説明

偏光レンズ及び偏光レンズの製造方法

【課題】 偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールの水による溶出を阻止するようにして、保護フィルムとの接着を確実に行うことができるようにし、耐水性の向上を図る。
【解決手段】
ポリビニルアルコール製の偏光性薄膜1の両面にアセチルセルロース製の保護フィルム2,3を接合してなる偏光板Hを用い、この偏光板Hの片面に熱可塑性樹脂フィルム10を接着剤または粘着剤にて接合し、この熱可塑性樹脂フィルム10が凹曲面側に位置するように曲面成形し、この偏光板Hの凹曲面側に熱可塑性樹脂フィルム10と同じ樹脂からなる熱可塑性樹脂成形層11を積層成形した偏光レンズLにおいて、保護フィルム2,3を接着剤を介して偏光性薄膜1の両面に接着するとともに、接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩用のサングラスやゴーグル等に利用される偏光レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の偏光レンズとして、例えば、ポリビニルアルコール製の偏光性薄膜の両面にアセチルセルロース製の保護フィルムを接合してなる偏光板を曲面成形し、該偏光板の凹曲面側にポリカーボネート樹脂からなる樹脂層を積層成形した偏光レンズが知られている。この偏光レンズにおいては、偏光板は、例えば、保護フィルムを接着剤を介して偏光性薄膜の両面に接着している(例えば、特開2002−90529号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−90529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来の偏光レンズにおいては、水に浸漬された場合には、偏光板の偏光性薄膜と保護フィルムとが剥がれてくることがあり、耐水性が必ずしも良いとはいえないという問題があった。その理由は、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコール自体が親水性の部材なので、水の影響を受けやすく、溶出を生じることに起因すると考えられる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールの水による溶出を阻止するようにして、保護フィルムとの接着を確実に行うことができるようにし、耐水性の向上を図った偏光レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の偏光レンズは、ポリビニルアルコール製の偏光性薄膜の両面にアセチルセルロース製の保護フィルムを接合してなる偏光板に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を積層成形した偏光レンズにおいて、
上記保護フィルムを接着剤を介して上記偏光性薄膜の両面に接着するとともに、該接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いた構成としている。
ここで、樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系、ポリスチレン系、メチルメタアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートなどの単重合体,共重合体を含むアクリル系、塩化ビニル系、ポリスチレン・メチルメタクリレート系、アクリロニトリル・スチレン系、ポリ−4−メチルペンテン−1、アンダマンタン環やシクロペンタン環を主鎖に持つ主鎖炭化水素系、フルオレン基を側鎖に持つポリエステル系、透明ナイロンなどポリアミド系、ポリウレタン系、アセチルセルロース、プロピルセルロースなどアシルセルロース系のセルロース系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、一種の樹脂を単層にし、また、同種の樹脂を複層にし、あるいは、異種の樹脂を複層にするなど、適宜に設けて良い。
【0007】
これにより、接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いたので、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールと保護フィルムとの接着が確実になる。特に、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールの水による溶出が阻止され、耐水性が向上する。これは、酸無水物がエポキシ樹脂を硬化させるとともに、ポリビニルアルコールの水酸基と化学結合を形成して三次元的に硬化するためと考えられる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂として、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型およびグリシジルアミン型のエポキシ樹脂、線状脂肪族エポキサイド、環式脂肪族エポキシ樹脂を単独若しくは2種以上用いる構成としている。
【0009】
この場合、上記エポキシ樹脂として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾールフェノールジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フッ素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、臭素化ノボラックグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノクレゾール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルフォキサイド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンを単独若しくは2種以上用いることが有効である。
【0010】
更に、必要に応じ、上記酸無水物として、無水マレイン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水セバシン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、シクロペンタン・テトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル・テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテートを単独若しくは2種以上用いる構成としている。
【0011】
更にまた、必要に応じ、上記酸無水物を、エポキシ樹脂に対して、当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.3〜2の範囲で混合する構成としている。
当量比0.3以下であるとエポキシ樹脂未硬化の不具合があり、当量比2を越えると、接着強度が大きく低下する不具合がある。
望ましくは、上記酸無水物を、エポキシ樹脂に対して当量比で、0.5〜1.5の範囲で混合することである。
【0012】
また、必要に応じ、上記エポキシ樹脂及び酸無水物の混合物の硬化温度を室温から150℃の範囲に設定し、硬化時間を1時間から48時間の範囲に設定している。例えば、エポキシ樹脂及び酸無水物の混合物の硬化温度を100℃±20℃の範囲に設定し、硬化時間を2時間から48時間の範囲に設定している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の偏光レンズによれば、偏光板の接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いたので、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールと保護フィルムとの接着が確実になる。特に、偏光性薄膜を構成するポリビニルアルコールの水による溶出が阻止され、耐水性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る偏光レンズについて詳細に説明する。
