説明

偏光コンバーター

【課題】 本発明は,光の損失の少ない偏光コンバーターを有する光源又は光源モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は,基本的には,2つの波長板部分を交互に有するアレイを2枚対向させ,これら2枚のアレイ間に伝搬層を設け,この伝搬層の厚さを所定のものとすることで,偏光コンバーターの損失を効果的に防止できるという知見に基づくものである。偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115と,伝搬層120と,を有する。第1の波長板アレイ103は,帯状の第1の波長板101と,帯状の第2の波長板102とを交互に複数有する。第2の波長板アレイ115は,第3の波長板113と第4の波長板114とを交互に複数有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光コンバーターに関する。より詳しく説明すると,本発明は,2つの波長板部分を交互に有するアレイを2枚用いた簡便な装置で偏光利用効率を高める偏光コンバーターに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置,及び画像投射装置には液晶技術が広く用いられる。液晶による画像表示システムの光源としてインコヒーレント光源が一般的に用いられている。そして,インコヒーレント光源の出力光の偏光状態はランダム偏光である。
【0003】
図1は,従来の液晶表示パネルの構成例を示す構成図である。液晶パネルは,ランダム偏光を有するインコヒーレント光源を有するため,一般的に図1に示されるような構成を採用する。そして,この液晶表示パネルは,ランダム偏光の光束を,1次偏光子(偏光フィルター)1を用いて,直線偏光とする。そして,光束は,ガラス基板2を経た後に液晶セル3へと導かれる。液晶セル3は,電気信号により複屈折をピクセルごとに制御される。そして,液晶セル3を経た光は,楕円偏光を有する光となる。この光は,カラーフィルター4a,4b,4cへと至る。カラーフィルターは,例えば,青4a,緑4b,及び赤4cのカラーフィルターである。カラーフィルター4a,4b,4cを経た光は偏光フィルター5を経て出力される。偏光フィルター5は,1次偏光子と直交した透過軸をもつ2次偏光子である。なお,カラーフィルター4a,4b,4cへ入射する光は,透明電極6などの電極により液晶セル3が制御されるので,制御された後の光である。また,偏光フィルター1への入射光は,バックライト7からの光である。液晶表示パネルにおいて,1次偏光子,液晶セルのマトリクス,及び2次偏光子は,通常一体の薄板状をなす。このように複数の光学素子が一体となった部分は,スイッチ行列とよぶ。
【0004】
図1の構成を有する液晶パネルは,最初に1次偏光子において照射光の半分が無条件に減衰され損失になる。
【0005】
この偏光子による損失を防止するための技術が検討された。図2は,光路分離型偏光コンバーターの構成例を示す概念図である(特許文献1,特許文献2)。図2に示される偏光コンバーターは,偏光ビームスプリッター膜8,1/2波長板9及びカマボコレンズ列10を有する。図2に示される偏光コンバーターは,かまぼこレンズ列により入射光を周期的に収束させる。そして収束した光を偏光によって異なる二通りの光路を通し,光路によって異なる二通りの偏光操作により1種類の偏光に揃える。図2に示される偏光コンバーターは,例えば,液晶拡大投影機において水銀灯の直後に設置される。図2に示される偏光コンバーターは,カマボコレンズによる集光の代償として光束の角度が広がりを持つため,点光源度の低い(即ち発光領域の面積の大きい)LED光源系においては利用できない。また,この偏光コンバーターを後述のLEDバックライト型テレビジョン受像機に利用することも現実的でない。図2に示される偏光コンバーターは,偏光ビームスプリッター膜のついたガラス基板を多数貼り合わせ,切断,及び研磨し,さらに多数の波長板をはりつけることにより作製されるため,LEDバックライト型テレビジョン受像機に用いると,装置が大型となり,しかも製造コストが高まる。
【0006】
図3は,偏光依存多重反射構造型偏光コンバーターの構成例を示す概念図である。図3に示される偏光コンバーターは,特定偏光反射偏光子11,偏光変換性及び部分透過性を有する反射膜12及び光源13を有する。図3に示される偏光コンバーターは,特定偏光を通過させ,それと直交する偏光成分を反射させる型の偏光子11と偏光変換性をもつ反射鏡12とを対向させ,反射した光を多重反射させ目的に適う偏光になった成分を取り出す。この偏光コンバーターは,偏光子11や反射鏡12が光束を邪魔する。このため,偏光依存多重反射構造型偏光コンバーターは,所望の偏光を取り出す場合,光の損失が高くなる。
【0007】
特開2007−183303号公報(特許文献4)には,所定の条件を満たす光のみを抽出できる2つの波長板部分を交互に有するアレイを2枚用いた光学モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−107505号公報
【特許文献2】特開2010−113056号公報
【特許文献3】特開2003−98483号公報
【特許文献4】特開2007−183303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,光の損失の少ない偏光コンバーターを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は,光の損失の少ない偏光コンバーターを有する光源又は光源モジュールを提供することを目的とする。
【0011】
本発明は,光の損失の少ない偏光コンバーターを有する液晶セル駆動型拡大投影機を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は,光の損失の少ない偏光コンバーターを有するテレビジョン受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は,基本的には,2つの波長板部分を交互に有するアレイを2枚対向させ,これら2枚のアレイ間に伝搬層を設け,この伝搬層の厚さを所定のものとすることで,偏光コンバーターの損失を効果的に防止できるという知見に基づくものである。
【0014】
本発明の第1の側面は,偏光コンバーターに関する。この偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115と,第1の波長板アレイ103及び第2の波長板アレイ115の間に存在する伝搬層120と,を有する。第1の波長板アレイ103は,帯状の第1の波長板101と,第1の波長板101と接続され,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第2の波長板102とを交互に複数有する。第2の波長板アレイ115は,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第3の波長板113と,第3の波長板113と接続され,第3の波長板113と同じ幅を有する帯状の第4の波長板114とを交互に複数有する。
