説明

傷手当用品及びその製造並びにその使用に適切な材料の製造

【課題】カルボキシメチル化されたセルロース製品であり、置換度が0.12〜0.35の範囲であり、カルボキシメチル基は結晶領域でなく非晶領域に主としてあるものと信じられる、傷手当用品として有用に非付着特性を有するセルロース製品を提供する。
【解決手段】傷手当用品は、セルロース布帛をカルボキシメチル化して製造でき、その吸収率はカルボキシメチル化の後で、その前よりも若干しか高くなっていない。カルボキシメチル化はセルロースII繊維又は他の製品を、水酸化ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、水及びエタノールを含む溶液と接触させて行うことができる。溶液は4〜8重量%の水酸化ナトリウム及び50〜60重量%の水(繊維中の水を含む)を含むことができ、又は、水酸化ナトリウム/水(同)の重量比は0.095〜0.115であり、製品中のセルロース/水(同)の重量比は0.22〜0.28であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷手当用品に関し、より詳細には、滲出性の傷のための接触層として適切な布帛の形態及び他の形態の手当用品及びこのような手当用品の製造方法並びにそれに使用するための材料の製造方法に関する。
【0002】
一般的に使用されている傷手当用品は、フォーム、スポンジ及び繊維をベースとする材料、例えば、綿又はビスコースレイヨンの、例えば、ガーゼ及び詰め物を含む。このような繊維をベースとする材料は傷の表面に付着する傾向があり、従って、患者に対して衝撃を与えることなく、1つのものとして使用後に除去することが困難である。既知の傷手当用品は、例えば、アルギネートをベースとし又は種々のヒドロコロイドもしくはヒドロゲルをベースとする進歩した手当用品も含むが、このような手当用品は比較的に高価であり、従って、臨床的要求がそのように推奨するときにのみ一般に使用される。少なくとも特定の程度の吸収性があるが、患者に対して衝撃を与えずに、繊維断片を脱離することなく1つのものとして傷から除去することができるために十分に非付着性であり、そして進歩した手当用品と比較して安価である傷手当用品が望まれている。
【背景技術】
【0003】
WO-A-94/16746は、傷接触表面が、自重の少なくとも15倍の、好ましくは少なくとも25倍の0.9重量%水性塩溶液を吸収し(規定した自由膨潤吸収性試験によって測定して)、膨潤した透明なゲルを形成することができる、カルボキシメチルセルロース(CMC)フィラメントを含む、傷手当用品を開示しており、このように膨潤した手当用品は傷から1つに結合した手当用品として除去されるために十分な繊維特性を保持している。CMCフィラメントの置換度(D.S.)は、例えば、1.0までであることができるが、好ましくは少なくとも0.15であり、より好ましくは0.2〜0.5である。CMCフィラメントは、一般に、強塩基の存在下に、セルロースフィラメントをクロロ酢酸又はその塩と反応させることによって製造できる。セルロースフィラメントはビスコースレイヨン、キュプラアンモニウムレイヨン又は綿であることができるが、好ましくは溶剤紡糸されたものであり、従って、リオセルであることができる。
【0004】
WO-A-95/19795は、テキスタイル繊維及びゲル形成性繊維のブレンドを含む傷手当用品を開示している。テキスタイル繊維は天然であっても又は合成であってもよいが、好ましくはビスコースレイヨン又は綿のようなセルロース繊維である。ゲル形成性繊維は、例えば、カルボキシメチルセルロース又はアルギネート繊維であることができる。ゲル形成性繊維は、滲出物の吸収時に構造一体性を保持するタイプのものであっても、又は、滲出物の吸収時にその繊維形態を失い、そして無構造のゲルとなるか又は溶液となるタイプのものであってもよい。ゲル形成性繊維の吸収率(自由膨潤法によって測定して)は、望ましくは、少なくとも2g/gの0.9%塩溶液であり、好ましくは少なくとも15g/gであり、より好ましくは少なくとも25〜50g/gである。カルボキシメチルセルロース繊維のD.S.は望ましくは少なくとも0.05であり、好ましくは少なくとも0.2であり、より好ましくは0.3〜0.5である。このような手当用品は繊維が治癒過程の間に形成される新たな組織によって巻き込まれず、そのため、傷の損傷を生じることなく除去できるという利点を有するものと述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第94/16746号
