説明

傾動金型に付属するホッパ装置

【課題】本発明は、金型の温度変化等によって、溶湯を溜めるホッパとこのホッパに連結される金型の間から、高圧ガスの漏れを防止する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】金型11にホッパ装置12を備え、このホッパ装置12に溶湯を溜め、金型11が傾けられたときに溶湯30を金型11のキャビティ22へ注ぐ傾動式重力鋳造装置10において、ホッパ装置12は、金型11を構成する固定型15に固定されるとともに開口面33が金型11の分割面23に略合致している容器部24と、この容器部24の開口25を塞ぐ蓋部材26と、この蓋部材26に接続されるガス供給手段32とからなり、蓋部材26と可動型16から延ばされたピース61の間にシール部材28が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾動金型に付属するホッパ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金型に備えられ、溶湯を溜め、金型が傾けられたときに溶湯を湯口を介して金型のキャビティへ注ぐホッパ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2746814号明細書(図7)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図15は従来の技術の基本構成を説明する図である。
(a)において、鋳造金型100は、下型101と横型102、102と上型103とにより構成されている。横型102上型103間の一部には上方へ開口しキャビティ105へ連通する湯口106が形成されている。そして、この湯口106には溶湯107を溜めるホッパ108が取り付けられている。
【0004】
(b)において、鋳造金型100をホッパ108が上に向くように略90°傾けて、ホッパ108内に溜めておいた溶湯107をキャビティ22内に注湯することで、鋳造品を得る。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、押し湯109の量が十分でないことから、鋳造品110の組織を緻密にすることができない虞がある。そこで、次図に示すような改良技術が考えられる。
【0006】
図16は図15を改良した図であり、ホッパ108の開口を塞ぐ蓋部111を設け、ホッパ108の一部に高圧ガスを供給するガス供給口112を設けた。そして、このガス供給口112からホッパ108内に高圧ガスを供給し、ホッパ108内を高圧にするようにした。ホッパ108内を高圧にすることで、必要とする押し湯109の量を減らすことができ、組織を緻密にした鋳造品を得ることができる。
【0007】
ところで、湯口107が、横型102と上型103との間に設けられていることから、横型102にホッパ108が取り付けられ、上型103に近接して蓋111が配置される。
【0008】
横型102と上型103は、互いに大きさや形状が異なるため、注湯後の温度上昇に差が出る。上型103が先行して膨張する場合には、想像線で示すように上型103の側面103aが蓋111に接近する。
この場合に、蓋111と上型103との間にクリアランスsを設けておくと、側面103aが蓋111に当たることを防止することができる。逆に、クリアランスsが過小であったり、ゼロであると、蓋111が破壊される。
【0009】
このように、クリアランスsを設けることで、熱膨張対策を講じることは、不可欠である。
【0010】
しかし、注湯直後には上型103は実線で示した位置にあるため、クリアランスsから、高圧ガスが漏れ、高圧ガスの消費量が増大するという不都合が発生する。また、漏れる高圧ガスに運ばれて溶湯が吹き出るという不具合も発生する。
高圧ガスの漏れは、ガス費用の増加だけでなく、作業環境の悪化にも繋がるので、ガス漏れ対策が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金型の温度変化等によって、溶湯を溜めるホッパとこのホッパに連結される金型の間から、高圧ガスの漏れを防止する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、金型に備えられ、溶湯を溜め、金型が傾けられたときに溶湯を湯口を介して金型のキャビティへ注ぐホッパ装置において、ホッパ装置は、金型を構成する固定型と可動型の一方に固定されるとともに開口面が金型の分割面に略合致している容器部と、この容器部の開口を塞ぐ蓋部材と、この蓋部材又は容器部に接続され高圧ガスを供給するガス供給手段とからなり、蓋部材は、金型に臨む辺が開口面に対して傾斜している第1傾斜面とされ、この第1傾斜面は、固定型と可動型の他方から延ばされたピースの先端に設けられている第2傾斜面と平行に対向配置され、シール部材を介して気密が保たれるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、容器部は、金型のキャビティに繋がる湯口を複数備え、これらの湯口へ溶湯を案内する溶湯ガイド部材を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、容器部に、断熱材を内張りしたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、シール部材は、シリコン系、又はフッ素系ゴムで構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、湯口は、分割面に設けることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、溶湯は、アルミニウム合金の溶湯であり、キャビティは中子を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、蓋部材は、金型に臨む辺が開口面に対して傾斜している第1傾斜面とされ、この第1傾斜面は、固定型と可動型の他方から延ばされたピースの先端に設けられている第2傾斜面と平行に対向配置され、シール部材を介して気密が保たれるように構成されている。
【0019】
容器部は、固定型と可動型の一方に固定される。また、容器部を覆う蓋部材は、固定型と可動型の他方から延設されたピースの先端に連結されている。蓋部材に備え開口面に対して傾斜している第1傾斜面と、ピースに備える第2傾斜面との間に、シール部材が介在されているので、熱膨張量の差によって、ホッパ装置が取り付けられている上型の側面の位置と横型の側面の位置とが一致していないとき(具体的には一方が他方に対して上若しくは下や右若しくは左にずれているとき)でも、傾斜面が位置ずれを吸収することができる。
【0020】
この結果、蓋部材と金型の間の密閉が保たれる。容器部は金型側に固定され、蓋部材と金型側に設けられているピースの間に密閉が保たれているので、ホッパ装置と金型の間から高圧ガスの漏れを防止することができる。
高圧ガスなどの漏洩が防止できるため、溶湯の無駄をなくすことができる。
【0021】
請求項2に係る発明では、容器部は、金型のキャビティに繋がる湯口を複数備え、これらの湯口へ溶湯を案内する溶湯ガイド部材を備えている。金型が傾けられたときに、溶湯ガイド部材により容器部内における溶湯の湯切りを素早く行うことができる。従って、容器部内の溶湯を無駄なく利用することができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、容器部に、断熱材を内張りしたので、溶湯温度が下がりにくくなる。このため、好ましい注湯温度を維持したまま、キャビティ内に溶湯を注湯することができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、シール部材は、シリコン系、又はフッ素系ゴムで構成したので、高温及び加圧条件が断続的に発生する条件下においても、シール部材は変質しにくい。従って、長期間にわたって第1傾斜面と第2傾斜面間のシール性を維持させることができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、湯口は、分割面に設けるので、金型側に設けられる湯口を簡便に構成することができる。湯口の構造が簡便な構造となるため、金型費用を抑えることができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、溶湯はアルミニウム合金の溶湯であり、キャビティは中子を備える。
中子を利用してアルミニウム合金を重力鋳造するときに、押し湯の量を大幅に減らすことができる。押し湯の量が減るため、材料の歩留まりを高めることができる。また、キュアタイム(凝固時間)を短縮することができ、生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るホッパ装置を備える傾動式重力鋳造装置の斜視図であり、重力鋳造装置10は、傾動式の金型11(「傾動金型11」とも云う。)と、この金型11の端面10aに取り付けられ金型11に溶湯を供給するホッパ装置12と、金型11及びホッパ装置12を一体で傾動させる金型傾動機構13とを主要な構成とする。
【0027】
金型11は、固定型15と、可動型16とからなり、可動型16には、金型開閉手段17が設けられている。
金型傾動機構13は、金型11の固定型15から左右に延出され傾動の軸となる傾動軸18と、傾動軸18を支持する支持アーム19と、この支持アーム19に取り付けられている傾動駆動手段21とからなる。
なお、ホッパ装置12の詳細については後述する。
【0028】
図2は図1の要部断面図であり、傾動金型11は、下型としての固定型15と、上型としての可動型16とからなり、固定型15と可動型16にはキャビティ22が設けられている。固定型15と可動型16の合わせ面は、金型の分割面23ともいう。
【0029】
ホッパ装置12は、溶湯を溜める容器部24と、この容器部24の開口25を上方から覆って密閉する蓋部材26と、容器部24に蓋部材26を止める連結手段たる締結手段27とを備え、溶湯の漏れを防止するため、容器部24と蓋部材26の間にはシール部材を介在させる。
なお、前記連結手段は、ボルトやナットを含む螺合する部材の他に、流体圧シリンダも使用することができる。すなわち、螺合する部材である締結手段27や図示しない流体圧シリンダのような連結手段は、連結力を可変にすることができる。例えば、締結手段27を利用するものでは、ボルトあるいはナットが着座した後の締め付ける回転数により、シール部材の潰し代をコントロールできる。また、流体圧シリンダのような連結手段を利用するものでは、流体圧シリンダ内の圧力を変化させることにより、シール部材の潰し代をコントロールでき、容器部24と蓋部材26との間の密着性を向上させることができる。
