説明

傾斜コンベヤベルト

【課題】横桟を薄肉にすることにより、軽量化を図るとともに、剛性を損なわないようにした傾斜コンベヤベルトを提供する。
【解決手段】べルト本体14の搬送面14aに、その両側縁部に沿って、このべルト本体14の変形に追従可能なこぼれ止めフランジ15,15を立設し、左右に並ぶこぼれ止めフランジ間にべルト本体14の長手方向に沿って所定の間隔をおいて横桟16をべルト本体14上に立設した傾斜コンベヤベルトにおいて、 横桟16内に、硬質素材からなる補強板18を埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面の幅方向の両側にこぼれ止めフランジを立設し、両こぼれ止めフランジ間に被搬送物を収容して搬送する傾斜コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
べルト本体の搬送面の幅方向の両側に可撓性のこぼれ止めフランジ(耳桟とも称される)を立設し、両こぼれ止めフランジ間に横桟を設けた傾斜コンベヤベルトを、駆動プーリ、従動プーリおよび案内プーリ等に掛け回して回走させて、土砂等の被搬送物を搬送するようにしたべルトコンベヤ装置は公知である。このような傾斜コンベヤベルトの横桟には、内部に帆布等の補強層を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−49411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の傾斜コンベヤベルトにおいては、土砂等の重量の大きい被搬送物を搬送する際、横桟に大きい荷重がかかるため、この荷重に対抗するように横桟の剛性を大きくする必要がある。横桟の剛性を大きくするには、その肉厚を大きくすることが考えられるが、そのようにすると、傾斜コンベヤベルトの重量が大きくなってしまう。
【0004】
近来、市場では、傾斜コンベヤベルトの軽量化が求められているが、左右のこぼれ止めフランジ(波桟)を軽量化することは困難であるため、軽量化するには、横桟を薄くすることが必要である。しかし、そのようにすると、横桟の剛性が低くなり、搬送に支障をきたすおそれがある。
【0005】
また、上記特許文献1に記載されているように、内部に帆布等の補強層を入れるだけでは、充分な剛性が得られず、重量物の荷重がかかった際、横桟が撓み、搬送に耐えられなくなるというおそれがある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、横桟を薄肉にして、軽量化を図るとともに、剛性を損なわないようにした傾斜コンベヤベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) べルト本体の搬送面に、その両側縁部に沿って、このべルト本体の変形に追従可能なこぼれ止めフランジを立設し、かつ左右に並ぶこぼれ止めフランジ間に、べルト本体の長手方向に沿って所定の間隔をおいて、横桟をべルト本体上に立設した傾斜コンベヤベルトにおいて、 前記横桟内に、硬質素材からなる補強板を埋設する。
【0008】
(2)上記(1)項において、補強板の上端面を横桟の上端面に露出させる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、横桟を、べルト本体に固着された裾部と、この裾部上に立設された横桟本体とにより構成し、補強板の下端部を前記裾部の底面付近まで到達させる。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、補強板を、硬質合成樹脂または硬質ゴムにより形成し、こぼれ止めフランジの外側から前記補強板にタッピングねじをねじ込んで横桟とこぼれ止めフランジとを固定する。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、横桟および補強板の少なくとも一部を、べルト本体の進行方向に向かって傾斜させる。
【0012】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、横桟内に、補強板とともに補強用帆布を埋設する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a)請求項1記載の発明によると、横桟内に、硬質素材からなる補強板を埋設することにより、横桟の剛性が増し、高強度化されるので、横桟を薄肉化して、軽量化をはかることができる。
【0014】
(b)請求項2記載の発明によると、補強板の上端面を横桟の上端面に露出させることにより、横桟上端部の耐摩耗性を向上させることができる。
【0015】
(c)請求項3記載の発明によると、横桟本体を裾部上に立設し、補強板の下端部を裾部の底面付近まで到達させているので、横桟本体が裾部から曲がりにくくなり、強度がより大きくなる。
【0016】
(d)請求項4記載の発明によると、硬質合成樹脂または硬質ゴムの補強板にタッピングねじをねじ込んで、横桟とこぼれ止めフランジとを固定することにより、タッピングねじが抜けにくくなるだけでなく、剛性および耐久性が向上する。
【0017】
(e)請求項5記載の発明によると、横桟をべルト本体の進行方向に向かって傾斜させることにより、被搬送物に対する抵抗力をより大きくすることができる。
【0018】
(f)請求項6記載の発明によると、横桟内に補強板とともに補強用帆布を埋設することにより、補強効果をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の傾斜コンベヤベルトの実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の傾斜コンベヤベルトの第1の実施形態を備える急傾斜コンベヤ装置の概略側面図である。
【0020】
図1に示すように、傾斜コンベヤベルト(1)は、上下に配置された駆動プーリ(2)、従動プーリ(3)および案内プーリ(4)(5)(6)(7)に掛け回された無端構造のもので、案内プーリ(4)と案内プーリ(5)との間に上向き急傾斜部(8)が、案内プーリ(6)と案内プーリ(7)との間に下向き急傾斜部(9)がそれぞれ形成されている。傾斜コンベヤベルト(1)は、駆動プーリ(2)により、矢印(A)方向に回走させられ、下部の搬入部(10)において、傾斜コンベヤベルト(1)に積載された土砂等の被搬送物は、上向き急傾斜部(8)を通って排出部(11)へ送られ、その下方に設けられたホッパ(12)へ排出されるようになっている。
【0021】
