説明

像保持体装置および画像形成装置

【課題】表面層を有する像保持体において、光除電時の正孔のトラップに起因して発生する急速な電位の減衰を低減すること。
【解決手段】表面に形成され内部を保護する保護層(15)を有する像保持体(PRy)と、像保持体(PRy)表面を帯電する非接触放電型の帯電器(CCy)と、像保持体(PRy)表面のトナー像を転写する転写器(T1y)と、転写器(T1y)により転写後の像保持体(PRy)表面を清掃する像保持体清掃器(CLy)と、転写器(T1y)の下流側且つ像保持体清掃器(CLy)の上流側に配置され、像保持体(PRy)表面に電荷を付与する非接触放電型の清掃前除電器と、転写器(T1y)の下流側且つ像保持体清掃器(CLy)の上流側に配置され、像保持体(PRy)表面に除電用の光を照射する光除電器(2y)と、を備えた画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像保持体装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンタ、FAX等の画像形成装置では、帯電器により帯電された像保持体表面に静電潜像を形成し、潜像をトナー像に現像して、トナー像が媒体に転写、定着されることで画像形成が行われている。
このような画像形成装置として、特許文献1(特開平8−016052号公報)には、三セレン化砒素を主成分とする感光体と、感光体表面を帯電する帯電器と、中心波長が660〜700nmの光を照射して潜像を書き込む画像露光光源と、二成分現像剤により潜像を現像する現像機と、現像後の感光体表面に転写前除電光を照射する除電ランプと、用紙にトナー像を転写する転写器と、転写後の感光体表面のトナーを除電するACコロナ除電器と、トナーを掻き取るクリーニング装置と、クリーニング後の感光体表面を除電するイレーズランプとを有する画像形成装置が記載されている。
【0003】
また、前記像保持体は、寿命や故障の発生時に交換可能な着脱体、いわゆる、着脱ユニットとして着脱可能に構成されることが多い。前記着脱ユニットは長寿命であることが求められるが、着脱ユニットを長寿命化する場合、像保持体を長寿命化する必要がある。前記像保持体は、摺擦部材、いわゆるクリーニングブレードやクリーニングブラシからなる清掃部材や媒体や中間転写体等により表面が磨耗されて、表面の膜が減り、寿命に至る。これに対応して、像保持体表面に架橋樹脂等からなる硬化表面層をもつ感光体が使用されることが多くなっている。
このような表面層を有する像保持体として、特許文献2(特開平9−190004号公報)には、支持体表面に、導電層、下引層、電荷発生層、電荷輸送層、表面層の順に形成された電子写真感光体が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−016052号公報(「0014」〜「0016」、「0027」、「0047」〜「0049」、図1)
【特許文献2】特開平9−190004号公報(「0050」〜「0063」、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保護層を有する像保持体において、帯電器での必要な電流値が高くなることを抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の像保持体装置は、
導電性の基体と、電荷を発生させる電荷発生層と、前記電荷発生層で発生した電荷を輸送する電荷輸送層と、表面に形成され内部を保護する保護層とを有する回転する像保持体と、
前記像保持体表面を帯電する帯電器と、
帯電された表面に形成されたトナー像が転写される転写領域を通過した前記像保持体表面を清掃する像保持体清掃器と、
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置され、前記像保持体表面に電荷を付与する非接触放電型の清掃前除電器と、
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置され、像保持体表面に除電用の光を照射する光除電器と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の像保持体装置は、請求項1に記載の像保持体装置において、
前記像保持体回転方向に対して前記清掃前除電器の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置された前記光除電器、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の像保持体装置は、請求項1または2に記載の像保持体装置において、
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記清掃前除電器の上流側に配置された前記光除電器、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の像保持体装置は、請求項3に記載の像保持体装置において、