【0015】
第1の波長板101及び第3の波長板113は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。また第2の波長板102及び第4の波長板114は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。
【0016】
偏光コンバーター100への入射光の波長をλ[m]とし,伝搬層120の屈折率をnとし,第1の波長板101の幅をd[m]とすると,伝搬層120の厚さは,αnd/λで示され,αは,1.5以上2.5以下の数である。第1の波長板101及び第2の波長板102は,共通の位相差90度をもち,遅波軸が互いに角度βをなす1/4波長板である。また,第3の波長板113及び第4の波長板114は,共通の位相差180度をもち,遅波軸が互いに角度γをなす1/2波長板である。そして,角度βは70度以上110度以下であり,角度γは35度以上55度以下である。
【0017】
第1の側面の好ましい態様は,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113及び第4の波長板114が,自己クローニング型フォトニック結晶である。
【0018】
第1の側面の好ましい態様は,第1の波長板101の幅が,偏光コンバーター100への入射光の波長の1倍以上5倍以下である。
【0019】
本発明の第2の側面も偏光コンバーターに関する。この偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115と,第1の波長板アレイ103及び第2の波長板アレイ115の間に存在する伝搬層120とを有する。
【0020】
第1の波長板アレイ103は,帯状の第1の波長板101と,第1の波長板101と接続され,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第2の波長板102とを交互に複数有する。また,第2の波長板アレイ115は,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第3の波長板113と,第3の波長板113と接続され,第3の波長板113と同じ幅を有する帯状の第4の波長板114とを交互に複数有する。
【0021】
第1の波長板101及び第3の波長板113は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。第2の波長板102及び第4の波長板114は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。
【0022】
偏光コンバーター100への入射光の波長をλ[m]とし,伝搬層120の屈折率をnとし,第1の波長板101の幅をd[m]とすると,伝搬層120の厚さは,αnd/λで示され,αは,1.5以上2.5以下の数である。
【0023】
第1の波長板101及び第2の波長板102は,それぞれ遅波軸が角度θまたは−θをなす1/2波長板である。第3の波長板113及び第4の波長板114は,それぞれ遅波軸が角度θまたは−θをなす1/4波長板である。そして,θは17度以上37度以下である。
【0024】
第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113及び第4の波長板114が,自己クローニング型フォトニック結晶である。
【0025】
第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113,第4の波長板114及び伝搬層120は,ひとつの自己クローニング型フォトニック結晶である偏光コンバーター。
【0026】
第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101の幅が,偏光コンバーター100への入射光の波長の1.5倍以上5倍以下である。
【0027】
上記第1の側面及び第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101の遅波軸及び速波軸,第2の波長板102の遅波軸及び速波軸は,それぞれ第1の波長板アレイ103面内で全て同じ方向をとり,第3の波長板113の遅波軸及び速波軸,及び第4の波長板114の遅波軸及び速波軸は,それぞれ第2の波長板アレイ115面内で全て同じ方向をとるものである。
【0028】
本発明の第3の側面は,光源モジュールに関する。この光源モジュールは,発光ダイオード(LED)と,LEDからの光が入射する偏光コンバーターと,を有する光源モジュールである。そして,この光源モジュールは,偏光コンバーターとして,上記したいずれかの偏光コンバーターを有する。
【0029】
本発明の第4の側面は,液晶セル駆動型拡大投影機に関する。この液晶セル駆動型拡大投影機は,偏光コンバーターと,偏光コンバーターを経た光が入射する偏光子と,偏光子を経た光が入射する液晶セルとを有する。この液晶セル駆動型拡大投影機は,偏光コンバーターとして,上記したいずれかの偏光コンバーターを有する。
【0030】
本発明の第5の側面は,液晶テレビジョン受像機に関する。この液晶テレビジョン受像機は,バックライト用LEDと,バックライト用LEDからの光が入射する偏光コンバーターとを有する液晶テレビジョン受像機である。そして,この液晶テレビジョン受像機は,偏光コンバーターとして,上記いずれかに記載の偏光コンバーターを有する。
【0031】
本発明の第6の側面は,偏光コンバーターの製造方法に関する。この方法は,先に説明した第2の側面の偏光コンバーターを製造する方法である。そして,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113,第4の波長板114及び伝搬層120を,ひとつの自己クローニング型フォトニック結晶として製造する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば,光の損失の少ない偏光コンバーターを提供することができる。
【0033】
本発明によれば,光の損失の少ない偏光コンバーターを有する光源又は光源モジュールを提供することができる。
【0034】
本発明によれば,光の損失の少ない偏光コンバーターを有する液晶セル駆動型拡大投影機を提供することができる。
【0035】
本発明によれば,光の損失の少ない偏光コンバーターを有するテレビジョン受信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は,従来の液晶表示パネルの構成例を示す構成図である。
【図2】図2は,光路分離型偏光コンバーターの構成例を示す概念図である。
【図3】図3は,偏光依存多重反射構造型偏光コンバーターの構成例を示す概念図である。
【図4】図4は,本発明のある実施形態を示す概略斜視図である。
【図5】図5は,本発明のフォトニック結晶の構造および配置を示す概念図である。
【図6】図6は,本発明の第1の実施形態を示す偏光コンバーターの動作原理を示す模式図である。
【図7】図7は,入射光が本発明の第1の実施形態を示す偏光コンバーターにより出射する偏光の回折成分の出射方向を示す概念図である
