説明

側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂及びその製造方法

【課題】 高い硬化性、硬化感度を有する側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをポリスタノキサン系触媒の存在下でエステル交換反応させることにより効率よく前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂を得られる。側鎖に多数のアクリロイル基を有するため高い硬化性又は高い感度を有し、耐熱性、密着性、機械特性などに優れた硬化物を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の側鎖水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ(メタ)アクリレートは、耐熱性、耐薬品性、耐水性、密着性、機械特性などが他のアクリルオリゴマーに比べて優れるため、塗料樹脂、印刷インキ、UV硬化性樹脂、成形樹脂、フィルム、接着剤、構造材料、配線基盤のソルダーレジスト用として広く使用されている。
【0003】
従来のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、現像性、誘電特性などの他の性能を向上させるために、側鎖水酸基に酸無水物などを反応させてカルボキシル基をペンダント化させた酸ペンダント型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(特許文献1、2参照)、又は、側鎖にイソシアネート化合物をペンダント化させたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(特許文献3参照)などが開示されている。しかし、これら(メタ)アクリレート樹脂はエポキシ樹脂末端の限られたエポキシ基のみに開環付加することにより得られるものであるため、硬化反応に関与する(メタ)アクリロイル基が少ないため、硬化性や硬化感度の低いものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−181050号公報
【特許文献2】特開平9−87346号公報
【特許文献3】特開平7−316252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い硬化性又は高い感度を有する側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂の該側鎖水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された多官能の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂を提供することにより上記課題を解決した。
【0007】
即ち、本発明は、側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをポリスタノキサン系触媒の存在下でエステル交換反応させることにより効率よく前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂を得られることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は高い硬化性又は高い感度を有するため、高い高分子ネットワークの形成より耐熱性、密着性、機械特性などに優れた硬化物を与えることにより塗料樹脂、印刷インキ、UV硬化性樹脂、成形樹脂、接着剤、配線基盤のソルダーレジスト用などの良い材料として広く使用されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、数平均重合度2〜1000の範囲にある側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂の側鎖水酸基の少なくとも一部が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂である。
【0010】
前記側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂は脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂又は、脂環式エポキシ樹脂のいずれかである。例えば、エピハロヒドリンと芳香族ジヒドロキシ化合物とから、あるいは、ジグリシジル化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とからなるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ベンゼン環を少なくとも1個有し、且つ該環にヒドロキシ基が直接結合したもの、例えばジヒドロキベンゼン、ジフェノール、ビスフェノール、キサンテン;ナフタレン環を少なくとも1個有し、且つ該環にヒドロキシ基が直接結合したもの、例えばジヒドロキシナフタレン;アントラセン環を少なくとも1個有し、且つ該環にヒドロキシ基が直接結合したもの、例えばジヒドロキシアントラセンなどが使用できる。
【0012】
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、エポキシ樹脂の合成に通常使用されている芳香族ジヒドロキシ化合物を使用できる。なかでも、得られるエポキシ樹脂に剛直な骨格を与える場合には、キサンテン骨格を有するジヒドロキシ化合物、ビフェニレン骨格を有するジヒドロキシ化合物、ビスフェノール骨格を有するジヒドロキシ化合物などの芳香族ジヒドロキシ化合物を使用することが好ましい。
【0013】
キサンテン骨格を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,7−ジヒドロキシキサンテン、3,6−ジヒドロキシキサンテンなどの無置換キサンテン型ジヒドロキシ化合物、3,6−ジヒドロキシ−9,9−ジメチルキサンテン、2,7−ジヒドロキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテンなどの置換キサンテン型ジヒドロキシ化合物、2,11−ジヒドロキシ−13−ビフェニルジベンゾキサンテンなどのジベンゾキサンテン型ジヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0014】