電荷を発生させる放電部と、放電部で発生された電荷により前記像保持体表面に均一に帯電させるための放電均一化部材とを有する前記清掃前除電器、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の像保持体装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の像保持体装置において、
前記像保持体回転方向に対して前記像保持体清掃器の下流側且つ前記帯電器の上流側に配置された第2光除電器、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の像保持体装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の像保持体装置において、
架橋性樹脂と架橋構造を作る反応基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料を含有する架橋構造を有する前記保護層、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の像保持体装置は、請求項6に記載の像保持体装置において、
前記架橋性樹脂がフェノール誘導体であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の像保持体装置は、請求項6に記載の像保持体装置において、
前記架橋性樹脂がシロキサン系樹脂であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の画像形成装置は、
請求項1ないし8のいずれかに記載の像保持体装置と、
前記帯電器により帯電された像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体表面に形成された静電潜像を現像する現像器と、
前記像保持体表面のトナー像を転写する転写器と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、保護層を有する像保持体において、帯電器での必要な電流値が高くなることを抑制することができる。
請求項2に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、光除電器から帯電器までの距離を長いため、正孔が十分に解放され、暗減衰を低減することができる。
請求項3に記載の発明によれば、清掃前除電器により電荷が付与される前に光除電器により除電できるので、請求項2に記載の発明の場合に比べて、さらに、帯電器での必要な電流値を低減することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、清掃前除電器により像保持体表面の電位ムラを低減することができる。
請求項5に記載の発明によれば、転写後に付着した残留トナーにより像保持体の表面が遮蔽されることがあっても、第2光除電器によって、帯電器による帯電ムラを抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、電荷輸送性を有し且つ耐摩耗性の高い保護層を形成できる。
請求項7に記載の発明によれば、フェノール誘導体により保護層を形成できる。
請求項8に記載の発明によれば、シロキサン系樹脂により保護層を形成できる。
請求項9に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べて、保護層を有する像保持体を使用して、帯電器での必要な電流値が高くなることを抑制しつつ、高速な画像形成に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、画像形成装置Uは自動原稿搬送装置U1と、これを支持し且つ上端に透明な原稿読取り面PGを有する画像形成装置本体U2とを備えている。
前記自動原稿搬送装置U1は、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて収容される原稿給紙部TG1と、原稿給紙部TG1から給紙され前記原稿読取り面PG上の原稿読取位置を通過して搬送される原稿Giが排出される原稿排紙部TG2とを有している。
前記画像形成装置本体U2は、利用者が画像形成動作開始等の作動指令信号を入力操作する操作部UIと、露光光学系A等を有している。
【0020】
前記自動原稿搬送装置U2で原稿読取り面PG上を搬送される原稿または手動で原稿読取り面PG上に置かれた原稿からの反射光は、前記露光光学系Aを介して、固体撮像素子CCDでR(赤)、G(緑)、B(青)の電気信号に変換される。
画像情報変換部IPSは、固体撮像素子CCDから入力される前記RGBの電気信号をK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の画像情報に変換して一時的に記憶し、前記画像情報を所定のタイミングで潜像形成用の画像情報として潜像形成装置駆動回路DLに出力する。
なお、原稿画像が単色画像、いわゆる、モノクロの場合は、K(黒)のみの画像情報が潜像形成装置駆動回路DLに入力される。
