説明

停弾装置

【課題】 耐久性に優れ、且つ跳弾や鉛の蒸散現象が問題とならない停弾装置を提供する。
【解決手段】 標的17の後方に設置された停弾装置11は、弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する粘弾性体13と、粘弾性体13の背面から所定幅の空隙部14を介して粘弾性体13に対向するように立設された鋼板15を備えたものである。粘弾性体13は、加硫ゴムや未加硫状態のゴム又はゴムチップを接着剤などで固化させ、シート状に立設可能としたものである。粘弾性体13の厚さは、標的17を通過した弾丸18が貫通時に回転運動が生じない厚さに設定されている。これによって、弾丸18は粘弾性体13に対して大きな損傷を与えることなく鋼板15によって跳返されて空隙部14内に残り、効率的に回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は停弾装置に関し、特に警察官や自衛官の拳銃や小銃による射撃訓練が行われる射撃場にて弾丸の回収装置として適用される停弾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射撃場では、標的背面のバックストップには、弾丸を捕促するために砂山構造とされているものが多い。又、土のう袋なども見受けられる。更に、近年ではゴム袋の中にゴムチップを固化せずに封入した構造や鋼板製傾斜バックストップなどが見られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の弾丸の回収方法にあっては、砂山構造の場合は設置スペースが大きくなってしまい、弾丸が内部まで回り込んで停弾するためこれを掘り起こして回収する必要がある。又、ゴム袋の場合は、弾丸を回収することは可能であるが、ゴムチップは相互に関連した一つの物体ではない。そのため、弾丸を停弾させるにはゴムチップの間隙での摩擦力を利用して弾丸の運動エネルギーを吸収する必要があり、厚い構造体が必要である。更に、ゴムチップを被覆する袋体が、弾丸により貫通されて損傷し、損傷穴からゴムチップが飛び出す可能性がある。これは土のう袋についても同様のことが言え、長期の耐久性が期待できないことになる。一方、鋼板製傾斜バックストップでは、弾丸片が跳弾となって射撃手側に跳返ることや鉛の蒸散現象が懸念される。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、耐久性に優れ且つ跳弾や鉛の蒸散現象が問題とならない停弾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、停弾装置であって、弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する粘弾性体と、粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して粘弾性体に対向するように立設された鋼板とを備えたものである。
このように構成すると、粘弾性体を貫通した弾丸は鋼板に衝突する。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、所定厚さは粘弾性体を貫通する弾丸が回転運動を生じない厚さに設定されるものである。
【0006】
このように構成すると、弾丸は回転することなく粘弾性体を通過する。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、鋼板は弾丸が直接着弾した際に損傷を受けない特殊鋼板であり、空隙部は外部から隔離されるものである。
【0008】
このように構成すると、粘弾性体を貫通した弾丸は特殊鋼板で跳返り空隙部に残る。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、所定厚さは特殊鋼板から跳返った弾丸が粘弾性体を背面から貫通しない厚さに設定されるものである。
【0010】
このように構成すると、特殊鋼板から跳返った弾丸は空隙部に確実に残るものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、停弾装置であって、鋼板より構成され、その一面が開放された箱体と、一面を塞ぐように箱体に取付られ、弾丸が貫通し得る所定厚さのシート状の第1粘弾性体と、箱体の内部の面であって、一面に対向する他方面に取付られたシート状の第2粘弾性体とを備えたものである。
【0012】
このように構成すると、第1粘弾性体を貫通した弾丸は第2粘弾性体に向かう。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、一面に立設する箱体を構成する壁体は、一面から他方面に向かって先細りとなる形状を有するものである。
【0014】
このように構成すると、他方面の面積は一面の面積に対して小さくなる。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、壁体の傾斜は、弾丸の進行方向に対して15度以下である。
【0016】
このように構成すると、壁体は普通鋼板でも通過した弾丸によって破損する虞がない。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項5から請求項7の何れかに記載の発明の構成において、箱体は密閉構造とするとともに、その内部を開放自在とする扉が取付られたものである。
【0018】
このように構成すると、箱体内に着弾した際の鉛の外部への蒸散が防止される。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項5から請求項8の何れかに記載の発明の構成において、第1粘弾性体の外方面には、標的として用いることができる標的シートが布設されるものである。
【0020】
このように構成すると、別途標的を準備する必要がない。
【0021】
請求項10記載の発明は、停弾装置であって、弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する第1粘弾性体と、第1粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して第1粘弾性体に対向するように立設された鋼板と、鋼板の面であって第1粘弾性体側の面の上に形成され、貫通した弾丸を捕促できる厚さの第2粘弾性体とを備えたものである。
【0022】
このように構成すると、第1粘弾性体を貫通した弾丸は第2粘弾性体に捕促される。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明の構成において、所定厚さは第1粘弾性体を貫通する弾丸が回転運動を生じない厚さに設定されるものである。
【0024】
このように構成すると、弾丸は回転することなく第1粘弾性体を通過する。
【0025】
請求項12記載の発明は、停弾装置であって、弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する粘弾性体と、粘弾性体の背面に取付られ、弾性体がチップ状にして充填されて貫通した弾丸を捕促し得る充填材と、充填材の背面に取付られた背面材とを備えたものである。
【0026】
このように構成すると、粘弾性体を貫通した弾丸は充填材によって捕促される。
【0027】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の構成において、チップ状にされた弾性体の大きさは、弾丸の直径より小さいものである。
【0028】
このように構成すると、貫通した弾丸は個々の弾性体に食い込むことがない。
【0029】
請求項14記載の発明は、停弾装置であって、ほぼ上下方向に伸び、且つ側壁面に弾丸が貫通可能な部分を少なくとも有する筒状体と、筒状体内に充填され、筒状体を貫通した弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、筒状体は、少なくとも、捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有するものである。
【0030】
このように構成すると、側壁面のうちの貫通可能な部分から弾丸が筒状体内に入る。また、粘弾性を有する捕捉材を一定の形状に維持する。
【0031】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の構成において、筒状体は、平面視で矩形形状を有し、射手側に面する前壁部を含む第1鋼板と、前壁部に対向するように立設された後壁部を含む第2鋼板とを含み、少なくとも第1鋼板は、弾丸が貫通できる強度に設定されるものである。
【0032】
このように構成すると、弾丸が損傷を受けることなく前壁部を貫通し、筒状体内部に入る。
【0033】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の構成において、第1鋼板は、少なくとも前壁部の外面及び内面の一方面を覆うように配置される、粘弾性を有した被覆材を備えたものである。
【0034】
このように構成すると、弾丸が貫通した後、被覆材が収縮し、貫通痕が小さくなる。
【0035】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の構成において、被覆材は前壁部の外面を覆い、内部を通過する弾丸が回転運動を起こさない厚さに設定されるものである。
【0036】
このように構成すると、弾丸が被覆材内で回転運動を起こすことなく第1鋼板の前壁部に到達する。