ビフェニル骨格を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルなどが挙げられる。
【0015】
ビスフェノール骨格を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールF型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールS型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールACP型ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールジヒドロキシ化合物、及びこれらビスフェノール型ジヒドロキシ化合物が塩素化あるいは臭素化されたジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
二級アルコール構造を有するエポキシ樹脂を与えるジグリシジル化合物としては、上記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応して、側鎖にヒドロキシ基を与えるものであればよい。
【0017】
このようなグリシジル化合物としては、芳香族ジグリシジル化合物、脂環族ジグリシジル化合物、及び脂肪族ジグリシジル化合物、ヘテロ環式ジグリシジル化合物など、エポキシ樹脂の合成に通常使用されているジグリシジル化合物を使用できる。なかでも、得られるエポキシ樹脂に剛直な骨格を与える場合には、キサンテン骨格を有するジグリシジル化合物、ビフェニレン骨格を有するジグリシジル化合物、ビスフェノール骨格を有するジグリシジル化合物、ジシクロヘキシルアルカン骨格を有するジグリシジル化合物などの芳香族、または脂環族ジグリシジル化合物を使用することが好ましい。また、剛直な骨格中に柔軟な骨格を導入する場合には、アルキレン骨格やポリオキシアルキレン骨格を有するジグリシジル化合物を使用することが好ましい。
【0018】
キサンテン骨格を有するジグリシジル化合物としては、例えば、2,7−ジグリシジルオキシキサンテン、3,6−ジグリシジルオキシキサンテンなどの無置換キサンテン型ジグリシジルエーテル、3,6−ジグリシジルオキシ−9,9−ジメチルキサンテン、2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテンなどの置換キサンテン型ジグリシジルエーテル、2,11−ジグリシジルオキシ−13−ビフェニルジベンゾキサンテンなどのジベンゾキサンテン型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
ビフェニレン骨格を有するジグリシジル化合物としては、例えば、4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル、4,4’−ジグリシジルオキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルなどが挙げられる。
【0020】
ビスフェノール骨格を有するジグリシジル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールACP型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールL型ジグリシジルエーテル、及びこれらビスフェノール型ジグリシジルエーテルが塩素化あるいは臭素化されたジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
ジシクロヘキシルアルカン骨格を有するジグリシジル化合物としては、例えば、水素添加ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0022】
アルキレン骨格やポリオキシアルキレン骨格を有するジグリシジル化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0023】
また、二級アルコール構造を有するエポキシ樹脂を一段法によって製造する場合に使用する上記のエピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが使用できる。
【0024】
上記の側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂は該エポキシ樹脂の繰返し単位、つまり数平均重合度は2〜1000の範囲で良いが、2〜400の範囲が更に望ましい。
【0025】
側差のアクリロイルオキシ基としては、エポキシ基の側鎖水酸基と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応により得られるものであり該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、各種の飽和又は不飽和のカルボン酸エステルを用いることができる。該側鎖のアクリロイルオキシ基としては、多官能モノマーの原料として有効である点から(メタ)アクリレート由来のものが好ましく、メチルアクリロイルオキシ、エチルアクリロイルオキシ基、プロピルアクリロイルオキシ基、メチルメタクリロイルオキシ基、エチルメタクリロイルオキシ基、プロピルメタクリロイルオキシ基などのアクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0026】
上記の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂の数平均分子量は500〜1000000の範囲で良いが、500〜200000の範囲が更に望ましい。
該側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂において、前駆体の側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂の側鎖水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されるにつれて該側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂の硬化性又は感度が高くなる。前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基の(メタ)アクリロイルオキシ基による置換割合としては、10%以上であれば十分な硬化性が得られるため望ましく、50%以上であることが更に望ましく、80%以上であることが特に望ましい。
