説明

側方入射装置

【課題】光ファイバの側面から光ファイバの内部へ信号光をより効率よく入力することが可能であり、かつ入射角度や入射位置の精度をさらに高めることが可能な側方入射装置を提供する。
【解決手段】側方入射装置1は、基板10と、基板10の主表面上に設置された、ビーム状の信号光を光ファイバ5に供給する信号光供給部材4と、基板10の主表面上に設置された、光ファイバ5を湾曲した状態で固定する案内部材2とを備えている。案内部材2は、光ファイバ5を湾曲した状態で保持する外周面21を有している。信号光供給部材4のうち、信号光が放出される端部には楔状部材40を有している。楔状部材40は、外周面21に固定された光ファイバ5に接触して光ファイバ5との光学的な接触を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は側方入射装置に関し、より特定的には、光ファイバの接続状態の測定に用いる側方入射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外への光ファイバの設置や光ファイバの接続変更をする際に、設置後の光ファイバの接続状態を検証するために、たとえば設置後の光ファイバに光信号を入力し、出力される光信号を測定する。このとき、光ファイバが接続される端部に相当する通信機から光信号を入出力するとすれば、複数の遠隔地で測定する必要がある。このため作業の負担が大きく、容易ではない。
【0003】
したがって、一の通信機と他の通信機との間の領域の一部における光ファイバを変更等する場合には、変更等がなされた光ファイバの近傍にて光信号を入出力することにより測定することが好ましい。このため、延在する光ファイバの通路の途中にて信号光を入出力することが好ましい。このようにすれば、より高効率にかつより安定するように、当該信号光を入出力することができる。そこで、たとえば特開2009−25210号公報(特許文献1)に示すように、延在する光ファイバを湾曲し、湾曲した領域の側面から信号光を入射する方法がなされることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、光ファイバの側面から信号光を効率よく入射する技術としての、上記のように信号光の入射角度や入射位置を規定する方法、さらに光ファイバを湾曲する最適な曲率半径が開示されている。そして特許文献1には、信号光を上記入射角度や入射位置で光ファイバに入射するファイバガイドやフェルールガイドなどの部材について記載されている。
【0006】
しかし特許文献1における信号光の入射角度や入射位置、さらには光ファイバを湾曲する最適な屈曲半径の各値は、入射信号光の波長が1.65μmで、かつ伝送信号光の波長が1.55μm以下での損失増加を最小限に抑える場合の各値である。これらの各値は、ダークファイバを用いた場合や伝送波長領域の信号光を適用する場合の各値とは基本的に異なる値であるが、特許文献1にはこれらの各値が開示されていない。また、信号光の入射角度や入射位置を最適化するために、上記部材がどのように光ファイバを固定するかについての記載がなされていない。したがって光ファイバの設置される位置がずれるなどの不具合が発生する可能性がある。
【0007】
また特許文献1の側方入射方法においては、入射する信号光を安定化するために、光ファイバの側面に屈折率整合部材が配置される。しかし当該屈折率整合部材はゲル状の屈折率整合材であり、これを光ファイバの側面に塗布した状態で、信号光を入射する光ファイバが設置されれば、信号光を入射する光ファイバの、信号光を出力する端部がゲル状の屈折率整合材の流動により位置ずれを起こす可能性がある。さらに当該ゲル状の屈折率整合材を逐一光ファイバの側面に供給する必要が生じるため、作業効率が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものである。その目的は、光ファイバの側面から光ファイバの内部へ信号光をより効率よく入力することが可能であり、かつ入射角度や入射位置の精度をさらに高めることが可能な側方入射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る側方入射装置は、光ファイバの内部に、側方から信号光を入射する側方入射装置である。上記側方入射装置は、基板と、基板の主表面上に設置された、ビーム状の信号光を光ファイバに供給する光供給部材と、主表面上に設置された、光ファイバを湾曲した状態で固定する案内部材とを備えている。上記案内部材は、光ファイバを湾曲した状態で保持する外周面を有している。上記光供給部材のうち、信号光が放出される端部には光学部材を有している。上記光学部材は、外周面に固定された光ファイバとの光学的な接触を保持する。
【0010】
上記の側方入射装置は、より正確には、側方から信号光を入射し、光ファイバのコアに光信号を結合させる側方入射装置である。上記側方入射装置を用いれば、案内部材の外周面に光ファイバが保持されることにより、光ファイバが所望の曲率半径で湾曲された状態で固定される。さらに上記側方入射装置の光供給部材の端部に設置される、たとえば楔状部材などの光学部材は、光供給部材を案内部材の外周面に対して所望の位置に所望の角度で確実に固定することを可能とする。このため、光ファイバに対して所望の位置に、所望の角度から信号光を入射することを確実にすることができる。
【0011】
上記側方入射装置において好ましくは、外周面の少なくとも一部は、曲率半径が5mm以下であり、信号光を光ファイバに入射するための第1の領域を、第1の領域の曲率半径の中心から見た、第1の領域の角度が30°以上となるように含む。
【0012】
光ファイバのうち少なくとも信号光が側方入射される領域においては、曲率半径が5mm以下と急峻なカーブを描くように湾曲されることが好ましい。本発明の発明者は鋭意研究の結果、光ファイバにおいて信号光が側方入射される領域やその近傍における曲率半径、および当該曲率半径を有する領域の角度を上記のようにセットすれば、光ファイバの内部に信号光を入力する効率を高めることができることを見出した。より具体的には、信号光は、第1の領域の一方の終端と中心とを結ぶ第1の直線と、外周面上の点と中心とを結ぶ第2の直線とのなす角度が15°以上30°以下である第2の領域において、上記点における接線に沿う方向から、上記一方の終端の近傍に向けて光ファイバに入射されることが好ましい。
【0013】
