説明

健康具、および健康具の製造方法

【課題】従来品よりも血流促進効果が高い健康具の提供、および高価な素材をより有効に活用して従来品以上に効果を高めることができる健康具の提供。
【解決手段】本発明の健康具は、焼結体によって構成された部分を身体に接触させた状態で使用される健康具であって、前記焼結体が、ゲルマニウムと電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分とを含む原料粉末を、成型、焼結したものであることを特徴とする。炭素成分としては、合成グラファイト、あるいは、グラファイトを含む天然鉱物を用いると好ましい。これらゲルマニウムおよび炭素成分は、転動造粒によって成型、焼成するとよく、特に、ゲルマニウムおよび炭素成分の含有量が、焼結体の中心部より外周部で多い構造となっていると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康具、および健康具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルマニウムは、室温以上で電子を放出し、皮膚と接触した場合には皮膚に微弱電流が流れることにより血流を促進すると言われている。また、遠赤外放射体は、その温熱効果により血流を促進すると言われている。これらの効果を利用した健康具や装身具は、既に数多く商品化されている。
【0003】
例えば、ゲルマニウムを用いた健康具・装身具としては、ゲルマニウム金属そのものを加工して球状や筒状にしたもの(例えば、特許文献1参照)、合成ゴムやシリコンゴムにゲルマニウム粉末を混合して成型したもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
また、遠赤外放射体を用いた健康具・装身具としては、遠赤外放射体であるブラックシリカを用いたものが知られており、例えば、ウレタン樹脂や合成ゴムにブラックシリカ粉末を混合して成型したもの(例えば、特許文献3参照)、あるいはブラックシリカ原石を磨いて球状にしたものなどがある(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8−150217号公報
【特許文献2】登録実用新案第3107789号公報
【特許文献3】特開2006−75561号公報
【特許文献4】登録実用新案第3101809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなゲルマニウムやブラックシリカを利用した健康具には、以下のような問題があった。
まず、ゲルマニウム金属やブラックシリカ原石そのものを、直接球状・筒状・あるいはその他の形状に加工した製品については、原料が高価であるため製品価格が高騰しやすい、という問題があった。また、削ったり磨いたりする加工が容易ではないため、量産性に劣る、という問題もあった。さらに、製品表面はもちろんのこと製品内部までゲルマニウムやブラックシリカでできているにもかかわらず、実質的に皮膚と接触して効果をもたらすのは製品の表面部分だけであり、原料の使用量の割に効果が期待できない、という問題もあった。
【0006】
一方、ゲルマニウム粉末やブラックシリカ粉末を樹脂やゴムなどに混合した製品については、樹脂やゴムなどによるマイナス効果、例えば、製品表面に露出して皮膚と接触する有効面積が少なくなる、といった問題、樹脂やゴムは絶縁体であり、かつ、遠赤外線を吸収することから、ゲルマニウムや遠赤外放射体の効果を低減する、といった問題があった。
【0007】
こうした背景の下、本件発明者は、従来品が抱えている上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ゲルマニウムに遠赤外線放射能の高い成分を混合すると、これらの相乗効果により血流促進効果がより高まることを見出した。また、このようなゲルマニウムと遠赤外線放射能の高い成分とを混合、成型する際には、成型体の外周部において有効成分の存在比を高めることで、高価な素材をより有効に活用できることを見出した。
【0008】
本発明は、上記のような知見に基づいて完成されたものであり、その第1の目的は、従来品よりも血流促進効果が高い健康具を提供することにある。