説明

健康状態測定装置

【課題】被験者の排便時における併発ガス中の所定成分濃度の測定において、濃度計測時の異常事態に対応して正確な濃度測定値を決定することができる健康状態測定装置を提供すること。
【解決手段】着座して排便する便器に搭載され、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分濃度を計測する濃度計測手段と、前記濃度計測手段の計測結果に基づいて前記所定成分濃度の測定値を決定する濃度測定値決定手段と、前記便器が具備する各種装置の動作を動作情報として取得する動作情報取得手段と、濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶する濃度計測時間記憶手段と、を備え、前記濃度測定値決定手段は、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段が所定の動作情報を取得したとき、又は、前記所定成分濃度の測定終了したときにおける前記濃度計測時間に応じた処理方法により、前記濃度測定値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の排便時における併発ガスを採取して被験者の健康状態を判別する健康状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排便時に併発される排泄ガス(以下併発ガスと呼ぶ)を検出し、その検出結果に基いて被験者の健康状態を判断する技術があった。例えば、特許文献1には、便器のボウル内に排泄される併発ガス中に含まれる水素ガスを検出する水素ガスセンサを設け、水素ガスセンサからの信号値に基いてユーザの腸内状態を判断して、ユーザに報知する技術が開示されており、また、特許文献2には、便器のボウル内の雰囲気中にある併発ガスに含まれていた所定ガス成分を検出するガスセンサから出力される信号値とユーザの腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す対応データを記憶する記憶部と腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出してユーザに報知する処理部とを具備しておくことにより、ユーザに分かり易く腸内状態を知らせることができるようにした技術が開示されている。
【0003】
これらの技術は、併発ガスの特定成分の濃度や構成比を計測して被験者の健康状態を判断するものであるが、併発ガスの成分状態は被験者の健康状態だけでなくその他の被験者の突発的な種々の要因により変化するものである。従って、一回の測定結果だけで判断出来る部分もあるが、より正確な判断を行うためには継続した測定データの蓄積情報に基づいて行う必要があることのほうが多い。
【0004】
ところが、測定の機会は排泄行為時に限定され、かつ一般にその回数や自由度は少ないため、一回の測定機会は測定データの蓄積面からは貴重なものであり、無駄なくデータの蓄積を行う必要がある。
【0005】
一方、これらの併発ガスの測定は便器を使用した排泄行為を伴うため、測定途中において被験者が便座から離座または便器洗浄などの動作を行なう場合、或は、想定している測定所要時間より短い時間で測定を終了させる場合等の、これらの排泄行為に付随する不測の事態の発生する可能性がある。そして、これらの事態はいづれも便器のボウル内の雰囲気の状態を変化させるものであり、このような併発ガスの測定方法においては測定結果に影響を及ぼす異常事態といえるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005―292049号公報
【特許文献2】特開2007―89857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、正常な測定動作の実行を確保するためには、事前にこれらの異常事態の発生を可及的に防止する、あるいは、これらの異常事態が発生した場合にその事態に応じてその後の測定動作を適切に制御する等の何らかの対策が必要となる。
【0008】
ところが、前記した従来の技術は、何れも併発ガスの特定な成分ガス濃度をいかに有効に測定し、健康状態の正確な判断の資料とするかに関する技術であり、前記の異常事態に対処する方法を示してはいない。
【0009】
この発明は、このような併発ガスの成分濃度計測における不測の異常事態の発生を可及的に防止し、あるいは、異常事態の発生に対応して正確な濃度計測値を決定することができる健康状態測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、着座して排便する便器に搭載され、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分濃度を計測する濃度計測手段と、前記濃度計測手段により出力される濃度計測値を記憶する濃度計測値記憶手段と、この濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値に基づいて、所定の処理方法により前記所定成分濃度の測定値を決定する濃度測定値決定手段と、前記濃度測定値から被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標値を算出する腸内状態指標値算出手段と、を備えた健康状態測定装置において、前記所定成分濃度の計測が開始されたことを検知する濃度計測開始検知手段と、前記所定成分濃度の計測が終了したことを検知する濃度計測終了検知手段と、前記便器が具備する各種装置の動作を動作情報として取得する動作情報取得手段と、前記濃度計測開始検知手段によって検知された濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶する濃度計測時間記憶手段と、をさらに備え、前記濃度測定値決定手段は、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段が所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段が前記所定成分濃度の測定終了を検知したときにおける前記濃度計測時間に応じた所定の処理方法により、前記濃度測定値を決定するものとした。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記処理方法として、1)前記濃度計測時間が予め決められた所定時間未満の場合は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値如何に関わらず、測定不成立として前記濃度計測値を破棄して測定結果無しとする第1の処理と、2)前記濃度計測時間が前記所定時間以上の場合は、測定成立として前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値の最大ピーク値を前記濃度測定値と決定する第2の処理と、が含まれることとした。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記濃度計測時間が前記所定時間以上であって前記最大ピーク値が無い場合は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値の最大値を前記濃度測定値とする第3の処理をさらに含むこととした。