEp−2細胞を用いるプラークアッセイにより、免疫したマウスの肺におけるRSVの量を測定した。42日目(2回目の免疫後11日目)に上述したマウスの免疫群を1×106pfuの感染性RSVロング株に鼻腔内感染させた。46日目(RSV感染後4日目)、マウスの肺を摘出し、計量し、及びホモジナイズした。ホモジナイズした肺組織を清澄化した。清澄化溶液の上清を希釈し、HEp−2細胞を使用するプラークアッセイに供して肺組織におけるRSV力価を測定した(pfu/g肺組織として計算した)。結果を図19に示し、組換えRSV Fタンパク質BV #683で免疫したマウスの全てが肺においてRSVを検出不可能であったとともに、アジュバントを伴わない1ugの精製組換えRSV Fタンパク質BV #683であってもRSV複製の阻害に優れた効率を示した(プラセボと比較して1000倍超低減した)ことを示している。
【0190】
上記で使用したRSV PFPワクチンの安定性を決定するため、ワクチンを2〜8℃で0、1、2、4、及び5週間保存し、次にクーマシーで染色したSDS−PAGEにより分析した(図20)。結果は、このRSV PFPワクチンが2〜8℃で極めて安定しており、検出可能な分解はないことを示している。
【0191】
実施例11
コットンラットにおける組換えRSV Fミセル活性
この例では、動物群は、生RSV(RSV)、ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)、アルミニウムを伴う及び伴わないRSV−Fタンパク質BV #683(PFP及びPFP+アルミニウムアジュバント)、並びにPBS対照による0日目及び21日目の免疫化を含んだ。
【0192】
図21に示されるとおり、アルミニウムを伴う及び伴わない30ugのF−ミセルワクチン(RSV−Fタンパク質BV #683、すなわちFタンパク質683、配列番号8)による免疫化は、RSV A及びRSV Bのいずれに対する曝露後も、ロバストな中和抗体応答をもたらした。加えて、アルミニウムが抗体応答を有意に亢進することが観察された。さらに、RSV A及びRSV Bにおいて、それぞれ46日目又は49日目の追加免疫後に中和抗体が増加した。
【0193】
ホルマリン不活性化RSV(FI−RSV)で免疫したラットにおいては重大な肺病理が観察された一方、F−ミセルワクチンによる疾患の亢進は認められなかった(図22)。F−ミセルワクチン及びアジュバントを伴うF−ミセルワクチンの使用により、一次RSV感染(PBS+RSVチャレンジ)対照群(5.8)より低い炎症スコアがもたらされた(それぞれ4.0及び2.8)。上述のとおり、FI−RSV治療群は、一次RSV感染(PBS+RSVチャレンジ)対照群より高い炎症スコアを有した(9.0対5.8)。さらに、FI−RSV治療群は、非チャレンジプラセボ対照、生RSV+RSVチャレンジ、F−ミセル+RSVチャレンジ、及びF−ミセル+アルミニウム+RSVチャレンジと比べて有意に高い平均炎症スコア(9.0)を有した。
【0194】
前述の詳細な説明は理解を明瞭にするために与えられているに過ぎず、当業者には変更が明らかであろうから、そこから不必要な限定が理解されてはならない。これは、本明細書に提供される情報のいずれかがここに特許請求される発明の先行技術若しくは従来技術であること、又は明確に若しくは黙示的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0195】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0196】
本願は、読者の注意が具体的な実施形態に向くよう節ごとに分割されているが、かかる節が実施形態間の区分であると解釈されてはならない。各節及びそこに記載される実施形態の教示は、他の節に適用可能である。
【0197】
本発明はその特定の実施形態に関連して記載されているが、さらなる変更が可能であり、本願が、概して本発明の原理に従う、且つ本発明が関わる技術分野の範囲内の公知の又は慣習的な実施の範囲内に含まれるとおりの、及び以上に示され、且つ以下の添付の特許請求の範囲に従う本質的な特徴が適用され得るとおりの、本開示からのかかる逸脱を含む、本発明の任意の変形例、使用、又は適応を網羅するよう意図されることは理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合(F)タンパク質であって、宿主細胞における前記RSV Fタンパク質の発現を増加させる少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項2】
RSV Fタンパク質であって、宿主細胞における前記RSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項3】
RSV Fタンパク質であって、非修飾RSV Fタンパク質と比較して前記RSV Fタンパク質の免疫原性特性を亢進する少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項4】
前記Fタンパク質が、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項5】
前記プロリン102位残基がアラニン残基に置換される、請求項4に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項6】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のイソロイシン379位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項4又は5に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項7】
前記イソロイシン379位残基がバリン残基に置換される、請求項6に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項8】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のメチオニン447位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項9】
前記メチオニン447位残基がバリン残基に置換される、請求項8に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項10】
ロリポップ形態をとる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項11】
少なくとも1つのフューリン切断部位を不活性化させる変異を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項12】
前記フューリン切断部位が一次切断部位である、請求項11に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項13】
少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化が、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を導入することにより達成される、請求項11〜12のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項14】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に少なくとも2つのアミノ酸置換が導入される、請求項13に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項15】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に3つのアミノ酸置換が導入される、請求項14に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項16】
前記アルギニン133位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜15のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項17】
前記アルギニン135位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜16のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項18】
前記アルギニン136位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜17のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項19】
F2のクリプティックポリ(A)部位の、少なくとも1つの修飾をさらに含む、請求項4〜18のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項20】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分に欠失をさらに含む、請求項4〜19のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項21】