また、第2の目的は、高価な素材をより有効に活用して従来品以上に効果を高めることができる健康具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載の健康具は、焼結体によって構成された部分を身体に接触させた状態で使用される健康具であって、前記焼結体が、ゲルマニウムと電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分とを含む原料粉末を、成型、焼結したものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の健康具は、請求項1に記載の健康具において、前記焼結体は、前記ゲルマニウムおよび前記炭素成分の含有量が、中心部より外周部で多い構造になっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の健康具は、請求項2に記載の健康具において、前記焼結体は、転動造粒によって成型されたものであり、中心部を成型する段階よりも外周部を成型する段階において、前記ゲルマニウムおよび前記炭素成分の含有量が多い原料粉末を使用して成形されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の健康具は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の健康具において、前記焼結体は、前記ゲルマニウムと前記炭素成分との混合比が、重量比で40:60〜5:95とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の健康具は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の健康具において、前記炭素成分は、合成グラファイト、あるいは、グラファイトを含む天然鉱物であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の健康具の製造方法は、焼結体によって構成された部分を身体に接触させた状態で使用される健康具の製造方法であって、ゲルマニウムと電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分とを含む原料粉末を、成型、焼結して前記焼結体を製造することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の健康具の製造方法は、請求項6に記載の健康具の製造方法において、焼結を窒素中700℃〜1000℃で行うことを特徴とする。
以下、本発明の構成、作用、効果について、さらに詳しく説明する。
【0016】
[原理的な説明]
半導体は、あるレベル以上のエネルギーを与えることで、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて導電体となる。例えば、ゲルマニウムのバンドギャップは0.6eVであり、1.4ミクロン(近赤外線)以下の光で励起され、さらに、室温以上の温度で電子を放出すると言われている。
【0017】
このように励起されて伝導帯に移行した電子は、皮膚を経由して人体に流れ、その結果、血流が促進されるなどの効果をもたらす。このような効果自体は、半導体を単独で用いても相応に得られるものであり、例えば、ゲルマニウム単独でも、血流が促進されることが観測され、さらに皮膚温度の上昇、皮膚の酸素濃度の上昇も観測された。
【0018】
一方、炭素は、近赤外線、遠赤外線の良い放射体であり、本発明においては、合成グラファイトやグラファイトを含む天然鉱物(例えば、土状黒鉛、鱗片状黒鉛、黒鉛硅石(ブラックシリカ)など)を、炭素成分として利用することができる。これらの炭素成分(炭素や炭素含有鉱物)を単独で用いた場合にも、同様の血流促進効果が観察されるが、さらに、炭素は、電気の良導体でもある。
【0019】
そのため、本発明の健康具が備える焼結体の如く、ゲルマニウムと炭素成分とが混在する系内において、半導体(例えば、ゲルマニウム等)に電子が生じた場合、半導体と皮膚が直接接触している箇所において半導体から皮膚に電流を流すことができるのはもちろんのこと、半導体と皮膚が直接接触していない箇所においても、半導体から炭素経由で皮膚に電流を流すことができる。
【0020】
したがって、ゲルマニウムの電子放出による血流促進効果は、炭素成分を混在させたことに起因して低下することがなく、それどころか、炭素成分の赤外線放射による血流促進効果が加わるので、ゲルマニウムを単独で用いたもの以上に、血流促進効果が向上する。
【0021】
[材の説明]
本発明において用いられる電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分として機能する材としては、合成グラファイト、カーボンブラック、活性炭、木炭、竹炭など炭素を主成分とする物、石炭、黒鉛硅石のように炭素を含有する天然鉱物などを挙げることができるが、成型性や装身具としての美観などを考慮すると、合成グラファイト、ブラックシリカ(黒鉛硅石)が好ましい。
【0022】
さらに、これらゲルマニウムおよび炭素成分を成型、焼結するには、公知の各種成型助剤、焼結助剤を配合することができる。成型助剤としては、例えば、陶磁器分野で知られている木節粘土、蛙目粘土などを用いることができる。また、焼結助剤としては、上記の粘土の他、フリットなど1000℃以下の温度で焼結し、成型体の強度を上げることのできものを用いることができる。さらに、これらの他、製品としての美観を与えるための助剤として亜鉛黒などを添加してもよく、焼結時の大きな収縮を抑制するための助剤として天然ゼオライトなどを添加するのも有効である。
