説明

偽造防止シール

【課題】誤検出が少なく、かつ、再利用困難な偽造防止シールを提供する。
【解決手段】基材層10と、基材層10の一方の面に積層された再帰反射層20と、基材層10の他方の面に積層された粘着層30と、再帰反射層20上に接着層40を介して設けられた透明シール基材50とを備え、再帰反射層20は、光屈折体層21と、光屈折体層21を表面部が露出した状態に保持する保持層22と、光屈折体層21の表面部と反対側に設けられた反射膜23とからなり、接着層30は、文字、記号、図形又はその組み合わせを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を目的として貼付される偽造防止シール、特に光屈折体が露出したオープンタイプの再帰反射体を使用する真性品判別が可能なシールに関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射体は、光屈折体である例えばガラスビーズに入射した光が再び入射方向へ帰る反射現象を利用したものであり、光屈折体であるガラスビーズ層とその下方に設けられた反射膜とガラスビーズ層及び反射膜を支える保持層とから構成されている。再帰反射体には、ガラスビーズが露出したオープンタイプとガラスビーズが樹脂等で被覆されたクローズタイプとがある。オープンタイプは、クローズタイプに比べ反射性能に優れるが、光屈折体が汚れると輝度が落ちやすく、クローズタイプは、ガラスビーズに直接皮膜を被せているので反射性能に劣る。
【0003】
再帰反射体に強い光を当てるとガラスビーズ層から戻る光により、自然光では見えにくかった保持層上の印刷が浮かび上がって見え、自然光の下での印刷イメージと強い光の下での印刷イメージが異なって見えるという特徴がある。
【0004】
このような再帰反射体を偽造防止に利用することが提案されている。特許文献1には、再帰反射体とホログラムとを組み合わせることにより、偽造を困難にする偽造防止シールが開示されている。また、特許文献2及び3には、剥がして再利用することを不可能にする偽造防止シールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2000−272300号公報
特許文献2:特開2003−29012号公報
特許文献3:WO2009/133876パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の偽造防止シールは、シールを剥がして再利用することができるので、偽装防止には不向きである。
特許文献2に示される偽造防止粘着シールは、保持層を崩壊し易くすることにより、再利用を防止するものである。しかし、アルコール等の有機溶媒を使用して剥離すると、保持層の破壊を伴うことなくシールを剥離することが可能である。特許文献3に開示される偽造防止粘着シールは、光屈折体上の印刷層を剥がれやすくしたものであり、シールを剥がすと印刷層が崩壊することにより、シールの再利用を防止するものである。しかし、特許文献2及び3に開示されるシールを貼付した物品を輸送する際、物品同士の摩擦によりシール上の印刷層又は再帰反射層が崩壊し、真贋の誤検出の原因になりやすいという問題がある。
【0007】
本発明は誤検出が少なく、かつ、再利用困難な偽造防止シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の偽造防止シールは、基材層と基材層の一方の面に積層された再帰反射層と基材層の他方の面に積層された粘着層と再帰反射層上に接着層を介して設けられた透明シール基材とを備え、再帰反射層は、光屈折体層と、光屈折体層をその表面部が露出した状態に保持する保持層と、光屈折体層の表面部と反対側に設けられた反射膜と、からなり、接着層は、文字、記号、図形又はその組み合わせを形成している。
なお、透明シール基材と接着層との接着強度は、光屈折体層と反射膜との接着強度又は反射膜と保持層との接着強度より強いことが好ましい。さらに、接着剤層は透明な層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偽造防止シールは、光屈折体層と透明シール基材が接着層を介して固着しているため、剥がしたときに、光屈折体層が透明シール基材と固着した状態で剥離し、再帰反射層が崩壊してしまう。このため、一度剥離した偽造防止シールは再利用することができない。