説明

偽造検出方法、及び画像検出方法

【課題】印刷を防止するとともに偽造を無効にするため、通貨のシールを検出する通貨検出方法。
【解決手段】本方法では、検出器が、識別毎に生成・記録されるテンプレートになる識別マークをオフラインで学習し、検出器によって疑わしいマークを持つサンプル画像を受け取り、疑わしいマークの位置および方向を識別し、テンプレートを回転およびシフトさせ、テンプレートの向きを疑わしいマークに合わせ、テンプレートおよび疑わしいマークを比較し、整合の有無を判断する。マイクロプロセッサは、学習によって複数の識別マークに精通するように、かつ、試験文書内のシールを分析・検出するようにプログラムされている。メモリはマークをテンプレートとして記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電子画像認識技術に関し、更に詳細には複雑な画像においてシールを検出し、認証するシール検出システムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像内のシールパターンを検出できることは、文書認証または偽造防止の目的で複写機またはスキャナに役立つことができる。このような方法を現在の複写または走査技術に導入する試みは、シールパターンを回転またはずれに対して変らない方法で検出する場合に困難がある。特に、パターンはあらゆる方向に向き、画像のあらゆる位置に存在する可能性がある。シールの向きおよび位置は単純な背景内にシールが1つある場合には比較的単純に、推定することができる。しかしながら、複数のシールが若干複雑な画像背景に埋め込まれている場合、重大な障害となる。
従来の偽造防止方法またはパターン検出方法は、以下の特許:特許文献1(米国特許第4,153,897号、Yasudaら、1979年5月8日発行)、特許文献2(米国特許第5,216,724号、Suzukiら、1993年6月1日発行)、特許文献3(米国特許第5,291,243号、Heckmanら、1994年3月1日発行)、及び特許文献4(米国特許第5,533,144号、Fan、1996年7月発行)によって示される。
【0003】
Yasudaらは、未知のパターンと標準パターンとの類似度を識別するパターン認識システムを開示している。まず、第1の限られた範囲全体にわたって未知のパターンおよび標準パターンが互いに相対的にずれているそれぞれのシフト状態(シフトしていない状態を含む)で、類似度を検出する。次に、これらの類似度の最大値を検出する。最大値を与えたシフト状態が相対的なシフトを含まない状態の場合、第1の限られた範囲より大きい第2の範囲全体にわたって未知のパターンおよび標準パターンが互いに相対的にずれているそれぞれのシフト状態で、類似度をさらに検出する。
【0004】
Suzukiらは、紙幣や有価証券等の特定のパターンを正確に識別することができる画像読み取り/画像処理装置を開示している。検出ユニットは元の画像の位置情報を検出し、識別ユニットは元の画像のある部分からパターンデータを抽出し、元の画像がパターンデータと所定のパターンとの類似度に基づいた所定の画像かどうかを識別する。
【0005】
Heckmanらは、複写を検出したり改竄を阻止する機密文書を1パス電子プリンタで複数色に印刷するシステムを開示している。確認符号は2つの混合色ハーフトーンパターンを有し、これらのパターンは互いに反対方向に符号全体にわたって変動するハーフトーン濃度勾配を有するが、背景とは異なる。
【0006】
Fanは、偽造防止検出器と、フォトコピーされるプラテン画像部が1つ以上の紙幣パターンを含むかどうかを識別する方法とを開示している。検出は回転およびずれに対して変わらない方法で行われる。特に、パターンはあらゆる方向に向き、画像のあらゆる位置に存在するとともに、あらゆる複雑な画像背景に埋め込まれている可能性がある。被験画像を1ブロック毎に処理する。各ブロックを検査し、エッジ検出/方向推定手順を適用することによって、各ブロックが「固定点」を含むかどうかを調べる。次に、潜在的な固定点の場合、記憶されているテンプレートに対して整合手順を行い、予め選択した紙幣パターンをいったん検出すると、それらのパターンが有効かどうかを判断する。
【0007】
ここに記載したすべての引用例は、その内容を参照として本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,153,897号
【特許文献2】米国特許第5,216,724号
【特許文献3】米国特許第5,291,243号
【特許文献4】米国特許第5,533,144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
認証を行うためまたは偽造を無効にするため、画像内の識別マーク、例えば、シールや他のパターンを検出する検出システムと方法とを示す。この検出方法は、画像が予め選択された識別マークを1つもしくは数個含むかどうかを識別することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の文書の識別マークを検出する偽造検出方法は、
