説明

傷検査装置

【課題】 検体上を所望の光強度分布をもって照明できるように、照明手段の改良を図る。
【解決手段】 照明系を発光体1A,すりガラス1Bおよびフィルタ1Cから構成し、フィルタ1Cを微小面積の遮光部分と透光部分とが隣接するようにし、かつ、照明光の光軸と直交する方向に光軸から離れるに従って遮光部分(黒く塗りつぶした部分)の密度が高くなるようにすることで、すりガラス等の拡散体だけの場合よりも、所望の光強度分布となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鋼板やフィルム等の長尺物、または円板状部材等の表面の傷の有無を光学的に検出するための傷検査装置、特にその照明手段の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の従来装置として、例えば図4に示すものが知られている。同図において、1は光源、2A,2B,2Cは光センサ、3は被検体、4は演算部、5は被検体3の駆動制御部である。すなわち、光源1はその照射光の光軸と直交する方向に中心が明るく、外周が暗い光度分布を有しており、被検体3からの反射光の光軸と直交する方向には、光センサがここでは3個(2A,2B,2C)配置されている。光センサ2A,2B,2Cは被検査体3からの反射光を受光し、演算部4はその光量に応じた受光量分布パターンを作成する。この受光量分布パターンは検査点毎に得られるが傷がない正常の場合のパターンは一定であるので、演算部4はこの受光量分布パターンの変化態様から、被検体表面の良否を判定することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、光源1は被検体3上を所望の光強度分布となるよう照明するため、発光体1Aからの光をすりガラス1B等の拡散体を介して照明するようにしている。しかし、すりガラスだけでは必ずしも良好な光強度分布とならない、という問題がある。したがって、この発明の課題は、被検体を良好な光強度分布となるようにすることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決すべく、請求項1の発明では、被検体表面を照射する位置に設置され、照射光の光軸と直交する方向に中心が明るく外周が暗い光強度分布を有する光源と、被検体からの反射光の光軸と直交する方向に3個以上配置される光センサと、この光センサにより受光された反射光の光量値にもとづき受光量分布パターンを作成するパターン作成手段と、この受光量分布パターンの変化から被検体表面の良否を判定する判定手段とを備えてなる傷検査装置において、前記光源を発光体とすりガラスとフィルタとから構成し、このフィルタは微小面積の遮光部分と透光部分が互いに隣接して多数配置され、かつ、光源の照射光の光軸と直交する方向に光軸から離れるに従って遮光部分の密度が順次高くなるようにしている。
【0005】また、請求項2の発明では、被検体表面を照射する位置に設置され、照射光の光軸と直交する方向に中心が明るく外周が暗い光強度分布を有する光源と、被検体からの反射光の光軸と直交する方向に3個以上配置される光センサと、この光センサにより受光された反射光の光量値にもとづき受光量分布パターンを作成するパターン作成手段と、この受光量分布パターンの変化から被検体表面の良否を判定する判定手段とを備えてなる傷検査装置において、前記光源を発光体と集光レンズとマイクロレンズアレイとから構成し、そのマイクロレンズの開口数を所定値以下の範囲で分布させるようにしている。
【0006】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の第1の実施の形態を説明するための概要図である。同図(a)からも明らかなように、すりガラス1Bにフィルタ1Cを設けた点が特徴である。これにより、発光体1Aからの光は、すりガラス1Bおよびフィルタ1Cを順に通って、被検体表面を照射する。フィルタ1Cの遮光部分は、例えばクロム(Cr)等の金属膜をすりガラス1Bの裏面に蒸着して形成する。こうすれば、フィルタ1C上の場所毎の透過率は遮光部分の密度によって変わるので、その密度分布を選ぶことにより、被検体上に所望の光強度分布を得ることできる。光強度分布の例を、同図(b)に示す。ここでは、被検体への入射角が所定の角度近辺で光強度が最大で、その周辺になる程小さくなるようにしている。
