説明

偽造防止用紙及びその作製方法

【課題】 基材を真上から視認した時の潜像画像に対して、隠蔽性を向上した偽造防止用紙を提供する。
【解決手段】 基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、潜像体は、規則的に配列された複数の直線から成る背景領域と、背景領域の直線と等間隔で、かつ、背景領域に垂直に規則的に配置された複数の直線から成る潜像領域と、背景領域の直線の一部と、潜像領域の直線の一部の線幅を異ならせて形成されたカモフラージュ領域から成る偽造防止用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用紙に関するものである。特に、銀行券、株券、印紙、証紙等の有価証券やパスポート、免許書及び各種証明書等の偽造防止用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有価証券、貴重書類等の偽造防止策は、インキに蛍光材料又は光学材料等を含ませた凹版印刷やオフセット印刷等により印刷層を基材に形成すること又はホログラム等の金属箔等を基材に貼付することで機能性を付与している。これらの技術は、基材上の一部に積層して形成する。また、用紙内に偽造防止策を付与する技術としては、スレッド、混抄及び多層紙等がある。これらの技術は、用紙上又は用紙内に付与する技術であり、基材に他の要素を加えて成る。
【0003】
一方、基材に他の要素を加えないで、基材のみの変形又は変色等によって偽造防止策となる代表的な技術としては、銀行券に見るようにすかしがある。しかし、基材に他の要素を加えない偽造防止策は、基材に他の要素を加える偽造防止策と比較して、技術の種類やバリエーションは少ないのが現状である。言い換えれば、基材に他の要素を加えない偽造防止策は、製品コストが抑えられ、製造工程も低減できるため、有効な技術ではあるが、構成が単純になりやすいため、極めて高い偽造防止効果を挙げることは難しい。
【0004】
ところで、基材に他の要素を加えないで、かつ、基材の変形で偽造防止策となる技術として、すかし以外に、エンボスにより縦横の万線を基材に形成する方法が開示されている。この方法では、潜像パターンの領域とその周囲部の領域に、万線状の凹凸の方向を変えることで、斜めから観察した場合、潜像パターンが視認できる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、基材にフィルムを用い、レーザ光により万線状の溝を異なる方向に設け、斜めから観察することで、潜像が視認できる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−154262号公報
【特許文献2】特許3514291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2によると、図9に示すように、万線状の凹凸又は溝は、潜像領域42とその背景領域41において、例えば、縦方向と横方向に90度配列方向を変えて構成しているが、単純な万線で構成しているため、潜像領域と背景領域の境界は潜像化され難く、基材を真上から視認した場合でも潜像が見えてしまうという欠点があった。さらに、万線を縦方向と横方向とで構成しているため、偽造が容易にできるという課題があった。
【0008】
また、特許文献1は、基材にエンボスにより万線状の凹凸を施しているので、エンボス用の版面を作製するための装置とノウハウを要し、さらには、基材にエンボス版面を押圧する装置が必要となることから、設備に多大な費用を要し、また、作製に前準備を含め多くの時間が掛かる。
【0009】
特に、特許文献2では、基材を紙ではなくフィルムに限定しているが、フィルムは、光の反射性が高く、かつ、フィルム表面と万線状の溝との光反射性が異なることから、フィルムの真上から視認した場合でも潜像が視認しやすく、フィルムをはがして再利用する改ざんに対しての効果は高いが、潜像としての効果は弱い。
【0010】
本発明は上記事情にかんがみ、なされたものであり、潜像体を真上から視認した時の潜像画像を、より隠蔽できる偽造防止用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、潜像体は、規則的に配列された複数の直線から成る背景領域と、背景領域の直線と等間隔で、かつ、背景領域に垂直に規則的に配置された複数の直線から成る潜像領域と、背景領域の直線の一部と、潜像領域の直線の一部の線幅を異ならせて形成されたカモフラージュ領域から成る偽造防止用紙である。