検出器が、オフラインで、前記識別マーク毎に生成・記録されるテンプレートになる識別マークを学習することであって、前記識別マークの色及び2値平滑化形を前記テンプレートとして生成・記録し、前記識別マークは円形であり、
前記検出器によって疑わしいマークを持つサンプル画像を受け取り、前記テンプレートを使用して前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの位置及び方向を識別することであって、前記識別マークの色と近い色の前記サンプル画像の画素を特定して2値化し該2値化を前記テンプレートでフィルタリングすることにより前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの位置を識別すると共にフィルタリングの強いピークを円の中心として識別し、前記識別した前記疑わしいマークの位置の前記2値の平滑化形及び前記テンプレートの2値平滑化形の円周上のデータサンプリングのピークを比較することにより前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの方向を識別することを含み、
前記データサンプリングのピークが整合するように前記テンプレートを回転およびシフトさせ、前記テンプレートの向きを前記疑わしいマークに合わせ、
前記テンプレートおよび前記疑わしいマークを比較し、整合の有無を判断することを特徴とする。
【0011】
本発明の画像検出方法は、
検出手段に本物の画像を学習させ、前記本物の画像に対して画像パターンを記録することによって、前記本物の画像毎にそれぞれ前記画像パターンの色及び2値平滑化形をテンプレートとして生成・記録し、前記本物の画像を次の検出動作のときに用い、文書内の疑わしい画像パターンを試験し、前記本物の画像に対する類似度を調べることができ、前記本物の画像は円形であり、
試験文書内の疑わしい画像パターンを識別し、前記テンプレートを使用して前記疑わしい画像パターンの位置及び方向を判断することであって、前記画像パターンの色と近い色の前記試験文書内の画素を特定して2値化し該2値化を前記テンプレートでフィルタリングすることにより前記試験文書内の前記疑わしい画像パターンの位置を識別すると共にフィルタリングの強いピークを円の中心として識別し、前記識別された疑わしい画像パターンの位置の前記2値の平滑化形及び前記テンプレートの2値平滑化形の円周上のデータサンプリングのピークを比較することにより前記試験文書内の前記疑わしい画像パターンの方向を識別することを含み、
前記テンプレートを前記疑わしい画像パターンに整合させる前に前記データサンプリングのピークが整合するように前記テンプレートを回転およびシフトさせ、前記テンプレートの向きを前記疑わしい画像パターンに合わせ、
前記テンプレートを前記疑わしい画像パターンと比較することによって、前記テンプレートおよび前記疑わしい画像パターンが整合しているかどうかを判断することを特徴とする。
【0012】
本発明の検出システムは、
(a)学習によって複数の識別マークに精通するように、かつ、試験文書内の関連するマークを分析・検出するようにプログラムされたマイクロプロセッサと、
(b)前記識別マークを記録するメモリとを備えることを特徴とする。
【0013】
まず、検出器は、オフラインで、動作時に検出される関連する識別マークの例を学習する。識別マークは、それぞれ、テンプレートとして記憶される。学習後、マークを検出するため、2値化、位置推定、方向推定およびテンプレート整合からなる4工程の手順を行う。2値化では、入力画像から2値ビットマップを抽出する。入力画像の対応する画素の色が入力画像に整合されるテンプレートの色に近い場合、ビットマップの画素を「1」に設定する。位置推定では、「疑わしいマーク」または潜在的なマークパターンを検出し、それらの位置を推定する。次に、疑わしいマークおよびテンプレートの相対的な方向を評価し、それにより、それらの向きをそろえることができる(この方法は回転およびずれに対して不変である)。最後に、方向推定の後、疑わしいマークおよびテンプレートを比較分析し、疑わしいマークが本物かどうかを確認する。疑わしいマークは画像内のいかなる方向かついかなる位置にも存在しうる。
【0014】
本方法は以下のように要約することができる。
検出器が、オフラインで、識別マーク毎に生成・記録されるテンプレートになる識別マークを学習し、
検出器によって疑わしいマークを持つサンプル画像を受け取り、疑わしいマークの位置および方向を識別し、
テンプレートを回転およびシフトさせ、テンプレートの向きを疑わしいマークに合わせ、
テンプレートおよび疑わしいマークを比較し、整合の有無を判断する。
【0015】
本方法は、学習によって複数のシールに精通するように、かつ、試験文書内の識別マークを分析・検出するようにプログラムされたマイクロプロセッサを備えるシステムで実施することができる。メモリを用いて、関連するマークを記憶する。スキャナを学習/検出時に用い、学習マークと疑わしいマークを持つ画像とを受け取ることができ、スキャナは取り込んだ画像をマイクロプロセッサに送る。しかしながら、学習マークおよび画像のディジタル化表現をネットワークで電子的に受け取ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】どの疑わしいマークの存在も検出するようにシステムが用いる整フィルタの図である。