【図8】図8は,角度広がりを持つ入射光が入射した場合に本発明の偏光コンバーターから出射する偏光が複数の光束に分かれる挙動を示す概念図である。
【図9】図9は,本発明の第2の実施例を示す概念斜視図である。
【図10】図10は,本発明のフォトニック結晶の構造および配置概念図である。
【図11】図11は,偏光コンバーターの動作原理を示す模式図である。
【図12】図12は,発散光の光束を用いる偏光コンバーターを説明するための概念図である。
【図13】図13は,収束光の光束を用いる偏光コンバーターを説明するための概念図である。
【図14】図14は,自己クローニング法に基づいてフォトニック結晶である波長板アレイをスパッタリングにより成膜する際に基板にかかる高周波電気力線の様子を示す模式図である。
【図15】図15は,波長板アレイを放射状に配置した波長板アレイの例を示す概念図である。
【図16】図16は,3色のLEDを光源とし表示部分に液晶を有する拡大投影機のエンジン部分の構成例を示す構成図である。
【図17】図17は偏光コンバーターを拡大投影機に組み込んだ構成図である。
【図18】図18は偏光コンバーターにおける発散系または集束系光束が入射したときの回折光の角度を説明するための図である。
【図19】図19は,直下型構成を有するLEDバックライト・液晶テレビジョン受像機の概念図である。
【図20】図20は,本発明の偏光コンバーターを導入した液晶テレビジョン受信機の構成図である。
【図21】図21は,本発明の波長板アレイの構造図である。
【図22】図22は,本発明の波長板アレイの構造図である。
【図23】図23は,本発明の偏光コンバーターの動作原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の側面は,偏光コンバーターに関する。偏光コンバーターは,入射光を所定の偏光を有する光に変換するための装置である。この偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115と,第1の波長板アレイ103及び第2の波長板アレイ115の間に存在する伝搬層120と,を有する。第1の波長板アレイ103は,帯状の第1の波長板101と,第1の波長板101と接続され,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第2の波長板102とを交互に複数有する。第2の波長板アレイ115は,第1の波長板101と同じ幅を有する帯状の第3の波長板113と,第3の波長板113と接続され,第3の波長板113と同じ幅を有する帯状の第4の波長板114とを交互に複数有する。
【0038】
第1の波長板101の素材は,たとえば自己クローニングフォトニック結晶に用いられる公知の素材を用いることができる。なお,自己クローニング法により,波長板アレイを作成する場合,第1の波長板101と第2の波長板102とは同時に同じ材料により製造される。第3の波長板113及び第4の波長板114も同じ材料であってもよい。自己クローニング法により製造される波長板は,高屈折率層と低屈折率層が共通の平行溝状凹凸をもって交互に積層された構造をもつ。高屈折率層の組成例は,5酸化タンタル(Ta)または5酸化ニオブ(Nb)である。一方,低屈折率層の組成例は,2酸化シリコン(SiO)である。1/4波長板を自己クローニング結晶として製造する場合の周期数の例は,25層前後(たとえば,20層以上30層以下)である。1/2波長板を自己クローニング結晶として製造する場合の周期数の例は,50層前後(たとえば,40層以上60層以下)である。
【0039】
第1の側面の好ましい態様は,第1の波長板101の幅が,偏光コンバーター100への入射光の波長の1倍以上5倍以下である。第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115は,複数の波長板の束が存在する。それぞれの波長板の幅は同じであることが望ましい。本発明では,通常可視光を入射光とするので,波長板の幅は,可視光の1倍以上5倍以下が好ましい。具体的な幅は,360nm以上4000nm以下があげられ,500nm以上2500nm以下でもよく,500nm以上1500nm以下でもよい。
【0040】
第1の波長板101及び第3の波長板113は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。また第2の波長板102及び第4の波長板114は,伝搬層120を介して平行となるように対向して設けられる。伝搬層120の材料は,波長板に用いられる高屈折率層の素材でもよく,波長板に用いられる低屈折率層の素材でもよい。また,任意の透明材料であってもよい。
【0041】
偏光コンバーター100への入射光の波長をλ[m]とし,伝搬層120の屈折率をnとし,第1の波長板101の幅をd[m]とする。この場合,伝搬層120の厚さは,αnd/λで示され,αの例は,1.5以上2.5以下の数である。αは,1.8以上2.2以下でもよいし,αは2であってもよい。αが2の場合に,理論上複数の波長板から出射された光が集群作用を受けることとなるので好ましい。第1の波長板101及び第2の波長板102は,共通の位相差90度をもち,遅波軸が互いに角度βをなす1/4波長板である。また,第3の波長板113及び第4の波長板114は,共通の位相差180度をもち,遅波軸が互いに角度γをなす1/2波長板である。そして,角度βは70度以上110度以下(80°以上100度以下でもよく,85度以上95度以下でもよく,90度でもよい)であり,角度γは35度以上55度以下(40度以上50度以下でもよく,45度でもよい)である。遅波軸は遅軸又は遅相軸ともよばれ,位相が遅れる方位を意味する。遅波軸が互いに角度βをなすとは,2つの波長板の遅波軸がなす角がβであることを意味する。これは,角度γにおいても同様である。
【0042】
伝搬層120の厚さの具体例は,偏光コンバーターが対象とする入力光に応じて調整すればよい。たとえば,伝搬層120の厚さを,入射波長の10倍以上40倍以下(好ましくは15倍以上25倍以下)とすればよい。入射波長が500nmの場合,伝搬層120の厚さの例は,5マイクロメートル以上20マイクロメートル以下であり,8マイクロメートル以上15マイクロメートル以下でもよい。
【0043】
第1の側面の好ましい態様は,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113及び第4の波長板114が,自己クローニング型フォトニック結晶の偏光コンバーターである。たとえば,1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115とを別々に製造し,第1の波長板101及び第3の波長板113は,伝搬層120を介して平行となるように伝搬層120に貼り付けてもよい。
【0044】
自己クローニング法に基づいてフォトニック結晶を作成する技術はすでに知られている。たとえば,特開2007−183303号公報に開示された方法を適宜修正して用いることで,本発明の波長板アレイを製造できる。
【0045】