前記潜像形成装置駆動回路DLは、各色Y,M,C,Kの各駆動回路(図示せず)を有し、入力された画像情報に応じたレーザ駆動信号を所定のタイミングで、潜像形成装置ROSの各色の潜像書込用レーザダイオード(図示せず)に出力する。
【0021】
図2は実施例1の画像形成装置の要部拡大説明図である。
前記潜像形成装置ROSの上方に配置された可視像形成装置Uy,Um,Uc,Ukはそれぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(黒)の各色のトナー像を形成する装置である。
潜像形成装置ROSの各レーザダイオードから出射したY,M,C,Kの潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkは、それぞれ、回転する像保持体PRy,PRm,PRc,PRkに入射する。なお、実施例1では、波長780nmのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkが使用されているが、波長は設計等に応じて変更可能である。
前記Yの可視像形成装置Uyは、回転する像保持体PRy、帯電器CCy,現像装置Gy、転写器T1y、清掃前除電器の一例としてのプレクリーニングコロトロン1y、光除電器2y,像保持体清掃器CLyを有している。なお、実施例1の可視像形成装置Uyでは、像保持体PRy、帯電器CCy、プレクリーニングコロトロン1y、光除電器2yおよび像保持体清掃器CLyが像保持体装置として画像形成装置U本体に対して着脱可能な着脱体、いわゆる、ユニット化されており、現像器Gyも着脱可能なユニット化されている。
その他の色の前記可視像形成装置Um,Uc,Ukはいずれも前記Yの可視像形成装置Uyと同様に構成されている。
【0022】
図1,図2において、前記各像保持体PRy,PRm,PRc,PRkはそれぞれの帯電器CCy,CCm,CCc,CCkにより一様に帯電された後、画像書込位置Q1y、Q1m,Q1c,Q1kにおいて、前記レーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより、その表面に静電潜像が形成される。前記像保持体PRy,PRm,PRc,PRk表面の静電潜像は、現像領域Q2y,Q2m,Q2c,Q2kにおいて現像器Gy,Gm,Gc,Gkにより可視像の一例としてのトナー像に現像される。
なお、実施例1の画像形成装置Uでは、像保持体PRy,PRm,PRc,PRkは外径84mmのものが使用され、いわゆるプロセス速度が420mm/sに設定されている。前記像保持体PRy,PRm,PRc,PRk表面は、帯電器CCy,CCm,CCc,CCkにより−700Vに帯電され、レーザビームLy,Lm,Lc,Lkが照射された画像部は帯電電位が−300Vになるように設定されている。そして、現像器Gy,Gm,Gc,Gkには、トナーとキャリアからなる二成分現像剤が収容され、像保持体PRy,PRm,PRc,PRkと0.3mmの間隔をあけて配置された現像剤保持体の一例としての現像ロールは、回転不能な磁石ロールと、磁石ロールの外周に配置された円筒状のスリーブとを有し、スリーブ径16mm、スリーブの回転速度が800mm/sに設定されている。そして、前記現像ロールには、−500Vの直流電圧と、周波数が6kHzでピーク間電圧Vppが1.5kVの交流電圧とが重畳された現像用の電圧が印加される。なお、各電圧や外径等の具体的な数値は、一例であり、設計に応じて変更可能である。
【0023】
その現像されたトナー像は、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBに接触する1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kに搬送される。前記1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kにおいて中間転写ベルトBの裏面側に配置された1次転写器T1y,T1m,T1c,T1kには、制御部Cにより制御される電源回路Eから所定のタイミングでトナーの帯電極性と逆極性の1次転写電圧が印加される。なお、実施例1では、1次転写器T1y,T1m,T1c,T1kには、1次転写電圧として+43μAの定電流制御された電圧が印加される。
前記各像保持体PRy〜PRk上のトナー像は前記1次転写器T1y,T1m,T1c,T1kにより中間転写ベルトBに1次転写される。1次転写後の像保持体PRy,PRm,PRc,PRk表面の残留トナーは、プレクリーニングコロトロン1y、1m、1c,1kにより電荷が付与されることで像保持体表面の帯電電位やトナーの帯電極性が調整されて、像保持体清掃器CLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。また、前記像保持体PRy,PRm,PRc,PRk表面は、前記プレクリーニングコロトロン1y、1m、1c,1kや光除電器2y、2m、2c,2kにより除電され、帯電器CCy,CCm,CCc,CCkにより再帯電される。
【0024】