【特許文献2】国際公開第95/19795号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によると、カルボキシメチル化の後の布帛の吸収率(以下に規定のとおり)が、カルボキシメチル化の前の布帛の吸収率(以下に規定のとおり)よりも3g/g以下で大きく、好ましくは2.5g/g以下で大きく、さらに好ましくは2g/g又は1g以下で大きく、そして、IR分光分析によって測定した、カルボキシメチル化された布帛中のカルボキシメチル基によるセルロースの置換度(以下に規定のとおり)が0.12〜0.35の範囲であり、好ましくは0.2〜0.3の範囲であるように、セルロース布帛をカルボキシメチル化する工程を含む、傷手当用品の製造方法が提供される。本発明は、また、このようなカルボキシメチル化された布帛を含む傷手当用品を含む。
【0007】
処理の前と後の布帛の吸収率とは、British Pharmacopoeia 1993, Addendum 1995, p.1706 for Alginate Dressingsに記載された方法によって評価された吸収率値を意味するが、その中で特定したアルギネートを試験に付した布帛に置き換えたものであり、この方法により、単位面積当たりの重量で吸収率が与えられ、その後、重量比(g/g)の吸収率に変換される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
セルロース布帛は好ましくはセルロース繊維のみからなるが、ある割合の非セルローステキスタイル繊維又はゲル形成性繊維を含むことができる。セルロース繊維は既知の種類のものであり、そして綿のような天然繊維又はリオセルもしくはビスコースレイヨンのような人造繊維であってよく、このような繊維のブレンドを使用してもよい。ビスコースレイヨンのような低い湿潤強度のセルロース繊維から製造した、本発明による手当用品は、湿潤したときに、断片を脱離する傾向があり、従って、このような繊維の使用は、一般に、比較的に好ましくはないことを我々は観測した。セルロース繊維は連続フィラメントヤーン及び/又はステープル繊維を含むことができる。連続フィラメントヤーンの布帛は、このような布帛が取り扱い時又は傷からの除去時に繊維断片を脱離する傾向が少ないので好ましい。それでも、ステープル繊維からなる本発明による手当用品は、断片を脱離する傾向が低いことを驚くべきことに発見した。
【0009】
セルロース布帛は既知の種類のものであり、そして既知の方法で製造できる。布帛の基本重量は、一般に、30〜250g/m2の範囲である。セルロース布帛は織物であっても、編物であっても又は不織布、例えばハイドロエンタングル化された布帛もしくはニードルフェルトであってもよい。不織布は十分に強靭な構造であるべきであり、例えば、十分に高い繊維絡み合いを有し、水性溶液の吸収の後のカルボキシメチル化された布帛は1つのものとして傷から除去されうるように十分な機械一体性を有する。
【0010】
カルボキシメチル化工程は、布帛を強塩基、例えば、水酸化ナトリウム及びカルボキシメチル化剤、例えば、クロロ酢酸もしくはその塩、例えば、ナトリウム塩と接触させることにより行われる。これらの試薬は、別個に又は一緒に布帛に適用されてよい。反応は便利には水性系において行われる。この系は、好ましくは水と混和性の有機溶剤、例えば、エタノール又は工業用メチル化スピリッツを含み、カルボキシメチル化されたセルロースの膨潤及び溶解を抑制する。カルボキシメチル化反応の一般的な議論に関してはWO-A-94/16746を参照されたい。
【0011】
このようなカルボキシメチル化工程を行うための好ましい方法は以下のとおりであり、そしてセルロースIIの繊維のカルボキシメチル化のこのような方法は本発明の第2の態様を構成する。再生もしくは再構成されたセルロース繊維(セルロースII)は、4〜8重量%の水酸化ナトリウム、所望の置換度を達成するために必要な量のクロロ酢酸ナトリウム、50〜60重量%の水、及び、残部のエタノールを含む溶液に接触される。計算の目的で、溶液は繊維に適用される物質、繊維とともに導入される湿分及び/又はエタノールからなるものと考えられる。溶液は、もしエタノール源として工業用メチル化スピリッツを使用するならば、少量の割合のメタノールを含んでもよい。特定した最小値よりも低い割合の水が存在すると、均一なカルボキシメチル化となる傾向があり、それは本発明による手当用品を製造するのに望ましくないことを発見した。