説明

偏光カップリングキューブコーナー型再帰反射体

ピラミッド状構成に配置された3つの互いに直交する反射平面を含み、少なくとも1つの反射平面は、キューブコーナー型再帰反射体を抜け出る光線の偏光状態を、すべての直線偏光の方向に対して、前記キューブコーナー型再帰反射体に入射する光線の偏光状態に直交するか、あるいは実質的に直交するようにする非等方性表面を有する、キューブコーナー型再帰反射体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、ここに参照として組み込まれる、2005年11月1日付で出願された米国仮出願番号60/732,089号に基づいており、それに対して優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般的に偏光状態変更キューブコーナーに関し、特に、直線偏光直交化と呼ばれる、すべての直線偏光を90゜だけ回転させるキューブコーナーのための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
センサーを通過する対象物(コンベヤーベルト上の対象物、料金所での自動車など)の検出や距離の測定のような多様な応用は、下記のような光学システムを必要とする。このシステムは、以下において「光源」と呼ばれる、ランプ、レーザーまたはその他の光学装置によって照明される。この光源からの光の一部分は、ビームスプリッタを通って、さらに、ある経路を介してキューブコーナー型再帰反射体へ伝送される。光は、同一の経路に沿ってビームスプリッタに戻り、ビームは、ビームスプリッタによって部分的に反射される。そして、反射された光は、検出器による吸収あるいは他の光学装置への通過によりシステムから出射される。このような出射を、以下において「検出器」と称する。
【0004】
一部のシステムにおいて、非偏光ビームスプリッタが使用されている。当業者は、そのようなビームスプリッタを通る2つの経路ゆえに、光源光の最大25%までが検出器に至るということを認識するはずである。図1において、非偏光ビームスプリッタを含むそのようなシステムの例が示されている。図1は、システム1に入射する光を示す。光は、非偏光ビームスプリッタ2によって分割される。光の50%が、3からシステムを出射して、残りの50%は、キューブコーナー4に入射する。それから、キューブコーナー4が光を戻して、光の半分(元の光の25%)は、光源5に戻り、残りの半分は、システムの出口6に到逹する。別のシステムは、偏光ビームスプリッタを使用している。このようなシステムの効率は、再帰反射体の偏光特性によって異なる。一部のシステムは、その偏光特性が屈折率に依存するが、しかし、6個の内のそれぞれにおいて異なる大きな偏光変化のために、一次の範囲においては偏光除去器である、誘電体全反射キューブコーナーを用いる。このようなシステムは、光源光の50%が検出器に至りうる。図2に、そのようなシステムが示されている。図2は、システムに入射するp偏光された光7を示す。p偏光された光が、偏光ビームスプリッタ(以下、「PBS」)8に入射するため、全入射光9は、PBSから出射して、キューブコーナー10に入射する。そして、偏光された光は、偏光が除去された光11としてキューブコーナー10を出射する。さらに、光のp偏光された部分は、光源12に戻すことにより無くなる(システムに入射する光の約50%)。s偏光された光は、システム13から出射する(同じく、システムに入射する光の約50%)。金属コーティングされた中空のキューブコーナーに対して、検出器における偏光状態は光源偏光状態とほぼ同一であり、検出器に存在する光がほとんどない結果となる。これは、図3に示されており、金属コーティングされたキューブコーナー14は、金属コーティングキューブコーナー14から出射するp偏光された光15、およびシステムから出射し、100%光源へ戻る(損失)p偏光された光16を生成する。一部のシステムは、図4に示されているように、光学的な経路に4分の1波長リニア・リターダーを設けている。図4において、p偏光された光7は、PBS8に入射し、全入射光は、PBS9から出射して、入射偏光17に対して45゜に向けられたファスト・アキシスを有する4分の1波長リニア・リターダー(以下、「QWLR」)に入射する。光は、金属コーティングを有するキューブコーナー19に対して入射する右円偏光として、QWLRから出射する。そして、光は、左円偏光光20としてキューブコーナー19から出射して、QWLR17に再入射する。そのあと、光は、s偏光された形態21でQWLR17から出射する。光がs偏光であるため、入射光の100%がシステムを出射して、光源に戻ることにより損失されるものはない。したがって、原理上は、4分の1波長リニア・リターダーを付加することによって、金属コーティングされたキューブコーナーを有する、100%の直線偏光カップリングが可能となる。しかしながら、波長板が注意深く整列されなければならないため、これは、システムに余分の費用および複雑さが必要となる。実際に、システムは、80%の偏光カップリングの達成ができていない。
