説明

個人情報保護シート

【課題】剥離層の上に受像層を積層した構造で、受像層までインクが浸透した場合でも情報の判読が困難となる個人情報保護シート及び個人情報保護伝票を提供する。
【解決手段】基材10と、基材10の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層20と、剥離層20の上に積層された受像層30とを有し、受像層30の上に印字によって形成される情報表示部40と剥離層20との色差ΔE1は、情報表示部40と受像層30との色差ΔE2よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人情報を表示するための層として、剥離、除去可能な層を設けた個人情報保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住所や宛名などの個人情報が記載された郵便物等を廃棄する際は、廃棄物からの個人情報の漏洩を防ぐために、個人情報が記載された部分又は郵便物全体を手で細かくちぎったりハサミやシュレッダーで裁断したりしなければならないといった問題があった。特に、個人情報が特定できない程度にまで手作業で(手やハサミで)細かく断片化することは、極めて手間のかかる作業である。
【0003】
しかも、郵便物の中には、印刷物などを収容した樹脂フィルム製の袋に宛先ラベル(配達先の住所や受取人の氏名が記載されたラベル)を貼り付けたものもある。このような郵便物の場合は、樹脂フィルムごと宛先ラベルを手で細かくちぎったり、ハサミやシュレッダーで裁断するわけにはいかないため、宛先ラベルを樹脂フィルムから剥がさねばならない。しかし、宛先ラベルの脱落は郵便事故の原因となりうるため、宛先ラベルは樹脂フィルムに強固に貼り付けられるのが一般的である。このため、宛先ラベルを樹脂フィルム製の袋から剥がすことは容易ではない。
【0004】
このような問題を解決することを目的とした従来技術として、特許文献1に開示される「個人情報保護シート」がある。特許文献1に開示される発明は、基材の少なくとも一部に形成した剥離層の上に受像層を形成した個人情報保護シートである。この個人情報保護シートにおいては、擦ることによって剥離層から受像層を剥離させることが可能であるため、情報表示部を形成するインキを受像層とともに脱落させることにより、受像層上に表示されていた情報を判読不能とできる。
【特許文献1】特開2006−285203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される発明では、万一情報表示部を形成するインキが受像層に浸透して剥離層にまで到達してしまった場合には、受像層を剥離させたとしても、その下に現れる剥離層に情報が残ってしまうため、情報が判読不能とはならなくなってしまう。
【0006】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、剥離層の上に受像層を積層した構造で、受像層までインキが浸透した場合でも情報の判読が困難となる個人情報保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、基材と、基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、剥離層の上に積層された受像層とを有し、受像層の上に印字によって形成される情報表示部と剥離層との色差は、情報表示部と受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シートを提供するものである。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、基材と、基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、基材と剥離層との間に設けられた視認性低下層と、剥離層の上に積層された受像層とを有し、剥離層は透明であり、受像層の上に印字によって形成される情報表示部と視認性低下層との色差が、情報表示部と受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シートを提供するものである。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第3の態様として、基材と、基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、基材と剥離層との間に設けられた図柄層と、剥離層の上に積層された受像層とを有し、剥離層は透明であることを特徴とする個人情報保護シートを提供するものである。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第4の態様として、基材と、基材の一方の面側に形成された剥離層と、剥離層の上に積層された受像層とを有し、剥離層は透明であり、受像層の上に印字によって形成される情報表示部と基材との色差が、情報表示部と受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剥離層の上に受像層を積層した構造で、受像層までインキが浸透した場合でも情報の判読が困難となる個人情報保護シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1に、本実施形態に係る個人情報保護シートの構成を示す。この個人情報保護シートは、基材10の上に、剥離層20として表面不活性なエネルギー線硬化型樹脂層、受像層30として凝集力の低い樹脂層を順に積層したシートである。受像層30は剥離層20との密着性が低く、基材と略平行な力を局所的に加えると(コインや爪等で擦る)剥離層20との界面から剥がれる。受像層30の表面に公知の印字方法(インキ、トナーによるプリンタでの形成や、印刷や、鉛筆などでの手書きによる形成、カーボン、ノンカーボンからなる複写方式等)で形成した情報表示部40によって個人情報(住所や名前、電話番号等)を表示した個人情報保護シートでは、受像層30をコインや爪等で擦ることで、受像層30の表面に形成された個人情報(情報表示部40)も一緒に剥離させることができる。