前記修飾又は変異が、
(i)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(ii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、及び
(iii)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項22】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、少なくとも2つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項23】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、少なくとも3つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項24】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、4つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項25】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置に、少なくとも2つのアミノ酸置換を有する、請求項21〜24のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項26】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置に、3つのアミノ酸置換を有する、請求項21〜25のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項27】
配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9からなる群から選択される核酸配列によりコードされるRSV Fタンパク質。
【請求項28】
配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むRSV Fタンパク質。
【請求項29】
野生型RSV Fタンパク質と比較して宿主細胞における発現の増加を示す、請求項1〜28のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項30】
野生型RSV Fタンパク質と比較して免疫原性特性の亢進を示す、請求項1〜29のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項31】
前記宿主細胞が真核細胞である、請求項1〜30のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項32】
前記真核細胞が昆虫細胞である、請求項31に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項33】
前記昆虫細胞がSf9細胞である、請求項32に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項34】
前記RSV Fタンパク質が、ヒトRSVのA株、ヒトRSVのB株、ウシRSVの株、及びトリRSVの株からなる群から選択されるRSV株に由来する、請求項1〜33のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を1又は複数含む、精製ミセル。
【請求項36】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項37】
マトリクス(M)タンパク質をさらに含む、請求項36に記載のVLP。
【請求項38】
前記Mタンパク質がRSVのヒト株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項39】
前記Mタンパク質がRSVのウシ株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項40】
前記Mタンパク質がインフルエンザウイルス株由来のM1である、請求項37に記載のVLP。
【請求項41】
前記インフルエンザウイルス株がトリインフルエンザウイルス株である、請求項40に記載のVLP。
【請求項42】
前記トリインフルエンザウイルス株がH5N1株である、請求項41に記載のVLP。
【請求項43】
前記H5N1株がA/Indonesia/5/05である、請求項42に記載のVLP。
【請求項44】
前記Mタンパク質がニューカッスル病ウイルス(NDV)株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項45】
RSV糖タンパク質(G)をさらに含む、請求項36〜44のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項46】
RSV糖タンパク質(SH)をさらに含む、請求項36〜45のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項47】
RSVヌクレオカプシドタンパク質(N)をさらに含む、請求項36〜46のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項48】
VLPの形成を可能にする条件下で、前記VLPが真核細胞において発現する、請求項36〜47のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項49】
前記真核細胞が、酵母、昆虫、両生類、鳥類、哺乳類、又は植物細胞からなる群から選択される、請求項49に記載のVLP。
【請求項50】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む免疫原性組成物。
【請求項51】
請求項35に記載の精製ミセルを含む免疫原性組成物。
【請求項52】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む免疫原性組成物。
【請求項53】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記RSV Fタンパク質が宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項54】
請求項35に記載の精製ミセルを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記ミセルが宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項55】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記VLPが宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項56】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項57】
請求項35に記載の精製ミセルを含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項58】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項59】
前記ウイルス感染がRSV感染である、請求項54〜56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項60】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質をヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項61】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項35に記載の精製ミセルをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項62】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項63】
前記薬学的に許容可能な製剤がアジュバントを含む、請求項60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記アジュバントが非リン脂質リポソームである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、ヒト対象に対する、薬学的に許容可能な製剤中の請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む方法。
【請求項66】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項35に記載の精製ミセルをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項67】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項68】
請求項1〜30のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質をコードする単離された核酸。
【請求項69】
