説明

個人乗客情報の機密保護と航空路安全の保証

本出願は、検査中の物品について収集されたデータの遠隔アクセスおよび分析のためのシステムおよび方法を開示する。このシステムはデータ収集ステーションを含み、このデータ収集ステーションには、物品についてのデータを取得するために検査中の物品をスキャンするX線スキャナーを含めてもよい。このデータは、1つまたは2つ以上の遠隔エキスパートステーションに伝送されて、そこで遠隔エキスパートがデータを分析して、その物品が、例えば爆破物またはその他の禁制品などの潜在的な脅威を含むかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線データを通信チャネルによって遠隔転送して、そのデータの遠隔アクセスおよび分析を可能にする、システムおよび方法に関する。本発明の応用の一つは手荷物スクリーニング(baggage screening)の分野である。
【背景技術】
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2001年10月1日出願の、「Remote Data Access」という名称の米国特許仮出願第60/326,406号に対する35U.S.C.§119(e)下での優先権を主張する、2002年10月1日出願の「Remote Data Access」とう名称の米国特許出願第10/262,550号の部分継続出願であるとともに、2002年4月3日出願の、「A Remote Baggage Screening System, Software and Method」という名称の共同所有の米国特許出願第10/116,693号、2002年4月3日出願の、「"A Remote Baggage Screening System, Software and Method」という名称の同第10/116,714号(現在は、2004年3月16日公開の米国特許第6,707,879号)、および2002年4月3日出願の、「"A Remote Baggage Screening System, Software and Method」という名称の同第10/116,718号(現在は、2004年4月13日公開の米国特許第6,721,391号)、の部分継続出願であるとともに、それらに対する35U.S.C.§120下での優先権を主張するものであり、これらは、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
関係技術の考察
X線スキャナー、CT(computed tomography)スキャナーなどを始めとする、多くの従来式システムが空港手荷物スクリーニング用として使用されている。システムによっては、概ね自動化されて、脅威検出(threat detection)ソフトウエアが実装された、コンピュータ設備を備えるものがある。これらおよびその他のこのようなシステムの一部は、いくつかのレベルのスクリーニング工程において人間操作を必要とする、多重レベルスクリーニングシステムである。オペレータが、モニターまたは監視スクリーン上で、検査中の物品の再構成画像を目視して、例えば、その物品が脅威を与えるかどうか、および/またはさらに詳細なスクリーニングに供するべきかどうかの決定を行う。
【0004】
現存のシステムは、対象物体について得られたX線データに基づいて対象物体を分析しスクリーニングする能力における発達の程度に相違がある。例えば、あるものは、手荷物スクリーニングの速度と、爆発物、禁制品、その他に対するスクリーニングにおける確実度をバランスさせている。さらに、特に米国においては、そのようなシステムのオペレータのスキルのレベルは多様である。往々にして、空港におけるチェック済手荷物または持ち込み手荷物用の第1レベルのスクリーニング設備のオペレータは、そのような設備から遠隔の場所に配置されたオペレータよりも、スキルのレベルが低い。
空港およびその他の場所における、爆発物、禁制品その他に対する手荷物スクリーニング用の改良されたシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
一態様によれば、検査中の物品を遠隔式で分析する方法は、データ収集場所において検査中の物品についてのデータを収集する行為、通信チャネルを介して遠隔場所にそのデータを伝送する行為、遠隔地においてそのデータを分析して容疑対象物体の存在を判定して、スクリーニング結果を提供する行為、およびそのスクリーニング結果をデータ収集場所に転送する行為を含む。一つの例において、この方法は、データ収集場所と遠隔場所との間に、電話リンクまたはその他の音声および/またはデータリンクを設定することをさらに含む。
【0006】