【0027】
上記本発明の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は具体的には、下記一般式(i)で表されるものである。
【0028】
【化1】

[式(i)中、Xは芳香族ジヒドロキシ化合物残基、Xは芳香族ジヒドロキシ化合物残基又はジグリシジル化合物残基、Yはアクリロイルオキシ基、Zはグリシジル基又は下記式(ii)
【0029】
【化2】

(式(ii)中、Yはアクリロイルオキシ基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を表す。)
で表される基を表し、nは2〜1000の整数である。]
【0030】
上記式(i)中の芳香族ジヒドロキシ化合物、ジグリシジル化合物残基は、上記した芳香族ジヒドロキシ化合物、ジグリシジル化合物と同様の化合物由来の二価の基を好ましく使用でき、アクリロイルオキシ基は上記に記載したものを好ましく使用できる。
【0031】
以上のとおり、本発明の該側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、側鎖にアクリロイル基を多数有することから高い硬化性や高い感度を有するため、耐熱性、密着性、機械特性などに優れる。従って、本発明の該側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、塗料樹脂、印刷インキ、UV硬化性樹脂、成形樹脂、接着剤、配線基盤のソルダーレジスト用などの材料として有用である。
【0032】
本発明の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、末端のエポキシ基が変性したものであっても変性しないものであっても良い。末端にエポキシ基が残存した側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、側鎖アクリロイル基の優れた硬化特性に加えて、末端エポキシの反応性も有するため、各種応用展開に有用である。
【0033】
本発明の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂は、側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをポリスタノキサン系触媒の存在下でエステル交換反応させ、前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基の少なくとも一部を(メタ)アクリロイルオキシ基で置換することより製造することができる。
【0034】
本発明で用いるエステル交換触媒である上記のポリスタノキサン系触媒は、下記一般式(1)
【0035】
【化3】

(式中、Rはメチル基又はエチル基、Xはそれぞれ独立的にSnと結合する原子上に孤立電子対を有す電子吸引性基を、nは1〜8の整数を表す。)で表されるものであり、優れた触媒活性を発現するものである。本発明では、かかるポリスタノキサン系触媒を用いることにより、エステル交換反応における収率が良好になる。
【0036】
尚、前記一般式(1)中の、Snと結合する原子上に孤立電子対を有す電子吸引性基としては、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子から選択されるハロゲン原子、炭素原子数
1〜4のアシルオキシ基、水酸基、チオール基、チオシアン酸基等が挙げられる。
【0037】
このような一般式(1)で示されるポリスタノキサン系触媒の中でも特に一般式(1)中n=1又は2のものが、抽出時の水への溶解性が良好となる点から好ましく、また、同様に水への溶解性に優れる点からRがメチル基であることが好ましい。
【0038】
更に、一般式(1)中、触媒活性に優れる点から、Xは、ハロゲン原子、アシルオキシ基、又はチオシアン酸基であることが好ましい。
【0039】
従って、本発明で用いるポリスタノキサン系触媒としては、一般式(1)中Rがメチル基であり、かつ、Xがハロゲン原子、アシルオキシ基、又はチオシアン酸基であるジスタノキサン化合物、又はトリスタノキサンが好ましい。
【0040】
かかるジスタノキサン化合物としては、例えば、ジスタノキサン化合物としては、Cl(CHSnOSn(CHCl、Cl(CH)2SnOSn(CHOCOCH、Cl(CHSnOSn(CHOCH、CHOCO(CHSnOSn、(CHOCOCH、Cl(CHSnOSn(CHOCOCHCHCl(CHSnOSn(CHSCN、NCS(CHSnOSn(CHSCNなどが挙げられ、トリスタノキサン化合物としては、Cl(Sn(CHO)Sn(CHCl、Cl(Sn(CHO)Sn(CHOCOCH、Cl(Sn(CHO)Sn(CHOCH、CHOCO(Sn(CHO)Sn(CHOCOCH、Cl(Sn(CHO)Sn(CHOCOCHCHCl(Sn(CHO)Sn(CHSCN、NCS(Sn(CHO)Sn(CHSCNなどが挙げられる。
【0041】
また、ジスタノキサン化合物よりもトリスタノキサン化合物の方が、水中での安定性が良好であり水中で加水分解され難くなる他、生成物中の残存有機錫化合物量を低減できる点から好ましい。
【0042】
更に、前記トリスタノキサン化合物は、エステル交換反応を行う際、下記一般式(2)
【0043】
【化4】

(Rはメチル基又はエチル基、Xは、それぞれ独立的に、Snと結合する原子上に孤立電子対を有す電子吸引性基を表す。)で示される錫化合物と、アルカリ性化合物とを仕込み、エステル交換反応時にその場でトリスタノキサン化合物を形成するように使用してもよい。
【0044】