【0030】
また、蓋部材26には、溶湯を注入する溶湯口31が設けられ、この溶湯口31には容器部24の内外を遮断するプラグ29が開閉可能に設けられている。
蓋部材26には、高圧ガスを供給するガス供給手段32が取り付けられている。
【0031】
ホッパ装置12は、金型11を構成する固定型15に固定されている。詳細には、容器部24はその開口面33が金型の分割面23に略合致する位置に配置されている。
なお、ホッパ装置12を、可動型16に固定することは差し支えない。また、高圧ガスを供給するガス供給手段32を容器部24に接続することは差し支えない。
【0032】
すなわち、傾動式重力鋳造装置10は、ホッパ装置12を備え、このホッパ装置12に溶湯30を溜め、金型傾動機構(図1の符号13)によって、金型11が傾けられたときに溶湯を湯口34を介して金型11のキャビティ22へ注ぐというものである。
【0033】
湯口は、分割面23に設けるので、金型11側に設けられる湯口34を簡便に構成することができる。湯口34の構造が簡便な構造となるため、金型費用を抑えることができる。
図中、35は固定型15から容器部24の底に延設して容器部24を支持する補強リブである。
【0034】
図3は図2の3部拡大図であり、ホッパ装置12を構成する容器部24に、断熱材41を内張りすることを示す。
断熱材41は、容器部24の内側に順に第1層部42と第2層部43と第3層部44とを重ねた3層構造をもつ。本実施例において、第1層部42には、ゾノトライト系けい酸カルシウム板が用いられ、第2層部43には、繊維質不定形断熱材が用いられ、第3層部44にはBN離型材コートが用いられている。
【0035】
このように、容器部24に、断熱材41を内張りしたので、溶湯温度が下がりにくくなる。このため、好ましい注湯温度を維持したまま、キャビティ(図2の符号22)内に溶湯を注湯することができ、所定品質をもつ鋳造品を得ることができる。
【0036】
図4は図2の4−4線断面図であり、容器部24は、金型11のキャビティ22に繋がる湯口34を2つ備え、これらの湯口34、34へ溶湯を案内する溶湯ガイド部材45を備えている。
【0037】
金型11が傾けられたときに、溶湯ガイド部材45により容器部内における溶湯の湯切りを素早く行うことができる。従って、容器部内の溶湯を無駄なく利用することができる。
なお、溶湯の通路である湯口34の数は2つにしたが、3つでも良いし、4つでも良く、任意の数に設定することができる。
【0038】
図5はホッパ装置に備え溶湯を注入する蓋を開閉する蓋開閉機構を説明する図及びその作用図である。
(a)において、蓋開閉機構47は、容器部24の底部24sに第1ブラケット51及び第1軸52を介して取り付けられる駆動シリンダ53と、この駆動シリンダ53のロッド先端部54にロッド軸54J及びアーム部材55を介して取り付けられる第2軸56と、この第2軸56を回動可能に支持するとともに蓋部材26に固定されている第2ブラケット57と、第2軸56に取り付けられ第2軸56の回動とともに回動するプラグ開閉アーム58と、このプラグ開閉アーム58に取り付けられているプラグ29とからなる。
【0039】
(b)において、駆動シリンダ53のロッド先端部54を延ばすと、アーム部材55が第2軸56を中心に矢印b方向に回動し、第2軸56の回動に伴い、プラグ開閉アーム58が回動し、プラグ29を持ち上げ、溶湯口31を開けることができる。
(a)に戻って、駆動シリンダ53のロッド先端部54を縮めると、プラグ開閉アーム58が第2軸56を中心に矢印a方向に回動し、溶湯口31を閉めることができる。
【0040】
図6は図2の6部拡大図であり、蓋部材26が金型11に臨む端部59には、シール部材28が取り付けられ、このシール部材28に当接するように可動型16にはピース61が取り付けられている。
【0041】
詳細には、蓋部材26の端部59には、開口面(図2の符号33)に対して傾斜させた第1傾斜面62が形成され、この第1傾斜面62には、シール部材28が突設され、このシール部材28の上面28aには、ピース61に形成されている第2傾斜面63が当接し、ピース61の後端61bは可動型16の側面16sに取り付けられている。第1傾斜面62と第2傾斜面63とは平行に配置されている。
【0042】
図7は図6の7−7線断面図であり、シール部材28は蓋部材26の第1傾斜面62に、コ字状に配置されている。
シール部材28は、フッ素系、又はシリコン系ゴムで構成したので、高温及び加圧条件が断続的に発生する条件下において、シール部材28は変質しにくい。従って、長期間にわたって第1傾斜面62と第2傾斜面63間のシール性を維持させることができる。
【0043】
図8は図7の8−8線断面図であり、第1傾斜面62にシール溝部65を形成し、このシール溝部65にシール部材28を取り付けた。
本実施例において、シール部材28は、断面矩形形状の部材である。
