説明

偏向ヨーク装置及び偏向ヨークの組み立て方法

【課題】 端子板が偏向ヨーク本体から外れることのないようにすると共に、回路部品が端子板から外れることのないようにする。
【解決手段】 端子板102の取付け穴に開口小面積部分を設け、回路部品112の脚部に設けられた切欠きをその開口小面積部分に嵌め込み、取付け部材の突起を、取付け穴の、残りの開口部分に挿入して、その鉤部205,206を取付け穴の縁に掛けるようにする。その際、回路部品112の脚部の係止片が、突起が撓むのを阻止するような位置に配置されるように構成した。 それによって取付け穴が塞がって、回路部品の脚部が開口面積部分から外れないようになり、かつ取付け部材の突起が撓むのが抑制されるため、取付け穴から取付け部材が外れることもなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極線管に適用される偏向ヨーク装置に関し、特にバランスコイル等の電気部品を装着した端子板を取付ける機構を備えた偏向ヨーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、陰極線管の電子ビームを偏向するために偏向ヨーク装置が広く用いられている。この偏向ヨークは、陰極線管の電子銃が配置されるネック部から漏斗状に広がるファンネル部に対応するように取付けられ、電子銃から発射された電子ビームを、表示面上で走査線を形成するように偏向する。
【0003】
偏向ヨーク装置は、鞍型に巻回された一対の水平偏向コイル、コアにトロイダル状に巻回された一対の垂直偏向コイル及び水平偏向コイルと垂直偏向コイルを分離するコイルセパレータを主たる構成要素とする偏向ヨーク本体と、電子ビームの偏向を細部で補正するための回路部品を装着した端子板とでなる。
【0004】
端子板は、通常、樹脂製のコイルセパレータに一体的に形成された取付け部材によって、コイルセパレータに取付けられるように構成される。具体的には、コイルセパレータに弾性を有した先端鉤状の突起を形成し、端子板に取付け穴を設け、この取付け穴を突起に嵌合させることで端子板をコイルセパレータに取付けるように構成している。
【0005】
また、端子板に装着される回路部品は、通常、半田付けにより取付けられるが、外形寸法の大きな例えばバランスコイル等の回路部品は、端子板に対して、機械的な取付け機構を介して取付けられ、かつ電気的に半田付けによって回路に組み込まれる。
【0006】
この回路部品の端子板への機械的取付け機構は、端子板をコイルセパレータに取付ける機構と実質的に同じものであり、端子板に設けられた取付け穴に、回路部品の先端鉤状に形成された取付け脚を嵌合する構成のものが適用される。
【0007】
バランスコイルは、通常、一対の水平偏向コイル間のインダクタンスのばらつきを調整したり、あるいは横方向ミスコンバーゼンスの左右非対称を調整するために用いられるもので、コイルボビンの中心部に、例えばネジ機構によって軸方向に移動自在な磁性コア部材が設けられている。調整の際にはこの磁性コア部材を移動させるために力を加える必要があるが、それがボビンにそのまま伝わって、脚部を変形させて、端子板との嵌合が外れ、端子板との機械的な結合が解かれてしまうということが起こることがある。
【0008】
また、端子板についても、コイルセパレータに取付けた後、半田付け等の作業を行う場合があり、その際に加わる力によって、コイルセパレータの突起との嵌合が外れてしまうということも起こる可能性がある。
【0009】
このように、従来、調整等の過程で、偏向ヨーク装置の端子板に機械的に取付けられた回路部品が、基板から外れてしまったり、あるいは端子板そのものが、偏向ヨーク本体から外れてしまうことがあり、問題となっていた。
【0010】
従来、偏向ヨーク本体に取付けた端子板が、当該偏向ヨーク本体から外れてしまうのを防止しようとする試みとして、例えば特許文献1に示すようなものが提案されている。この特許文献1では、端子板を覆うカバーに凸部を形成し、この凸部の先端を端子板が嵌合するセパレータの爪に接触されて、嵌合状態を保持するようにした構成が開示されている。また、従来例として、端子板取付け後に、セパレータの爪が嵌合している孔の隙間にアタッチメントを挿入して、爪が外れないようする構成が記載されている。
【0011】
この特許文献1においては、端子板を覆うカバー、あるいは特別に設けられたアタッチメントによって、端子板がセパレータの爪から外れないようにしたものであり、部品点数が多くなり、取付け作業が複雑になって好ましくない。
【0012】
また、取付け機構によって端子板へ機械的に取付けられる回路部品が、端子板から外れしまうことに関しては、全く記載されていない。