かかる一般式(2)で示される錫化合物としては、具体的には、ClSn(CH、BrSn(CH、ISn(CH、ClSn(CHOH、ClSn(CHSH、ClSn(C、Cl(CHOCO)Sn(CH、Cl(CHCHOCO)Sn(CH、Cl(NCS)Sn(CH、で示されるものが好ましく、また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カルシウムメトキシド等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩が挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法において、上記トリスタノキサン系触媒を使用する割合としては、原料エポキシ樹脂の量に対して0.01〜10wt%の範囲で良いが、0.1〜2%の範囲が更に望ましい
【0046】
次に、エステル交換反応において前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基と反応させる(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、各種の飽和又は不飽和のカルボン酸エステルを用いることができるが、多官能モノマーの原料として有効である点から(メタ)アクリレートが好ましい。かかる(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートが挙げられる。本発明の製造工程においては、これらの(メタ)アクリレートを用いてもエステル交換反応時において(メタ)アクリレート同士の重合が殆ど生じないという特徴を有する。
【0047】
本発明におけるエステル交換反応は、溶媒の存在下或いは非存在下でも行うことができるが、エステル交換反応は、可逆反応ゆえに生成アルコールを系外に除去することが望ましい。
【0048】
エステル交換反応においては、前記した通り不飽和カルボン酸アルキルエステル、又は不飽和アルコールを用いる場合であっても、単量体の自己重合を生じ難いという特徴を有するが、該重合を完全に抑制するため重合禁止剤を併用してもよい。
【0049】
ここで用いる重合禁止剤は、例えばベンゾキノン、ハイドロキノン、カテコール、ジフェニルベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ナフトキノン、t−ブチルカテコール、t−ブチルフェノール、ジメチル−t−ブチルフェノール、t−ブチルクレゾール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0050】
重合禁止剤の使用量は、反応生成物たるエステル化合物や、原料成分の量に依存するが、反応生成物に対して、通常、質量基準で5〜10000ppm、特に20〜7000ppmの範囲であることが好ましい。
【0051】
上記エステル交換反応は、大気圧で行うことができる。また、反応温度条件は用いる原料や反応溶媒によって適宜選択できるが、20〜150℃であることが好ましい。即ち、
20℃以上の温度条件下ではエステル交換反応における反応速度が飛躍的に向上し、また、150℃以下の温度条件下では副反応を抑制できる。但し、原料として(メタ)アクリレートを用いる場合には不飽和基の重合を抑制する点から70〜120℃であることが好ましい。
【0052】
また、前記カルボン酸アルキルエステルとして(メタ)アクリレートを用いる場合には、エステル交換反応を、酸素含有気体雰囲気下で、或いは反応液面又は反応液中に酸素含有気体を連続的に導入しながら行うことが、(メタ)アクリレートの重合を良好に抑制できる点から好ましい。ここで、酸素含有気体は、空気であっても構わないが、容積基準で酸素含有率が高くなると引火爆発の虞が生じる他、生成物の着色を招く虞も生じるため、酸素含有率5〜13体積%の気体であることが好ましい。かかる酸素含有率5〜13体積%の気体は、例えば、空気又は酸素と、不活性ガスとを当該条件を満たすような割合で混合することにより調整できる。ここで、不活性ガスとしては窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0053】
反応液面又は反応液中に酸素含有気体を連続的に導入する際の流量は、原料(メタ)アクリレート1モルに対して0.1〜30mL/分である。
【0054】
また、反応液中に酸素含有気体を連続的に導入する場合は、反応液中になるべく微細な気泡となるように吹き込むと重合防止効果の効率が高くなる点で好ましい。
【0055】
また、エステル交換反応において、エポキシ樹脂の側鎖水酸基とカルボン酸エステルとの使用割合は、特に制限されるものではないが、カルボン酸エステルの側鎖水酸基に対するモル比として、通常1以上であり、なかでも、カルボン酸エステルの側鎖水酸基に対するモル比で1.1:1から100:1の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明における前記エステル交換反応は、具体的には以下の方法により行うことができる。即ち、先ず所定量の側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂とカルボン酸エステルとを温度計、攪拌機、分留管及び乾燥空気の導入管を備えた反応器に仕込み、次に、適切な量の触媒、重合禁止剤を反応混合物中に添加し、反応混合物を攪拌しながら、上記した適切な温度範囲で、通常は反応系の還流温度まで加熱する方法が挙げられる。ここで、反応混合物を攪拌しながら、反応を完結させる為に、反応中にエステル交換反応により生じるアルコールを過剰のカルボン酸エステル又は反応溶媒との共沸物として、分留管により除去することが望ましい。
【0057】
また、前記カルボン酸エステルとして(メタ)アクリレートを用いる場合には、(メタ)アクリレートを系内に加えながら反応を行うことが重合防止の点から好ましい。
【0058】
本発明の製造方法によると、エポキシ樹脂の側鎖水酸基にトリスタノキサン化合物を触媒として用いた前記エステル交換反応より(メタ)アクリロイル基を導入する時に、原料のエポキシ樹脂の末端エポキシ基は開環反応を受けずエポキシ基として多く残るという特徴を示す。そのエポキシ樹脂の末端エポキシ基は反応性が高いため、種々の反応に有効に用いることができる。本発明の製造方法においては、該エポキシ樹脂の末端エポキシ基は、原料のエポキシ樹脂の末端エポキシ基の50%以上、さらには、末端エポキシ基の80%以上の高率で残存させることができる。
【0059】
