説明

備蓄水装置、及び操作レバーの停止構造

【課題】 地震発生時にロータンク102に備蓄されている上水が便器105側に排水されることを防止することができる備蓄水装置1を提供する。
【解決手段】 ロータンク102内に備蓄された上水を所定角度回転させることによって便器105側へ排水させるためにロータンク102に設けられている操作レバー104と共に回動及び停止可能な支持部材2と、支持部材2に収容されて、その先端3aがロータンク102側へ出没可能に、ロータンク102側へ突出するように付勢されている回転停止ロッド3と、回転停止ロッド3の先端3aがロータンク102から離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパー4と、該ストッパー4を地震感知装置5の地震感知により、回転停止ロッド3の付勢力のストッパー4による係止を解除する動力を伝達する伝達部6と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレのロータンク内に備蓄された上水を備蓄水として使用する備蓄水装置に関する。併せて、地震発生時に操作レバーの回動を停止する操作レバーの停止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害発生時には、上水道の断水が発生する場合があり、その際には飲み水の確保が課題となる。飲み水を確保する一つとして、上水を予め備蓄しておく備蓄水装置が挙げられる。備蓄水装置としては、特許文献1に記載されているように専用のタンクを使用するものもあるが、コスト、設置する場所等の問題があり、一般家庭等において採用することは難しい。このようなことを鑑みてか、一般家庭等において使用されており、通常上水が備蓄される水洗トイレ101のロータンク102を利用した備蓄水装置(水洗便所)が、特許文献2に提案されている。
【0003】
ここで、ロータンク102とは、図8、図9に示すように、上水管103から供給される上水をその内部に備蓄し、操作レバー104を「大」または「小」方向へ回動させることで備蓄した上水を便器105へ排水するものである。前記上水管103には、ロータンク102の壁面を貫通して外部から内部へ導入されている。ロータンク102の内部側の上水管103は、ロータンク102に備蓄される上水に浮かぶ浮玉106の位置により開閉するボールタップ107が設けられている。上水管103のボールタップ107より先端側には使用者が手洗い用に使用するロータンク102の蓋部102aに設けられた手洗管108へとつながる手洗管ホース109と、ロータンク102内へ直接上水を流入させる流入口110とが設けられている。
【0004】
前記操作レバー104は、ロータンク102の壁面を貫通すると共に回動可能なシャフト111のロータンク102の外部側の端部に固定されている。このシャフト111は、ロータンク102の内部側の端部付近が略直角に屈曲しており、その先端に一端がゴムフロート112に接続されたチェーン113の他端が接続されている。前記ゴムフロート112は、便器105へとつながる排水弁114を封止するものであり、ロータンク102内に想定以上の上水が流入した場合に上水がこぼれることを防ぐための上方に開口して排水弁114につながるオーバフロー管115の下端に回動可能に接続されている。これにより、ゴムフロート112は、チェーン113に引っ張られて引き上げられた後、再び沈む際に必ず排水弁114を封止できる位置に戻る。
【0005】
水洗トイレ101において、ロータンク102内の上水を便器105へ排水する際には、図10に示すように操作レバー104を所定角度回転させることにより、シャフト111が回動し、そのロータンク102の内部側の先端に接続されるチェーン113を引っ張ってゴムフロート112を引き上げる。これにより、ロータンク102内の上水は、排水弁114から便器105へ排水される。
【0006】
前記排水に伴い、ロータンク102内の上水の水位が下がるので、上水に浮いている浮玉106の位置も下がり、ボールタップ107は開状態となる。これにより、ロータンク102には、手洗管108及び流入口110より上水が流入する。流入した上水は、ゴムフロート112が再び排水弁114を封止することにより、ロータンク102に備蓄される。そして、備蓄量が所定の量に達することで、浮玉106は元の位置にもどる。これにより、ボールタップ107は閉状態となって、手洗管108及び流入口110からのロータンク102内へ上水の流入は止まる。
【0007】
特許文献2では、上記説明したロータンク102の下方側面に蛇口を取り付けるとしており、蛇口より当該ロータンク内に備蓄されている上水を取り出して、飲み水等に利用するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−189056号公報