本発明の第2の側面も偏光コンバーターに関する。この偏光コンバーターのうち第1の側面に関する偏光コンバーターと同様の部分は記載を引用することとして説明を省略する。この第2の側面の偏光コンバーターも,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115と,第1の波長板アレイ103及び第2の波長板アレイ115の間に存在する伝搬層120とを有する。
【0046】
第1の波長板101及び第2の波長板102は,それぞれ遅波軸がx軸に対して角度θまたは−θをなす1/2波長板である。第3の波長板113及び第4の波長板114は,それぞれ遅波軸がx軸に対して角度θまたは−θをなす1/4波長板である。そして,θは17度以上37度以下である。θは22度以上32度以下でもよく,θは24度以上30度以下でもよい。なお,第1の波長板101の遅波軸が角度θの場合は,第2の波長板102の遅波軸が角度−θであることが好ましい。第3の波長板113の遅波軸が角度θの場合は,第4の波長板114の遅波軸が角度−θであることが好ましい。
【0047】
第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101の幅(したがって全ての波長板の幅)が,偏光コンバーター100への入射光の波長の1.5倍以上5倍以下である。具体的には,幅が400nm以上4000nm以下であり,450nm以上2000nm以下でもよい。
【0048】
上記第1の側面及び第2の側面の好ましい態様は,第1の波長板101及び第2の波長板102の遅波軸及び速波軸が,それぞれ第1の波長板アレイ103面内で全て同じ方向をとるものである。また,この態様は,第3の波長板113及び第4の波長板114の遅波軸及び速波軸が,それぞれ第2の波長板アレイ115面内で全て同じ方向をとるものである。すなわち,たとえば第1の波長板101の遅波軸は第1の波長板アレイ103面内で全て同じ方向をとるものが好ましい。
【0049】
第2の偏光コンバーターは,第1の波長板101,第2の波長板102,第3の波長板113,第4の波長板114及び伝搬層120を,ひとつの自己クローニング型フォトニック結晶として製造することができる。すなわち,第1の波長板アレイ103と,第2の波長板アレイ115とは,通常高屈折率層及び低屈折率層の繰り返しによって製造される。通常の自己クローニング結晶は,これら2種の層がほぼ同様の厚みを持って繰り返される。この第2の側面の偏光コンバーターの製造方法においては,高屈折率層及び低屈折率層を交互に複数段製造した後,高屈折率層及び低屈折率層のいずれか一方のみを複数段相当分蓄積させ,その後に再度高屈折率層及び低屈折率層を交互に蓄積させる。高屈折率層及び低屈折率層のいずれか一方のみを複数段相当分蓄積させた部分が,伝搬層に相当することとなる。
【0050】
本発明の第3の側面は,光源モジュールに関する。この光源モジュールは,発光ダイオード(LED)と,LEDからの光が入射する偏光コンバーターと,を有する光源モジュールである。そして,この光源モジュールは,偏光コンバーターとして,上記したいずれかの偏光コンバーターを有する。光源モジュールは,光源モジュールが有する公知の構成を適宜有していてもよい。そのような光源モジュールが有する公知の構成の例は,筐体,電源,及び制御部(コンピュータ)である。
【0051】
本発明の第4の側面は,液晶セル駆動型拡大投影機に関する。この液晶セル駆動型拡大投影機は,偏光コンバーターと,偏光コンバーターを経た光が入射する偏光子と,偏光子を経た光が入射する液晶セルとを有する。この液晶セル駆動型拡大投影機は,偏光コンバーターとして,上記したいずれかの偏光コンバーターを有する。拡大投影機は,拡大投影機が有する公知の構成を適宜有していてもよい。そのような拡大投影機が有する公知の構成の例は,筐体,電源,及び制御部(コンピュータ)である。
【0052】
本発明の第5の側面は,液晶テレビジョン受像機に関する。この液晶テレビジョン受像機は,バックライト用LEDと,バックライト用LEDからの光が入射する偏光コンバーターとを有する液晶テレビジョン受像機である。そして,この液晶テレビジョン受像機は,偏光コンバーターとして,上記いずれかに記載の偏光コンバーターを有する。テレビジョン受信機は,テレビジョン受信機が有する公知の構成を適宜有していてもよい。そのようなテレビジョン受信機が有する公知の構成の例は,筐体,電源,及び制御部(コンピュータ)である。
【0053】
上記の技術を応用することで,偏光方向を保存したまま光の進行方向を拡散させる拡散板を得ることができる。この拡散板は,透明材料の薄板である。そして,拡散板の第1の面には,面に沿う特定の方向に平行な凹凸がランダムである第1の溝列を有する。一方,第1の面の裏面である第2の面には,第1の溝列とは直交する方向に凹凸がランダムである第2の溝列を有する。このような構成を有するので,この拡散板は,第1の溝列または第2の溝列に平行または垂直な振動方向をもち上記薄板に入射する光の偏光面を変えることなく出射光の進行する方向の拡散作用を発揮することができる。すなわち,本発明は,透明材料からなる拡散板であって,一つの面は面に沿う特定の方向に平行な凹凸がランダムである溝列を有し,他の面には前記の溝列とは直交する方向の凹凸がランダムである第2の溝列を有することにより,第1または第2の溝列に平行または垂直な振動方向をもち前記薄板に入射する光の偏光面を変えることなく出射光の進行する方向の拡散作用をもつ拡散板をも提供する。
【実施例1】
【0054】
以下,実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。本発明は,以下の実施例に限定されるものではなく,当業者に自明な範囲で適宜修正を加えたものも含む。
【0055】
図4は,本発明のある実施形態を示す概略斜視図である。図4に示されるように,この実施例の偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ16(103),伝搬層15(120),及び第2の波長板アレイ14(115)を有する。図中符号24は基板である。
【0056】
第1の波長板アレイ16は,x軸方向に幅d,y軸方向に十分な長さをもつ2種類の波長板の交互配列構造であって,遅波軸がx軸に対してプラスマイナス45°,速波軸は遅波軸と直角をなす。以下の説明では,プラス45°の角をなす領域を領域A,マイナス45°の角をなす領域を領域Bとする。第2の波長板アレイ14も同様にx軸方向に幅d,y軸方向に十分な長さをもつ2種類の波長板の交互配列構造であって,遅波軸がx軸に対してプラスマイナス22.5°,速波軸は遅波軸と直角をなす。プラス45°の角をなす領域を領域C,マイナス22.5°の角をなす領域を領域Dとする。領域Aと領域C,領域Bと領域Dとは正しく対向する。第1の波長板アレイ16は1/4波長板の集まり,第2の波長板アレイ14は半波長板の集まりであって,それぞれ自己クローニングフォトニック結晶で作製される。なお,自己クローニング法で作製される波長板の遅波方向はフォトニック結晶の溝列あるいは稜線列の方向と一致する。図4のアレイの各波長板上の斜線群はその遅波方向を単に概念的に示したものである。例えば図4を詳しく描けば後述する図21のようになる。