また、光屈折体層が透明シール基材で覆われているため、輸送の際の摩擦に対しても強く、誤検出を少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図2】上記実施形態1に係る偽造防止シールを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態4に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態5に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施形態6に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図7】上記実施形態6に係る別の偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施形態7に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図9】上記実施形態7に係る別の偽造防止シールを示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態8に係る偽造防止シールを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の偽造防止シールの幾つかの実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1及び2に示すように、第1の実施形態に係る偽造防止シール1は、基材層10と、基材層10の一方の面に積層された再帰反射層20と、基材層10の他方の面に積層され物品に粘着する粘着層30と、再帰反射層20上に接着層40を介して設けられた透明シール基材50とを備え、再帰反射層20は、ガラスビーズ21aが配列された光屈折体層21と、光屈折体層21をその表面部が露出した状態に保持する保持層22と、光屈折体層21と保持層22との間に設けられた反射膜23とからなり、接着層40は、光屈折体層21上で文字、記号、図形又はその組み合わせ(図2ではアルファベット「A」で示す。)を形成している。
【0013】
基材層10は、再帰反射層20を支持する層であり、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルムを用いることができる。後述するが、反射膜23及び保持層22を透明とする場合には、基材層10上に印刷による文字及び/又は意匠を印刷してもよい。なお、粘着層30には剥離紙(図示せず)を設けてもよい。
【0014】
本実施形態では、光屈折体層21が球体のガラスビーズ21aを配列した再帰反射層の例を示したが、光屈折体層は、ガラスビーズに限定されるものではなく、成形光学体が敷き詰められたものであってもよい。なお、再帰反射層は、オープンタイプが好ましい。以下、本実施形態においては、光屈折体層21を球体のガラスビーズ21aとする再帰反射層20を例に説明する。
【0015】
ガラスビーズ21aは、保持層22の表面側に一部が露出するように埋め込まれている。ガラスビーズ21aは入射した光を屈折させるための球で、おおよそ下半分が保持層22に埋没した状態で、残りの上半分が空気中に露出した状態となっている。ガラスビーズ21aの素材は特に限定されるものではなく、BaO−SiO−TiO系ガラス、BaO−ZnO−TiO系ガラスを用いることができる。屈折率は通常用いられる1.9〜2.2の範囲にあるものであれば良い。本実施形態ではガラスビーズ21aの屈折率は1.9前後である。ガラスビーズ21aの粒径は38μm〜50μm又は45μm〜90μmとすることが望ましい。ガラスビーズ21aは、整列状態に互いに密着して敷き詰められることが望ましいが、ガラスビーズ21a同士間が若干離れていても良い。また、偽造防止シール1にオリジナリティを与えるために、一定ピッチで様々な形状を形成するようにガラスビーズ21aが整列していてもよい。
【0016】
保持層22は、ガラスビーズ21aを保持し、基材層10とガラスビーズ21aを接着して保持するフィルム状の基材である。保持層22の素材は、ガラスビーズ21aとの接着性が良い樹脂、例えばポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂などの熱可塑性樹脂を適用することが好ましい。後述するが、反射膜23を透明とする場合には、基材層10上に文字及び/又は意匠を印刷してもよい。
【0017】
反射膜23は、ガラスビーズ21aの下側表面側、すなわち、ガラスビーズ21aが露出した面の反対側に沿って設けられ、ガラスビーズ21aへ入射した光を反射する層である。反射膜23は無色又は有色の薄い膜であり、透明な膜が好ましいが、アルミ金属箔や光の干渉作用を利用した干渉色を呈する膜としてもよい。反射膜23は、保持層22上への印刷又は金属蒸着により形成することができる。印刷模様は無地であってもよく、文字や図形等の情報を含んだものとしてもよい。