【0037】
請求項18記載の発明は、請求項16又は請求項17記載の構成において、筒状体は、前壁部の外面を含む平面と後壁部の前面を含む平面との間に立設された支柱材を更に備え、被覆材は、支柱材に直接的に取付けられるものである。
【0038】
このように構成すると、被覆材が支柱材のみに対して一体に取付けられる。
【0039】
請求項19記載の発明は、請求項15から請求項18のいずれかに記載の構成において、筒状体は、少なくとも前壁部を含む部分が後壁部を含む部分から分離自在となるものである。
【0040】
このように構成すると、弾丸の貫通する前壁部が、この前壁部を含む部分と共に後壁部を含む部分に対して着脱自在となる。
【0041】
請求項20記載の発明は、請求項15から請求項19のいずれかに記載の構成において、筒状体は、ほぼ平行に対向する2枚の第1側壁部とこれらに連結する前壁部とからなる、平面視でコの字状の正面部と、ほぼ平行に対向する2枚の第2側壁部とこれらに連結する後壁部とからなる、平面視でコの字状の背面部とを備え、第1側壁部の各々と第2側壁部の各々とが互いに水平方向に所定幅だけ重なるようにして連結されるものである。
【0042】
このように構成すると、正面部と背面部とが各々の側壁部である第1側壁部と第2側壁部とにより連結される。
【0043】
請求項21記載の発明は、請求項20記載の発明の構成において、正面部と背面部とは、水平方向に相対的に移動可能に構成され、所定幅を変更自在に調整できるものである。
【0044】
このように構成すると、正面部の第1側壁部と背面部の第2側壁部との重なり合う所定幅が自在に変化する。
【0045】
請求項22記載の発明は、請求項15から請求項21のいずれかに記載の発明の構成において、筒状体が2個隣接して並設され、筒状体同士の境界部分の背面を弾丸が貫通しない第3鋼板で覆うものである。
【0046】
このように構成すると、並設された停弾装置の境界部分が、背面側から第3鋼板により覆われる。
【0047】
請求項23記載の発明は、請求項14から請求項22のいずれかに記載の発明の構成において、筒状体には、運搬用冶具が取付けられたものである。
【0048】
このように構成すると、停弾装置を運搬するための運搬用冶具を別途用意する必要がない。
【0049】
請求項24記載の発明は、停弾装置であって、側壁面のうちの弾丸が貫通可能な部分と底面部とを射手側に向け、射手側と反対側の斜め上方に延びる筒状体と、筒状体に充填され、筒状体の内部へ水平な方向から貫通した弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、側壁面は、少なくとも、捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有し、底面部は、充填された捕捉材からの圧力に対して、捕捉材を筒状体内に保持し得る強度を有するものである。
【0050】
このように構成すると、水平方向から飛んで来た弾丸の筒状体への入射角が、直角よりも小さい角度となり、弾丸は、筒状体内部において、筒状部分の幅よりも長い距離の移動が可能となる。また、粘弾性を有する捕捉材が一定の形状に保持される。
【0051】
請求項25記載の発明は、停弾装置であって、側壁面のうちの弾丸が貫通可能な部分と底面部とを射手側に向け、少なくとも、底面部を地中に埋設した状態で、射手側と反対側に登り勾配を有する傾斜面に当接して傾斜配置される筒状体と、筒状体に充填され、筒状体の内部へ水平な方向から貫通した弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、側壁面は、少なくとも、捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有するものである。
【0052】
このように構成すると、水平方向から飛んで来た弾丸の筒状体への入射角が、直角よりも小さい角度となり、弾丸は、筒状体内部において、筒状部分の幅よりも長い距離の移動が可能となる。また、粘弾性を有する捕捉材が一定の形状に保持される。更に、底面部が露出しない。
【0053】
請求項26記載の発明は、停弾装置であって、射手側と反対側の斜め上方に所定の傾斜角で延びるように配置され、弾丸が水平な方向から貫通し得る所定厚さのシート状の粘弾性体と、粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して粘弾性体に対向するように傾斜配置された鋼板と、粘弾性体の上端と鋼板の上端とで形成される空間を塞ぐように上下方向に設置された反射板とを備えたものである。
【0054】
このように構成すると、粘弾性体を水平方向に貫通した弾丸が、鋼板及び反射板に対して直角よりも小さい角度で着弾する。また、弾丸は外方に飛び出ず、反射板に跳ね返されて下方へ集積される。
【0055】
請求項27記載の発明は、請求項26記載の発明の構成において、所定の傾斜角は15度以上、且つ30度以下となるものである。
【0056】
このように構成すると、弾丸は、15度以上、30度以下の角度で粘弾性体を貫通する。
【0057】
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、粘弾性体を貫通した弾丸は鋼板に衝突するため、弾丸の回収が容易となる。又、鋼板から跳返った弾丸は粘弾性体によってそのエネルギーが吸収される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、弾丸は回転することなく粘弾性体を通過するため、粘弾性体の破損を抑制でき、停弾装置の使用寿命が延びるものである。
【0059】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、粘弾性体を貫通した弾丸は特殊鋼板で跳返り空隙部に残るため、鋼板の損傷がなくなり装置の耐久性を向上させるとともに使用した弾丸の回収が容易となる。
【0060】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、特殊鋼板から跳返った弾丸は空隙部に確実に残るため、装置の安全性を向上させるとともに使用した弾丸の回収が更に容易となる。
【0061】
請求項5記載の発明は、第1粘弾性体を貫通した弾丸は第2粘弾性体に向かうため、第2粘弾性体の取付範囲が限定されて効率的な装置となる。
【0062】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、他方面の面積は一面の面積に対して小さくなるため、第2粘弾性体の大きさを小さくできるため、更に効率的な装置となる。
【0063】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、壁体は普通鋼板でも通過した弾丸によって破損する虞がないため、壁体に特殊鋼板等を用いる必要がなくなりコスト的に有利な装置となる。
【0064】
請求項8記載の発明は、請求項5から請求項7の何れかに記載の発明の効果に加えて、箱体内に着弾した際の鉛の外部への蒸散が防止されるため、環境面及び健康面で好ましい装置となる。又、弾丸は箱体内に残るため扉を開けることによってこれを容易に回収することができる。
【0065】
請求項9記載の発明は、請求項5から請求項8の何れかに記載の発明の効果に加えて、別途標的を準備する必要がないので、標的を兼ねた停弾装置となり、自在に設置場所を移動できるため使い勝手が良い。又、標的に向けた弾丸は大部分が箱体内で回収されるため効率的な装置となる。
【0066】
請求項10記載の発明は、第1粘弾性体を貫通した弾丸は第2粘弾性体に捕促されるため、弾丸の損傷を抑制するとともに弾丸が散乱することがないためその回収が容易となる。
【0067】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明の効果に加えて、弾丸は回転することなく粘弾性体を通過するため、粘弾性体の破損を抑制でき、停弾装置の使用寿命が延びるものである。
【0068】
請求項12記載の発明は、粘弾性体を貫通した弾丸は充填材によって捕促されるため弾丸が粉砕しない。そのため装置を密閉構造とする必要はない。
【0069】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の効果に加えて、貫通した弾丸は個々の弾性体に食い込むことがないため、充填材を回収すると弾丸の除去が容易となり使い勝手が良い。
【0070】
請求項14記載の発明は、側壁面のうち弾丸が貫通可能な部分から弾丸が筒状体内に入るので、筒状体内で捕捉材により弾丸が捕捉される。また、筒状体が捕捉材を一定の形状に維持する剛性を有しているので、高さのある停弾装置を構成することができる。
【0071】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明の効果に加えて、弾丸が損傷を受けることなく前壁部から筒状体内部に入り、捕捉されるので、弾丸を繰り返し使用することができる。
【0072】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明の効果に加えて、弾丸が貫通した後、被覆材が収縮することにより、前壁部の貫通孔が小さく塞がれるので、充填された捕捉材が漏れ出すことを防止することができる。