【特許文献2】特開2006−257844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に開示される備蓄水装置では、地震発生時に操作レバー104が振動、または住民が使用することにより回動してしまう可能性がある。このような事象が発生した場合には、ロータンク102に備蓄された上水が、減少、若しくは無くなってしまうので問題である。
【0010】
そこで、本発明は、地震発生時にロータンクに備蓄されている上水が便器側に排水されることを防止することができる備蓄水装置を提供することを目的とする。併せて、地震発生時に操作レバーの回動を停止する操作レバーの停止構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の備蓄水装置は、ロータンク内に備蓄された上水を非常時用の備蓄水として使用する備蓄水装置であって、前記ロータンクに設けられており該ロータンク内に備蓄された上水を所定角度回転させることによって便器側へ排水させる操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材と、該支持部材に収容されて、その先端が前記ロータンク側へ出没可能に、当該ロータンク側へ突出するように付勢されている回転停止ロッドと、該回転停止ロッドの先端が前記ロータンクから離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパーと、地震感知装置の地震感知により、前記回転停止ロッドの付勢力の前記ストッパーによる係止を解除する動力を伝達する伝達部と、を具備することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の備蓄水装置は、前記地震感知装置が、一端を支点として開閉可能な押圧部材と、該押圧部材を開方向に付勢している伸長側の端部に、一端側が前記ストッパーと連結した前記伝達部の他端側が連結されたバネと、前記押圧部材の他端側に地震感知時に落下する重りを載せる重り載置部を設けたことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の備蓄水装置は、前記伝達部が、ロープと、該ロープを一端側及び他端側を露出させた状態で収容する管と、を具備することを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の備蓄水装置は、前記ロータンクの前記回転停止ロッドの先端が当接する部分に、当該回転停止ロッドの先端との間の摩擦力を増加させる摩擦シートが貼付されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の備蓄水装置は、前記支持部材と前記操作レバーとが一体化されたことを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の操作レバーの停止構造は、操作レバーの回動を地震発生時に停止させる操作レバーの停止構造であって、前記操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材と、該支持部材に収容されて、その先端が当該支持部材近傍の所定部材側へ出没可能に、当該所定部材側へ突出するように付勢されている回転停止ロッドと、該回転停止ロッドの先端が前記所定部材から離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパーと、地震感知装置の地震感知により、前記回転停止ロッドの付勢力の前記ストッパーによる係止を解除する動力を伝達する伝達部と、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の備蓄水装置では、ロータンクに設けられているその内部に備蓄された上水を便器側へ排水させるための操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材に、その先端がロータンク側へ出没可能に、当該ロータンク側へ突出するよう付勢されている回転停止ロッドが収容されている。この回転停止ロッドは、平常時において、ストッパーによってその先端がロータンクから離反した位置で前記付勢力に抗して係止されているが、地震感知装置が地震感知した場合において、伝達部がストッパーによる回転停止ロッドの付勢力の係止を解除する動力を伝達することにより、その先端がロータンク側へ突出して操作レバーを停止させる。これにより、本備蓄水装置は、地震発生時に、地震による振動、または住民が使用することにより、操作レバーが回動して、ロータンク内に備蓄されている上水が便器側へ排水されることを防止することができる。
