説明

健康状態測定装置

【課題】本発明は、排泄ガスから腸内状態を推定する場合において、排泄ガスを測定するガスセンサの出力信号のピーク情報を用いることで、精度の良い腸内状態指標を推定する装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明による健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発されるガスのガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサの結果を用いて腸内状態指標を演算する演算部と、を備える健康状態測定装置であって、前記演算部は前記ガスセンサの結果において出力信号のピークを用い演算を実行する演算部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に搭載して排便時に併発するガスの測定から腸内状態を推定する健康状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排便時に併発するガス(以下排泄ガスと呼ぶ)を検出し、その検出結果に基づいて、人間の健康状態を判断する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガスセンサを用いて放屁に含まれる有臭ガスを検出し、そのガスセンサからの信号値を直接或いは匂い分析などの適当な処理を行って表示することが開示されている。また、例えば、特許文献2には、脱臭体に吸着された臭気成分を酸化させてその酸化電流から臭気成分濃度を測定する技術が開示されている。
【0003】
特許文献3は、腸内状態報知装置およびその方法に関する本出願人の発明である。この装置では、排泄ガス中の水素ガスをガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知するものである。腸内状態情報としては、腸内に存在する種々の菌の総数、ビフィズス菌の数、悪玉菌の数、腸内菌の総数のうちのビフィズス菌数の割合、又は、腸内菌の総数のうちの悪玉菌数の割合等を採用している。
【0004】
また、本出願人の発明である特許文献4では、排泄ガスの測定結果を腸内状態指標、例えば腸内細菌バランスに換算して使用者に報知する技術が開示されている。
【0005】
また、本出願人の発明である特許文献5では、排泄ガスの測定結果から便潜血の有無を判断する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−43182号公報。
【特許文献2】特開平8−211048号公報。
【特許文献3】特開2005−315836号公報。
【特許文献4】特開2007−89857号公報。
【特許文献5】特開2006−132948号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は排泄ガスから腸内状態を推定する場合において、排泄ガスを測定するガスセンサの出力信号のピーク情報を用いることで、精度の良い腸内状態指標を推定する装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発されるガスのガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサの結果を用いて腸内状態指標を演算する演算部と、を備える健康状態測定装置であって、前記演算部は前記ガスセンサの結果において出力信号のピークを用い演算を実行する演算部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の健康状態測定装置によれば、便器に戴置されたガスセンサの結果において出力信号のピークを用いて演算を実行するので、的確に排泄ガスの情報を捉えて精度良く腸内状態を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0010】
本発明に係る健康状態測定装置は、便器に載置され、排便時に併発されるガスのガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサの結果を用いて腸内状態指標を演算する演算部と、を備える健康状態測定装置であって、前記演算部は前記ガスセンサの結果において出力信号のピークを用い演算を実行する演算部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、便器に戴置されたガスセンサの結果において出力信号のピークを用いて演算を実行するので、的確に排泄ガスの情報を捉えて精度良く腸内状態を測定することができる。
【0011】
本発明に係る健康状態測定装置は、前記演算部は前記ガスセンサからの出力信号のピークの有無を検出するピーク検出部と、前記ピーク検出部で検出されたピークからピーク情報を算出するピーク処理部とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、まず演算部に備えているピーク検知部がガスセンサの出力信号にピークの有無を検知し、次にピーク処理部が検知されたピークに対してピーク情報を演算することで、ガスセンサの出力信号から腸内状態をもっともよく反映する排泄ガスに対応する情報を取り出すので、精度良く腸内状態を推定することができ、好ましい。ピーク情報としてピーク高さ、ピーク面積、ピーク幅、ピークの形、ピークの位置、ピークの立ち上がり速度などが例として挙げられる。
【0012】
また、本発明に係る健康状態測定装置は、前記ピーク情報はピーク高さであることを特徴とする。ピーク情報の中でもピーク高さが演算されやすく、また腸内状態指標を推定するのに適している排泄ガスの最大濃度との相関性が高いので、より好ましい。
【0013】
以下に添付図面に基づいて本発明の実施形態を具体的に説明する。まず、第一の実施例を図1〜図6に基いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の健康状態測定装置を搭載した人体洗浄装置組込タイプ洋式便器の一例を示す(部分透視)外観図である。
【0015】
便器1の便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。ファン用排気通路4内には、脱臭ファン5、およびガスセンサ7が取り付けられている。
【0016】