別の態様によれば、遠隔スクリーニングシステムは、検査中の物品をスキャンして、その検査中の物品についてのデータを取得する、データ収集ステーションと、検査中の物品についてのデータを分析して、その検査中の物品に対するスクリーニング結果を提供する、遠隔エキスパートステーションと、データ収集ステーションを遠隔エキスパートステーションに結合する、通信チャネルとを含み、検査中の物品についてのデータは、通信チャネルを介してデータ収集ステーションと遠隔エキスパートステーションの間で伝送される。
本発明の前述およびその他の特徴、目的および利点は、説明のためだけのものであって、本発明の限界を定義するものではない、添付の図面を参照して、以下の説明を読めば明白になるであろう。図において、同一の参照番号は、異なる図にわたって同一の要素を示している。
【0007】
詳細な説明
本発明は、人間オペレータ、機械、またはその組合せである遠隔エキスパートが、別の場所で収集されたデータにアクセスし分析して、対象物体に関するスクリーニング決定を行う、物体の遠隔スクリーニングのシステムおよび方法を提供する。なお本発明は、その応用において、以下の詳細な説明において記述されるか、または図面において図示される構成要素の構築および配設の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明を実施する、その他の態様および方法が可能である。また、本明細書において使用する語法および用語は、説明のためのものであり、限定としてみなすべきではないことを理解すべきである。「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」およびこれらの変形は、その後にリストする項目およびその均等物に加えて、追加の項目を包含することを意味するものである。さらに、「通信チャネル」という用語は、本明細書において使用する場合には、それに限定はされないが、電話線、インターネット、ワイヤレスチャネル、ローカルエリアネットワークリンクまたはワイドエリアネットワークリンク、イントラネット、専用リンク、その他などの、現在知られているデータ伝送用のチャネルおよび今後開発されるチャネルを指すことを理解されたい。
【0008】
図1を参照すると、例えば、空港に配置された多重レベルスクリーニングシステムの一態様が図示されている。なお、以下の考察では主として空港に配置される手荷物検査システム、および手荷物のスクリーニングに言及するが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば、バス停留所または鉄道駅における手荷物スクリーニングや、例えば、郵便局またはその他の配送センターにおける小包のスクリーニングにも同等に適用できることを理解されたい。図示した例においては、いくつかの品目の手荷物100をコンベヤ102に沿って搬送することができ、1つまたは2つ以上の手荷物検査ステーション104、106において試験することができる。この例においては、システムは、2つのレベルのスクリーニングを含み、それは、レベル1検査ステーション104およびレベル2検査ステーション106である。レベル1ステーション104においてクリアされなかったいくつかの品目の手荷物は、さらに試験するためにレベル2検査ステーションに搬送することができる。なお、システムは、図に示すような2つのレベルのスクリーニングに限定されるものではなく、望みに応じて1レベルだけのスクリーニングでも、または3つ以上のレベルのスクリーニングでも含めることができることを理解されたい。
【0009】
一態様によれば、図1に示すレベル1またはレベル2の検査ステーション104、106などの検査ステーションには、検査機械108と、検査中の物品をスキャンしてスクリーニングするのに使用することのできる、この検査機械108に結合された、オペレータステーション110とを含めることができる。検査中の物品は、例えば、一品の手荷物100であるか、または一品の手荷物100の内部にある可能性がある。検査機械には、例えば、単一エネルギーX線スキャナー、二重エネルギーX線スキャナー、CTスキャナー、磁気共鳴影像法スキャナー(MRI: magnetic resonance imaging scanner)、核4重極共鳴スキャナー(NQR: nuclear quadrapole resonance scanner)、任意の核式影像法スキャナーもしくはガンマスキャニングシステム、またはそのようなスキャナーの組合せを含めてもよい。ここで理解すべきことは、以下の考察では、特に、検査中の物品について得られるX線データについて言及するが、上記のスキャナーのいずれかを使用して、その物品をスキャンしてもよく、本発明の方法によって、対応するデータを取得、分析することができることである。
【0010】
