傾斜センサ
【課題】 外部磁界の影響を受けにくく、適用可能範囲の広い傾斜センサを提供することにある。
【解決手段】 正面に回動軸部15を側方に突設したケース10と、前記ケース10の正面のうち、前記回動軸部15の上方側に固定したホールIC20と、前記ホールIC20の両側に位置するように前記ケース10の背面に並設して固定された一対のマグネット25,26と、前記回動軸部15に回動自在に軸支された振り子30と、前記振り子30の内向面に固定した一対の強磁性体35,36と、から構成されている。そして、前記ケース10が傾斜した場合に、一方の前記強磁性体35が前記ホールIC20に接近し、一対の前記マグネット25,26と一方の前記強磁性体35とによって磁気回路を閉成し、前記マグネット25,26の磁束が前記ホールIC20の表裏面を通過する。
【解決手段】 正面に回動軸部15を側方に突設したケース10と、前記ケース10の正面のうち、前記回動軸部15の上方側に固定したホールIC20と、前記ホールIC20の両側に位置するように前記ケース10の背面に並設して固定された一対のマグネット25,26と、前記回動軸部15に回動自在に軸支された振り子30と、前記振り子30の内向面に固定した一対の強磁性体35,36と、から構成されている。そして、前記ケース10が傾斜した場合に、一方の前記強磁性体35が前記ホールIC20に接近し、一対の前記マグネット25,26と一方の前記強磁性体35とによって磁気回路を閉成し、前記マグネット25,26の磁束が前記ホールIC20の表裏面を通過する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜センサ、特に、デジタルカメラ、ビデオカメラ等に使用される小型の磁力式傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の磁力式傾斜センサとしては、例えば、着磁したムーブメントをケースに回動自在に軸支し、前記ケースが所定の角度以上に回動した場合に、前記ケースに配置したホール素子が前記ムーブメントの磁力を検知し、前記ケースの傾斜状態を検出する傾斜センサがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−146580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記傾斜センサは回動自在に軸支された前記ムーブメントが着磁されているので、外部磁界の影響を受けやすい。例えば、前記傾斜センサの周囲近傍に大きな磁力を発生するコイル、スピーカ等があると、その磁力の影響を受けて前記ムーブメントが回動し、前記ケースが傾斜していないにもかかわらず、傾斜状態を示す信号を出力するおそれがある。このため、前記傾斜センサを使用する場合には、外部磁界の影響を回避する設計が必要であるので、前記傾斜センサを組み込む電子機器の設計における負担が大きく、設計の自由度が小さい。特に、装置の小型化および部品の高密度化が要求されている、例えば、デジタルカメラ等の電子機器に搭載する場合には、制約が多いので、適用できる範囲が限られるという問題点がある。
【0004】
本発明は、前記問題点に鑑み、外部磁界の影響を受けにくく、適用可能範囲が広い傾斜センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0005】
本発明にかかる傾斜センサは、前記課題を解決すべく、正面に回動軸部を側方に突設したケースと、前記ケースの正面のうち、前記回動軸部の上方側に固定した磁気検出手段と、前記磁気検出手段の両側に位置するように前記ケースの背面に並設して固定された一対のマグネットと、前記回動軸部に回動自在に軸支された振り子と、前記振り子の内向面に固定した一対の強磁性体と、からなり、前記ケースが傾斜した場合に、一方の前記強磁性体が前記磁気検出手段に接近し、一対の前記マグネットと一方の前記強磁性体とによって磁気回路が閉成され、前記マグネットの磁束が前記磁気検出手段の表裏面を通過する構成としてある。
【0006】
本発明によれば、マグネットはケースの背面に固定され、振り子に固定されていないので、従来例のように前記振り子が外部磁界の影響を受けて回動することがなく、誤動作することがない。このため、小型化および高密度化が進んでいる電子機器を設計する際に、外部磁界の影響を回避するための設計が不要となり、使い勝手が良く、適用可能範囲が広い傾斜センサが得られる。
【0007】
本発明にかかる実施形態としては、磁気検出手段が、少なくとも1個のホール素子からなるホールICであってもよい。
本実施形態によれば、少ない構成部品で左右両方向の傾斜状態を検出できる。
【0008】
本発明にかかる他の実施形態としては、振り子と強磁性体とを同一磁性材で一体成形してもよい。