【0018】
請求項2記載の備蓄水装置は、一端を支点として開閉可能な押圧部材の他端側に設けられた重りを載せる重り載置部から地震による振動により重りが落ちることで、一端側がストッパーと連結した伝達部の他端側が連結されたバネの伸長側の端部が、前記押圧部材を開き伸長してストッパーを移動させ、該ストッパーによる回転停止ロッドの付勢力に抗した係止を解除する地震感知装置を備えている。この地震感知装置は電池不要に構成されているので、本備蓄水装置では電池交換に係る作業が不要であり、また、電池消耗による不作動を防止できる。
【0019】
請求項3記載の備蓄水装置は、ロープと、ロープの一端側及び他端側を露出させた状態で収容する管とを具備する伝達部を備えている。この伝達部は管によりロープを保護し、当該ロープが他部材に引っ掛ることを防ぐことができるので、本備蓄水装置は伝達部による動力の伝達を確実に行うことができる。
【0020】
請求項4記載の備蓄水装置は、ロータンクに貼付された摩擦シートに、回転停止ロッドの先端を当接させることで、それらの間の摩擦力が増加するので、地震発生時に操作レバーをより確実に停止することができる。
【0021】
請求項5記載の備蓄水装置は、支持部材と操作レバーとが一体化されることにより、部品点数を削減でき、また小型化を図ることができる。
【0022】
請求項6に記載の操作レバーの停止構造では、機器、機械等の操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材に、その先端が支持部材近傍の所定部材側へ出没可能に、当該所定部材側へ突出するよう付勢されている回転停止ロッドが収容されている。この回転停止ロッドは、平常時において、ストッパーによってその先端が所定部材から離反した位置で付勢力に抗して係止されているが、地震感知装置が地震感知した場合において、伝達部がストッパーによる回転停止ロッドの付勢力の係止を解除する動力を伝達することにより、その先端が所定部材側へ突出して操作レバーを停止させる。これにより、本操作レバーの停止構造は、地震発生時に前記操作レバーの回動を停止して、機器、機械等の誤動作を防ぎ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の備蓄水装置の正面図。
【図2】備蓄水装置の要部拡大側面図。
【図3】平常時における備蓄水装置の要部拡大断面図。
【図4】地震発生時における備蓄水装置の要部拡大断面図。
【図5】他の実施形態に係る備蓄水装置の要部拡大側面図。
【図6】平常時における他の実施形態に係る備蓄水装置の要部拡大断面図。
【図7】地震発生時における他の実施形態に係る備蓄水装置の要部拡大断面図。
【図8】水洗トイレのロータンク構造を示す正面図。
【図9】ロータンクの側面図。
【図10】操作レバーを回動させた場合の、水洗トイレのロータンク内の動作を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る備蓄水装置1の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。備蓄水装置1は、図1〜4に示すように、水洗トイレ101aのロータンク102を備蓄水を蓄えるタンクとして使用するものであり、ロータンク102内に備蓄された上水を便器105側へ排水させるための操作レバー104と共に回動及び停止する支持部材2と、該支持部材2に収容されて、ロータンク102側へ出没可能に、該ロータンク102へ突出するように付勢されている回転停止ロッド3と、該回転停止ロッド3をロータンク102から離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパー4と、地震感知装置5の地震感知により、回転停止ロッド3の付勢力のストッパー4による係止を解除する動力を伝達する伝達部6とを備えている。
【0025】
前記水洗トイレ101aは、背景技術で説明した図8〜10に示す一般的な水洗トイレ101をそのまま利用したものを示し、図1、図2に示すように、シャフト111が、当該シャフト111と比べて、操作レバー104とロータンク102の外壁面との間のシャフト長が長いシャフト7に変更される点を除いて、部品の変更はない。従って、操作レバー104を所定角度回転させた際のロータンク102内部の動作についても、上記において説明したとおりである。
【0026】