【0023】
[成分と組成]
ゲルマニウム:炭素成分の混合比(重量比)は、40:60〜5:95が望ましい。ゲルマニウムが40%より多いとコスト的に高くなるという問題があり、また、実験的に確認したところ、炭素成分の配合比が低下するのに伴って炭素成分との相乗効果が弱まるためか、血流促進効果も低下する傾向が見られた。一方、実験的に確認したところ、ゲルマニウムが5%以下でも血流促進効果は低下する傾向が見られた。これらのことから、ゲルマニウムと炭素成分との相乗効果を最大限に引き出すことをも考慮すると、ゲルマニウム:炭素成分の混合比を40:60〜5:95の範囲内に設定するのが好ましいものと考えられる。
【0024】
この他、成型助剤としては、例えば木節粘土などの粘土類を15〜40%程度加えると好ましく、焼結助剤としては、例えばフリットなどを5〜40%程度加えると好ましい。また、亜鉛黒やゼオライトを加えるか否かは任意であるが、これらを加える場合は、いずれも0〜30%程度の範囲内で配合比を任意に調整するとよい。
【0025】
[成型法の説明]
成型法には、押出成型、打錠成型(プレス成型)、転動造粒などがあり、本発明の健康具を製造する際には、いずれの方法で成型を行ってもよいが、特に中心部と外周部とで特定の成分濃度を変える場合には、転動造粒で成型を行うことが望ましい。すなわち、転動造粒で成型を行えば、皮膚に直接接触する外周部を成型する際に、ゲルマニウムや炭素成分の配合量を容易に増大させることができる。
【0026】
この他、打錠成型後、転動造粒にて外周部を付けることも可能である。ただし、この方法では、乾燥や焼結時に剥がれ易い、工程が増えるなどの事情もあるので、これを回避するには、最初から転動造粒による成型を行う方がよい。
【0027】
中心部と外周部とでゲルマニウムや炭素成分の配合量を変える場合、外周部の厚さは0.5mm〜2mm程度にするのが好ましい。この外周部の厚さが0.5mmより薄いと上述した効果が十分ではなく、一方、2mmより厚いと高価なゲルマニウムの使用量が増すので、経済的ではない。
【0028】
[焼結条件の説明]
本発明の健康具が備える焼結体を製造する際には、グラファイトやブラックシリカなど成分として炭素を含むため、酸素の無い条件で焼結を行うことが好ましく、経済性や実現しやすさ等をも考慮すると、窒素雰囲気下で焼成を行うのが好ましい。焼結温度は焼結により強度がでること、ゲルマニウムや炭素成分がフリットや粘土類と固相反応を起こさないことなどを考慮すると、700〜1000℃程度の範囲内で調節するのが好ましい。
【0029】
[発明の効果]
以上説明した通り、本発明の健康具によれば、焼結体中に含まれるゲルマニウムと炭素成分の相互作用により、ゲルマニウムの放出する電子を直接または炭素成分経由で効果的に身体に与えることができ、しかも、炭素成分が放射する近赤外線・遠赤外線を身体に与えることができるので、ゲルマニウムを単独で用いた健康具よりも血流促進効果が高くなる。
【0030】
また、中心部よりも外周部でゲルマニウムや炭素成分の存在比を高めたものについては、これらの成分の使用量を抑制しながら、効率よく皮膚に接触させることができるので、ゲルマニウムや炭素成分の量が比較的少なくても上記効果を発揮でき、かつ、装身具としての美観も申し分のない健康具を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
(1)各種素材の血流促進効果
下記表1に示した各種粉体約1gを左手・手首の動脈部に乗せ、接触温度計(防滴型温度計、カスタム社製CT−280WR)のセンサー部を中指第二関節部に当てて温度を測定し、血流促進効果を測定した。
【0032】
【表1】

上記表1に示すように、ゲルマニウムは、単独でも温度上昇効果があることがわかるが、ゲルマニウムに対して適量のグラファイトまたはブラックシリカを混合した方がより有効なことがわかる。また、グラファイト/ゲルマニウム、または、ブラックシリカ/ゲルマニウムの比率は40:60〜95:5の範囲が良く、ゲルマニウムの配合比を50%以上にまで増大させた場合、ゲルマニウム単独の効果よりむしろ低下した。
【0033】
さらに、シリコンは半導体の一種ではあるが、ゲルマニウムとは異なり、シリコンには温度上昇効果がないことが明らかになった。
なお、温度上昇の顕著な系につき、血流スコープ(商品名:Bscan、株式会社徳、)にて指の血流観察を行ったところ、明らかに血流が増加することを観察した。
(2)ブレスレットを用いた血流促進効果の測定
[ブレスレットの製造法]
まず、木節粘土30%,フリット40%,ゼオライト20%,ブラックシリカ10%の微粉末を混合し、転動造粒法にて約3mmのボールを作った。そして、引き続いて、この原料100部に対してブラックシリカ:ゲルマニウム=90:10の微粉末20部と亜鉛ブラック20部を混合したものを厚さ1〜2mmになるように転動造粒法によりコーティングした。造粒後乾燥した後、900℃で窒素雰囲気中焼結して5.5〜6mmのボールを得た。