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記腸内状態指標値を含む計測結果及び計測に関する諸注意事項を表示する表示手段と、この表示手段の表示制御を行う表示制御手段とを備えると共に、前記動作情報取得手段は被験者の便器への着座を検知する着座検知部を備え、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記表示制御手段は前記計測に関する諸注意事項として、便器洗浄を禁止する案内を前記表示手段に表示することとした。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記表示制御手段は前記計測に関する諸注意事項として、便器からの離座を禁止する案内を表示することとした。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、前記表示制御手段は、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記計測に関する諸注意事項として離座及び便器洗浄を許可する案内を前記表示手段に表示することとした。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記動作情報取得手段は、被験者の便器への着座を検知する着座検知部を備え、この着座検知部の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記便器の洗浄機能を無効とすることとした。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記動作情報取得手段は、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記便器の洗浄機能を有効に復帰させることとした。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記腸内状態指標値を含む計測結果を被験者単位の時系列データとして記憶する時系列データ記憶手段と、前記時系列データに基づいて変動傾向を算出する変動傾向算出手段とを備え、算出された変動傾向を所定の形式で表示することとした。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項4〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記腸内状態指標値算出手段は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値からピークが検出されなかった場合、特定の腸内状態指標値とすると共に、前記表示制御手段は、前記表示手段に前記腸内状態指標値を表示する際に、前記特定の腸内状態指標値に対する注意を喚起する所定のメッセージを付加して表示することとした。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記特定の腸内状態指標値を前記時系列データ記憶手段に記憶するかどうかを被験者に選択させる時系列データ選択部を備えることとした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、異常事態が発生したときの濃度計測時間が予め決められた所定の有効所定時間であるか否かを濃度計測値決定の要素とする簡明な判断方法を採用するものであるため、簡単な装置構成で異常事態に対応した計測処理をすることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、濃度計測時間の長さという単純なパラメータで得られた濃度計測値の有効性を判断するため、無効な濃度計測値の処理を行う必要がなく簡単な構成で異常事態に対応した効率的な計測処理を行うことができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、有効な特定の場合の計測値を有効な測定値として採用することになるため、長期的な測定データの蓄積が必要な健康判断情報における計測データの欠落を防止することができる。
【0024】
請求項4及び5に記載の発明によれば、計測に必要な併発ガスを得るまでは洗浄または離座による既併発ガスの消失を防止するという被験者の協力が必要な計測環境の維持が期待できるため、被験者の意図しない場合の測定の不成立の発生を防止して正確な測定の確実な実施が可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、被験者は、離座及び洗浄動作を安心して行える状態を適切な時期に知ることができるため、被験者は、その後の離座及び洗浄動作を安心して行えることとなり装置の都合で被験者に必要以上の配慮を強いることがない。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、必要な併発ガスによる濃度計測を行うことができるまでは被験者が不用意に洗浄を行うことを防止できるので、濃度計測途中においてそれぞれの計測結果を無駄にすることがなくなり、健康判断情報における計測データの欠落を防止することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、便器の洗浄機能を有効として被験者が洗浄動作を行うことを許しても、既に測定に必要な濃度計測値を取得しているので測定を完了させることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、被験者は計測値と共にその変動傾向も認知し、より正確な自己の健康状態を知ることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、装置自体では測定環境が異常状態か否かを判別できないケースにおいても、被験者自身が計測結果を知ることができるので、被験者はそのような測定環境の状況を把握した上で計測結果を認識することができるため、装置に対する信頼性が向上する。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、発生する異常事態のうち、排便なし、または著しく排便量が少ないケースなど、装置が判断困難な状態でも被験者が異常と判断できる異常事態の場合に、被験者は自身の判断により測定結果を記憶したり排除したりする測定結果の取り扱いを選択できるため、腸内状態の変動傾向を解析する場合の精度が向上し、より正確な変動傾向を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る健康状態測定装置を具備した着座式便器を示す斜視図である。
【図2】同健康状態測定装置を示す構成図である。
【図3】同健康状態測定装置における測定の概念的な処理の流れを示す説明図である。
【図4】同健康状態測定装置における各種処理のフローチャートである。
【図5】同健康状態測定装置が備える操作表示盤における表示内容の一例を示す説明図である。
【図6】ガスセンサで検出した濃度計測値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の一実施形態について、図面に基づき具体的に説明する。図1は本実施形態に係る健康状態測定装置を具備した着座式便器を示す斜視図、図2は同健康状態測定装置を示す構成図である。
【0033】
先ず、本実施形態に係る健康状態測定装置1の概要について説明する。本実施形態に係る健康状態測定装置1は、被験者の排便時における便器ボウル内に放出される併発ガスを便器ボウル内の雰囲気ごと採取して、当該併発ガス中の所定成分濃度を計測することによって被験者の健康状態を判別するものであり、図1に示すように、着座式便器10に搭載されている。