【0013】
本実施形態においては剥離層20と受像層30とは異なる色を呈する。具体的には、剥離層20と情報表示部40との色差(色空間中に位置付けられる二つの色の距離)をΔE1、受像層30と情報表示部40との色差をΔE2とした時に、ΔE1<ΔE2の関係を満たすように剥離層20及び受像層30が着色されている。ここで任意の色空間を適用可能であるが、人間の視覚に近いCIELAB色空間などが好適である。
【0014】
情報表示部40によって受像層30の上に表示される情報を人間が視認する際には、情報表示部40の色と受像層30の色とに差があることによって、情報表示部40の存在を知覚することとなる。一方、情報表示部40のインキが剥離層20まで浸透した状態で受像層30を除去した場合には、情報表示部40によって表示されていた情報は、浸透したインキによって表示された情報表示部40’の色と剥離層20の色との差によって、人間に知覚されることとなる。
ここで、浸透したインキによって表示された情報表示部40’よりも情報表示部40の方が濃く鮮明であるため、情報表示部40’と剥離層20との色差ΔE1’は、情報表示部40と剥離層20との色差ΔE1以下であり、ΔE1≧ΔE1’の関係となる。情報表示部40’と剥離層20との色差ΔE1’の測定は実際には困難であるが、上記の関係からΔE2>ΔE1であれば、常にΔE2>ΔE1’となるので、実用上は測定が容易なΔE1を用いて、ΔE2>ΔE1の関係を満たすようにすればよい。
このように、剥離層20と情報表示部40との色差ΔE1を受像層30と情報表示部40との色差ΔE2よりも小さくすることにより、情報表示部40によって表示される情報は受像層30の上に表示される場合よりも、剥離層20の上に表示される場合の方が視認しにくくなる。
【0015】
ここで、説明の簡略化のためにモノクロの場合を考える。
情報表示部40の色が受像層30よりも濃い色の場合として、情報表示部40が黒色、受像層30が白色、剥離層20が灰色とすると、受像層30上の情報は、黒色と白色との色の差によって認識される。一方、剥離層20まで浸透したインキによって表示される情報は、黒色と灰色との色の差によって認識される。この場合、黒色と灰色との色差の方が黒色と白色との色差よりも小さいため、剥離層20まで浸透したインキによって表示される情報は、受像層30の上に表示された情報よりも視認しにくい。
【0016】
逆に、情報表示部40の色が受像層30よりも薄い色の場合として、情報表示部40が白色、受像層30が黒色、剥離層20が灰色とすると、受像層30上の情報は、白色と黒色との色の差によって認識される。一方、剥離層20まで浸透したインキによって表示される情報は、白色と灰色との色の差によって認識される。この場合、白色と灰色との色差の方が白色と黒色との色差よりも小さいため、剥離層20まで浸透したインキによって表示される情報は、受像層30の上に表示された情報よりも視認しにくい。
【0017】
このように、情報表示部40の色が受像層30よりも濃くても薄くても、剥離層20と情報表示部40との色差ΔE1を受像層30と情報表示部40との色差ΔE2よりも小さくすることにより、剥離層20の上に表示される情報を受像層30の上に表示される場合よりも視認しにくくできる。
【0018】
浸透したインキによって剥離層20の上に表示される情報を視認しにくくする効果は、ΔE1がΔE2よりも小さければΔE1の値にかかわらず得られるが、ΔE1を十分小さくして、浸透したインキによって剥離層20の上に表示される情報を視認不可能とすることが好ましい。
【0019】
ここでは説明の簡略化のためにモノクロの場合を例として説明したが、カラーの場合も同様であることは言うまでもない。
【0020】
上記の説明においては剥離層20や受像層30そのものの色と情報表示部40との色差について考えたが、これらの層が光を透過する場合(層厚が薄くて下の層や基材が透けて見える場合など)には、基材10上の剥離層20の色と情報表示部40の色との色差や、基材10及び剥離層20上の受像層30の色と情報表示部40の色との色差をΔE1やΔE2の代わりに用いれば良い。すなわち、剥離層20や受像層30そのものの色ではなく、積層した状態での色を基にして情報表示部40との色差を求めれば良い。
【0021】
なお、以下の説明では、受像層30の上に個人情報を表示する情報表示部40が形成済みである場合を例とするが、情報表示部40が未形成の状態であっても良い。この場合には、ユーザは個人情報保護シートに公知の印字方法にて上記の色差の関係を有する情報表示部40を形成し、任意の情報を表示可能であることは言うまでもない。
【0022】
