説明

側臥位枕

【課題】 本発明は、枕本体を頭部を挟むようにして取り付けることにより、睡眠中に仰臥位状態になっても半強制的に側臥位状態に戻すことができる側臥位枕を提供する。
【解決手段】 側臥位枕10の枕本体12の中央部には略円柱形状の仰臥防止体14が枕本体12に巻き付けられた状態で取り付けられている。枕本体12の一端部12Cには第1ホールド体16が連続形成され、他端部12Dには第2ホールド体18が連続形成されている。第1ホールド体16の正面上部には固定ベルト22の第1固定ベルト片22Aが取り付けられ、第2ホールド体18の正面上部には固定ベルト22の第2固定ベルト片22Bが取り付けられている。前記第1ホールド体16の背面中央部と第2ホールド体18の間には腰部ベルト24が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側臥位状態になって眠ることができる側臥位枕に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠中に無呼吸状態に陥ったり低呼吸状態に陥ったりする睡眠呼吸障害を発症する人が多くなり、健康面から注目を集めている。
この無呼吸状態に陥ったり低呼吸状態に陥ったりする睡眠呼吸障害(以下「睡眠呼吸障害」と称す)は、睡眠時の姿勢が側臥位状態よりも仰臥位状態において無呼吸・低呼吸が倍以上増加する場合を体位依存性の睡眠呼吸障害と定義されている。
睡眠呼吸障害の重症度評価にはAHI(無呼吸・低呼吸指数)が用いられるが、通常、体位依存性の睡眠呼吸障害の患者では仰臥位のAHIが側臥位よりも2倍以上増加する。また、出願人が有するデータでは体位依存性の睡眠呼吸障害の患者のうち、約半数は側臥位でのAHIが10以下(正常範囲)となり、側臥位状態による睡眠が、睡眠時の呼吸状態を改善する有効な手段の一つであることを示唆している。
しかし、従来の枕は一般的に袋状のピローケースにスポンジ、羽毛、蕎麦殻等の適宜充填材を充填して立体的な形状にしてなるものである。
このため、体位依存性の睡眠呼吸障害の患者が従来の枕を使用して睡眠をとる場合は、就寝する時は側臥位状態で寝ても睡眠中に寝返り等して無意識に仰臥位状態になってしまい、この結果、睡眠呼吸障害の発生を抑えることが困難であるという不具合がある。
そこで、枕の左右方向中間部を突設状態にして側臥位状態になり易い枕が開発されている。しかし、このタイプの枕は睡眠中に枕を無意識のうちに外してしまうことが容易であるため簡単に仰臥位状態に戻ってしまうという不具合がある。
【特許文献1】実用新案登録第3009844号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり枕本体を頭部を挟むようにして取り付けることにより、睡眠中に仰臥位状態になっても半強制的に側臥位状態に戻すことができる側臥位枕を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、頭部や首部を載置する枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に前後方向に向って設けられることにより枕本体の正面及び背面に突設された仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に設けられた第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に設けられた第2ホールド体と、前記第1ホールド体に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、を有してなることを特徴としている。
請求項2の発明は、頭部や首部を載置する枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に着脱可能に巻き付けられて取り付けられた略円柱形状の仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に枕本体と交差方向に連続形成された第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に枕本体と交差方向に交差方向に連続形成されると共に前記第1ホールド体と対向する第2ホールド体と、前記第1ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、前記第1ホールド体と前記第2ホールド体を連結する腰部ベルトと、を有してなることを特徴としている。
請求項3の発明は、頭部や首部を載置すると共に肌触りのよい生地で形成された枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に着脱可能に巻き付けられて取り付けられると共に肌触りのよい生地で形成された略円柱形状の仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に枕本体と交差方向に連続形成されると共に通気性のよい生地で形成された略円柱状の第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に枕本体と交差方向に交差方向に連続形成されると共に前記第1ホールド体と対向する通気性のよい生地で形成された略円柱状の第2ホールド体と、前記第1ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、前記第1ホールド体の背面中央部と前記第2ホールド体の背面中央部を連結する腰部ベルトと、を有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の側臥位枕は、睡眠中に側臥位状態から仰臥位状態になろうとしても再び側臥位状態に戻ることにより側臥位状態の割合を多くして、睡眠呼吸障害を減少させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明を実施するために最良の形態の例として以下のような実施例を示す。