【0073】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の発明の効果に加えて、弾丸が被覆材内部を通過中に回転運動を生じず、真っ直ぐに第1鋼板の前壁部へ到達するので、被覆材及び前壁部にできる貫通孔を最小に止めることができ、充填された捕捉材が漏れ出すことを最小限に抑えることが可能となる。
【0074】
請求項18記載の発明は、請求項16又は請求項17記載の発明の効果に加えて、被覆材が支柱材のみと一体に取り付けられるので、筒状体が変形しても被覆材だけ容易に取り外すことができ、被覆材以外の部分を繰り返し利用することが可能となる。
【0075】
請求項19記載の発明は、請求項15から請求項18のいずれかに記載の発明の効果に加えて、弾丸の貫通する前壁部が、この前壁部を含む部分と共に後壁部を含む部分から着脱自在になるので、弾丸の貫通により損傷が著しい前壁部を含む部分のみを交換することができ、停弾装置の耐久性が向上する。
【0076】
請求項20記載の発明は、請求項15から請求項19のいずれかに記載の発明の効果に加えて、正面部と背面部とが各々の側壁部において連結されるので、連結する正面部と背面部との組合わせを前後方向に長さの異なるものに換えることにより、筒状体の前後方向の長さを変化させることができる。その結果、使用する弾丸の種類、速さ、大きさ等に対して最適な捕捉材の量を筒状体の長さにより調節することが可能となる。
【0077】
請求項21記載の発明は、請求項20記載の発明の効果に加えて、正面部と背面部との側壁部が重なり合う所定幅が自在に変化するので、正面部及び背面部の1種類の組合わせのみで、筒状体の前後方向の長さを自在に変化させることが可能となるので効率的な停弾装置となる。
【0078】
請求項22記載の発明は、請求項15から請求項21のいずれかに記載の発明の効果に加えて、並設された停弾装置の境界部分が、背面側から第3鋼板により覆われるので、捕捉材の存在しない境界を通過した弾丸も捕捉することが可能となる。
【0079】
請求項23記載の発明は、請求項14から請求項22のいずれかに記載の発明の効果に加えて、移動及び設置の際の運搬が容易になる。
【0080】
請求項24記載の発明は、弾丸は、筒状体内部において、筒状部分の幅よりも長い距離の移動が可能となり、弾丸の運動エネルギーを吸収する捕捉材の効果が得られる距離が長くなるので、筒状体の筒状部分の幅を短く設定することが可能となる。
【0081】
請求項25記載の発明は、弾丸は、筒状部分の幅よりも長い距離の移動が可能となり、弾丸の運動エネルギーを吸収する捕捉材の効果が得られる距離が長くなるので、筒状体の筒状部分の幅を短く設定することが可能となる。また、底面部は露出しないので、底面部の強度が小さい場合であっても、筒状体内に捕捉材を保持することが可能となると共に、底面部に被弾対策を取る必要がなくなる。
【0082】
請求項26記載の発明は、粘弾性体を貫通した弾丸が、鋼板及び反射板に対して直角よりも小さい角度で着弾するので、鋼板及び反射板の受ける損傷は小さくなる。また、反射板により跳ね返された弾丸は下方へ集積されるので、弾丸の回収が容易となる。
【0083】
請求項27記載の発明は、請求項26記載の発明の効果に加えて、弾丸は、15度以上、30度以下の角度で粘弾性体を貫通し、鋼板へほぼ15度から30度の角度で着弾するので、鋼板及び反射板の損傷を効率的に小さく抑えることが可能となる。
【0084】
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
図1はこの発明の第1の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した図であり、図2は図1で示したII−IIラインの断面図である。
これらの図を参照して、射撃目標となる標的17の後方に粘弾性体13が立設され、その後方に空隙部14を介して鋼板15が立設されている。
【0086】
粘弾性体13は、加硫ゴムや未加硫状態のゴム又はゴムチップを接着剤などで固化させたシート状に立設可能なものや、プラスチックなど自立性を有し弾丸の着弾時にひび割れなどが生じないものが望ましい。又、着弾痕がピンホールとなるようなものを選定する必要がある。
【0087】
次に、粘弾性体13の厚さの設定に関しては、この実施の形態にあっては、弾丸18の貫通時に回転運動が生じない厚さに設定されている。これは、過去に実施した室内実験において、粘弾性体内を進行する弾丸はある厚さから回転運動を生じ始め、粘弾性体の内部を破損しながらエネルギーを減衰させてその内部で停弾することが確認されているからである。又、貫通したとしても、粘弾性体は弾丸の回転によって内部に大きな損傷を生じ、且つ背面にも大きな損傷が生じる。そのため、同じ箇所に次の弾丸が衝突するとその捕促効果や弾丸の運動エネルギーの減衰効果などはほとんど期待できない状態となることを確認したためである。
【0088】
具体的にはこの厚さは、硬度65のゴムでは5〜10cmであり、ゴムチップを固化させブロック体としたものでは5〜10cmであり、ゴムゲル(架橋反応をしていないゴム材料)では10〜15cmの実験結果を得ている。このように厚さを設定すると、粘弾性体13は射撃手側も背面側もピンホール程度の損傷に留まり、長期の耐久性が期待できる。
【0089】
更に、背面に設けた特殊鋼板よりなる鋼板15は弾丸18が着弾しても損傷しないような厚さに設定されている。又、仮に衝突した弾丸18が破損して跳弾したとしても、前面に設置されている粘弾性体13で捕促され、確実に空隙部14内で弾丸が回収できるようになる。
【0090】
図2に示されているようにパネル状の粘弾性体13a〜粘弾性体13cは、その接続部がI型鋼よりなる支持部材20a,支持部材20bを介して鋼板15に取付られ、所定幅の空隙部14が形成されている。この空隙部14を設けるための嵩上げ材としての支持部材20としては、I型鋼以外にH型鋼などを用いることも可能であるが、木材や粘弾性体自身又は、粘弾性体に強度をもたせるために、繊維材などを混入した粘弾性体で嵩上げ材を形成しても良い。又、鋼材や木材、粘弾性体等よりなる嵩上げ材に対する粘弾性体13a〜粘弾性体13bの取付は、接着剤による接着方法のみならず、ネジなどを用いた機械的固定方式や嵌合方式を用いても良い。
【0091】
尚、空隙部14は、粘弾性体13を貫通した弾丸18を回収するように人が作業できるような幅を設けても良い。又、空隙部14の下部などに弾丸回収口などを設けることができる場合は、空隙部14の幅は極端に大きくする必要はなく、射撃場の構造断面スペースに合わせて設計すれば良い。
【0092】
鋼板15は最背面に設ければ良く、射撃場の壁に直接貼付けても良いしスペースがあれば特殊フレームなどを用いて設置するように構成しても良い。尚、鋼板15として厚さ8mm以上のスウェーデン鋼等の特殊鋼板を用いることを推奨する。しかし、施工コストや機能性の面から特殊鋼板と同等の効果が得られるものであれば、普通鋼板で厚さを厚くしたもので対応するか普通鋼板をその厚さまで重ね合わせて対応することも可能である。
【0093】
又、図1及び図2で示した断面構造は、バックストップのみでなく、射撃場の側面や天井、床面等にも同様に適応することが可能である。尚、その際は空隙部14は特に設ける必要はない。
【0094】
図3はこの発明の第2の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【0095】
図を参照して、図示しない標的の背後に設置される停弾装置11は鋼板より構成され、その一面が開放された箱体22と、開放された一面を塞ぐように箱体22に取付られ、弾丸18が貫通し得る所定厚さのシート状の第1粘弾性体29と、箱体22の内部の面であって、開放された一面に対向する他方面に取付られたシート状の第2粘弾性体31とから構成されるものである。
【0096】
全面に配置した第1粘弾性体29は、先の第1の実施の形態による粘弾性体13と同様の材料及び厚さで構成されている。図中では第1粘弾性体29を傾斜させて設置しているがこれを鉛直状態に設置しても特に問題はない。箱体22の一面に立設する壁体となる上面壁体25及び下面壁体26は他方面に向かって先細りするように傾斜させているが、これらを傾斜させずに水平状態に設置しても良い。過去の室内実験でθが15度以下の傾斜であれば普通鋼板を使用することができるのでコスト的に有利となる。
【0097】
しかし、この傾斜角度を維持すると、箱体22として非常に大きなスペースが必要となることも懸念される。そのため、箱体22を小さくするために上面壁体25,下面壁体26の傾斜角度θを15度より大きくする場合には特殊鋼板を用いる必要がある。又、箱体22の面であって直接弾丸が衝突する箇所には、特殊鋼板を用いるか、或いはこの実施の形態のように背面壁体24の内面側に第1粘弾性体29と同じ第2粘弾性体31を取付るようにすれば良い。尚、距離をかせげるなどして、弾丸18のエネルギーを減衰できるのであれば、特に第2粘弾性体31を取付ける必要はない。
【0098】
又、箱体22の下面壁体26には、内部で回収された弾丸を取出せることができるような開放自在な扉28が取付られている。尚、扉28はそれによって跳弾しない箇所に設ける必要がある。
【0099】
この実施の形態にあっては、扉28も含めて箱体22内部が密閉構造となっているため貫通した弾丸18の破損による鉛の蒸散現象が外部に広がる虞はない。又、箱体22内の弾丸や破片は扉28を開けて容易に回収できるため使い勝手が良い。
【0100】
図4はこの発明の第3の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【0101】