前記像保持体PRy〜PRkの上方には、上下移動可能且つ前方に引き出し可能な中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。前記ベルトモジュールBMは、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBと、中間転写体駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRd、中間転写体張架部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止用部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としてのアイドラロール(フリーロール)Rfおよび二次転写領域対向部材の一例としてのバックアップロールT2aを含む中間転写体支持部材の一例としてのベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)と、前記1次転写器T1y,T1m,T1c,T1kとを有している。そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)により回転移動可能に支持されている。
【0025】
前記バックアップロールT2aに接する中間転写ベルトBの表面に対向して2次転写部材の一例としての二次転写ロールT2bが配置されており、前記各ロールT2a,T2bにより2次転写器T2が構成されている。また、2次転写器T2bおよび中間転写ベルトBの対向する領域には2次転写領域Q4が形成される。
前記1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kで転写器T1y,T1m,T1c,T1kにより中間転写ベルトB上に順次重ねて転写された単色または多色のトナー像は、前記2次転写領域Q4に搬送される。
【0026】
前記潜像形成装置ROSの下方には、給紙容器の一例としての給紙トレイTR1〜TR3を前後方向(X軸方向)に出入可能に支持するガイド部材の一例としての左右一対のガイドレールGR,GRが3段設けられている。給紙トレイTR1〜TR3に収容された媒体の一例としての記録シートSは、媒体取出し部材の一例としてのピックアップロールRpにより取り出され、媒体捌き部材の一例としてのさばきロールRsにより1枚ずつ分離される。そして、記録シートは、媒体搬送路の一例であるシート搬送路SHに沿って媒体搬送部材の一例としての複数の搬送ロールRaにより搬送され、2次転写領域Q4のシート搬送方向上流側に配置された転写領域搬送時期調節部材の一例としてのレジロールRrに送られる。前記シート搬送路SH、シート搬送ロールRa、レジロールRr等によりシート搬送装置(SH+Ra+Rr)が構成されている。
【0027】
レジロールRrは、前記中間転写ベルトBに形成されたトナー像が2次転写領域Q4に搬送されるのにタイミングを合わせて、前記記録シートSを2次転写領域Q4に搬送する。記録シートSが前記2次転写領域Q4を通過する際、前記バックアップロールT2aは接地され、2次転写器T2bには前記制御部Cにより制御される電源回路Eから所定のタイミングでトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧が印加される。このとき、前記中間転写ベルトB上のカラートナー像は、前記2次転写器T2により前記記録シートSに転写される。
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体清掃器の一例としてのベルトクリーナCLbによりクリーニングされる。
【0028】
前記トナー像が2次転写された記録シートSは、定着装置Fの加熱用定着部材の一例としての加熱ロールFhおよび加圧用定着部材の一例としての加圧ロールFpの圧接領域である定着領域Q5に搬送され、前記定着領域を通過する際に加熱定着される。加熱定着された記録シートSは、媒体排出部材の一例としての排出ローラRhから媒体排出部の一例としての排紙トレイTRhに排出される。
なお、前記加熱ロールFh表面には、記録シートSの前記加熱ロールからの離型性を良くするための離型剤が離型剤塗布装置Faにより塗布されている。
【0029】
前記ベルトモジュールBMの上方にはY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(黒)の各現像剤を収容する現像剤補給容器の一例としての現像剤カートリッジKy,Km,Kc,Kkが配置されている。各現像剤カートリッジKy,Km,Kc,Kkに収容された現像剤は、前記現像器Gy,Gm,Gc,Gkの現像剤の消費に応じて、図示しない現像剤補給路から前記各現像器Gy,Gm,Gc,Gkに補給される。
【0030】
図1において、前記画像形成装置Uは上側枠体UFと下側枠体LFとを有しており、上側枠体UFには、前記潜像形成装置ROSおよび潜像形成装置ROSよりも上方に配置された部材(像保持体PRy,PRm,PRc,PRk、現像器Gy,Gm,Gc,Gk、ベルトモジュールBM等)が支持されている。