前記支持部材2は、図3、図4に示すように、前記シャフト7を挿通するための貫通孔であるシャフト挿通孔8と、該シャフト挿通孔8と平行して設けられ、前記回転停止ロッド3をロータンク102側へ出没可能に収容するための貫通孔である回転停止ロッド収容孔9と、該回転停止ロッド収容孔9と直交方向するように設けられ、前記ストッパー4を回転停止ロッド収容孔9へ突出可能に収容するためのストッパー挿入孔10とを具備している。この支持部材2は、ロータンク102と操作レバー104との間で、シャフト挿通孔8にシャフト7を挿通された状態で該シャフト7に固定されている。これにより、支持部材2は、シャフト7及び操作レバー104と共に回動及び停止する。
【0027】
前記回転停止ロッド3は、前記操作レバー104の回動を停止させるためのものであり、金属、硬質の樹脂材料等により構成され、順次径が小さくなるよう連結された先端3a部分、押圧部3b及びロッド部3cを有している。この回転停止ロッド3は、該回転停止ロッド3の形状に対応するように形成されている前記回転停止ロッド収容孔9に収容され、具体的には、前記先端3a部分がロータンク102側に開口した先端収容部9aに、前記押圧部3bが付勢バネ11と共に付勢バネ収容部9bに、前記ロッド部3cがロータンク102と反対側へ開口したロッド収容部9cに夫々収容される。また、回転停止ロッド3は、回転停止ロッド収容孔9への収容後、ロッド部3cの端面に、使用者につまみとして利用されるつまみ部3dが取り付けられる。更に、ロッド部3cには、ストッパー4の一端4aを挿入するための、該ロッド部3cより小径でリング状に形成される凹部3eが設けられている。
【0028】
また、回転停止ロッド3は、図4に示すように、前記付勢バネ収容部9b内で、押圧部3bの端面が前記付勢バネ11の伸長側に位置することで、ロータンク102側へ付勢されている。これにより、回転停止ロッド3は、回転停止ロッド収容孔9から先端3aをロータンク102側へ突出して、該ロータンク102に当接させることが可能である。この当接が行われた際は、先端3aとロータンク102との間に生ずる摩擦力で、回転停止ロッド3を収容している支持部材2と、ロータンク102とはロックされた状態となり、当該支持部材2の回動は停止される。
【0029】
なお、回転停止ロッド3の先端3aが当接するロータンク102の部分に、先端3aとの摩擦力を高めるゴム等で構成される摩擦シート12を貼り付けておけば、支持部材2の回動をより確実に停止することができる。また、付勢バネ11の付勢力を小さくすることができるので、当該付勢バネ11、及びそれを収容する支持部材2の小型化が可能となる。
【0030】
前記ストッパー4は、前記回転停止ロッド3を前記ロータンク102から離反した位置で前記付勢バネ11による勢力に抗して係止するためのものであり、金属、硬質の樹脂材料等により構成され、一端4a側に該一端4aより大径な押圧部4bを有している。このストッパー4は、一端4a側が付勢バネ13と共にストッパー挿入孔10に収容され、当該収容後、ストッパー挿入孔10に当該ストッパー4の他端4c側を挿通した蓋部14が取り付けられることで、その状態が維持される。
【0031】
また、ストッパー4は、ストッパー挿入孔10内で、押圧部4bが付勢バネ13の伸長側に位置することで、回転停止ロッド収容孔9側へ付勢されている。これより、ストッパー4は、図3に示すように、一端4aを回転停止ロッド収容孔9へ突出させて、回転停止ロッド3の凹部3eに挿入することができる。これにより、ストッパー4は、回転停止ロッド3を係止する。
【0032】
前記地震感知装置5は、地震の発生を感知して、前記ストッパー4による前記回転停止ロッド3の係止を解除させる動力を発生するものある。この地震感知装置5は、箱状の本体部15の上蓋として設けられ、その一端16aを支点として開閉可能な押圧部材16と、前記本体部15内の一端16a側に設けられた収容部17に収容されて、押圧部材16を伸長側の端部18aにより開方向に付勢している付勢バネ18とを有している。また、前記押圧部材16の他端16b側には、地震発生時にその振動により落下するボール状の重り19を載せる重り載置部16cが設けられている。なお、図1〜4においては、地震感知装置5を前記ロータンク102の蓋部102a上に配置した場合を示しているが、配置場所は任意であり、図外の棚等に配置してよい。
【0033】
前記重り載置部16cに載置する前記重り19は、図3に示すように、前記付勢バネ18の付勢力に抗して前記押圧部材16を閉じた状態に維持できる重さを有しているが、図4に示すように、地震により押圧部材16より落下して(矢印イ)、付勢バネ18の伸長側の端部18aを伸長させて、押圧部材16を開かせる(矢印ロ)。この付勢バネ18の端部18aが伸長することにより生じる引張力は、前記伝達部6を介して前記ストッパー4に伝達され、ストッパー4による前記回転停止ロッド3の係止を解除する動力として使用される。