【特許文献1】特開平11−167883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、従来、偏向ヨーク本体に取付けられる端子板が、該偏向ヨーク本体から外れてしまうのを防止することを目的とした提案はなされているが、構成が複雑で好ましいものではなく、また、取付け機構によって端子板に取付けられる回路部品が、端子板から外れてしまうことに関しては、具体的な解決策はもとより、それを課題として取上げることさえなされておらず、さらなる改善が要望されていた。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、端子板を偏向コイル本体へ取付ける際に用いる取付け穴に、コイルセパレータの突起を挿入すると共に、回路部品の脚部をも挿入するように構成することにより、端子板が偏向コイル本体から外れてしまうのを防止すると共に、回路部品が端子板から外れてしまうということをも防止できるようにした偏向ヨーク装置及び偏向ヨークの組み立て方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の偏向ヨーク装置は、開口大面積部分と、この開口大面積部分に連続して形成される開口小面積部分とでなる取付け穴が形成された端子板と、前記開口大面積部分に挿通可能な形状の先端部を有し、さらにその先端部の側壁に切欠きが形成されると共に、側壁面と交わる方向に弾性を有した係止片が形成され、前記先端部が前記取付け穴の開口大面積部分に挿通した後、前記端子板の面と平行な方向に変移させて、前記切欠きに前記取付け穴の縁を嵌め込むことで、前記取付け穴の開口小面積部に嵌合される第1の部材と、弾性を備えた素材にて先端に鉤部を有するように成形され、当該鉤部が前記第1の部材が嵌合された前記取付け穴に前記弾性に抗して撓むことで挿入され、前記弾性によって前記撓みが復帰して前記鉤部が前記取付け穴の縁に掛かることで前記取付け穴に嵌合される第2の部材であって、前記取付け穴への嵌合によって、前記第1の部材の前記取付け穴の開口小面積部分からの移動を阻止し、かつ前記第1の部材の係止片によって、前記鉤部が前記取付け穴の縁から外れるに足る撓みを受けないように前記取付け穴に嵌合された第2の部材と、を具備したことを特徴とする。
【0016】
本発明の偏向ヨークの組み立て方法は、開口大面積部分と、この開口大面積部分に連続して形成される開口小面積部分とでなる取付け穴が形成された端子板に、当該端子板の前記開口大面積部分に挿通可能な形状の先端部を有し、さらにその先端部の側壁に切欠きが形成されると共に、側壁面と交わる方向に弾性を有した係止片が形成された第1の部材を、前記取付け穴の開口大面積部分に挿通した後、前記端子板の面と平行な方向に変移させて、前記切欠きに前記取付け穴の縁を嵌め込むことで、第1の部材を前記取付け穴の開口小面積部に嵌合するステップと、弾性を備えた素材にて先端に鉤部を有するように成形された第2の部材を、その鉤部を前記第1の部材が嵌合された前記取付け穴に前記弾性に抗して撓ませて挿入し、挿入後、弾性によって前記撓みを復帰させて前記鉤部を前記取付け穴の縁に掛けることで前記取付け穴に嵌合させ、それによって、前記第1の部材の前記取付け穴の開口小面積部分からの移動を阻止し、かつ前記第1の部材の係止片によって、前記鉤部が前記取付け穴の縁から外れるに足る撓みを受けないようするステップと、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端子板の偏向ヨーク本体への機械的取付け、及び回路部品の端子板への機械的取付けが、簡単に実行可能で、かつそれらの取付け状態を確実に保持することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の偏向ヨーク装置を詳細に説明する。図1は、本発明の偏向ヨーク装置の一実施の形態を側面から見た図である。図1において、偏向ヨーク装置100は、偏向ヨーク本体101と端子板102を備えている。
【0019】
偏向ヨーク本体101は、コイルセパレータ103と、このコイルセパレータ103の外側に配設された、コア104にトロイダル巻きに巻回された一対の垂直偏向コイル105と、コイルセパレータ103の内部に設けられた、それぞれサドル巻に巻回された一対の水平偏向コイル106を備えている。
【0020】
コイルセパレータ103は、その端部に径の大きな鍔部107が形成され、この鍔部107から、漏斗状に徐々に径小に絞り込まれて先端部分では略一定の径に形成されており、その一定の径になった付近に径小の鍔部108が形成され、さらに最先端部は複数の片109に分割されている。
【0021】
以上のように構成された偏向ヨーク本体101は、径大鍔部107を図示しない陰極線管のファンネル部に接するように装着し、複数の片109部分に固定バンド110を巻き付けて陰極線管のネック部に締め付けることで、陰極線管に取付けられる。
