説明

偏光フィルム、コーティング液、及び画像表示装置

【課題】高い二色比を有する偏光フィルムを提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と一般式(2)で表されるモノアゾ化合物を含んでいる。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い二色比を有する偏光フィルム、及びこの偏光フィルムを形成するためのコーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルムは、偏光又は自然光から特定の直線偏光を透過させる機能を有する光学部材である。
汎用的な偏光フィルムは、例えば、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールフィルムを延伸することにより得られる。
また、ナフタレン環を有するジスアゾ化合物を含む偏光フィルムも知られている(特許文献1)。この偏光フィルムは、前記ジスアゾ化合物と溶媒とを含むコーティング液を基材上に塗工する方法(溶液流延法)によって得られる。このコーティング液においては、その液中で前記ジスアゾ化合物が超分子会合体を形成することによって液晶相を示す。液晶相状態のコーティング液を基材上に塗工することにより、ジスアゾ化合物が配向した塗膜が得られる。この塗膜を乾燥することによって前記配向したジスアゾ化合物が固定される。この乾燥後の塗膜は偏光特性を有する。
しかしながら、上記ジスアゾ化合物のみを用いた場合には、二色比の高い偏光フィルムが得られない。
【0003】
また、特許文献2には、アントラキノン環を有するアゾ化合物とナフタレン環を有するジスアゾ化合物と含む偏光フィルムが開示されている。この偏光フィルムも、前記2種類のアゾ化合物と溶媒とを含むコーティング液を基材上に塗工する方法によって得られる。
しかしながら、アントラキノン環のような大きな芳香環を有するアゾ化合物を用いると、結晶が生じるおそれがある。アゾ化合物の一部が結晶化すると、アゾ化合物の配向が不均一になり易い。このため、特許文献2では、二色比の高い偏光フィルムが得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173849号公報
【特許文献2】特開2008−101154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、高い二色比を有する偏光フィルムを提供することである。
本発明の第2の目的は、高い二色比を有する偏光フィルムを形成するためのコーティング液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の偏光フィルムは、下記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と、下記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と、を含む。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m1は、0〜2の整数を表し、n1は、0〜6の整数を表し、m1及びn1の少なくとも何れか一方は0でなく、o1は、0〜1の整数を表し、p1は、1〜4の整数を表す。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(2)において、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m2は、0〜2の整数を表し、n2は、0〜6の整数を表し、m2及びn2の少なくとも何れか一方は0でなく、p2は、1〜4の整数を表す。
【0011】
本発明の好ましい偏光フィルムは、前記ジスアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるジスアゾ化合物である。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(3)のQ、R、M、m1、n1、o1及びp1は、前記一般式(1)のそれらと同様である。
【0014】
本発明の他の好ましい偏光フィルムは、前記モノアゾ化合物が、下記一般式(5)で表されるモノアゾ化合物である。
【0015】
【化4】

【0016】
一般式(5)のR、M、m2、n2及びp2は、前記一般式(2)のそれらと同様である。
【0017】
本発明の別の局面によれば、コーティング液が提供される。
このコーティング液は、上記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と、上記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と、溶媒と、を含む。
【0018】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
この画像表示装置は、その構成部材として、上記いずれかの偏光フィルムを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の偏光フィルムは、一般式(1)で表されるジスアゾ化合物及び一般式(2)で表されるモノアゾ化合物を含んでいるので、高い二色比を有する。
本発明のコーティング液は、一般式(1)で表されるジスアゾ化合物及び一般式(2)で表されるモノアゾ化合物を含んでいる。このコーティング液を適当な展開面上に塗工することにより、比較的薄く、且つ高い二色比を有する偏光フィルムを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】1つの実施形態に係る偏光フィルムを示す部分断面図。
【図2】1つの実施形態に係る偏光板を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[ジスアゾ化合物及びモノアゾを含む偏光フィルム]
本発明の偏光フィルムは、下記ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物を含む。
本発明の偏光フィルムは、下記ジスアゾ化合物の中から選ばれる1種又は2種以上、及び、下記モノアゾ化合物の中から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい。
ここで、本明細書において、「置換若しくは無置換」という記載は、「置換基を有する、又は、置換基を有しない」ことを意味する。
また、本明細書において、「Y〜Z」という記載は、「Y以上Z以下」を意味する。
【0022】
(ジスアゾ化合物)
本発明で用いられるジスアゾ化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0023】
【化5】