【発明の開示】
【0005】
したがって、本発明の一実施形態において、キューブコーナーは偏光に対して直交方向に配置される。これによって、再帰反射された光は、如何なる入射直線偏光状態に対しても、常に直交した偏光状態を有する。そのようなシステムは、4分の1波長リニア・リターダーを付加するような複雑さがなくても、光源光の100%が検出器に到逹するように許容する。図5には、PBS8に入射するp偏光された光7が、PBSを出射する全入射光9とともに示されている。そして、光は、偏光に対して直交方向に配置されるキューブコーナー23に入射する。結果として、光は、s偏光された光24としてキューブコーナーから出射する。このように、s偏光された光がPBS9に再入射するとき、入射光の100%がシステムから出射する(25)ことができる。コーナーキューブは、特定の角度の方向を取ることを必要としない。そのようなシステムは、同等な信号対雑音の比で、図1のシステムの1/4の光学パワーまたは図2の1/2のパワーにて動作することができ、あるいは、より損失の多い媒体を介して、他のシステムよりももっと長い距離を提供することができる。
【0006】
それに応じて、本発明の1つの目的は、ピラミッド状構成に配置された3つの互いに直交する反射平面を含み、少なくとも1つの反射平面は、キューブコーナー型再帰反射体を出射する光線の偏光状態が、いずれの入射直線偏光の方向に対しても、キューブコーナー型再帰反射体に入射する光線の偏光状態に直交するか、あるいは実質的に直交するようにする非等方性表面を有する、直線偏光直交化を遂行するキューブコーナー型再帰反射体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の実施形態において、少なくとも1つの反射平面は、少なくとも1つのサブ波長格子を有する。
【0008】
本発明の他の実施形態において、少なくとも1つの反射平面は、複屈折コーティングを有する。
【0009】
本発明の他の実施形態において、それぞれの反射平面は、27.5%の楕円率角度で反射平面の表面のp平面に方向付けられた180°のリターダンスを有する表面を有し、すなわち、それぞれの界面は、近似的に{1、0.57、0、0.82}で表されるストークス固有ベクトルを有する、2分の1波長楕円形リターダーとして動作する。
【0010】
本発明の他の実施形態において、それぞれの反射平面は、反射平面の表面のs及びp平面に対して45゜に向けられた180゜のリニア・リターダンスを有する表面を有し、すなわち、それぞれの界面は、s及びp偏光状態に対して±45゜に向けられたリターダンス固有状態を有する、2分の1波長リニア・リターダーとして動作する。
【0011】
本発明の他の実施形態において、それぞれの反射平面は、s及びp平面において、偏光固有状態として±70.52゜=arccos(1/3)のリニア・リターダンスを有する異方性表面を有する。この実施形態において、表面の異方性は、方位角に依存して、リターダンスを変化させる。0の方位角に対してリターダンスがプラス70.52゜であれば、リターダンスは、90゜の方位角に対してマイナス70.52゜となる。
【0012】
本発明の他の実施形態において、少なくとも1つの反射平面は、s及びp平面に整列されない偏光固有状態を有する異方性表面を有し、6個のうちの、任意のまたは全てのもののミュラーマトリックスは、理想の直線偏光直交化ミュラーマトリックス
【数1】

に同等であるかまたは近似する。
【0013】
本発明の他の様態によると、それぞれの反射平面は、ダイアテニュエーション性を備える表面を有する。
【0014】
添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって、本発明をより完全に認識することができ、本発明の利点をよりよく理解することができるであろう。なお、類似の参照符号は、それぞれの図面における同一または対応する部分を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