【0057】
第1の波長板アレイと第2の波長板アレイの間は屈折率n,厚さがおおよそ2nd/λの伝搬層で隔てられている。λは使用波長(自由空間)である。
【0058】
以上の構造に対し,任意の偏光状態の光を-z方向から入射させる。第1の波長板アレイに入射する光は領域Aの遅波軸方向の直線偏光成分(p成分)と,それに直角をなす直線偏光成分(q成分)の重ね合わせとして表される。
【0059】
まず,前記のp成分の挙動から説明する。図6は,本発明の第1の実施形態を示す偏光コンバーターの動作原理を示す模式図である。−z方向から入射した光は,領域Aを通過した後と,領域Bを通った後とでは位相が90°ずれる。z方向のp方向直線偏光平面波(電界の振幅E1)が入射した場合の出射波はp方向直線偏光であることに変わりはない。一方,周期2d,正のピークから負のピークまで90°の方形波位相変調を受ける。この波がおおよそ厚さ2nd/λの伝搬層を通ったあと,位相変調は振幅変調に変換される。即ち,領域Cの直前で振幅がほぼ21/2,領域Dの直前で振幅ほぼ0の方形振幅変調波に変換される。この関係は比2d/λが大きいほど精度が高い。図6に示されるようにp偏光成分は伝搬中に集群され領域Cに集まる。
【0060】
前記と同様に,−z方向から入射した光のうちq偏光成分は集群され領域Dに集まる。第2の波長板アレイ(半波長板列)は領域Cに集まるp偏光成分,領域Dに集まるq偏光成分にそれぞれ独立に作用してそれらを共にx偏光にする。すなわち,主軸をx軸に対してプラスマイナス22.5°にする。なお,プラスマイナス45°の領域とマイナスプラス22.5°の領域とをこの順に対応させると出力はy偏光となる。前記した第1の波長板アレイと第2の波長板アレイを,それぞれ別の基板の上にフォトニック結晶の自己クローニング法で作製することができる。それらを,位置を合わせて貼り合わせることにより偏光コンバーターを作成できる。
【0061】
次に,偏光コンバーターの出力光の指向特性について説明する。図7は,入射光が本発明の第1の実施形態を示す偏光コンバーターにより出射する偏光の回折成分の出射方向を示す概念図である。ランダム偏光をもつ一様な平面波が偏光コンバーターに入射するとき,出力の各偏光成分はそれぞれx方向に周期2dをもって振幅変調されているので,出力波は一般に複数の回折成分をもつ。図5において光線がz方向から入射したとき,図7に示される通り,出力はz軸からx軸に向かいθnだけ傾いた複数の光線に分かれる。ここでnは零または正負の整数で,θnはsinθn =nλ/2dの関係を満たす。また,入射波が角度拡がりをもつ光束である場合も同様に複数の光束に分かれる。図8は,角度広がりを持つ入射光が入射した場合に本発明の偏光コンバーターから出射する偏光が複数の光束に分かれる挙動を示す概念図である。
【0062】
輝度不変の定理(高橋秀俊 藤村靖 著,高橋秀俊の物理学講義 −物理学汎論−,丸善,1990, p.104−p.108)との関係を念のため付言する。光束において,偏光自由度・光束の断面積・光束の立体角・波長幅あたりの光パワーは輝度に比例し,光束の伝搬・変形に際して保存される。この例においては周期構造における回折作用が光束の立体角を拡げるので輝度不変の定理と矛盾しない。
【実施例2】
【0063】
次に説明するのは,上述の位置あわせ・貼り合わせ操作によらない簡便な作製方法を可能にする構造である。そのポイントは第1,第2の波長板アレイの遅波軸及び速波軸方位が共通であり得るような波の伝搬機構を用いることである。以下説明するように,この偏光コンバーターは,円偏光が1/4波長板及び1/2波長板によって受ける変形規則を活用する。
【0064】
図9は,本発明の第2の実施例を示す概念斜視図である。図9に示されるように,この実施例の偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ20(103),伝搬層21(120),及び第2の波長板アレイ19(115)を有する。図中符号18は基板である。
【0065】
この実施例の偏光コンバーターの第1の波長板アレイ20は,x軸方向に幅d,y軸方向に十分な長さをもつ2種類の波長板の交互配列構造であって,遅波軸がx軸に対してプラスマイナスθ,速波軸は遅波軸と直角をなす。θは10度〜35度の間の角である。プラスθの角をなす領域を領域A,マイナスθの角をなす領域を領域Bとする。第2の波長板アレイも同様にx軸方向に幅d,y軸方向に十分な長さをもつ2種類の波長板の交互配列構造であって,遅波軸がx軸に対してプラスマイナスθ,速波軸は遅波軸と直角をなす。プラスθの角をなす領域を領域C,マイナスθの角をなす領域を領域Dとする。領域Aと領域C,領域Bと領域Dとはそれぞれ正しく対向する。第1の波長板アレイ20は半波長板の集まり,第2の波長板アレイ19は1/4波長板の集まりであって,それぞれ自己クローニングフォトニック結晶で作製される。第1の波長板アレイ20と第2の波長板アレイ19の間は屈折率n,厚さがおおよそ2nd2/λの伝搬層で隔てられている。λは使用波長(自由空間)である。
【0066】
以上の構造に対し,任意の偏光状態の光を−z方向から入射させる。第1の波長板アレイ20に入射する光は時計回り円偏光成分
(Ex,Ey)=E1(j,1) (数式1)
と反時計回り円偏光成分
(Ex,Ey)=E2(-j,1) (数式2)
の重ね合わせとして表される。
時計回り成分の挙動から説明する。
【0067】
z方向の平面波(時計回り円偏光)が入射した場合の第1の波長板アレイ20の出射波は反時計回り円偏光であって,領域A部分で基準位相より2θ遅れ,領域B部分で基準位相より2θ進む。この円偏光は周期2d,正のピークから負のピークまで4θの方形波位相変調を受ける。この波がおおよそ厚さ2nd2/λの伝搬層を通ったあと,位相変調は振幅変調に変換される。領域Cの直前で振幅E1(cos2θ+sin2θ),領域Dの直前で振幅E1(cos2θ-sin2θ)の方形振幅変調波に近似的に変換される。この関係は比2d/λが大きいほど近似の精度が高い。2θは30°から60°の間で考えれば良いので,(cos2θ+sin2θ)は(cos2θ-sin2θ)より十分大きい。特にθが22.5°の時は(cos2θ-sin2θ)はゼロとなる。故に,z方向の平面波(時計回り円偏光)が第1の波長板アレイ20へ入射した場合,第2の波長板アレイ19の直前で主要な成分(メジャー成分)は領域Cに集束され,領域Dに集まる成分は小さい(マイナー成分である)。
【0068】
次に第1の波長板アレイ20に入射する反時計回り円偏光成分を説明する。出射すると時計回り円偏光となり,第2の波長板アレイ19に入射するとき,領域Cの直前で振幅E2(cos2θ-sin2θ),Dの直前で振幅E(cos2θ+sin2θ)の方形振幅変調波に近似的に変換される。第2の波長板アレイ19の直前で主要な成分は領域Dに集束され,領域Cに集まる成分は小さい(マイナー成分である)。これらの概念を図11に示す。図11に示される偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ20(103),伝搬層(120),及び第2の波長板アレイ19(115)を有する。符号18は,基板である。