特定した最大値よりも高い割合の水が存在すると、反応度が低くなりすぎ、そして湿潤させたときに、カルボキシメチル化された繊維のすべり性が低くなりすぎることを発見した。一般に、綿のようなセルロースIの繊維に対しては満足できる結果のために、上記に特定したよりも低い割合の水が要求されることをさらに発見した。この方法は好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃で行われる。この方法は、好ましくは20〜90分間行われ、より好ましくは30〜60分間行われる。エタノールをC1〜C4基の別のアルコールで置き換えてもよい。一般に、より疎水性のアルコールであるほど、より低い割合の水が溶液中において望まれることが理解されるであろう。エタノール以外のアルコールの適切な割合は実験によって容易に決定できる。本発明の第2の態様の方法は緩い繊維、ヤーン又は布帛に対して行われることができる。
【0012】
以下に説明されるとおり、本発明によるカルボキシルメチル化された材料中のカルボキシメチル基の大半は非晶領域に存在し、そして少量の部分のみが結晶領域に存在するものと考えられる。結晶領域はポリマー構造中の絡み合い点として作用し、このため、良好な湿潤強度を布帛に提供し、また、カルボキシメチルセルロースの溶解を抑制するものと考えられる。また、比較的に低い吸収性は部分的にこの現象の結果として起こっているが、意図する使用における性能からは逸脱しないものと考えられる。それ故、過酷なカルボキシメチル化条件、特に、セルロースの結晶領域をアルカリセルロースに転化させ、それにより、結晶領域における反応を可能にするような濃度のアルカリ、温度又は時間の使用は避けるべきであることが理解されるであろう。
【0013】
本発明の第3の態様によると、IR分光分析によって測定したセルロース基の置換度(以下に規定のとおり)が0.12〜0.35の範囲であり、好ましくは0.15〜0.3又は0.2〜0.3の範囲であり、そしてNMRによって測定した結晶化度が10〜70%の範囲であり、好ましくは15〜60%又は20〜65%の範囲であり、より好ましくは30〜55%の範囲である、カルボキシメチル化されたセルロース製品が提供される。製品は孔開きフィルムを含むフィルム、フォーム又はスポンジ、又は、好ましくは繊維の形態をとることができる。本発明は、また、このような製品を含む布帛及び手当用品を含む。本発明の第3の態様による繊維を含む傷手当用品は、本発明の第1の態様の方法及び第2の態様の方法によって、便利に製造できる。
【0014】
セルロースの13 C NMRスペクトルは結晶性セルロースI及びIIに起因する80〜90ppm領域の特徴を含む。これらの特徴は、WO-A-93/12275及びWO-A-94/16746に開示されているような完全にカルボキシメチル化されたセルロースのスペクトルでは本質的に存在せず、従って、このような材料は非晶性であると考えられる。対照的に、本発明の第三の態様によるカルボキシメチル化されたセルロースのスペクトルは、セルロースI及びIIのスペクトルよりは一般に幾分低いレベルであるが、これらの特徴を有意な程度に示す。この観測は、カルボキシメチル基が結晶領域よりも非晶領域に主として存在するという理論と一致する。
【0015】
本発明の第4の態様によると、セルロースIIの製品を、水酸化ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、エタノール及び水を含む溶液と接触させる、前記製品をカルボキシメチル化するための方法が提供され、この方法は、水酸化ナトリウム/水の重量比が0.095〜0.115の範囲であり、好ましくは0.10〜0.11の範囲であり、そしてセルロース/水の重量比が0.22〜0.28の範囲であり、好ましくは0.24〜0.26の範囲であることを特徴とする。この方法は、好ましくは40〜80℃で行われ、より好ましくは50〜60℃で行われる。この方法は好ましくは20〜90分間行われ、より好ましくは30〜60分間行われる。水酸化ナトリウムの濃度はセルロースの膨潤最大値に対応するものであると考えられる。製品は、例えば、繊維であっても、このような繊維を含む製品、例えば、織物、編物又は不織布布帛であっても、フィルムであっても又はスポンジであってもよい。クロロ酢酸ナトリウムの量は、所望の程度の置換度を達成するように選択される。エタノールの量は、適切なリカー/製品比を達成するように選択される。スポンジ又は嵩高の不織布のような高体積の製品には、高いリカー/製品比が望ましいと理解されるであろう。本発明の第4の態様により製造される製品は、傷手当用品の製造に有用であり、そして本発明はこのような手当用品を含む。本発明の第4の態様の方法は本発明の第3の態様の製品を製造するために使用できる。