請求項68に記載の核酸を含む単離された細胞。
【請求項70】
請求項68に記載の核酸を含むベクター。
【請求項71】
RSV Fタンパク質を作製する方法であって:
(a)請求項68に記載の核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び
(b)前記RSV Fタンパク質の産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;
を含む方法。
【請求項72】
RSV Fタンパク質ミセルを作製する方法であって:
(a)請求項68に記載の核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び
(b)前記RSV Fタンパク質ミセルの産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程
を含む方法。
【請求項73】
前記宿主細胞が昆虫細胞である、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記昆虫細胞が、請求項68に記載の核酸を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトされた昆虫細胞である、請求項73に記載の方法。
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合(F)タンパク質であって、宿主細胞における前記RSV Fタンパク質の発現を増加させる少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項2】
RSV Fタンパク質であって、宿主細胞における前記RSV Fタンパク質の細胞毒性を低減する少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項3】
RSV Fタンパク質であって、非修飾RSV Fタンパク質と比較して前記RSV Fタンパク質の免疫原性特性を亢進する少なくとも1つの修飾又は変異を含むRSV Fタンパク質。
【請求項4】
前記Fタンパク質が、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項5】
前記プロリン102位残基がアラニン残基に置換される、請求項4に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項6】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のイソロイシン379位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項4又は5に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項7】
前記イソロイシン379位残基がバリン残基に置換される、請求項6に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項8】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のメチオニン447位残基に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換をさらに含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項9】
前記メチオニン447位残基がバリン残基に置換される、請求項8に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項10】
ロリポップ形態をとる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項11】
少なくとも1つのフューリン切断部位を不活性化させる変異を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項12】
前記フューリン切断部位が一次切断部位である、請求項11に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項13】
少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化が、野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を導入することにより達成される、請求項11〜12のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項14】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に少なくとも2つのアミノ酸置換が導入される、請求項13に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項15】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のアルギニン133位、アルギニン135位、及びアルギニン136位に対応する位置に3つのアミノ酸置換が導入される、請求項14に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項16】
前記アルギニン133位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜15のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項17】
前記アルギニン135位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜16のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項18】
前記アルギニン136位残基がグルタミンに置換される、請求項13〜17のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項19】
F2のクリプティックポリ(A)部位の、少なくとも1つの修飾をさらに含む、請求項4〜18のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項20】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分に欠失をさらに含む、請求項4〜19のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項21】
前記修飾又は変異が、
(i)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(ii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、及び
(iii)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項22】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、少なくとも2つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項23】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、少なくとも3つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項24】
(i)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置における少なくとも1つのアミノ酸置換、
(ii)少なくとも1つのフューリン切断部位の不活性化、
(iii)F2のクリプティックポリ(A)部位の修飾、並びに
(iv)野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のおよそアミノ酸137〜146位に対応する融合ドメインのN末端半分における欠失、
からなる群から選択される、4つの変異を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項25】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置に、少なくとも2つのアミノ酸置換を有する、請求項21〜24のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項26】
野生型RSV Fタンパク質(配列番号2)のプロリン102位、イソロイシン379位、及びメチオニン447位に対応する位置に、3つのアミノ酸置換を有する、請求項21〜25のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項27】
配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号9からなる群から選択される核酸配列によりコードされるRSV Fタンパク質。
【請求項28】
配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むRSV Fタンパク質。
【請求項29】