【0022】
コイルセパレータ103の径小鍔部108には、装着される図示しない陰極線管の軸方向と直交する方向に、突出する端子板取付け部材111が設けられている。
【0023】
端子板102は、回路部品112が取付けられると共に、偏向ヨーク本体101のコイルと電気的に接続するための複数のピン113が設けられている。さらに端子板102には、図1では示されていない、取付け穴が設けられている。
【0024】
端子板102の偏向ヨーク本体101への取付けは、取付け穴を取付け部材111に嵌合させ、さらに同じ取付け穴に回路部品112の脚部を挿入することにより完了する。
【0025】
図2は、径小鍔部108に形成された取付け部材111を詳細に示す斜視図である。図2において、取付け部材111は、径小鍔部108の幅方向に所定間隔をおいて一体的に植設された一組の突起201,202と、さらにこの突起201,202に対して、鍔部108の長手方向に所定間隔をおいて、一体的に植設された一組の突起203,204でなる。
【0026】
突起201,202は、先端に互いに逆方向に突出する鉤部205,206が形成されていると共に、端子板102の、回路部品112が取付けられる面とは反対の面を支持するための突部207,208が、突起203,204とは逆方向に突出するように形成されている。同様に、突起203,204は、先端に互いに逆方向に突出する鉤部209,210が形成されていると共に、端子板102の回路部品112が取付けられる面とは反対の面を支持するための突部211,212が、突起201,202とは逆方向に突出するように形成されている。
【0027】
図3は、端子板102の取付け穴の形状詳細に示す斜視図である。図3において、取付け穴301,302は所定間隔をおいて形成された方形状の穴であり、さらに互いに他方方向の辺に切欠き部303,304が設けられている。すなわち、切欠き部303,304が請求の範囲における、開口小面積部分であり、取付け穴301,302から、切欠き部303,304を除いた部分が、請求の範囲における開口大面積部分である。
【0028】
図4は、回路部品112の脚部の形状を詳細に説明するための斜視図である。図4において、回路部品112は、コイルが巻回されるボビン401の両端部に鍔部402,403が形成され、それぞれの鍔部402,403と一体に脚部404,405が形成されている。
【0029】
脚部404,405は、中間部にボビン401の軸方向外方に突出する係止片406,407が設けられ、さらに先端付近において、幅方向に切欠き408,409,410,411がそれぞれ設けられている。係止片406,407は自身弾性を有する。
【0030】
以上説明した、コイルセパレータ103の径小鍔部の取付け部材111、
端子板102の取付け穴301,302及び回路部品112の脚部404.405のそれぞれの寸法形状は、互いに関連した値に設定される必要があり、例えば次のように設定される。
【0031】
端子板102の取付け穴301,302の長辺の寸法Aに対して、回路部品112の脚部404,405の幅寸法A’が若干小さく、取付け部材111の突起201,202の互いに対向する面とは反対側の面間の寸法A’’と略等しい。
【0032】
さらに、端子板102の取付け穴301,302の短辺の寸法Bに対して、回路部品112の脚部404,405の厚み寸法B’は、若干小さく設定され、取付け部材111の突起201,202,203,204の幅寸法B’’と略同寸法に設定されている。
【0033】
さらに、端子板102の取付け穴301,302の切欠き部303,304の各切欠き長さ寸法Cに対して、回路部品112の脚部404,405の切欠き408と409間及び410と411間の寸法C’は略同寸法に設定される。
【0034】
さらに、端子板102の取付け穴301,302の切欠き部303,304の各切欠き幅寸法Dに対して、回路部品112の脚部404,405の厚み寸法B’が略等しく設定されている。
【0035】
さらに、端子板102の取付け穴301,302の切欠き部303,304間の寸法Eは、回路部品112の脚部404.405間の寸法E’と略同寸法に設定され、端子板102の取付け穴301,302間の寸法Fは、取付け部材111の突起201,202と突起203,204間の寸法F’と略同寸法に設定されている。
【0036】
さらに、回路部品112の脚部404,405の切欠き408,409の高さ寸法Gは、端子板102の厚さ寸法と略同寸法に設定されている。
【0037】
さらに、回路部品112の脚部404,405の係止片406,407の幅寸法Hは、取付け部材111の突起201と202間及び突起203と204間の寸法H’と略同寸法に設定されている。