【0024】
一般式(1)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m1は、0〜2の整数を表し、n1は、0〜6の整数を表し、m1及びn1の少なくとも何れか一方は0でなく、o1は、0〜1の整数を表し、p1は、1〜4の整数を表す。ただし、1≦(m1+n1)≦6である。前記m1が2の場合(即ち、NHRの置換数が2である場合)、各Rは同一でもよく又は異なっていてもよい。前記n1及びp1が2以上の場合(即ち、SOの置換数が2以上である場合)、各Mは同一でもよく又は異なっていてもよい。
一般式(1)において、NHR、SO、OH及びSOの各置換基は、それぞれナフタレン環の何れの位置に置換していてもよい。
【0025】
上記一般式(1)のQで表されるアリール基は、フェニル基、複素環が結合したフェニル基、ベンゼン環が2以上縮合した縮合環基(例えばナフチル基など)などが挙げられる。前記フェニル基は、隣接しない炭素原子が窒素原子に置換されているフェニル基を含む。
【0026】
Qで表されるアリール基は、置換基を有していてもよいし、又は、置換基を有していなくてもよい。前記アリール基が置換又は無置換のいずれの場合でも、上記ジスアゾ化合物は、水系溶媒に対する溶解性に優れ、さらに、配向性にも優れている。
前記アリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のフェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アセトアミド基、水酸基、SOM基などのスルホン酸基、COOM基などのカルボキシル基などが挙げられる。前記Qが前記置換基を複数有する場合、各置換基は同一又は異なっていてもよい。ただし、前記Mは、上記Mと同様に対イオンを表す。
【0027】
好ましくは、前記置換基は、極性基である。極性基とは、極性を持つ官能基を意味する。極性基としては、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基のような比較的電気陰性度の大きい酸素及び/又は窒素を含む官能基が挙げられる。
【0028】
一般式(1)のQは、好ましくは下記式(A)で表されるフェニル基である。
式(A)において、Xは、置換基を表し、xは、前記Xの置換数であって0〜5の整数を表す。前記置換基Xの具体例は、上記アリール基における置換基と同様であるので、それを参照されたい。また、xは、好ましくは1又は2である。
【0029】
【化6】

【0030】
より具体的には、一般式(1)のQは、例えば、下記式群の中から選ばれる1つである。
【0031】
【化7】

【0032】
上記一般式(1)のRのアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又はフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、上記アリール基における置換基と同様であるので、それを参照されたい。
前記Rは、好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基であり、より好ましくは水素原子又は置換若しくは無置換のアセチル基である。
前記置換若しくは無置換のアルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0033】
前記一般式(1)のM(対イオン)は、好ましくは、水素イオン;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属イオン;Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属イオン;その他の金属イオン;アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムイオン;有機アミンの塩などが挙げられる。前記他の金属イオンとしては、例えば、Ni、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数1〜6のアルキルアミン、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミン、カルボキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミンなどが挙げられる。上記一般式(1)において、SO基が2つ以上結合している場合、各Mは、同一又は異なっていてもよい。また、前記一般式(1)において、SOのMが2価以上の陽イオンである場合、そのMは、他の陰イオンと静電的に結合して安定化しているか、或いは、そのMは他のアゾ化合物と共有されて安定化している。
【0034】
前記一般式(1)のm1は、好ましくは1である。また、一般式(1)のn1は、好ましくは1又は2である。このような一般式(1)のジスアゾ化合物は、SO基及びNHR基を有するので、水系溶媒に対する溶解性に特に優れている。このようなアゾ化合物は、溶中において安定な超分子会合体を形成して液晶相を示すので好ましい。
また、一般式(1)のナフチル基(式(1)の右側に表されているナフチル基)においては、OH基がアゾ基の結合部に対してオルト位に結合している。このようなナフチル基を有するジスアゾ化合物は、コーティング液中において、反応性の高いOH基の水素原子とアゾ基の一方の窒素とが結合する。このようにOH基が変化してその水素原子がアゾ基と結合することにより、ナフチル基の平面構造が安定する。
【0035】
また、一般式(1)の前記ナフチル基(式(1)の右側に表されているナフチル基)の具体例としては、例えば、下記式(a)乃至式(h)などが挙げられる。式(a)乃至式(h)のR及びMは、一般式(1)のそれらと同様である。
これらの中でも、式(a)、式(b)、式(c)又は式(e)を有する一般式(1)のジスアゾ化合物は、市場において多量に流通している原料から合成できる。このため、かかるジスアゾ化合物は比較的安価に得ることができるので好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
一般式(1)において、2つのアゾ基と結合するナフチレン基(式(1)の2つのアゾ基の間のナフチレン基)の具体例としては、例えば、下記式(B)乃至(D)で表されるナフチレン基が挙げられる。式(B)乃至式(D)のM、o1及びp1は、一般式(1)のそれらと同様である。好ましくは、前記p1は、1又は2である。
【0038】
【化9】