【0016】
リオセルから製造された本発明の第3の態様によるカルボキシメチル化された繊維又はリオセルから本発明の第1、第2又は第4の態様の方法により製造されたカルボキシメチル化された繊維は、WO-A-93/12275の自由膨潤法によって測定して、少なくとも8g/gの0.9(重量)%塩水溶液の吸収率を有することができ、そして少なくとも10cN/texの強力(靭性)を有することができる。
【0017】
湿潤時に、本発明による布帛手当用品はそのテキスタイル性を保持し、適度に膨潤し、そして望ましい表面すべり性又は「ゲル感触」を示す。特定の場合には、本発明によるこのような布帛手当用品がセルロース布帛よりも低い吸収性を示すが、それでも、湿潤した時には、指の間で擦ったときに望ましい程度のすべり性(滑性)を示すことができることを驚くべきことに発見した。ガイドラインとして、この内容で望ましい程度のすべり性とは薄い石鹸溶液又は希水性アルカリ(例えば、0.01〜0.1M NaOH)で濡らした指を擦るときに観測されるのと大体同等である。カルボキシメチル化された繊維のみからなる本発明による手当用品は傷に対して均質な表面を呈する点で有利である。
【0018】
本発明による手当用品は、既知のタイプの第2の層又は支持層、例えば、吸収性層、又は、傷を湿潤させた状態を維持するなどの傷環境を維持するように設計された層を含み、又は、かかる層との組み合わせで使用されてよい。支持層はカルボキシメチル化工程の前又は後に取り付けられてよい。有利には、本発明の手当用品は、ポリプロピレンのような融着性熱可塑性繊維の支持層を含み、それにより、さらなる支持層に熱結合を行うことができる。このような融着性支持層は、ニードル結合、ステッチボンディング、及び、好ましくはハイドロエンタングルメントのような不織布布帛の製造において知られている方法によって布帛手当用品中に取り込まれることができる。本発明の手当用品は医薬を取り入れてもよい。本発明の手当用品は本発明の布帛を2層以上含んでよい。
【0019】
本発明による手当用品は、時に、滲出性の傷、特に、慢性の傷のカバーとしての用途を特に見出す。
【0020】
IR分光分析
カルボキシメチル基によるセルロースの置換度(D.S.)を、以下のとおりにIR分光分析によって測定した。ビスコースレイヨン(D.S. O)、既知のD.S.(0.3,0.6,0.85及び1.05)のCMCの市販サンプル、WO-A-94/16746により製造された布帛(D.S. 0.4)及び本発明による布帛のIRスペクトルを記録した。既知のD.S.のサンプルのスペクトルの分析により、線形の等式が得られた。
D.S.= 0.678*I + 0.05
(式中、Iは1600〜1700cm-1(C=O伸縮)の範囲の積分ピーク強度/1200〜1000cm-1(C-O伸縮)の範囲の積分ピーク強度の比である)。本発明の関係で、D.S.とはこの等式を用いて評価した数値を意味する。
【0021】
本発明による布帛の表面IRスペクトルとバルクIRスペクトルとは非常に似通っている。このことは、カルボキシメチル化が表面領域だけでなく、全体の繊維にわたって起こったことを示唆する。
【0022】
WO-A-94/16746による布帛及び本発明による布帛のスペクトルは詳細に差異を示した。特に、O-H伸縮領域(3500〜3000cm-1)の広いピークの形状が異なり、本発明の布帛のC-O伸縮領域(1200〜1000cm-1)がさらなる特徴を示す。これらの差異は二次誘導スペクトルから最も明らかに見ることができる。レイヨン及びリオセルから得られる本発明の布帛は結晶性セルロースIIに起因する3445〜3480cm-1の鋭いピークを示し、一方、WO-A-94/16746によるサンプルは示さなかった。
【0023】
NMR 分光分析