また、下側枠体LFには、前記給紙トレイTR1〜TR3を支持するガイドレールGRおよび前記各トレイTR1〜TR3から給紙を行う前記給紙部材(ピックアップロールRp,さばきロールRs,シート搬送ロールRa等)が支持されている。
【0031】
(像保持体の説明)
図3は本発明の実施例1の像保持体の説明図である。
次に、本発明の実施例1の像保持体PRy,PRm,PRc,PRkの構成を説明するが、各色の像保持体PRy,PRm,PRc,PRkは同様に構成されているため、Y色の像保持体PRyについてのみ説明し、その他の像保持体PRm,PRc,PRkについての詳細な説明は省略する。
図3において、実施例1の像保持体PRyは、接地されたアルミニウム製の円筒状の基体11を有する。前記機体の表面には、下引層12が形成され、下引層12の外側には、電荷発生層13が形成されている。前記電荷発生層13の表面側には、電荷輸送層14が形成され、電荷輸送層14の表面側には保護層15が形成されている。
したがって、前記像保持体PRyでは、帯電器CCyにより表面が帯電された状態で、レーザー光Lyが照射されると、電荷発生層13で電荷や正孔が発生し、電荷輸送層14、保護層15を電荷が輸送され、表面の電荷が流れ、レーザー光Lyが照射された部分の帯電電位が、レーザー光Lyが照射されていない部分に対して低下する。
【0032】
(像保持体清掃器の説明)
図4は像保持体清掃器の要部拡大説明図であり、図4Aは本発明の実施例1の像保持体清掃器の要部拡大説明図、図4Bは従来の像保持体清掃器の要部拡大説明図である。
次に、本発明の実施例1の像保持体清掃器CLy,CLm,CLc,CLkやプレクリーニングコロトロン1y,1m,1c,1k、光除電器2y,2m,2c,2kの構成を説明するが、各色の像保持体清掃器CLy,CLm,CLc,CLk等は同様に構成されているため、Y色のものについてのみ説明し、その他の色のものについての詳細な説明は省略する。
図4Aにおいて、実施例1の像保持体清掃器CLyは、清掃容器の一例としてのハウジング20を有しており、ハウジング20内には、像保持体PRyに対向して配置された回転清掃部材の一例としてのクリーニングロール21が回転可能に支持されている。実施例1のクリーニングロール21は、外径が12mmの回転駆動するロールにより構成されており、像保持体PRyとの対向位置において同方向に回転するように設定されている。
実施例のクリーニングロール21は、直径6mmのシャフト21aと、シャフト21aの周囲に固定された弾性層21bと、弾性層の表面に被覆された層厚900μmの繊維層(表面層)21cとを有する。
【0033】
前記シャフト21aは、例えば、鉄、SUS等の金属で形成することができ、弾性層21bは例えば、カーボンブラック等の導電材を配合した発泡ウレタン、NBR、SBR、EPDM等で形成された導電性の円筒ロールにより構成できる。
また、繊維層21cは、導電性繊維からなる不織布や、導電性繊維を編み込んだり織り込んだりして布状にしたものを使用可能である。ここで、導電性繊維としては、例えば、カーボンブラックを分散させたナイロン導電糸の割繊繊維(KBセイレン(株)製)の例えば繊維太さ0.5デニール(248T/450F)のものを用いることができる。このように、極細の導電性繊維を用いることで、繊維層21cの表面積を増加させることができるので、トナーを多量に保持させることができ、また、クリーニング性能を高めることができる。この場合に、トナーの保持性・クリーニング性の観点から、導電性繊維の繊維太さとしては、2デニール(直径約15μm)以下、より好ましくは1デニール(直径約11μm)以下が適している。また、不織布としては、乾式不織布、スポンジバンド、湿式不織布等があるが、本実施例では、乾式不織布を用いている。乾式不織布は、具体的には、繊維長が数センチ程度の繊維を、カードやエアランダム機で薄いシートとし、必要に応じて何枚かのシートを重ねて形成されたものであり、繊維の接合は、高圧細水流で絡めることで形成されている。
そして、実施例1のクリーニングロール21には、残留トナーの帯電極性とは逆極性の残留トナー除去電圧が印加される。したがって、像保持体PRy表面からクリーニングロール21側に残留トナーが静電的に移動する電界が発生し、残留トナーが像保持体PRyから除去される。また、像保持体PRyに付着した放電生成物や紙粉、埃等の付着物もクリーニングロール21により除去される。
【0034】
前記クリーニングロール21には、クリーニングロール21で除去された現像剤を回収する回収部材の一例として回収ロール22が接触対向して配置されており、回収ロール22には、回収ロール22表面に付着したトナーを掻き落とす掻き落とし部材の一例としてのスクレーパ23が配置されている。
前記回収ロール22は、例えば、カーボンブラックを分散させて抵抗値を調整したフェノール樹脂で形成されている。なお、鉄やSUS等の金属材料を使用することも可能であり、スクレーパ23との接触を円滑化したりトナーの離型性を高めるためにフッ素樹脂等の被膜を形成することも可能である。