本実施形態によれば、部品点数,組立工数が少なく、生産性の高い傾斜センサが得られる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、ケースと振り子との対向面のうち、いずれか一方の対向面に位置規制用突部を設ける一方、残る他方の対向面に前記位置規制用突部が係止する位置規制用凹部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、前記位置規制用突部が位置規制用凹部の内周面に係止して振り子の振れ回りを規制し、誤動作を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる実施形態を図1ないし図11の添付図面に従って説明する。
第1実施形態にかかる傾斜センサは、図1ないし図10に示すように、ケース10と、磁気検出手段であるホールIC20と、一対の永久磁石25,26と、一対の強磁性体35,36を組み付けた振り子30と、カバー40とから構成されている。なお、本実施形態にかかる傾斜センタ本体の大きさは、巾7mm、高さ7mm、厚さ2mmである。
【0011】
前記ケース10は、図2に示すように、4本のリード端子11,12,13,14をインサート成形した正面略正方形の箱形状を有する樹脂成形品である。そして、前記ケース10は、その正面中央に回動軸部15を側方に突設するとともに、前記回動軸部15を間にして上下方向で対向する位置に、後述するホールIC20を収納する収納用凹部16と、後述する振り子30の動作を位置規制する位置規制用凹部17とを設けてある。前記収納用凹部16の開口縁部には前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aが露出している。さらに、前記ケース10の背面には、図4に示すように、一対の方形マグネット25,26を嵌合固定する嵌合用凹部18a,18bが形成されている一方、対向する外側面には、係合用突部19,19がそれぞれ突設されている。
【0012】
ホールIC20は、前記収納用凹部16に収納可能な外形形状を有し、その中央部に円形の磁束検出領域(図示せず)をする。そして、両外側面からリード端子として屈曲したVSS端子21,OUT2端子22およびVDD端子23,OUT1端子24が側方に突出している。そして、前記ケース10の収納用凹部16に嵌合して位置決めした後、前記端子21〜24を前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aに溶接して電気接続される。なお、ホールIC20は1個のホール素子で構成してもよく、あるいは、2個のホール素子で構成してもよい。
【0013】
振り子30は、高比重の弱磁性体あるいは反磁性体からなり、前記ケース10の回動軸部15に回動可能に軸支される軸受け孔31を有するとともに、前記ケース10との対向面に設けた嵌合用溝部33,34(図4参照)に一対の強磁性体35,36の下端部を側方からそれぞれ組み付けてある。前記強磁性体35,36は前記マグネット25,26の発する磁束の磁気回路を形成するためのものである。そして、一対の強磁性体35,36を組み付けた振り子30の軸受け孔31を、前記ケース10の回動軸部15に挿通することにより、前記振り子30が回動可能に支持される。
【0014】
カバー40は、前記ケース10の正面を被覆可能な正面形状を有し、その中央部に振り子30に当接して位置規制する環状リブ41を突設してある。また、前記カバー40は対向する両側縁部に係合用爪部42をそれぞれ延在してある一方、残る対向する両側縁部に位置決め用リブ43をそれぞれ延在してある。そして、前記カバー40の係合爪部42を前記ケース10の係合用突部19に係合することにより、前記環状リブ41が前記振り子30の軸受け孔31の開口縁部に当接し、前記振り子30の脱落を防止する(図5)。
【0015】
次に、前述の構成部品からなる傾斜センサの動作について説明する。
図7に示すように、前記ケース10が傾斜していない場合には、強磁性体35,36のいずれもがホールIC20に重なることがない。このため、マグネット25,26の磁束はホールIC20の両側側面を貫くように流れて磁気回路を閉成する(図7D)。このため、前記ホールIC20の出力は常にHigh状態となっている(図10)。
【0016】
そして、図8に示すように、ケース10が左回り方向(時計回り方向)に傾き、強磁性体36がホールIC20に近づいて重なると、マグネット25から出た磁束が前記強磁性体36を介してマグネット26に流れ込み、磁気回路を閉成する。このため、前記磁束が前記ホールIC20の背面から表面に交差するように流れ込み、ホールIC20に対して垂直な磁束成分がもたらされる。そして、垂直な磁束成分が所定の閾値を超えると、ホールIC20の出力がHigh状態からLOW状態に切り替わる(図10)。
【0017】
ついで、前記ケース10が元の位置に復帰すると、強磁性体36がホールIC20から離れ、マグネット25,26だけで磁気回路が閉成され、磁束がホールIC20の両側側面を貫くように流れる。このため、前記ホールIC20の出力はLOW状態からHigh状態に切り替わる(図10)。
【0018】
逆に、図9に示すように、ケース10が右回り方向(反時計回り方向)に傾き、強磁性体35がホールIC20に近づいて重なると、マグネット25から出た磁束が強磁性体35を介してマグネット26に流れ込み、磁気回路を閉成する。このため、前記磁束が前記ホールIC20の表面から背面に交差するように流れ込み、ホールIC20の表面に対して垂直な磁束成分がもたらされる。そして、垂直な磁束成分が所定の閾値を超えると、ホールIC20の出力がHigh状態からLOW状態に切り替わる(図10)。