図2を参照すると、データ収集ステーション200には、検査中の物品をスキャンして、その物品についてのX線データを取得することのできる、X線スキャナー202を含めることができる。物品は、X線スキャナーを通過してその物品を搬送することのできる、コンベヤベルト201の上に設置してもよい。データ収集ステーションは、例えば、図1に示す、レベル1またはレベル2の検査ステーションとすることができる。一態様において、X線データは、X線スキャナーに結合されたオペレータインターフェイス204に受け渡してもよく、このオペレータインターフェイス204は、X線データから再構成された、検査中の物品のX線画像を表示することができる。オペレータは、X線画像を試験して、検査中の物品に関するスクリーニング決定を行う。場合によっては、オペレータは、その物品がさらなる、またはより詳細な検査を正当化するものであると決定し、その物品と、その物品について取得されたX線データとを、例えば、レベル2またはレベル3の検査ステーションに受け渡してもよい。従来式システムにおいては、検査ステーション104、106(図1を参照)などの検査ステーションは、閉ざされたローカルエリアネットワーク内で接続されている。手荷物100の1個の物品について、レベル1検査ステーション104で取得されるデータは、レベル2検査ステーション106だけに送られて、システムがそれを含む場合には、レベル2検査ステーション106からレベル3検査ステーションに受け渡してもよい。対照的に、本発明のいくつかの実施例によれば、データ収集ステーション200において検査中の物品について取得されたX線データは、以下でさらに詳細に考察するように、高レベルの検査ステーションだけでなく、任意の数の遠隔場所に伝送してもよい。
【0011】
一態様によれば、検査中の物品について取得されたX線データは、通信チャネル206を越えて、データ収集ステーション200から遠隔サーバ208へと伝送してもよく、遠隔サーバ208は、X線データを任意の1つまたは2つ以上の遠隔エキスパートステーション210に転送することができる。上記で考察したように、通信チャネル206は、データを遠隔場所に転送するのに使用することのできる、電話線、インターネット、ワイヤレスチャネル、ローカルエリアネットワークリンクもしくはワイドエリアネットワークリンク、専用リンク、その他のいずれを含んでもよい。なお、「遠隔(remote)」の用語は、本明細書において使用する場合には、ローカルアイテムと同じ構内(premises)にない場所を意味することを理解されたい。例えば、データ収集ステーションが、空港の第1ターミナルに位置する場合には、「遠隔」エキスパートは、異なる都市内、そのデータ収集ステーションが位置する空港ではない同一都市内の場所、またはその空港の他のターミナル、に位置するエキスパートである。また、システムは必ずしもサーバ208を含む必要はないこと、およびデータ収集ステーション200は、以下にさらに詳細に考察するように、X線データを遠隔エキスパートステーション210に直接、転送することもできることに留意されたい。
【0012】
さらに、データ収集ステーション200および遠隔エキスパートステーション210のそれぞれは、コンピュータ設備および既知の原理にしたがって操作することのできるオペレータインターフェイスを備えてもよいことを理解すべきである。すなわち、任意のステーションのオペレータは、システムに「ログオン」して、当業者には知られている、従来型のコンピュータオペレータインターフェイスを使用して、データおよびソフトウエアにアクセスすることができる。
【0013】
図3を参照すると、本発明による遠隔データアクセスの方法の一つの例のフロー図が示されている。第1のステップ300において、オペレータは、データ収集ステーションにログオンすることができる。これは、オペレータの交代の開始時、またはデータ収集ステーションが特定の日にち、または特定の時間に動作を開始するときに行われる。なお、データ収集ステーションが自動化されて、人間オペレータの存在を必要としない場合には、ステップ300は、X線スキャナーおよび/または関連するコンピュータシステムをオンにすることを表わすことができることに留意されたい。
【0014】
次のステップ302において、データ収集ステーションにおけるX線スキャナーは、検査中の物品をスキャンして、その検査中の物品についてのX線データを収集してもよい。一つの例においては、X線スキャナーは、物品全体、例えば手荷物品全体をスキャンしてもよい。別の実施例においては、X線スキャナーは、物品の一部分、例えば、検査中の物品内部の先に識別した疑惑領域などをスキャンしてもよい。X線スキャナーは、X線データをオペレータインターフェイスに伝送して、そこでオペレータが、検査中の物品のX線画像を見ることができる。一態様においては、オペレータインターフェイスには、脅威検出ソフトウエアを実行できるように適合させることのできるコンピュータ設備を含めてもよい。この態様においては、表示されたX線画像には、そのソフトウエアによって検出された潜在的な脅威の兆候を含めることができる。例えば、その画像には、脅威ポリゴン(threat polygon)、または検査中の物品内部に位置する潜在的脅威に対応するハイライト領域を含めてもよい。