【図2】微細な解像度でマークを元のビットマップの左側の境界から検出る場合を示す図である(探索を2つのn×nのブロックの左から右に向かって行い、これらのブロックは強いピークの位置からmブロック離れている)。
【図3】データをサンプリングする半径cの円上のグレイマップを示す図である。
【図4】サンプルマークのピークを「A」として示す図である。
【図5】テンプレートのピークを「B」として示す図である。
【図6】本発明の学習/検出方法を実施するために用いるシステムのブロク図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「シール」という語をこの開示の残りの部分で用い、一般に文書認証技術において用いられる識別マークおよび識別パターンを定義する。
【0018】
まず、検出器は、オフラインで、検出されるシールの例を学習する。学習は、当該技術で公知の走査技術を用いるマイクロプロセッサに基づいた検出システムにシールを走査して取り込むことによって行われる。シールをテンプレートに変換し、これらのテンプレートはそれぞれのシールを示す。本発明に特有の学習はシステムがシールの電子表現を受け取った後に行われ、この学習は2つの工程からなる。第1に、シールテンプレートの色を記録する。第2に、平均化フィルタ(検出で用いられるのと同じフィルタ)を用いて、シールテンプレートを平滑化する。その結果、すなわち、シールパターンの2値平滑化形をテンプレートとして記録する。
【0019】
各シールを検出するため、2値化、位置推定、方向推定およびテンプレート整合からなる4工程の手順を行う。2値化では、入力画像から2値ビットマップを抽出する。入力画像の対応する画素の色が検出されるシールの色に近い場合、ビットマップの画素を「1」に設定する。位置推定では、「疑わしいシール」または潜在的なシールを検出し、それらの位置を推定する。次に、疑わしいシールおよびシールの相対的な方向を評価するので、それらの向きを調整することができる。最後に、テンプレート整合では、候補のシールが本当に検出されるべきシールかどうかを確認する。
【0020】
位置推定は2つの解像度で行われる。疑わしいシールの検出およびそれらの大体の位置の推定を行った後、位置を微細に推定する。まず、低解像度のビットマップを作成する。元のビットマップのn×n個の画素をそれぞれ1個の画素に減らし、この画素は、n×n個の画素のうち少なくとも1つが「1」の場合に「1」に設定される。次に、整合フィルタを用いて、どの疑わしいシールの存在も検出する。フィルタのカーネルは図1に示されている。フィルタリングの結果生じた強いピークは、疑わしいシールの中心の大体の位置を示す。いったん強いピークを検出すると、元のビットマップの左右上下の境界を探索する。図2は、微細な解像度で左側の境界を検出する場合を示す。探索を2つのn×nのブロックの左から右に向かって行い、これらのブロックは強いピークの位置からmブロック離れている。ここで、m=r/nおよびrは検出されるシールの半径である。少なくとも1つの「1」画素を含む第1列は、左側の境界を与える。右側、上下の境界も同様に求めることができる。疑わしいシールの中心のx、y座標は、それぞれ、下式のように推定される。
x0=(左側境界+下側境界)/2
y0=(上側境界+下側境界)/2
【0021】
平均化フィルタを用いて、図1に示されるような(x0,y0)を中心とした窓のデータを平滑化し、グレイマップを作成する。実際の窓の大きさは試験マークの直径より若干大きい。グレイマップの高い(低い)画素値は、ビットマップの密度「1」(「0」)の画素に相当する。「1」画素および「0」画素が混在する領域の場合、中間のグレイ値が得られる。このグレイマップを用いて、このグレイマップを検出されるマークから得たグレイマップと比較することによって、方向推定およびテンプレート整合を行う。
【0022】
図3を参照すると、半径cの円上のグレイマップでデータをサンプリングする。データの最高ピーク(または最低の谷)の位置は方向を示す。ピークまたは谷の位置以外の特徴または元のデータの変換を用いても、方向を判定することができる。図4は、サンプルマークのピークを「A」として示す。図5は、テンプレートのピークを「B」として示す。2つのデータ列であるサンプル(図4)およびテンプレート(図5)のピークを比較したとき、回転差が目立つ。向きの調整を行うには、図3に示すように、テンプレートを「RR」の方向に回転させ、テンプレートのピーク「B」をサンプルのピーク「A」に整合させなければならない。
【0023】
いったん疑わしいシールの方向を決定すると、シールビットパターンを平滑化した形のテンプレートを回転させ、疑わしいシールと向きを合わせる。テンプレート整合は、Fanによる米国特許第5,533,144号に示されるように、または、他の標準技術を用いることによって行うことができる。