上記側方入射装置においては、光学部材にはシート状部材を有していてもよい。上記シート状部材の屈折率は、光ファイバの屈折率の0.9倍以上1.1倍以下であることが好ましい。上記のように楔状部材のうち、特に信号光が入射される光ファイバと接触する領域にシート状部材が配置されれば、さらに高効率に、光ファイバに信号光を入力することができる。
【0014】
上記側方入射装置においては、光学部材には粘性液体が塗布されていてもよい。上記粘性液体の屈折率は、光ファイバの屈折率の0.9倍以上1.1倍以下であることが好ましい。上記のように楔状部材のうち、特に信号光が入射される光ファイバと接触する領域に粘性液体が塗布されれば、さらに高効率に、光ファイバに信号光を入力することができる。
【0015】
上記のように光学部材に粘性液体が塗布された側方入射装置において好ましくは、楔状部材の、粘性液体が塗布された第3の領域の下部に、主表面に沿う第1の面および第1の面に交差する第2の面を有する面交差部が形成されている。このようにすれば、滴下した粘性液体は、面交差部の特に第1の面に落下する。このため当該面交差部は、滴下した粘性液体の受け皿のような役割を有し、粘性液体が基板などの上に落下する可能性を低減することができる。
【0016】
上記側方入射装置において好ましくは、光供給部材および案内部材のうちの少なくともいずれか一方は、主表面上に搭載されたスライド機構により、光供給部材と案内部材との距離が変化するように、主表面に沿った方向に移動可能である。
【0017】
光供給部材が基板の主表面に沿った方向に関して移動可能であれば、たとえば案内部材の外周面に光ファイバを設置する際には光供給部材が案内部材から離れるようにセットし、案内部材の外周面に設置された光ファイバに信号光を入射する際には光供給部材を案内部材に近づけ、楔状部材を光ファイバに接触させることができる。このため当該装置を用いた作業の効率がより高められる。
【0018】
上記側方入射装置において好ましくは、案内部材の外周面には、光ファイバを取付可能な溝部が形成されている。このようにすれば、光ファイバが案内部材の外周面により確実に固定される。
【0019】
上記側方入射装置において好ましくは、光供給部材および案内部材の少なくとも一方には、案内部材が、基板の厚みに沿った方向にスライドし、所望の位置で停止する機構を有している。このようにすれば、複数の心線(テープ心線)が束ねられた構成の光ファイバが案内部材の外周面に固定された場合において、幅方向に並ぶ複数の心線のうち所望の心線のみに信号光を入力する操作を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光ファイバの側面から信号光をより効率よく、かつ入射角度や入射位置の精度をさらに高めることが可能な側方入射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る側方入射装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1の側方入射装置の上面図である。
【図3】図1の側方入射装置を、図1の奥行き方向に関して図1と反対方向から見た概略図である。
【図4】図3の上面図である。
【図5】図1の側方入射装置において、光ファイバが湾曲した領域と、楔状部材とが接触する態様を示す概略図である。
【図6】実施の形態1に係る楔状部材の形状を示す概略図である。
【図7】楔状部材が光ファイバに接触する接点や、光ファイバ案内部材の外周面の曲率などを定義するための、図1の側方入射装置の上面図である。
【図8】楔状部材が光ファイバに接触する接点や、光ファイバ案内部材の外周面の曲率などの、図7よりさらに好ましい状態を定義するための、図1の側方入射装置の上面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る楔状部材の形状を示す概略図である。
【図10】実施の形態2に係る楔状部材が用いられた場合の、図7と同様の側方入射装置の上面図である。
【図11】実施の形態3に係る楔状部材が用いられた場合の、図7と同様の側方入射装置の上面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る側方入射装置の構成を示す概略図である。
【図13】図12の側方入射装置の側面図である。
【図14】図12の側方入射装置の上面図である。
【図15】複数のテープ心線が並列する構成の光ファイバの状態を示す概略図である。
【図16】本発明の実施の形態5に係る側方入射装置の構成を示す概略図である。
【図17】本発明の実施の形態6に係る側方入射装置の構成を示す概略図である。
【図18】本発明の実施の形態7に係る側方入射装置の構成を示す概略図である。
【図19】(A)本発明の実施の形態8に係る側方入射装置に用いられる、標準の溝部の幅を有する光ファイバ案内部材の構成を示す概略図である。(B)本発明の実施の形態8に係る側方入射装置に用いられる、溝部の幅が図19(A)と異なる光ファイバ案内部材の構成を示す概略図である。
【図20】(A)本発明の実施の形態9に係る側方入射装置に用いられる、標準の位置に溝部が形成された光ファイバ案内部材の構成を示す概略図である。(B)本発明の実施の形態8に係る側方入射装置に用いられる、溝部の位置が図20(A)と異なる光ファイバ案内部材の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態の側方入射装置1は、光ファイバ案内部材2(案内部材)と搭載用部材3と、信号光供給部材4(光供給部材)と、スライドレール11とを有している。これらの各部材は基板10上に配置されている。
【0023】
光ファイバ案内部材2は、上方から見たときに円弧状の外周面21を有しており、外周面21上に形成された溝部20には光ファイバ5が固定、保持される。溝部20は、外周面21の延在する方向(円弧に沿う方向)に延在しており、外周面21に対して一定の深みを有する。この溝部20の内部に光ファイバ5が固定される。したがって光ファイバ5が溝部20の内部に固定されると、光ファイバ5は溝部20(外周面21)と同様の形状に湾曲しながら、光ファイバ案内部材2に取り付けられる。
【0024】
光ファイバ5が固定された溝部20の上方の一部は、たとえば平板形状のマグネット部材32に覆われていてもよい。このようにすれば、光ファイバ5はマグネット部材32により、外周面21から外れないようより強固に固定される。したがって光ファイバ案内部材2の本体は、たとえば鉄やステンレスなどのように磁性を有する金属材料から構成されることが好ましい。
【0025】