反応終了後、該反応液を粗反応生成物として次の水で抽出する工程に供してもよいし、また、過剰の原料カルボン酸エステル又は反応溶媒を反応器内から留去後、その残渣を粗反応生成物としてもよい。或いは、過剰の原料カルボン酸エステル又は反応溶媒を反応器内から留去した後、少量の不活性な溶剤、例えばトルエンやヘプタンを加えて粗反応生成物としてもよい。
【0060】
次に、かかる有機層から生成物たるエステル化合物を単離する方法は、例えば有機溶媒を留去する方法が好ましい。また、前記カルボン酸アルキルエステルとして(メタ)アク
リルレートを用いる場合は、生成物の重合反応を抑制するため、通常減圧下、重合防止剤を添加して実施することが好ましく、この際、酸素含有率5〜13体積%の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0061】
ここで用いる重合防止剤は、前記したものが何れも使用できるが、変性着色が無い点においてメトキノンが特に好ましく用いられる。その添加量は、得られた(メタ)アクリル酸エステルの種類にもよるが、通常有機層を構成する溶液に対して質量基準で5〜5000ppm、好ましくは50〜2500ppmである。
【0062】
製造の時に用いる原料カルボン酸エステルの仕込み量と反応時間を制御することにより、側鎖の置換率を制御することができる。
【0063】
以上のとおり、本願発明の製造方法によれば、側鎖に水酸基を有するエポキシ樹脂の該水酸基を効率よく、容易にアクリロイル化することが可能である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
【0065】
(実施例1)
(触媒のトリスタノキサン化合物の合成)
攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、二塩化ジメチル錫16.48g(75mmol)、水120ml、エタノール45mlを仕込み、攪拌して二塩化ジメチル錫を溶解させた。次いで、攪拌しながらトリエチルアミン10.1g(100mmol)を滴下漏斗から滴下した。この時氷浴を用いて、20℃前後で滴下した後、さらに3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後、白い沈殿物をろ過した。100mlの水、次いで200mlのエタノールで洗浄した後、105℃にて減圧乾燥して12.6gを得た。元素分析結果、錫は64.9%と塩素は13.0%であり、ヘキサメチル−1.5−ジクロロトリスタノキサンの理論値(錫64.8%、塩素12.9%)と測定誤差範囲(0.3%)以内で一致した。
【0066】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂を10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)、アクリル酸エチルを120.0g、触媒として前記のClSn(CHOSn(CHOSn(CHClを0.6g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを1.2g仕込み、空気を導入しながら反応を開始した。95〜98℃の反応温度で生成したエタノールをアクリル酸エチルとの混合溶液で還流除去しながら24時間反応させた。
【0067】
反応終了後、過剰なアクリル酸エチルを減圧蒸留により除去し、残査に少量のトルエンを加えた後、さらに減圧蒸留を行い過剰なアクリル酸エチルを除去した。
【0068】
上記の減圧蒸留を行った反応混合物を300mlのメタノール溶液に加え、生成された白い固形物を分離した。その白い固形物を少量のクロロフォルムを用いて溶解させた後、再び300mlのメタノール溶液に加えて再沈された白い固形物を分離した。次いで40℃にて減圧乾燥して側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂11.6gを得た。
【0069】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行った結果、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での、6.80〜7.18ppmの芳香族水素、5.83〜6.44ppmのアクリロイル基水素、及び2.74、2.90、3.33ppmのエポキシ基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であり、末端エポキシ基の残存率は約90%であった。
【0070】
(実施例2)
(テトラフェニルエタン−ビフェニレン変性エポキシ樹脂の合成)
ジャパネポキシレジン(JER)の商品名エピコート1031S[テトラキス(グリシジルオキシアリル)エタン]9.8g(50m等量、エポキシ等量196g)、4−フェニルフェノール11.9g(70mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.21ml(0.1mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド40mlを、窒素雰囲気下、160℃で4時間反応させた。放冷後、水100ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、70℃で減圧乾燥して、ビフェニレン型の側鎖にヒドロキシ基を有する変性エポキシ化合物を得た。得られた生成物の収量は17.6g、収率は96%であった。
【0071】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したテトラフェニルエタン−ビフェニレン変性エポキシ樹脂10.7gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であった。
【0072】
(実施例3)
(キサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂の合成1)