【0018】
保持層22への反射膜23の印刷は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法、又はこれらの複数の印刷法を組み合わせて行うことができる。
【0019】
インキは水溶性インキが好ましい。使用するインキの印刷適正に応じ、希釈溶剤及び/又はバインダーを用いてもよい。バインダーとしては、水溶性ポリマーやエマルジョン樹脂が挙げられる。水溶性ポリマーとして例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウムを使用することができ、エマルジョン樹脂としては、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、アクリルエマルジョン、アクリルスチレンエマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョンを用いることができる。
【0020】
反射膜23を干渉色印刷とする場合には、酸化チタンや酸化鉄、マイカ等の鱗片を含有する顔料を高分子ポリマー、着色剤、溶剤等と調合したインキを用いればよい。干渉色印刷用のインキはパールインキが代表的な例である。
【0021】
粘着層30は、基材層10の再帰反射層20とは異なる面に設けられており、粘着性のある接着剤を用いて形成することが好ましい。例えば、ポリエステル系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、酸化ビニル系粘着剤を挙げることができる。なお、粘着層30の下面には剥離紙(図示せず)を積層し、使用前に剥離紙を剥がして粘着層30を露出する態様としてもよい。
【0022】
接着層40は、露出した光屈折体層21の表面の少なくとも一部に設けられて文字、記号、図形又はその組み合わせを表すように形成されており、かつ、光屈折体層21と透明シール基材50とを接着している。
【0023】
接着層40は、接着剤を用い、好ましくは、接着力の強い接着剤で層が形成されている。層形成は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法、又はこれらの複数の印刷法を組み合わせた方法により行うことができる。
【0024】
接着層40は透明であることが望ましいが、半透明状に着色されていてもよい。ただし、この場合、反射膜23の印刷と区別がつかないように、反射膜23の色と同じくすることが好ましい。
【0025】
透明シール基材50は、接着層40に積層されており、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等の透明フィルムを用いることができる。
【0026】
すなわち、光屈折体層21と反射膜23との接着強度又は反射膜23と保持層22との接着強度のいずれかは、透明シール基材50と接着層40の接着強度、接着層40と光屈折体層21の接着強度、基材層10と保持層22間の接着強度及び基材層10と粘着層30の接着強度のいずれの層間の接着強度よりも弱い。
【0027】
光屈折体層21と反射膜23との接着強度又は反射膜23と保持層22との接着強度は好ましくは、6N/25mm以上14N/25mm以下の範囲であり、透明シール基材50と接着層40の接着強度、接着層40と光屈折体層22の接着強度、基材層10と保持層22間の接着強度又は基材層10と粘着層30の接着強度は、12N/25mm以上15N/25mm以下の範囲であり、好ましくは8N/25mm以上である。
【0028】
本実施形態の偽造防止シール1は、以下のようにして製造することができる。
ステップ1:樹脂剥離フィルム上面に、エマルジョン樹脂を塗布し、その上にガラスビーズ21aを散布し、半球程度が露出するようにして乾燥する。
ステップ2:露出したガラスビーズ21aの表面に印刷又は金属蒸着により反射膜23を形成する。
ステップ3:反射膜23上に保持層22を形成する。なお、基材層10と保持層22は接着材又は粘着剤を介して形成してもよい。
ステップ4:保持層22上に基材層10を積層し、基材層10上に粘着層30を形成する。
ステップ5:樹脂剥離フィルムとエマルジョン樹脂をガラスビーズ21aから剥離して、エマルジョン樹脂に埋没していたガラスビーズ21aの半球を露出させる。
ステップ6:露出したガラスビーズ21aの表面上にスクリーン印刷法により文字情報又は図形を表す接着層40を形成し、さらに、接着層40上に透明シール基材50を積層する。
【0029】