【0034】
本実施形態では、濃度計測の対象となるガス成分、すなわち、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分としては、無臭ガスである二酸化炭素(CO2)ガスとしている。しかし、例えば同じく無臭ガスである水素ガス(H2)であってもよく、いずれでもその計測値によって、被験者の腸内の状態を推測することが可能である。すなわち、併発ガス中の無臭ガス(CO2やH2)と、腸内状態を推し量るパラメータとなる「有用菌の数」、「pH」及び「臭気」とが相関関係にあることが知られている。
【0035】
通常、CO2(H2)が多いほど、ビフィジス菌や乳酸桿菌などが多く、pHとしては酸性であり、かつ臭気が少なくなり、腸内の健康状態が良好とされている。
【0036】
着座式便器10は、図示するように、ボウル部12が形成された便器本体11上に戴置されたケーシング50に、ボウル部12の開口端縁に起伏自在となるように便座13及び便蓋14の基部を起伏自在に連設している。また、ボウル部12内には、局部洗浄ノズル15が進退自在に配設されている。
【0037】
また、かかる着座式便器10の設置された室内の横側壁Wには、着座式便器10の各種操作及び健康状態測定装置1の操作を行うための操作表示盤30が設置されている。図中、28は操作表示盤30に設けられた表示部を、29は同じく操作部を示している。この操作部29には、例えば測定開始ボタンや測定を強制的に終わらせる測定終了ボタンや複数の被験者毎に割り付けられる併発ガス中の所定成分濃度計測の開始及び終了のトリガーとなる個人認識ボタンなどが設けられている。
【0038】
図2に示すように、本健康状態測定装置1は、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分濃度を計測する濃度計測手段Aと、この濃度計測手段Aにより出力される濃度計測値を記憶する濃度計測値記憶手段Bと、この濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値に基づいて、所定の処理方法により任意の一回の測定動作における濃度測定結果である濃度測定値を決定する濃度測定値決定手段Cと、前記濃度測定値から被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標値を算出する腸内状態指標値算出手段Dと、前記所定成分濃度の計測が開始されたことを検知する濃度計測開始検知手段Eと、前記所定成分濃度の計測が終了したことを検知する濃度計測終了検知手段Fと、前記便器が具備する各種装置の動作を動作情報として取得する動作情報取得手段Hと、前記濃度計測開始検知手段Eによって検知された濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶する濃度計測時間記憶手段Gとを備えている。
【0039】
そして、前記濃度測定値決定手段Cは、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段Hが所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段Fが前記所定成分濃度の測定終了を検知したときにおける前記濃度計測時間に応じた処理方法により、前記濃度測定値を決定するようにしている。
【0040】
すなわち、動作情報取得手段Hは、着座式便器10が具備する各種装置の動作のうち、濃度計測手段Aの検体となる便器ボウル内の雰囲気の成分濃度状態を変化させて測定結果に悪影響を及ぼす可能性のある動作、例えば、局部洗浄に伴う温風乾燥動作、被験者が便座13よりの離座する動作、あるいは便器洗浄を行うスイッチ操作等の各種動作を所定の異常動作情報として取得するものである。
【0041】
こうして、本実施形態に係る健康状態測定装置1によれば、併発ガス中の所定成分(CO2)濃度を測定するに際し、前述の様々な各種装置の動作情報や、濃度計測時間が所定時間であるか否かを濃度測定値決定の要素に取り込むようにして、濃度計測の異常事態に対応した計測処理を行うことができる。
【0042】
すなわち、前述したように、本健康状態測定装置1は、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段Hが所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段Fが前記所定成分濃度の測定終了を検知したときに、濃度測定値決定手段Cが濃度計測時間に応じて行う濃度測定値決定の処理方法としては、少なくとも次の2通りの処理を採用している。
【0043】
第1の処理:濃度計測時間が予め決められた所定時間未満の場合は、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値如何に関わらず、測定不成立として前記濃度計測値を破棄して測定結果無しとする。
第2の処理:濃度計測時間が前記所定時間以上の場合は、測定成立として前記濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の最大ピーク値を前記濃度測定値と決定する。
【0044】
また、本実施形態では、さらに、次の第3の処理も行うようにしている。
第3の処理:濃度計測時間が所定時間以上であっても最大ピーク値がないときは最大値を濃度測定値とする。
【0045】
また、図2に示すように、健康状態測定装置1は、前記腸内状態指標値を含む計測結果を被験者単位の時系列データとして記憶する時系列データ記憶手段Jと、前記時系列データに基づいて変動傾向を算出する変動傾向算出手段Kとをさらに備えており、しかも、算出された変動傾向を所定の形式で表示することができるようにしている。
【0046】
本実施形態では、腸内状態指標値や変動傾向を前記操作表示盤30に設けられた表示部28に表示するようにしている。すなわち、本実施形態では、この表示部28が前記腸内状態指標値を含む計測結果及び計測に関する諸注意事項を表示する表示手段として機能するものである。また、本健康状態測定装置1は、かかる表示部28の表示内容の適切な選択を行うための表示制御を担当する表示制御手段Iを備えている。
【0047】
したがって、被験者は、計測値や腸内状態指標値と共にその変動傾向も簡単に目視で認知することができ、より正確な自己の健康状態を知ることができる。
【0048】
ところで、この腸内状態指標値としては、例えば、日常でもよく使われる概念である「年齢」をパラメータとした「腸内年齢」という指標値を用いることができる。その場合は、被験者は、自分の実年齢に対比して腸内状態がどうであるかを認識することによって、自身の腸内状態を直感的に知ることができる。
【0049】
また、前記表示制御手段Iは、被験者が便座13に着座した後は、着座検知部23で検知する着座状態が継続する時間である着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記計測に関する諸注意事項として、便器洗浄を禁止する案内を前記表示部28に表示するようにしている。また、さらなる諸注意事項として、この間は着座式便器10からの離座を禁止する案内も同時に前記表示部28に表示するようにしている。
【0050】