2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテン1.555g(大日本インキ化学工業(株)社製「EXA7335」、3.2mmol)、4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル0.238g(0.8mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル0.67g(3.6mmol)及びエチルトリフェニルフォスフォニウムアセテートの70%メタノール溶液0.0106g(0.02mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド2.463g中、窒素雰囲気下、160℃に加熱攪拌して、4時間反応させた。放冷後、淡黄色透明の半固形反応液をN,N−ジメチルアセトアミド11.495gで希釈し、氷に滴下した。析出した白色塊状沈殿を吸引濾過、氷水洗浄後、塊状沈殿を水200ml中、強力攪拌しながら30分間沸煮した。放冷後、デカンテーションして得られた沈殿を粉砕し、粉末化した沈殿を水、メタノールで洗浄後、60℃で減圧乾燥して、キサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂を得た。得られたキサンテン−ビフェニレン共重合型線上エポキシ樹脂の収量は2.33g、収率は95%であった。
【0073】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したキサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂14.0gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素とエポキシ基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であり、末端エポキシ基の残存率は約87%であった。
【0074】
(実施例4)
(キサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂の合成2)
2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテン0.972g(大日本インキ化学工業(株)社製「EXA7335」、2mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル0.372g(2mmol)、トリフェニルフォスフィン2.62mg(0.01mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.34gを、窒素雰囲気下、160℃で4時間反応させた。放冷後、N,N−ジメチルアセトアミドで反応液を不揮発分15%に希釈した後、水100ml中に滴下し、得られた白濁分散液を室温で1時間撹拌した。遠心分離後、吸引濾過して得られた沈殿をメタノールで洗浄した後、60℃で減圧乾燥して、キサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂を得た。得られたキサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂の収量は1.033g、収率は77%であった。
【0075】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したキサンテン−ビフェニレン共重合型線状エポキシ樹脂9.7gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であった。
【0076】
(実施例5)
(キサンテン−ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂の合成)
2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテン1.555g(大日本インキ化学工業(株)社製「EXA7335」、3.2mmol)、4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル0.238g(0.8mmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル0.67g(3.6mmol)を、2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−9−フェニルキサンテン1.944g(大日本インキ化学工業(株)社製「EXA7335」、4.0mmol)、ビスフェノールA0.821g(3.6mmol)に変えた以外は、実施例3のエポキシ樹脂の合成と同様に実行し、キサンテン−ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂を得た。得られたキサンテン−ビスフェノールA共重合型線上エポキシ樹脂の収量は2.69g、収率は97%であった。
【0077】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したキサンテン−ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂10.3gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素とエポキシ基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であり、末端エポキシ基の残存率は約85%であった。
【0078】
(実施例6)
(キサンテン−ビフェニレン−ネオペンチレン共重合型線状エポキシ樹脂の合成)
4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル0.238g(0.8mmol)を、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル0.173g(0.8mmol)に変えた以外は、実施例3のエポキシ樹脂の合成と同様に実行し、キサンテン−ビフェニレン−ネオペンチレン共重合型線状エポキシ樹脂を得た。得られたキサンテン−ビフェニレン−ネオペンチレン共重合型線上エポキシ樹脂の収量は2.28g、収率は95%であった。
【0079】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したキサンテン−ビフェニレン−ネオペンチレン共重合型線状エポキシ樹脂8.6gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素とエポキシ基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であり、末端エポキシ基の残存率は約90%であった。