図を参照して、この実施の形態による停弾装置の構造は基本的には図3で示した実施の形態によるものと同一である。この実施の形態にあっては、第1粘弾性体29の前面に標的として用いることができる標的シート33が布設されている点が異なっている。この標的シート33を標的と同じ大きさとして使用すると、ほとんどの弾丸18は標的シート33に集中することが想定される。そのため、弾丸18のほとんどは第1粘弾性体29を通過して箱体22内で回収することができるため効率的な装置となる。そのため、停弾装置11以外の箇所には跳弾防止機能のみを施せば、大掛かりな回収装置を全面に配置することもなくなり、コスト的に有利となる。
【0102】
尚、図3及び図4の実施の形態による停弾装置は単体ではなく、これをフレーム構造等によって、組立てるように構成しても良い。そして、図3の装置をを複数個バックストップとして設けることによってバックストップ全面に適応することも可能である。
【0103】
図5はこの発明の第4の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。図を参照して、標的17側の前面に配置した第1粘弾性体35や背面の特殊鋼板よりなる鋼板15は第1の実施の形態によるものと同様であるが、この実施の形態にあっては、空隙部14の鋼板15側に貫通した弾丸18の損傷を抑制させるために、更に第2粘弾性体36が配置されたものである。
【0104】
最前面に配置した第1粘弾性体35は弾丸18の回転運動を生じさせない厚さに設定されているため、弾丸18の有する運動エネルギーを第1粘弾性体35によって完全に減衰させることは困難である。そのため、貫通後の弾丸は鋼板15に衝突した後に破損する可能性がある。そこで、この破損を防止するために鋼板15に第2粘弾性体36を設置している。これによって、第1粘弾性体35を貫通した弾丸18は、更にこの第2粘弾性体36を貫通して大きくその運動エネルギーが減衰し、鋼板15に衝突して破損することなく捕促弾丸38として捕促される。
【0105】
尚、この第2粘弾性体36は鋼板15に貼付けても良いが、鋼板15の前面にカーテン状に接触させるように設置しても良い。この場合、弾丸18は鋼板15とこの前面に設けた第2粘弾性体36との間で捕促されているため、この第2粘弾性体36自体を除去することで捕促弾丸38を効率的に回収することが可能となる。尚、第2粘弾性体36は標的17側に設置される第1粘弾性体35と同じ材質としても良いし、他の材質としても良い。
【0106】
図6はこの発明の第5の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【0107】
図を参照して、標的17の後方に設置される停弾装置11は、弾丸18が貫通し得る所定厚さに形成されてシート状に立設する粘弾性体43と、粘弾性体43の背面に取付られ、弾性体がチップ状にして充填され貫通された弾丸18を捕促し得る充填材44と、充填材44の背面に取付られた背面材45とから構成されている。尚、停弾装置11は地面40から斜め上方に立ち上がる法面41に沿って設置されている。
【0108】
この実施の形態にあっては、粘弾性体43としてゴムチップを接着させたブロック体や加硫ゴムが用いられ、充填材44として弾丸18の直径より小さなゴムチップが図示しない袋体に充填されたものを使用している。又、背面材45としては、ゴムシートが用いられている。尚、これまでと同様に最背面に特殊鋼板を用いても良い。又、特に屋外の場合は雨水の侵入を防止させるため、粘弾性体43の表面や背面材45に遮水材としてシート材を用いても良い。
【0109】
このように構成されている停弾装置11に弾丸18が衝突した場合、弾丸18は粘弾性体43を通過し充填材44内で捕促される。そのため、充填材44を取出してそこから捕促された弾丸だけを除去することが可能となる。又、充填材44に充填されたゴムチップの大きさは弾丸18の直径より小さく設定されているため、弾丸がゴムチップの個々に食い込むことがなくなる。そのため、この充填材44を再度利用することができるため、コスト的に有利な装置となる。
【0110】
尚、上記の各実施の形態では、標的側の粘弾性体は貫通する弾丸が回転運動を生じない厚さとしているが、回転運動が生じる厚さであっても良い。
【0111】
又、上記の各実施の形態では、鋼板は特殊鋼板又は普通鋼板のいずれかを使用するように構成しているが、設置箇所に応じてこれらを組み合わせて使用しても良い。
【0112】
更に、上記の第1及び第4の実施の形態では、空隙部を周囲から隔離するように構成しているが、周囲に対して開放状態であっても良い。図6では、傾斜をもって設置されているが、スペースを小さくした場合は、粘弾性体43の剛性を考慮して、鉛直に設置しても良い。
【0113】
更に、上記の第1の実施の形態では、粘弾性体の厚さを鋼板から跳返った弾丸が貫通しない厚さに設定されているが、貫通する程度の厚さであっても良い。
【0114】
更に、上記の第2の実施の形態では、扉を設けているがこれに代えて第1粘弾性体を取り外せるように構成しても良い。
【0115】
更に、上記の第3の実施の形態では、標的シートの大きさを第1粘弾性体の大きさより小さく構成しているが、第1粘弾性体とほぼ同じ大きさで構成しても良い。
【0116】
更に、上記の第4の実施の形態では、空隙部の大きさをある程度確保しているが、第1粘弾性体と第2粘弾性体とをより接近するように構成しても良い。
【0117】
更に、上記の第5の実施の形態では、停弾装置は法面に沿って斜めに構成しているが、垂直に構成しても同様の効果を奏する。
【0118】
更に、上記の第5の実施の形態では、充填材として用いられる弾性体の大きさを弾丸の直径より小さく設定しているが、弾丸の直径以上であっても良い。
【0119】
図7はこの発明の第6の実施の形態による停弾装置の構成を示した斜視図であり、図8は図7で示したVIII−VIIIラインの断面図であり、図9は図8のIX−IXラインの断面図であり、また、図10は被覆材が厚い場合の図9に相当する断面図である。
【0120】
これらの図を参照して、停弾装置11は、平面視でコの字状に形成された2つの第1鋼板50a、50bと、同様に平面視でコの字状に形成され、且つこれら2つの並設された第1鋼板50a、50bを囲うように配置される第2鋼板51とによりほぼ上下方向に伸びる筒状体49aの構成を有する。ここで、第1鋼板50及び第2鋼板51からなる筒状体49aの側壁面のうち、少なくとも第1鋼板50は、弾丸60が再利用できなくなるような損傷を受けることなく貫通可能な強度に設定され、また、第2鋼板51は、背面側に弾丸60が貫通しない強度に設定されている。具体的には、第1鋼板としては、ブリキ等の普通鋼板が用いられ、また、第2鋼板としては、第1の実施の形態にも示した厚さ8mm以上のスウェーデン鋼等が用いられる。
【0121】
これら3つの鋼板は、前壁部61a、61bの外面を含む平面と後壁部63の前面を含む平面との間に立設される、粘弾性を有する3枚の支柱材54a、54b及び54cを、互いの鋼板の間に介して接続されている。具体的には図8に示されるように、第2鋼板51の第2側壁部64aと第1鋼板50aの第1側壁部62aとが支柱材54aを介してボルト56aおよびナット57aにより接続され、第1鋼板50aの第1側壁部62bと第1鋼板50bの第1側壁部62cとが支柱材54bを介してボルト56bおよび57bにより接続され、また、第1鋼板50bの第1側壁部62dと第2鋼板51の第2側壁部64bとが支柱材54cを介してボルト56cおよびナット57cにより接続されている。このように、第1側壁部62a、62dと第2側壁部64a、64bとがそれぞれ水平方向に所定幅だけ重なるように連結されている。
【0122】
そして、第1鋼板50aの前壁部61aと、第1鋼板50bの前壁部61bとを共に覆うように射手側に面して粘弾性を有する被覆材53a、53b、53c及び53dが上下方向に並設されている。これら被覆材53a〜53dは、跳弾を防止すると共に、被弾により第1鋼板に形成される弾丸貫通痕からの内部充填材(以下に説明する捕捉材など)の漏洩を防止するために設置されるものである。ここで、これら4枚の被覆材53a〜53dのそれぞれは、3枚の支柱材54a、54b、54cの射手側端部に直接取付けられている。また、被覆材53bの取付け位置の断面を示している図8から分かるように、被覆材53bは、木ビス55a、55b、55cにより3枚の支柱材54a、54b、54cへ取付けられている。これにより、着弾等により筒状体49aが変形しても、前面の被覆材53bが接合されているのは支柱材54のみであるため、この被覆材53bを容易に付け替えることが可能である。また、他の被覆材53a、53c、53dについても同様である。尚、これら支柱材54には、粘弾性を有する被覆材53と同じ材質のもの以外に木材等を用いても着脱は容易になる。そして、この支柱材54の本数は、充填される捕捉材52の圧力に応じて必要本数設置すれば良い。尚、被覆材を鋼板に直接貼り付けても良い。また、被覆材はゴムシート等を複数層に重ね合わせたものであっても良い。
【0123】
このような形状の筒状体49aの開口した上部から捕捉材52が充填されることにより、第1鋼板50a又は50bを貫通して内部に侵入した弾丸60の勢いが、捕捉材52の粘弾性から生じる抵抗により吸収され、筒状体49a内部に弾丸60を捕捉できる構成となる。ただし、停弾装置11の筒状体49aを構成する第1鋼板50a、50b及び第2鋼板51は、充填された捕捉材52の圧力により膨らむことの少ない十分な剛性を有している。したがって、高さのある停弾装置を構成することが可能である。