また、便座2の後部内にはピーク検出部9とピーク処理部10を備えた演算部8が組み込まれている。さらに、演算部8により演算された結果である腸内状態指標データを表示する表示部12が、人体洗浄装置の操作パネル11に組み込まれている。それぞれ、ガスセンサ7と演算部8については結線によりデータ交換を行い、演算部8と表示部12とのデータ交換は赤外線により行っている。なお、便座2の後部内には上述した機能の外に、データ記憶部およびガスセンサ7を制御する制御部を備えている。
【0017】
図2は本発明の健康状態測定装置の第一の実施例を示す概念図である。脱臭ファン用排気通路4内に、風上側から順に脱臭ファン5、脱臭カートリッジ6、二酸化炭素ガスセンサ7が配置されている。また、ガスセンサ7が演算部8と連結している。演算部8はピーク検出部9、ピーク処理部10、および算出部11を含む。
【0018】
ガスセンサ7が作動し始めると、脱臭ファン5によって搬送されてきたガスのガス濃度に応じた出力信号が得られる。得られた出力信号は演算部8のピーク検出部9に送られ、ピークの検出が行われる。
ここで、ピーク検出部9でのピーク検出方法について説明する。
【0019】
ピーク検出部9では、ガスセンサ7より送られてくる出力値(Vn)毎にその直前の出力値(Vn-1)と直後の出力値(Vn+1)によりピークの検出が行われる。はじめに、送られた出力値(Vn)がVn≧Vn-1かつVn> Vn+1である場合、それまでの最低出力値(Vmin)との差分(ΔVn=|Vn− Vmin|)が算出される。次に、差分値(ΔVn)が後述する閾値以上である場合、まず仮ピーク(Pn)として登録される。さらに、上記の方法を用いて、センサ出力開始から終了まで仮ピークの検出が行われ、測定終了時において、仮ピーク(P1…Pn)の中で差分値(ΔVn)が最大となるものが、ピークとして検出される。仮ピークが一箇所しか検出されなかった場合、それをピークとして検出する。
閾値とは例えばセンサ出力S/N比により算出された測定に有効な最低電圧差であったり、腸内指標に換算できる最低差分値(ΔVmin)であったりする。
【0020】
図3は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度を二酸化炭素ガスセンサ7で測定した時のセンサ出力変化例を示すグラフである。この図に示す直交座標軸系の横軸は、時間(秒)を表し、縦軸は、二酸化炭素ガスセンサから出力された信号の電圧レベルを表している。また、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。この場合、ピーク検出部では仮ピークとして5箇所(P〜P5)が検出される。これらのうち差分値(ΔVn)が最大となるのは仮ピークP4である。よって、仮ピークP4がピークとして検出される。
【0021】
このようにピーク検出部9により得られたピークは次にピーク処理部10に送らる。ピーク処理部10ではピークから情報を算出する。算出されたピーク情報は算出部11により腸内状態指標に演算され、腸内状態指標のデータは表示部12で表示される。
【0022】
本実施例ではピーク処理部10で算出されるピーク情報としてピーク高さ(ΔVp)を用いる。
ここで、ピーク高さ(ΔVp)の算出方法について説明する。図4は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度をガスセンサ7で測定した時のセンサ出力変化例を示すグラフである。この場合仮ピークは一箇所である。図4に示すように、ピーク高さ(ΔVp)は、ユーザが便座装置の便座に着座してから離座するまでの間のセンサ出力値の例えば最小値(Vmin)とピーク値(Vp)の差を用いる。
なお、最小値(Vmin)との差をピーク高さとする理由としては、測定雰囲気中CO2濃度の影響を省くためである。
【0023】
続いて、ピーク高さから二酸化炭素ガス濃度を算出し、さらに得られた二酸化炭素ガス濃度から腸内状態指標の便pHを算出する算出部11について説明する。
演算部8の算出部11は、ピーク高さから二酸化炭素濃度を算出する第一算出部、および第一算出部からえられた二酸化炭素濃度から腸内状態指標を算出する第二算出部を備える。
【0024】
第一算出部では、ピーク高さと二酸化炭素ガス濃度との対応表が予め記憶されている。ピーク処理部10からピーク高さの情報を受け取ると、第一算出部はこのピーク高さと二酸化炭素ガス濃度との対応表に基いて、二酸化炭素ガス濃度を算出する。なお、ピーク高さと二酸化炭素ガス濃度との対応表は、例えば濃度の異なるモデルガスを用いて測定し、モデルガスの濃度とピークの高さとの相関関係から求められている。
【0025】
第一算出部によって得られた二酸化炭素ガス濃度が第二演算部へ送信され、第二算出部では引き続き二酸化炭素ガス濃度から腸内状態指標を算出する。第二算出部では、二酸化炭素ガス濃度と腸内状態指標との対応表が予め記憶されている。本実施例では腸内状態指標として便pH、二酸化炭素ガス濃度と腸内状態指標である便pHとの対応表は二酸化炭素ガス濃度と便中酢酸、および便中酢酸と便pHとの2つの対応表からなる。
【0026】
図5は排便時に発生したガス中のピークのピーク高さから算出された二酸化炭素ガス濃度(容量%で表示)と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を示す実測データである。このようにピークの二酸化炭素ガス濃度と酢酸濃度との間に相関性があることの理由が明確ではないが、便のpH値は含まれるカルボン酸の濃度によって左右され、このカルボン酸の一定割合が体内で水と二酸化炭素に分解されているためと推測される。
【0027】
したがって、カルボン酸のうちの大部分を占める酢酸の濃度も上記二酸化炭素ガス濃度と相関があることになる。また、図6は便中の酢酸濃度と便中のpH値との相関を示す実測データであり、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示している。
【0028】
第二算出部ではまず、二酸化炭素ガス濃度と便中酢酸濃度との対応表(図5に示す相関関係に基く)から便中酢酸濃度を算出し、次に便中酢酸濃度と便pHとの対応表(図6に示す相関関係に基く)から便pHを算出する。
このように、ピーク検出部により検出されたピークを用いることで精度よく腸内状態を推測することができる。
【0029】