【0019】
ついで、前記ケース10が元の位置に復帰すると、強磁性体35がホールIC20から離れ、マグネット25,26だけで磁気回路が閉成され、磁束がホールIC20の両側側面を貫くように流れる。このため、前記ホールIC20の出力はLOW状態からHigh状態に切り替わる(図10)。
【0020】
第2実施形態は、図11に示すように、磁気検出手段としてホール素子25を使用する場合である。前記ホール素子25は、両外側面からリード端子として負の出力端子21,負の入力端子22および正の入力端子23,正の出力端子24が側方に突出している。そして、前記ケース10の収納用凹部16に嵌合して位置決めした後、前記端子21〜24を前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aに溶接して電気接続される。なお、磁気検出手段は、1個のホール素子で構成し、外部の制御回路を介して2方向の傾斜状態を検出してもよく、あるいは、2個のホール素子で2方向の傾斜状態を検出してもよい。
【0021】
本実施形態によれば、前記ケース10の傾斜角度に応じてホール素子25の出力電圧が正負領域で線形に変化することから、1個のホール素子25の出力電圧から傾斜センサの傾斜方向を判別できるだけでなく、傾斜角度も逐次、検出できるという利点がある。
【0022】
本発明では、磁気検出手段として一方向だけを検出するホールICを使用してもよく、また、2個のホールICで2方向の傾斜を別々に検出してもよい。
また、前述の実施形態では、振り子に別体の強磁性体を組み付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、振り子と強磁性体とを同一磁性で一体成形してもよい。これによれば、部品点数,組立工数の少ない傾斜センサを得られるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかる傾斜センサは、デジタルカメラ,ビデオカメラ等の傾斜を検出する場合に限らず、携帯電話、形態音楽プレーヤ等の電子機器にも搭載できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる傾斜センサの第1実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1で示した傾斜センサの分解斜視図である。
【図3】図1で示した傾斜センサの異なる角度から見た全体斜視図である。
【図4】図3で示した傾斜センサの分解斜視図である。
【図5】図5A,5Bおよび5Cは図1で示した傾斜センサの正面図、縦断面図および横断面図である。
【図6】図6A,6Bおよび6Cは図1で示した傾斜センサからカバーを外した場合の正面図、縦断面図および横断面図である。
【図7】図7A,7B,7Cおよび7Dは前記傾斜センサの動作前の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図8】図8A,8B,8Cおよび8Dは前記傾斜センサの動作後の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図9】図9A,9B,9Cおよび9Dは前記傾斜センサの異なる方向に動作した後の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図10】磁気検出手段としてホールICを使用した場合の出力状態を示すグラフ図である。
【図11】磁気検出手段としてホール素子を使用した第2実施形態の出力状態を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0025】
10:ケース
11〜14:リード端子
15:回動軸部
16:収納用凹部
17:位置規制用凹部
18a,18b:嵌合用凹部
20:ホールIC
21〜24:リード端子
25,26:方形マグネット
27:ホール素子
30:振り子
31:軸受け孔
32:位置規制用突部
33,34:嵌合用溝部
35,36:強磁性体
40:カバー
41:環状リブ
42:係合用爪部
43:位置決め用リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜センサ、特に、デジタルカメラ、ビデオカメラ等に使用される小型の磁力式傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の磁力式傾斜センサとしては、例えば、着磁したムーブメントをケースに回動自在に軸支し、前記ケースが所定の角度以上に回動した場合に、前記ケースに配置したホール素子が前記ムーブメントの磁力を検知し、前記ケースの傾斜状態を検出する傾斜センサがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−146580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記傾斜センサは回動自在に軸支された前記ムーブメントが着磁されているので、外部磁界の影響を受けやすい。例えば、前記傾斜センサの周囲近傍に大きな磁力を発生するコイル、スピーカ等があると、その磁力の影響を受けて前記ムーブメントが回動し、前記ケースが傾斜していないにもかかわらず、傾斜状態を示す信号を出力するおそれがある。このため、前記傾斜センサを使用する場合には、外部磁界の影響を回避する設計が必要であるので、前記傾斜センサを組み込む電子機器の設計における負担が大きく、設計の自由度が小さい。特に、装置の小型化および部品の高密度化が要求されている、例えば、デジタルカメラ等の電子機器に搭載する場合には、制約が多いので、適用できる範囲が限られるという問題点がある。