搭載用部材3は、基板10の主表面(表面のうちもっとも面積の大きい、水平方向に延びる主要な面)に沿う搭載面がボルト31aにより後述するスライド機構に固定された構成となっている。
【0026】
スライドレール11(スライド機構)はボルト31bにより、基板10の主表面上に固定される、長尺形状のレールである。そして光ファイバ案内部材2および搭載用部材3は、スライドレール11上に配置されている。このため光ファイバ案内部材2および搭載用部材3は、スライドレール11の延在する方向に沿って、基板10に対して相対移動することが可能な構成となっている。つまり光ファイバ案内部材2と搭載用部材3との、スライドレール11の延在する方向に関する距離は、両者がスライドレール11上を移動することにより自在に変化することができる。
【0027】
なお搭載用部材3のうち、特に光ファイバ案内部材2と対向する一の表面(側面)上には、たとえば平板形状のマグネット部材32が配置されていてもよい。
【0028】
搭載用部材3の搭載面上には、たとえば円筒形状の信号光供給部材4が載置されている。信号光供給部材4の延在する方向に関する一方の端部(光ファイバ案内部材2と対向する端部と反対側の端部)である後部端部42には光源通路6が接続されており、光源通路6には光源7が接続されている。
【0029】
光源7からは、光ファイバ5の内部に入射しようとする信号光が供給される。光源7から供給された信号光は、光源通路6の内部を、光源通路6の延在する方向に伝播して信号光供給部材4に到達する。そして信号光は、信号光供給部材4の延在する方向に関する後部端部42と反対側の端部から、信号光供給部材4の外部へと放射される。
【0030】
なお、信号光供給部材4の内部には、たとえばコリメータなどのレンズ機構が配置されている。このレンズ機構により信号光はビーム状となり、光ファイバ5の内部へ効率よく入射することが可能な態様となる。ここで特に信号光を高効率に入射するためには、位置精度の問題がなければ、当該ビーム光のビームウェストが10μm以上20μm以下程度となるように設定することが好ましい。
【0031】
上記の信号光供給部材4から信号光が放射される端部には、楔状部材40(光学部材)が配置されている。楔状部材40は、光ファイバ案内部材2および搭載用部材3がスライドレール11上を移動することにより両者が接近した際に、外周面21や、溝部20に固定された光ファイバ5の側面との光学的な接触を保持することが可能な形状を有する。
【0032】
具体的には、図3および図4を参照して、楔状部材40は光ファイバ案内部材2の溝部20に対向する位置に配置されることが好ましい。このようにすれば、たとえば光ファイバ案内部材2や搭載用部材3がスライドレール11上を移動することにより両者が接近すれば、楔状部材40の特に部材側面部40aが、溝部20に固定された光ファイバ5を、溝部20の深さ方向へ押し込みながら接触する。楔状部材40(部材側面部40a)が光ファイバ5に接触しながら光ファイバ5を押し込むことにより、楔状部材40は光ファイバ5との光学的な接触を保持し、楔状部材40は光ファイバ5を溝部20の内部に保持する。
【0033】
図3および図4は光ファイバ案内部材2と搭載用部材3とが互いに離れており、溝部20に固定された光ファイバ5と楔状部材40とが接触しない状態である。なお図3においては、後述の図5や図6において楔状部材40の形状の説明を容易にするために、図1や図2と逆の方向から(図1や図2とは上下を逆にしたものが)図示されている。
【0034】
図3や図4が案内部材2と搭載用部材3とが互いに離れた状態を示すのに対して、図5は、光ファイバ案内部材2と搭載用部材3とが互いに接近し、楔状部材40の部材側面部40aが光ファイバ5の湾曲部分に接触した状態を拡大図で示している。なお図5は図3と同じ方向から楔状部材40や光ファイバ5を見た拡大図である。
【0035】
図6は、図5と同じ方向から楔状部材40を見た態様を示す。図6を参照して、楔状部材40は、信号光供給部材4に取り付けられた際に光ファイバ5に対向する領域が、部材側面部40a(第2の面)と部材底面部40b(第1の面)とを有する面交差部を形成している。部材底面部40bは、楔状部材40が信号光供給部材4に取り付けられた際に基板10の主表面に沿うように(水平方向に)配置される領域である。部材側面部40aは、部材底面部40bに交差しており、楔状部材40が信号光供給部材4に取り付けられた際に基板10の主表面にほぼ垂直に(鉛直方向に)配置される領域である。なお部材側面部40aと部材底面部40bとは、ともに平面形状であることが好ましい。
【0036】
楔状部材40は、信号光供給部材4から光ファイバ5の内部へ、信号光の橋渡しをする領域である。したがって、楔状部材40と光ファイバ5との間で信号光の全反射などが起こらず、楔状部材40から光ファイバ5へ高効率に信号光を入射することが可能な材質により楔状部材40が形成されることが好ましい。光ファイバ5は通常、石英ガラスやプラスチックにより形成される。このため楔状部材40は、光ファイバ5と同様の石英ガラスやプラスチック、あるいは石英ガラスやプラスチックの絶対屈折率1.5に近い(絶対屈折率が光ファイバ5の0.9倍以上1.1倍以下である)材質からなることが好ましい。
【0037】
図7においては、説明を容易にするため再度、図1などと(上下方向に関して)同様の方向から図示されている。図7を参照して、光ファイバ5が固定される溝部20(外周面21)は、これを上方から見た円弧形状の曲率半径が比較的小さい小曲率半径領域21a(第1の領域)と、小曲率半径領域21aよりも円弧形状の曲率半径が比較的大きい大曲率半径領域21bとからなる。そして信号光は、光ファイバ5のうち小曲率半径領域21aに保持された領域から光ファイバ5の内部に入力されることが好ましい。つまり楔状部材40(部材側面部40a)は、小曲率半径領域21aに保持された光ファイバ5に接触する位置に配置されることが好ましい。さらに言い換えれば、楔状部材40(部材側面部40a)と光ファイバ5との接点Pは、小曲率半径領域21aに保持された光ファイバ5上に存在することが好ましい。
【0038】
さらに図7を参照して、小曲率半径領域21aの曲率半径R1は5mm以下であることが好ましい。また平面視において曲率半径R1の中心O1から見た、小曲率半径領域21aの角度(中心角)θ1が30°以上であることが好ましい。これに対して大曲率半径領域21bのなす円弧形状の中心O2から見た曲率半径R2は曲率半径R1より大きい。
【0039】