【0124】
尚、第1鋼板50及び被覆材53からなる正面部67と第2鋼板51による背面部68とを支柱材54を介して接続するための、ボルト56a、56b、56c及びナット57a、57b、57cの取付位置は、着弾した弾丸60の勢いが十分に弱まる緩衝距離73だけ停弾装置11の前面から背面側寄りに位置している。したがって、仮にボルト56a、56b、56c又はナット57a、57b、57c等に弾丸60が衝突したとしても、弾丸の運動エネルギーが十分に減衰されているため、接続構造の機能を損失する虞は少ない。
【0125】
また、本実施の形態における停弾装置11には、フォークリフトによる運搬を容易にするために、フォークリフトの爪部を挿入できる筒状の運搬用冶具59a、59bが底板58の下端に備えられている。これにより、射撃場外で組み立てた場合などにも停弾装置の場内への移動及び設置等の運搬が容易になる。
【0126】
次に、この被覆材53bの厚さが弾丸60へ及ぼす作用を説明したのが図9及び図10である。
【0127】
図9に示すように、被覆材53bがあまり厚く設定されていない場合は、弾丸60は回転運動を生じることなく、進行方向に対するその軸方向の角度を維持して、被覆材53bと第1鋼板50aの前壁部61bとを貫通する。しかし、図10に示すように、被覆材53eのように厚さがある程度(ゴムチップの場合50mm程度)以上になると、弾丸60は被覆材53e内を通過中に、この被覆材53eを形成する粘弾性体の抵抗を受けて回転運動を生じ、軸方向の角度を進行方向に対して変化させながら前壁部61cを貫通する。したがって、本実施の形態において回転運動を生じない厚さの被覆材53bを設置した場合の前壁部61aの貫通孔70aの開口幅71aは、回転運動を生じてしまう厚さに設定された被覆材53eを設置した場合の前壁部61cの貫通孔70bの開口幅71bよりも小さくなる。また、被覆材53bの内部では回転運動を生じないため、貫通後に収縮した被覆材53bの貫通痕もピンホール程度となり、最小限の損傷に抑えることができるので、充填された捕捉材52の、被覆材53b及び前壁部61aを通しての漏れ出しを効果的に防止することが可能となる。
【0128】
また、本実施の形態に示した構成により、被覆材及び第1鋼板からなる正面部は、ボルト及びナットにより背面部と接続されているので、複数の弾丸の貫通により損傷が大きくなった前壁部を含む正面部を、損傷の少ない後壁部を含む背面部から自在に分離して取り替えることが可能である。
【0129】
更に、取り替える正面部に前後方向の長さの異なるものを選択すれば、筒状体内部に充填する捕捉材の量を、前後方向に変化させることもできるため、弾丸の種類、速さ、大きさ等により変化する弾丸の威力に適応させることが可能である。
【0130】
更に、前壁部は、大きな損傷を受けることなく弾丸が貫通できる強度に設定されているので、損傷の小さい弾丸を回収して再利用することが可能となる。
【0131】
尚、本実施の形態における捕捉材には、ゴムチップや繊維チップ、プラスチックチップや不粘性の砂土や礫とし、弾丸より小さい粒径のものが用いられることが好ましい。このうち、特に砂土は、既存の射撃場施設で用いられている無石土等でも構わないため、現地での不要物などの有効活用につながる。
【0132】
図11はこの発明の第7の実施の形態による停弾装置の構成を示した斜視図であり、図12は図11のXII−XIIラインの断面図であり、また、図13は図11の停弾装置において正面部を前方に移動した状態を示した斜視図である。
【0133】
これらの図を参照して、本実施の形態における停弾装置11は、平面視コの字状に形成された鋼板からなる正面部67aと、同じく平面視コの字状に形成された鋼板からなる背面部68aとにより筒状体49bが構成されている。ここで、正面部67aを構成する鋼板は、第6の実施の形態の停弾装置における第1鋼板と同等の材質であり、また、背面部68aを構成する鋼板は、第6の実施の形態の停弾装置における第2鋼板と同等の材質である。すなわち、正面部67aは、弾丸60が再利用できなくなるような損傷を受けることなく貫通可能な強度に設定され、また、背面部68aは、背面側に弾丸60が貫通しない強度に設定されている。そして、筒状体49bは、第6の実施の形態における停弾装置と同様の捕捉材(図示せず)を充填することにより膨らんだりして変形することが少ない十分な剛性を有している。
【0134】
本実施の形態による停弾装置が第6の実施の形態における停弾装置と異なるところは、正面部と背面部との接続位置を変化させることにより、両者の位置を水平方向に相対的に移動させることができる点である。
【0135】
すなわち、背面部68aの側面(第2側壁部)の内側にガイドレール76a、76bが備えられており、正面部67aの側面(第1側壁部)の外側には、ガイドレール76a、76bに沿ってスライドさせることができるスライド板77a、77b、77cが備えられている。また、背面部68aの上端には、調整ボルト74及びこれを固定する調整ナット78が、背面部68aの側面を外側から貫通するように備えられている。そして、貫通した調整ボルト74の突出した先端部は、図12に詳しく示されているように、スライド板77aに設けられた5つの調整孔75a〜75eのいずれか一つと嵌合される。すなわち、正面部67aの側面と背面部68aの側面との重なり幅(所定幅)を調整孔1つ分から5つ分まで、変更自在に調整できる構成となっている。図11及び図12に示した例では、この調整ボルト74の先端部は、前方から2番目の調整孔75bと嵌合されており、また、図13に示した例では、前方から4番目の調整孔75dと嵌合されている。
【0136】
尚、本実施の形態における停弾装置は、筒状体49bの大きさが前後方向に変化するので、底板58aは、それに合わせて大きく設定されている。
【0137】
このように、本実施の形態によれば、弾丸の種類、速さ、大きさ等に応じて変化する弾丸の威力に対して筒状体の前後方向の長さを調整することにより捕捉材の充填量を増減させ、停弾装置の機能を適応させることが可能となる。
【0138】
図14はこの発明の第8の実施の形態による停弾装置の前面側の構成を示した斜視図であり、図15は図14の停弾装置の背面側の構成を示した斜視図である。
【0139】
これらの図を参照して、本実施の形態における停弾装置は、第6の実施の形態において示した停弾装置を2個隣り合わせに並設したものである。但し、一方の停弾装置11aは、背面の側端部の一方に、特殊鋼板(第3鋼板)79が背面ナット80及び背面ボルト81により固定されている点で、第6の実施の形態における停弾装置とは異なっている。
【0140】
そして、この特殊鋼板79は、弾丸60が直接衝突しても貫通しない強度を有している。ここで、第1鋼板、第2鋼板及び特殊鋼板等の表面鋼板は、上記の図14及び図15に示した例のように、必ず強度的に連続した外殻構造を形成する必要がある。
【0141】
このように、本実施の形態によれば、仮に、第6の実施の形態において示したのと同様の捕捉材(図示せず)が充填されていない境界部分91に弾丸60が侵入しても、背面を通過させることなく止めることが可能である。
【0142】
また、並設のために追加したい停弾装置側にのみ特殊鋼板を取り付けてあるので、元の停弾装置側に、特殊鋼板の取付のための特別な加工を施す必要はなく、用途に応じて容易に特殊鋼板を備えた停弾装置を追加設置することが可能である。
【0143】
図16はこの発明の第9の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0144】
図を参照して、第1鋼板50cと第2鋼板51cとの間に捕捉材52cが充填されており、第1鋼板50cの射手側に被覆材53fが備えられている本体部分の概略構成は、第6の実施の形態において示した停弾装置と同様である。しかし、第2鋼板51cの背面上端部に、単独で弾丸60を止め得る周縁材92を備えている点において第6の実施の形態と異なる。この周縁材92は、周縁特殊鋼板82が停弾装置の背面の上方周縁に沿って(紙面を貫く方向に)備えられると共に、この周縁特殊鋼板82の前方に所定距離を空けて平行に、前面が周縁被覆材84で覆われた周縁鋼板83が周縁材固定ボルト85及び周縁材固定ナット86を介して立設された構成となっている。また、本実施の形態では、底板58b及び運搬用冶具59eの射手側も、被弾による損傷を低減するために被覆材53fで覆われているところが特徴である。
【0145】
このような構成により、上方に逸れた弾丸も周縁に備えた周縁被覆材84、周縁鋼板83及び周縁特殊鋼板82からなる周縁材92により捕捉することができると共に、運搬用冶具59eに対しても被覆材53fによる保護が施されているので、運搬用冶具59eの耐久性が、延いては停弾装置全体の耐久性が向上する。
【0146】
図17はこの発明の第10の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0147】
図を参照して、被覆材53g、第1鋼板50d、第2鋼板51d及び捕捉材52dからなる第6の実施の形態と同様の構成の停弾装置の背面がアンカー87a、87bにより壁面89に固定されている。但し、固定されるため、底板58cの下端に運搬用冶具が備えられていない点で第6の実施の形態とは異なり、底板58cが直接地面88と接している。
【0148】
このような構成により、地震等に対する安定性を向上させることが可能となる。
【0149】
図18はこの発明の第11の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0150】