【0015】
検査中の物品が、例えば爆発物質またはその他の禁制物品などの脅威を潜在的に含むか、または検査中の物品は、さらに詳細な分析を行うことを正当化する(warrant)と、オペレータが判定する場合には、オペレータは、ステップ304に示すように、X線データを遠隔エキスパートステーションに伝送することを決定してもよい。一方、検査中の物品がエキスパートによって試験する必要がないと、オペレータが決定する場合には、物品は、高レベルの検査ステーションに受け渡されるか、または積み込みエリアに受け渡され、オペレータは次の物品をX線でスキャンさせることができる。なお、この考察および次の考察は、X線画像を目視して、X線データを遠隔エキスパートステーションに伝送するかどうかに関する決定をする、人間オペレータに言及するが、本発明はそれに限定されるものではないことに留意されたい。データ収集ステーションは、人間オペレータによって操作されるのではなく、代わりに、得られたX線データをX線スキャナーによって自動的に分析して、このX線データを遠隔エキスパートステーションに転送するかどうかを、例えば、特定の脅威検出アルゴリズムに基づいて自動的に決定する、コンピュータプロセッサと脅威検出ソフトウエアを含めてもよい。
【0016】
オペレータ(またはソフトウエアアルゴリズム)が、検査中の物品を遠隔エキスパートによって試験すべきと判定する場合には、図2に示し、かつステップ306〜312に示すように、オペレータは、通信チャネルを介してX線データを遠隔エキスパートステーションに伝送してもよい。第1ステップ306において、オペレータは、データ収集ステーション200と遠隔エキスパートステーション210との間にリンクを確立することができる。一つの例においては、このステップには、例えば、通信チャネルが電話線またはインターネット接続の場合には、ダイアルアップ接続を始動させることを含めてもよい。通信チャネルが専用リンクを含む、別の実施例では、このステップには、ユーザインターフェイスソフトウエアに提示される「送信」オプションを選択することを含めてもよい。何らかの理由で、データ収集ステーションと遠隔エキスパートステーション(またはサーバ)の間の接続が確立できない場合には、ユーザインターフェイスソフトウエアは、例えば、接続エラーメッセージまたは記号を表示することによって、オペレータに接続障害を知らせて(ステップ310)、オペレータが適当な行動を起こしてもよい。接続が正常に確立される場合(ステップ308)には、ステップ312に示すように、X線データを遠隔エキスパートステーションに転送してもよい。
【0017】
なお、X線データはステップ312において従来式データ伝送ソフトウエアおよび/またはプロトコルを使用して伝送してもよいことに留意されたい。X線データは、ディジタルまたはアナログの形態、混合信号形態、(当業者に知られている任意の圧縮アルゴリズムまたは技法を用いて圧縮されていてもよい)圧縮データとして、またはその他の形態で伝送してもよい。伝送されるX線データは、未処理X線データとするか、またはデータ収集ステーションオペレータインターフェイス上で実行されるソフトウエアによって処理された、処理済データとしてもよい。さらに、伝送されるデータには、X線データを、検査中の特定の物品と結び付けるか、または関連づけられるように、X線データに加えて識別データを含めてもよい。例えば、識別データには、それに限定はされないが、乗客または検査中の物品を所有する人のディジタル写真データに関連するデータ、フライト情報(フライト番号、航空路、出発または目的地など)、パスポート番号、乗客のチケットのバーコード、または物品またはその物品を所有する人に関する、その他のデータを含めてもよい。
【0018】
この識別データは、以下にさらに詳細に考察するように、遠隔エキスパートが使用してもよい。応用によっては、秘密保持された通信チャネルによってデータを伝送することが重要なことがあり、そのような場合には、当業者に知られている暗号化アルゴリズムを使用して暗号化すること、および/またはセキュアソケットレイヤ(SSL)プロトコル、またはセキュアハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTPS)または当業者に知られている別の秘密保持転送プロトコルなどの、秘密保持転送プロトコルを使用して伝送することしてもよい。別の態様においては、データ収集ステーションのオペレータは、遠隔エキスパートステーションに、X線データおよび識別データを電子メイルで送付してもよい。