【0034】
なお、重り19は、上記の通り地震発生時に落下するので、ロータンク102等を破損させないように、ゴム等弾性を有する材料により構成することが好ましい。また、重り19の重さを軽くすることは、ロータンク102等の破損リスクも低減させると共に、地震感知装置5の地震に対する感度を高める。そこで、地震感知装置5では、上記の通り、その一端16aを支点として開閉可能な押圧部材16を、一端16a側で付勢バネ18の伸長側の端部18aにより開方向に付勢すると共に、他端16b側に設けられた重り載置部16cに重り19を載置して前記付勢に抗して閉じた状態としている。これにより、テコの原理が作用するので、地震感知装置5では、重り19を軽くすることができる。
【0035】
前記伝達部6は、地震発生時に前記地震感知装置5の前記付勢バネ18において生じた引張力を当該ストッパー4に伝達するものであり、糸、綱、ワイヤー等により構成されるロープ6aと、可撓性を有する樹脂材料により構成される管6bとにより構成される。
【0036】
前記ロープ6aは、一端6c側が前記ストッパー4の他端4c側に、他端6d側が前記付勢バネ18の伸長側の端部18a側に連結されている。これによりロープ6aは、図4に示すように、前記付勢バネ18の端部18aが伸長する(矢印ロ)ことによる引張力をストッパー4に伝達して、該ストッパー4を他端4c側に移動させることができる(矢印ハ)。また、前記管6bは、ロープ6aが他部材に引っ掛る等の事故を防止するためのものであり、当該ロープ6aをその一端6c側及び他端6d側を露出させた状態で収容する。
【0037】
以上のように構成される備蓄水装置1では、予め、利用者が押圧部材16の重り載置部16cに重り19を載置した状態で、回転停止ロッド3のつまみ部3dを付勢バネ11の付勢力に抗してロータンク102と反対側に引っ張って、ストッパー挿入孔10の直下に当該回転停止ロッド3の凹部3eを位置させる。これにより、ストッパー4の一端4aは、当該凹部3eに付勢バネ13の付勢力により挿入されて、その状態を維持される。これにより、回転停止ロッド3は、図3に示すように、その先端3aが付勢バネ11の付勢力に抗してロータンク102と離反した状態で係止される。
【0038】
平常時には、回転停止ロッド3の前記係止が維持されるので、利用者は操作レバー104を回動させて、水洗トイレ101aを通常の水洗トイレとして使用することができる。また、地震発生時には、その振動により、図4に示すように、重り19が押圧部材16より落下する(矢印イ)。これにより、付勢バネ13より強い付勢力を有する付勢バネ18は、その伸長側の端部18aにより押圧部材16を開き伸長して(矢印ロ)、ロープ6aを他端6d側へ引っ張る。これにより、ストッパー4は、他端4c側に移動して(矢印ハ)、その一端4aが回転停止ロッド3の凹部3eより引き抜かれるので、回転停止ロッド3の前記係止は解除される。これにより、回転停止ロッド3は、その先端3aをロータンク102側へ突出させて(矢印二)、当該ロータンク102に当接し、操作レバー104の回動を停止させる。
【0039】
以上により、備蓄水装置1では、地震発生時に、地震による振動、または住民が使用することで操作レバー104が回動してロータンク102内に備蓄された上水が便器105へ排水されることは防止されるので、利用者がロータンク102の蓋部102aを開けて、ロータンク102に備蓄されている上水を汲み出して使用することができる。また、備蓄水装置1では、付勢バネ18、押圧部材16、重り19等を使用することで、電池等の電源不使用とした地震感知装置5を使用できるので、電池交換に係る作業が不要であり、また、電池消耗による不作動も生じない。
【0040】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、図5〜7に示すような備蓄水装置20は、操作レバー104と支持部材2とを一体化して小型化して部品点数も削減した操作レバー21を使用するものであり、備蓄水装置1と同様の機能を有する。備蓄水装置20は、支持部材2が不要となることでロータンク102から外部側へ突出するシャフトの長さが短くて良くなることに基づき、シャフト111を使用できるので、水洗トイレ101をそのまま使用できるという効果も有する。
【0041】
前記操作レバー21には、シャフト111に固定されており、また支持部材2と同様に回転停止ロッド収容孔9と、ストッパー挿入孔10とを備えている。回転停止ロッド収容孔9に収容された回転停止ロッド3は、図6に示すように、ストッパー挿入孔10の直下に位置した凹部3eに、ストッパー挿入孔10に収容されたストッパー4の一端4aが挿入される。これにより、回転停止ロッド3は、その先端3aがロータンク102と離反した位置で、付勢バネ11による付勢力に抗して係止される。