【実施例1】
【0007】
図1〜図5には本発明に係る側臥位枕10の一実施例が示されている。
図1及び図2に示されるように、側臥位枕10の枕本体12は使用者の頭部や首部を載置できるようになっている。この枕本体12は肌触りのよい生地(例えば、起毛ベンベルグ)で一定の厚みを有するように形成されている。また、前記枕本体12の左右方向(図1、図2左右方向)中央部には略円柱形状の仰臥防止体14が前後方向(図1、図2上下)に向って枕本体12に巻き付けられた状態で取り付けられている。従って、図3及び図4に示されるように、枕本体12に取り付けられて枕本体12の正面12Aに位置する仰臥防止体14の正面部14Aは枕本体12の正面12Aから突出すると共に枕本体12の背面12Bに位置する仰臥防止体14の背面部14Bも枕本体12の背面12Bから突出するようになっている。前記仰臥防止体14は仰臥防止体14の一端部と他端部に固定された図示しないボタン等の適宜手段により着脱自在に取り付けられている。なお、前記仰臥防止体14も肌触りのよい生地(例えば、起毛ベンベルグ)で一定の厚みを有するように形成されている。
図1及び図2に示されるように、前記枕本体12の一端部12Cには枕本体12と交差方向に断面円柱状の第1ホールド体16が連続形成されている。また、前記枕本体12の他端部12Dには枕本体12と交差方向に断面円柱状の第2ホールド体18が前記第1ホールド体16と対向するように連続形成されている。なお、前記第1ホールド体16と第2ホールド体18も通気性のよい生地(例えば、ラッセルメッシュ)で立体的に形成されている。
図1に示されるように、前記第1ホールド体16の正面上部には短い固定ベルト22を構成する第1固定ベルト片22Aが取り付けられている。また、第2ホールド体18の正面上部には前記固定ベルト22を構成する第2固定ベルト片22Bが前記第1固定ベルト片22Aと対応して取り付けられている。従って、第1固定ベルト片22Aと第2固定ベルト片22Bを連結できるようになっている。
図2に示されるように、前記第1ホールド体16の背面中央部と前記第2ホールド体18の背面中央部の間には第1ホールド体16と第2ホールド体18を連結する前記固定ベルト22よりも長い腰部ベルト24が配設されている。この腰部ベルト24は調節バックル24Aによって長さ調節ができるようになっている。
【0008】
次に、体位依存性の睡眠呼吸障害の患者が前記側臥位枕10を使用して寝る場合を例にして作用を説明する。
まず、前記患者が側臥位枕10を使用する前に図1〜図4に示されるように、前記枕本体12の左右方向中央部に仰臥防止体14を前後方向(図1、図2上下方向)に巻き付けて取り付けておく。
次に、前記患者は身体を第1ホールド体16と第2ホールド体18の間に位置させて仰臥状態になって腰を前記腰部ベルト24に対応させると共に頭部及び首部を枕本体12に取り付けられた仰臥防止体14に載置させる。
そして、前記固定ベルト22の第1固定ベルト片22Aと第2固定ベルト片22Bを締め付ける。これにより、図5に示されるように、前記患者の側頭部は前記枕本体12の一端部12Cと他端部12Dによって挟まれた状態になると共に患者と側臥位枕10は一体になる。また、前記第1ホールド体16と第2ホールド体18は接近して第1ホールド体16の先端部と第2ホールド体18の先端部は当接すると共に患者の腰は前記腰部ベルト24によって第1ホールド体16と第2ホールド体18に密着状態になる。
従って、この状態で患者が前記第1ホールド体16及び第2ホールド体18を両腕で抱いた状態で仰臥位になると側頭部は枕本体12の一端部12C又は他端部12Dに載置された状態になる。また、患者が脚を第1ホールド体16、第2ホールド体18に載せたり脚で前記第1ホールド体16、第2ホールド体18を挟むことにより気分が安定したりリラックスする効果を得られる。
側臥位状態で寝ていた患者が睡眠中に寝返り等で無意識に仰臥状態になると、前記患者の後頭部や頸部は枕本体12の正面12Aから突設状態になっている仰臥防止体14の正面部14Aによって後頭部及び首部が圧迫される。また、前記患者が仰臥状態になると枕本体12の背面12Bから突設状態になっている仰臥防止体14の背面部14Bが中心になって敷かれている布団に当接するため、前記患者の頭部や首部は不安定な状態になる。
この結果、患者は仰臥位状態で寝ることが困難になるため、再び側臥位状態に戻ろうとして側臥位状態になって眠る。しかも、頭部及び首部は前記枕本体12に挟み付けられた状態を維持される。
従って、体位依存性の睡眠呼吸障害の患者が本発明の側臥位枕10を使用すれば睡眠中に寝返り等をして無意識に仰臥位状態になろうとしても再び側臥位状態に戻るため、睡眠中における側臥位状態の割合を大きく増加させることができ、この結果、無呼吸・低呼吸を大きく減少させることができ睡眠呼吸障害を減少させることができる。