カルボキシメチル化されたセルロースの結晶化度を以下のとおりにNMR分光分析によって測定した。固体状態の13 C NMRスペクトルをBrucker AC3000 (商標)分光器を用いて75MHzで得た。プロトン−炭素クロス分極及びマジックアングルスピニング(CPMAS)を用いて、7mmジルコニアロータ中に装填したサンプルで測定を行った。使用した条件は、5.0〜5.5kHzのマジックアングルスピニング速度及び90°プロトン調製パルス、次いで、2msの接触時間で、3sのパルスリサイクル時間であった。典型的に、1000回のスキャンが各サンプルに行われ、この数は好ましい最小数である。50〜120ppmの範囲にわたる強度を積分し、バックグランド補正を行った。%結晶化度を、100(S−R)/S(式中、Sは試験下のサンプルの積分強度であり、RはWO-A-94/16746の例1により調製したCMCの対照サンプルの積分強度である)の式を用いて計算した。
【0024】
理論に束縛されるつもりはないが、本発明による製品の結果は、非晶領域において実質的に均質なカルボキシメチル化がなされ、結晶領域において殆んど又は全くカルボキシメチル化されていないことと一致する。対照的に、WO-A-94/16746の布帛の結果は繊維全体が実質的に均質にカルボキシメチル化されていることと一致する。
【実施例】
【0025】
本発明は、以下の実施例により例示され、部及び割合は特に指示がない限り、重量基準である。
例1
以下のセルロース布帛を試験した。
A. 連続フィラメントビスコースレイヨン、縦編みニット(Tricotex, Smith & Nephewの 商標)、150g/m2
B. 綿紡績糸、織ガーゼ、227g/m2
C. リオセルステープル繊維、開口したハイドロエンタングル化された布帛、60g/m2
D. リオセル紡績糸、縦編み、50g/m2
E. 連続フィラメントリオセル、横編み、約100g/m2
F. 連続フィラメントリオセル、縦編み、40g/m2
G. 連続フィラメントリオセル、縦編み、44g/m2、(Fよりも硬い布帛構造である)、
H. 連続フィラメントリオセル、縦編み、68g/m2
【0026】
リオセルステープル繊維はCourtaulds plcにより、商標名COURTAULDS LYOCELLで供給されたものであり、そして現在は新名称のAkzo Nobel UK Limitedで同一事業体から入手可能である。連続フィラメントリオセルはAkzo Nobel AGから商標名NEWCELLで供給された。
【0027】
これらのセルロース布帛は、以下の一般法を用いて、カルボキシメチル化された。水酸化ナトリウム及びクロロ酢酸ナトリウムを、別個に、等体積の水中に溶解させた。2つの溶液を反応容器に、計量された量の工業用メチル化スピリッツ(IMS)とともに添加し、そして混合物を攪拌して、均質溶液を得た。布帛のサンプルを溶液中に浸漬し、そして容器をシールした。その後、容器を時折攪拌しながら予備加熱されたウォーターバスに必要な時間だけ貯蔵した。その後、布帛を容易から取り出し、手で搾って過剰のリカーを除去した。容器に氷酢酸を添加して溶液を酸性とし、そして布帛を溶液中に再配置した。その後、容器をウォーターバス中に再配置し、10分間攪拌した。その後、リカーを捨てた。布帛を結晶化皿に入れ、そして第一の洗浄リカーを添加した。その後、布帛及びリカーを熱洗浄リカーによる洗浄のためにウォーターバス中の反応容器に移した。第2の洗浄リカー及び柔軟仕上げ剤を含む最終洗浄リカーにより同様に処理し、その後、室温で乾燥するまで放置した。方法I及びIIとして以下に参照する2つの方法の詳細な条件を表に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
以下のII*として参照する方法は方法IIであるが、反応工程における温度は70℃である。
【0030】
カルボキシメチル化された布帛を塩水溶液で湿潤化し、そしてすべり性又は「ゲル感触」を手で評価し、そして任意の数値スケールで等級化した。より高い数値はより高いすべり性を有し、そして4〜10あたりの範囲の等級、好ましくは5の等級は、経験をベースとして、湿潤化された非付着性の手当用品にとって主観的に見て望ましい程度のすべり性を示す。表2に示す結果が得られた。
【0031】
【表2】

【0032】
布帛の吸収率を測定し、そして表3に示す結果が得られた。
【0033】
【表3】

【0034】
処理した布帛のD.S.測定値を表4に記録した。
【0035】
【表4】

【0036】
D.S.とゲル感触との関係はこのように概して線形である。
【0037】
例2
表5に示す差異及び詳細をもって、リオセルトウのサンプルを例1の方法IIによりカルボキシメチル化した。表5は実験結果も報告する。
【0038】
【表5】

【0039】
表5の最初の欄は未処理の対照を示す。自由膨潤吸収率(FSA)はWO-A-94/16746によって測定した。溶液重量はこの一連の実験を通して一定に維持した。
【0040】