次に本発明の健康状態測定装置の第二実施例について説明する。本実施例の装置構成は図2に示す第一実施例と同様であるが、演算部8のピーク処理部10で算出されるピーク情報としてピーク面積(Sp)を用いる。
【0030】
ここで、ピーク処理部10におけるピーク面積(Sp)の算出について説明する。図7に示すように、ピーク面積(Sp)は、ユーザが便座装置の便座に着座してから離座するまでの間のセンサ出力変化の例えば最小値(Vmin)とピークを含む曲線で囲まれた面積から算出される。算出されたピーク面積(Sp)は算出部11に送られ、そこで予め記憶されているピーク面積と二酸化炭素ガス濃度との対応表に基いて二酸化炭素ガス濃度を算出さら、さらに二酸化炭素ガス濃度と腸内状態指標との対応表にも続いて得られた二酸化炭素ガス濃度から腸内状態指標が演算される。得られた腸内状態指標のデータは表示部12で表示される。
【0031】
最後に、本発明の腸内状態測定装置を使用した腸内状態測定方法の手順を例示して説明する。
図8は、本発明の健康状態測定装置洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。使用者(以後、「ユーザ」と呼ぶ。)の動作を左側に、便座装置が行う処理(健康状態測定装置の処理を含む)を右側に別けて表示した。
【0032】
本図の流れの通り、ユーザはトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の健康状態測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の腸内のpH推定値を表示部12に表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0033】
まずユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知されガスセンサ制御部によって二酸化炭素ガスセンサ7が起動される。人体検知センサを使わない場合には、ユーザが健康状態測定装置の電源を手動で入れてもよい。
【0034】
ユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、ガスセンサ制御部によって脱臭ファン5および二酸化炭素ガスセンサ7が作動を開始する。なお、ガスセンサの始動は着座センサを使わずにユーザがセンサの始動スイッチを押してもよい。
【0035】
ユーザが排便を開始し終了するまで、二酸化炭素ガスセンサ7は一定時間tx、たとえば1秒おきにデータVxを検出し、ピーク検出部9により、仮ピークを検出する。
【0036】
排便終了後、ユーザが人体洗浄を開始する。このとき、洗浄ボタンと連動させて二酸化炭素ガスセンサ7の記録を終了させる。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンと連動させずにユーザが手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0037】
次に、演算部8では検出された仮ピーク(P1…Pn)からピークを決定する。次にピーク処理部10により得られたピーク情報を用いて、二酸化炭素ガス濃度を算出する。次に二酸化炭素ガス濃度と酢酸濃度との対応表から酢酸濃度を算出する。
【0038】
続いて酢酸濃度からpH値を推定する。同定した結果をユーザに表示部12等により報知する。
【0039】
ユーザが離座すると、それを着座センサが感知し脱臭ファン5が停止する。そしてユーザが退室すると人体検知センサによって退室が検知されその信号がガスセンサ制御部に送られ二酸化炭素ガスセンサ7の電源が切られる。
【0040】
尚、本実施例では二酸化炭素ガスセンサを使用したが、水素ガスセンサや硫化水素センサなどを使用しても、それに対応した換算方法を使用することで、同じように腸内状態指標を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の健康状態測定装置を搭載した衛生洗浄便座装置を付設した洋式便器の一例を示す(部分透視)外観図
【図2】本発明の健康状態測定装置の第1実施例を示す概念図
【図3】第1実施例における排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度を測定した出力例を示すグラフ
【図4】第1実施例における排便時に発生したガス中のピークのピーク高さの算出を示すグラフ
【図5】排便ガスの二酸化炭素ガス濃度と便中酢酸濃度との相関関係を示すグラフ
【図6】便中酢酸濃度と便pH値との相関関係を示すグラフ
【図7】第2実施例における排便時に発生したガス中のピークのピーク面積の算出を示すグラフ
【図8】本発明の健康状態測定装置(人体洗浄装置組込タイプ洋式便器に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順の一例を示す図
【符号の説明】
【0042】
1…便器、2…便座、3…便鉢、4…脱臭ファン用排気通路、5…脱臭ファン、7…ガスセンサ、8…演算部、9…ピーク検出部、10…ピーク処理部、11…算出部、12…表示部、13…操作パネル、14…選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に載置され、排便時に併発されるガスのガス濃度を測定するガスセンサ
と、前記ガスセンサの結果を用いて腸内状態指標を演算する演算部と、を備える健康状態測定装置であって、
前記演算部は前記ガスセンサの結果において出力信号のピークを用い演算を実行する演算部であることを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
前記演算部は前記ガスセンサからの出力信号のピークの有無を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部で検出されたピークからピーク情報を算出するピーク処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の健康状態測定装置。
【請求項3】
前記ピーク情報はピーク高さであることを特徴とする請求項2記載の健康状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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