図8を参照して、平面視における小曲率半径領域21aの一方の終端Qは、光ファイバ案内部材2の外周面21のうち、円弧形状である小曲率半径領域21aと直線形状である領域との境界にあたる点である。ここで小曲率半径領域21aの一方の終端Qとは、案内部材2の外周面21に沿う方向に関して、曲率半径を有する小曲率半径領域21aと、直線状に延びる領域(図8の終端Qの左側に延びる領域)との境界にあたる点である。いま、中心O1と終端Qとを結ぶ直線l1(第1の直線)と、中心O1と接点Pとを結ぶ直線l2(第2の直線)とを考える。このとき、O1を中心として直線l1と直線l2とがなす角度θ2は20°程度、より具体的には15°以上30°以下であることが好ましい。
【0040】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態の側方入射装置は、光ファイバ5にビーム状の信号光を供給することが可能な信号光供給部材4と、光ファイバ5を湾曲した状態で固定する案内部材2と、案内部材2に固定された光ファイバ5を押さえ込むように接触保持する楔状部材40とを備えている。
【0041】
このような構成を有するため、楔状部材40と光ファイバ5との接点は、常に同じ箇所となる。そして楔状部材40から光ファイバ5への信号光を、常に同じ接点P(図7、図8参照)から同じ角度で入射することができる。また当該側方入射装置においては、スライドレール11が光ファイバ案内部材2と搭載用部材3との距離を自在に変更することができる。つまり光ファイバ5と楔状部材40とが接触する際の、光ファイバ案内部材2と搭載用部材3との距離を一定にすることができる。以上より当該側方入射装置を用いれば、光ファイバ5への信号光の入射角度や強度等のばらつきを生じることなくより安定に、常に同様の入射角度や強度で光ファイバ5へ、光を入射することができる。
【0042】
ここで上記のように小曲率半径領域21aの曲率半径や、小曲率半径領域21aの中心O1に対する角度θ1を調整したり、楔状部材40の形状や材質を最適化すれば、光ファイバ5の内部においてたとえば信号光が全反射することが抑制される。すなわち光ファイバ5の湾曲した領域の内部へ、高効率に、かつより安定に、信号光を入射することができる。なお図8に示すθ2を20°程度に調整することにより、光ファイバ5の湾曲した領域の内部へ、より高効率に、かつより安定に、信号光を入射することができる。
【0043】
また楔状部材40が光ファイバ5と接する部材側面部40aが曲面ではなく平面形状であるため、部材側面部40aと光ファイバ5とは接点Pの1点のみで接する。このため、たとえば湾曲する光ファイバ5に沿うように接する曲面から光ファイバ5へ信号光が入力される場合に比べて、当該信号光の強度や角度を高精度に微調整することが可能となる。すなわち楔状部材40が楔状であるため、コリメータの角度の微調節が可能になるといえる。これは、たとえば湾曲する光ファイバ5に沿うように接する曲面から光ファイバ5へ信号光が入力する場合には、光ファイバ5と信号光を入力する曲面との接点が複数存在するために、両者の接し方にばらつきが生じ、信号光の高精度な微調整が困難になる可能性があるためである。
【0044】
また搭載用部材3の、特に光ファイバ案内部材2と対向する一の表面(側面)上には、たとえば平板形状のマグネット部材32が配置されている。このため光ファイバ5へ信号光を入力する際には、光ファイバ案内部材2と搭載用部材3とを互いに接近して両者を互いに密着固定した状態にすることができる。したがって搭載用部材3上の信号光供給部材4(楔状部材40)に対する光ファイバ案内部材2(光ファイバ5)の位置をさらに高精度に一定とすることができる。
【0045】
さらに光ファイバ案内部材2においても、溝部20に固定される光ファイバ5が、楔状部材40に押さえ込まれることにより、溝部20の内部により確実に保持される。また溝部20に固定された光ファイバ5を覆うようにマグネット部材32が配置されれば、当該マグネット部材32により、光ファイバ5はさらに確実に光ファイバ案内部材2の溝部20に固定される。このように光ファイバ5確実に固定された状態で信号光が入力されるため、さらに安定に当該信号光を入射することができる。
【0046】
なおスライドレール11により光ファイバ案内部材2と搭載用部材3との距離を自由に変更することができるため、たとえば光ファイバ5を溝部20に取り付ける際には、搭載用部材3を光ファイバ案内部材2から離れた位置にセットすることができる。このようにすれば、上記取り付けの際に搭載用部材3が妨げになり、作業の効率が低下するなどの不具合を抑制することができる。したがって光ファイバ案内部材2と搭載用部材3とがスライドレール11により移動可能であることにより、準備作業の効率を高めることができるとともに、信号光入力の効率や精度を高めることができる。
【0047】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、楔状部材40の状態において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0048】
本実施の形態における側方入射装置は、実施の形態1の側方入射装置と、大筋で同様の構成を備えている。ただし本実施の形態においては、楔状部材40にシート状部材がさらに配置されている。
【0049】
図9を参照して、本実施の形態においては、楔状部材40の部材側面部40a上に、たとえば平板形状からなるシート状部材41が貼り付けられている。シート状部材41は、楔状部材40と同様にたとえば石英ガラスやプラスチック、その他光ファイバ5に近い絶対屈折率1.5(光ファイバ5の絶対屈折率の0.9倍以上1.1倍以下)を有する材質からなることが好ましい。
【0050】
図10は本実施の形態に係る、図7と同様の、楔状部材40から光ファイバ5へ信号光が入力される状態を示す上面図である。図10は図7と比較して、楔状部材40の状態において異なっている。具体的には図7においては光ファイバ5は、接点Pにて楔状部材40の部材側面部40aと接している。これに対して図10においてはシート状部材41と光ファイバ5とが接点Pにて接しており、接点Pから光ファイバ5の内部に信号光が入力される。
【0051】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図9および図10において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0052】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態のように、部材側面部40a上にシート状部材41が貼り付けられた楔状部材40を用いても、実施の形態1と同様に、平板形状のシート状部材41と光ファイバ5との接点Pにおいて、高効率にかつより安定的に、信号光が入力される。