【0039】
上記式(B)乃至(D)のナフチレン基の中で、下記式(E)乃至(H)で表されるナフチレン基が好ましい。
【0040】
【化10】

【0041】
中でも、式(B)、式(E)又は式(F)のナフチレン基を有する一般式(1)のジスアゾ化合物がより好ましい。このジスアゾ化合物は、式(B)、式(E)又は式(F)で表される1,4−ナフチレン基を有するので、分子短軸方向における誘電率異方性が大きい。このような1,4−ナフチレン基を有することは、ジスアゾ化合物の超分子会合体の形成において優位に作用する。
【0042】
以上のような点から、本発明において好ましく用いられるジスアゾ化合物は、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される。一般式(3)のQ、R、M、m1、n1、o1及びp1は、一般式(1)のそれらと同様である。一般式(4)のR、M、m1、n1及びp1は、一般式(1)のそれらと同様であり、一般式(4)のX及びxは、式(A)のそれらと同様である。
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
上記一般式(1)、(3)及び(4)で表されるジスアゾ化合物は、例えば、細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行、135頁〜152頁)に従って合成できる。
例えば、置換若しくは無置換のアニリン化合物をジアゾニウム塩化し、これをアミノナフタレンスルホン酸化合物とカップリング反応させることにより、モノアゾ化合物を得る。このモノアゾ化合物を、ヒドロキシナフタレンスルホン酸化合物とカップリング反応させることにより、上記一般式(1)、(3)及び(4)で表されるジスアゾ化合物を得ることができる。
【0046】
(モノアゾ化合物)
本発明で用いられるモノアゾ化合物は、下記一般式(2)で表される。
【0047】
【化13】

【0048】
一般式(2)において、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m2は、0〜2の整数を表し、n2は、0〜6の整数を表し、m2及びn2の少なくとも何れか一方は0でなく、p2は、1〜4の整数を表す。ただし、1≦(m2+n2)≦6である。前記m2が2の場合、各Rは同一でもよく又は異なっていてもよい。前記n2及びp2が2以上の場合、各Mは同一でもよく又は異なっていてもよい。
一般式(2)において、NHR、SO及びSOの各置換基は、それぞれナフタレン環の何れの位置に置換していてもよい。
【0049】
上記一般式(2)のRのアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又はフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、上記ジスアゾ化合物のアリール基における置換基と同様であるので、それを参照されたい。
前記Rは、好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基であり、より好ましくは水素原子又は置換若しくは無置換のアセチル基である。前記置換若しくは無置換のアルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0050】
前記一般式(2)のMとしては、上記一般式(1)のMと同様の対イオンが挙げられる。従って、一般式(2)のMについては、上記Mに関する説明を参照されたい。
【0051】
前記一般式(2)のm2は、好ましくは1である。また、一般式(2)のn2は、好ましくは1又は2である。このような一般式(2)のモノアゾ化合物は、SOM基及びNHR基を有するので、水系溶媒に対する溶解性に優れている。
【0052】
また、一般式(2)において、アゾ基と結合する一方のナフチル基(式(2)の右側に表されているナフチル基)の具体例としては、例えば、下記式(i)乃至式(p)などが挙げられる。式(i)乃至式(p)のR及びMは、一般式(2)のそれらと同様である。
これらの中でも、式(i)、式(j)、式(k)、式(m)又は式(n)を有する一般式(2)のモノアゾ化合物は、市場において多量に流通している原料から合成できる。このため、かかるモノアゾ化合物は比較的安価に得ることができるので好ましい。
【0053】
【化14】