【0034】
このボールを研磨後、超音波穴あけ機で約1.2mmの孔を開け、最後に針金や紐で所定の長さになるように連結してブレスレットとした。
ブレスレットを用いた酸素飽和度の測定は、アムコ社製PULSOX−2にて、指先に検出器を装着して行った。ブレスレット装着により、1分で酸素飽和度が97から98に変化、さらに3分で酸素飽和度が99に達し、顕著な酸素飽和度の上昇が見られた。
(3)遠赤外放射率測定結果(参考)
グラファイトやブラックシリカは、遠赤外放射体として知られている。遠赤外線による血流促進はよく知られているが、ゲルマニウムの効果も遠赤外線によるものかどうかを明らかにするために、遠赤外線放射率の測定を日本染色検査協会に依頼して実施した。
【0035】
その結果、図1に示したように、ゲルマニウムからの遠赤外線放射はグラファイトなどに較べてかなり少ないという結果が得られた。
この遠赤外線放射率の測定結果と、先に上記(1)項で示した温度上昇測定結果とを勘案すると、ゲルマニウムによる血流促進効果は遠赤外線によるものとは考えにくく、ゲルマニウムによる血流促進効果は、ゲルマニウムの電子放出作用によるものと推定される。
(4)変形例等
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0036】
例えば、上記実施形態では、ブレスレット型の健康具を構成する例を示したが、本発明の健康具はブレスレット型のものに限定されるものではない。具体的には、ネックレス型のものであってもよいし、その他、マッサージ器型のものなど、身体に接触させて使用できる形態のものであれば、どのような形態のものにでも適用可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、炭素成分として、グラファイトやブラックシリカを用いる例を例示したが、他の炭素成分を採用してもよく、例えば、各種合成グラファイト、土状黒鉛や鱗片状黒鉛などのグラファイトを含む天然鉱物、カーボンブラック、活性炭、木炭、竹炭など炭素を主成分とする物、石炭などを利用してもよい。ただし、成型性や装身具としての美観などを考慮すると、上記実施形態で例示した通り、合成グラファイトやブラックシリカ(黒鉛硅石)を用いるのと好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】遠赤外線放射率の測定結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体によって構成された部分を身体に接触させた状態で使用される健康具であって、
前記焼結体が、ゲルマニウムと電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分とを含む原料粉末を、成型、焼結したものである
ことを特徴とする健康具。
【請求項2】
前記焼結体は、前記ゲルマニウムおよび前記炭素成分の含有量が、中心部より外周部で多い構造になっている
ことを特徴とする請求項1に記載の健康具。
【請求項3】
前記焼結体は、転動造粒によって成型されたものであり、中心部を成型する段階よりも外周部を成型する段階において、前記ゲルマニウムおよび前記炭素成分の含有量が多い原料粉末を使用して成形されたものである
ことを特徴とする請求項2に記載の健康具。
【請求項4】
前記焼結体は、前記ゲルマニウムと前記炭素成分との混合比が、重量比で40:60〜5:95とされている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の健康具。
【請求項5】
前記炭素成分は、合成グラファイト、あるいは、グラファイトを含む天然鉱物である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の健康具。
【請求項6】
焼結体によって構成された部分を身体に接触させた状態で使用される健康具の製造方法であって、
ゲルマニウムと電気伝導性および遠赤外線放射性のある炭素成分とを含む原料粉末を、成型、焼結して前記焼結体を製造する
ことを特徴とする健康具の製造方法。
【請求項7】
焼結を窒素中700℃〜1000℃で行う
ことを特徴とする請求項6に記載の健康具の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−301889(P2008−301889A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149404(P2007−149404)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(500518407)株式会社鈴木工業所 (4)
【Fターム(参考)】