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、カモフラージュ領域の直線の線幅が、背景領域及び潜像領域の直線の線幅に対し、1.1〜1.5倍であることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、潜像体は、規則的に配列された複数の直線から成る背景領域と、背景領域の直線と等間隔で、かつ、背景領域に垂直に規則的に配置された複数の直線から成る潜像領域と、背景領域の直線の一部と、潜像領域の直線の一部の色を、基材並びに背景領域及び潜像領域の他の部分の直線の色と異なる色で形成したカモフラージュ領域から成る偽造防止用紙である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、背景領域の直線の線幅と、潜像領域の直線の線幅とが同一であることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、潜像体は、規則的に配列された複数の波線から成る背景領域と、背景領域の波線と等間隔、同一の線幅で、かつ、背景領域に垂直に規則的に配置された複数の波線から成る潜像領域とから構成された偽造防止用紙である。
【0016】
本発明の請求項6に係る発明は、波線が正弦波の形状をした曲線であり、正弦波の周期長が振幅幅の(π×√3)倍以上であることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0017】
本発明の請求項7に係る発明は、背景領域及び潜像領域の線幅が、0.05〜0.20mmであることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0018】
本発明の請求項8に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、背景領域は、複数の直線を規則的に配列し、潜像領域は、前記背景領域の直線と等間隔で、かつ、背景領域に垂直に複数の直線を規則的に配置し、背景領域の直線の一部と、潜像領域の直線の一部の線幅を異ならせてカモフラージュ領域を形成することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法である。
【0019】
本発明の請求項9に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、背景領域は、複数の直線を規則的に配列し、潜像領域は、背景領域の直線と等間隔で、かつ、背景領域に垂直に複数の直線を規則的に配置し、背景領域の直線の一部と、潜像領域の直線の一部の色を、基材並びに背景領域及び潜像領域の他の部分の直線の色と異なる色でカモフラージュ領域を形成することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法である。
【0020】
本発明の請求項10に係る発明は、基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、背景領域は、複数の波線を規則的に配列し、潜像領域は、背景領域の波線と等間隔、同一の線幅で、かつ、背景領域に垂直に規則的に配置することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法である。
【発明の効果】
【0021】
(潜像画像の隠蔽性)
本発明の潜像体は、潜像体を真上から視認した場合に潜像画像をより隠蔽することができる。一方、所定の観察方向(斜め方向)から視認した場合、潜像画像が視認できる。また、カモフラージュ領域を設ければ、真上から視認した時の視認画像と所定の観察方向から視認した時の潜像画像が異なる2種類の画像として視認できる。
【0022】
(複写及び複製防止効果)
さらに、本発明の潜像体を基材と同色で形成した場合は、複写機やスキャナ等によって、潜像体の画像を入力しようとしても、基材と凹部が同色であるため、再現することができず、複写及び複製の防止機能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明における偽造防止用紙の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の概要図である。図2は、本発明の第1の実施形態における潜像体の構成図である。図3は、本発明の第1の実施形態におけるカモフラージュ領域の構成図である。図4は、本発明における第1の実施形態に関する潜像体の断面図と、真上から視認した場合の模式図である。図5は、本発明の潜像体を真上から視認した時の視認画像である。図6は、本発明の潜像体を所定の観察方向から視認した時の潜像画像である。図7は、本発明の第2の実施形態におけるカモフラージュ領域の構成図である。図8は、本発明の第3の実施形態における潜像体の構成図である。図9は、従来例の概要図である。