【0038】
次に、以上のように構成された各要素を組み立てる手順について図5のフローチャートと、組み立て過程を示す斜視図6,7を参照して説明する。
【0039】
まず、回路部品112の脚部404、405を互いの間隔を広げるようにして、端子板102の取付け穴301,302に挿入する。これが図5のフローチャートのステップS501に対応する。
【0040】
回路部品112の脚部404,405は、その切欠き408,409によって形成される幅小部(寸法C’部)が、取付け穴301,302の切欠き部303,304に嵌り込むことで、回路部品112の端子板102への取付けが完了するものであり、脚部404,405が取付け穴301,302の切欠き部303.304に嵌り込むまで、脚部404,405の挿入位置を調整する。これがフローチャートのステップS502に相当する。回路部品112が端子板113の取付け穴301,302に取付けられた状態を図6に示す。
【0041】
次に、図6に示す状態の端子板102の取付け穴301,302にコイルセパレータ103の取付け部材111の突起201〜204を挿入させる。これがフローチャートのステップS503に相当する。
【0042】
なお、図6に示す状態においては、図2〜4に示す寸法状態に設定されることにより、端子板102の取付け穴301,302は、取付け部材111の突起201〜204が挿入可能な寸法形状が確保されており、取付け部材111の突起201〜204が挿入可能である。
【0043】
取付け部材111の突起201〜204の端子板102の取付け穴301,302への挿入に際しては、鉤部205,206,209,210の傾斜部が取付け穴301,302の縁に当接することで、各鉤部205,206,209,210が内側に撓み、さらに挿入を続けると、鉤部205,206,209,210が取付け穴301,302から突出して、鉤部205,206,209,210の先端が取付け穴301,302の縁に係止されるようになる。すなわち、突起201〜204が取付け穴301,302に嵌合することになる。
【0044】
その結果、弾性によって突起201〜204が撓んだ状態から復帰し、突起201と202の間及び突起203と204の間に、回路部品112の脚部404,405の係止片406,407が位置するようになり、それによって、取付け作業が完了したことになる。図7は全ての作業が完了した状態を示すものである。
【0045】
なお、突起201〜204が取付け穴301,302に嵌合したにも係らず、突起201と202の間及び突起203と204の間に、回路部品112の脚部404,405の係止片406,407が位置していない状態は、間違った取付けが行われたことであり、回路部品112の取付けから再度やり直すことになる。
【0046】
図5のフローチャートでは、ステップS504で、取付け部材111の突起201〜204が取付け穴301,302に嵌合しているか否かの判定がなされ、嵌合している場合には、ステップS505で、突起201と202の間及び突起203と204の間に、回路部品112の脚部404,405の係止片406,407が位置しているか否かの判定がなされ、位置していれば、処理を終了し、位置していない場合には、ステップS501に戻って最初からやり直すことになる。
【0047】
以上のように構成され、かつ組み立てられた端子板102及び回路部品112は、端子板102の取付け穴301,302の大寸法部分(大開口面積部分)が取付け部材111の突起201〜204によって塞がれるため、回路部品112の脚部404,405が、取付け穴の大寸法部分に移動することができなくなり、回路部品112が取付け穴301,302から外れてしまうことはない。
【0048】
また、取付け部材111の突起201と202の間及び、突起203と204の間にそれぞれ、回路部品112の脚部404,405の係止片406,407が位置するため、突起201〜204は、取付け穴301,302から外れる方向に撓むことはできず、これも取付け穴301,302から外れることはない。
【0049】
図8は、本発明の偏向ヨーク装置の他の実施の形態を側面から見た図である。図8において、図1に示す実施の形態と同一構成部分に同一符号を付す。図8の実施の形態において、図1の実施の形態と異なる点は、端子板の形状が大きくなり、コイルセパレータの径大鍔部に、端子板の端辺を保持する保持部材が設けられた点が大きな相違点である。
【0050】
すなわち、図8に示す偏向ヨーク装置は、偏向ヨーク本体801と端子板802とで構成される。
【0051】
偏向ヨーク本体801は、コイルセパレータ103の径大鍔部107の径小鍔部108に対向する面に、端子板802の端を保持する保持部材803が植設されている。保持部材803は、端子板802の端部の挿入を許容すべく、所定間隔をおいて設けられた一対の突片で形成されている。