【0054】
一般式(2)において、アゾ基と結合する他方のナフチル基(式(2)の左側に表されているナフチル基)の具体例としては、例えば、下記式(I)乃至式(K)で表されるナフチル基が挙げられる。式(I)乃至式(K)のM及びp2は、一般式(2)のそれらと同様である。好ましくは、前記p2は、1又は2である。
【0055】
【化15】

【0056】
上記式(I)、式(J)又は式(K)で表される1−ナフチル基を有する一般式(2)のモノアゾ化合物は、分子短軸方向における誘電率異方性が大きい。このような1−ナフチル基を有する一般式(2)のモノアゾ化合物を、上記一般式(1)のジスアゾ化合物に混合することにより、二色比の高い偏光フィルムが得られる。
【0057】
以上のような点から、本発明において好ましく用いられるモノアゾ化合物は、下記一般式(5)で表される。一般式(5)のR、M、m2、n2及びp2は、一般式(2)のそれらと同様である。
【0058】
【化16】

【0059】
上記一般式(2)及び(5)で表されるモノアゾ化合物は、例えば、細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行、135頁〜152頁)に従って合成できる。
例えば、アミノナフタレンスルホン酸化合物をジアゾニウム塩化し、これをヒドロキシナフタレンスルホン酸化合物とカップリング反応させることにより、上記一般式(2)及び(5)で表されるアゾ化合物を得ることができる。
【0060】
(偏光フィルム)
本発明の偏光フィルムは、上記ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物を含んでいればよく、それらの含有量は特に限定されない。例えば、偏光フィルム中における上記ジスアゾ化合物とモノアゾ化合物の含有比は、ジスアゾ化合物:モノアゾ化合物(質量比)=99:1〜10:90であり、好ましくは95:5〜30:70であり、より好ましくは90:10〜50:50である。より高い二色比を有する偏光フィルムが得られることから、ジスアゾ化合物が、モノアゾ化合物と同量又はそれよりも多く含まれていることが好ましい。
【0061】
本発明の偏光フィルムは、波長380nm〜780nmの間の少なくとも一部の波長において吸収二色性を有する。前記偏光フィルムの二色比は、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、特に好ましくは31以上である。ただし、二色比は、下記実施例に記載の方法によって求めることができる。本発明によれば、40以上の二色比を有する偏光フィルムを提供することもできる。
本発明の偏光フィルムの偏光度は、好ましくは97%以上であり、より好ましくは98%以上であり、特に好ましくは99%以上である。前記偏光度は、例えば、フィルムの厚みに応じて調整することもできる。前記偏光フィルムの透過率(波長550nm、23℃で測定)は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。ただし、前記偏光度及び透過率は、例えば、分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて測定できる。
【0062】
前記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物及び一般式(2)で表されるモノアゾ化合物を含む偏光フィルムが高い二色比を有する理由を、本発明者らは、次のように推定している。
一般式(1)のジスアゾ化合物は、上述のように、コーティング液中においてOH基の水素原子とアゾ基の一方の窒素とが結合することにより、安定な平面構造を成している。このため、このジスアゾ化合物を単独で用いた場合でも、疎水性相互作用に従ってジスアゾ化合物同士がπ−π分子会合することによって、コーティング液中においてそれらが超分子会合体を形成し得る。ジスアゾ化合物が超分子会合体を形成することにより、コーティング液は液晶相を示す。そして、上記モノアゾ化合物が、前記ジスアゾ化合物の超分子会合体の微細領域に入ることにより、前記超分子会合体が安定化すると推定される。このように超分子会合体が安定化されることにより、各アゾ化合物が結晶化することを抑制できる。また、超分子会合体が安定化されたコーティング液を用いれば、アゾ化合物を略均一に配向させることができる。従って、本発明によれば、高い二色比を有する偏光フィルムが得られる。特に、一般式(3)で表されるジスアゾ化合物及び一般式(5)で表されるモノアゾ化合物は、分子短軸方向における誘電率異方性が大きいので、このジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物を含む偏光フィルムは、より高い二色比を有する。
【0063】
また、本発明の偏光フィルムは、上記一般式(1)のジスアゾ化合物及び一般式(2)のモノアゾ化合物に加えて、他のアゾ化合物、アゾ化合物以外の他の色素、及び/又は添加剤を含んでいてもよい。これらの配合量は特に限定されず、例えば、0質量%を超え50質量%以下である。
【0064】
上記他の色素としては、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物などが挙げられる。
上記添加剤としては、相溶化剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、難燃剤、帯電防止剤、ポリビニルアルコールやポリアクリルアミドなどのポリマーなどが挙げられる。
【0065】
[本発明のコーティング液及びこれを用いた偏光フィルムの製造方法]
本発明の偏光フィルムは、上記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と上記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と溶媒とを含むコーティング液を適当な展開面上に薄膜状に塗工し、この塗膜を乾燥することによって得られる。
【0066】
本発明の偏光フィルムは、好ましくは下記工程A及び工程Bを経て製造でき、必要に応じて、工程Bの後、下記工程Cを行ってもよい。