【0042】
平常時には、回転停止ロッド3の前記係止が維持されるので、利用者は操作レバー104を回動させて、水洗トイレ101を通常の水洗トイレとして使用することができる。また、地震発生時において、図7に示すように、ストッパー4が他端4c側に移動して、前記係止が解除されるので、回転停止ロッド3の先端3aはロータンク102に当接する。これにより、操作レバー21の回動は停止され、備蓄水装置20においても、地震発生時に、地震による振動、または住民が使用することで操作レバー21が回動してロータンク102内に備蓄された上水が便器105へ排水されることは防止される。
【0043】
また、備蓄水装置1、20において採用する地震感知装置5は、地震発生時に重り19が押圧部材16より落下した際に、図外の電池等の電源から図外のモータまたはコイルに通電することでシャフトを駆動する電気部品であるソレノイドに電源供給して、当該モータまたはソレノイドがロープ6aの他端6d側を巻き取り、引っ張るものであってよい。或いは、図外の公知の地震感知センサにより地震を検知した際に、図外のモータまたはソレノイドがロープ6aの他端6d側を巻き取り、引っ張るもの等であってよい。なお、これらのように地震感知装置5を構成する場合には、電池消耗等による不作動が発生しないよう、定期的な電池等の交換を行う必要がある。
【0044】
また、備蓄水装置1、20における回転停止ロッド3の付勢バネ11による付勢力に抗したストッパー4による係止は、磁力を利用して行ってもよい。この場合において、備蓄水装置1または備蓄水装置20は、図1〜4または図5〜7同様に構成する。但し、回転停止ロッド3及びストッパー4は、磁性材料により構成して、かつ、ストッパー4を電磁石として構成する。また、回転停止ロッド3の凹部3eと、付勢バネ13とは不要である。また、地震感知装置5には、更に押圧部材16の開閉に応じて、オン・オフが切り替わる図外のスイッチを追加して設ける。さらに、伝達部6は、電線により構成し、一端6cをストッパー4に、他端6dを図外の前記スイッチを介して図外の電池等の電源に、夫々電気的に接続する。
【0045】
このように構成される備蓄水装置1、20において、予め、利用者が回転停止ロッド3のつまみ部3dを付勢バネ11の付勢力に抗してロータンク102と反対側に引張り、回転停止ロッド3の先端3aがロータンク102と離反した状態とする。この状態で、回転停止ロッド3のロッド部3cはストッパー4の一端4aに磁気吸着されるので、回転停止ロッド3はその先端3aがロータンク102と離反した位置で付勢バネ11による付勢力に抗して係止される。
【0046】
平常時には、回転停止ロッド3の前記係止が維持されるので、利用者は操作レバー104を回動させて、水洗トイレ101、101aを通常の水洗トイレとして使用することができる。また、地震発生時において、図外の前記スイッチは、重り19が押圧部材16より落下することにより付勢バネ18が伸長し、その端部18aにより押圧部材16を開くことでオフとなる。これにより電磁石として構成されるストッパー4は磁力を失い、前記係止は解除される。よって、回転停止ロッド3はその先端3aをロータンク102側へ突出してロータンク102に当接し、操作レバー21、104の回動を停止させる。以上により、このように構成される備蓄水装置1、20においても、地震発生時に、地震による振動、または住民が使用することで操作レバー21、104が回動してロータンク102内に備蓄された上水が便器105へ排水されることは防止される。
【0047】
なお、ストッパー4による係止を、磁力を利用して行う場合であっても、地震感知装置5は、図外の公知の地震感知センサにより地震を検知した際に、図外の前記スイッチをオフとするもの等としてもよい。
【0048】
また、上記地震発生時に操作レバー104の回動を停止させる構成は、生活用機器、産業機器、工作機械、農業用機械等の機器、機械等の回動可能な操作レバーにも適用することができる。この場合において前記操作レバーのシャフトに支持部材2を当該シャフトと共に回動及び停止可能に固定する。この際、回転停止ロッド3の先端3aが、例えば前記機器、機械等の筐体等の支持部材2の近傍の所定部材側へ出没可能に、当該所定部材へ突出するように付勢されるように、当該支持部材2を配置する。このようにすることで、回転停止ロッド3は、平常時において、ストッパー4によってその先端3aが前記所定部材から離反した位置となるので、前記操作レバーは回動可能とされる。