ここで、前記所定の第1閾値とは、標準的な被験者を対象としたときに正常な濃度計測値が得られてその測定における計測が実質的に完了するまでの標準的な所要時間を予め求めておいて適用することができる。
【0051】
また、前記表示制御手段Iは、前述した便器洗浄を禁止する案内を前記表示部28に表示するのに加え、着座検知部23の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、被験者の便器の洗浄操作を制御的に無効として便器洗浄が行なわれることを防止することもできる。
【0052】
このように、本実施形態によれば、有効な着座検知継続時間において計測に必要な併発ガスを得るまでは、便器洗浄または離座による既併発ガスのボウル部12からの消失を被験者の行為による測定失敗を招くことを可及的に防止することができる。
【0053】
ここで、健康状態測定装置1のより具体的な構成について詳述する。健康状態測定装置1は、図1に示すように、ボウル部12内の基部に、ガス吸引口16を開口するとともに、このガス吸引口16を脱臭排気通路としてのダクト17を介して臭気処理装置18に連通している。
【0054】
この臭気処理装置18は、吸引ファン19とその下手側の脱臭カートリッジ20とから構成しており、図2に示すように、かかる臭気処理装置18の下手側に、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分(CO2)の濃度を計測する濃度計測手段Aとしてのガスセンサ21を配設している。
【0055】
このガスセンサ21からなる濃度計測手段Aと前記吸引ファン19とは、制御部22と電気的に接続している。
【0056】
かかる制御部22は、MPU、ROM及びRAMなどを有するマイクロコンピュータやその他必要な回路から構成されており、前記ROMに、健康状態測定装置1として機能する上で、濃度計測時間に応じた処理方法を実行するための処理プログラムが格納されている。さらに、このROMは、前述した濃度計測値記憶手段B、濃度計測時間記憶手段G、時系列データ記憶手段Jとして機能する記憶部24となるものである。
【0057】
そして、この制御部22が、前述した濃度測定値決定手段C、腸内状態指標値算出手段D、濃度計測開始検知手段E、濃度計測終了検知手段F、動作情報取得手段H、及び表示制御手段Iとして機能している。
【0058】
ところで、前述したように、本実施形態での健康状態測定装置1では、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段Hが所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段Fが前記所定成分濃度の測定終了を検知したときに、濃度測定値決定手段Cが行う濃度測定値決定方法として、濃度計測時間に応じて次の3通りの処理を行うようにしている。
【0059】
すなわち、濃度計測時間が予め決められた所定時間未満の場合は、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値如何に関わらず、測定不成立として前記濃度計測値を破棄して測定結果無しとする第1の処理と、濃度計測時間が前記所定時間以上の場合は、測定成立として濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の最大ピーク値を前記濃度測定値と決定する第2の処理と、濃度計測時間が前記所定時間以上であって前記最大ピーク値が無い場合は、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の最大値を前記濃度測定値とする第3の処理である。
【0060】
本実施形態では、濃度測定値決定手段C(制御部22)が濃度測定値を決定するために、濃度計測時間と動作情報とをパラメータとして用いている。即ち、
第1のパラメータ:濃度計測終了検知手段Fが所定成分濃度の計測終了を検知したときにおける濃度計測時間。
第2のパラメータ:所定成分濃度の所定成分濃度の計測中に動作情報取得手段Hが取得する所定の動作情報の有無。
【0061】
以下、本実施形態に係る健康状態測定装置1における動作のうち、先ずこの併発ガス中の所定成分濃度の測定方法について詳述する。
【0062】
図3は同健康状態測定装置における所定成分濃度測定の概念的な処理の流れを示す説明図である。
【0063】
測定の開始のトリガーとして、操作表示盤30の操作部29に設けられた測定ボタンが操作されるか、あるいは被験者が便座13に着座するかのいづれかの行為が行なわれると計測が開始される。
【0064】
そして、測定開始後、測定開始からの濃度計測時間が本発明における第1閾値となる所定時間Taが経過するまで、前記操作部29に設けられた測定終了ボタンが操作されるか、又は便座13から離座する等の被験者の異常動作が動作情報取得手段Hによって検知されたか否かの判断処理を行う(ステップS101)。この間、計測が開始されると、ガスセンサ21が定期的に出力する濃度計測値が、順次、濃度計測値記憶手段Bに記憶されていくことになる。また、所定時間Taとしては、少なくとも20秒以上としておくことが好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、測定開始に伴って、操作表示盤30の表示部28に、例えば着座式便器10の便器洗浄や局部洗浄(温風乾燥を含む)などの各種機器の操作を禁止する動作案内表示を行う。この動作案内表示は、便器洗浄機能や局部洗浄機能を装置内部で制御的にこれらの操作を無効にするようにしたことを報知する案内でもよい。また、両方の案内を含めてもよい。
【0066】
そして、ここで計測終了、又は異常動作のどちらかを検知した場合(ステップS101:Yes)は、測定不成立と判断して「エラーメッセージ」を操作表示盤30の表示部28に表示して(ステップS111)、「計測データ破棄」の処理に進み、取得した濃度計測値データを破棄し(ステップS112)、測定処理を終える。
【0067】
こうして、前述のステップS101→ステップS111→ステップS112の処理の流れが本発明における第1の処理に相当することとなる。
【0068】
一方、ステップS101において、濃度計測開始から被験者の測定終了操作又は異常動作の検知がなく一定の濃度計測時間(所定時間Ta)が経過すれば(ステップS101:No)、ステップS121の「計測終了」の処理に進む。この計測終了の処理は、ガスセンサ21による計測を停止するとともに、各種機器の操作機能などを強制的にオフ(禁止)していたものはオン状態に復帰させる。
【0069】
次に、ステップS122において、ここまで行なってきた計測が正しい測定結果が得らる正常な測定であったか否かを得られた計測結果で判断する。その判断方法として、本実施形態ではセンサを用いた測定においての周知技術である最大ピーク値で判断する方法を用いている。即ち、それまでに計測して記憶部24に時系列的に記憶した濃度計測値群に最大ピーク値が有るか否かを判断する。
【0070】
ここでその方法について説明する。図6に示したグラフは、計測時間中のセンサ計測値の変化を表わした一例であり、縦軸にガスセンサ21から出力されるセンサ出力値を、横軸に計測時間をとっている。本実施形態では図中に示すように、ガスセンサ21の出力のピーク値群の中で最大のピーク値Vmaxから出力の最小値Vminを引いた値をセンサ出力の最大ピーク値Vpとする。
【0071】