【0053】
また楔状部材40にシート状部材41が貼り付けられれば、楔状部材40が単独で用いられる場合に比べて、信号光供給部材4と光ファイバ5とを橋渡しする領域の体積が大きくなる。このため、信号光供給部材4と光ファイバ5との結合をよりスムースにすることができる。
【0054】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0055】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、楔状部材40の状態において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0056】
本実施の形態における側方入射装置は、実施の形態1の側方入射装置と、大筋で同様の構成を備えている。ただし本実施の形態においては、楔状部材40に粘性液体がさらに塗布されている。
【0057】
図11を参照して、本実施の形態においては、楔状部材40の部材側面部40a上に粘性液体43が塗布されている。粘性液体43とは、たとえばゲル状の屈折率整合材として塗布されるものである。粘性液体43は、楔状部材40と同様に、光ファイバ5に近い絶対屈折率1.5(光ファイバ5の絶対屈折率の0.9倍以上1.1倍以下)を有する材質からなることが好ましい。
【0058】
粘性液体43は、楔状部材40(シート状部材41)と光ファイバ5との接点Pおよび、接点Pの周辺領域において、楔状部材40と粘性液体43とを結合するように塗布されることが好ましい。
【0059】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図11において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0060】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態のように、部材側面部40a上にゲル状の粘性液体43が塗布された楔状部材40を用いた場合においても、実施の形態1と同様に、楔状部材40と光ファイバ5との接点Pにおいて、高効率にかつより安定的に、信号光が入力される。また光ファイバ5に近い絶対屈折率を有する粘性液体43が塗布されることにより、楔状部材40と光ファイバ5との結合状態をさらに良好なものとすることができる。
【0061】
ところで、実施の形態1〜実施の形態3に係る楔状部材40はいずれも、部材側面部40aと部材底面部40bとを有している。部材底面部40bは部材側面部40aに交差するように形成され、両者は面交差部を構成している。そして楔状部材40が信号光供給部材4に取り付けられた状態において、部材底面部40bは部材側面部40aの下方に配置される。
【0062】
このような構成となっているため、部材底面部40bが、部材側面部40a上に塗布され垂れ落ちた粘性液体43を受けることができる。つまり部材底面部40bは粘性液体43の受け面として作用する。したがって部材側面部40a上に塗布された粘性液体43が、基板10の主表面の方へ垂れ落ち、基板10などを汚すなどの不具合を抑制することができる。
【0063】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0064】
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光ファイバ案内部材2の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0065】
本実施の形態における側方入射装置は、実施の形態1の側方入射装置と、大筋で同様の構成を備えている。ただし本実施の形態においては、光ファイバ案内部材2が、基板10の主表面にほぼ垂直な方向に移動可能となっている。
【0066】
図12〜図14を参照して、本実施の形態においては、信号光供給部材4と光ファイバ案内部材2との少なくとも一方には、光ファイバ案内部材2が、その厚みに沿った方向(図12の上下方向)にスライドし、所望の位置(高さ)で停止(固定)することが可能な機構が備えられている。具体的には、光ファイバ案内部材2の内部にネジ部23を有している。つまり、光ファイバ案内部材2の厚みに沿った方向(図12の上下方向)に延在するネジ部23が形成されている。ただし当該ネジ部23は信号光供給部材4に形成されていてもよい。
【0067】
ネジ部23のピッチは、光ファイバ案内部材2を上下方向に移動可能とすべき最小の距離とすることが好ましく、たとえば250μmとすることが好ましい。光ファイバ案内部材2の最上面の上には、ネジ部23の周囲に、ネジ部23の回転量を示す目盛24が印刷されている。目盛24の1目盛は、たとえばネジ部23のピッチ分に相当する回転角度とすることが好ましい。
【0068】
つまり本実施の形態の側方入射装置の光ファイバ案内部材2は、スライドレール11に沿った方向(水平方向)とともに、鉛直方向にも移動することが可能となっている。なお図12〜図14においては、光ファイバ案内部材2のみにネジ部23が設けられている。しかし搭載用部材3にも光ファイバ案内部材2と同様のネジ部23が設けられてもよい。このようにすれば、光ファイバ案内部材2に加えて搭載用部材3も、水平方向と鉛直方向との2方向に移動することが可能となる。
【0069】
なお、図12〜図14においては楔状部材40や搭載用部材3、スライドレール11や光ファイバ案内部材2などは、部分的に簡略化した形状で図示されている。しかしこれらの各部材は、上述した実施の形態1〜実施の形態3と同様の態様を有するものであってもよい。
【0070】
また、平面視におけるネジ部23の周囲には、一定の間隔ごとに複数のねじれ防止シャフト22が形成されていることが好ましい。ねじれ防止シャフト22は、ネジ部23が回転した場合に光ファイバ案内部材2を構成する部材がねじれを起こすことを防止するために形成される領域である。
【0071】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図12〜図14において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0072】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