【0019】
遠隔オペレータが、データ収集ステーションからのデータを要求する(すなわち、データを「引き寄せる(pull)」)ことのできるシステムとは異なり、本明細書において開示するシステムおよび方法は、データ収集ステーションのオペレータが、遠隔エキスパートステーションにデータを「押し出す(push)」こと、すなわち、必要または望ましいと思われるときに、オペレータがデータの転送を開始することが可能になる。図2に示すように、システムには、それぞれが同一場所にあるか、または異なる場所に配置された、複数の遠隔エキスパートステーションを含めてもよい。一態様において、データ収集ステーション200におけるオペレータは、例えば、検査中の物品内での存在が疑われる、脅威の種類に基づいて、どの遠隔エキスパートステーションにX線データを伝送するかを選択することができる。例えば、一人の遠隔エキスパートは、爆発物を潜在的に含む検査中の物品からのX線データを分析するのに特に適任であり、これに対して別の遠隔エキスパートは、農業禁制品を含む可能性のある物品からのデータを試験するのに特に適任であることがある。データ収集ステーションに存在する、オペレータまたはコンピュータ設備のいずれかが、疑惑物品に潜在的に存在する脅威の種類についての初期判定をすることができる場合には、これを基に遠隔エキスパートを選択してもよい。
【0020】
別の態様においては、システムには、図示されているように、サーバ208を含めてもよい。X線データがデータ収集ステーション200からサーバ208へと伝送され、このサーバ208が、例えば、遠隔エキスパートの利用可能性、任意所与のリンク212上に存在するデータトラフィックの量、その他などの基準に基づいて、選択された遠隔エキスパートステーション210へとX線データを伝えてもよい。一旦、データが遠隔エキスパートステーションに伝送されると、オペレータは、ステップ314に示すように、検査中の物品の扱いに関する遠隔エキスパートからの指示を待ってもよい。待機期間中に、検査中の疑惑物品は、コンベヤから排除して保管して、その間に、その他の物品がスキャンできるようにしてもよい。
【0021】
図4を参照すると、遠隔エキスパートステーションにおいて行われる遠隔データ分析の方法の一つの例のフロー図が示されている。第1のステップ400において、オペレータは遠隔エキスパートステーションにログオンすること、および/または遠隔エキスパートステーションに配置されたコンピュータ設備の電源入れることができる。このステップは、遠隔エキスパートステーションのオペレータの交代の開始を表わすか、またはその日の始まり、その他を表わすことができる。次のステップ402および404において、遠隔エキスパートステーションは、データ収集ステーションのオペレータがデータ転送を開始してX線データおよび関連する識別データを送信するのを待機する。ここで、データ収集ステーションのオペレータが遠隔エキスパートステーションへのデータの転送を開始すると、遠隔エキスパートは、それには限定されないが、電子メイル、インターネットウエブページ、イントラネット、その他などの当業者に知られている任意のプロトコルを介して、伝送されたデータにアクセスすることができる。いくつかの実施例においては、遠隔エキスパートは、何らかの新規のデータにアクセスするか、または暗号化されたデータにアクセスするのに、パスワードを入力することを要求される場合がある。別の例においては、ステップ400でのログオン時にのみパスワードが要求される。
【0022】
システムがサーバを含む一態様においては、サーバは、データ収集ステーションにおいて検査中の物品について収集された、X線データをよび識別データを記憶してもよい。遠隔エキスパートステーションが動作可能になると(ステップ400)、遠隔エキスパートはサーバにアクセスして、分析のために記憶されたデータを検索することができる。
なお、本明細書において使用される場合に「遠隔エキスパート」という用語は、データ収集ステーションのオペレータよりも、高いスキルレベルまたは多くの専門知識を有する、訓練された人間オペレータを指すことができることに留意されたい。この用語は、また、X線データを分析して、例えば、クリア決定(clearing decision)(すなわち、脅威検出、または脅威検出なし)を行うか、または次にデータ収集ステーションのオペレータに伝送して戻すことのできる、脅威ポリゴンなどを生成するように適合された、高度な脅威検出ソフトウエアを含む、コンピュータシステムを指すこともある。すなわち、いくつかの態様においては、遠隔エキスパートは、遠隔エキスパートステーションにおけるコンピュータ設備上で実行される、脅威検出ソフトウエアと一緒に働くことのできる、人間オペレータであってもよく、別の態様においては、遠隔エキスパートステーションには人間オペレータは存在しなくてもよい。