図1に示したように、個人情報保護シートは、用紙や封筒、葉書、ラベル台紙等といった個人情報を記載するための基材10と剥離層20と受像層30とから構成され、基材10上に剥離層20、受像層30の順で積層されている。受像層30の上には、公知の印字方法で形成された情報表示部40によって個人情報が表示されている。基材10には、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの手法によって剥離層20及び受像層30を積層させるが、これらの層を特別に厚く形成する必要が無いのであれば、コスト面からオフセット印刷、フレキソ印刷が好適である。
【0023】
[基材]
基材10は、公知の材料の中から適宜選択することができる。例えば、紙(上質紙、コート紙、クラフト紙等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等)、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等)、プラスチックフィルム(ポリ塩化ビニルフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム等)、ポリオレフィンからなる合成紙等が挙げられる。
また、基材10の下に粘着層(図示せず)を設けることで他の媒体(封筒など)に貼着することが可能となる。この場合には、粘着層の下に剥離紙を設けて受像層/剥離層/基材/粘着層/剥離紙という層構成とすることで、ラベルとして用いることもできる。
【0024】
[剥離層]
剥離層20は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を使用する。また、他の材料としては、溶剤型熱可塑性樹脂(塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル・スチレン共重合体樹脂、ニトロセルロース、マレイン酸樹脂等)、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロピドン等)、又は各種のアクリル共重合樹脂やポリウレタン等を単独、またはこれらにシリコン樹脂等の剥離剤を添加して使用可能である。
【0025】
また、剥離層20の基となる混合物の組成は、表1に示す通りであり、各材料の含有率は、あわせて100%になれば、適宜変更可能である。
また、各材料を使用する目的は以下の通りである。
モノマーは、反応性希釈剤として使用し、混合物の粘度を調整する役割を果たす。合成樹脂類は、剥離層20を構成する樹脂成分の主体となる。反応開始剤は、混合物の硬化(乾燥)反応を促す。剥離剤は、剥離層20に剥離特性を持たせる。着色顔料は、剥離層20を着色する際に用いられる。
【0026】
【表1】

【0027】
[受像層]
受像層30は、紫外線硬化型樹脂等を使用する。受像層30の基となる混合物の組成は、表2に示す通りであり、各材料の含有率は、あわせて100%になれば、適宜変更可能である。
また、各材料の使用目的は以下の通りである。
顔料は、体質顔料及び着色顔料としての性質を持ったものである。体質顔料としての性質とは、バインダー材料にチキソトロピー(応力がかかると粘度が下がる特性)を持たせるものであり、着色顔料としての性質とは、バインダー材料を着色するものである。着色顔料の一例としては、チタンホワイトが挙げられる。モノマーは、反応性希釈剤として使用され、粘度を調整する役割を果たす。合成樹脂類は、受像層30を構成する樹脂成分の主体となる。反応開始剤は、混合物の硬化(乾燥)反応を促すものである。なお、受像層30の基となる混合物には剥離剤を含有させてもよく、剥離剤を含有させることによって剥離層20からの剥離性を高められる。
【0028】
【表2】

【0029】
図2は、受像層30が剥離層20から削り取られる様子を示した図である。
図2に示すように、コインや爪等で受像層30を削ることで(換言すると、所定値以上の圧力を加えながら受像層30を擦ることで)、受像層30の上に形成されている情報表示部40も同時に剥離層20から剥離、除去される。なお、受像層30と剥離層20との密着性は、剥離層20や受像層30のそれぞれの基となる混合物の組成によって調整可能である。
【0030】
また、受像層30は、フレキソ印刷で形成する場合には、上記表2に示した混合物とは組成の異なるインキを用いて形成することもできる。
フレキソ印刷で受像層30を形成する場合にその基となるフレキソインキの構成を表3に示す。バインダー樹脂は、乾燥後の受像層30の主成分となる樹脂である。体質顔料は、受像層30にチキソトロピー(応力がかかると粘度が下がる特性)を持たせる。マット剤は、受像層30の表面を所定の粗さとするために添加される。水は、寡多によってフレキソインキの粘度が変化する。着色顔料は、受像層30を着色するために添加される。
【0031】
【表3】

【0032】
フレキソ印刷によって受像層30をオフセット印刷よりも厚く(10μm程度)形成すれば、コインや爪などの接する部分が厚さ方向に大きくなるため(換言すると、コインや爪などによって受像層30に横方向の力を強く加えられるため)、受像層30を剥離層20から剥離させやすくなる。
【0033】
本実施形態にかかる個人情報保護シートは、所定値以上の圧力を加えながら受像層30を擦ることで、受像層30が剥離層20から剥離・除去されるため、受像層30に情報表示部40によって個人情報が表示されていた場合は、同時に剥離・除去される。よって、個人情報が表示された個人情報保護シートを廃棄する際には、簡単な操作で個人情報の判読を不能とすることができ、廃棄物からの個人情報の漏洩を防止できる。