キューブコーナーは、ピラミッド状の構成となった3つの互いに直交する反射平面から構成される。3つのすべての平面が交差する地点は、キューブコーナーの頂点として知られている。再帰反射において、いずれの入射光線であっても、それぞれの表面と一回突き当たる。3つの平面があるため、平面と突き当たる順番は、3階乗個の組み合わせ、すなわち、123、132、213、231、312及び321である。このような6個の組み合わせは、キューブコーナーの正面における6個の区別されるもの(サブ開口または非連続の波面)に対応する。キューブコーナーの偏光特性の計算は、6個のもののそれぞれの偏光特性の計算を必要とする。6個のものそれぞれに対して、ミュラーマトリックスの計算は、4個の回転マトリックスと、3個の表面反射マトリックスとの積である(J. Liu and R. M. A. Azzam, "Polarization properties of corner-cube retroreflectors: theory and experiment ," Appl. Opt. 36, 1553-1559 (1997), S. E. Segre and V. Zanza, "Mueller calculus of polarization change in the cube-corner retroreflector ," J. Opt. Soc. Am. A 20, 1804-1811 (2003), M. S. Scholl, "Ray trace through a corner-cube retroreflector with complex reflection coefficients," J. Opt. Soc. Am. A 12, 1589- (1995), E. R. Peck, "Polarization properties of corner reflectors and cavities," J. Opt. Soc. Am. 52, 253-257 (1962), Kalibjian, Ralph, "Stokes polarization vector and Mueller matrix for a corner-cube reflector", Optics Communications, Volume 240, Issue 1-3, p. 39-68 (2004))。回転マトリックスは、キューブコーナーの幾何学的な特性から導出される。表面反射マトリックスの計算は、界面のタイプ、すなわち、金属反射、全内面反射、多層コーティング界面、サブ波長格子などに依存する。キューブコーナーの累積偏光特性は、6個のもののそれぞれに対してミュラーマトリックスの平均によって求められる。これまで、キューブコーナー型再帰反射体のすべての発表された偏光分析は、等方性界面を仮定していた。等方性界面であれば、表面の振幅反射係数から表面反射マトリックスの計算を行うことができる(フレネル係数、多層膜計算など)。
【0016】
一部の応用において、入射光線は、完全に再帰反射されないことが好ましい。コーナーキューブは、平面をわずかに非直交とさせるか、反射表面をカーブさせることを含め、多様な方式で変更することができる。キューブ構造におけるどのような小さな変化とも関係なく、戻ってきたビームの偏光状態の新規の変更は、ここに説明される新しい技法によって達成することができる。
【0017】
本発明は、すべての直線偏光の方向に対して、出射される光線の偏光状態を、入射光線の偏光方向に対して直交するかあるいは実質的に直交するようにする、非等方性表面を有するキューブコーナーである。すべての偏光に対して、出射される偏光は入射する直線偏光に直交するため、正面の法線周りの回転に対して、キューブコーナーの性能は、すべての方向に対して同一であるので、簡単に使用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態は、その表面が、1つ以上のサブ波長格子または複屈折コーティングによって変更されたキューブコーナーである。より具体的に、キューブコーナーは、すべての3つの面にサブ波長格子を有し、変更された面のリターダンスが180゜であり、また、(1)s及びpベクトルに対して、直線として45゜に向けられているか、(2)s及びpベクトルに対して、0゜に向けられており、27.5゜の楕円率で楕円であるか、あるいは、(3)上記段落番号0011で述べたように、±72゜のリニア・リターダンスを有する異方性表面である。もしくは、キューブコーナーは、その特性が実質的にこれと類似の、変更された反射表面を有する。さらに、本発明は、このような特性を有するキューブコーナーのアレイ、またはキューブコーナーのシートを含む。
【0019】