【0052】
コイルセパレータ103の径小鍔部108には、装着される図示しない陰極線管の軸方向と直交する方向に、突出する端子板取付け部材111が設けられている。
【0053】
端子板802は、回路部品112が取付けられると共に、偏向ヨーク本体のコイルと電気的に接続するための複数のピン113が設けられている。さらに端子板802には、図8では示されていない取付け穴が設けられている。
【0054】
端子板802の偏向ヨーク本体801への取付けは、端辺をコイルセパレータ103の径大鍔部107に形成された保持部材803に挿入すると共に、取付け穴を取付け部材111に嵌合させ、さらに同じ取付け穴に回路部品112の脚部を挿入することにより完了する。
【0055】
図9は、図8に示す実施の形態において、コイル径小鍔部108に形成された取付け部材111を詳細に示す斜視図である。図9において、取付け部材111は、径小鍔部108に一体的に植設された突起901と、この突起901に対して、鍔部108の長手方向に所定間隔をおいて、径小鍔部108に一体的に植設された突起902でなる。
【0056】
突起901は、先端に径大鍔部107方向に突出する鉤部903が形成されていると共に、端子板802の、回路部品112が取付けられる面とは反対の面を支持するための突部904が、突起902とは逆方向に突出するように形成されている。同様に、突起902は、先端に径大鍔部107方向に突出する鉤部905が形成されていると共に、端子板802の、回路部品112が取付けられる面とは反対の面を支持するための突部906が、突起901とは逆方向に突出するように形成されている。
【0057】
図10は、端子板802の取付け穴の形状を詳細に示す斜視図である。図10において、取付け穴301,302は所定間隔をおいて形成された方形状の穴であり、さらに互いに対向する辺の一方の角に突出部1001,1002が設けられている。この突出部101,1002によって、請求の範囲で述べる開口大面積部と開口小面積部が区別される。
【0058】
図11は、回路部品112の脚部の形状を詳細に説明するための斜視図である。図11において、回路部品112は、コイルが巻回されるボビン401の両端部に鍔部402,403が形成され、それぞれの鍔部402,403と一体に脚部404,405が形成されている。
【0059】
脚部404,405は、幅方向の一方の端辺に、図4に示す切欠き408と同様な形状の切欠き1101,1102が設けられ、他方の端辺は、中間部から切込みが入れられて、ボビン401の軸方向外方に突出する係止片1103,1104が設けられている。係止片1103,1104は自身弾性を有する。
【0060】
以上図9〜11で説明した、コイルセパレータ103の径小鍔部108の取付け部材111、端子板802の取付け穴301,302及び回路部品112の脚部404.405のそれぞれの寸法形状は、互いに関連した値に設定される必要があり、例えば次のように設定される。
【0061】
端子板802の取付け穴301,302の長辺の寸法Jは、回路部品112の脚部404,405の幅寸法J’より若干大きく設定され、かつ取付け部材111の突起901,902径大鍔部107方向の幅寸法Kと、回路部品112の係止片1103,1104の幅方向の寸法Lとを加えたものと略等しくなるように設定されている。
【0062】
さらに、端子板802の取付け穴301,302の突出部1001,1002の寸法を除いた短辺の寸法Mは、回路部品112の脚部404,405の厚み寸法M’より大きく、かつ取付け部材111の突起901,902の径小鍔部108長手方向の寸法M’’と略同一に設定されている。
【0063】
さらに、端子板802の取付け穴301,302の突出部1001,1002の寸法を除いた長辺の寸法Nは、回路部品112の脚部404,405の切欠き1101,1102を除いた幅寸法N’と略同一に設定されている。
【0064】
さらに、端子板802の取付け穴301,302の突出部1001,1002の寸法Pは、回路部品112の脚部404,405の厚み寸法M’と略同一に設定されている。
【0065】
さらに、端子板802の取付け穴301,302間の寸法Qは、回路部品112の脚部404,405間の寸法Q’と略同一に設定されている。
【0066】
さらに、端子板802の取付け穴301,302の突出部1001,1002の先端間の寸法Rは、取付け部材111の突起901,902間の寸法R’と略等しく設定されている。
【0067】
さらに、端子板802の、取付け穴301,302から、コイルセパレータ103の保持部材803で保持される縁までの寸法Sは、取付け部材111の突起901,902とコイルセパレータ103の径大鍔部107までの寸法に略等しく設定されている。
