説明

偽造防止印刷物

【課題】 偽造や複製を容易に行うことを防止する印刷物およびその形成方法を提供する。
【解決手段】 基材10の表面に任意の文字や図柄等を有色インクによって印刷することにより下地層20を形成し、該下地層20の表面に透明インクによって凹凸模様を形成し、その凹凸模様から成る表面には凹凸万線が形成されるように透明層30を形成することにより、印刷物を得る。表面に微細な平行線模様である凹凸万線が存在することにより、観察する方向によって光沢が多様に変化する。下地層20に描かれた文字や図柄は透明インクから成る透明層30を透過して確実に視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易な偽造や複製を防止することができる各種印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置やカラー複写機等の性能の向上に伴い、印刷物の偽造、改ざん、複製等がより一層精密に、且つ、簡易に行えるようになってきた。
【0003】
そこで、印刷物の偽造を防止することを目的として、これまでに種々の偽造印刷防止技術が考案されてきた。そのような技術の一例として、特許文献1に記載の真偽判別可能な積層体がある。この積層体は、基材の色相と近似する色相のインクや透明インク等を用いてインキ盛りのある凹凸模様を印刷した第1の層と、接着剤から成る第2の層と、光透過性基材に万線パターン又は網点パターンを印刷した第3の層を順次積層することによって形成される。観察方向に応じて凹凸模様が視認可能又は不能となることにより、容易な偽造が防止される。しかし、このような積層体は使用目的が限定されてしまううえ、製造するのに手間や費用が掛かってしまう。
【0004】
偽造防止技術の他の例として特許文献2には、包装材等の偽造又は改ざんを防止する技術が記載されている。これは、低いコストと優れた操作性という利点を有するフレキソ印刷を利用して、細密な模様等を包装材又はラベル等の表面に印刷することにより偽造を防止する技術である。これは比較的低コストで簡易に実現可能な技術であるものの、模様が細密に形成されている点にしか特徴がなく、十分な偽造防止効果を得られるわけではない。
【0005】
【特許文献1】特開2003-305794号公報
【特許文献2】特開2004-90421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来例に限らず、印刷物において高い偽造防止効果を得るためには、複雑な構成の印刷を行う必要がある傾向にあるが、その分手間やコストが掛かってしまうという問題があった。そこで、本発明が解決しようとする課題は、比較的簡易な構成にもかかわらず、高い偽造防止効果を有する印刷物を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る印刷物は、基材と、基材上に任意の文字や図柄等を有色インクにより印刷することにより形成される下地層と、該下地層上に凹凸模様を透明インクにより印刷することにより形成され、該凹凸模様の表面に凹凸万線を有する透明層とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る印刷物によれば、文字や図柄等が印刷された下地層の表面に形成された透明層に凹凸模様が形成され、その凹凸模様の表面には微細な凹凸万線が形成されているため、観察する角度によって透明層の光沢感が微妙に変化する。この光沢感により高級感や興趣が付加されるうえ、透明層の存在により下地層の表面が保護される。透明層は透明インクから成るので、下地層に印刷された文字や図柄等は確実に視認することが可能である。このような透明層は複写しても再現不可能であるため、偽造を行うことは困難である。一方、その構成は通常の印刷によって形成される下地層と透明層の二層構造であるため、相応の設備を有していれば製造は極めて簡単であり、製造コストも非常に低く抑えることができる。紫外線硬化インクを用いてフレキソ印刷を行うならば、インライン加工によって各工程を一括した製造を行うことが可能となり、工業的にも十分な製造速度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る印刷物は、断面図である図1に示すように、基材10の表面に下地層20が印刷され、さらにその表面に透明層30が印刷されることにより形成される。なお、基材10は複数の層から形成されていてもよい。
【0010】
下地層20は、基材10の表面に有色インクによって任意の文字や図形が印刷されることにより形成される。有色インクの種類は特に限定されないが、硬化時間を短縮するために紫外線硬化インク(UVインク)を好適に用いることができる。後述する透明層30に設けられる凹凸万線による光沢感を十分に得るためには、なるべく艶を有するインクを使用することが望ましく、且つ、色が均一の部分(いわゆるベタ)の面積がなるべく広い方がよい。下地層20の表面には透明層30が形成されるので、下地層20の表面は極力凹凸が存在しない一様な面となることが望ましいが、そのためには、文字や図柄以外の背景部分も有色インクによって印刷を行うのがよい。また、基材10が紙等の材料から成る場合にはインクが吸収されてしまい、艶感が低下することがあるが、このことを防止するためには、下地層20が所定の厚みを有するようにインクの量を調節すればよい。白等の明度が高い色を使用する場合には、凹凸万線が目立たなくなり、光沢感が低下してしまうため、パールインクを用いることが望ましい。
【0011】
透明層30は、下地層20の表面上にさらに透明インクが印刷されることにより形成される。透明インクは所定の厚みを有するように印刷され、任意の形状の凹凸模様が形成される。凸部31および凹部32の高さは任意に設定することが可能である。透明インクは、一般になるべく光透過性が高いものを使用するが、光透過性を有しており、下地層20に印刷された文字や模様等を視認することが可能な淡色インクを用いても構わない。透明インクも有色インクと同様にUVインクを用いることにより、紫外線照射により硬化するので、製造所要時間を短時間化させることができる。
【0012】