たとえば図15に示すように、光ファイバ5が複数のテープ心線51、52、53が束ねられた構成を有する場合に、テープ心線51、52、53のいずれかのみに漸次信号光を入射したい場合がある。この場合、たとえば図15の光ファイバ5が光ファイバ案内部材2(溝部20)に固定された状態で、最初に一番上のテープ心線51に信号光を入射し、次に中央のテープ心線52に、最後に一番下のテープ心線53に信号光を入射することが好ましい。
【0073】
このとき、たとえば搭載用部材3の上下方向の位置は変更しなければ、光ファイバ案内部材2を上下方向に移動する。このようにすれば、所望のテープ心線のみに信号光を入射することが可能な(上下方向の)位置となるように光ファイバ案内部材2を段階的に調整することができる。したがって、本実施の形態の側方入射装置は、図15に示すような光ファイバ5を構成する各テープ心線に順番に信号光を入射することを容易にすることができる。
【0074】
本発明の実施の形態4は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態4について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0075】
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光ファイバ案内部材2の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0076】
図16を参照して、本実施の形態における側方入射装置は、光ファイバ案内部材2の全体を上方から覆うように保護カバー25が配置されている。
【0077】
保護カバー25は、光ファイバ案内部材2の最上面の全面を上方から覆う上面部と、図16に示す奥行き方向の側面を囲む側面部とを有している。ただし図16の左右方向(スライドレール11の延在する方向)に関する側面は全体を覆わないことが好ましい。したがって保護カバー25は、トンネル状の略直方体形状を有することが好ましいが、必ずしも略直方体形状に限らず、たとえば円筒状であってもよい。
【0078】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図16において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0079】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態の側方入射装置のように、特に光ファイバ案内部材2を上方から覆う保護カバー25を設けることにより、光ファイバ案内部材2の溝部20に固定された光ファイバ5へのパーティクルやほこりの吸着を抑制することができる。したがって光ファイバ5をより高品質な状態に保つことができる。
【0080】
また保護カバー25は、特にスライドレール11の延在する方向に関しては側面がトンネル状になっている。このため側面の空洞に光ファイバ5の端部を貫通させたり、楔状部材40を光ファイバ5の湾曲部分に接触するよう貫通させたりすることができる。つまり保護カバー25を上記形状とすることにより、側方入射装置の通常の動作を妨げることなく、光ファイバ5をほこりやパーティクルから守ることが可能となる。
【0081】
本発明の実施の形態5は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態5について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0082】
(実施の形態6)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光源7の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0083】
図17を参照して、本実施の形態の側方入射装置は、光源通路6が備えられておらず、光源7が後部端部42に直接取り付けられていてもよい。
【0084】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図17において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0085】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態の側方入射装置のように、光源7が後部端部42に直接接続された構成となっていれば、光源7から供給される信号光が光ファイバ5の内部に達するまでの経路が短くなる。このため、光源7から供給される信号光を減衰させることなく、より高効率に光ファイバ5の内部に供給することができる。
【0086】
また光源7が後部端部42に直接接続されることで、光源7から側方入射装置へ信号光を導波する部材が不要となる。このため側方入射装置が小型になるとともに、操作性が向上する。さらに光源7を構成する素子の出力信号を直接コリメータに結合することができ、ビーム径や光学系との距離などの数値のとりうる範囲が広くなる(数値の自由度が高まる)。以上より、側方入射装置の設計の自由度を高める(設計を柔軟に行なう)ことができる。
【0087】
本発明の実施の形態6は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態6について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0088】
(実施の形態7)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光ファイバ案内部材2の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0089】
図18を参照して、本実施の形態における側方入射装置は、光ファイバ案内部材2を複数有している。光ファイバ案内部材2が基板10に対して着脱可能に固定される。具体的には、基板10の主表面上のうち、特に光ファイバ案内部材2が配置される領域には1本または複数本(たとえば3本)のガイドピン26が固定されている。ガイドピン26は基板10の主表面にほぼ垂直な方向に延びている。また光ファイバ案内部材2には、その厚み方向(図18の上下方向)に沿って延在しながら貫通するように貫通穴27が形成されている。貫通穴27は平面視においてガイドピン26とほぼ同一の配置となるように形成されている。
【0090】