【0024】
(偽造防止用紙の概要)
まず、図1は、本発明の概要図である。本発明の偽造防止用紙1は、商品券であり、基材2には、黄色の上質紙に料額や種別の情報3がオフセット印刷又は凹版印刷で印刷されている。また、基材2の任意の領域には、潜像領域42と背景領域41から成る潜像体40が形成されている。なお、本発明の実施形態は、商品券で説明しているが、銀行券、パスポート、切手、印紙、証紙等の貴重性や金銭的価値のある物品に適用できる。また、基材2の色は黄色に限らず制約はない。
【0025】
本発明の実施形態として、三つの形態を例示するが、共に潜像体を真上から視認したときの潜像画像を、より隠蔽できる構成とすることを目的にしている。なお、潜像体を所定の観察方向から視認したときには、従来例と同様に鮮明に潜像画像は視認できる。
【0026】
第1と第2の実施形態は、図9に示す従来例である背景領域と潜像領域との縦横万線の構成に加えて、潜像領域と背景領域とでカムフラージュ領域を設けて、潜像体を真上から視認した時に、カムフラージュ領域から成る画像が強調されて視認画像が視認できるため、潜像画像をより隠蔽できる。一方、第3の実施形態は、カムフラージュ領域を設けないで、背景領域と潜像領域の万線から曲線に変更することで、潜像画像が隠蔽できる。なお、ここでいう「視認画像」とは、潜像体を真上から視認した場合、カムフラージュ画像で形成した画像のことであり、「潜像画像」とは、潜像体を所定の観察方向から視認した場合、潜像領域で形成した画像のことである。
【0027】
(第1の潜像体の構成)
まず、第1の実施形態の潜像体40を、図2及び図3により説明する。潜像体40は、背景領域41と潜像領域42とで構成され、背景領域41の縦線の凹部41L及び潜像領域42の横線の凹部42Lにおける線幅W1は同一とし、複数等間隔で配列する。なお、凹部41Lに対して凹部42Lは垂直に配置している。この時、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1は0.05〜0.20mm、好ましくは0.10〜0.15mm、凹部41L及び凹部42Lの線間隔Pは0.50mm以下、好ましくは0.30以下である。なお、凹部の深さは、0.01mm以上、好ましくは、0.03mm以上である。凹部41L及び凹部42Lの深さは、同一でも、異なっていても構わない。
【0028】
さらに、背景領域41及び潜像領域42の少なくとも一部の領域によって任意のカムフラージュ領域42を設ける。この時、カモフラージュ領域42内の凹部41L及び凹部42Lの線幅は変更している。図3(a)は、カモフラージュ領域43のみ抽出した概要図である。カモフラージュ領域43内の縦線の凹部41Lを凹部41L’、横線の凹部42Lを凹部42L’とした場合、図3(b)に示すように、凹部41L’及び凹部42L’の線幅W2は、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1に対して1.1〜1.5倍、好ましくは1.2〜1.3倍であり、凹部43L同士が接しないことが必須である。なお、凹部41L、凹部42L、凹部41L’及び凹部42L’は、レーザ加工機により非貫通で加工している。また、凹部41L、凹部42L、凹部41L’及び凹部42L’の深さは、同一でも、異なっても構わない。なお、本実施の形態では、凹部をレーザ加工機により形成しているが、これに限定されるものではなく、微細な凹部を形成できる方法であれば良い。
【0029】
(真上から視認できる画像)
図4は、潜像体40の凹部42L及び凹部42L’の断面図と真上から観察した場合の模式図である。基材2の表面は平滑であるのに対して、凹部42L又は凹部42L’の底部は、レーザ加工で物理的に削っているために、ミクロ的に見ると凹凸を有する。ただし、どちらも表面は同色である。また、基材表面の反射光は平滑であるため略一定の方向に光を反射するが、一方、凹部42L又は凹部42L’の反射光は、凹凸があるため任意の方向へと反射し、潜像体40を真上から視認した時、互いの反射光に差異を生じて濃度差として知感できるため、凹部42L又は凹部42L’が視認できる。さらに、凹部42Lの線幅W1よりも、凹部42L’の線幅W2の方が広く構成しているため、凹部42L’の方が強い反射光を視認でき、この結果、カモフラージュ領域43である視認画像(A)が強調され視認できる。このため、潜像領域42である潜像画像(T)は隠蔽される。よって、潜像体40を真上から視認した時は、図5に示すように、「A」の視認画像が視認できる。なお、図示しないが、背景領域41の凹部41Lと、カムフラージュ領域43の凹部41L’においても、同様の作用を有している。