そして、最大ピーク値を有する場合は、正常の測定と判断して所定成分の濃度を演算するためにステップS123の「所定成分濃度演算」の処理に進む。この所定成分濃度演算処理では、この最大ピーク値Vpと特定成分濃度との換算式(検量線)Cp=f(Vp)に基づいて所定の特定成分濃度の最大ピーク値Cpを算出する。即ち、濃度計測値の最大ピーク値に対応する濃度をこの測定における所定成分濃度とすることになる。
【0072】
ステップS124において、ステップS123で求められた所定成分濃度値を基にして「腸内状態指標演算」の処理を行う。
【0073】
そして、「腸内状態指標演算」の処理が終了して腸内状態指標値が求められると、この腸内状態指標値を測定時刻情報とともに時系列データ記憶手段Jに被験者別の時系列データとして保存し(ステップS125)、測定処理を終える。
【0074】
こうして、前述のステップS101→ステップS121→ステップS122→ステップS123→ステップS124→ステップS125の処理の流れが第2の処理に相当することとなる。
【0075】
なお、ステップS125の処理では、被験者は、後述する時系列データ選択部Mにより時系列データ記憶手段Jに特定の腸内状態指標値を記憶するか否かの選択をすることができるようにしてもよい。
【0076】
また、このとき、本発明における所定時間の第2閾値である設定時間Tbが経過すると、例えば、測定開始のトリガーを被験者の便座13への着座検出としていた場合、動作情報取得手段Hによる動作情報の取得に関係なく、着座式便器10の各種機能の操作、例えば洗浄機能を発揮させるための操作等を有効とし、表示部28の動作案内表示もオフとする。
【0077】
これは、本健康状態測定装置1の測定は排泄行為を伴うものであるため、被験者が不快な排泄を終えた状態のままの時間を自らの意思で短く出来るようにするための配慮である。従って、時間Tbとしては、測定に最低限必要と思われる時間(所定時間Ta)より長く、例えば被験者が便器洗浄や局部洗浄を行っても計測には支障がないと考えられる時間を適宜に設定すればよい。
【0078】
ステップS122において、濃度計測値が最大ピーク値を有していない(ステップS122:No)場合は、測定異常の可能性ありと判断して、ステップS131の「注意メッセージ付きの特定結果表示」の処理に進む。ここで測定異常とは、正しい測定結果を得るための必要条件である一定の濃度計測時間Taは経過してこの条件は満たして濃度計測値は得られていたものの、濃度測定値として採用するには疑義が生じる計測状態のもので、例えば、併発ガスを発生する排便行為としては未完了である場合や被験者による異常動作が生じた場合、あるいは、排便自体がなかった場合などがある。
【0079】
ステップS131においては、最大ピーク値がないため、それまでに得られた濃度計測値の最大値を濃度測定値とし、この濃度測定値に基づいて腸内状態指標値を算出してこれを特定の腸内状態指標値とすることになる。この場合、最大ピーク値がないために、異常の可能性のある腸内状態指標値を表示することになるが、同時にその旨を、表示制御手段Iにより表示部28に注意メッセージと共に表示する。
【0080】
すなわち、腸内状態指標値算出手段Dは、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値からピークが検出されなかった場合、特定の腸内状態指標値とすると共に、表示制御手段Iは、表示部28に腸内状態指標値を表示する際に、特定の腸内状態指標値に対する注意を喚起する所定のメッセージを付加して表示するのである。
【0081】
こうして、前述のステップS101→ステップS121→ステップS122→ステップS131の処理の流れが第3の処理に相当することとなる。
【0082】
かかる腸内状態指標値や濃度測定値については、「保存するか否か」を被験者が選択することができる。すなわち、ステップS132において、被験者は、時系列データ記憶手段Jに特定の腸内状態指標値を記憶するか否かの選択をすることができる。
【0083】
被験者が「保存するか否か」選択する手段としては、例えば操作表示盤30の操作部29に時系列データ選択部として選択操作ボタンなどを設けておくとよい。
【0084】
その場合制御部22は変動傾向算出手段Kとして機能し、被験者単位で時系列に記録されている前述した時系列データに基づいて、腸内状態の変動傾向を算出するとともに、算出した変動傾向を所定の形式、例えば時系列に示される折れ線グラフなどで表示部28に表示することができるようにしている。
【0085】
こうして、被験者が保存しないことを選択した場合(ステップS132:No)、異常測定結果の可能性のある特定の腸内状態指標値は、ステップS112の計測データ破棄の処理に進み破棄される一方、保存することを被験者が選択した場合(ステップS132:Yes)はステップS125の「計測結果保存」の処理に進み、次いで測定処理を終える。
【0086】
以上説明したように、第1の処理方法は、濃度計測時間が予め決められた所定時間Ta未満の場合は、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の数値にかかわらず測定不成立として濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値を破棄して計測結果無しとするものであり、この処理方法では、結果的に濃度測定がなされなかったこととなり、濃度測定値はなしとの決定がなされる。
【0087】
また、第2の処理方法は、濃度計測時間が所定時間Ta以上の場合は、測定成立として濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の最大ピーク値を濃度測定値と決定するものである。
【0088】
また、第3の処理方法は、濃度計測時間が所定時間Ta以上であって最大ピーク値がない場合は、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値の最大値を濃度測定値と決定するものである。
【0089】
ところで、前述した処理の流れの概要説明では、制御部22(動作情報取得手段H)が動作情報を取得したときの処理方法として、所定時間Ta未満の場合についてのみ説明したが、所定時間Ta以上経過した後に動作情報を取得する場合もある。すなわち、図3におけるS101からS121に至るまでの間に制御部22(動作情報取得手段H)が動作情報を取得した場合であるが、その場合の説明は以下に述べる健康状態測定装置1の全体の動作説明の中で行なう。
【0090】
次に、制御部22の、以上で述べた濃度測定処理動作を含めた具体的な濃度計測処理の流れについて、図4及び図5を参照しながらより詳しく説明する。
【0091】
図4は同健康状態測定装置における各種処理のフローチャート、図5は同健康状態測定装置が備える操作表示盤における表示内容の一例を示す説明図である。なお、ここでは、例えば赤外線センサなどの人体検知手段(図示せず)を、着座式便器10あるいは当該着座式便器10が設置されるトイレブース内に設けておき、トイレ使用者(被験者の場合も含む)を検知すると制御部22に検知信号を出力するものとしている。
【0092】
本健康状態測定装置1を具備する着座式便器10に人が近づくと、図4に示すように、人体検知手段がそれを検知して制御部22に検知信号を出力する(ステップS1)。
【0093】
検知信号を受信すると、ガスセンサ21の電源をオンしてスタンバイする(ステップS2)。
【0094】
次いで、動作情報取得手段Hを構成する着座検知部23が被験者の着座を検知したか否かを判定する(ステップS3)。そして、着座を検知しないと判定した場合(ステップS3:No)は処理をステップS31に移す。