上記構成によれば、接着層40と光屈折体21との接着が強いことと、透明シール基材50が再帰反射層20を覆っているため、偽造防止シールを添付した物品が擦れ合ったとしても、再帰反射層が崩壊することがない。
【0030】
また、反射膜を透明性のある素材とした場合は、自然光の下では、基材層10又は粘着層30に印刷された色、文字又は図形等(図示せず)だけが見えるが、接着層で形成された文字又は図形(図2で「A」で示す。)は見えない。しかし、偽造防止シール1に強い光を当てると、接着層40が形成する文字又は図形が黒ずんで浮かび上がって見える。これは光が接着層40によって乱反射されるためである。しかし、再帰反射層20が崩壊すると、強い光の下での再帰反射が起こらないため、偽造偽装を検出することが容易になる。
【0031】
例えば、偽造防止シール1を真正物品から剥がして偽物品に貼り直しを行おうとすると、シールに加えられた上向きの力により再帰反射層20が崩壊する。真正物品に対して、万一、偽造、変造、偽装などがなされた疑いがある場合、物品に貼着した偽造防止シールに強い光を当てて観察することで、不正に物品の開閉や取り換えがなされたかどうかの状況確認ができる。
【0032】
また、アルコール等の有機溶媒を使用して粘着層30の接着力を弱めて剥離しようとすると、接着層40が溶解し、文字又は図形が崩れてしまうので、強い光を照射した場合、文字又は図形が元の状態で浮かび上がって見えなくなる。したがって、一回剥離したものを元通りに再生することは困難であり、偽造防止シールの再利用を防止することができる。
【0033】
実施形態1に示すような偽造防止シールは、真正であることを識別する目的でCPU又はROM等の制御基板や制御基板ケース等の適宜の個所に貼り付けられる。しかし、上述したように、溶剤を用いて偽造防止シールを剥がし、剥離したシールを再利用する不正が行われることがある。
以下に、再利用を防止するための他の偽造防止シールの実施形態を示す。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態の偽造防止シールは図3に示すように、第一基材71と、第一基材71の少なくとも一部に第二粘着層74を介して積層された第二基材72と、第一基材71の第二粘着層74と反対の面に設けられた第一粘着層73とからなる。第一粘着層73はCPU又はROM等の制御基板や制御基板ケース等の被着体に貼付するためのものである。なお、第一粘着層73の下面には使用前に剥がして第一粘着層73を露出する剥離紙(図示せず)をさらに張り付けてもよい。
【0035】
第一基材71及び第二基材72は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルム又は紙を用いることができる。
【0036】
第一粘着層73及び第二粘着層74は、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、アクリル系粘着剤及びウレタン系粘着剤等から選ばれる粘着剤を用いて形成される。
【0037】
偽造防止シールは、第一基材71と第二基材72とが第二粘着層74を介して積層されているため、石油系溶剤等の粘着剤の溶剤を用い、被着体から剥がした場合には、第一粘着層73及び第二粘着層74の両方の接着性が弱められることになり、第一基材71と第二基材72との接着を維持したまま剥離することは困難である。このため、剥離された偽造防止シールには不正な剥ぎ取りの形跡が残り、不正の有無を判断することが可能になる。
【0038】
(実施形態3)
本実施形態3の偽造防止シールは、第一基材71と、第一基材71の少なくとも一部に第二粘着層74を介して積層された第二基材72と、第一基材71の第二粘着層74と反対の面に設けられた第一粘着層73とからなり、第一粘着層73と被着体との接着強度が、第一基材71と第二基材72との接着強度より強いことを特徴とする。実施形態2とは、第一粘着層73と被着体との接着強度と、第一基材71と第二基材72との接着強度とが相違する点にある。
【0039】
第一基材71を被着体から剥離した場合には、第二基材72のほうが第一基材71より剥離されやすいため、第一基材71と第二基材72とを固着した状態で剥離することは困難である。仮に、石油系溶剤等の粘着剤の溶剤を用い、被着体から剥がした場合には、第一粘着層73及び第二粘着層74の両方の接着性が弱められることになり、第一基材71と第二基材72との接着を維持したまま剥離することは困難である。このため、剥離された偽造防止シールには不正な剥ぎ取りの形跡が残り、不正の有無を判断することが可能になる。
【0040】
(実施形態4)