【0068】
さらに、回路部品112の脚部404,405の切欠き1101,1102の高さ寸法Tは、端子板802の厚さ寸法T’と略等しく設定されている。
【0069】
さらに、回路部品112の脚部404,405の係止片1103,1104の幅方向の寸法Lは、端子板802の取付け穴301,302の長辺の寸法Jから取付け部材111の突起901,902径大鍔部107方向の幅寸法Kを差し引いた寸法に略等しく設定されている。
【0070】
以上のように構成された各要素を組み立てる手順について図12,13を参照して説明する。
【0071】
まず、回路部品112の脚部404、405を互いの間隔を広げるようにして、端子板802の取付け穴301,302に挿入する。
【0072】
回路部品112の脚部404,405は、その切欠き1101,1102によって形成される幅小部(寸法N’部)が、取付け穴301,302の突出部1001,1002によって形成される溝部(寸法N部)に嵌り込むことで、回路部品112の端子板802への取付けが完了するものであり、脚部404,405が取付け穴301,302の突出部1001,1002で形成される溝部に嵌り込むまで、脚部404,405の挿入位置を調整する。回路部品112の端子板802への取付けが完了した状態を図12に示す。
【0073】
次に、図12に示す状態の端子板102の取付け穴301,302にコイルセパレータ103の取付け部材111の突起901,902を挿入させる。
【0074】
なお、図12に示す状態においては、図9〜11に示す寸法状態に設定されることにより、端子板102の取付け穴301,302は、取付け部材111の突起901,902が挿入可能な寸法形状に確保されており、取付け部材111の突起901,902が挿入可能である。
【0075】
取付け部材111の突起901,902の端子板102の取付け穴301,302への挿入に際しては、鉤部903,905の傾斜部が取付け穴301,302の縁に当接することで、各鉤部903,905が内側に撓み、さらに挿入を続けると、鉤部903,905が取付け穴301,302から突出して、鉤部903,905の先端が取付け穴301,302の縁に係止されるようになる。すなわち、突起901,902が取付け穴301,302に嵌合することになる。
【0076】
その結果、弾性によって突起901,902が撓んだ状態から復帰し、突起901,902が、回路部品112の脚部404,405の係止片11003,1104と、取付け穴301,302の縁との間に位置するようになり、それによって、取付け作業が完了したことになる。図13は全ての作業が完了した状態を示すものである。
【0077】
なお、突起901,902が取付け穴301,302に嵌合したにも係らず、脚部404,405の係止片1103,1104と、取付け穴301,302の縁との間に突起901,902が位置していない状態は、間違った取付けが行われたことであり、回路部品112の取付けから再度やり直すことになる。
【0078】
以上のように構成され、かつ組み立てられた端子板802及び回路部品112は、端子板802の取付け穴301,302の大寸法部分(開口大面積部分)が取付け部材111の突起201〜204によって塞がれるため、回路部品112の脚部404,405が、取付け穴の大寸法部分に移動することができなくなり、回路部品112が取付け穴301,302から外れてしまうことはない。
【0079】
また、取付け部材111の突起901、902は、取付け穴301,302の縁との間に回路部品112の脚部404,405の係止片1103,1104が位置するため、突起901,902は、取付け穴301,302から外れる方向に撓むことはできず、これも取付け穴301,302から外れることはない。
【0080】
以上のように本発明によれば、端子板の取付け穴に開口面積の小さな部位を形成し、この取付け穴に挿入した回路部品の脚部を開口面積の小さな部位に移動させることで取付け穴に嵌合させ、さらに取付け穴の残部分に取付け部材の突起を撓ませながら挿入してその鉤部を取付け穴の縁に掛けると共に、突起を取付け穴の縁と回路部品脚部の係止片間に位置させることで、回路部品脚部の取付け穴内の移動を阻止し、かつ回路部品脚部の係止片によって突起が撓むのを抑制するように構成したことで、回路部品と取付け部材が端子板から簡単に外れることを防止することができるものである。
【0081】
なお、以上説明した実施の形態では、回路部品の脚部に切欠を設け、取付け部材に突起を設けるように構成しているが、必ずしもそれに限定されるものではなく、例えば、回路部品の脚部に突起を設け、取付け部材側に切欠きを形成するようにしてもよいものである。