一方、地震感知装置5が地震を感知した場合には、伝達部6がストッパー4による回転停止ロッド3の付勢力の係止を解除する動力を伝達する。これにより、回転停止ロッド3の先端3aは、前記所定部材側に突出して外所定部材に当接し前記操作レバーを停止させる。従って、地震発生時には、その振動により前記操作レバーが回動することによる上記機器等の誤動作を防ぎ、その安全性を高めることができる。なお、前記操作レバーと支持部材2とは、操作レバー21の様に一体化しても、上記同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る備蓄水装置1、20は、地震発生時にロータンク102に備蓄されている上水が便器105側排水されることを防止できる備蓄水装置として用いることができる。また、本発明に係る操作レバーの停止構造は、生活用機器、産業機器、工作機械、農業用機械等の機器、機械等の回動可能な操作レバーが、地震発生時に誤動作することを防止できる停止構造として用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、20 備蓄水装置
2 支持部材
3 回転停止ロッド
3a 先端
4 ストッパー
5 地震感知装置
6 伝達部
6a ロープ
6b 管
6c、16a 一端
6d、16b 他端
12 摩擦シート
16 押圧部材
16c 重り載置部
18 付勢バネ
18a 端部
21、104 操作レバー
102 ロータンク
105 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータンク内に備蓄された上水を非常時用の備蓄水として使用する備蓄水装置であって、
前記ロータンクに設けられており該ロータンク内に備蓄された上水を所定角度回転させることによって便器側へ排水させる操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材と、
該支持部材に収容されて、その先端が前記ロータンク側へ出没可能に、当該ロータンク側へ突出するように付勢されている回転停止ロッドと、
該回転停止ロッドの先端が前記ロータンクから離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパーと、
地震感知装置の地震感知により、前記回転停止ロッドの付勢力の前記ストッパーによる係止を解除する動力を伝達する伝達部と、を具備することを特徴とする備蓄水装置。
【請求項2】
前記地震検知装置が、一端を支点として開閉可能な押圧部材と、
該押圧部材を開方向に付勢している伸張側の端部に、一端側が前記ストッパーと連結した前記伝達部の他端側が連結されたバネと、
前記押圧部材の他端側に地震検知時に落下する重りを載せる重り載置部を設けたことを特徴とする請求項1記載の備蓄水装置。
【請求項3】
前記伝達部が、ロープと、
該ロープを一端側及び他端側を露出させた状態で収容する管と、を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の備蓄水装置。
【請求項4】
前記ロータンクの前記回転停止ロッドの先端が当接する部分に、当該回転停止ロッドの先端との間の摩擦力を増加させる摩擦シートが貼付されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の備蓄水装置。
【請求項5】
前記支持部材と前記操作レバーとが一体化されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の備蓄水装置。
【請求項6】
操作レバーの回動を地震発生時に停止させる操作レバーの停止構造であって、
前記操作レバーと共に回動及び停止可能な支持部材と、
該支持部材に収容されて、その先端が当該支持部材近傍の所定部材側へ出没可能に、当該所定部材側へ突出するように付勢されている回転停止ロッドと、
該回転停止ロッドの先端が前記所定部材から離反した位置で前記付勢力に抗して係止するストッパーと、
地震感知装置の地震感知により、前記回転停止ロッドの付勢力の前記ストッパーによる係止を解除する動力を伝達する伝達部と、を具備することを特徴とする操作レバーの停止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−7366(P2012−7366A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143680(P2010−143680)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(307016180)地方独立行政法人鳥取県産業技術センター (32)
【Fターム(参考)】