本実施形態4の偽造防止シールは、図4に示すように、第一基材71’と、第一基材71’の少なくとも一部に第二粘着層74を介して積層された第二基材72と、第一基材71’の第二粘着層74と反対の面に設けられた第一粘着層73とからなり、第一基材71’には、第一粘着層73の接着性を弱める溶剤に反応して変色する薬品が含まれている。第一基材71’が、第一粘着層73の接着性を弱める溶剤に反応して変色する薬品を含む点で実施形態2と異なる。
【0041】
第一基材71’、第二基材72、第一粘着層73及び第二粘着層74の素材は、実施形態2に示したものを用いることができる。
【0042】
第一粘着層73の接着性を弱める溶剤に反応して変色する薬品とは、例えば、ロイコ染料を挙げることができる。
【0043】
第一基材71’には、第一粘着層73の接着性を弱める溶剤に反応して変色する薬品が含まれているので、第一粘着層73の接着性を弱める溶剤を用い、被着体から剥がすと、再利用された偽造防止シールには不正の痕跡が残ることになる。
【0044】
(実施形態5)
本実施形態5の偽造防止シールは、図5に示すように、第一基材71と、第一基材71の一方の面に積層された第一粘着層73と、第一基材71の他方の面の少なくとも一部に設けられた第一印刷層75と、第一印刷層75上に第二粘着層74を介して設けられた第二基材72と、第二基材72上の少なくとも一部に設けられた第二印刷層76とからなっている。
【0045】
第一基材71、第一粘着層73及び第二粘着層74の素材は、実施形態2に示したものを用いることができる。
【0046】
第二基材72は、透明性のある素材であり、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルムである。
【0047】
第一印刷層75及び第二印刷層76は、文字、図形又はその組み合わせであることが好ましい。例えば、被着体の製造会社名、商標、製造機種名、管理番号、製造番号又は各種コード番号等である。また、第一印刷層75と第二印刷層76の文字、図形又はその組み合わせは、それぞれ異なっていることが好ましい。
【0048】
さらに、第二粘着層74の接着強度は第一粘着層73の接着強度より弱いことが好ましい。
【0049】
本実施形態5の偽造防止シールには、第一印刷層75及び第二印刷層76には数多くの組み合わせからなる情報を含ませることができるので、偽造等の不正行為を抑制することが可能である。また、被着体に貼付された本実施形態5の偽造防止シールを再利用するためには、第一印刷層75を崩壊しないように剥離する必要がある。しかし、第一印刷層75が第一基材71と第二基材72の間に存在するため、仮に、石油系溶剤等の粘着剤の溶剤を用い、被着体から剥がしたとしても、第一印刷層を崩壊しないように第一基材71と第二基材72とを接着した状態で剥離することは困難である。
【0050】
たとえ、第一基材71又は第二基材72のどちらかを痕跡が残らないように剥離したとしても、第一印刷層75と第二印刷層76との組み合わせを同じくして再び貼付する必要があり不正行為の抑制に繋がる。
【0051】
また、第二粘着層74の接着強度が第一粘着層73の接着強度より弱い場合には、第一印刷層75が崩壊しやすくなるため、さらに第一基材71と第二基材72とを接着した状態で剥離することは困難になる。
【0052】
(実施形態6)
【0053】
図6に示すように、本実施形態6の偽造防止シールは、第一基材71と、第一基材71の少なくとも一部に第二粘着層74を介して積層された第二基材72と、第一基材71の第二粘着層74と反対の面に設けられた第一粘着層73とからなり、第一基材71’’の破壊強度が、第一粘着層73の接着強度及び第二粘着層74の接着強度より弱いことを特徴とする。
【0054】
第一基材71’’の破壊強度とは、材質の脆さを意味し、第一粘着層73の接着強度及び第二粘着層74の接着強度より弱く、シールが被着体から剥離されると、第一基材71’’が崩壊してしまうものである。第一基材71’’は、例えば、紙又は不織布のように素材の凝集力が弱いものである。第二基材72、第一粘着層73及び第二粘着層74の素材は、実施形態2に示したものを用いることができる。
【0055】
本実施形態6の偽造防止シールは、第一基材71’’の破壊強度が第一粘着層73の接着強度及び第二粘着層74の接着強度より弱いため、シールを剥離すると第一基材71’’が破壊してしまい再利用できなくなる。
【0056】
また、被着体がケースである場合には、被着体から崩壊した第一基材71’’の残片を取り除く必要があり、煩雑であるために、不正行為を抑制することに繋がる。
【0057】