通常の金属または誘電体コーナーキューブ、または裏面が金属コーティングされたコーナーキューブ、もしくは裏面が多層誘電体コーティングで塗布されたコーナーキューブは、高効率の偏光変換を生成することができない。また、等方性薄膜を用いる変更は、所望の効果を効率的に達成することができない。いずれの等方性表面であっても、表面に対する光線の入射角にのみ依存して、光線の方位角には依存しないという特性を有する。キューブコーナーの正面に垂直に入射する光線に対して、すべての3つの反射に対する入射角は54.7゜である。幾何学的な要因に起因し、それぞれの反射の間に偏光基準面(s及びp平面)の60゜回転が存在する。いずれの全内面反射であってもダイアテニュエーション性(減衰特性における非対称性)を備えることはなく、常にs平面及びp平面の方向を向いているリターダンスのみを有する。この与えられた制限条件において、理想的な偏光カップリングの達成は不可能である。3つの同一の等方性反射平面を有するキューブコーナーは、0.5という理論上の最大カップリングを有する。3つの反射平面が異なるリターダンスを有する等方性であれば、すべての入射状態に対して75%のカップリングを達成することができ、または、他の方法では、1つの入射直線偏光状態に対して1のカップリングが得られ、他の直線偏光状態は、0のカップリングを有する。これらは、等方性表面を用いたキューブコーナーに対する理論上の最大値である。
【0020】
所望の偏光カップリングを生成するために、本発明の一実施形態のキューブコーナーは、反射平面にサブ波長格子を設けることによって変更される。サブ波長格子は、その形状、周期、及びアスペクト比によって特定される。等方性表面とは異なり、サブ波長格子で変更された表面の特性は、方位角に依存する。サブ波長格子で変更された表面に対する表面反射マトリックスは、厳密結合波理論(Rigorous Coupled Wave Theeory;RCWT)のような数学的方法によって計算することができる(M. G. Moharam and T. K. Gaylord, "Rigorous coupled-wave analysis of metallic surface-relief gratings," J. Opt. Soc. Am. A 3, 1780- (1986), M. G. Moharam, E. B. Grann, D. A. Pommet, and T. K. Gaylord, "Formulation for stable and efficient implementation of the rigorous coupled-wave analysis of binary gratings," J. Opt. Soc. Am. A 12, 1068- (1995), M. G. Moharam, D. A. Pommet, E. B. Grann, and T. K. Gaylord, "Stable implementation of the rigorous coupled-wave analysis for surface-relief gratings: enhanced transmittance matrix approach," J. Opt. Soc. Am. A 12, 1077- (1995), M. G. Moharam and T. K. Gaylord, "Diffraction analysis of dielectric surface-relief gratings," J. Opt. Soc. Am. 72, 1385- (1982), M. G. Moharam and T. K. Gaylord, "Diffraction analysis of dielectric surface-relief gratings: Erratum," J. Opt. Soc. Am. 73, 411- (1983))。図6に示されているように、コーナーキューブの正面32に垂直に入射する光線27に対する方位角26は、第1の面では0゜、第2の面では90゜、第3の面では0゜である。また、図6には、キューブコーナーの頂点30から、反射平面29の2つの頂点ではないコーナーの間の中心に配置された、正面32の辺上の点までのライン28が示されている。また、反射表面29に垂直であるライン31も、入射角33とともに示されている。周期が充分に小さければ、サブ波長格子は、リターダーとして作動する。例えば、2つの直交する方向が異なる屈折率n及びnを有する材料から製造された、通常の複屈折リターダーを考える。入射したのと同一の方向で偏光状態が材料から出射するように、単に絶対位相を変更することだけによってそれぞれの屈折率と揃えられた1つの偏光状態が存在する。いずれの入射偏光状態であっても、これらの2つの和に分解することができるため、これらは、すべての偏光状態の動作を記述するのに十分な基盤を形成する。このような偏光状態は、固有偏光と呼ばれる。リターダンスは、通常、これら2つの偏光状態の間のOPD差異として定義される。