なお、出願人が体位依存性の睡眠呼吸障害の患者と健常者で実験を行ったところ両被験者ともに睡眠中の側臥位状態の割合が大きく増加し、無呼吸・低呼吸を減少させることができた。
【0009】
なお、実施例の前記仰臥防止体14は枕本体12に対して着脱可能であるので、患者に適した太さの仰臥防止体14を取り付けて使用することができる。
【0010】
なお、本発明の側臥位枕10を使用して体位依存性の睡眠呼吸障害の患者の睡眠時の姿勢を側臥位状態に維持させることにより睡眠構造が悪化する(深睡眠の減少等)可能性が考えられた。
そこで、出願人が体位依存性の睡眠呼吸障害の患者と健常者に対して従来の枕と本発明の側臥位枕10を使用させて睡眠構造が悪化する(深睡眠の減少等)か否かを比較する実験を行った。
しかし、実験結果から両被験者とも本発明の側臥位枕10を使用することにより睡眠構造が悪化するようなデータは得られず、睡眠構造が悪化しないことが示唆された。
【0011】
なお、実施例では側臥位枕10を体位依存性の睡眠呼吸障害の患者が使用する場合を例にして説明したが、側臥位枕10を使用するのは体位依存性の睡眠呼吸障害の患者に限定されるものでなく健常者が使用してもよいことは勿論である。
また、実施例では前記仰臥防止体14を枕本体12に対して取り付け可能な例を示した仰臥防止体14は前記枕本体12に一体して設けられているタイプでもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の側臥位枕の正面図である。
【図2】実施例の側臥位枕の背面図である。
【図3】実施例の側臥位枕を右側面図である。
【図4】実施例の側臥位枕の底面図である。
【図5】実施例の側臥位枕を使用している状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0013】
10 側臥位枕
12 枕本体
14 仰臥防止体
16 第1ホールド体
18 第2ホールド体
22 固定ベルト
24 腰部ベルト








【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部や首部を載置する枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に前後方向に向って設けられることにより枕本体の正面及び背面に突設された仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に設けられた第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に設けられた第2ホールド体と、前記第1ホールド体に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、を有してなることを特徴とする側臥位枕。
【請求項2】
頭部や首部を載置する枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に着脱可能に巻き付けられて取り付けられた略円柱形状の仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に枕本体と交差方向に連続形成された第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に枕本体と交差方向に交差方向に連続形成されると共に前記第1ホールド体と対向する第2ホールド体と、前記第1ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、前記第1ホールド体と前記第2ホールド体を連結する腰部ベルトと、を有してなることを特徴とする側臥位枕。
【請求項3】
頭部や首部を載置すると共に肌触りのよい生地で形成された枕本体と、この枕本体の左右方向中央部に着脱可能に巻き付けられて取り付けられると共に肌触りのよい生地で形成された略円柱形状の仰臥防止体と、前記枕本体の一端部に枕本体と交差方向に連続形成されると共に通気性のよい生地で形成された略円柱状の第1ホールド体と、前記枕本体の他端部に枕本体と交差方向に交差方向に連続形成されると共に前記第1ホールド体と対向する通気性のよい生地で形成された略円柱状の第2ホールド体と、前記第1ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第1固定ベルト片と、前記第2ホールド体の正面上部に取り付けられた固定ベルトの第2固定ベルト片と、前記第1ホールド体の背面中央部と前記第2ホールド体の背面中央部を連結する腰部ベルトと、を有してなることを特徴とする側臥位枕。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−198210(P2006−198210A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13800(P2005−13800)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(591027020)ロフテー株式会社 (2)
【出願人】(505025922)
【Fターム(参考)】