なお、本実施形態6の偽造防止シールの第二粘着層74は第一基材71の上面全域で接着していてもよい。また、図7に示すように、1つの面に第一粘着層73を有する第一基材71と、1つの面に第二粘着層74を有する第二基材72とからなり、第二基材72及び第二粘着層74は、第一粘着層73とは反対側の面から第一基材71の全面を覆って積層され、第二基材72及び第二粘着層74の少なくとも一端が第一基材71の端部より長くなっていてもよい。
この場合、第二基材72の一端部は、第二粘着層74を介して被着体と接着することになる。
【0058】
(実施形態7)
本実施形態7の偽造防止シールは、図8に示すように、第一基材71と、第一基材71の一方の面に積層された第一粘着層73と、第一基材71の他方の面の少なくとも一部に設けられた第一印刷層75と、第二粘着層74を介して第一基材71上に設けられた第二基材72とからなり、第一印刷層75と第一基材71との接着強度が第一印刷層75と第二粘着層74との接着強度より弱いことを特徴とする。
【0059】
第一基材71、第二基材72、第一粘着層73及び第二粘着層74の素材は、実施形態2に示したものを用いることができる。
【0060】
第一印刷層75は、文字、図形又はその組み合わせのように第一基材71上の一部に形成されていてもよく、又は第一基材71の第一粘着層73の反対側の全面を覆って形成されていてもよい。
【0061】
図8では、第二粘着層74は第一印刷層75上に設けられているが、第一印刷層75を覆って形成されていてもよい。
【0062】
本実施形態7の偽造防止シールにおいて、第一印刷層75と第一基材71との接着強度が、第一印刷層75と第二粘着層74との接着強度より弱いため、シールを被着体より剥離する場合、第一印刷層75は第二基材72に接着した状態で崩壊しやすくなる。また、第一印刷層75の一部が第一基材71に残存することも生ずる。したがって、第二基材72に重ねて元の状態に再現するように貼り直すことは困難となり再利用不能となる。
【0063】
また、第一基材71を紙又は不織布としてもよい。この場合、第一印刷層75及び第一基材71が剥離の際に崩壊しやすくなるので好ましい。
【0064】
さらに、第二基材72及び第二粘着層74は、第一印刷層75の全面を覆って積層され、第二基材72及び第二粘着層74の少なくとも一端が第一印刷層75の端部より長くなっていてもよい。例えば、本実施形態7の偽造防止シールを図9に示すように、第二基材72の両端部及び第二粘着層74の両端部を第一基材71より長くし第一印刷層75の全面を覆い、かつ、被着体と接着するように構成してもよい。
【0065】
(実施形態8)
本実施形態8の偽造防止シールは、図10に示すように、第一基材71と、第一基材71の一端部において第一基材71と重ならないように第一基材71を覆って第二粘着層74を介して設けられた第二基材72と、第二粘着層74と反対側の面に設けられた第一粘着層73とからなる。なお、第一基材71の他端部側の第二基材72は、第一基材71の他端部から延びて設けられていることが好ましい。
【0066】
第一基材71は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルム又は紙を用いることができる。
【0067】
第二基材72は、透明であることが望ましく、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルムを用いることができる。
【0068】
第一粘着層73及び第二粘着層74は、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、アクリル系粘着剤及びウレタン系粘着剤等から選ばれる粘着剤を用いて形成される。
【0069】
本実施形態8の偽造防止シールは、第一基材71の一端部において、第二基材72と段差があり、ここから剥離されやすいので、特にこの端部において剥離の形跡が残りやすく、不正の検出が容易である。仮に石油系溶剤等を使用して第一基材71と第二基材72とをうまく剥離できたとしても、段差の位置関係を正確に復元して貼り直すことは難しいため、不正を抑制することが可能である。
【0070】
また、第二基材72が透明である場合には、第一基材71の表面の状態を観察することが容易であり、剥離して再利用された場合には、表面の状態の変化を検出することができる。
以下、具体的な実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0071】