【0069】
次に第2の波長板アレイ19の作用を説明する。第2の波長板アレイ19は1/4波長板であるから円偏光波が入射すると出射波は直線偏光となる。
領域Dに入射する時計周り円偏光成分(メジャー)の対する出力は(cos2θ+sin2θ)に比例し,x軸に対し(45°-θ)をなす直線偏光である。
領域Cに入射する時計回り円偏光成分(マイナー)に対する出力は(cos2θ-sin2θ)に比例し,x軸に対し(45°+θ)をなす直線偏光である。
第2アレイに入射する反時計回り円偏光入力については次のようになる。
領域Cの出力(メジャー)は(cos2θ+sin2θ)に比例する直線偏光でx軸に対し−(45°−θ)をなす。
領域Dの出力(マイナー)は(cos2θ-sin2θ)に比例する直線偏光でx軸に対し-(45°+θ)をなす。
【0070】
概念を簡単に説明するためθ=22.5°の場合を取り上げる。cos 2θ = sin 2θ= 1/√2であるからマイナー成分は完全に0となり,領域Cの出力振幅,領域Dの出力振幅はそれぞれx軸からマイナスプラス22.5°だけ傾いた方向の(差は45°)直線偏光となる。偏光コンバーターへの入射光がLED出力光のようなインコヒーレント光である場合,波長板第1アレイに入射する光のうち時計回り円偏光のパワー,反時計回り円偏光のパワーは独立である。偏光コンバーターの出力を,偏光子を通して直線偏光にする場合,偏光子の透過偏光軸をx軸から時計方向に22.5°傾ければE12に比例する成分は100%, E22に比例する成分は50%透過する。逆に22.5°傾けるとE12に比例する成分は50%, E22に比例する成分は100%透過する。平均的にはその中間(x軸方向)に透過偏光軸を設定するのが良く,両方向成分とも85%が透過する。
即ち,偏光コンバーターに入射するランダム偏光のパワーの85%を特定方向の直線偏光に変換できる。
【0071】
θは22.5°に限定されるものではなく,22.5°より増大させると二つの直線偏光の間の角が45°より小さくなり有利となる。解析の結果,θ=27°の付近(たとえば,24〜30°,26°〜28°)が最も有利であり,ランダム偏光のパワーの88%を特定方向の偏光パワーに変換することができる。
【0072】
この実施例の偏光コンバーターの特徴は,一つのパターン化された基板の上に自己クローニングプロセスによって第1の波長板アレイ20,伝搬層,第2の波長板アレイ19を一貫した連続な工程により作製でき,位置あわせを不要にする点である。
【0073】
つまり,自己クローニングフォトニック結晶は,第1の物質層と第2の物質層を交互に積み重ねて作成される。そして,この実施例では,ある程度,第1の物質層及び第2の物質層を交互に積み重ねた後,第1の物質層又は第2の物質層のみを数層分積み重ね,その後第1の物質層及び第2の物質層を積み重ねる。すると,第1の物質層又は第2の物質層のみを数層分積み重ねた部分が,伝搬層となる。この場合は,領域Aと領域C,領域Bと領域Dが正確に対向するので偏光コンバーターの精度が高くなり,しかも簡単に製造できる。
【実施例3】
【0074】
図12は,発散光の光束を用いる偏光コンバーターを説明するための概念図である。図12に示される偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ20(103),伝搬層21(120),及び第2の波長板アレイ19(115)を有する。符号13は光源であり,符号18は基板である。
【0075】
図13は,収束光の光束を用いる偏光コンバーターを説明するための概念図である。図13に示される偏光コンバーターは,第1の波長板アレイ20(103),伝搬層21(120),及び第2の波長板アレイ19(115)を有する。符号13は光源であり,符号18は基板であり,符号22は集光レンズである。
【0076】
図12及び図13に示す偏光コンバーターにおいて,光束の場所ごとに,向きが近い光線群のうちでも中心的な方向をもつ光線にその場所の光束を代表させる。第1の波長板アレイ20,第2の波長板アレイ19の各要素をその場所での光束を代表する光線に基づいて作製することが好ましい。自己クローニング法を用いて偏光コンバーターを作成する場合,凹凸構造をスパッタリングの時の高周波電界に沿って形成することができる。金属電極近傍においては電界あるいは電気力線は金属表面に直角をなす性質がある。図14は,自己クローニング法に基づいてフォトニック結晶である波長板アレイをスパッタリングにより成膜する際に基板にかかる高周波電気力線の様子を示す模式図である。図14において,符号23はフォトニック結晶アレイパタン部であり,符号24はフォトニック結晶基板であり,符号25はメタルサブストレート(金属材料)である。図14において矢印が高周波電気力線を示す。図14に示される電極構造を用いることによって高周波電界を発散あるいは収束型に形成することができる。なお,図9においては基板上に第1の波長板アレイ20(103),伝搬層21(120),及び第2の波長板アレイ19(115)の順に作製することを想定している。しかし,この順序を逆転することも容易に実行できる。よって,自己クローニング法による製膜時に凹凸2種類の基板電極を用意する必要はない。
【実施例4】
【0077】
偏光コンバーターにおいて,第1の波長板アレイにおける2種類の波長板のそれぞれ,第2の波長板アレイ19における2種類の波長板のそれぞれは素子の全面で共通の主軸を持つことが好ましい。しかし,2種類の波長板の境界は一様な方向を向く必要はない。図15は,波長板アレイを放射状に配置した波長板アレイの例を示す概念図である。例えば図15に示されるように,波長板のパターンを放射型にすることができる。このような構造は,発散性あるいは収束性の光束を用いる拡大投影機と共に用いられる偏光コンバーターにおいて,投射レンズのF値が過小(レンズ直径が過大)にならないために有利である。システム応用の詳細は実施例5において示す。図15と同様の考え方に基づき,波長板アレイに含まれる2種類の波長板の境界を等間隔の同心円群とすることもできる。
【実施例5】
【0078】
本発明の偏光コンバーターは,拡大投影機に用いることができる。図16は,3色のLEDを光源とし表示部分に液晶を有する拡大投影機のエンジン部分の構成例を示す構成図である。図16に示されるように,赤のLED光源34a,青のLED光源34c,緑のLED光源34bから放出された光は,集光レンズ33,拡散板32,偏光フィルム31,液晶30及び偏光フィルム29を経て,クロスプリズム28へと導かれる。クロスプリズム28からの光は投影レンズ(F値大)を経て,スクリーン26へ投影される。一般にLED光源は水銀灯に比べ発光部分の面積が大きく,出力の角度拡がりが大きいため,LED光源からの光を集光することは難しい。LED光源を用いた場合,光路には,視野内での光強度が均一でなければならないという制約があり,Fナンバーを十分小さく選べない状況が多い。特に,可搬用小型拡大投影機(いわゆるピコプロジェクタ)では光路設計に制約が大きく,クロスプリズムに入射する光の角度拡がりを十分大きく選定できない。それらの状況下でクロスプリズムに入射する光量が小さくなる。その上さらに偏光子によって入力光を半分捨てなければならない。このため,スクリーン26に投影されず像が暗くなるという問題がある。本発明の偏光コンバーターを有する拡大投影機は,そのような問題を有効に解決できる。