【0095】
このステップS31の処理では、所定時間(例えば5分)が経過するまで待機し、所定時間が経過したと判定する(ステップS31:Yes)と、ステップS14の「ガスセンサ電源オフ」の処理に進み、本濃度計測処理を終了することになる。
【0096】
ここで、ステップS31での判定基準となる、例えば5分という時間は、例えばトイレ掃除などのために着座式便器10に人が近づいた場合を想定している。つまり、人体検知した後、5分以内に着座しないというケースは、トイレ掃除の場合であるか、あるいは少なくとも着座式便器10を用いて併発ガス中の所定成分濃度を計測する意思がないものと考えられるため、いつまでもガスセンサ21をオン状態にしておくことは省エネルギの面でも好ましくないからである。
【0097】
一方、ステップS3において着座を検知したと判定する(ステップS3:Yes)と、制御部22は、ガスセンサ21による計測を開始するとともに、濃度計測時間記憶手段Gにより、濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶していく(ステップS4)。
【0098】
なお、本実施形態では、ガスセンサ21の電源が人体検知に連動してオンし、次いで着座検知部23が被験者の着座を検知したことをトリガーとして計測が開始されるようにしているが、被験者による所定のスイッチ操作によって計測が開始されるようにしてもよい。その場合は人体検知手段も不要となる。
【0099】
他方、制御部22は表示制御手段Iとして機能し、ステップS3で着座を検知したと判定した(ステップS3:Yes)場合、図5に示すように、表示部28に「便器洗浄操作をしないでください」、「便器洗浄操作機能OFF」等の表示を行なう案内表示処理(L1)を行うとともに、便器洗浄のスイッチ操作を装置内部で制御的に無効とするなど、便器洗浄操作機能を強制的にオフとする。
【0100】
ステップS4において計測が開始され、濃度計測時間記憶手段Gにより濃度計測時間がカウントされていくと、次に制御部22は、記憶部24(濃度計測値記憶手段B)にガスセンサ21から順次出力される濃度計測値データを記憶させていく(ステップS5)。
【0101】
そして、濃度計測時間記憶手段Gに記憶された、濃度計測開始時刻からの経過時間が所定時間Ta以上であるか否かを判定する(ステップS6)。そして、所定時間Ta以上ではないと判定した場合は処理をステップS21に移す。
【0102】
ステップS6において、所定時間Ta以上であると判定した(ステップS6:Yes)場合、濃度計測終了検知手段Fが計測終了を検知する(ステップS7:Yes)までは、被験者の離座を監視しながら待機する(ステップS81:No)。ここで、濃度計測終了検知手段Fによる「計測終了の検知」は、本実施形態では被験者による測定終了ボタンの操作としているが、例えば、操作表示盤30に複数の被験者毎に割り付けられる個人認識ボタン(図2参照)の操作などでもよい。
【0103】
そして、この間に離座を検出すると(ステップS81:Yes)、既に濃度計測は実質的に終了しているため、所定時間経過すると図5に示すように、「便器洗浄操作機能ON」や、「動作案内OFF」などの案内表示処理(L2)を行うとともに、便器洗浄や局部洗浄などの操作機能を有効に復帰させて、離座状態が5分経過するまで待機状態を継続する(ステップS82:NO)。
【0104】
そして、ステップS82で、離座して5分経過したと判定する(ステップS82:Yes)と、ステップS5の処理で記憶してきた計測データについて全て破棄し(ステップS83)、ステップS14の処理でガスセンサ21の電源をオフとして本濃度計測処理を終了する。
【0105】
つまり、本実施形態の健康状態測定装置1は通常の便器装置として使用する一般の使用者も使用可能とする設定に対応しており、短時間の離座であれば計測意思の有無に係らず被験者を含むすべての使用者の場合に共通して起こり得るため計測終了操作を待つようにし、離座の時間が5分以上となれば、計測継続の意思がない被験者以外の使用者の使用によるものとして処理を進めるようにしている。
【0106】
他方、ステップS7において、計測終了の操作ボタンが操作されたことを検出して、制御部22(濃度計測終了検知手段F)が計測終了を検知した(ステップS7:Yes)場合、「便器洗浄操作機能ON」、「動作案内OFF」などの案内表示処理(L2)を行って、便器洗浄や局部洗浄などの操作機能を有効に復帰させるとともに、濃度計測値を記憶部24(濃度計測値記憶手段B)に記憶して(ステップS8)、ステップS9の処理に進む。
【0107】
濃度計測値を記憶部24(濃度計測値記憶手段B)に記憶すると、ステップS9において、制御部22は濃度測定値決定手段Cとして機能し、濃度計測値に最大ピーク値があるか否かを判断する。そして、最大ピーク値があれば処理をステップS10に進め、最大ピーク値が無い場合は処理をステップS71に移す。
【0108】
ステップS10では、制御部22(濃度測定値決定手段C)は、一定の処理により併発ガス中の所定成分の濃度である濃度測定値を決定し、さらにステップS11において、腸内状態指標演算を行う。
【0109】
このステップS11では、制御部22は腸内状態指標値算出手段Dとして機能し、求められた濃度測定値に基づいて所定の処理によって腸内状態指標値を算出し、次いでステップS12において計測結果表示を行う。
【0110】
このステップS12では、計測した併発ガス中の所定成分の濃度から求められた腸内状態指標値を、制御部22(表示制御手段I)が表示部28に表示して被験者に報知する。なお、ステップS12においては、今回の計測結果と、これまでの計測処理で時系列データ記憶手段Jに記憶された計測データとに基づいて、制御部22が変動傾向算出手段Kとして機能して、変動傾向が算出されるとともに、例えば時系列に示される折れ線グラフなどで表示部28に表示される。
【0111】
その後、計測データを時系列データ記憶手段Jに保存する(ステップS13)。そして、ガスセンサ21の電源をオフし(ステップS14)、本濃度計測処理を終了する。
【0112】
なお、ステップS14では、ステップS13における計測データの記憶処理を終えると自動的にガスセンサ21の電源がオフとなるものとしたが、例えば、前述の人体検知手段による検知信号の出力が停止したときにガスセンサ21の電源をオフするようにしてもよい。
【0113】
以上説明してきた処理の流れは、前述した本発明における第2の処理の流れに相当している。次に、前述したステップS6において、計測継続時間が所定時間Taより短いときのステップS21以降の処理、すなわち前述した本発明における第1の処理について説明する。
【0114】
ステップS6において、計測継続時間が所定時間Taより短いと判定した場合、異常動作の有無、すなわち、動作情報取得手段Hにより離座動作や便座洗浄動作など所定の異常動作情報が取得されたか否かを判定する(ステップS21)。そして、異常がないと判定すると、次に、ステップS22において、計測終了を検知したか否かを判定し(ステップS22)、このステップS22で計測終了を検知していないと判定した場合は、処理をステップS5の「計測データ記憶」の処理に戻す。なお、この場合の計測終了の判定は、操作表示盤30の設けられた計測終了ボタンが操作されたことを検出した場合としている。
【0115】