【0023】
ステップ406において、遠隔エキスパートは、受領したX線データを、例えば爆発物またはその他の禁制品などの、潜在的脅威物品に対して分析することができる。上記のように、伝送されたデータは、未処理X線データを含んでもよく、その場合には、遠隔エキスパートステーションでのコンピュータ設備が、データ処理を実行して、遠隔エキスパートによる分析のために、検査中の物品のX線画像を提供してもよい。コンピュータ設備には、さらに、遠隔エキスパートが、検査中の物品に脅威が存在するかどうかを判定するために、それを用いてX線データおよび/または画像を操作することのできる、先進型画像および/またはデータ処理ソフトウエアを含めてもよい。一態様によれば、遠隔エキスパートは、識別データに含まれる情報に応じて、Xデータに対して特定用途向けの脅威検出アルゴリズムを実行してもよい。例えば、脅威検出アルゴリズムは、検査中の物品に関連する乗客の出発地に基づいて選択してもよい。代替的に、遠隔エキスパートは、ステップ408、412、および414に示すように、複数のアルゴリズムを使用して、X線データに対して多様な脅威検出アルゴリズムを実行して、(X線データで表わされる、)検査中の物品における疑惑領域または材質を位置特定または識別する試みをしてもよい。
【0024】
ステップ408〜414によって示すように、遠隔エキスパートがX線データの分析を完了すると、遠隔エキスパートは、データ収集ステーションのオペレータに、その結果を知らせてもよい。データ(X線および識別)は、遠隔エキスパートのスクリーニング結果とともに、データ収集ステーションに再伝送して戻してもよい。一態様によれば、遠隔エキスパートは、データ収集ステーションのオペレータとの音声リンクおよび/またはビデオリンクを開始してもよい。これは、例えば、従来型電話リンク(無線または地上回線)、またはコンピュータ設備を介する音声会議またはビデオ会議、当業者には知られている任意の標準プロトコルなどを用いて行うことができる。一態様において、遠隔エキスパートは、データ収集ステーションのオペレータと対話を行い、例えば、検査中の物品を再スキャンすること、または異なる角度からスキャンすることなどを要求して、物品の分析において遠隔エキスパートを補助してもよい。
【0025】
遠隔エキスパートは、さらに、データ収集ステーションに検査中の物品の取扱いに関する指示を与えてもよい。例えば、遠隔エキスパートは、その物品が脅威を含まず、その目的地に引き渡してもよいことを指示してもよい。代替的に、遠隔エキスパートは、オペレータが警察官などの他のセキュリティ担当者に連絡することを示唆してもよい。本明細書に記載するシステムおよび方法を設備または構成部品の遠隔診断を実行するのに応用することのできる、別の態様においては、遠隔エキスパートは、故障設備や構成部品の修理の仕方に関して、データ収集ステーションのオペレータと相談や指示をしてもよい。なお、遠隔エキスパートとオペレータとの間の音声接続は、システムを介するか(例えば、各ステーションにおけるコンピュータ設備を使用するか)、またはそれ以外ではスクリーニングシステムと関連のない、従来式の地上またはワイヤレスの電話回線を使用して確立できることを理解されたい。
【0026】
図3を再び参照すると、遠隔エキスパートが、データ収集ステーションのオペレータに、脅威が検出されたことを通知すると(ステップ316)、オペレータは、上述のように適当に応答することができる(ステップ318)。脅威が検出されなかった場合には、オペレータは、その物品を、別の検査ステーションまたは積荷地点へと進めるとともに、その他の物品のスキャニングとスクリーニングを続けることができる。なお、一態様においては、検査中の物品について収集されたX線データの遠隔分析は、「リアルタイム」で、すなわちオペレータがその物品に関する指示を待つ間に、できる限り迅速に行うことができることを理解されたい。遠隔スクリーニングは、検査中の物品と共にフライトに搭乗が許可される以前に行うことができる。これは、スクリーニングが爆破物またはその他の危険物の検出を目的とする場合には、最も一般的である。代替的に、例えば、農業禁制品または薬品に対する遠隔スクリーニングは、フライト進行中に、記載された方法による手段としてもよく、スクリーニング結果を、フライトの目的地点に伝送してもよい。
【0027】
