説明

傾斜センサ

【課題】傾斜を精度よく検知することのできる傾斜センサを提供する。
【解決手段】絶縁部6を介して接合された上部導体基材2と下部導体基材3の間に導体球5を内蔵し、上部導体基材2と下部導体基材3の間における導通の有無をモニタすることで傾きを検知する傾斜センサ1であって、上部導体基材2と下部導体基材3の間の密閉空間が大気圧に比べ減圧雰囲気であるか、または不活性ガスにより満たされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜を検知する傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、傾斜を検知する傾斜センサが知られている。例えば、特許文献1には、上下に対向した円錐状導体層の内部に導電性の球状体を収納し、これら円錐状導体層同士の導通、非導通状態を検知する転倒検知スイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−067718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、球状体や円錐状導体層は金属であるため、酸化する恐れがある。球状体等が酸化すると、接触抵抗が増加して傾斜を精度よく検知できなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、傾斜を精度よく検知することのできる傾斜センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、絶縁部を介して接合された2枚の導体基材間に導電性球体を内蔵し、前記2枚の導体基材間における導通の有無をモニタすることで傾きを検知する傾斜センサであって、前記2枚の導体基材間の密閉空間が大気圧に比べ減圧雰囲気であるか、または不活性ガスにより満たされていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、前記2枚の導体基材の一方に錐状のキャビティを形成し、そのキャビティの底部に掘り込みを形成してもよい。
【0008】
また、本発明において、前記2枚の導体基材を絶縁部により少なくとも2つのセクタに分割し、それぞれのセクタを独立した電極としてもよい。
【0009】
また、本発明において、前記導体基材に代えて、表面に導体材料の薄膜を成膜してある基材を用いてもよい。
【0010】
また、本発明において、前記導体基材に代えて、表面に導体材料の薄膜を成膜してある基材を用い、前記導体材料の薄膜は、前記2枚の導体基材を少なくとも2つのセクタに分割するパタン形状であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る傾斜センサによれば、2枚の導体基材間の密閉空間が大気圧に比べ減圧雰囲気であるか、または不活性ガスにより満たされている。これにより、2枚の導体基材および導電性球体の酸化を防止することができるため、傾斜を精度よく検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図2】第2実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図3】第3実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図4】第4実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図5】その他の実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図6】その他の実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図7】その他の実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【図8】その他の実施形態における傾斜センサの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における傾斜センサ1の構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。この図に示すように、傾斜センサ1は、導電性が良好な金属からなる上部導体基材2と下部導体基材3とが接着剤等の絶縁部6を介して接合された構造となっている。下部導体基材3の中央部には錐状のキャビティ4が形成され、このキャビティ4に導体球5を内蔵している。導体球5は、金属球または少なくとも表面が導電性の球体であり、キャビティ中を自由に移動できるようになっている。キャビティ4の底部には、導体球5が迅速に止まるように、円柱形の掘り込み7が形成されている。さらに、キャビティ4は密閉空間となっており、上部導体基材2、下部導体基材3、および導体球5の酸化を防止するために、大気圧に比べ減圧雰囲気としている。反応性の低い窒素などの不活性ガスによりキャビティ4を満たすようにしても、導体球5等の酸化を防止することができる。
【0015】
このような傾斜センサ1は、カメラやテレビ等、傾きを検出することが必要な各種デバイスに取り付けられる。これにより、上部導体基材2と下部導体基材3の間の導通の有無をモニタすることでデバイスの傾きを検出することができる。すなわち、図1では、導体球5が初期位置にあり、下部導体基材3のみに接触している。この状態では、上部導体基材2と下部導体基材3の間は非導通である。デバイスが傾くと、導体球5がキャビティ4中を移動して上部導体基材2と下部導体基材3の両方に接触し、上部導体基材2と下部導体基材3の間が導通する。
【0016】
以上のように、第1実施形態では、上部導体基材2と下部導体基材3の間の密閉空間が大気圧に比べ減圧雰囲気であるか、または不活性ガスにより満たされている。これにより、上部導体基材2、下部導体基材3、および導体球5の酸化を防止することができるため、傾斜を精度よく検知することが可能となる。
【0017】
また、キャビティ4の底部には、円柱形の掘り込み7が形成されている。これにより、デバイスが傾いたことで導体球5の位置が移動した後、デバイスが初期状態に戻った際、導体球5が初期位置に敏速に止まる効果がある。
【0018】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態における傾斜センサ1の構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。この図に示すように、第2実施形態では、上部導体基材2を十字状の絶縁部8により4つのセクタに分割し、それぞれのセクタを独立した電極としている。絶縁部8は接着剤やプラスチック等である。ここでは、上部導体基材2を4つのセクタに分割しているが、分割数は少なくとも2つであればよく、特に限定されるものではない。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0019】