【0004】
本発明は、前記問題点に鑑み、外部磁界の影響を受けにくく、適用可能範囲が広い傾斜センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0005】
本発明にかかる傾斜センサは、前記課題を解決すべく、正面に回動軸部を側方に突設したケースと、前記ケースの正面のうち、前記回動軸部の上方側に固定した磁気検出手段と、前記磁気検出手段の両側に位置するように前記ケースの背面に並設して固定された一対のマグネットと、前記回動軸部に回動自在に軸支された振り子と、前記振り子の内向面に固定した一対の強磁性体と、からなり、前記ケースが傾斜した場合に、一方の前記強磁性体が前記磁気検出手段に接近し、一対の前記マグネットと一方の前記強磁性体とによって磁気回路が閉成され、前記マグネットの磁束が前記磁気検出手段の表裏面を通過する構成としてある。
【0006】
本発明によれば、マグネットはケースの背面に固定され、振り子に固定されていないので、従来例のように前記振り子が外部磁界の影響を受けて回動することがなく、誤動作することがない。このため、小型化および高密度化が進んでいる電子機器を設計する際に、外部磁界の影響を回避するための設計が不要となり、使い勝手が良く、適用可能範囲が広い傾斜センサが得られる。
【0007】
本発明にかかる実施形態としては、磁気検出手段が、少なくとも1個のホール素子からなるホールICであってもよい。
本実施形態によれば、少ない構成部品で左右両方向の傾斜状態を検出できる。
【0008】
本発明にかかる他の実施形態としては、振り子と強磁性体とを同一磁性材で一体成形してもよい。
本実施形態によれば、部品点数,組立工数が少なく、生産性の高い傾斜センサが得られる。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、ケースと振り子との対向面のうち、いずれか一方の対向面に位置規制用突部を設ける一方、残る他方の対向面に前記位置規制用突部が係止する位置規制用凹部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、前記位置規制用突部が位置規制用凹部の内周面に係止して振り子の振れ回りを規制し、誤動作を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる実施形態を図1ないし図11の添付図面に従って説明する。
第1実施形態にかかる傾斜センサは、図1ないし図10に示すように、ケース10と、磁気検出手段であるホールIC20と、一対の永久磁石25,26と、一対の強磁性体35,36を組み付けた振り子30と、カバー40とから構成されている。なお、本実施形態にかかる傾斜センタ本体の大きさは、巾7mm、高さ7mm、厚さ2mmである。
【0011】
前記ケース10は、図2に示すように、4本のリード端子11,12,13,14をインサート成形した正面略正方形の箱形状を有する樹脂成形品である。そして、前記ケース10は、その正面中央に回動軸部15を側方に突設するとともに、前記回動軸部15を間にして上下方向で対向する位置に、後述するホールIC20を収納する収納用凹部16と、後述する振り子30の動作を位置規制する位置規制用凹部17とを設けてある。前記収納用凹部16の開口縁部には前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aが露出している。さらに、前記ケース10の背面には、図4に示すように、一対の方形マグネット25,26を嵌合固定する嵌合用凹部18a,18bが形成されている一方、対向する外側面には、係合用突部19,19がそれぞれ突設されている。
【0012】
ホールIC20は、前記収納用凹部16に収納可能な外形形状を有し、その中央部に円形の磁束検出領域(図示せず)をする。そして、両外側面からリード端子として屈曲したVSS端子21,OUT2端子22およびVDD端子23,OUT1端子24が側方に突出している。そして、前記ケース10の収納用凹部16に嵌合して位置決めした後、前記端子21〜24を前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aに溶接して電気接続される。なお、ホールIC20は1個のホール素子で構成してもよく、あるいは、2個のホール素子で構成してもよい。
【0013】