図1に示すように、実施の形態に係る偏光レンズLは、ポリビニルアルコール製の偏光性薄膜1の両面にアセチルセルロース製の保護フィルム2,3を接合してなる偏光板Hを用い、この偏光板Hの片面に熱可塑性樹脂フィルム10を接着剤または粘着剤にて接合した積層フィルム12を作成し、この積層フィルム12を熱可塑性樹脂フィルム10が凹面側に位置するよう曲面成形し、その後、射出成形(インサートモールド法)にて、凹面側へ熱可塑性樹脂フィルム10と同樹脂からなる熱可塑性樹脂成形層11を積層成形してある。これにより、偏光板Hの凹曲面側に熱可塑性樹脂フィルム10及び熱可塑性樹脂成形層11からなる熱可塑性樹脂の樹脂層Jが積層成形される。
【0015】
そして、偏光板Hにおいて、偏光性薄膜1は、厚さ0.1mm以下のポリビニルアルコールの延伸樹脂シートであり、偏光度80%以上、好ましくは95%以上であることが好ましい。また、偏光性薄膜1は、ヨウ素ドープ法、染料ドープ法のいずれかの方法で調製して形成することができる。
保護フィルム2,3は、0.01〜1.5mm、好ましくは0.02〜1.2mmの厚さに形成されたアセチルセルロースであり、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピルセルロース、ジプロピルセルロースなどから選択される。
【0016】
この保護フィルム2,3は、接着剤を介して偏光性薄膜1の両面に接着されている。接着剤の厚さは、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜80μmである。接着剤としては、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物が用いられる。
詳しくは、エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂として、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型およびグリシジルアミン型のエポキシ樹脂、線状脂肪族エポキサイド、環式脂肪族エポキシ樹脂を単独若しくは2種以上用いる。
【0017】
具体的には、エポキシ樹脂として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾールフェノールジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フッ素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、臭素化ノボラックグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノクレゾール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルフォキサイド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンを単独若しくは2種以上用いる。
【0018】
また、酸無水物として、無水マレイン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水セバシン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、シクロペンタン・テトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル・テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテートを単独若しくは2種以上用いる。
【0019】
酸無水物は、エポキシ樹脂に対して、当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.3〜2の範囲で混合している。望ましくは、当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.5〜1.5の範囲で混合する。
また、エポキシ樹脂及び酸無水物の混合物の硬化温度を室温から150℃の範囲に設定し、硬化時間を1時間から48時間の範囲に設定している。例えば、エポキシ樹脂及び酸無水物の混合物の硬化温度を100℃±20℃の範囲に設定し、硬化時間を2時間から48時間の範囲に設定している。
【0020】
また、樹脂層Jにおいて、偏光板Hの片面に接合される熱可塑性樹脂フィルム10と射出成形にて積層される熱可塑性樹脂成形層11について説明する。熱可塑性樹脂フィルム10は、例えばポリカーボネート樹脂からなり、偏光板Hの保護フィルム2に、予め、接着剤または粘着剤で接合されている。熱可塑性樹脂フィルム10は、0.01〜2.0mm、好ましくは0.03〜1.5mmの厚さに設定される。接着剤としては、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリチオウレタン系等が用いられ、粘着剤としては、酢酸ビニル系、アクリル系などが用いられる。そして、偏光板Hに熱可塑性樹脂フィルム10が接合された積層フィルム12を、偏光板Hの熱可塑性樹脂フィルム10側が凹曲面になるように熱プレス等で曲面成形し、外形抜き加工をして所要形状に整えて、中間品13を作成する。そして、この曲面成形された所要形状の中間品13の熱可塑性樹脂フィルム10に、射出成形にて熱可塑性樹脂成形層11を設ける。
【0021】
熱可塑性樹脂成形層11は、例えばポリカーボネート樹脂からなり、重合度120以下、好ましくは重合度100以下のものが用いられ、射出成形法などにより、熱溶融されて金型に押し込み成形される。熱可塑性樹脂成形層11は、例えば、0.5mm〜20mmの厚さに成形される。その後、仕上げ加工を施し、偏光レンズLの製品とする。
【0022】
この偏光レンズLの製品においては、偏光板Hにおいて、接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いたので、偏光性薄膜1を構成するポリビニルアルコールと保護フィルム2,3を構成するアセチルセルロースとの接着が確実になる。特に、偏光性薄膜1を構成するポリビニルアルコールの水による溶出が阻止され、耐水性が向上する。これは、酸無水物がエポキシ樹脂を硬化させるとともに、ポリビニルアルコールの水酸基と化学結合を形成して三次元的に硬化するためと考えられる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の実施例に係る偏光レンズLの偏光板Hを示す。実施例に係る偏光板Hにおいて、偏光性薄膜1として、厚さ0.04mm(クラレ社製「クラレビニロン#4000」)のポリビニルアルコールの延伸樹脂シートを用いた。また、保護フィルム2,3として、厚さ0.08mm(フジフィルム社製「フジタックTA80」)のトリアセチルセルロースを用いた。そして、この保護フィルム2,3を、接着剤を介して偏光性薄膜1の両面に接着した。接着剤としては、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いた。
【0024】
<実施例1>
接着剤において、エポキシ樹脂として、トリグリシジル−p−アミノフェノール(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート630」)を用いた。また、酸無水物として、無水マレイン酸(和光純薬工業社製)を用いた。無水マレイン酸は、エポキシ樹脂100重量部に対して、105重量部(当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で1.05)を混合した。