光ファイバ案内部材2は、図18の上下方向に貫通するように形成される貫通穴27を有している。ガイドピン26が貫通穴27を上下方向に貫通するようにセットされることにより、光ファイバ案内部材2が基板10に固定される。したがって本実施の形態においては光ファイバ案内部材2の基板10に対する位置が固定される。しかし本実施の形態においても搭載用部材3はスライドレール11上に配置され、基板10に対して相対移動可能である。このため本実施の形態においても光ファイバ案内部材2と搭載用部材3との、スライドレール11の延在する方向に関する距離は、搭載用部材3がスライドレール11上を移動することにより自在に変化することができる。
【0091】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図18において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0092】
ここで本実施の形態の側方入射装置の作用効果を説明する。
本実施の形態のように光ファイバ案内部材2を基板10に対して着脱可能に固定できる構成とすることにより、光ファイバ5を光ファイバ案内部材2の溝部20の内部に固定した後に光ファイバ案内部材2を基板10に固定することができる。このようにすれば、たとえば基板10の主表面上にてスライドレール11に沿って滑るように動く光ファイバ案内部材2の溝部20に対して光ファイバ5を固定する場合に比べて、光ファイバ5を取り付ける作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0093】
また本実施の形態によれば、より短い光ファイバ5を容易に光ファイバ案内部材2に取り付けることができる。光ファイバ案内部材2が基板10に固定されない状態で光ファイバ5が光ファイバ案内部材2の溝部20の内部に固定されるため、光ファイバ5を光ファイバ案内部材2に取り付ける際に側方入射装置の全体を支えて作業を行なう必要がなくなる。このため溝部20の(延在する方向に交差する)幅が狭い場合においても、比較的容易に光ファイバ5を溝部20の内部に押し込むように固定することができる。
【0094】
また本実施の形態によれば、たとえば複数の光ファイバ5(またはテープ心線)の測定を行なう場合に、その測定作業の効率を向上することができる。これは、たとえば複数の光ファイバ案内部材2を準備し、複数の光ファイバ5のそれぞれをあらかじめ光ファイバ案内部材2の溝部20にセットした上で、逐次光ファイバ案内部材2を基板10に取り付けたり取り外したりすることができるためである。この作業は、たとえばスライドレール11に沿って滑るように動く光ファイバ案内部材2の溝部20に対して逐次光ファイバ5を取り付けたり取り外したりする作業に比べて容易であり、作業効率が向上する。
【0095】
なおガイドピン26および貫通穴27以外の手段により、光ファイバ案内部材2が基板10に対して着脱可能に固定される構成としてもよい。たとえば基板10の主表面上の光ファイバ案内部材2が載置される領域上、および光ファイバ案内部材2のうち基板10の主表面上に載置されたときに当該主表面と対向する面上に面ファスナを取り付けることにより、光ファイバ案内部材2が基板10に対して着脱可能に固定されてもよい。
【0096】
本発明の実施の形態7は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態7について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0097】
(実施の形態8)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光ファイバ案内部材2の溝部20の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0098】
図19を参照して、本実施の形態の光ファイバ案内部材2は、図19(A)に示す溝部20の標準の幅(光ファイバ案内部材2の外周面に沿って延在する方向に交差する方向の幅)に対して、図19(B)に示すように当該幅が異なっている(太くなっている)。すなわちたとえば実施の形態7と同様に、基板10に対して着脱可能に複数有する光ファイバ案内部材2の間で、溝部20の幅が異なっている。当該幅は、標準の幅に対して太くなっていてもよいし、細くなっていてもよい。
【0099】
たとえば図19(A)における溝部20が、テープ心線が4本束ねられた光ファイバ5(いわゆる4心の光ファイバ5)を固定することが可能な幅を有するとすれば、図19(B)における溝部20は、テープ心線が8本束ねられた光ファイバ5(いわゆる8心の光ファイバ5)を固定することが可能な幅を有していてもよい。あるいは逆に、図19(A)よりも溝部20の幅を細くすることにより、図15に示すようなたとえば3本のテープ心線が束ねられた、いわゆる3心の光ファイバ5を固定することが可能な幅を有していてもよい。
【0100】
本実施の形態のように溝部20の幅を変更することにより、様々な太さを有する光ファイバ5を光ファイバ案内部材2に固定することが可能となる。
【0101】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図19において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0102】
(実施の形態9)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、光ファイバ案内部材2の溝部20の構成において異なっている。以下、本実施の形態について説明する。
【0103】
図20を参照して、本実施の形態の光ファイバ案内部材2は、図20(A)に示す溝部20の標準の位置(溝部20の幅の方向に関する中心の、図の上下方向に関する座標)に対して、図20(B)に示すように当該溝部20の位置が異なっている(上側に配置される)。すなわちたとえば実施の形態7と同様に、基板10に対して着脱可能に複数有する光ファイバ案内部材2の間で、溝部20の位置が異なっている。当該幅は、図20(A)に示す標準の位置(厚み方向に関する中央付近)に対して図の上側に配置されてもよいし、図の下側に配置されてもよい。図20(A)(B)に示すように、複数の光ファイバ案内部材2の間で、溝部20の幅方向の中心の(光ファイバ案内部材2を基板10に固定したときの)、基板10の主表面からの距離が異なる。
【0104】