【0034】
仮に情報表示部40を形成するインキが受像層30に浸透し、剥離層20にまで到達して情報表示部40’が形成されていたとしても、図3に示すように、剥離層20と情報表示部40’との色差は受像層30と情報表示部40との色差よりも小さいため、個人情報は判読しにくい。剥離層20と情報表示部40との色差を十分小さくすることにより、廃棄物からの個人情報の漏洩を防止できる。さらに、受像層30を剥離させた領域の外に情報表示部40の一部がはみ出ていたとしても、剥離層20との色差が小さいため個人情報を判読しにくい。
【0035】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。
図4に、本実施形態に係る個人情報保護シートの構成を示す。第1の実施形態に係る個人情報保護シートとは基材10と剥離層20との間に視認性低下層50が設けられている点で相違する。
【0036】
基材10、剥離層20、受像層30及び情報表示部の原料は、第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態においては、剥離層20には着色顔料が含まれていないか、含まれていても微量であるため、剥離層20は透明又は略透明である。
【0037】
視認性低下層50と情報表示部40との色差ΔE3は、受像層30と情報表示部40との色差ΔE2よりも小さくなるように、受像層30、情報表示部40及び視認性低下層50の各層の色が選択されている。
【0038】
情報表示部40を形成するインキが受像層30に浸透して剥離層20まで到達し、情報表示部40’が形成された場合、情報表示部40もろとも受像層30を除去すると、情報表示部40’が露出する。この際、剥離層20は透明であるため、その下にある視認性低下層50の色が透けて見えるようになる。よって、剥離層20を透過して見える視認性低下層50の色と情報表示部40’の色との色差は、受像層30の色と情報表示部40との色差よりも小さくなり、情報表示部40’によって剥離層20上に表示される情報は判読しにくい。
【0039】
なお、ここでは基材10の上に視認性低下層50を設けた場合を例としたが、図5に示すように視認性低下層50は、剥離層20と基材10との間の任意の位置に設けることが可能である。ここで、剥離層20と視認性低下層50との間に層が存在する場合には、それらの層は透明でなければならない。一方、視認性低下層50と基材10との間に層が存在する場合には、それらの層は任意の色で良い。
【0040】
また、図6に示すように、情報表示部40との色差ΔE3’がΔE2よりも小さくなるように基材10そのものが着色されていても同様の効果が得られる。この場合には、基材10と剥離層20との間に透明又は略透明の任意の層を設けることが可能である。
【0041】
〔第3の実施形態〕
本発明を好適に実施した第3の実施形態について説明する。
図7に、本実施形態に係る個人情報保護シートの構成を示す。第1の実施形態に係る個人情報保護シートとは基材10と剥離層20との間に図柄層60が設けられている点で相違する。ここでの図柄とは、情報表示部40と重ね合わせた時に情報表示部40の視認性が低下する任意の模様(迷彩パターンや地紋など)である。
【0042】
基材10、剥離層20、受像層30及び情報表示部の原料は、第1の実施形態と同様である。ただし、第2の実施形態と同様に、剥離層20には着色顔料が含まれていないか、含まれていても微量であるため、剥離層20は透明又は略透明である。
【0043】
情報表示部40を形成するインキが受像層30に浸透して剥離層20まで到達し、情報表示部40’が形成された場合、情報表示部40もろとも受像層30を除去すると、情報表示部40’が露出する。この際、剥離層20は透明であるため、図8に示すように剥離層20の下にある図柄層60が透けて見えるようになる。これにより、情報表示部40’によって剥離層20上に表示される情報は判読しにくくなる。
【0044】
なお、ここでは基材10の上に視認性低下層50を設けた場合を例としたが、図9に示すように図柄層60は、剥離層20と基材10との間の任意の位置に設けることが可能である。ここで、剥離層20と図柄層60との間に層が存在する場合には、それらの層は透明でなければならない。一方、図柄層60と基材10との間に層が存在する場合には、それらの層は任意の色で良い。
【実施例】
【0045】
上記第1の実施形態に係る個人情報保護シートの実施例を示す。
上質紙を基材とし、その上に剥離層の基となる混合物をオフセット印刷によって印刷して、厚さ1μm前後の剥離層を形成した。混合物の組成は、モノマー70%、合成樹脂類10%、反応開始剤10%、剥離剤3%、着色顔料0.8%、樹脂のオフセット印刷に用いられるその他の一般的な成分が残りを占めて計100%となるように調整した。なお、この混合物は乾燥させると濃い灰色を呈した。
さらに、剥離層の上に受像層の基となる混合物をフレキソ印刷によって印刷して、厚さ10μm程度の受像層を形成した。混合物の組成は、顔料、モノマー及び合成樹脂類が合わせて25%、反応開始剤や水などのその他の成分が75%となるように調整した。なお、この混合物は乾燥させると薄い水色を呈した。
さらに、受像層の上に、インクジェット印刷によって情報表示部を形成し、サンプルを作成した。情報表示部は、実際には文字として印刷されることが多いが、細い線で形成された文字では明度や色相、彩度の測定が困難である。故に、情報表示部を形成するインキと同じものを用いて、測定用の数mm角のマークを別に印字し、そのマークを測定することで、情報表示部そのものの明度や色相、彩度を測定できるようにした。
