説明

偽鍼、偽磁気絆創膏、及び、これらを用いた二重盲検試験方法

【課題】鍼治療や磁気治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験を可能にする偽鍼と偽磁気絆創膏を提供する。
【解決手段】偽鍼は、針体3の基端部側に留置用の絆創膏1を装着してなる鍼で、針体3の先端部3aから針先を除去して、皮膚に刺さらないようにした。また、偽磁気絆創膏は、磁気絆創膏で実際には磁気を持たない構成とした。偽鍼によれば皮膚に貼り付けられて留置された状態で、外観は同じであるが、皮膚には刺さらないので、鍼灸治療に臨床的エビデンスをもたらす二重盲検試験にてコントロールデータを得ることが可能となる。また、偽磁気絆創膏によれば、絆創膏により皮膚に貼り付けられて留置された状態で、外観は同じであるが、磁気を持たないので、磁気治療に臨床的エビデンスをもたらす二重盲検試験にてコントロールデータを得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼灸治療や磁気治療などに臨床的エビデンス(根拠)を与えるための二重盲検試験において、コントロール(対照)として用いる偽鍼、偽磁気絆創膏、及び、これらを用いた二重盲検試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東洋医学による治療は、日本では長い伝統があり、広く用いられてるが、統計医学的エビデンスはまだ十分なものではなく、国際医学文献のグローバルスタンダードであるメドラインで引いても、医学的統計学的に価値がある二重盲検試験で行われている研究は、極めて少ない。これは、患者も医者(施術者)も、鍼を刺したりすれば、わかるので、二重盲検が成り立たないからである。
【0003】
また、従来、この種の試験としては、鍼を違う場所に刺すか、刺すまねをするだけで、コントロールとしてデータを採取することも行われていた。
しかし、医者はもちろん患者も一目でわかり、刺さなければ感覚でわかるので、二重盲検試験としては原則的に全く成り立たなかった。
上記のように従来の技術では、鍼灸治療や磁気治療の科学的な二重盲検試験を行うことができないという問題があった。
【0004】
その一方、注目すべきものとして、絆創膏付きで、皮膚に留置して鍼治療や磁気治療を行うものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−051315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、絆創膏付きで、皮膚に留置して鍼治療や磁気治療を行うものに着目し、二重盲検試験を行うための偽の鍼、及び、偽の磁気絆創膏を提供し、東洋医学における科学的エビデンスの確認を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明では、基端部側に留置用の絆創膏を装着してなる鍼による鍼灸治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験に用いる鍼で、実際には皮膚に刺さらないようにした偽鍼を提供する。
この場合、針先を除去するか、針先を丸めることで、皮膚に刺さらないようにすることができる。
【0007】
また、本発明では、磁気絆創膏による磁気治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験に用いる磁気絆創膏で、実際には磁気を持たない偽磁気絆創膏を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る偽鍼によれば、絆創膏により皮膚に貼り付けられて留置された状態で、外観は同じであるが、皮膚には刺さらないので、鍼灸治療に臨床的エビデンスをもたらす二重盲検試験にてコントロールデータを得ることが可能となる。
また、本発明に係る偽磁気絆創膏によれば、絆創膏により皮膚に貼り付けられて留置された状態で、外観は同じであるが、磁気を持たないので、磁気治療に臨床的エビデンスをもたらす二重盲検試験にてコントロールデータを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず図1及び図2を参照し、本物の鍼(本鍼)について説明する。
図1(a)は本鍼の平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。図2は図1(b)中のA部の拡大断面図である。
この鍼(円皮針)は、絆創膏(粘着テープ)1と、剥離紙2と、針体3と、樹脂材4とから構成される。
【0010】
絆創膏(粘着テープ)1は、紙、布、不織布、或いはプラスチックテープからできており、円形状で、片面に粘着性を有し、中央部には孔1aが設けられている。
剥離紙2は、紙からできており、円形状で、その径は絆創膏1の径と比してやや大きく、中央部に孔2aを有し、絆創膏1の粘着面側に剥離可能に貼り付けられている。また、剥離紙2は、孔2aを通る分割線2bで分割されていて、施術時の剥離等を容易にしている。
【0011】
針体3は、金属製(ステンレス製)で、L字状に屈曲されている。針体3の先端部3aは、絆創膏1及び剥離紙2の孔1a及び2aを貫通して突出しており、この突出した部分により皮下に刺入する。一方、基端部3bは、絆創膏1の非粘着面側にこれと略平行に配置されている。
樹脂材4は、絆創膏1の非粘着面上に、針体3の基端部3bを覆うように射出成形又はポッティング(樹脂盛り加工)されて、針体3を固定している。
【0012】
以上述べたように、本実施形態での鍼(円皮針)は、片面が粘着面をなし、中央部に孔を有する略円形の絆創膏(粘着テープ)1と、絆創膏1の粘着面側に剥離可能に貼り付けられ、中央部に孔を有する剥離紙2と、先端部が絆創膏1及び剥離紙2の孔を貫通して突出し、基端部が絆創膏1の非粘着面側に配置される針体3と、絆創膏1の非粘着面上に成形され、針体3の基端部を覆って固定する樹脂材4と、を含んで構成される。
【0013】
図5(a)は本鍼を収納容器に収納した状態を示している。
収納容器は、鍼(円皮針)を針先を下にして収納可能な凹部を有する樹脂製の容器本体5と、容器本体5内に鍼(円皮針)を収納した状態で、容器本体5の上面の外枠部分に剥離可能に貼り付けられて凹部の開口部を密閉する滅菌ガス透過性のシート材6とから構成される。そして、収納・密閉後に、滅菌処理(ガス滅菌)を施して、完成する。