本実施の形態によれば、たとえば実施の形態4,8のように光ファイバ5が複数のテープ心線を有する場合に、当該光ファイバ5を、溝部20の位置が異なる複数の光ファイバ案内部材2のそれぞれに順番に着脱しながら測定することにより、溝部20の位置に応じた各テープ心線に順番に信号光を入射することができる。したがって、本実施の形態においても実施の形態4と同様に、複数のテープ心線を有する光ファイバ5の各テープ心線を、高い作業効率で測定することができる。
【0105】
なお図19および図20においては、光ファイバ案内部材2には貫通穴27が形成されており、図18に示すガイドピン26を用いて基板10に着脱可能な構成を有している。しかし本実施の形態においては、光ファイバ案内部材2は実施の形態1と同様の(スライドレール11に沿って移動可能な)構成を有してもよい。
【0106】
また図20(B)において、たとえば図19(B)のように、溝部20の幅を標準の幅に対して変更してもよい。
【0107】
以上の点においてのみ、本実施の形態は実施の形態1と異なる。したがって図20において上述しなかった構成要素については実施の形態1の図面と同様の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0108】
なお以上に述べたそれぞれの実施の形態の側方入射装置の構成を、本実施の形態の他の実施の形態と任意に組み合わせた構成としてもよい。たとえば実施の形態7〜実施の形態9に示す着脱可能な複数の光ファイバ案内部材2のそれぞれにおける、図7に示す曲率半径R1,R2、中心角θ1の値を適宜変更することにより、実施の形態1と同様に、光ファイバ5の湾曲した領域の内部へ、より高効率に、かつより安定に、信号光を入射することができる。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、湾曲した光ファイバに測定用の信号光を入力する側方入射装置に、特に有利に利用されうる。
【符号の説明】
【0111】
1 側方入射装置、2 光ファイバ案内部材、3 搭載用部材、4 信号光供給部材、5 光ファイバ、6 光源通路、7 光源、10 基板、11 スライドレール、20 溝部、21 外周面、21a 小曲率半径領域、21b 大曲率半径領域、22 ねじれ防止シャフト、23 ネジ部、24 目盛、25 保護カバー、26 ガイドピン、27 貫通穴、31a,31b ボルト、32 マグネット部材、40 楔状部材、40a 部材側面部、40b 部材底面部、41 シート状部材、42 後部端部、43 粘性液体、51,52,53 テープ心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの内部に、側方から信号光を入射する側方入射装置であって、
基板と、
前記基板の主表面上に設置された、ビーム状の前記信号光を前記光ファイバに供給する光供給部材と、
前記主表面上に設置された、前記光ファイバを湾曲した状態で固定する案内部材とを備えており、
前記案内部材は、前記光ファイバを湾曲した状態で保持する外周面を有しており、
前記光供給部材のうち、前記信号光が放出される端部には光学部材を有しており、
前記光学部材は、前記外周面に固定された前記光ファイバに接触して前記光ファイバとの光学的な接触を保持する、側方入射装置。
【請求項2】
前記外周面の少なくとも一部には、曲率半径が5mm以下であり、前記信号光を前記光ファイバに入射するための第1の領域を、前記第1の領域の曲率半径の中心から見た、前記第1の領域の角度が30°以上となるように含む、請求項1に記載の側方入射装置。
【請求項3】
前記信号光は、前記第1の領域の一方の終端と前記中心とを結ぶ第1の直線と、前記第1の領域上の点と前記中心とを結ぶ第2の直線とのなす角度が15°以上30°以下である第2の領域において、前記点における接線に沿う方向から、前記一方の終端の近傍に向けて前記光ファイバに入射される、請求項2に記載の側方入射装置。
【請求項4】
前記光学部材にはシート状部材を有しており、
前記シート状部材の屈折率は、前記光ファイバの屈折率の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の側方入射装置。
【請求項5】
前記光学部材には粘性液体が塗布されており、
前記粘性液体の屈折率は、前記光ファイバの屈折率の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の側方入射装置。
【請求項6】
前記光学部材には、前記粘性液体が塗布された第3の領域の下部に、前記主表面に沿う第1の面および前記第1の面に交差する第2の面を有する面交差部が形成されている、請求項5に記載の側方入射装置。
【請求項7】
前記光供給部材および前記案内部材のうちの少なくともいずれか一方は、前記主表面上に搭載されたスライド機構により、前記光供給部材と前記案内部材との距離が変化するように、前記主表面に沿った方向に移動可能である、請求項1〜6のいずれかに記載の側方入射装置。
【請求項8】
前記案内部材の前記外周面には、前記光ファイバを取付可能な溝部が形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の側方入射装置。
【請求項9】
前記案内部材が着脱可能に前記基板に固定される、請求項1〜7のいずれかに記載の側方入射装置。
【請求項10】
前記案内部材の前記外周面には、前記光ファイバを取付可能な溝部が形成されている、請求項9に記載の側方入射装置。
【請求項11】
前記案内部材が複数存在し、
前記溝部の前記外周面に沿って延在する方向に交差する方向の幅が個々の前記案内部材の間で異なっている、請求項10に記載の側方入射装置。
【請求項12】
前記案内部材が複数存在し、
前記溝部の前記外周面に沿って延在する方向に交差する幅の方向に関する中心は、前記基板の主表面からの距離が個々の前記案内部材ごとに異なっている、請求項10または11に記載の側方入射装置。
【請求項13】
前記光供給部材および前記案内部材の少なくとも一方には、前記案内部材が、前記基板の厚みに沿った方向にスライドし、所望の位置で停止する機構を有している、請求項1〜12のいずれかに記載の側方入射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−42455(P2012−42455A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151018(P2011−151018)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】