図2は、図1の(B)方向の矢視図、図3は、図2のIII−III線拡大断面図である。
図2および図3に示すように、傾斜コンベヤベルト(1)におけるべルト本体(14)の搬送面(14a)の幅方向両側部には、その両側縁に沿って、いわゆる波桟であるこぼれ止めフランジ(15)が立設されている。この左右のこぼれ止めフランジ(15)(15)の間のべルト本体(14)上には、横桟(16)がべルト本体の長手方向に所定の間隔をおいて設けられている。この横桟(16)で仕切られた空間(17)に被搬送物を収容して搬送することにより、上向き急傾斜部(8)走行時にも、被搬送物が落下することがない。
【0022】
図3に示すように、横桟(16)は、べルト本体(14)に一体的に接着または加硫溶着された裾部(16a)と、この裾部(16a)の中央に立設された桟本体(16b)とにより構成されている。この桟本体(16b)の中心部には、金属、硬質合成樹脂、硬質ゴム等の硬質素材からなる補強板(18)が埋設されている。この補強板(18)は、横桟(16)の幅方向全体にわたり、かつ下端部は裾部(16a)の底面近傍まで延び、上端面は桟本体(16b)の上端面に露出するようにしてある。このように、補強板(18)の上端面を桟本体(16b)の上端面に露出させることにより、横桟(16)の上端部の耐摩耗性を向上させることができる。
【0023】
金属板としては、軽量なアルミニウム合金、Ni-Ti合金等が好適であり、硬質合成樹脂としては、エボナイトまたはこれに類する硬質な樹脂が好適であるが、これらに限定するものではなく、硬質素材であれば実施は可能である。補強板(18)の両側には、従来と同様の補強用帆布(19)を入れることが好ましい。
【0024】
横桟(16)は、こぼれ止めフランジ(15)とは独立している構造のもののほか、図2に示すように、横桟(16)の両端部にこぼれ止めフランジ(15)の外側からタッピングねじ(20)をねじ込むことにより、固定した構造とすることができる。補強板(18)を金属以外の硬質素材で構成した場合、これに直接タッピングねじ(20)をねじ込むことができ、従来のゴム素材にねじ込む構造に比してタッピングねじ(20)が抜けにくくなる。
【0025】
図4は、横桟(16)を変形した、本発明の第2の実施形態を示す。この横桟(16)は裾部(16a)からべルト本体(14)の進行方向(矢印方向)に向かって傾斜した、いわゆるK型横桟の例である。この構造では、補強板(18)は、横桟(16)と同一方向に傾斜し、かつ上端面と下端面がべルト本体(14)と平行をなす平行四辺形となっている。
【0026】
図5は、横桟(16)をさらに変形した、本発明の第3の実施形態を示す。この横桟(16)は裾部(16a)から垂直に立ち上がり、途中でべルト本体(14)の進行方向(矢印方向)に向かって傾斜した、いわゆるTC型横桟の例である。この構造では、補強板(18)は、裾部(16a)から垂直に立ち上がり、途中で横桟(16)と同一方向に傾斜し、かつ上端面がべルト本体(14)と平行をなす形状となっている。
【0027】
図4および図5の傾斜構造の横桟(16)では、全部または先端部が、傾斜コンベヤベルトの搬送方向に傾斜しているため、構造上被搬送物に対する抵抗力が大きく、しかもこれに補強板(18)を付加することにより、さらに強度を増すことができる。
【0028】
以上のように、横桟(16)内に、硬質素材からなる補強板(18)を埋設することにより、横桟(16)の剛性が増し、高強度化されるので、横桟(16)を薄肉化することが可能になり、強度を損なうことなく、傾斜コンベヤベルトの軽量化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の傾斜コンベヤベルトの第1の実施形態を備える急傾斜コンベヤ装置の概略側面図である。
【図2】図1における矢印B方向より見た部分拡大平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における横桟の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における横桟の縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
(1)傾斜コンベヤベルト
(2)従動プーリ
(3)従動プーリ
(4)案内プーリ
(5)案内プーリ
(6)案内プーリ
(7)案内プーリ
(8)急傾斜部
(9)急傾斜部
(10)搬入部
(11)排出部
(12)ホッパ
(14)べルト本体
(14a)搬送面
(15)こぼれ止めフランジ
(16) 横桟
(16a)裾部
(18)補強板
(19)補強用帆布
(20)タッピングねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
べルト本体の搬送面に、その両側縁部に沿って、このべルト本体の変形に追従可能なこぼれ止めフランジを立設し、かつ左右に並ぶこぼれ止めフランジ間に、べルト本体の長手方向に沿って所定の間隔をおいて、横桟をべルト本体上に立設した傾斜コンベヤベルトにおいて、
前記横桟内に、硬質素材からなる補強板を埋設したことを特徴とする傾斜コンベヤベルト。
【請求項2】
補強板の上端面を横桟の上端面に露出させたことを特徴とする請求項1記載の傾斜コンベヤベルト。
【請求項3】
横桟を、べルト本体に固着された裾部と、この裾部上に立設された横桟本体ととにより構成し、補強板の下端部を前記裾部の底面付近まで到達させたことを特徴とする請求項1または2記載の傾斜コンベヤベルト。
【請求項4】
補強板を、硬質合成樹脂または硬質ゴムにより形成し、こぼれ止めフランジの外側から前記補強板にタッピングねじをねじ込んで横桟とこぼれ止めフランジとを固定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の傾斜コンベヤベルト。
【請求項5】
横桟および補強板の少なくとも一部を、べルト本体の進行方向に向かって傾斜させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の傾斜コンベヤベルト。
【請求項6】
横桟内に、補強板とともに補強用帆布を埋設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の傾斜コンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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