そして、この接着剤を用い、その硬化温度を100℃にし、硬化時間を24時間にして、保護フィルム2,3を偏光性薄膜1の両面に接着した。
【0025】
<実施例2>
接着剤において、エポキシ樹脂として、ポリグリコールジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン社製「YED205」)を用いた。また、酸無水物として、無水マレイン酸(和光純薬工業社製)を用いた。無水マレイン酸は、エポキシ樹脂100重量部に対して、35重量部(当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.5)を混合した。
そして、この接着剤を用い、その硬化温度を100℃にし、硬化時間を24時間にして、保護フィルム2,3を偏光性薄膜1の両面に接着した。
【0026】
次に、これらの実施例に係る偏光板Hについて、比較例とともに耐水試験を行った。比較例は、上記実施例と同様の偏光性薄膜1及び保護フィルム2,3を用い、接着剤の条件及び硬化条件を変えた。
接着剤の条件は、基剤にエポキシ樹脂としてのトリグリシジル−p−アミノフェノール(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート630」、以下「630」と表記)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート801」、以下「801」と表記)を用い、それぞれに硬化剤として変性脂環式ポリアミン化合物(ビス(2−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン)(ジャパンエポキシレジン社製「エピキュア113」、以下「113」と表記)、ポリグリコールジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン社製「YED205」、以下「YED205」と表記)、「ナトリウムエトキシド」を100:32の比で混合したものを6種類(比較例1〜6)、また、「630」と「113」の組合せのみ100:64の比で混合したものを1種類(比較例7)、「無水マレイン酸」を「エタノール」に10wt%を混合したエタノール溶液を1種類(比較例8)、「630」のみで硬化剤を用いないものを1種類(比較例9)の計9種類を接着剤として設けた。
硬化条件は、上記前者の6種類(比較例1〜6)を硬化温度を60℃、硬化時間を72時間、後者(比較例7〜9)を全て硬化温度を100℃、硬化時間24時間とした。
【0027】
耐水試験は、試験片として、上記条件で接着・硬化させたフィルムを幅30mm、長さ90mmの長方形に切断したものを用意し、この試験片を60℃の湯に24時間浸漬し、剥離状態を見た。
結果を図2に示す。密着性については、接着・硬化後に手で容易に剥離できないものを「○」、容易に剥離できるものもしくは接着されないものを「×」と判定した。また、耐水性については、上記試験条件下で剥離が全くなく、優良なものを「◎」、良好なものを「○」、試験片外周に若干剥離があるものを「△」、明らかに剥離が確認されたものを「×」、また、試験が不可のものを「―」と判定した。
この結果から、エポキシ樹脂を用いた接着において、無水マレイン酸が有効であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る偏光レンズをその製造工程とともに示す図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例の耐水試験の結果を示す表図である。
【符号の説明】
【0029】
L 偏光レンズ
H 偏光板
1 偏光性薄膜
2,3 保護フィルム
J 樹脂層
10 熱可塑性樹脂フィルム
11 熱可塑性樹脂成形層
12 積層フィルム
13 中間品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール製の偏光性薄膜の両面にアセチルセルロース製の保護フィルムを接合してなる偏光板に、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を積層成形した偏光レンズにおいて、
上記保護フィルムを接着剤を介して上記偏光性薄膜の両面に接着するとともに、該接着剤として、エポキシ樹脂と酸無水物との混合物を用いたことを特徴とする偏光レンズ。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂として、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型およびグリシジルアミン型のエポキシ樹脂、線状脂肪族エポキサイド、環式脂肪族エポキシ樹脂を単独若しくは2種以上用いることを特徴とする請求項1記載の偏光レンズ。
【請求項3】
上記エポキシ樹脂として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾールフェノールジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フッ素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、臭素化ノボラックグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノクレゾール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルフォキサイド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンを単独若しくは2種以上用いることを特徴とする請求項2記載の偏光レンズ。
【請求項4】
上記酸無水物として、無水マレイン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水セバシン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、シクロペンタン・テトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル・テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテートを単独若しくは2種以上用いることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の偏光レンズ。
【請求項5】
上記酸無水物を、エポキシ樹脂に対して、当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.3〜2の範囲で混合することを特徴とする請求項4記載の偏光レンズ。
【請求項6】
上記酸無水物を、エポキシ樹脂に対して、当量比(酸無水物当量とエポキシ当量の比)で0.5〜1.5の範囲で混合することを特徴とする請求項4記載の偏光レンズ。
【請求項7】
上記エポキシ樹脂及び酸無水物の混合物の硬化温度を室温から150℃の範囲に設定し、硬化時間を1時間から48時間の範囲に設定したことを特徴とする請求項5または6記載の偏光レンズ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−113147(P2010−113147A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285542(P2008−285542)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【特許番号】特許第4395547号(P4395547)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(306017014)地方独立行政法人 岩手県工業技術センター (61)
【出願人】(301053383)株式会社ニュートン (6)
【Fターム(参考)】