透明層30の表面にはさらに、微細な平行線模様である凹凸万線が形成される。凹凸万線は透明層30の表面全面を覆う必要はなく、一部に凹凸万線を形成することなく、平滑な部分を残しておいても構わない。凹凸万線の間隔が変化すると光沢感も変化するため、その間隔は適宜に設定すればよいが、本発明者が実験を行ったところによると、200〜400lpi程度とすると光沢感の視認度が高く好適であった。凹凸万線の向きは、特定の一方向でもよいが、凹凸模様等に合わせて種々の向きを有するように凹凸万線を形成するならば、入射・反射光の向きによって、すなわち観察方向によって凹凸万線の光沢が多様に変化するので、より一層偽造防止効果が高まるうえ、興趣を付加することもできる。
【0013】
本発明に係る印刷物を形成する印刷方法としては各種の印刷方法を用いることができるが、下地層20は艶感の低下を防止するために所定の厚みを有するように形成されることが望ましく、透明層30は立体的な凹凸模様を形成する必要があるため、インクを盛るように印刷することが可能なフレキソ印刷やシルクスクリーン印刷等が好適である。本発明においてはインライン加工が可能であり、印刷速度がより速いフレキソ印刷がより好適である。本発明において使用可能なフレキソ印刷機の一部の模式図を図4に示す。図4には下地層模様印刷工程40a、下地層背景印刷工程40b、透明層印刷工程40cの三工程が示されているが、さらに多くの工程を設けることももちろん可能である。ここでは下地層模様印刷工程40aについてのみ説明する。インクパン41に貯留されたUVインクがアニロックスロール42によってすくい取られるとともに一定量に調節され版43の表面に付着し、矢印方向に一定速度で送られる基板10(または各層)の表面に印刷される。紫外線ランプ50を照射することにより直ちにインクが硬化し、次の工程40bに連続的に進むことができる。なお、フレキソ印刷を行う場合には、供給されるインクの量、すなわち下地層および透明層の厚みを十分なものとするために、線数が100〜400のアニロックスロールを用いるのが好適である。
【0014】
版は従来用いられているものを利用することが可能であるが、樹脂板またはゴム板等をレーザ加工によって成形することにより版を作成するならば、細密な形状を復元可能に形成することができるうえ、薬品を使用しないため無公害であるというメリットもある。
【実施例】
【0015】
以下、図2および図3を参照しつつ、本発明に係る印刷物の一実施形態について説明する。図2は図3(b)、(c)のA-A断面図である。
【0016】
印刷にはフレキソ印刷機を用いた。紙から成る基材10の表面にUV有色インクによって模様21および、UVパールホワイトによって模様21以外の部分である背景22を印刷することにより、下地層20を形成した(図3(a))。下地層20に紫外線を照射することにより、インクを直ちに硬化させた。
【0017】
続いて、図3(b)に示すように、下地層20の表面にUV透明インクを印刷することにより透明層30を形成した。透明層30には凸部が複数の星形から成る凹凸模様を形成した。透明層30にも紫外線を照射することによりインクを直ちに硬化させ、印刷物1を得た。透明層30の表面において、凹部32には上下方向の凹凸万線、内部に一つ置きに複数配置された星形31aには45゜傾斜した凹凸万線、他の複数の星形31bには-45゜傾斜した凹凸万線が形成されており、周囲に適宜配置された複数の星形31cは万線が形成されない平坦表面である。このように、凹凸模様によって星形が形成され、その表面に複数の方向を有する凹凸万線および平坦表面が組み合わされることにより、凹凸万線に入射・反射する光を観察したときに、光沢が様々に変化し、高級感や風趣が醸し出される。
【0018】
透明層30は、上記のような模様および光沢感を有しているものの、光透過性を十分に有しているので、下地層20に印刷された模様21は透明層30を透過してはっきりと視認することができる(図3(c))。
【0019】
本発明に係る印刷物は上記実施例に限らず、適宜変更可能であることは言うまでもない。透明層に形成する様々な凹凸模様および凹凸万線の向きを組み合わせることにより、多種多様の形状の透明層を有する印刷物を得ることができる。また、凹凸万線は直線に限らず、曲線であっても構わない。
【0020】
本発明の印刷物は、偽造や複製を防止したい金券、入場券等の有価印刷物のみならず、印刷物に高級感や風趣を付与することを目的として、各種のカードや名刺等の各種印刷物にも適用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る印刷物の断面図。
【図2】本発明の一実施例に係る印刷物の断面図。
【図3】本発明の一実施例に係る印刷物の(a)下地層(b)透明層(c)全体の平面図。
【図4】本発明の一実施例に係るフレキソ印刷機の模式図。
【符号の説明】
【0022】
1…印刷物
10…基材
20…下地層
21…模様
30…透明層
31…凸部
32…凹部
41…インクパン
42…アニロックスロール
43…版
44…圧胴
50…紫外線ランプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
基材上に任意の文字や図柄等を有色インクにより印刷することにより形成される下地層と、
該下地層上に凹凸模様を透明インクにより印刷することにより形成され、該凹凸模様の表面に凹凸万線を有する透明層と、
から成ることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
上記下地層および上記透明層がフレキソ印刷によって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
フレキソ印刷により、
基材上に任意の文字や図柄等を有色インクを用いて下地層を印刷形成し、
該下地層上に、表面に凹凸万線を有する凹凸模様を透明インクを用いて透明層を印刷形成する
ことを特徴とする印刷物の形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−110782(P2006−110782A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298537(P2004−298537)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(504382143)三共製版株式会社 (1)
【Fターム(参考)】