工程A:前記ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物と溶媒とを含むコーティング液を、展開面上に塗工し、塗膜を形成する工程。
工程B:前記塗膜を乾燥する工程。
工程C:工程Bで乾燥させた塗膜の表面に、耐水化処理を施す工程。
前記展開面には、配向規制力が付与されていてもよい。
【0067】
本発明のコーティング液は、前記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と、前記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と、それらのアゾ化合物を溶解又は分散させる溶媒と、を含む。使用するジスアゾ化合物は、一般式(1)に含まれるものであれば特に限定されず、その中から1種単独で又は2種以上を併用してもよい。使用するモノアゾ化合物は、一般式(2)に含まれるものであれば特に限定されず、その中から1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
コーティング液は、水系溶媒などの溶媒に、前記アゾ化合物を溶解又は分散させることによって得られる。
なお、必要に応じて、前記アゾ化合物以外に、他のアゾ化合物、アゾ化合物以外の他の色素、ポリマー、及び/又は添加剤などを前記溶媒に添加してもよい。
【0068】
前記溶媒は、特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができるが、水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、水、親水性溶媒、水と親水性溶媒の混合溶媒などが挙げられる。前記親水性溶媒は、水に略均一に溶解する溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。上記水系溶媒は、好ましくは、水、又は、水と親水性溶媒の混合溶媒が用いられる。
【0069】
上記コーティング液は、液温や各アゾ化合物の濃度などを変化させることにより、液晶相を示す。
この液晶相は、アゾ化合物が液中で超分子会合体を形成することによって生じる。液晶相は、特に限定されず、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相、又はヘキサゴナル液晶相等が挙げられる。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される光学模様によって、確認、識別できる。
【0070】
コーティング液中におけるジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物の濃度は、それが液晶相を示すように調製することが好ましい。前記コーティング液中におけるジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物の濃度は、0.05質量%〜50質量%であり、好ましくは0.5質量%〜40質量%であり、より好ましくは2質量%〜30質量%である。ただし、前記濃度は、ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物の合計に基づく値である。
【0071】
また、コーティング液は、適切なpHに調整される。コーティング液のpHは、好ましくはpH2〜10程度、より好ましくはpH6〜8程度である。
さらに、コーティング液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃に調整される。
【0072】
上記コーティング液を、適当な展開面に塗工し、塗膜を形成する。
展開面は、コーティング液を略均一に展開するためのものである。この目的に適していれば展開面の種類は特に限定されない。展開面としては、例えば、ポリマーフィルムの表面、ガラス板の表面、金属ドラムの表面などが挙げられる。また、前記ポリマーフィルムとして配向フィルムを用いてもよい。配向フィルムは、その表面において配向規制力を有するので、液中のアゾ化合物を確実に配向させることができる。配向フィルムは、例えば、フィルムに配向規制力を付与することにより得られ得る。配向規制力の付与方法としては、例えば、フィルムの表面をラビング処理すること;フィルムの表面にポリイミドなどの膜を形成し、その膜の表面をラビング処理すること;フィルムの表面に光反応性化合物からなる膜を形成し、その膜に光照射して配向膜を形成すること;などが挙げられる。
【0073】
好ましくは、展開面として、ポリマーフィルムが用いられ、透明性に優れているポリマーフィルム(例えば、ヘイズ値3%以下)が好ましい。
上記ポリマーフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系;トリアセチルセルロース等のセルロース系;ポリカーボネート系;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系;ポリスチレン等のスチレン系;ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン等のオレフィン系;などが挙げられる。前記アゾ化合物を良好に配向させるために、ノルボルネン系フィルムを用いることが好ましい。
【0074】
コーティング液の塗工方法は特に限定されず、例えば、従来公知のコータを用いた塗工方法を採用できる。
液晶相状態のコーティング液を展開面に塗工すると、コーティング液の流動過程でアゾ化合物の超分子会合体に剪断応力が加わる。よって、前記超分子会合体の長軸方向がコーティング液の流動方向と平行となって、前記アゾ化合物の超分子会合体が配向した塗膜を展開面上に形成できる。本発明のコーティング液中においては、アゾ化合物が安定な超分子会合体を形成しているので、アゾ化合物が略均一に配向した塗膜を形成できる。
なお、アゾ化合物の配向を高めるため、必要に応じて、前記塗膜を形成した後、磁場又は電場などを印加してもよい。
【0075】
上記コーティング液を塗工して塗膜を形成した後、これを乾燥する。
塗膜の乾燥は、自然乾燥、又は強制的な乾燥などで実施できる。強制的な乾燥としては、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。