例3
カルボキシメチル化されたセルロースのサンプルの結晶化度は13C NMRにより測定した。表6に示す結果が得られた。
【0041】
【表6】













【0042】
これらの測定は例1に記載したサンプルで行ったが、(1)Cサンプルを例1に追加し、そして(2)CMCサンプルはWO-A-94/16746の教示により製造したカルボキシメチル化された繊維であり、以下により完全に記載されるとおりである。減少する結晶化度は、一般に、増加するゲル感触に対応することが表2及び6を比較することにより判る。
【0043】
CMCサンプルを以下のとおりに調製した。空気乾燥リオセル繊維、水酸化ナトリウムの水溶液、エタノール、及び、クロロ酢酸ナトリウムの水溶液を反応器に装填し、絶乾セルロース(9kg)、水酸化ナトリウム(3.8g)、モノクロロ酢酸ナトリウム(5.7kg)、水(24.3kg、繊維とともに導入される水を含む)及びエタノール(26.1kg)を含む混合物を生じる。このように、NaOH/水の比は0.156であり、そしてセルロース/水の比は0.370であった。反応器を70℃で65分間加熱した。酢酸(7 l)を混合物に添加し、そして温度を70℃に10分間維持した。窒素を吹き込むことにより過剰のリカーを除去した。繊維を、水(23kg)及びエタノール(30kg)中のクエン酸(0.3kg)の溶液で、70℃で10分間洗浄した。過剰のリカーを窒素を吹き込むことにより除去した。洗浄及び吹き込みの工程を繰り返した。その後、繊維を、水(6kg)及びエタノール(48kg)中の柔軟仕上げ剤(0.3kg)の溶液により、70℃で10分間洗浄した。過剰のリカーを窒素を吹き込むことにより除去し、CMC繊維を空気乾燥機中で乾燥した。
【0044】
例4
リオセルステープル繊維(33g/m2)のウェブ及び不織布プロピレン支持スクリム(7.5g/m2)をレイアップし、次いで、リオセル側からハイドロエンタングル化(6ヘッド:2×40及び4×60バール)することによりラミネートを製造した。得られたラミネート中のリオセル繊維を、例1の方法IIによってカルボキシメチル化した。カルボキシメチル化されたラミネートのポリプロピレン側は家庭用アイロンを用いた熱の適用によりビスコースステープル繊維(330g/m2)の不織布布帛支持体に容易に付着された。
【0045】
同様の結果は、ハイドロエンタングル化(8ヘッド:2×40、4×60及び2×80バール)されたリオセルステープル繊維(48g/m2)のウェブ及びポリプロピレンスクリム(12 g/m2)から得られた。
【0046】
例5
セルローススポンジ(25g、約5mmの厚さのシートの形態、家庭用洗浄目的で使用されるもの、バルク密度0.08g/ml)を1000mlフラスコ中に入れた。このフラスコに、40gの水中の9.55gの水酸化ナトリウムの溶液及び44gの水と270gのIMSとの混合物中の14.35gのクロロ酢酸ナトリウムの溶液を加えた。水の合計量(スポンジからの水を含む)は89.2gであった。このように、NaOH/水の比は0.107であり、そしてセルロース/水の比は0.252であった。フラスコを70℃で1時間加熱した。このフラスコに、17.5mlの氷酢酸を添加した。フラスコを5〜10分間放置した。リカーを捨てて、スポンジを、84mlの水と137mlのIMSとの混合物中の0.8gのクエン酸の溶液で洗浄した。洗浄リカーを捨てて、洗浄工程を繰り返した。洗浄リカーを再び捨てて、そして、スポンジを、0.85グラムのTween仕上げ剤、25mlの水及び265mlのIMSの混合物で洗浄した。リカーを捨てて、そしてスポンジを、30gのグリセロール、30mlの水及び40mlのIMSの混合物で洗浄した。リカーを捨てて、そしてスポンジを周囲温度で乾燥した。グリセロールは、スポンジが硬くなりそして乾燥時にボード状になるのを防止するための柔軟剤として作用した。これらの反応条件は低いバルク密度を提供するために、より多量の液体体積を使用する点で本質的に例1とは異なる。もし圧縮されたスポンジを使用するならば、反応体積は低くされてよい。カルボキシメチル化の前後でのスポンジの「ゲル感触」はそれぞれ0及び5であった。カルボキシメチル化されたスポンジのD.S.は0.30であり、そして結晶化度は30%であった。
【0047】
例6