【0007】図2はこの発明の第2の実施の形態を説明するための概要図である。同図(a)からも明らかなように、集光レンズ1Dとマイクロレンズアレイ1Eを設けた点が特徴である。これにより、発光体1Aからの光は、集光レンズ1Dによってほぼ平行光となり、マイクロレンズアレイ1Eに入射する。マイクロレンズアレイ1Eはマイクロ凹レンズ群から構成され、各マイクロ凹レンズはその開口数が互いに異なるようにされる。
【0008】このため、各マイクロ凹レンズを通った光は、その開口数に応じた角度の範囲内に発散され、被検体表面に達する。ここで、開口数の小さな、すなわち発散角の小さなマイクロ凹レンズのマイクロレンズアレイに含まれる割合を多くすると、被検体を照射する光には、入射角の小さな光が多く含まれることになる。こうして、マイクロレンズの開口数の分布により、被検体上での入射角に対する光強度分布を所望の形状にすることができる。同図(b)に光強度分布の例を示し、同図(c)に一定入射角の光強度分布の例を示す。
【0009】図3にマイクロレンズアレイの具体例を示す。すなわち、各レンズの開口数を分布させるために(a)に示すように、曲率は一定で開口径の異なるものを分布させるか、または、(b)に示すように、開口径は一定で曲率をレンズ毎に変えることにより実現することができ、これらを混在させることも可能である。また、同様な曲率の分布を持つ、凸レンズからなるマイクロレンズアレイであっても、同じ機能を有する。
【0010】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、すりガラス等の拡散体だけの場合に比べ、所望の光強度分布を容易に得ることができる利点がある。また、フィルタ上の場所毎に蒸着金属膜の厚さを変えて透過率分布を形成するフィルタに比べ、充分に厚い一定厚さの金属膜を蒸着して製作できるので、製作も容易である。また、請求項2の発明によれば、すりガラス等の拡散体だけの場合に比べ、所望の光強度分布を容易に得ることができるだけでなく、決められた角度範囲内にのみ光が拡散するので、光の利用効率を向上することができる。さらに、検査点からマイクロレンズアレイを見込む角度が、検査点を照明する照明光に要する入射角範囲より大きい限り、検査点からずれた位置でも入射角に対する光強度分布が変わらないので、光センサの視野の検査点からの位置ずれに対する公差を緩和することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態を説明するための概念図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態を説明するための概念図である。
【図3】マイクロレンズアレイの構成例を示す断面図である。
【図4】従来例を示す概要図である。
【符号の説明】
1…光源、1A…発光体、1B…すりガラス、1C…フィルタ、1D…集光レンズ、1E…マイクロレンズアレイ、2A,2B,2C…光センサ、3…被検体、4…演算部、5…駆動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体表面を照射する位置に設置され、照射光の光軸と直交する方向に中心が明るく外周が暗い光強度分布を有する光源と、被検体からの反射光の光軸と直交する方向に3個以上配置される光センサと、この光センサにより受光された反射光の光量値にもとづき受光量分布パターンを作成するパターン作成手段と、この受光量分布パターンの変化から被検体表面の良否を判定する判定手段とを備えてなる傷検査装置において、前記光源を発光体とすりガラスとフィルタとから構成し、このフィルタは微小面積の遮光部分と透光部分が互いに隣接して多数配置され、かつ、光源の照射光の光軸と直交する方向に光軸から離れるに従って遮光部分の密度が順次高くなるように形成されていることを特徴とする傷検査装置。
【請求項2】 被検体表面を照射する位置に設置され、照射光の光軸と直交する方向に中心が明るく外周が暗い光強度分布を有する光源と、被検体からの反射光の光軸と直交する方向に3個以上配置される光センサと、この光センサにより受光された反射光の光量値にもとづき受光量分布パターンを作成するパターン作成手段と、この受光量分布パターンの変化から被検体表面の良否を判定する判定手段とを備えてなる傷検査装置において、前記光源を発光体と集光レンズとマイクロレンズアレイとから構成し、そのマイクロレンズの開口数を所定値以下の範囲で分布してなることを特徴とする傷検査装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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