振り子30は、高比重の弱磁性体あるいは反磁性体からなり、前記ケース10の回動軸部15に回動可能に軸支される軸受け孔31を有するとともに、前記ケース10との対向面に設けた嵌合用溝部33,34(図4参照)に一対の強磁性体35,36の下端部を側方からそれぞれ組み付けてある。前記強磁性体35,36は前記マグネット25,26の発する磁束の磁気回路を形成するためのものである。そして、一対の強磁性体35,36を組み付けた振り子30の軸受け孔31を、前記ケース10の回動軸部15に挿通することにより、前記振り子30が回動可能に支持される。
【0014】
カバー40は、前記ケース10の正面を被覆可能な正面形状を有し、その中央部に振り子30に当接して位置規制する環状リブ41を突設してある。また、前記カバー40は対向する両側縁部に係合用爪部42をそれぞれ延在してある一方、残る対向する両側縁部に位置決め用リブ43をそれぞれ延在してある。そして、前記カバー40の係合爪部42を前記ケース10の係合用突部19に係合することにより、前記環状リブ41が前記振り子30の軸受け孔31の開口縁部に当接し、前記振り子30の脱落を防止する(図5)。
【0015】
次に、前述の構成部品からなる傾斜センサの動作について説明する。
図7に示すように、前記ケース10が傾斜していない場合には、強磁性体35,36のいずれもがホールIC20に重なることがない。このため、マグネット25,26の磁束はホールIC20の両側側面を貫くように流れて磁気回路を閉成する(図7D)。このため、前記ホールIC20の出力は常にHigh状態となっている(図10)。
【0016】
そして、図8に示すように、ケース10が左回り方向(時計回り方向)に傾き、強磁性体36がホールIC20に近づいて重なると、マグネット25から出た磁束が前記強磁性体36を介してマグネット26に流れ込み、磁気回路を閉成する。このため、前記磁束が前記ホールIC20の背面から表面に交差するように流れ込み、ホールIC20に対して垂直な磁束成分がもたらされる。そして、垂直な磁束成分が所定の閾値を超えると、ホールIC20の出力がHigh状態からLOW状態に切り替わる(図10)。
【0017】
ついで、前記ケース10が元の位置に復帰すると、強磁性体36がホールIC20から離れ、マグネット25,26だけで磁気回路が閉成され、磁束がホールIC20の両側側面を貫くように流れる。このため、前記ホールIC20の出力はLOW状態からHigh状態に切り替わる(図10)。
【0018】
逆に、図9に示すように、ケース10が右回り方向(反時計回り方向)に傾き、強磁性体35がホールIC20に近づいて重なると、マグネット25から出た磁束が強磁性体35を介してマグネット26に流れ込み、磁気回路を閉成する。このため、前記磁束が前記ホールIC20の表面から背面に交差するように流れ込み、ホールIC20の表面に対して垂直な磁束成分がもたらされる。そして、垂直な磁束成分が所定の閾値を超えると、ホールIC20の出力がHigh状態からLOW状態に切り替わる(図10)。
【0019】
ついで、前記ケース10が元の位置に復帰すると、強磁性体35がホールIC20から離れ、マグネット25,26だけで磁気回路が閉成され、磁束がホールIC20の両側側面を貫くように流れる。このため、前記ホールIC20の出力はLOW状態からHigh状態に切り替わる(図10)。
【0020】
第2実施形態は、図11に示すように、磁気検出手段としてホール素子25を使用する場合である。前記ホール素子25は、両外側面からリード端子として負の出力端子21,負の入力端子22および正の入力端子23,正の出力端子24が側方に突出している。そして、前記ケース10の収納用凹部16に嵌合して位置決めした後、前記端子21〜24を前記リード端子11〜14の接続部11a〜14aに溶接して電気接続される。なお、磁気検出手段は、1個のホール素子で構成し、外部の制御回路を介して2方向の傾斜状態を検出してもよく、あるいは、2個のホール素子で2方向の傾斜状態を検出してもよい。
【0021】
本実施形態によれば、前記ケース10の傾斜角度に応じてホール素子25の出力電圧が正負領域で線形に変化することから、1個のホール素子25の出力電圧から傾斜センサの傾斜方向を判別できるだけでなく、傾斜角度も逐次、検出できるという利点がある。
【0022】
本発明では、磁気検出手段として一方向だけを検出するホールICを使用してもよく、また、2個のホールICで2方向の傾斜を別々に検出してもよい。
また、前述の実施形態では、振り子に別体の強磁性体を組み付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、振り子と強磁性体とを同一磁性で一体成形してもよい。これによれば、部品点数,組立工数の少ない傾斜センサを得られるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかる傾斜センサは、デジタルカメラ,ビデオカメラ等の傾斜を検出する場合に限らず、携帯電話、形態音楽プレーヤ等の電子機器にも搭載できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる傾斜センサの第1実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1で示した傾斜センサの分解斜視図である。