図を参照して、被覆材53h、第1鋼板50e、第2鋼板51e、捕捉材52e及び底板58dからなる構成は、第10の実施の形態による停弾装置と同様であるが、停弾装置の背面と壁面89との間に所定の空間を設けて、底板58dが地面88にアンカー87c、87dにより固定されている点において異なっている。
【0151】
このような構成により、地震等に対する安定性を向上させることが可能となると共に、壁面及び停弾装置の背面の点検補修等が必要な場合にも容易に実施可能である。
【0152】
図19はこの発明の第12の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0153】
図を参照して、被覆材53i、第1鋼板50f、第2鋼板51f、捕捉材52f及び底板58eからなる停弾装置本体の構成と、背面と壁面89との間に所定の空間を設ける設置状態においては、第11の実施の形態と同様であるが、嵩上げ材90により停弾装置の背面と壁面89との間の空間を設け、この嵩上げ材90と共に、第2鋼板51fの背面をアンカー87e、87fで壁面89に固定している点において異なっている。
【0154】
このような構成により、壁面及び停弾装置の背面の点検補修等が必要な場合にも容易に実施可能であると共に、地震等に対する安定性は、底板のみで地面に固定する場合に比べて更に向上する。
【0155】
尚、上記の第6から第12の実施の形態では、平面視で矩形形状の筒状体を有する停弾装置を例として示したが、捕捉材の充填により変形することなく、且つ再利用不可能な損傷を与えることなく弾丸を捕捉できる構成であれば、これ以外の形状であっても良く、また、この筒状体は鋼板を分離自在に組合わせる必要はなく一体の構成であっても構わない。
【0156】
また、上記の第6から第12の実施の形態では、少なくとも停弾装置の正面部が、弾丸に再利用できなくなるような損傷を与えることのない強度に設定されている例を示したが、正面部の全体がこのような強度設定になっている必要はなく、ほとんど弾丸を受けることのない第1側壁部は弾丸を貫通させない強度設定であってもよい。また、停弾装置の前後方向の寸法が、弾丸の運動エネルギーを十分に吸収することができる長さに設定されており、停弾装置全体として背面側に弾丸が貫通することがなければ、背面部には、単独で弾丸を受けたときに貫通する強度の鋼板を用いても構わない。
【0157】
更に、上記の第6から第12の実施の形態では、筒状体を構成する正面部と背面部とは、共に平面視でコの字状に形成されている例を示したが、弾丸の貫通により損傷を受けた前壁部を容易に取り替え可能な構成であれば、この前壁部を含む正面部の形状は平面視でコの字状に形成されている必要はなく、また、背面部の形状も、弾丸が着弾しても弾丸の損傷を低減できるのであれば、充填される捕捉材の重量による圧力を軽減できるV字型、半円形や、単に平板であっても良い。そして、正面部と背面部との接続も、ボルト及びナットを用いた構成でなくても良い。
【0158】
更に、上記の第6から第12の実施の形態では、ほぼ上下方向に伸びる筒状体からなる停弾装置を例として示したが、射撃場の形態に応じて、階段状に設置するなどしても良い。
【0159】
更に、上記の第6から第12の実施の形態では、筒状体の上部が開放された停弾装置を例として示したが、これに限らず密閉型の筒状体であっても良い。
【0160】
更に、上記の第6、及び第8から第12の実施の形態では、被覆材を筒状体の外側に配置する例を示したが、これに限らず、筒状体の内側に配置しても良く、また、両側に配置しても良く、更に、被覆材は用いない構成であっても構わない。
【0161】
更に、上記の第6、第7及び第8の実施の形態では、停弾装置の底板の下端面にフォークリフトの爪を挿入して安定に運搬することができる運搬用冶具を備えた例を示したが、これに限らず、例えば、天井ホイスト等のフックが安定して固定される運搬用冶具を停弾装置の上端部等に備える構成でも構わない。
【0162】
更に、上記の第6の実施の形態では、前壁部の被覆材は、着脱容易にするために、支柱材のみに取り付けた例を示したが、着脱容易であれば、第1鋼板の脇にビスやボルト等を受けるフランジ部を溶接等により設置し、支柱材に代わって被覆材を取付ける構成でも構わない。
【0163】
更に、上記の第7の実施の形態では、底板に固定された背面部に対して、正面部が位置を変え得る構成を示したが、逆に、正面部が底板に固定され、背面部が正面部に対して位置を変え得る構成でもよい。
【0164】
更に、上記の第7の実施の形態では、ガイドレールとスライド板とを用いて正面部と背面部とを相対移動させ、筒状体の前後方向の長さを5段階に変化させ得る構成を示したが、前後方向に筒状体の長さが変化するように正面部と背面部とが相対的に移動可能であれば、他の構成を用いても良く、更に、調節は5段階に限らないことは言うまでもない。
【0165】
更に、上記の第7の実施の形態では、弾丸の威力等の変化に対応させるために、正面部の位置を背面部に対して前後方向に変化させることにより、充填する捕捉材の量を調節したが、前後方向の長さが異なる別の正面部に置き換えることにより、充填する捕捉材の量を調節する構成であっても構わない。
【0166】
更に、上記の第7の実施の形態では、正面部の表面を被覆材で覆わない第1鋼板のみの構成を例として示したが、第6の実施の形態のように、少なくとも第1鋼板の一方面を被覆材で覆う構成であっても良い。
【0167】
更に、上記の第8の実施の形態では、境界部に侵入した弾丸を止めるための特殊鋼板を、並設される停弾装置のうち、いずれか一方に取付ける構成を示したが、少なくとも境界を背面から覆う構成であれば良く、隣り合う停弾装置の両方をボルト及びナットにより固定しても構わない。
【0168】
更に、上記の第8の実施の形態では、特殊鋼板としては、単体で貫通しない厚さに設定されたものを用いることが望ましいが、コスト的に高価な場合は、同程度の性能を発揮できる普通鋼板を設けても良い。
【0169】
更に、上記の第9の実施の形態では、停弾装置の背面上端部に捕捉材を充填しない周縁材を配置したが、停弾装置本体から逸れた弾丸を止め得る構成であれば、被覆材、普通鋼板及び特殊鋼板等の組合わせは自由であり、また、捕捉材を充填しても良く、更に、この周縁材の取り付けは、ボルト及びナットに限らず溶接等による構成でも構わない。
【0170】
図20はこの発明の第13の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0171】
図を参照して、この停弾装置には、弾丸60を受ける射手側に、粘弾性を有する被覆材53jで外面を覆われた第1鋼板50gが備えられ、この第1鋼板50gと対向するように第2鋼板51gを有する筒状体49cが備えられる。また、第1鋼板50gと第2鋼板51gとの間に、粘弾性を有し、弾丸60を捕捉する捕捉材52gが備えられる。ここで、筒状体49cの側壁面である第1鋼板50g及び第2鋼板51gのうち、第1鋼板50gは弾丸60が貫通可能であり、充填される捕捉材52gの圧力により変形することが少ない剛性を備えた強度に設定されている。また、弾丸60の貫通により第1鋼板50gに形成された貫通孔は、外面を覆っている被覆材53jによりピンホール状態に塞がれる。このような筒状体49cが有する特徴は、第6の実施の形態における停弾装置と同様である。しかし、第6の実施の形態における停弾装置の筒状体部分が、ほぼ上下方向に延びる構造であったのに対して、この実施の形態による停弾装置の筒状体部分は傾斜配置されている点で、第6の実施の形態とは異なっている。
【0172】
すなわち、筒状体49cは、地面94aに対して角度θ1で射手側と反対側の斜め上方に傾斜した傾斜面95aに沿うように、背面の第2鋼板51gが当接状態で傾斜配置されている。ここで、被覆材53j、第1鋼板50g、第2鋼板51g及び捕捉材52gからなる筒状部分の下端には、充填されている捕捉材52gの圧力に対し、捕捉材52gを筒状体49c内に保持し得る強度を有する前面鋼板(底面部)96aが接続されている。そして、この前面鋼板96aの射手側は、被弾した場合の跳弾を防止するための跳弾防止材97aで覆われている。
【0173】
ここで、第1鋼板50gの外面を覆う被覆材53jの厚さは、水平に打ち込まれた弾丸60が貫通することができ、且つ、内部を水平方向に通過中に回転運動を生じない所定の厚さに設定されている。したがって、弾丸60は軸方向を水平に保った状態で被覆材53j及び第1鋼板50gを貫通し、筒状体49c内に入る。これにより、弾丸60は、第1鋼板50gと第2鋼板51gとの最短間隔よりも長い距離Aの範囲内で捕捉材52g中を移動する。すなわち、第1鋼板50gと第2鋼板51gとの間隔が小さい場合においても、停弾装置が傾斜配置されていることにより、水平な方向から貫通した弾丸60の運動エネルギーを吸収するのに十分な距離Aを設けることが可能となる。よって、第1鋼板50gと第2鋼板51gとの最短間隔を小さく設定できる分だけ、筒状体49cの内部に充填する捕捉材52gの量も少なくて済む。また、筒状体49cを傾斜させることにより、第1鋼板50gに加わる捕捉材52gからの圧力が軽減されるので、垂直設置の場合に比べて、第1鋼板50gに強度の小さい鋼板を用いても、膨らみを防止することが可能となる。ここで、このような距離Aは、ゴムチップでは50cm程度に設定され、砂や土礫を用いる場合でも背面の第2鋼板が弾丸による損傷を生じない厚さに設定される。
【0174】