野生型RSV Fタンパク質と比較して宿主細胞における発現の増加を示す、請求項1〜28のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項30】
野生型RSV Fタンパク質と比較して免疫原性特性の亢進を示す、請求項1〜29のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項31】
前記宿主細胞が真核細胞である、請求項1〜30のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項32】
前記真核細胞が昆虫細胞である、請求項31に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項33】
前記昆虫細胞がSf9細胞である、請求項32に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項34】
前記RSV Fタンパク質が、ヒトRSVのA株、ヒトRSVのB株、ウシRSVの株、及びトリRSVの株からなる群から選択されるRSV株に由来する、請求項1〜33のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を1又は複数含む、精製ミセル。
【請求項36】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項37】
マトリクス(M)タンパク質をさらに含む、請求項36に記載のVLP。
【請求項38】
前記Mタンパク質がRSVのヒト株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項39】
前記Mタンパク質がRSVのウシ株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項40】
前記Mタンパク質がインフルエンザウイルス株由来のM1である、請求項37に記載のVLP。
【請求項41】
前記インフルエンザウイルス株がトリインフルエンザウイルス株である、請求項40に記載のVLP。
【請求項42】
前記トリインフルエンザウイルス株がH5N1株である、請求項41に記載のVLP。
【請求項43】
前記H5N1株がA/Indonesia/5/05である、請求項42に記載のVLP。
【請求項44】
前記Mタンパク質がニューカッスル病ウイルス(NDV)株に由来する、請求項37に記載のVLP。
【請求項45】
RSV糖タンパク質(G)をさらに含む、請求項36〜44のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項46】
RSV糖タンパク質(SH)をさらに含む、請求項36〜45のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項47】
RSVヌクレオカプシドタンパク質(N)をさらに含む、請求項36〜46のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項48】
VLPの形成を可能にする条件下で、前記VLPが真核細胞において発現する、請求項36〜47のいずれか一項に記載のVLP。
【請求項49】
前記真核細胞が、酵母、昆虫、両生類、鳥類、哺乳類、又は植物細胞からなる群から選択される、請求項49に記載のVLP。
【請求項50】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む免疫原性組成物。
【請求項51】
請求項35に記載の精製ミセルを含む免疫原性組成物。
【請求項52】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む免疫原性組成物。
【請求項53】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記RSV Fタンパク質が宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項54】
請求項35に記載の精製ミセルを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記ミセルが宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項55】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む薬学的に許容可能なワクチン組成物であって、前記VLPが宿主における免疫応答の誘発能を有する組成物。
【請求項56】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項57】
請求項35に記載の精製ミセルを含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項58】
請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPを含む、ヒト対象をウイルス感染に対して免疫するためのキット。
【請求項59】
前記ウイルス感染がRSV感染である、請求項54〜56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項60】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質をヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項61】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項35に記載の精製ミセルをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項62】
哺乳動物に、ウイルス感染に対するワクチン接種をする方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項63】
前記薬学的に許容可能な製剤がアジュバントを含む、請求項60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記アジュバントが非リン脂質リポソームである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、ヒト対象に対する、薬学的に許容可能な製剤中の請求項1〜34のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質を含む方法。
【請求項66】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項35に記載の精製ミセルをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項67】
ウイルス感染に対して免疫応答を生じさせる方法であって、薬学的に許容可能な製剤中の請求項36〜49のいずれか一項に記載のVLPをヒト対象に投与する工程を含む方法。
【請求項68】
請求項1〜30のいずれか一項に記載のRSV Fタンパク質をコードする単離された核酸。
【請求項69】
請求項68に記載の核酸を含む単離された細胞。
【請求項70】
請求項68に記載の核酸を含むベクター。
【請求項71】
RSV Fタンパク質を作製する方法であって:
(a)請求項68に記載の核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び
(b)前記RSV Fタンパク質の産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程;
を含む方法。
【請求項72】
RSV Fタンパク質ミセルを作製する方法であって:
(a)請求項68に記載の核酸を発現するよう、宿主細胞を形質転換する工程;及び
(b)前記RSV Fタンパク質ミセルの産生を導く条件下で前記宿主細胞を培養する工程
を含む方法。
【請求項73】
前記宿主細胞が昆虫細胞である、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記昆虫細胞が、請求項68に記載の核酸を含むバキュロウイルスベクターをトランスフェクトされた昆虫細胞である、請求項73に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図16c】
【図16d】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図16c】
【図16d】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−511579(P2012−511579A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540854(P2011−540854)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067269
【国際公開番号】WO2010/077717
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067269
【国際公開番号】WO2010/077717
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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