【0014】
以上のようにして完成した鍼(円皮針)の使用に際しては、鍼(円皮針)を収納容器から取り出した後、絆創膏1から剥離紙2の一部を剥がして、針体3をつぼにあてがい、刺通しつつ、粘着面の露出した部分を皮膚に貼付し、固定する。さらに、剥離紙2の残りの部分を剥がし、この部分の粘着面も皮膚に貼付する。
次に図3及び図4を参照し、本鍼に対する偽鍼について説明する。
【0015】
図3(a)は偽鍼の平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。図4は図3(b)中のA部の拡大断面図である。
この偽鍼(円皮針)も、絆創膏(粘着テープ)1と、剥離紙2と、針体3と、樹脂材4とから構成される。
偽鍼が本鍼と異なるのは、針体3の先端部3aであり、偽鍼の針体3の先端部は、皮膚に刺さらないように、針先を除去してある。又は、皮膚に刺さらないように、針先を丸めるようにしてもよい。更に、素材を変えて、樹脂製にすることもできる。また、皮膚感覚的にも同じとなるようにする。
【0016】
図5(b)は偽鍼を収納容器(5、6)に収納した状態を示している。
上記のような、本鍼と、これと略同じの外観(微小な針先のみ異なるだけ)で、実際には皮膚に刺さらない偽鍼とを用いることで、鍼治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験を行うこと可能となる。
すなわち、鍼灸治療の二重盲検試験において、治療をする施術者(医者)に対しては、本物か偽物かが外観上は区別がつかず、治療を受ける患者側に対しては、鍼を刺されたかわからないような偽鍼を提供することにより、科学的な臨床試験を具現化させ、医学における診療体系に新知見をもたらすことができる。
【0017】
また、図6は、本鍼と偽鍼の治療効果(心拍数)の差を示す図である。偽鍼では優位の血行動態変動は観測されないが、本鍼では心拍数の大きな減少が観測される。偽鍼は鍼の効果を肉体にもたらしておらず、二重盲検試験における有用性が証明されている。
次に磁気絆創膏の場合について図7により説明する。
図7(a)は本物の磁気絆創膏を示し、絆創膏11と、磁気チップ12と、剥離紙13とから構成される。すなわち、円形状の絆創膏11の粘着面側の中央に磁気チップ12が固定されると共に、絆創膏11の粘着面側にこれより大径の剥離紙13が剥離可能に貼り付けられて、磁気チップ12を覆っている。使用の際は、剥離紙13を除去して、皮膚に磁気チップ12を押し当てた状態で、絆創膏11を貼り付ける。
【0018】
図7(b)は偽物の磁気絆創膏(偽磁気絆創膏)を示し、絆創膏11と、偽磁気チップ(磁気無しチップ)12’と、剥離紙13とから構成される。本物と異なるのは、絆創膏11の粘着面側の中央に、磁気チップと同じ外形形状を有するものの、磁気を有しない偽磁気チップ(磁気無しチップ、非磁性チップ)12’が装着されている。
上記のような、本物の磁気絆創膏と、これと同じの外観で実際には磁気を持たない偽磁気絆創膏とを用いることで、磁気絆創膏による磁気治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る偽鍼、偽磁気絆創膏は、絆創膏により皮膚に貼り付けるという特性を利用して、東洋医学治療に科学的根拠をもたらす二重盲検試験を行うことが可能となり、本発明に係る二重盲検試験方法と共に、本物の鍼や磁気絆創膏の有効性の立証に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態での本鍼の平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)
【図2】図1のA部の拡大断面図
【図3】本発明の実施形態での偽鍼の平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)
【図4】図3のA部の拡大断面図
【図5】本鍼及び偽鍼の容器収納状態を示す図
【図6】本鍼と偽鍼の治療効果(心拍数)の差を示す図
【図7】磁気絆創膏の場合の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 絆創膏(粘着テープ)
1a 孔
2 剥離紙
2a 孔
2b 分割線
3 針体
3a 先端部(針先)
3b 基端部
4 樹脂材
5 収納容器本体
6 シート材
11 絆創膏
12 磁気チップ
12’ 偽磁気チップ(磁気無しチップ)
13 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部側に留置用の絆創膏を装着してなる鍼による鍼灸治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験に用いる鍼で、実際には皮膚に刺さらないようにした偽鍼。
【請求項2】
針先を除去することで、皮膚に刺さらないようにした請求項1記載の偽鍼。
【請求項3】
針先を丸めることで、皮膚に刺さらないようにした請求項1記載の偽鍼。
【請求項4】
磁気絆創膏による磁気治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験に用いる磁気絆創膏で、実際には磁気を持たない偽磁気絆創膏。
【請求項5】
基端部側に留置用の絆創膏を装着してなる鍼による鍼灸治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験方法であって、前記鍼と、これと針先を除いて同じ外観を有し実際には皮膚に刺さらないようにした偽鍼とを用いて行うことを特徴とする二重盲検試験方法。
【請求項6】
磁気絆創膏による磁気治療に科学的根拠をもたらすための二重盲検試験方法であって、前記磁気絆創膏と、これと同じ外観を有し実際には磁気を持たない偽磁気絆創膏とを用いて行うことを特徴とする二重盲検試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93348(P2008−93348A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281646(P2006−281646)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(390024545)セイリン株式会社 (14)
【Fターム(参考)】