また、このように傾斜した筒状体を有する停弾装置は、既存の射撃施設のバックストップの傾斜をそのまま利用して配置することができる。
【0175】
尚、停弾装置を屋外に設置するときには、雨水対策として、ゴムシートなどの遮水シートで覆っても良い。
【0176】
図21はこの発明の第14の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【0177】
図を参照して、この停弾装置は、被覆材53k、第1鋼板50h、第2鋼板51h及び捕捉材52hからなる筒状体49dが傾斜配置される点において、第13の実施の形態における停弾装置と同様である。したがって、第1鋼板50hと第2鋼板51hとの最短間隔が小さい場合であっても、水平な方向から貫通した弾丸60を捕捉するのに十分な距離Bを捕捉材52h内に確保することが可能となる。
【0178】
しかし、第13の実施の形態の停弾装置とは異なり、筒状体49dの下端側において、第1鋼板50hの射手側の端部が地面94bとほぼ同じ高さとなっている。すなわち、水平面108に対して射手側と反対側に角度θ2で傾斜した傾斜面95bに、筒状体49dの背面の第2鋼板51hが当接状態で配置されると共に、前面鋼板(底面部)96bが上端まで地中に埋設されている。
【0179】
このような構成により、この実施の形態では、第13の実施の形態における構成による効果に加えて、跳弾防止材97が不要となる。
【0180】
また、地中に埋設された前面鋼板96bの射手側には土壁が形成されているので、前面鋼板96bの強度が小さい場合であっても、筒状体49d内に捕捉材52hを安定して保持することが可能となる。
【0181】
尚、停弾装置を屋外に設置するときには、雨水対策として、ゴムシートなどの遮水シートで覆っても良い。
【0182】
図22はこの発明の第15の実施の形態による停弾装置の第1の設置状態の概略構成を示した側方断面図であり、図23はこの発明の第15の実施の形態による停弾装置の第2の設置状態の概略構成を示した側方断面図である。
【0183】
図22を参照して、停弾装置は、弾丸60を受ける射手側にシート状の粘弾性体13dを備え、この粘弾性体13dと、所定幅に設定される空隙部14aを介して、対向するように鋼板15aを備えた筒状体49eを有している。そして、この構成は第1の実施の形態における停弾装置と同様である。しかし、第1の実施の形態における粘弾性体13及び鋼板15が、ほぼ垂直に設置されていたのに対して、第15の実施の形態における停弾装置の粘弾性体13d及び鋼板15aは傾斜配置される点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0184】
すなわち、筒状体49eは、地面94cに対して射手側と反対側の斜め上方に角度(所定の傾斜角)θ3で傾斜した傾斜面95cに沿うように、鋼板15aの背面を当接して配置されている。ここで、筒状体49eの下端において、鋼板15aの端部が、垂直に立てられた前面鋼板96cの下端と接続されている。また、この前面鋼板96cの射手側は、被弾した場合の跳弾を防止するために、跳弾防止材97bで覆われている。
【0185】
そして、筒状体49eの上端においては、粘弾性体13dの上端と鋼板15aの上端とで形成される空隙部14aの上端を塞ぐように、垂直に立てられた反射板99が接続されている。
【0186】
ここで、粘弾性体13dの厚さは、第13の実施の形態における停弾装置と同様に、水平方向から飛んで来た弾丸60が貫通することができ、且つ、内部を水平方向に移動する弾丸60が回転運動を起こさない所定の厚さに設定されている。但し、この実施の形態では、弾丸60の運動エネルギーを吸収するための捕捉材が筒状体49e内に充填されていないので、運動エネルギーを吸収されずに鋼板15a等から跳ね返った弾丸60が、粘弾性体13dの背面側に衝突する場合がある。このため、粘弾性体13dの厚さは、筒状体49eの内部で跳ね返った弾丸60が背面から貫通しない厚さでもあるように設定されている。
【0187】
一方、鋼板15aは、弾丸60が直接着弾した際に損傷を受けない特殊鋼板で形成されている。そして、水平に打ち込まれ、水平状態を保持して背面の鋼板15aに角度θ3で着弾した弾丸60は鋼板15aにより上方に跳ね返される。しかし、筒状体49eの空隙部14aの上端は、反射板99で塞がれており、また、粘弾性体13dも背面から貫通しない厚さに設定されているため、筒状体49eの内部に入った弾丸60は、最終的には下方に落下する。
【0188】
このように、この実施の形態では、背面の鋼板15aに対して直角よりも小さい角度で弾丸60が着弾するので、直角に着弾する場合よりも鋼板15aの受ける損傷は小さくなる。また、反射板99は垂直に立てて配置されているので、弾丸60が反射板99に着弾する角度も、直角より小さい角度となる。したがって、反射板99の受ける損傷も小さく抑えられる。これにより、背面に用いる鋼板15や反射板99には、特殊鋼板以外に、普通鋼板を用いることも可能となる。
【0189】
また、この停弾装置では、前面鋼板96cの上端と粘弾性体13dの射手側の端部との間に隙間が設けられ、下方に落下した弾丸60を回収することができる回収溝100が形成されている。したがって、集まった弾丸60を回収するのも容易である。
【0190】
尚、ここで傾斜して設定される角度θ3は15度以上、且つ30度以下となるのが跳ね返りの効率上望ましい。また、停弾装置を屋外に設置するときには、雨水対策として、ゴムシートなどの遮水シートで覆っても良い。
【0191】
一方、図23に示す停弾装置は、図22で示したような法面等の傾斜面ではなく水平な地面94c上において、図22と同じ停弾装置の鋼板15aの下側に架台101を配置し、同じ角度θ3の傾斜角にて設置されている。このような架台101を用いることにより、適当な斜面がない場合や、屋内においても、任意の角度で筒状体49eを傾斜させて配置し、図22の設置状態の停弾装置と同様の効果を得ることが可能となる。
【0192】
尚、上記の第13の実施の形態では、前面鋼板(底面部)の射手側に跳弾防止材を備えた例を示したが、この跳弾防止材はなくても良い。
【0193】
また、上記の第14の実施の形態では、前面鋼板の上端までが地中に埋設される設定例を示したが、第1鋼板の下端の一部を埋設しても良い。
【0194】
更に、上記の第13及び第14の実施の形態では、筒状体は、斜面に沿って傾斜した部分と地面に沿った水平部分を有するように形成されている例を示したが、この水平部分はなくても良い。
【0195】
更に、上記の第13及び第14の実施の形態では、第1鋼板の外面を被覆材で覆う例を示したが、内面又は両面を覆う構成でも良く、また、被覆材はなくても良い。
【0196】
更に、上記の第13及び第14の実施の形態では、被覆材は、水平に打ち込まれた弾丸が内部で回転を起こさない厚さに設定される例を示したが、回転する厚さに設定されていても良い。
【0197】
更に、上記の第15の実施の形態では、粘弾性体は、鋼板から跳ね返った弾丸が背面から貫通しない厚さに設定される例を示したが、背面から貫通する厚さに設定されていても良い。
【0198】
更に、上記の第15の実施の形態では、空隙部の上端側を垂直に立てた反射板により塞ぐ構成の例を示したが、この反射板の設置は、ほぼ上下方向であれば垂直でなくても良い。
【0199】
更に、上記の第15の実施の形態では、停弾装置の筒状体の射手側の面は、シート状の粘弾性体のみで構成されている例を示したが、粘弾性体の裏面に、弾丸が貫通可能な鋼板を組合わせても構わない。
【0200】
更に、上記の第15の実施の形態では、停弾装置の射手側の端部に前面鋼板及び跳弾防止材を設けて射手側と空隙部とを隔てたが、跳弾防止材はなくても良く、また、跳弾防止材及び前面鋼板が共になくても構わない。
【0201】
更に、上記の第15の実施の形態では、粘弾性体は、水平に打ち込まれた弾丸が内部で回転を起こさない厚さに設定される例を示したが、回転する厚さに設定されていても良い。
【0202】
更に、上記の第13から第14の実施の形態では、第1鋼板と第2鋼板とがほぼ平行に設置される例を示し、また、第15の実施の形態では、粘弾性体と鋼板とがほぼ平行に設置される例を示したが、これらは平行でなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】この発明の第1の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【図4】この発明の第3の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【図5】この発明の第4の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【図6】この発明の第5の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した断面図である。
【図7】この発明の第6の実施の形態による停弾装置の構成を示した斜視図である。
【図8】図7で示したVIII−VIIIラインの断面図である。
【図9】図8のIX−IXラインの断面図である。
【図10】被覆材が厚い場合の図9に相当する前壁部の断面図である。
【図11】この発明の第7の実施の形態による停弾装置の構成を示した斜視図である。
【図12】図11のXII−XIIラインの断面図である。
【図13】図11の停弾装置において正面部を前方に移動した状態を示した斜視図である。
【図14】この発明の第8の実施の形態による停弾装置の前面側の構成を示した斜視図である。