例1の布帛Aのサンプル(50g空気乾燥)は例1の一般手順によりカルボキシメチル化された。処理溶液は、19.1gのNaOH、28.7gのクロロ酢酸ナトリウム、121.1gのIMS及び171.0gの水(布帛からの湿分を含む)を含んだ。このように、NaOH/水の比は0.112であり、セルロース/水の比は0.263であった。反応を70℃で40分間行った。得られた製品の「ゲル感触」は5であり、D.S.は0.15であり、そして結晶化度は17%であった。
【0048】
例7
例1の布帛Aのロール(1250g空気乾燥、10%湿分、17cm直径×22cm長さ)を例1の一般手順によってキヤー中でカルボキシメチル化した。処理溶液は、478.1gのNaOH、717.2gのクロロ酢酸ナトリウム、4241.8gのIMS及び4275gの水(布帛からの湿分を含む)を含んだ。このように、NaOH/水の比は0.112であり、セルロース/水の比は0.263であった。反応を70℃で40分間行った。得られた製品の「ゲル感触」は6であり、D.S.は0.23であり、そして結晶化度は24%であった。
【0049】
例8
リオセル繊維の嵩高の開口された不織布布帛のサンプル(50g空気乾燥、10%湿分、65g/m2の基本重量)を例1の一般手順によってカルボキシメチル化した。処理溶液は、19.1gのNaOH、28.7gのクロロ酢酸ナトリウム、231.2gのIMS及び171.0gの水(布帛からの湿分を含む)を含んだ。このように、NaOH/水の比は0.112であり、セルロース/水の比は0.263であった。反応を65℃で30分間行った。得られた製品の「ゲル感触」は5であり、D.S.は0.31であり、そして結晶化度は26%であった。
【0050】
例9
例8において使用した布帛のロール(4.50kg空気乾燥、39cm直径×28cm長さ)を例1の一般手順によってキヤー中でカルボキシメチル化した。処理溶液は、1.72kgのNaOH、2.58kgのクロロ酢酸ナトリウム、44.89kgのIMS及び15.77kgの水(布帛からの湿分を含む)を含んだ。このように、NaOH/水の比は0.109であり、セルロース/水の比は0.257であった。反応を60℃で30分間行った。得られた製品の「ゲル感触」は4であり、ロールの外側と内側でのD.S.はそれぞれ0.18及び0.17であり、そしてロールの外側と内側での結晶化度はそれぞれ28%及び31%であった。
【0051】
例10
綿ガーゼのロール(23g/m2、7.50kg空気乾燥、6.75kg絶乾重量)(セルロースI)を例1の一般手順によってキヤー中でカルボキシメチル化した。処理溶液は、2.87kgのNaOH、4.30kgのクロロ酢酸ナトリウム、19.60kgのIMS及び18.23kgの水(布帛からの湿分を含む)を含んだ。このように、NaOH/水の比は0.157であり、セルロース/水の比は0.370であった。反応を70℃で65分間行った。得られた製品の「ゲル感触」は6であり、D.S.は0.16〜0.21であり、そして結晶化度は42%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチル化の後の布帛の吸収率(規定のとおり)がカルボキシメチル化の前の布帛の吸収率(規定のとおり)よりも3g/g以下で大きく、かつ、IR分光分析によって測定した、カルボキシメチル化された布帛中のカルボキシメチル基によるセルロースの置換度(規定のとおり)が0.12〜0.35の範囲であるように、セルロース布帛をカルボキシメチル化させる工程を含む、傷手当用品の製造方法。
【請求項2】
カルボキシメチル化の後の布帛の吸収率(規定のとおり)はカルボキシメチル化の前の布帛の吸収率(規定のとおり)よりも2.5g/g以下で大きいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
カルボキシメチル化の後の布帛の吸収率(規定のとおり)はカルボキシメチル化の前の布帛の吸収率(規定のとおり)よりも1g/g以下で大きいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
IR分光分析によって測定した、カルボキシメチル化された布帛中のカルボキシメチル基によるセルロースの置換度(規定のとおり)は0.2〜0.3の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記布帛はセルロース連続フィラメントヤーンを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記布帛はリオセル繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