なお、シール部材28は、断面円形状あるいは断面楕円形状の部材でも良い。この場合において、シール溝部65は、いわゆる、あり溝形状にすれば好適である。あり溝形状にすれば、シールする際、シール部材28の変形に対応する逃げのスペースがあり溝にはあり、シール部材28は横に変形することができるので、シール部材28には過剰な負荷がかかることはない。シール部材28にかかる負荷は少ないため、劣化が少なく、シール部材28の長寿命化を図ることができる。また、あり溝の場合には、ピース61が上方からシール部材に28に当接して押さえ、このシール部材28を横方向に変形させてシールする際、3点で確実にシールすることができ、シール溝部65の断面形状が、前述の略矩形形状であるものと較べて、シールを確実に行うことができる。
【0044】
図6に戻って、蓋部材26は、金型11に臨む辺が開口面33に対して傾斜している第1傾斜面62とされ、この第1傾斜面62は、可動型16から延ばされたピース61に設けられている第2傾斜面63と平行に対向配置され、シール部材28を介して気密が保たれるように構成されている。
なお、ピース61を固定型15から延設させ、容器部24を、可動型16に固定することは差し支えない。
【0045】
図9は蓋部材とピース間のシール状態を説明する作用図である。
(a)において、ピース61と蓋部材26の端部59間は、隙間Laでシールされ、(b)において、(a)に較べて、例えば、可動型16が水平方向に膨張するときに、隙間Lb(Lb<La)でシールされ、(c)において、例えば、可動型16が鉛直方向に膨張するときに、隙間Lcでシールされ、(d)において、(c)と反対に、例えば、可動型16が鉛直方向に収縮するときに、隙間Ldでシールされている。
【0046】
従って、熱膨張量の差によって、ホッパ装置12が取り付けられている可動型16の側面16sの位置と固定型(図2の符号15)の側面15sの位置とが一致していないときでも、シール部材28によって、第1傾斜面62と第2傾斜面63との間をシールすることができる。つまり、蓋部材26と金型11の間の密閉を保つことができる。
【0047】
以上に述べたホッパ装置の作用を次に述べる。
図10は溶湯を注入しホッパ装置に溶湯を溜める溶湯準備工程を説明する図であり、ホッパ装置12の上部に設けられているプラグ29を開け、柄杓66で所定温度に管理したアルミニウム合金溶湯30をホッパ装置の容器部24に注ぐ。
【0048】
図11は金型を傾けて溶湯を金型のキャビティへ注ぐ注湯工程を説明する図であり、プラグ29を閉め、傾動式重力鋳造装置10を矢印α方向に傾動させ、ホッパ装置12内に溜めておいた溶湯30をキャビティ22内に注入する。
【0049】
図12はキャビティ内の溶湯を加圧するガス加圧工程を説明する図であり、ホッパ装置12の水平面に対する傾動角度が90°となったとき、ガス供給手段32からホッパ装置12に高圧ガスを供給する。68はホッパ装置12内の圧力を検出する手段である。
【0050】
このように、ホッパ装置12を傾動させた後、高圧ガスで湯口34を加圧することによって、必要な押し湯の量を大幅に減らし、鋳造組織を緻密にすることができる。押し湯の量が減るため、材料の歩留まりを高めることができる。
【0051】
本実施例において、高圧ガスを供給する加圧開始タイミングは、ホッパ装置12の水平面に対する傾動角度が90°となるときに行われるが、金型を傾動させる途中で、高圧ガスの供給を開始することは差し支えない。加圧開始タイミングは、傾動角度が20°〜90°の範囲で任意に設定可能である。好ましくは、傾動角度が40°〜50°のときに加圧を開始する。傾動角度が40°〜50°のときに、湯口34が溶湯で塞がれるため、それ以降、容器部24内の溶湯30をガス供給手段32による高圧ガスで加圧することで、充填速度を安定的に高め、併せて、充填効率を安定的に高めることができる。なお、加圧力は、概ね0.3MPa〜0.5MPa程度である。
【0052】
図13は本発明に係る鋳造品の製造フロー図であり、図10〜図12を参照して説明する。なお、ST××はステップ番号を示す。
ST01:(重力鋳造装置準備工程):金型11にホッパ装置12を備え、このホッパ装置12に溶湯を溜め、金型11が傾けられたときに溶湯30を金型11のキャビティ22へ注ぐ傾動式重力鋳造装置10を準備する。
【0053】
ST02:(溶湯準備工程):蓋部材26を開けて、柄杓 で所定温度に管理したアルミニウム合金溶湯をホッパ装置の容器部24に注ぎ溶湯30を溜める。
ST03:(注湯工程):蓋部材26で密閉構造にした容器部24とともに金型11を傾けて溶湯30を金型11のキャビティ22へ注ぐ。
【0054】
ST04:(ガス加圧工程):注湯工程の途中又は終了後に、ガス供給手段32でホッパ装置12の内部に高圧ガスを送ることで、キャビティ内の溶湯を加圧する。
【0055】
図9に戻って、蓋部材26と金型11側に設けられているピース61の間に密閉が保たれ、容器部24は金型11側に固定されているので、ホッパ装置12と金型11の間から溶湯30や高圧ガスの漏洩を防止することができる。金型11と蓋部材26の間から溶湯30などの漏洩が解消するため、溶湯30の無駄をなくすことができる。
【0056】