以上のように、第2実施形態では、上部導体基材2を絶縁部8により4つのセクタに分割している。これにより、デバイスが傾いた際に信号を検出した電極からデバイスの傾いた方向を検出することができる。
【0020】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態における傾斜センサ1の構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。この図に示すように、第3実施形態では、上部導体基材2に代えて、表面に導体材料の薄膜11を成膜してある上部基材13を用いている。また、下部導体基材3に代えて、表面に導体材料の薄膜12を成膜してある下部基材14を用いている。ここでいう表面とはキャビティ4側の面である。導体材料は具体的にはAlやAu等である。薄膜11と薄膜12の間には絶縁部6を介在させる。これにより、薄膜11が上部電極となり、薄膜12が下部電極となるため、上部基材13や下部基材14が導体でない場合でも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。ここでは、導体基材2,3の両方を基材13,14に代えているが、導体基材2,3の一方だけを基材13,14に代えてもよい。
【0021】
以上のように、第3実施形態では、導体基材2,3に代えて、表面に導体材料の薄膜11,12を成膜してある基材13,14を用いている。このような構造は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)プロセスにより高精度かつ大量に製作することができる。
【0022】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態における傾斜センサ1の構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は断面図である。この図に示すように、第4実施形態では、上部導体基材2に代えて、表面に導体材料の薄膜11aを成膜してある上部基材13を用いている。また、下部導体基材3に代えて、表面に導体材料の薄膜12aを成膜してある下部基材14を用いている。薄膜11a,12aは、上部基材13を表面図上で上下2つのセクタに分割するパタン形状であり、それぞれのセクタを独立した電極としている。ここでは、基材13,14を2つのセクタに分割しているが、分割数は少なくとも2つであればよく、特に限定されるものではない。その他の点は第3実施形態と同様である。
【0023】
以上のように、第4実施形態では、基材13,14の表面に成膜してある薄膜11a,12aは、上部基材13を表面図上で上下2つのセクタに分割するパタン形状としている。これにより、第2実施形態と同様、デバイスが傾いた際に信号を検出した電極からデバイスの傾いた方向を検出することができる。また、第3実施形態と同様、MEMSプロセスにより高精度かつ大量に製作することができるという効果もある。
【0024】
(その他の実施形態)
第1〜第4実施形態では、キャビティ4の底部には掘り込み7を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、キャビティ4の底部7aを平面としてもよいし、あるいは、図6に示すように、キャビティ4の底部7bを錐状に形成してもよい。これらの構成によっても導体球5が初期位置に止まる効果があり、また、製作が容易になるという別の効果を期待することもできる。
【0025】
また、第1〜第4実施形態では、キャビティ4を錐状に形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、図7に示すように、下部導体基材3の上部の所定位置8においてキャビティ4を円柱状に形成することも可能である。このような構成によれば、キャビティ4を広くすることができ、また、製作が容易になるという別の効果を期待することもできる。もちろん、図8に示すように、絶縁部6aを厚くすることによってもキャビティ4を広くすることが可能である。
【0026】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、上記の実施形態に基づいて当業者によってなされる他の実施形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範囲に含まれることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0027】
1 傾斜センサ
2 上部導体基材
3 下部導体基材
4 キャビティ
5 導体球
6 絶縁部
7 掘り込み
8 絶縁部
11、11a 薄膜(上部電極)
12、12a 薄膜(下部電極)
13 上部基材
14 下部基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部を介して接合された2枚の導体基材間に導電性球体を内蔵し、前記2枚の導体基材間における導通の有無をモニタすることで傾きを検知する傾斜センサであって、
前記2枚の導体基材間の密閉空間が大気圧に比べ減圧雰囲気であるか、または不活性ガスにより満たされていることを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
前記2枚の導体基材の一方に錐状のキャビティを形成し、そのキャビティの底部に掘り込みを形成したことを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ。
【請求項3】
前記2枚の導体基材を絶縁部により少なくとも2つのセクタに分割し、それぞれのセクタを独立した電極とすることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜センサ。
【請求項4】
前記導体基材に代えて、表面に導体材料の薄膜を成膜してある基材を用いたことを特徴とする請求項1または2記載の傾斜センサ。
【請求項5】
前記導体基材に代えて、表面に導体材料の薄膜を成膜してある基材を用い、
前記導体材料の薄膜は、前記2枚の導体基材を少なくとも2つのセクタに分割するパタン形状であることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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