前記塗膜は、乾燥する過程で濃度が上昇し、配向したアゾ化合物が固定される。塗膜中のアゾ化合物の配向が固定されることによって、偏光フィルムの特性である、吸収二色性を生じる。得られた乾燥塗膜は、偏光フィルムとして使用できる。
以上のように本発明の偏光フィルムは、コーティング液を用いた溶液流延法によって形成できる。従って、本発明によれば、非常に薄い偏光フィルムを作製することも可能である。本発明の偏光フィルムの厚みは、例えば、0.1μm〜10μmであり、好ましくは0.1μm〜5μmである。
【0076】
なお、上記乾燥後の塗膜の表面に耐水性を付与するために、次の処理を行ってもよい。
具体的には、上記乾燥塗膜の表面に、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、セリウム塩、ランタン塩、サマリウム塩、イットリウム塩、銅塩、鉄塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる。
【0077】
この処理を行うことにより、前記化合物塩を含む層が前記乾燥塗膜の表面に形成される。かかる層を形成することにより、乾燥塗膜の表面を水に対して不溶化又は難溶化させることができる。よって、乾燥塗膜(偏光フィルム)に、耐水性を付与できる。
なお、必要に応じて、得られた偏光フィルムの表面を水又は洗浄液で洗浄してもよい。
【0078】
(本発明の偏光フィルムの用途等)
上記コーティング液をポリマーフィルム上に塗工することによって得られた偏光フィルム1は、図1に示すように、ポリマーフィルム2に積層されている。
本発明の偏光フィルム1は、通常、ポリマーフィルム2に積層された状態で使用される。もっとも、前記偏光フィルム1は、上記ポリマーフィルム2から剥離して使用することもできる。
本発明の偏光フィルム1には、さらに、他の光学フィルムを積層してもよい。他の光学フィルムとしては、保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。本発明の偏光フィルムに、保護フィルム及び/又は位相差フィルムを積層することにより、偏光板を構成できる。
【0079】
図2に、本発明の偏光フィルム1に保護フィルム3が積層された偏光板5を示す。この偏光板5は、ポリマーフィルム2と、前記ポリマーフィルム2に積層された偏光フィルム1と、前記偏光フィルム1に積層された保護フィルム3と、を有する。ポリマーフィルム2は、偏光フィルム1を保護する機能を有する。このため、前記偏光板5は、偏光フィルム1の一方の面にのみ保護フィルム3が積層されている。
また、特に図示しないが、この偏光板5には、位相差フィルムなどの他の光学フィルムが積層されていてもよい。
【0080】
偏光フィルムに他の光学フィルムを積層する場合、実用的には、これらの間には任意の適切な接着層が設けられる。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。
【0081】
本発明の偏光フィルムの用途は、特に限定されない。本発明の偏光フィルムは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置の構成部材として使用される。
前記画像表示装置が液晶表示装置の場合、その好ましい用途は、テレビ、携帯機器、ビデオカメラなどである。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
【0083】
[偏光フィルムの二色比の測定方法]
グラムトムソン偏光子を備える分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて、測定対象の偏光フィルムに、直線偏光の測定光を入射して、視感度補正したY値のk1及びk2を求めた。そのk1及びk2を下記式に代入して、二色比を求めた。ただし、前記k1は、偏光フィルムの最大透過率方向における直線偏光の透過率を表し、前記k2は、前記最大透過率方向に直交する方向における直線偏光の透過率を表す。
式:二色比=log(1/k2)/log(1/k1)
【0084】
[液晶相の観察方法]
2枚のスライドガラスの間にコーティング液を少量挟み込み、顕微鏡用大型試料加熱冷却ステージ(ジャパンハイテック(株)製、製品名「10013L」)を備える、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製、製品名「OPTIPHOT−POL」)を用いて、液晶相を観察した。
【0085】
[偏光フィルムの厚みの測定方法]
偏光フィルムの厚みは、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に形成された偏光フィルムの一部を剥離し、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製、製品名「Micromap MM5200」)を用い、前記ポリマーフィルムと偏光フィルムの段差を測定した。
【0086】
[ジスアゾ化合物(1−1)の合成例]
4−ニトロアニリン(1当量)を、下記文献に記載の方法に従って、亜硝酸ナトリウム(1当量)及び塩酸(5当量)を用いてジアゾニウム塩化し、弱酸性冷水溶液中にて、これを1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸(1当量)とカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物(1当量)を、亜硝酸ナトリウム(1当量)及び塩酸(2.5当量)を用いてジアゾニウム塩化し、弱塩基性冷水溶液中にて、これを1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸(0.95当量)とカップリング反応させることによって、ジスアゾ化合物を得た。このジスアゾ化合物のスルホン酸塩をリチウム塩へ変換するため、ジスアゾ化合物を塩化リチウムで塩析することによって、下記式(1−1)で表されるジスアゾ化合物を得た。
文献:細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行の135頁〜152頁)
【0087】
【化17】