PET剥離フィルム上面に、ポリエチレンエマルジョン樹脂を塗布し、その上にガラスビーズを散布し、半球が露出するようにして乾燥した。次に、露出したガラスビーズの上面にアルミニウムを蒸着させ、蒸着面にポリエチレン樹脂を塗布し保持層を形成した。さらに、保持層上に薄いPET基材を積層した後、PET基材上に強粘着タイプの粘着剤PW(リンテック株式会社製)で粘着層を形成した。ガラスビーズとポリエチレンエマルジョン樹脂の間を剥いで、PET剥離フィルムをガラスビーズから剥離して再帰反射体とした。露出したガラスビーズ表面上にスクリーン印刷法により粘着剤PA−T1(リンテック株式会社製)で透明な接着層を形成して文字情報とし、接着層上に透明PETフィルムを積層して偽造防止シールを製造した。
【0072】
得られた偽造防止シールを直径1cmの円形に切り取り、粘着層を介して箱体に貼付した。箱体を重ね、貼付された偽造防止シールを擦っても、偽造防止シールが崩壊することはなかった。
【0073】
箱体から偽造防止シールを剥がし、再び箱体に貼り直す偽造防止シールの再利用を試みた。まず、溶剤をシールに浸み込ませて偽造防止シールの剥離を試みたところ、粘着層が溶解し、箱体から基材層が剥離するとともに、さらに、接着層も溶解し透明PETフィルムも剥離した。
【0074】
剥離された偽造防止シールに直進光を照射してシールを観察したところ、接着層の溶解により文字情報が破壊されているため、接着層で形成された文字情報をきちんと読み取ることができない領域が部分的に存在した。
【0075】
さらに、剥離した偽造防止シールを修正して再利用することを試みた。粘着剤PWを用いて透明PETフィルムをガラスビーズ上に積層し、基材層の裏面に粘着層を形成することで偽造防止シールを再生し、箱体に再度貼り付けた。自然光の下では再利用したものであることが明確に見分けられなかった。しかし、再貼付した偽造防止シールに直進光を照射してシールを観察したところ、破壊された文字情報を再生できていないため、部分的にしか文字情報を読み取ることができないものとなっていた。すなわち、自然光の下では、再使用の有無の判断が困難でも、文字情報の再生が困難であるため、直進光を照射すれば、再利用していることを発見することが可能となり、容易に偽造防止シールの真贋を判断することができる。
【0076】
また、溶剤を使用せず、箱体から偽造防止シールを剥ぎ取ったところ、大まかに、文字情報の接着層が形成されたガラスビーズは透明PETフィルムに付着した状態で、一方、接着層が形成されていないガラスビーズは基材層に付着した状態で剥離した。箱体に残ったシールに直進光を照射して観察したところ、部分的にしか文字情報を読み取れなかった。
【0077】
さらに、箱体に残ったシールを修理して偽造防止シールを再生することを試みた。粘着剤PWを用いて透明PETフィルムを箱体に残ったシール上に貼り付けた。再生した偽造防止シールに直進光を照射してシールを観察したところ、破壊された文字情報が完全に修理されていないため、部分的にしか文字情報を読み取ることができなかった。すなわち、自然光の下では再生の有無の判断が困難でも、文字情報の再生が困難であるため、直進光を照射すれば、再生されたことを発見することが可能となり、容易に偽造防止シールの真贋を判断することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:偽造防止シール
10:基材層
20:再帰反射層
21:光屈折体層
21a:ガラスビーズ
22:保持層
23:反射膜
30:粘着層
40:接着層
50:透明シール基材
71:第一基材
72:第二基材
73:第一粘着層
74:第二粘着層
75:第一印刷層
76:第二印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
該基材層の一方の面に積層された再帰反射層と、
上記基材層の他方の面に積層された粘着層と、
上記再帰反射層上に接着層を介して設けられた透明シール基材と、を備え、
上記再帰反射層は、光屈折体層と、該光屈折体層をその表面部が露出した状態に保持する保持層と、上記光屈折体層の表面部と反対側に設けられた反射膜と、からなり、
上記接着層は、文字、記号、図形又はその組み合わせを形成している、偽造防止シール。
【請求項2】
前記光屈折体層と前記反射膜との接着強度又は前記反射膜と前記保持層との接着強度が、他の層間の接着強度より弱い、請求項1記載の偽造防止シール。
【請求項3】
前記接着剤層が透明な層である、請求項1又は2記載の偽造防止シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98568(P2012−98568A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247041(P2010−247041)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)