【0030】
(所定の観察方向から視認できる画像)
また、図6に示すように、潜像体40を斜めから観察すると、潜像領域42から成る潜像画像「T」が視認できる。具体的には、図2の潜像体40を上下方向又は斜め上から視認した時は、「T」の画像が白く視認できる。一方、図2の潜像体40を左右方向又は斜め上から視認した時は、背景画像41が白く視認でき、「T」は暗い画像と視認できる。なお、本発明の実施形態では、視認画像及び潜像画像は文字で例示しているが、図柄、マーク等でも構わない。
【0031】
(複写防止効果)
本発明の潜像体40は、機械的な画像の取り込みが困難である。具体的には、複写機やスキャナで潜像体40の潜像体画像を入力した結果、基材と凹部は同色であることと、基材と凹部との反射光の差が微弱であることから、潜像体の画像は取り込めず、潜像体40の潜像体画像は再現できない。言うまでもなく、潜像体40は複写されないため、所定の観察方向で視認しても、潜像は確認できない。
【0032】
(第2の潜像体の構成)
次に、第2の実施形態である潜像体40を図7により説明する。第2の潜像体40は、第1の実施形態の潜像体40に対して、カモフラージュ領域の凹部の構成は異なるが、その他の構成は同様なため、同一部分の説明は省略する。
【0033】
図7(a)は、図2に示すカムフラージュ領域43のみを抽出した図である。第2の実施形態のカムフラージュ領域43における縦線の凹部41L’及び縦線の凹部42L’との線幅W2は、図7(b)及び図7(c)に示すように、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1と同一である。また、図7(d)は、図2のX−X線断面図(詳しくは、潜像領域42の最上部の横線である凹部42L及び凹部42L’の断面)であり、第2の実施形態の特徴を示している。潜像領域42内にカムフラージュ領域43を有するため、凹部42Lと凹部42L’とは連続している。このとき、凹部42Lは、レーザ加工機の加工条件を調整し、基材と同色となるように加工する。一方、凹部42L’は、基材と異なる色、例えば、黒色に着色するようなレーザ加工機の加工条件に調整して加工する。この時、凹部42Lと凹部42Lの深さは同一でも良いし、異なっても構わない。また、凹部41L及び凹部42Lとの線幅W1と凹部41L’及び凹部42L’の線幅W2が異なっても構わない。なお、図示しないが、背景領域41の凹部41Lと、カムフラージュ領域43の凹部41L’においても、同様の作用を有している。
【0034】
このような加工を実施するための加工条件の設定としては、例えば、黒色の凹部を形成する際は、強い出力に調整したレーザを一度だけ照射し、基材と同色の凹部を形成する際は、弱い出力に調整したレーザを複数回照射する方法がある。この場合は、レーザの出力強度及び照射回数を調整することにより、形成される凹部の深さ及び基材の着色の度合いを調整することが可能である。
【0035】
例えば、厚み0.1mmの紙基材に0.08mmの深さの凹部を形成する場合のレーザ加工条件は、基材と同色の凹部41L及び凹部42Lでは、加工出力0.1mJ程度のレーザを同一箇所に3回繰り返して照射し、凹部42L’では、加工出力0.3mJ程度のレーザを同一箇所に1回照射すれば良い。
【0036】
(真上から視認できる画像)
第2の実施形態の潜像体40を真上から視認した場合、第1の実施形態と同様であり、図5のように視認画像(A)が視認できる。ただし、視認原理は異なり、凹部41L及び凹部42Lは基材色と同色であるが、凹部41L’及び凹部42L’は基材色と異なり、黒色に視認できることから、カモフラージュ領域43である視認画像(A)が強調され視認できる。このため、潜像領域42である潜像画像(T)は隠蔽されやすい。
【0037】
(所定の観察方向から視認性)
潜像画像の視認性は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0038】
(第3の潜像体の構成)
第3の実施形態は、第1及び第2の実施形態と異なり、カモフラージュ領域を用いないで、潜像体を真上から視認した時に、潜像画像をより隠蔽できない形態である。
【0039】
図8(a)は、第3の実施形態の潜像体40を示す概略図である。潜像体40は、背景領域41と潜像領域42から構成される。また、背景領域41には、縦方向の波線の凹部41L、一方、潜像領域42には、横方向の波線の凹部42Lを配置する。この時、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1と線間隔Pは、第1の実施形態の説明と同様である。
【0040】