上記のように、データ収集ステーション200は、多重レベルスクリーニングシステムのレベル1、レベル2またはレベル3の検査ステーションのいずれでもよい。一つの例においては、データ収集ステーションは、レベル1検査ステーションとして、遠隔エキスパートステーションはレベル2検査ステーションと考えることができる。この実施例においては、データ収集ステーションのオペレータは、遠隔エキスパートステーションに、疑惑物品に対応するX線データだけを伝送してもよい。データ収集ステーションが、すでにレベル2またはレベル3の検査ステーションである、別の実施例においては、データ収集ステーションのオペレータが検査中の物品において潜在的脅威を検出しない場合でも、すべての検査中の物品に対応するX線データを、分析のために遠隔エキスパートに伝送してもよい。なお、収集されたX線データは、そのデータを遠隔エキスパートステーションに伝送する前に、データ収集ステーションにおいて分析しても、しなくてもよいことに留意されたい。
【0028】
図5を参照すると、本発明の観点による、遠隔データアクセスを実現するスクリーニングシステムの別の態様が示されている。この態様においては、それぞれがX線スキャニング能力を有する、多重データ収集ステーション500を、異なるデータ収集場所に配置してもよい。各データ収集ステーション500は、対象物体(検査中の物品)をX線スキャンするとともに、自動化された第1レベルのスクリーニング能力を有してもよい。同様に、それぞれが、目視および/またはオペレータインターフェイス上でスキャンされた物品の再構成画像を操作することによって、第2レベルのスクリーニングを行う人間オペレータを有してもよい。場合によっては関連する乗客に関係する識別データと組み合わせて、疑惑物品のX線データを、ローカルネットワーク502上でローカルサーバ504およびローカルワークステーション506に伝送して、そこでレベル3スクリーニングを行ってもよい。ここでも、スクリーニングには、上記で考察したように、自動化検出ソフトウエアおよび/またはワークステーションオペレータインターフェイス上の再構成画像を目視して操作する、人間エキスパートを含めてもよい。
【0029】
さらに、データ収集ステーション500およびローカルサーバ504から遠隔地に配置された、より専門性の高い第4のレベルのスクリーニングを、図2を参照して上記したように、X線データ、および/または場合よっては追加の乗客情報を、通信チャネル508上で遠隔サーバ510に伝送することによって、行ってもよい。遠隔エキスパートステーション210は、図2を参照して考察したように、遠隔サーバ510を介して、伝送された情報に対するアクセスを獲得して、遠隔エキスパートがX線データを分析してもよい。
【0030】
図5のシステムにおいて、各レベルのスクリーニングは、ある種の検査済物品を「クリア済」、すなわち潜在的脅威を含まないとして除去して、疑惑物品だけを、さらなるスクリーニングに送り、それによって、それぞれのより高レベルのスクリーニングによって、段々に少ない数の物品が分析されるようにすることができる。本発明によれば、遠隔であれローカルであれ、任意の数のスクリーニングのレベルを、そのようなシステムによってサポートすることができる。ローカルスクリーニングステーションおよび遠隔スクリーニングステーションのレベル数と、配設および場所は、特定の用途または空港またはエアラインの組織、その他に適合するように配設することができる。
【0031】
一態様においては、次に高いレベルに伝送される疑惑物品の発生を、電子または自動化システムを介して追跡して、このシステムは、ある頻度の疑惑物品が単一の空港、地理的に関係する空港、特定のフライトパターン上、またはある種の起こり得る脅威をもたらす可能性のある、任意の種類のパターンにおいて確認される場合には、次に高いレベルのエキスパートの注意を喚起できるようにしてもよい。
別の態様においては、異なる場所のエキスパートが協働することができる。例えば、異なる場所にいる2人の人間エキスパートが、スキャンされた対象物体の同一の再構成画像を目視することができるようにしてもよく、この場合にオペレータの一人、例えば、遠隔オペレータが画像を操作している、さらなる協働ツールとしては、遠隔に位置するオペレータ間で、通信チャネルを介して、または上述のように音声および/またはビデオリンク上で、共有することのできる、テキスト、音声、ビデオ、ホワイトボード図面、その他を含めることができる。
【0032】
したがって、本発明は、高度なデータ分析、脅威検出または画像処理アルゴリズムが、データ収集現場で利用不能の場合でも、検査中の物品について収集されたデータの遠隔、特殊分析を可能にする。さらに、サーバ(図2および図5)を使用して、遠隔エキスパートをネットワーク化して、現在、活動可能な任意のエキスパートに、その場所にかかわらず、Xデータを送付することができる。さらに、システムは、「トレーニングデータ」、すなわち人工的に生成されるか、または先行のスクリーニングから記憶された、脅威物品の検出においてオペレータ、エキスパートおよびアルゴリズムを訓練するのに使用することができるデータを転送するのに使用することもできる。
【0033】