【数2】

0の方位角に対して、s偏光がnに整列され、p偏光がnに整列されて、n>nであり、したがって、リターダンスはプラスであると仮定する。また、90゜の方位角に対して、s偏光の状態はnに整列され、p偏光はnに整列される。このような場合、リターダンスはn−n<0であり、したがって、表面のリターダンスは、単に方位角を変更したことによってマイナスとなっている。サブ波長格子は、同一の動作を見せる。これは、コーナーキューブのすべての表面が同一の異方性表面を有するなら、正面に垂直にコーナーキューブに入射した光線は、第1及び第3の反射で見られるマイナスのリターダンスを、第2の反射で見るということを意味する。異方性表面のこのような性質のため、理想的な偏光カップリングの達成が可能となる。理想的な偏光カップリングが得られる、従来に公知となった方法はない。
【0021】
実質的に直交するキューブコーナーを生成する、数え切れない程の無限なセットの実質的に類似したソリューションが存在する。ここで、実質的に類似したソリューションとは、特定のリターダンスの大きさ、リターダンスの方向、または他のパラメーターが、上記と完全に同一ではないが、結果的なコーナーキューブが、理想に近い偏光カップリングを生成することを意味する。これまでに最大値として知られていた75%未満の偏光カップリングを有するいずれの実施形態でも、理想に近いと見なすことができない。
【0022】
所望の偏光効果を満足する1つの特定のソリューションは、固体PMMAまたは3つの同一の反射平面を有し、約1.49の屈折率を有する別の材料であって、それぞれは、図7に示されているように、235nmの周期と、2.25のアスペクト比とを有する、断面が台形の対称なサブ波長格子によって変更された材料からなるキューブコーナーである。
【0023】
他の方法では、完全な偏光カップリングは、反射平面に複屈折コーティングを位置させることにより得ることができる。複屈折コーティングは、リターダンスの方向をsまたはp平面の外に移動させる能力を有する。これは、理想的な偏光カップリングを許容するのに十分である。例えば、すべての3つの界面が45゜に向けられた2分の1波長リターダンスを有すれば、理想的な偏光カップリングが達成される。
【0024】
さらに、本発明を理解する上で多数の定義が役立つこともある。サブ波長格子は、設計波長において、その周期が1波長未満の回折格子のような1次元回折構造として定義される。設計仕様によって、サブ波長格子は、0ではない回折次数を抑制することができ、0次への効率性を増加させることができる。このような格子は、また、界面のリターダンス及びダイアテニュエーションを変更することができる。慎重に設計することによって、全反射表面上のサブ波長格子は、その主軸が反射のsまたはp平面に沿って向けられていないリターダンスを生成しながら、0次回折されたビームに1(unity)の反射率(回折効率)を有することができ、楕円リターダンスまたはリニア・リターダンスを生成することができる。
【0025】
方位角26、ここで使われた方位角という用語は、図6に示されているように、反射表面29の平面において、正面32の端に垂直であるラインに対する入射光線の角度である。
【0026】
アスペクト比は、格子の振幅(または表面レリーフ格子に対する深さ)を格子の周期で除算した比である。
【0027】
偏光カップリング、反射に対するミュラーマトリックスによって記述された光学に関わる直線偏光カップリングは、ベクトル、マトリックス、ベクトルの積
【数3】

で定義され、入射偏光の方向θの関数として直交偏光状態に再帰反射される、入射直線偏光光の部分の大きさである。Sin[2θ]でのマイナス符号は、反射において、ストークスベクトルに対する座標システムの変化に因る。1の偏光カップリングは、そのθに対する完全直交化を表す。本発明は、あらゆるθに対して1の偏光カップリングを獲得する方法を提供する。
【0028】
1未満の偏光カップリングは、入射する直線偏光の一部が、入射光の偏光と同一の偏光状態で戻ることを意味する。直線偏光された光が入射するときに、偏光されていない光を戻す完全偏光除去するキューブコーナーは、1/2の偏光カップリングを有する。
【0029】