すなわち、計測開始から所定時間Ta経過するまでは、動作情報取得手段Hによる異常動作検出や計測終了操作の検出がなされない限り、ガスセンサ21から順次出力される濃度計測値データは、逐一記憶部24(濃度計測値記憶手段B)へ記憶されることになる。
【0116】
一方、ステップS21において異常動作があると判定した場合、あるいはステップS22で計測終了を検知したと判定した場合、制御部22は処理をステップS23に移し、表示部28に測定を中止した旨を被験者に知らせるエラーメッセージを表示する。
【0117】
また、このときには測定は行なわなくなったため、便器洗浄や局部洗浄を行っても支障がなくなることから、図5に示すように、制御部22は便器洗浄操作などを禁止する動作案内を消すとともに便器洗浄操作機能を有効とする案内表示(L2)を表示部28に表示する。
【0118】
そして、制御部22はこれまでの記憶部24(濃度計測値記憶手段B)への濃度計測値データの記憶処理を終了する(ステップS24)。そして、ステップS25において、ステップS5の処理で記憶してきた計測データについて全て破棄し、ステップS14の処理でガスセンサ21の電源をオフとして本濃度計測処理を終了する。
【0119】
このように、濃度計測継続時間が予め決められた所定時間Ta未満の間に異常動作検出あるいは計測終了操作検出がなされた場合は測定不成立として、濃度計測値記憶手段Bに記憶された濃度計測値如何に関わらず濃度計測値は破棄され、結果的に測定結果は「無」となる(第1の処理)。
【0120】
次に、前記ステップS9において、最大ピーク値がないと判断された場合の処理について説明する。この場合の処理が本発明における第3の処理となる。
【0121】
ステップS9において、最大ピーク値がないと判断された場合、記憶部24(濃度計測値記憶手段B)に記憶された濃度計測値の最大値を測定値として、表示部28に表示する。その際に、その測定値に異常の可能性がある旨の注意メッセージを付して表示する(ステップS71)。
【0122】
次いで、ステップS72において、計測結果を保存するか否か、選択操作ボタンの操作を被験者に促す表示を行う。この選択操作ボタンは、時系列データ選択部に相当するものであり、例えば操作表示盤30の操作部29に設けられている。
【0123】
次いで、ステップS73での被験者の選択操作ボタンの操作結果を判定し、「保存する」を選択されたと判定すると、計測データを時系列データ記憶手段Jに保存する(ステップS13)。そして、その後、ガスセンサ21の電源をオフし(ステップS14)、本濃度計測処理を終了する。
【0124】
一方、「保存しない」と選択されたと判定した場合は、ステップS25に処理を移し、ステップS5の処理で記憶してきた計測データについて全て破棄し、ステップS14の処理でガスセンサ21の電源をオフとして本濃度計測処理を終了する。
【0125】
前述してきた実施形態から、以下の健康状態測定装置が実現される。
【0126】
着座して排便する便器(例えば、着座式便器10)に搭載され、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分(例えば、CO2)濃度を計測する濃度計測手段(例えば、ガスセンサ21)と、前記濃度計測手段により出力される濃度計測値を記憶する濃度計測値記憶手段B(記憶部24)と、この濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値に基づいて、所定の処理方法により前記所定成分濃度の測定値を決定する濃度測定値決定手段C(制御部22)と、前記濃度測定値から被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標値(例えば、腸内年齢)を算出する腸内状態指標値算出手段D(制御部22)と、を備えた健康状態測定装置1において、前記所定成分濃度の計測が開始されたことを検知する濃度計測開始検知手段E(制御部22)と、前記所定成分濃度の計測が終了したことを検知する濃度計測終了検知手段F(制御部22)と、前記便器が具備する各種装置(例えば、局部洗浄装置など)の動作を動作情報として取得する動作情報取得手段H(制御部22)と、前記濃度計測開始検知手段によって検知された濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶する濃度計測時間記憶手段G(記憶部24)と、をさらに備え、前記濃度測定値決定手段は、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段が所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段が前記所定成分濃度の測定終了を検知したときにおける前記濃度計測時間に応じた所定の処理方法により、前記濃度測定値を決定する健康状態測定装置1。
【0127】
前記処理方法として、1)前記濃度計測時間が予め決められた所定時間未満の場合は、前記濃度計測値記憶手段B(記憶部24)に記憶された濃度計測値如何に関わらず、測定不成立として前記濃度計測値を破棄して測定結果無しとする第1の処理と、2)前記濃度計測時間が前記所定時間以上の場合は、測定成立として前記濃度計測値記憶手段B(記憶部24)に記憶された濃度計測値の最大ピーク値を前記濃度測定値と決定する第2の処理と、が含まれる健康状態測定装置1。
【0128】
前記濃度計測時間が前記所定時間以上であって前記最大ピーク値が無い場合は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値の最大値を前記濃度測定値とする第3の処理をさらに含む健康状態測定装置1。
【0129】
前記腸内状態指標値を含む計測結果及び計測に関する諸注意事項を表示する表示手段(例えば、表示部28)と、この表示手段の表示制御を行う表示制御手段I(制御部22)とを備えると共に、前記動作情報取得手段は被験者の便器(例えば、着座式便器10の便座13)への着座を検知する着座検知部23を備え、前記着座検知部23の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記表示制御手段は前記計測に関する諸注意事項として、便器洗浄を禁止する案内を前記表示手段に表示する健康状態測定装置1。
【0130】
前記表示制御手段I(制御部22)は前記計測に関する諸注意事項として、便器(着座式便器10の便座13)からの離座を禁止する案内を表示する健康状態測定装置1。
【0131】
前記表示制御手段I(制御部22)は、前記着座検知部23の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記計測に関する諸注意事項として離座及び便器洗浄を許可する案内を前記表示手段(表示部28)に表示する健康状態測定装置1。
【0132】
前記動作情報取得手段H(制御部22)は、被験者の便器(着座式便器10の便座13)への着座を検知する着座検知部23を備え、この着座検知部23の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記便器の洗浄機能を無効とする健康状態測定装置1。
【0133】
前記動作情報取得手段H(制御部22)は、前記着座検知部23の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記便器の洗浄機能を有効に復帰させる健康状態測定装置1。
【0134】
前記腸内状態指標値を含む計測結果を被験者単位の時系列データとして記憶する時系列データ記憶手段J(記憶部24)と、前記時系列データに基づいて変動傾向を算出する変動傾向算出手段K(制御部22)とを備え、算出された変動傾向を所定の形式で表示する健康状態測定装置1。