【0079】
図17は偏光コンバーターを拡大投影機に組み込んだ構成図である。図17に示されるように,赤のLED光源34a,青のLED光源34c,緑のLED光源34bから放出された光は,集光レンズ33,偏光コンバーター17,拡散板32,偏光フィルム31,液晶30及び偏光フィルム29を経て,クロスプリズム28へと導かれる。クロスプリズム28からの光は投影レンズ(F値小)を経て,スクリーン26へ投影される。各色用のスイッチ行列において,光源を向く面に近接または密接して偏光コンバーターをおくことによりLED光源の出力の両偏光成分をともに投射に有効に利用することができる。なお,偏光コンバーターを通すと,光束の広がり角は一般に増大する。そのため拡大投影機の投射レンズは(偏光コンバーターを用いない場合と比較して)より明るく(F値はより小さく)する。
【0080】
この構成において,光はしばしば収束系の光束,あるいは時として発散系の光束の形でスイッチ行列を照射する。そのような構成において,図15に示すパターンをもった偏光コンバーターは投射レンズの選択において有利である。図18は偏光コンバーターにおける発散系または集束系光束が入射したとき,θx,θyをもつ光線Aに対しての零次,プラスマイナス1次の回折光の角度を表す。回折光のz軸となす角が拡がる効果を最も効果的に抑制する。
【実施例6】
【0081】
本発明の偏光コンバーターは,LED等をバックライト光源として用いる液晶テレビジョン受信機に用いることができる。図19は,LEDバックライト・液晶テレビジョン受像機のいわゆる直下型構成を示す。赤のLED光源34a,青のLED光源34c,緑のLED光源34bから放出された光は,レンズ41を経て拡散板40に到達し,拡散板40において拡散される。拡散板40において拡散された光は,液晶パネル42へと到達する。その際,拡散光は,偏光フィルム39及び液晶セル38を経て,カラーフィルター37へと至る。カラーフィルターを透過した光は,偏光フィルム36を経て,液晶パネル42に表示色をもたらす。従来の液晶テレビジョン受信機では,拡散板を通して光を均一化したのち液晶セルアレイに光が導かれ,偏光フィルターにより光の半分が捨てられることとなる。
【0082】
図20は,本発明の偏光コンバーターを導入した液晶テレビジョン受信機の構成図である。各LEDにそれぞれの波長用の偏光コンバーターが組合わされる。この例では,偏光コンバーター17を経た光が,かまぼこ状拡散板43を経る構成とした。すなわち,LEDからの光は,偏光コンバーターにより必要な偏光に変換された後,拡散板43(かまぼこ列状の形状をもつ)で均一化される。かまぼこ列状の形状は,列に並行な偏光,列に垂直な偏光に対しては偏光を変換せず斜めの偏光に対しては変換作用がある。故に,拡散板は偏光に平行な列と垂直な列を両面に片方ずつ配置するのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は,光学機器の分野で利用され得る。
【符号の説明】
【0084】
1・・・偏光フィルター、2・・・ガラス基板、3・・・液晶セル、4a・・・カラーフィルター青、
4b・・・カラーフィルター緑、4cカラーフィルター・・・カラーフィルター赤、5偏光フィルター、6・・・透明電極、7・・・バックライト、8・・・偏光ビームスプリッタ膜、
9・・・1/2 波長板、10・・・カマボコレンズ列、11・・・特定偏光反射型偏光子、
12・・・偏光変換性と部分透過性をもつ反射鏡、13・・・光源、14・・・フォトニック結晶波長板第2アレイ、15・・・スペーサと接着層、16・・・フォトニック結晶波長板第1アレイ、
17・・・ナノ偏光コンバーター、18・・・ガラス基板、19・・・フォトニック結晶波長板第2アレイ、20・・・フォトニック結晶波長板第1アレイ、21・・・伝搬部、22・・・集光レンズ、
23・・・フォトニック結晶基板アレイパタン部、24・・・フォトニック結晶基板、25・・・メタルサブストレート、26・・・スクリーン、27・・・投射レンズF値大、28・・・クロスプリズム、29・・・偏光フィルム、30・・・液晶、31・・・偏光フィルム、32・・・拡散板、
33・・・集光レンズ、34a・・・LED光源(赤)、34b・・・LED光源(緑)、
34c・・・LED光源(青)、35・・・投射レンズF値小、36・・・偏光フィルム、37カラーフィルター、38・・・液晶セル、39・・・偏光フィルム、40・・・拡散板、41・・・レンズ、42・・・液晶パネル、43・・・カマボコ状拡散板、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1の波長板(101)と,前記第1の波長板(101)と接続され,前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第2の波長板(102)とを交互に複数有する第1の波長板アレイ(103)と,
前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第3の波長板(113)と,前記第3の波長板(113)と接続され,前記第3の波長板(113)と同じ幅を有する帯状の第4の波長板(114)とを交互に複数有する第2の波長板アレイ(115)と,
前記第1の波長板アレイ(103)及び前記第2の波長板アレイ(115)の間に存在する伝搬層(120)と,を有し,
前記第1の波長板(101)及び前記第3の波長板(113)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられ,
前記第2の波長板(102)及び前記第4の波長板(114)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられる,偏光コンバーター(100)において,
前記偏光コンバーター(100)への入射光の波長をλ[m]とし,前記伝搬層(120)の屈折率をnとし,前記第1の波長板(101)の幅をd[m]とすると,前記伝搬層(120)の厚さは,αnd/λで示され,前記αは,1.5以上2.5以下の数であり,
前記第1の波長板(101)及び前記第2の波長板(102)は,共通の位相差90度をもち,遅波軸が互いに角度βをなす1/4波長板であり,
前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)は,共通の位相差180度をもち,遅波軸が互いに角度γをなす1/2波長板であり,
前記角度βは70度以上110度以下であり,前記角度γは35度以上55度以下である
ことを特徴とする,偏光コンバーター。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光コンバーターであって,前記第1の波長板(101),前記第2の波長板(102),前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)は,自己クローニング型フォトニック結晶である偏光コンバーター。