【0080】
(実施例7)
(キサンテン−ビフェニレン−水素添加ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂の合成)
4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル0.238g(0.8mmol)を、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル0.282g(0.8mmol)に変えた以外は、実施例3のエポキシ樹脂の合成と同様に実行し、キサンテン−ビフェニレン−水素添加ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂を得た。得られたキサンテン−ビフェニレン−水素添加ビスフェノールA共重合型線上エポキシ樹脂の収量は2.42g、収率は96%であった。
【0081】
(エポキシ樹脂のエステル交換反応)
攪拌機、空気導入管、温度計、分留カラムを備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂、10.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)を前記で合成したキサンテン−ビフェニレン−水素添加ビスフェノールA共重合型線状エポキシ樹脂9.8gに変えた以外は、実施例1のエポキシ樹脂のエステル交換反応と同様に実行し、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行って実施例1と同様に、エステル交換反応前後のエポキシ樹脂原料と生成物での芳香族水素とアクリロイル基水素とエポキシ基水素の積分比の比較により、エポキシ樹脂の2級の側鎖水酸基へのアクリロイル基の導入率は99%以上であり、末端エポキシ基の残存率は約89%であった。
【0082】
(比較例)
攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応フラスコに、側鎖に2級ヒドロキシ基を有するビスフェノールA型線状エポキシ樹脂を5.0g(大日本インキ化学工業(株)社製「AM−040−P」)、クロロフォルム40ml、ピリジン3.3g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを1.2g仕込み、攪拌して反応混合液を溶解させた。次いで、攪拌しながらアクリル酸クロリド1.92g(21.2mmol)を滴下漏斗から滴下した。この時氷浴を用いて滴下した後、40℃でさらに8時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後、クロロフォルム40mlを加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水溶液で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をメタノールで数回洗浄した後、濾過、40℃で減圧乾燥して、固形物を5.5g得た。
【0083】
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)(CDCl3)測定を行った結果、2.74、2.90、3.33ppm付近のエポキシ基水素のピークは少量確認されたが、5.83〜6.44ppm付近のアクリロイル基水素は、ほとんど確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均重合度が2〜1000の範囲にある側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂の側鎖水酸基の少なくとも一部が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂。
【請求項2】
数平均分子量が500〜1000000の範囲にある請求項1に記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基の置換割合が50%以上である請求項1又は2に記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂。
【請求項4】
前記側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂が、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂。
【請求項5】
末端にエポキシ基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂。
【請求項6】
側鎖水酸基を有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをポリスタノキサン系触媒の存在下でエステル交換反応させ、前記エポキシ樹脂の側鎖水酸基の少なくとも一部が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ポリスタノキサン系触媒が下記式(1)で表される触媒である請求項6に記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂の製造方法。
【化1】

(式中、Rはメチル基又はエチル基、Xはそれぞれ独立的にSnと結合する原子上に孤立電子対を有す電子吸引性基を、nは1〜8の整数を表す。)
【請求項8】
前記ポリスタノキサン系触媒が、エステル交換反応時に、下記一般式(2)
【化2】

(Rはメチル基又はエチル基、Xは、それぞれ独立的に、Snと結合する原子上に孤立電子対を有す電子吸引性基を表す。)
で示される錫化合物と、アルカリ性化合物とから形成されるものである請求項6に記載の側鎖アクリロイル基含有エポキシ樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2006−257138(P2006−257138A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72888(P2005−72888)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】