反射において、すべての入射する直線偏光に対する完全な直交化は、6個のもののそれぞれに対して、さらにそれらの空間平均に対して、コーナーキューブ・ミュラーマトリックスが以下であるようなときにだけ発生する。
【数4】

【0030】
本発明の1つの独特の特徴は、コーナーキューブを介した3つの反射と関連するミュラーマトリックスを考慮することにより、理解することができる。角度θに向けられたファスト・アキシスを有し、リターダンスδの透過型リニア・リターダーに対するミュラーマトリックスは、以下のようになる。
【数5】

反射型リニア・リターダーに対して、反射に適用される符号規約のため、同一の方向の2分の1波長リターダンスを有する左側のマトリックスの積が、ミュラーマトリックス
【数6】

に含まれている。
【0031】
同一の等方性表面を有するコーナーキューブの、6個のうちの1つのものは、次のようなミュラーマトリックス・シーケンスによって特徴付けられる。
【数7】

δは、名目上の54.7゜の入射角における等方性界面のリターダンスである。リターダンスは、3つの面に対して変わらず同一に維持されるが、s及びp平面の方向は、界面の間で回転する。この方程式に対する完全な検討により、最大平均偏光カップリングがただ0.75であることが明らかになる。このようなミュラーマトリックスは、段落番号0029における理想のミュラーマトリックスとは、決して同一であり得ない。
【0032】
sまたはp方向に向けられたた3つの異方性界面に対し、段落番号0031の式は、第2の反射が、
【数8】

の形態を有するように変更され、リターダンスの符号は、段落番号0020で説明された理由によって変更された。3つの同一のs−p異方性界面に対して、ミュラーマトリックスは次のとおりである。
【数9】

なお、δ=70.52゜であるとき、すべての偏光方向に対して理想的な偏光カップリングが得られ、ミュラーマトリックスは、段落番号0029のマトリックス
【数10】

となる。目標の70.52゜のリターダンスを有したp平面における格子構造(ruling)により、サブ波長格子を容易に設計、製造することができるため、このような構成は、本発明で開示された最も簡単でかつ最も好ましい構成の1つである。
【0033】
サブ波長格子の格子構造が、pまたはs平面に沿って整列されないとき、他の方向に対するリニア・リターダンス及び楕円形リターダンスが得られる。このようなさらに任意のケースに対して一般化された段落番号0032の式に関する検討は、すべての方向に対して理想的な偏光カップリングを生成することができる、別のリターダーの構成を示す。このようなソリューションの中で、リターダンスδ、主軸の方向θ、ポアンカレ球での固有偏光の緯度ξに対する下記の特性を有する、3つの同一の異方性表面がある。
δ θ ξ
70.52° 0° 0°
180° 16° 0°
70° 30° 0°
180° 45° 0°
180° 75° 0°
60° 105° 0°
120° 132° 0°

ポアンカレ球は、図8に示される。図8において、それぞれの反射平面は、方位角が0であるときは+70゜のリターダンスを有し、方位角が90゜であるときは−70゜のリニア・リターダンスを有し、異方性である場合、固有状態34が、0゜線形として示されている。また、図8は、それぞれの反射平面が、反射平面の表面のs及びp平面に対して45゜の方向の180゜のリニア・リターダンスを有する表面を有する場合の固有状態35を示している。さらに、図8は、それぞれの反射平面が180°のリターダンスを有する表面を有し、反射表面に対する固有状態は楕円偏光であり、27.5%の楕円率角度で反射平面の表面のp平面に向けられた主軸を有する場合の固有状態36を示しており、他の偏光固有状態は、実質的に直交である。最後に、図8は、ポアンカレ球の北極37が右円形偏光された光であることを示している。
【0034】
横軸に沿って度単位でδの関数として、そして、縦軸に沿って度単位でθの関数として、段落番号0029の理想的なミュラーマトリックスからの、特定のタイプの、リターダンスを生じる異方的な表面に対応するミュラーマトリックスの距離を表す、図9に黒いバンド39で示されているように、直線偏光固有状態を有する3つの同一の異方的な界面に対して、幾つかの連続したソリューションのファミリが実際に存在する。輪郭プロットの最も暗いバンドは、段落番号0029に最も近いソリューションを示す。また、最も好ましいソリューションは、図9に38として示されている、段落番号0032のp方向を向くソリューションである。
【0035】