手荷物スクリーニングシステムおよびプロセスにおいては、乗客についての識別情報が重要となることが多い。好評ではないが、人種プロフィール作成が行われ、多くの人が、航空路旅行における安全の提供において有用な構成要素であると感じている。いくつかの欧州の国を含む、いくつかの法的管轄区域(jurisdictions)は、乗客についての個人情報を提供せず、そのようなプロフィール作成を、不可能でないにしろ困難にしている。米国を含む、多くの国は、個人の権利を保護しており、これを、人種プロフィール作成の便益に対してバランスさせなくてはならない。
【0034】
本願の出願者らは、個人の権利を保護することと、航空路安全を維持するために助けとなる、個人乗客情報を提供することをバランスさせる方法を見いだした。それを行う一つの方法は、政府機関やその他の団体に乗客情報を収集させ、秘密裡にそれを保管させることである。そのようなデータに対するアクセスは、そのデータを保護する、政府機関被雇用者に限定されることになる。個人データは、何らかの代表的な匿名のデータに変換され、このデータは、米国におけるTSAなどの、航空路において手荷物検査システムで働く者を含み、航空路安全システムを管理、運営する者に公開されることになる。公開された匿名データの一例としては、各乗客に対するスケールに基づくスコアや、またはテロリズムのリスクと関係において歴史的基準を調査した、TSAまたは別の団体によって要綱が定められた、1組の基準における要素の一致に基づく、飛行機上の全乗客に対する全体スコアがある。次いで、航空路安全の運用者が、データを分析して、スコアが閾値を越える場合には、空路が安全であることを自分で納得するために、さらなる方策を講じることができる。例えば、手荷物をさらに捜索するか、または乗客をさらに捜索するか、その他などである。
【0035】
このように様々な例示的態様およびその観点を説明したが、当業者には、修正形態および変更形態が明白である。例えば、本発明のシステムおよび方法は、手荷物スクリーニングに加えて、故障した機器、構成要素その他を遠隔式に診断することに応用することができる。さらに、データ収集ステーションには、X線スキャナーの他にも、例えばCTスキャナーのようなスキャナーを含めて、X線データ以外のデータ、例えば、CTデータを、遠隔エキスパートステーションに転送することができる。そのような修正形態および変更形態は、本開示に含めることを意図するものであり、またそれらは例示のためのものあり、限定を意図するものではない。本発明の範囲は、添付の請求の範囲の適当な構成およびその均等物から決定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】多重レベルスクリーニングシステムの一つの例の概略構成図である。
【図2】本発明の観点による、遠隔データアクセスシステムの一つの例の概略構成図である。
【図3】本発明の一態様による、遠隔データアクセス方法の一つの例の観点を示すフロー図である。
【図4】本発明の一態様による、遠隔データアクセスの一つの例の観点を示すフロー図である。
【図5】本発明の観点による、スクリーニングシステムの別の実施例の概略構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人乗客情報を機密保護すると同時に航空路安全を保証するための方法であって、
第1のエージェンシーによって個人乗客情報を収集するステップ;
前記個人乗客情報を記憶するステップ;
前記第1のエージェンシーの構成員だけに、前記個人乗客情報へのアクセス権を与えるステップ;
個人乗客情報を、所定の1組の基準に基づいて、脅威リスクを表す匿名データに変換するステップ;および
前記匿名データを、航空路安全を担当する第2のエージェンシーに提供するステップを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−510394(P2009−510394A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531279(P2008−531279)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/035672
【国際公開番号】WO2007/035359
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(502255483)エル−スリー コミュニケーションズ セキュリティー アンド ディテクション システムズ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】L−3 Communications Security and Detection Systems,Inc. 
【住所又は居所原語表記】10E Commerce Way Woburn, Massachusetts 01801 U.S.A.
【Fターム(参考)】