【図3】図1で示した傾斜センサの異なる角度から見た全体斜視図である。
【図4】図3で示した傾斜センサの分解斜視図である。
【図5】図5A,5Bおよび5Cは図1で示した傾斜センサの正面図、縦断面図および横断面図である。
【図6】図6A,6Bおよび6Cは図1で示した傾斜センサからカバーを外した場合の正面図、縦断面図および横断面図である。
【図7】図7A,7B,7Cおよび7Dは前記傾斜センサの動作前の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図8】図8A,8B,8Cおよび8Dは前記傾斜センサの動作後の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図9】図9A,9B,9Cおよび9Dは前記傾斜センサの異なる方向に動作した後の状態を示す正面図、概略正面図、概略右側面図、概略平面図である。
【図10】磁気検出手段としてホールICを使用した場合の出力状態を示すグラフ図である。
【図11】磁気検出手段としてホール素子を使用した第2実施形態の出力状態を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0025】
10:ケース
11〜14:リード端子
15:回動軸部
16:収納用凹部
17:位置規制用凹部
18a,18b:嵌合用凹部
20:ホールIC
21〜24:リード端子
25,26:方形マグネット
27:ホール素子
30:振り子
31:軸受け孔
32:位置規制用突部
33,34:嵌合用溝部
35,36:強磁性体
40:カバー
41:環状リブ
42:係合用爪部
43:位置決め用リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面に回動軸部を側方に突設したケースと、前記ケースの正面のうち、前記回動軸部の上方側に固定した磁気検出手段と、前記磁気検出手段の両側に位置するように前記ケースの背面に並設して固定された一対のマグネットと、前記回動軸部に回動自在に軸支された振り子と、前記振り子の内向面に固定した一対の強磁性体と、からなり、
前記ケースが傾斜した場合に、一方の前記強磁性体が前記磁気検出手段に接近し、一対の前記マグネットと一方の前記強磁性体とによって磁気回路が閉成され、前記マグネットの磁束が前記磁気検出手段の表裏面を通過することを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
磁気検出手段が、少なくとも1個のホール素子からなるホールICであることを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
振り子と強磁性体とが同一磁性材で一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
ケースと振り子との対向面のうち、いずれか一方の対向面に位置規制用突部を設ける一方、残る他方の対向面に前記位置規制用突部が係止する位置規制用凹部を設けたことを特徴とする請求項目1ないし3のいずれか1項に記載の傾斜センサ。
【請求項1】
正面に回動軸部を側方に突設したケースと、前記ケースの正面のうち、前記回動軸部の上方側に固定した磁気検出手段と、前記磁気検出手段の両側に位置するように前記ケースの背面に並設して固定された一対のマグネットと、前記回動軸部に回動自在に軸支された振り子と、前記振り子の内向面に固定した一対の強磁性体と、からなり、
前記ケースが傾斜した場合に、一方の前記強磁性体が前記磁気検出手段に接近し、一対の前記マグネットと一方の前記強磁性体とによって磁気回路が閉成され、前記マグネットの磁束が前記磁気検出手段の表裏面を通過することを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
磁気検出手段が、少なくとも1個のホール素子からなるホールICであることを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
振り子と強磁性体とが同一磁性材で一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
ケースと振り子との対向面のうち、いずれか一方の対向面に位置規制用突部を設ける一方、残る他方の対向面に前記位置規制用突部が係止する位置規制用凹部を設けたことを特徴とする請求項目1ないし3のいずれか1項に記載の傾斜センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−90796(P2006−90796A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275356(P2004−275356)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
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