【0135】
前記腸内状態指標値算出手段D(制御部22)は、前記濃度計測値記憶手段B(記憶部24)に記憶された濃度計測値からピークが検出されなかった場合、特定の腸内状態指標値とすると共に、前記表示制御手段I(制御部22)は、前記表示手段(表示部28)に前記腸内状態指標値を表示する際に、前記特定の腸内状態指標値に対する注意を喚起する所定のメッセージを付加して表示する健康状態測定装置1。
【0136】
前記特定の腸内状態指標値を前記時系列データ記憶手段J(記憶部24)に記憶するかどうかを被験者に選択させる時系列データ選択部(例えば、選択操作ボタン)を備える健康状態測定装置1。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前述してきた各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 健康状態測定装置
10 着座式便器
11 便器本体
12 ボウル
13 便座
14 便蓋
15 局部洗浄用ノズル
16 ガス吸引口
17 ダクト
18 臭気処理装置
19 吸引ファン
20 脱臭カートリッジ
21 ガスセンサ
22 制御部
23 着座検知部
24 記憶部
28 表示部
29 操作部
30 操作表示盤
50 ケーシング
A 濃度計測手段
B 濃度計測値記憶手段
C 濃度測定値決定手段
D 腸内状態指標値算出手段
E 濃度計測開始検知手段
F 濃度計測終了検知手段
G 濃度計測時間記憶手段
H 動作情報取得手段
I 表示制御手段
J 時系列データ記憶手段
K 変動傾向算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座して排便する便器に搭載され、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分濃度を計測する濃度計測手段と、
前記濃度計測手段により出力される濃度計測値を記憶する濃度計測値記憶手段と、
この濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値に基づいて、所定の処理方法により前記所定成分濃度の測定値を決定する濃度測定値決定手段と、
前記濃度測定値から被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標値を算出する腸内状態指標値算出手段と、
を備えた健康状態測定装置において、
前記所定成分濃度の計測が開始されたことを検知する濃度計測開始検知手段と、
前記所定成分濃度の計測が終了したことを検知する濃度計測終了検知手段と、
前記便器が具備する各種装置の動作を動作情報として取得する動作情報取得手段と、
前記濃度計測開始検知手段によって検知された濃度計測開始時刻からの経過時間を濃度計測時間として記憶する濃度計測時間記憶手段と、
をさらに備え、
前記濃度測定値決定手段は、所定成分濃度の計測中に前記動作情報取得手段が所定の動作情報を取得したとき、若しくは、前記濃度計測終了検知手段が前記所定成分濃度の測定終了を検知したときにおける前記濃度計測時間に応じた所定の処理方法により、前記濃度測定値を決定する
ことを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
前記処理方法として、
1)前記濃度計測時間が予め決められた所定時間未満の場合は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値如何に関わらず、測定不成立として前記濃度計測値を破棄して測定結果無しとする第1の処理と、
2)前記濃度計測時間が前記所定時間以上の場合は、測定成立として前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値の最大ピーク値を前記濃度測定値と決定する第2の処理と、
が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の健康状態測定装置。
【請求項3】
前記濃度計測時間が前記所定時間以上であって前記最大ピーク値が無い場合は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値の最大値を前記濃度測定値とする第3の処理をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の健康状態測定装置。
【請求項4】
前記腸内状態指標値を含む計測結果及び計測に関する諸注意事項を表示する表示手段と、この表示手段の表示制御を行う表示制御手段とを備えると共に、前記動作情報取得手段は被験者の便器への着座を検知する着座検知部を備え、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記表示制御手段は前記計測に関する諸注意事項として、便器洗浄を禁止する案内を前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は前記計測に関する諸注意事項として、便器からの離座を禁止する案内を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の健康状態測定装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記計測に関する諸注意事項として離座及び便器洗浄を許可する案内を前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の健康状態測定装置。
【請求項7】
前記動作情報取得手段は、被験者の便器への着座を検知する着座検知部を備え、この着座検知部の着座検知継続時間が所定の第1閾値に達するまで、前記便器の洗浄機能を無効とする
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項8】
前記動作情報取得手段は、前記着座検知部の着座検知継続時間が所定の第2閾値に達した場合、前記便器の洗浄機能を有効に復帰させる
ことを特徴とする請求項7に記載の健康状態測定装置。
【請求項9】
前記腸内状態指標値を含む計測結果を被験者単位の時系列データとして記憶する時系列データ記憶手段と、前記時系列データに基づいて変動傾向を算出する変動傾向算出手段とを備え、算出された変動傾向を所定の形式で表示する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項10】
前記腸内状態指標値算出手段は、前記濃度計測値記憶手段に記憶された濃度計測値からピークが検出されなかった場合、特定の腸内状態指標値とすると共に、
前記表示制御手段は、前記表示手段に前記腸内状態指標値を表示する際に、前記特定の腸内状態指標値に対する注意を喚起する所定のメッセージを付加して表示する
ことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の健康状態測定装置。
【請求項11】
前記特定の腸内状態指標値を前記時系列データ記憶手段に記憶するかどうかを被験者に選択させる時系列データ選択部を備える
こと特徴とする請求項10に記載の健康状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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