偏光固有状態が楕円形であるとき、同一の異方性表面に対する追加的なソリューションが見出されており、サブ波長格子がsまたはp方向から離れるように回転されたパターンを有するときに発生する。図10は、0から180゜(2分の1波長)までの表面リターダンスのすべての値に対し、ポアンカレ球上の25゜の緯度において、偏光固有状態に対し黒い色でそのソリューション40をプロットする。対応するプロットは、−90゜と90゜の間のすべての緯度に対して得られるが、ソリューション40は、−60゜ないし60゜の緯度においてのみ見出される。
【0036】
上記した教示の観点から、本発明に対する多様な変更及び変形が可能である。例えば、サブ波長格子または複屈折コーティングを、モノリシック構造のキューブコーナー、キューブコーナーのシート、またはキューブコーナーのアレイに適用することができる。異なる異方性界面が、異なる表面に適用されてもよく、1つまたは2つの表面だけが異方性であってもよい。本発明は、完全に新規な偏光変更に関するものであって、製造の詳細事項に関わるものではない。
【0037】
本発明の特定の実施形態は、本発明の範囲内から逸脱することなく、変更することもできる。したがって、当然ながら、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内において、本発明が、ここで詳しく記述されたのと異なる方法によって遂行されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】非偏光ビームスプリッタを用いるシステムを示す図である。
【図2】誘電体全内面反射キューブコーナーを用いるシステムを示す図である。
【図3】金属コーティングされたキューブコーナーを用いるシステムを示す図である。
【図4】金属コーティングされたキューブコーナー、及び4分の1波長リニア・リターダーを用いるシステムを示す図である。
【図5】既述の偏光直交キューブコーナーを用いるシステムを示す図である。
【図6】方位角を示す図である。
【図7】サブ波長格子を有する、三角形の1.175μmキューブコーナーの上面図及び底面図である。
【図8】特許請求の範囲の偏光固有状態をポアンカレ球上に示した図である。
【図9】直線偏光された偏光固有状態を有する、同一の異方的な表面を有する直線偏光直交化キューブコーナーに関するソリューションの領域を示す図である。ソリューション領域は、最も暗いバンドで表示されている。横軸はリターダンスであり、縦軸は方向である。下部軸(38)と90°にわたる水平ライン(39)に沿ったソリューションのみが、s及びp平面に整列された固有状態を有し、したがって、最も容易に具現される。
【図10】ポアンカレ球上の25゜の緯度に位置した楕円形の偏光固有状態を有する、同一の異方性表面を有する直線偏光直交化コーナーキューブに対するソリューションのサブセットを示す図である。水平軸はリターダンスであり、垂直軸は方向である。図9及び図10は、本発明に関するソリューションスペースにわたった2つの断面を示し、他の断面は、ポアンカレ球上の他の緯度に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キューブコーナー型再帰反射体であって、
ピラミッド状構成に配置された3つの互いに直交する反射平面を含み、
少なくとも1つの反射平面は、前記キューブコーナー型再帰反射体を出射する光線の偏光状態を、すべての直線偏光の方向に対して、前記キューブコーナー型再帰反射体に入射する光線の偏光状態に直交するか、あるいは実質的に直交するようにする非等方性表面を有する、キューブコーナー型再帰反射体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反射平面は、少なくとも1つのサブ波長格子を有する、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反射平面は、複屈折コーティングを有する、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項4】
それぞれの反射平面は、180°のリターダンスを有する表面を有し、反射表面に対する偏光固有状態のうちの1つは、楕円偏光であり、27.5%の楕円率角度で反射平面の表面のp平面に向けられた主軸を有し、他の偏光固有状態は、実質的に直交である、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項5】
それぞれの反射平面は、反射平面の表面のs及びp平面に対して45゜に向けられた、180゜のリニア・リターダンスを有する表面を有する、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項6】