【0046】
このサンプルは、目視では、情報表示部は黒色、剥離層は濃い灰色として認識できた。また、受像層は、下地となる剥離層の色に影響されて淡い灰色として認識できた。剥離層まで浸透したインキ(情報表示部の基となるインキ)によって表示される情報は、受像層の上の情報表示部よりも読み取りにくい状態であった。
【0047】
作成したサンプルに関して、JIS Z 8730(2002)に基づいて、情報表示部と受像層との色差、及び情報表示部と剥離層との色差を算出した。
分光光度計として、GretagMacbeth社SpectroEyeTM(型番)36.64.00を用い、測定によって、情報表示部を基準とした明度差、色相差及び彩度差を得た。これを基に下記式(1)によって色差を算出した。
分光光度計の測定条件は、
測定機能:CIE L***
光源:D50
観察視野:2°
白色ベース:Abs(絶対白色)
フィルタ:なし
取得年月日:2002年5月
である。
【0048】
【数1】

【0049】
以上の条件での測定及び演算の結果を表4に示す。情報表示部と受像層との色差の平均は41.87、情報表示部と剥離層との色差の平均は41.18であり、(情報表示部と受像層との色差)>(情報表示部と剥離層との色差)の関係を満たすことが確認できた。
【0050】
【表4】

【0051】
なお、上記各実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、上記実施形態においては、受像層30の上に情報表示部40によって個人情報が表示されている個人情報保護シートを例としたが、情報表示部40が表示する情報は個人情報に限定されることはなく、任意の文字、文章、図柄などを表すものであっても良い。また、剥離層と受像層とは必ずしも同じ大きさ(面積)で形成する必要はない。すなわち、剥離層の一部分にのみ受像層が積層されていても良いし、剥離層が形成されていない領域に受像層の一部がはみ出していても良い。
また、剥離層は必ずしも基材の直上に形成されている必要はなく、基材表面の凹凸が大きい(基材の表面が粗い)場合には、基材の表面に目止め層を形成し、その上に剥離層を形成しても良い。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態にかかる個人情報保護シートの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における受像層が剥離除去される様子を示した図である。を示す図である。
【図3】剥離層まで浸透したインキによって表示される情報が判読困難となった状態を示す図である。
【図4】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る個人情報保護シートの構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態にかかる個人情報保護シートの別の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態にかかる個人情報保護シートの別の構成を示す図である。
【図7】本発明を好適に実施した第3の実施形態にかかる個人情報保護シートの構成を示す図である。
【図8】図柄層によって情報の視認性が低下した状態を示す図である。
【図9】第3の実施形態にかかる個人情報保護シートの別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 基材
20 剥離層
30 受像層
40 情報表示部
50 視認性低下層
60 図柄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、
前記剥離層の上に積層された受像層とを有し、
前記受像層の上に印字によって形成される情報表示部と前記剥離層との色差は、前記情報表示部と前記受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シート。
【請求項2】
基材と、
前記基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、
前記基材と前記剥離層との間に設けられた視認性低下層と、
前記剥離層の上に積層された受像層とを有し、
前記剥離層は透明であり、
前記受像層の上に印字によって形成される情報表示部と前記視認性低下層との色差が、前記情報表示部と前記受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シート。
【請求項3】
基材と、
前記基材の一方の面側の少なくとも一部に形成された剥離層と、
前記基材と前記剥離層との間に設けられた図柄層と、
前記剥離層の上に積層された受像層とを有し、
前記剥離層は透明であることを特徴とする個人情報保護シート。
【請求項4】
基材と、
前記基材の一方の面側に形成された剥離層と、
前記剥離層の上に積層された受像層とを有し、
前記剥離層は透明であり、
前記受像層の上に印字によって形成される情報表示部と前記基材との色差が、前記情報表示部と前記受像層との色差よりも小さいことを特徴とする個人情報保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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