また、図8(a)及び図8(b)は、凹部41L及び凹部42Lの曲線を示すもので、例えば、横方向の波線の凹部42Lは、以下の式(1)によって表せる。この時、式(1)をxに対して微分することにより、曲線の傾きが式(2)のとおり求められる。このことから、曲線の中心線と波線の角度Kは式(3)で求められ、Kが取り得る値の範囲は、式(4)で表される。よって、Kを常に±30度の範囲内に保とうとした場合、式(5)の条件を満たせばよい。
【0041】
式(1) y=(A/2)sin(2πx/T)
式(2) y’=(Aπ/T)cos(2πx/T)
式(3) K=tan-1{(Aπ/T)cos(2πx/T)}
式(4) −tan-1(Aπ/T)≦K≦tan-1(Aπ/T)
式(5)(Aπ/T)≦(1/√3)
x、y:潜像体上の縦横座標
y’ :曲線の傾き
T :曲線の1周期分
A :振幅幅
【0042】
式(1)の正弦関数sinの括弧内に定数を加えても、式(5)導出に至る議論及び式(5)の結果には何ら影響を与えない。よって、式(1)の代わりに位相の異なる正弦関数又は余弦関数を用いても構わない。
【0043】
また、縦方向の波線の凹部41Lについても同様の議論をすることにより、式(5)の条件が得られる。
【0044】
式(5)の条件下では曲線の中心線と波線の角度Kが常に30度以下となり、この構成によって、潜像体40を真上から視認した時に、凹部41L及び凹部42Lの凹部の反射光が、線が曲げることでより直進性が阻害されやすく、潜像画像がカモフラージュされることにより潜像画像は視認できない。なお、背景領域41の凹部41L又は、潜像領域42の凹部42Lのいずれか一方を、曲線にしても構わない。
【0045】
(所定の観察方向から視認性)
潜像画像の視認性は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。しかし、前述の角度Kが30度以上になると、所定の観察方向で視認した場合、凹部41L又は凹部42Lが整列して圧縮しないことから、潜像画像は視認し難くなる。
【0046】
また、第1〜第3の実施形態において、背景領域41の凹部41と潜像領域42の凹部42が接しないことが好ましい。
【実施例1】
【0047】
実施例1は、図3に示す第1の実施形態の具体例である。基材1に、厚さ0.10mmの白色上質紙を用い、炭酸ガスレーザ加工機により、レーザ光の照射時間及び照射出力を調整することで、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1を0.1mm、凹部41L’及び凹部42L’の線幅W2を0.12mm、凹部の間隔Pは0.25mm、すべての凹部の深度は0.05mmで、潜像体40を形成した。この結果、潜像体40を真上から視認した時は視認画像、斜めから視認したときには、潜像画像がそれぞれ視認できた。
【実施例2】
【0048】
実施例2は、図7に示す第2の実施形態の具体例である。基材1に、厚さ0.10mmの白色上質紙を用い、炭酸ガスレーザ加工機により、レーザ光の照射時間及び照射出力を調整することで、凹部41L、凹部41L’、凹部42L及び凹部42L’の線幅W1を0.10mm、凹部の間隔Pは0.25mm、全ての凹部の深度は0.08mmで、潜像体40を形成した。また、凹部41L及び凹部42Lは基材と同色、凹部41L’及び凹部42L’は黒色である。この結果、潜像体40を真上から視認した時は視認画像、斜めから視認したときは潜像画像がそれぞれ視認できた。
【実施例3】
【0049】
実施例3は、図8に示す第3の実施形態の具体例である。基材1に、厚さ0.10mmの白色上質紙を用い、炭酸ガスレーザ加工機により、レーザ光の照射時間及び照射出力を調整することで、凹部41L及び凹部42Lの線幅W1を0.10mm、凹部の間隔Pは0.25mm、すべての凹部の深度は0.05mmで、潜像体40を形成した。曲線としては、前述の式を用いて、Tは16mm、Aは2mmとして作成した。この結果、潜像体40を真上から視認した時は、背景領域41の凹部41Lと潜像領域42の凹部42Lから成る潜像体画像、斜めから視認したときには潜像画像がそれぞれ視認できた。なお、実施例1〜実施例3では、潜像体40を真上から視認した時に、潜像画像は視認できない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の概要図である。
【図2】本発明における第1の実施形態である潜像体の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるカモフラージュ領域の構成図である。
【図4】本発明における第1の実施形態の潜像体の断面図と真上から視認した場合の模式図である。
【図5】本発明における潜像体を真上から視認した時の視認画像である。