図13に戻って、傾動式重力鋳造装置10を準備する工程と、容器部24に溶湯を溜める工程と、金型11を傾けて溶湯を金型11のキャビティ22へ注ぐ注湯工程と、この注湯工程の途中又は終了後にキャビティ22内の溶湯30を加圧するガス加圧工程とを設けたので、キャビティ22内の溶湯30を加圧することができる。
【0057】
キャビティ22内の溶湯30が加圧されるので、押し湯をしたときと同じように鋳造組織を緻密にすることができる。押し湯の量を減らしながら、鋳造組織を緻密にできるので、材料の歩留まりを大幅に高めることが可能となる。
【0058】
図14は図2の別実施例図であり、傾動式重力鋳造装置10に付属したホッパ装置12の構造は同じであるが、金型11のキャビティ22には中子69が備えられている。溶湯は、アルミニウム合金の溶湯を用いる。
【0059】
本発明に係る傾動式重力鋳造装置10よれば、中子69を利用してアルミニウム合金を重力鋳造する場合において、押し湯の量を大幅に減らすことができる。押し湯の量が減るため、材料の歩留まりを高めることができる。
【0060】
尚、請求項1では、容器部に断熱材を内張りをしなくても差し支えない。また、湯口を分割面以外の位置に配置することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、重力金型鋳造法において、傾動金型に付属するホッパ装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るホッパ装置を備える傾動式重力鋳造装置の斜視図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】ホッパ装置に備え溶湯を注入する蓋を開閉する蓋開閉機構を説明する図及びその作用図である。
【図6】図2の6部拡大図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】蓋部材とピース間のシール状態を説明する作用図である。
【図10】溶湯を注入しホッパ装置に溶湯を溜める溶湯準備工程を説明する図である。
【図11】金型を傾けて溶湯を金型のキャビティへ注ぐ注湯工程を説明する図である。
【図12】キャビティ内の溶湯を加圧するガス加圧工程を説明する図である。
【図13】本発明に係る鋳造品の製造フロー図である。
【図14】図2の別実施例図である。
【図15】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【図16】図15を改良した図である。
【符号の説明】
【0063】
10…重力鋳造装置、11…金型、12…ホッパ装置、15…固定型、16…可動型、22…キャビティ、23…分割面、24…容器部、25…開口、26…蓋部材、28…シール部材、30…溶湯、32…ガス供給手段、33…開口面、34…湯口、41…断熱材、45…溶湯ガイド部材、61…ピース、61a…ピースの先端、62…第1傾斜面、63…第2傾斜面、67…溶湯、69…中子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に備えられ、溶湯を溜め、前記金型が傾けられたときに前記溶湯を湯口を介して前記金型のキャビティへ注ぐホッパ装置において、
前記ホッパ装置は、前記金型を構成する固定型と可動型の一方に固定されるとともに開口面が前記金型の分割面に略合致している容器部と、この容器部の開口を塞ぐ蓋部材と、この蓋部材又は前記容器部に接続され高圧ガスを供給するガス供給手段とからなり、
前記蓋部材は、前記金型に臨む辺が前記開口面に対して傾斜している第1傾斜面とされ、この第1傾斜面は、前記固定型と可動型の他方から延ばされたピースの先端に設けられている第2傾斜面と平行に対向配置され、シール部材を介して気密が保たれるように構成されていることを特徴とする傾動金型に付属するホッパ装置。
【請求項2】
前記容器部は、前記金型のキャビティに繋がる湯口を複数備え、これらの湯口へ溶湯を案内する溶湯ガイド部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の傾動金型に付属するホッパ装置。
【請求項3】
前記容器部に、断熱材を内張りしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の傾動金型に付属するホッパ装置。
【請求項4】
前記シール部材は、シリコン系、又はフッ素系ゴムで構成したことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のホッパ装置。
【請求項5】
前記湯口は、前記分割面に設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のホッパ装置。
【請求項6】
前記溶湯は、アルミニウム合金の溶湯であり、前記キャビティは中子を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のホッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−100275(P2008−100275A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286804(P2006−286804)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)