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る偏向ヨーク装置の一実施の形態を示す側面図。
【図2】図1に示す装置の要部を示す斜視図。
【図3】図1に示す装置の他の要部を示す斜視図。
【図4】図1に示す装置のさらに他の要部を説明するための斜視図。
【図5】図1に示す装置の組み立て手順を説明するためのフローチャート。
【図6】図1に示す装置の組み立ての過程を説明するための斜視図。
【図7】図1に示す装置の組み立て完了状態を説明するための斜視図。
【図8】本発明に係る偏向ヨーク装置の他の実施の形態を示す側面図。
【図9】図8に示す装置の要部を示す斜視図。
【図10】図8に示す装置の他の要部を示す斜視図。
【図11】図8に示す装置のさらに他の要部を示す斜視図。
【図12】図8に示す装置の組み立ての過程を説明するための斜視図。
【図13】図8に示す装置の組み立て完了状態を説明するための斜視図。
【符号の説明】
【0083】
100…偏向ヨーク装置
101,801…偏向ヨーク本体
102,802…端子板
103…コイルセパレータ
104…垂直偏向コイル
105…コア
106…水平偏向コイル
107…径大鍔部
108…径小鍔部
111…取付け部材
112…回路部品
113…ピン
201,202,203,204,901,902…突起
205,206,209,210,903,905…鉤部
207,208,211,212,904,906…突部
301,302…取付け穴
401…ボビン
402,403…鍔部
404,405…脚部
406,407…係止片
408,409,410,411…切欠き
803…保持部材
1001,1002…突出部
1101,1102…切欠き
1103,1104…係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口大面積部分と、この開口大面積部分に連続して形成される開口小面積部分とでなる取付け穴が形成された端子板と、
前記開口大面積部分に挿通可能な形状の先端部を有し、さらにその先端部の側壁に切欠きが形成されると共に、側壁面と交わる方向に弾性を有した係止片が形成され、前記先端部が前記取付け穴の開口大面積部分に挿通した後、前記端子板の面と平行な方向に変移させて、前記切欠きに前記取付け穴の縁を嵌め込むことで、前記取付け穴の開口小面積部に嵌合される第1の部材と、
弾性を備えた素材にて先端に鉤部を有するように成形され、当該鉤部が前記第1の部材が嵌合された前記取付け穴に前記弾性に抗して撓むことで挿入され、前記弾性によって前記撓みが復帰して前記鉤部が前記取付け穴の縁に掛かることで前記取付け穴に嵌合される第2の部材であって、前記取付け穴への嵌合によって、前記第1の部材の前記取付け穴の開口小面積部分からの移動を阻止し、かつ前記第1の部材の係止片によって、前記鉤部が前記取付け穴の縁から外れるに足る撓みを受けないように前記取付け穴に嵌合された第2の部材と、
を具備したことを特徴とする偏向ヨーク装置。
【請求項2】
前記第1の部材が、前記端子板に取付けられる回路部品の脚であり、前記第2の部材が、偏向ヨークのコイルセパレータに形成された取付け部材であることを特徴とする請求項1に記載の偏向ヨーク装置。
【請求項3】
開口大面積部分と、この開口大面積部分に連続して形成される開口小面積部分とでなる取付け穴が形成された端子板に、当該端子板の前記開口大面積部分に挿通可能な形状の先端部を有し、さらにその先端部の側壁に切欠きが形成されると共に、側壁面と交わる方向に弾性を有した係止片が形成された第1の部材を、前記取付け穴の開口大面積部分に挿通した後、前記端子板の面と平行な方向に変移させて、前記切欠きに前記取付け穴の縁を嵌め込むことで、第1の部材を前記取付け穴の開口小面積部に嵌合するステップと、
弾性を備えた素材にて先端に鉤部を有するように成形された第2の部材を、その鉤部を前記第1の部材が嵌合された前記取付け穴に前記弾性に抗して撓ませて挿入し、挿入後、弾性によって前記撓みを復帰させて前記鉤部を前記取付け穴の縁に掛けることで前記取付け穴に嵌合させ、それによって、前記第1の部材の前記取付け穴の開口小面積部分からの移動を阻止し、かつ前記第1の部材の係止片によって、前記鉤部が前記取付け穴の縁から外れるに足る撓みを受けないようするステップと、
を具備したことを特徴とする偏向ヨークの組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−19021(P2006−19021A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192403(P2004−192403)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】