それぞれの反射平面は、方位角が0であるときは+70゜のリターダンス、及び、方位角が90゜であるときは−70゜のリニア・リターダンスを有し、異方的である、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項7】
それぞれの反射平面は、ダイアテニュエーション性を備える表面を有する、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項8】
複数の請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体を備える、平面アレイ。
【請求項9】
少なくとも1つの反射平面は、直線偏光または楕円偏光された固有状態について異方的であり、6個の内の少なくとも1つのものと関連するミュラーマトリックスは、理想的な偏光変換ミュラーマトリックス(4×4マトリックス)T{{1、0、0、0}、{0、−1、0、0}、{0、0、1、0}、{0、0、0、−1}}に近似し、乗法定数Tは、前記キューブコーナーを介する伝搬に関連する吸収または正面反射損失のような偏光状態と無関係の損失を示す、請求項1に記載のキューブコーナー型再帰反射体。
【請求項10】
光ビームの変化を検出する検出システムであって、
光ビームを生成するように構成された光源と、
第1及び第2の面を有し、前記光源から前記第1の面で前記光ビームを受信するように構成された偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタの第1の面から結果物であるビームを受信して、該ビームを前記偏光ビームスプリッタの第2の面に再伝送するように構成されたキューブコーナー型再帰反射体であって、ピラミッド状構成に配置された3つの互いに直交する反射平面を含み、少なくとも1つの反射平面は、前記キューブコーナー型再帰反射体を出射する光線の偏光状態を、すべての直線偏光の方向に対して、前記キューブコーナー型再帰反射体に入射する光線の偏光状態に直交するか、あるいは実質的に直交するようにする非等方性表面を有する、キューブコーナー型再帰反射体と、
前記偏光ビームスプリッタの第2の面から受信した前記光ビームにおける変化を検出するように構成された検出器ユニットと、
を備える検出システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反射平面は、少なくとも1つのサブ波長格子を有する、請求項10に記載の検出システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの反射平面は、1つの複屈折コーティングを有する、請求項10に記載の検出システム。
【請求項13】
それぞれの反射平面は、180°のリターダンスを有する表面を有し、反射表面に対する偏光固有状態のうちの1つは、楕円形に偏光され、27.5%の楕円率角度で反射平面の表面のp平面に向けられた主軸を有し、他の偏光固有状態は、実質的に直交する、請求項10に記載の検出システム。
【請求項14】
それぞれの反射平面は、前記反射平面の表面のs及びp平面に対して45゜に向けられた、180゜のリニア・リターダンスを有する表面を有する、請求項10に記載の検出システム。
【請求項15】
それぞれの反射平面は、方位角が0であるときは+70゜のリターダンス、及び、方位角が90゜であるときは−70゜のリニア・リターダンスを有し、異方的である、請求項10に記載の検出システム。
【請求項16】
それぞれの反射平面は、ダイアテニュエーション性を備える表面を有する、請求項10に記載の検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−514039(P2009−514039A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538994(P2008−538994)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/042640
【国際公開番号】WO2007/053677
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508131152)ジ・アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アリゾナ (5)
【氏名又は名称原語表記】THE ARIZONA BOARD OF REGENTS ON BEHALF OF THE UNIVERSITY OF ARIZONA
【Fターム(参考)】