【0088】
[ジスアゾ化合物(1−2)の合成例]
4−ニトロアニリンに代えて、4−シアノアニリンを用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸を用いたこと以外は、上記ジスアゾ化合物(1−1)の合成例と同様にして、下記式(1−2)のジスアゾ化合物を得た。
【0089】
【化18】

【0090】
[ジスアゾ化合物(1−3)の合成例]
4−ニトロアニリンに代えて、4−シアノアニリンを用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、2−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸を用いたこと以外は、上記ジスアゾ化合物(1−1)の合成例と同様にして、下記式(1−3)のジスアゾ化合物を得た。
【0091】
【化19】

【0092】
[ジスアゾ化合物(1−4)の合成例]
4−ニトロアニリンに代えて、4−スルホアニリンを用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、1−アセチルアミノ−8−ヒドロキシ−4,6−ナフタレンジスルホン酸を用いたこと以外は、上記ジスアゾ化合物(1−1)の合成例と同様にして、下記式(1−4)のジスアゾ化合物を得た。
【0093】
【化20】

【0094】
[モノアゾ化合物(2−1)の合成例]
1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸(1当量)を、下記文献に記載の方法に従って、亜硝酸ナトリウム(1当量)及び塩酸(5当量)を用いてジアゾニウム塩化し、これを1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸(1当量)とカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物のスルホン酸塩をリチウム塩へ変換するため、モノアゾ化合物を塩化リチウムで塩析することによって、下記式(2−1)で表されるモノアゾ化合物を得た。
文献:細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行の135頁〜152頁)
【0095】
【化21】

【0096】
[モノアゾ化合物(2−2)の合成例]
1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸に代えて、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、上記モノアゾ化合物(2−1)の合成例と同様にして、下記式(2−2)のモノアゾ化合物を得た。
【0097】
【化22】

【0098】
[モノアゾ化合物(2−3)の合成例]
1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸に代えて、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、1−アセチルアミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸を用いたこと以外は、上記モノアゾ化合物(2−1)の合成例と同様にして、下記式(2−3)のモノアゾ化合物を得た。
【0099】
【化23】

【0100】
[モノアゾ化合物(2−4)の合成例]
1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸に代えて、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、3−アミノ−8−ヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、上記モノアゾ化合物(2−1)の合成例と同様にして、下記式(2−4)のモノアゾ化合物を得た。
【0101】
【化24】

【0102】
[モノアゾ化合物(2−5)の合成例]
1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸に代えて、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと、及び、1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸に代えて、2−アミノ−8−ヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、上記モノアゾ化合物(2−1)の合成例と同様にして、下記式(2−5)のモノアゾ化合物を得た。
【0103】
【化25】