セルロースIIの繊維をカルボキシメチル化するための方法であって、
IR分光分析によって測定した、カルボキシメチル化された繊維中のカルボキシメチル基によるセルロースの置換度(規定のとおり)が0.12〜0.35の範囲となるように、4〜8重量%の水酸化ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、50〜60重量%の水及び残部のエタノールを含む溶液と前記繊維を接触させる、方法。
【請求項8】
IR分光分析によって測定した、カルボキシメチル化された繊維中のカルボキシメチル基によるセルロースの置換度(規定のとおり)は0.2〜0.3の範囲である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
IR分光分析によって測定した、セルロース基の置換度(規定のとおり)は0.12〜0.35の範囲であり、かつ、NMRによって測定した結晶化度(規定のとおり)は10〜70%の範囲である、カルボキシメチル化されたセルロース製品。
【請求項10】
IR分光分析によって測定した置換度(規定のとおり)は0.2〜0.3の範囲であることを特徴とする、請求項9記載のカルボキシメチル化された製品。
【請求項11】
NMRによって測定した結晶化度(規定のとおり)は15〜60%の範囲であることを特徴とする、請求項9及び10のいずれか1項記載のカルボキシメチル化された製品。
【請求項12】
繊維の形態であるか、又は、このような繊維を含む布帛の形態であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項記載のカルボキシメチル化された製品。
【請求項13】
リオセルから形成され、そしてWO-A-93/12275の自由膨潤法によって測定して、0.9(重量)%塩溶液の吸収率が少なくとも8g/gであり、そして強力が少なくとも10cN/texであることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項記載のカルボキシメチル化された製品。
【請求項14】
フォーム又はスポンジの形態であることを特徴とする、請求項9〜11又は13のいずれか1項記載のカルボキシメチル化された製品。
【請求項15】
水酸化ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、エタノール及び水を含む溶液と、セルロースIIの製品を接触させる、前記製品をカルボキシメチル化するための方法であって、
水酸化ナトリウム/水の重量比は0.095〜0.115の範囲であり、そしてセルロース/水の重量比は0.22〜0.28の範囲であることを特徴とする、方法。
【請求項16】
水酸化ナトリウム/水の重量比は0.10〜0.11であることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
セルロース/水の重量比は0.24〜0.26であることを特徴とする、請求項15及び16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記製品は繊維であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記製品はスポンジであることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか1項記載の方法により製造され、又は、請求項7及び8のいずれか1項記載の方法により製造された繊維を含み、又は、請求項9〜14のいずれか1項記載の製品を含み又は、請求項15〜19のいずれか1項記載の方法により製造された製品を含む、傷手当用品。
【請求項21】
支持層を含むことを特徴とする、請求項20記載の傷手当用品。
【請求項22】
前記支持層は融着可能な熱可塑性繊維を含むことを特徴とする、請求項21記載の傷手当用品。

【公開番号】特開2011−255215(P2011−255215A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−203050(P2011−203050)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2000−557871(P2000−557871)の分割
【原出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(508080986)コンバテック リミティド (1)
【Fターム(参考)】