【請求項3】
請求項1に記載の偏光コンバーターであって,前記第1の波長板(101)の幅が,前記偏光コンバーター(100)への入射光の波長の1倍以上5倍以下である,偏光コンバーター。
【請求項4】
帯状の第1の波長板(101)と,前記第1の波長板(101)と接続され,前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第2の波長板(102)とを交互に複数有する第1の波長板アレイ(103)と,
前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第3の波長板(113)と,前記第3の波長板(113)と接続され,前記第3の波長板(113)と同じ幅を有する帯状の第4の波長板(114)とを交互に複数有する第2の波長板アレイ(115)と,
前記第1の波長板アレイ(103)及び前記第2の波長板アレイ(115)の間に存在する伝搬層(120)と,を有し,
前記第1の波長板(101)及び前記第3の波長板(113)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられ,
前記第2の波長板(102)及び前記第4の波長板(114)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられる,偏光コンバーター(100)において,
前記偏光コンバーター(100)への入射光の波長をλ[m]とし,前記伝搬層(120)の屈折率をnとし,前記第1の波長板(101)の幅をd[m]とすると,前記伝搬層(120)の厚さは,αnd/λで示され,前記αは,1.5以上2.5以下の数であり,
前記第1の波長板(101)及び前記第2の波長板(102)は,それぞれ遅波軸が角度θまたは−θをなす1/2波長板であり,
前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)は,それぞれ遅波軸が角度θまたは−θをなす1/4波長板であり,
前記θは17度以上37度以下であることを特徴とする,偏光コンバーター。
【請求項5】
請求項4に記載の偏光コンバーターであって,前記第1の波長板(101),前記第2の波長板(102),前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)は,自己クローニング型フォトニック結晶である偏光コンバーター。
【請求項6】
請求項4に記載の偏光コンバーターであって,前記第1の波長板(101),前記第2の波長板(102),前記第3の波長板(113),前記第4の波長板(114)及び前記伝搬層(120)は,ひとつの自己クローニング型フォトニック結晶である偏光コンバーター。
【請求項7】
請求項4に記載の偏光コンバーターであって,前記第1の波長板(101)の幅が,前記偏光コンバーター(100)への入射光の波長の1.5倍以上5倍以下である,偏光コンバーター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光コンバーターであって,
前記第1の波長板(101)及び前記第2の波長板(102)の遅波軸及び速波軸は,それぞれ前記第1の波長板アレイ(103)面内で全て同じ方向をとり,
前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)の遅波軸及び速波軸は,それぞれ前記第2の波長板アレイ(115)面内で全て同じ方向をとる,
偏光コンバーター。
【請求項9】
LEDと,前記LEDからの光が入射する偏光コンバーターと,を有する光源モジュールであって,
前記偏光コンバーターが,請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光コンバーターである光源モジュール。
【請求項10】
偏光コンバーターと,前記偏光コンバーターを経た光が入射する偏光子と,前記偏光子を経た光が入射する液晶セルとを有する液晶セル駆動型拡大投影機であって,
前記偏光コンバーターが,請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光コンバーターである,液晶セル駆動型拡大投影機。
【請求項11】
バックライト用LEDと,前記バックライト用LEDからの光が入射する偏光コンバーターとを有する液晶テレビジョン受像機であって,
前記偏光コンバーターが,請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光コンバーターである,液晶テレビジョン受像機。
【請求項12】
帯状の第1の波長板(101)と,前記第1の波長板(101)と接続され,前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第2の波長板(102)とを交互に複数有する第1の波長板アレイ(103)と,
前記第1の波長板(101)と同じ幅を有する帯状の第3の波長板(113)と,前記第3の波長板(113)と接続され,前記第3の波長板(113)と同じ幅を有する帯状の第4の波長板(114)とを交互に複数有する第2の波長板アレイ(115)と,
前記第1の波長板アレイ(103)及び前記第2の波長板アレイ(115)の間に存在する伝搬層(120)と,を有し,
前記第1の波長板(101)及び前記第3の波長板(113)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられ,
前記第2の波長板(102)及び前記第4の波長板(114)は,前記伝搬層(120)を介して平行となるように対向して設けられる,偏光コンバーター(100)の製造方法において,
前記第1の波長板(101)及び前記第2の波長板(102)は,共通の位相差90度をもち,それぞれ遅波軸が所定角度θまたは−θをなす波長板であり,
前記第3の波長板(113)及び前記第4の波長板(114)は,共通の位相差180度をもち,それぞれ遅波軸が所定角度θまたは−θをなす波長板であり,
前記偏光コンバーター(100)への入射光の波長をλ[m]とし,前記伝搬層(120)の屈折率をnとし,前記第1の波長板(101)の幅をd[m]とすると,前記伝搬層(120)の厚さを,αnd/λで示されるように製造し,前記αは,1.5以上2.5以下の数であり,
前記第1の波長板(101),前記第2の波長板(102),前記第3の波長板(113),前記第4の波長板(114)及び前記伝搬層(120)を,ひとつの自己クローニング型フォトニック結晶として製造する,ことを特徴とする偏光コンバーターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−181385(P2012−181385A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44705(P2011−44705)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(302060650)株式会社フォトニックラティス (22)
【Fターム(参考)】