【0024】
図6を参照すると、検出方法は、学習によって複数のシールに精通するように、かつ、試験文書内のシールを分析・検出するようにプログラムされたマイクロプロセッサ14を備えるシステム11で実施することができる。メモリ13を用いて、検出時にマイクロプロセッサ14とともに協働して関連作業のシールを記憶する。スキャナ12をシステムとともに学習/検出時に用いて、シールとシールを持つ画像(図中「試験画像」と示されている)とを受け取り、シールおよび画像をマイクロプロセッサに送る。しかしながら、シールおよび画像をスキャナから直接送るよりネットワークで電子的に送ってもよい。マイクロプロセッサ14によって処理を行った後、試験結果は偽造試験結果を示す「出力」である。その出力を複写機やスキャナ等の被制御システムによって用い、偽造の疑いがある文書をさらに処理することを中止することができる。尚、マイクロプロセッサの代わりに、当該技術で公知の技術方法による同等のハードウェアを用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
11 システム
12 スキャナ
13 メモリ
14 マイクロプロセッサ
A サンプルマークのピーク
B テンプレートのピーク
c 半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書の識別マークを検出する偽造検出方法において、
検出器が、オフラインで、前記識別マーク毎に生成・記録されるテンプレートになる識別マークを学習することであって、前記識別マークの色及び2値平滑化形を前記テンプレートとして生成・記録し、前記識別マークは円形であり、
前記検出器によって疑わしいマークを持つサンプル画像を受け取り、前記テンプレートを使用して前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの位置及び方向を識別することであって、前記識別マークの色と近い色の前記サンプル画像の画素を特定して2値化し該2値化を前記テンプレートでフィルタリングすることにより前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの位置を識別すると共にフィルタリングの強いピークを円の中心として識別し、前記識別した前記疑わしいマークの位置の前記2値の平滑化形及び前記テンプレートの2値平滑化形の円周上のデータサンプリングのピークを比較することにより前記サンプル画像上の前記疑わしいマークの方向を識別することを含み、
前記データサンプリングのピークが整合するように前記テンプレートを回転およびシフトさせ、前記テンプレートの向きを前記疑わしいマークに合わせ、
前記テンプレートおよび前記疑わしいマークを比較し、整合の有無を判断することを特徴とする偽造検出方法。
【請求項2】
画像検出方法において、
検出手段に本物の画像を学習させ、前記本物の画像に対して画像パターンを記録することによって、前記本物の画像毎にそれぞれ前記画像パターンの色及び2値平滑化形をテンプレートとして生成・記録し、前記本物の画像を次の検出動作のときに用い、文書内の疑わしい画像パターンを試験し、前記本物の画像に対する類似度を調べることができ、前記本物の画像は円形であり、
試験文書内の疑わしい画像パターンを識別し、前記テンプレートを使用して前記疑わしい画像パターンの位置及び方向を判断することであって、前記画像パターンの色と近い色の前記試験文書内の画素を特定して2値化し該2値化を前記テンプレートでフィルタリングすることにより前記試験文書内の前記疑わしい画像パターンの位置を識別すると共にフィルタリングの強いピークを円の中心として識別し、前記識別された疑わしい画像パターンの位置の前記2値の平滑化形及び前記テンプレートの2値平滑化形の円周上のデータサンプリングのピークを比較することにより前記試験文書内の前記疑わしい画像パターンの方向を識別することを含み、
前記テンプレートを前記疑わしい画像パターンに整合させる前に前記データサンプリングのピークが整合するように前記テンプレートを回転およびシフトさせ、前記テンプレートの向きを前記疑わしい画像パターンに合わせ、
前記テンプレートを前記疑わしい画像パターンと比較することによって、前記テンプレートおよび前記疑わしい画像パターンが整合しているかどうかを判断することを特徴とする画像検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−104663(P2009−104663A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27095(P2009−27095)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【分割の表示】特願平10−313150の分割
【原出願日】平成10年11月4日(1998.11.4)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】