【図6】本発明における潜像体を所定の観察方向から視認した時の潜像画像である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるカモフラージュ領域の構成図である。
【図8】本発明における第3の実施形態の潜像体の線構成図である。
【図9】従来例の概要図である。
【符号の説明】
【0051】
1 偽造防止用紙
2 基材
3 情報
40 潜像体
41 背景領域
41L、41L’ 凹部
42 潜像領域
42L、42L’ 凹部
43 カモフラージュ領域
W1、W2 線幅
P 凹部(線)と凹部(線)の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、
前記潜像体は、規則的に配列された複数の直線から成る背景領域と、
前記背景領域の直線と等間隔で、かつ、前記背景領域に垂直に規則的に配置された複数の直線から成る潜像領域と、
前記背景領域の直線の一部と、前記潜像領域の直線の一部の線幅を異ならせて形成されたカモフラージュ領域から成る偽造防止用紙。
【請求項2】
前記カモフラージュ領域の直線の線幅は、前記背景領域及び前記潜像領域の直線の線幅に対し、1.1〜1.5倍であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項3】
基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、
前記潜像体は、規則的に配列された複数の直線から成る背景領域と、
前記背景領域の直線と等間隔で、かつ、前記背景領域に垂直に規則的に配置された複数の直線から成る潜像領域と、
前記背景領域の直線の一部と、前記潜像領域の直線の一部の色を、基材並びに前記背景領域及び前記潜像領域の他の部分の直線の色と異なる色で形成したカモフラージュ領域から成る偽造防止用紙。
【請求項4】
前記背景領域の直線の線幅と、前記潜像領域の直線の線幅とが同一であることを特徴とする請求項3記載の偽造防止用紙。
【請求項5】
基材表面の少なくとも一部に、凹部による線状の潜像体を有する偽造防止用紙であって、
前記潜像体は、規則的に配列された複数の波線から成る背景領域と、
前記背景領域の波線と等間隔、同一の線幅、かつ、前記背景領域に垂直に規則的に配置された複数の波線から成る潜像領域とから構成された偽造防止用紙。
【請求項6】
前記波線は正弦波の形状をした曲線であり、前記正弦波の周期長が振幅幅の(π×√3)倍以上であることを特徴とする請求項5記載の偽造防止用紙。
【請求項7】
前記背景領域及び前記潜像領域の線幅が、0.05〜0.20mmであることを特徴とする請求項1〜6記載の偽造防止用紙。
【請求項8】
基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、
前記背景領域は、複数の直線を規則的に配列し、
前記潜像領域は、前記背景領域の直線と等間隔で、かつ、前記背景領域に垂直に複数の直線を規則的に配置し、
前記背景領域の直線の一部と、前記潜像領域の直線の一部の線幅を異ならせてカモフラージュ領域を形成することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法。
【請求項9】
基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、
前記背景領域は、複数の直線を規則的に配列し、
前記潜像領域は、前記背景領域の直線と等間隔で、かつ、前記背景領域に垂直に複数の直線を規則的に配置し、
前記背景領域の直線の一部と、前記潜像領域の直線の一部の色を、基材並びに前記背景領域及び前記潜像領域の他の部分の直線の色と異なる色でカモフラージュ領域を形成することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法。
【請求項10】
基材表面の少なくとも一部に、非貫通の凹部の線状により形成された背景領域と潜像領域から成る潜像体を含んだ偽造防止用紙の作製方法であって、
前記背景領域は、複数の波線を規則的に配列し、
前記潜像領域は、前記背景領域の波線と等間隔、同一の線幅、かつ、前記背景領域に垂直に規則的に配置することを特徴とする偽造防止用紙の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−83155(P2009−83155A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252786(P2007−252786)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】