【図15】図14の停弾装置の背面側の構成を示した斜視図である。
【図16】この発明の第9の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図17】この発明の第10の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図18】この発明の第11の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図19】この発明の第12の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図20】この発明の第13の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図21】この発明の第14の実施の形態による停弾装置の概略構成を示した側方断面図である。
【図22】この発明の第15の実施の形態による停弾装置の第1の設置状態の概略構成を示した側方断面図である。
【図23】この発明の第15の実施の形態による停弾装置の第2の設置状態の概略構成を示した側方断面図である。
【符号の説明】
【0204】
11…停弾装置
13,43…粘弾性体
14…空隙部
15…鋼板
18…弾丸
22…箱体
24…背面壁体
25…上面壁体
26…下面壁体
28…扉
29,35…第1粘弾性体
31,36…第2粘弾性体
33…標的シート
44…充填材
45…背面材
49…筒状体
50…第1鋼板
51…第2鋼板
52…捕捉材
53…被覆材
54…支柱材
59…運搬用冶具
60…弾丸
61…前壁部
62…第1側壁部
63…後壁部
64…第2側壁部
67…正面部
68…背面部
79…特殊鋼板
91…境界部分
96…前面鋼板
99…反射板
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停弾装置であって、
弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する粘弾性体と、
前記粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して粘弾性体に対向するように立設された鋼板とを備えた、停弾装置。
【請求項2】
前記所定厚さは、前記粘弾性体を貫通する弾丸が回転運動を生じない厚さに設定される、請求項1記載の停弾装置。
【請求項3】
前記鋼板は前記弾丸が直接着弾した際に損傷を受けない特殊鋼板であり、
前記空隙部は外部から隔離される、請求項1又は請求項2記載の停弾装置。
【請求項4】
前記所定厚さは、前記特殊鋼板から跳返った弾丸が前記粘弾性体を前記背面から貫通しない厚さに設定される、請求項3記載の停弾装置。
【請求項5】
停弾装置であって、
鋼板より構成され、その一面が開放された箱体と、
前記一面を塞ぐように前記箱体に取付られ、弾丸が貫通し得る所定厚さのシート状の第1粘弾性体と、
前記箱体の内部の面であって、前記一面に対向する他方面に取付られたシート状の第2弾性体とを備えた、停弾装置。
【請求項6】
前記一面に立設する前記箱体を構成する壁体は、前記一面から前記他方面に向かって先細りとなる形状を有する、請求項5記載の停弾装置。
【請求項7】
前記壁体の傾斜は、弾丸の進行方向に対して15度以下である、請求項6記載の停弾装置。
【請求項8】
前記箱体は密閉構造とするとともに、その内部を開放自在とする扉が取付られた、請求項5から請求項7の何れかに記載の停弾装置。
【請求項9】
前記第1粘弾性体の外方面には、標的として用いることができる標的シートが布設される、請求項5から請求項8の何れかに記載の停弾装置。
【請求項10】
停弾装置であって、
弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する第1粘弾性体と、
前記第1粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して第1粘弾性体に対向するように立設された鋼板と、
前記鋼板の面であって前記第1粘弾性体側の面の上に形成され、前記貫通した弾丸を補促できる厚さの第2粘弾性体とを備えた、停弾装置。
【請求項11】
前記所定厚さは、前記第1粘弾性体を貫通する弾丸が回転運動を生じない厚さに設定される、請求項10記載の停弾装置。
【請求項12】
停弾装置であって、
弾丸が貫通し得る所定厚さに形成され、シート状に立設する粘弾性体と、
前記粘弾性体の背面に取付られ、弾性体がチップ状にして充填されて前記貫通した弾丸を捕促し得る充填材と、
前記充填材の背面に取付られた背面材とを備えた、停弾装置。
【請求項13】
前記チップ状にされた弾性体の大きさは、前記弾丸の直径より小さい、請求項12記載の停弾装置。
【請求項14】
停弾装置であって、
ほぼ上下方向に伸び、且つ側壁面に弾丸が貫通可能な部分を少なくとも有する筒状体と、
前記筒状体内に充填され、前記筒状体を貫通した前記弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、
前記筒状体は、少なくとも、前記捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有する、停弾装置。
【請求項15】
前記筒状体は、平面視で矩形形状を有し、
射手側に面する前壁部を含む第1鋼板と、
前記前壁部に対向するように立設された後壁部を含む第2鋼板とを含み、
少なくとも前記第1鋼板は、前記弾丸が貫通できる強度に設定される、請求項14記載の停弾装置。
【請求項16】
前記第1鋼板は、
少なくとも前記前壁部の外面及び内面の一方面を覆うように配置される、粘弾性を有した被覆材を備えた、請求項15記載の停弾装置。
【請求項17】
前記被覆材は前記前壁部の外面を覆い、内部を通過する前記弾丸が回転運動を起こさない厚さに設定される、請求項16記載の停弾装置。
【請求項18】
前記筒状体は、前記前壁部の外面を含む平面と前記後壁部の前面を含む平面との間に立設された支柱材を更に備え、
前記被覆材は、前記支柱材に直接的に取付けられる、請求項16又は請求項17記載の停弾装置。
【請求項19】
前記筒状体は、少なくとも前記前壁部を含む部分が前記後壁部を含む部分から分離自在となる、請求項15から請求項18のいずれかに記載の停弾装置。
【請求項20】
前記筒状体は、
ほぼ平行に対向する2枚の第1側壁部とこれらに連結する前記前壁部とからなる、平面視でコの字状の正面部と、
ほぼ平行に対向する2枚の第2側壁部とこれらに連結する前記後壁部とからなる、平面視でコの字状の背面部とを備え、
前記第1側壁部の各々と前記第2側壁部の各々とが互いに水平方向に所定幅だけ重なるようにして連結される、請求項15から請求項19のいずれかに記載の停弾装置。
【請求項21】
前記正面部と前記背面部とは、水平方向に相対的に移動可能に構成され、前記所定幅を変更自在に調整できる、請求項20記載の停弾装置。
【請求項22】
前記筒状体が2個隣接して並設され、前記筒状体同士の境界部分の背面を前記弾丸が貫通しない第3鋼板で覆う、請求項15から請求項21のいずれかに記載の停弾装置。
【請求項23】
前記筒状体には、運搬用冶具が取付けられた、請求項14から請求項22のいずれかに記載の停弾装置。
【請求項24】
停弾装置であって、
側壁面のうちの弾丸が貫通可能な部分と底面部とを射手側に向け、前記射手側と反対側の斜め上方に延びる筒状体と、
前記筒状体に充填され、前記筒状体の内部へ水平な方向から貫通した前記弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、
前記側壁面は、少なくとも、前記捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有し、
前記底面部は、充填された前記捕捉材からの圧力に対して、前記捕捉材を前記筒状体内に保持し得る強度を有する、停弾装置。
【請求項25】
停弾装置であって、
側壁面のうちの弾丸が貫通可能な部分と底面部とを射手側に向け、少なくとも、前記底面部を地中に埋設した状態で、前記射手側と反対側に登り勾配を有する傾斜面に当接して傾斜配置される筒状体と、
前記筒状体に充填され、前記筒状体の内部へ水平な方向から貫通した前記弾丸を捕捉できる粘弾性を有する捕捉材とを備え、
前記側壁面は、少なくとも、前記捕捉材を内部に充填することによって変形することの少ない剛性を有する、停弾装置。
【請求項26】
停弾装置であって、
射手側と反対側の斜め上方に所定の傾斜角で延びるように配置され、弾丸が水平な方向から貫通し得る所定厚さのシート状の粘弾性体と、
前記粘弾性体の背面から所定幅の空隙部を介して前記粘弾性体に対向するように傾斜配置された鋼板と、
前記粘弾性体の上端と前記鋼板の上端とで形成される空間を塞ぐように上下方向に設置された反射板とを備えた、停弾装置。
【請求項27】
前記所定の傾斜角は15度以上、且つ30度以下である、請求項26記載の停弾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−343086(P2006−343086A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37327(P2006−37327)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(504368402)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【Fターム(参考)】