【0104】
[実施例1]
上記式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物を、表1に示される配合比(質量比)で混合し、これをイオン交換水に溶解させることにより、濃度7質量%のコーティング液を調製した。ただし、前記濃度は、前記ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物の固形分合計に基づく値である。
前記コーティング液を、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオノア」)の前記処理面上に、バーコータ(BUSHMAN社製、製品名「Mayer rot HS4」)を用いて塗工し、自然乾燥した。乾燥後の塗膜が、偏光フィルムである。
得られた偏光フィルムの厚みは、約0.2μmであった。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
なお、別途、式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物を、表1に示される配合比(質量比)で混合し、これをイオン交換水に溶解させることにより、濃度20質量%の液を調製し、その液を、上記液晶相の観察方法に従って、23℃で観察したところ、ネマチック液晶相を示していた。
【0105】
[実施例2]
式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−2)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0106】
[実施例3]
式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−3)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0107】
[実施例4]
式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−4)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0108】
[実施例5]
式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−5)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0109】
[実施例6]
式(1−1)のジスアゾ化合物に代えて、式(1−2)のジスアゾ化合物を用いたこと、及び、式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−2)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0110】
[実施例7]
式(1−1)のジスアゾ化合物に代えて、式(1−2)のジスアゾ化合物を用いたこと、及び、式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−3)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0111】
[実施例8]
式(1−1)のジスアゾ化合物に代えて、式(1−3)のジスアゾ化合物を用いたこと、及び、式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−3)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例9]
式(1−1)のジスアゾ化合物に代えて、式(1−4)のジスアゾ化合物を用いたこと、及び、式(2−1)のモノアゾ化合物に代えて、式(2−5)のモノアゾ化合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。それらの配合比(質量比)及び偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0113】
[比較例1]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(1−1)のジスアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0114】
[比較例2]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(1−2)のジスアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0115】
[比較例3]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(1−3)のジスアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0116】
[比較例4]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(1−4)のジスアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0117】
[比較例5]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(2−1)のモノアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0118】
[比較例6]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(2−2)のモノアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0119】
[比較例7]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(2−3)のモノアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0120】
[比較例8]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(2−4)のモノアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0121】
[比較例9]
式(1−1)のジスアゾ化合物及び式(2−1)のモノアゾ化合物の混合物に代えて、式(2−5)のモノアゾ化合物のみを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、厚み約0.2μmの偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの二色比の測定結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
[評価]
ジスアゾ化合物及びモノアゾ化合物を含む実施例1乃至実施例9の偏光フィルムは、ジスアゾ化合物のみ又はモノアゾ化合物のみを含む比較例1乃至9の偏光フィルムに比して、二色比が格段に高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の偏光フィルムは、例えば、液晶表示装置の構成部材、偏光サングラスなどに利用できる。
本発明のコーティング液は、偏光フィルムの形成材料として利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1…偏光フィルム、2…基材、3…保護フィルム、5…偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と、下記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と、を含む偏光フィルム。
【化1】

Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m1は、0〜2の整数を表し、n1は、0〜6の整数を表し、m1及びn1の少なくとも何れか一方は0でなく、o1は、0〜1の整数を表し、p1は、1〜4の整数を表し;
【化2】

は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m2は、0〜2の整数を表し、n2は、0〜6の整数を表し、m2及びn2の少なくとも何れか一方は0でなく、p2は、1〜4の整数を表す。
【請求項2】
前記ジスアゾ化合物が、下記一般式(3)で表されるジスアゾ化合物である、請求項1に記載の偏光フィルム。
【化3】

一般式(3)のQ、R、M、m1、n1、o1及びp1は、一般式(1)のそれらと同様である。
【請求項3】
前記モノアゾ化合物が、下記一般式(5)で表されるモノアゾ化合物である、請求項1又は2に記載の偏光フィルム。
【化4】

一般式(5)のR、M、m2、n2及びp2は、一般式(2)のそれらと同様である。
【請求項4】
下記一般式(1)で表されるジスアゾ化合物と、下記一般式(2)で表されるモノアゾ化合物と、溶媒と、を含むコーティング液。
【化5】

Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m1は、0〜2の整数を表し、n1は、0〜6の整数を表し、m1及びn1の少なくとも何れか一方は0でなく、o1は、0〜1の整数を表し、p1は、1〜4の整数を表し;
【化6】

は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、又は、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Mは、それぞれ独立して、対イオンを表し、m2は、0〜2の整数を表し、n2は、0〜6の整数を表し、m2及びn2の少なくとも何れか一方は0でなく、p2は、1〜4の整数を表す。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の偏光フィルムを有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−194357(P2012−194357A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58097(P2011−58097)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】