そして、前記回収ロール22には、クリーニングロール21表面のトナーが回収ロール22側に静電的に移動する電界を発生させる残留トナー回収電圧が印加されている。
【0035】
前記クリーニングロール21の像保持体PRy回転方向下流側には、像保持体PRy表面から残留トナーを掻き取る掻き取り部材の一例としてのクリーニングブレード24が配置されている。実施例1のクリーニングブレード24は、100%モジュラスが6.2MPa以上19.6MPa以下の弾性ゴムにより構成されている。なお、前記100%モジュラスは、JIS K 6301(加硫ゴム物理試験方法)に準拠した測定方法で測定され、23℃の環境下での100%伸張時の応力を指す。
前記クリーニングロール21から回収ロール22に回収され、スクレーパ23で掻き落とされたトナーやクリーニングブレード24で掻き取られたトナーは、廃棄現像剤搬送部材の一例としての廃トナー搬送オーガ26により搬送され、図示しない廃棄現像剤回収容器に回収される。
前記符号21〜26を付した各部材により実施例1の像保持体清掃器CLyが構成されている。
【0036】
(帯電器の説明)
図4Aにおいて、実施例1の帯電器CCyは、被接触型のスコロトロンにより構成されており、帯電器CCyには、帯電用電源回路Ebから像保持体PRy表面を帯電させる帯電電圧が印加される。実施例1では、帯電器CCyは、枠体の一例としてのシールド30yと、放電部の一例としての放電ワイヤ31yと、放電均一化部材の一例としてのグリッド32yとを有するスコロトロンにより構成されており、像保持体PRy表面を−700Vに帯電させるために、グリッド32yには、−750Vのグリッド電圧が印加されている。
なお、実施例1では、プレクリーニングコロトロン1yも、被接触型のコロトロンにより構成されており、放電ワイヤ36yの電流値は−400μA、プレクリーニングコロトロン1y通過後の像保持体PRyの電位は−600Vとなるように設定されている。
【0037】
(実施例1の作用)
前記構成要件を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、像保持体PRy〜PRk表面に形成されたトナー像が中間転写ベルトBを介して記録シートS上に転写、定着される。1次転写後の像保持体PRy〜PRk表面に付着した残留トナーは、プレクリーニングコロトロン1y〜1kで電荷等が調節される。電荷が調節された残留トナーは、クリーニングロール21やクリーニングブレード24で除去される。このとき、クリーニングロール21、クリーニングブレード24等と擦れることにより像保持体PRy〜PRk表面が磨耗する。実施例1の像保持体PRy〜PRkは、表面の保護層15により磨耗が少なく、長寿命化されると共に、前記磨耗が少なすぎると経時的に像保持体PRy〜PRk表面がトナーにより汚れ、像流れ等の画質低下が発生することがあるため、クリーニングロール21やクリーニングブレード24により像流れ等の抑制に必要な程度の摺擦、磨耗がされる。
【0038】
(実験例)
次に、光除電器2y〜2kを配置する位置と、像保持体表面を帯電電圧に帯電させるために帯電器CCy〜CCkで必要とされる必要電流値との関係を求める実験を行った。
実験は、光除電器2y〜2kを配置する位置を、実施例1の位置に配置した場合と、図4Bに示す従来の画像形成装置の場合、すなわち、像保持体PRy〜PRk回転方向に沿って像保持体清掃器CLy〜CLkと帯電器CCy〜CCkとの間に光除電器が配置される場合に、像保持体表面PRy〜PRk表面を−700Vに帯電させるために必要なスコロトロンCCy〜CCkの放電ワイヤ31の電流値を計測した。
なお、実験例では、保護層15がある像保持体PRy〜PRkとして、下記の具体例1の像保持体Bを使用し、保護層15がない像保持体PRy〜PRkとして、下記の比較例1の像保持体Aを使用した。
【0039】
(比較例1)
比較例1の像保持体の作製方法を下記に例示する。
酸化亜鉛(SMZ-017N、テイカ株式会社製)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(A1100、日本ユニカー社製)2重量部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10-4であった。前記表面処理を施した酸化亜鉛35重量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)15重量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)6重量部と、メチルエチルケトン44重量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005重量部と、シリコーン微粒子(トスパール130、GE東芝シリコーン合同会社製)17重量部を添加し、下引層塗布用液を得た。
【0040】
この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材11上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層12を得た。表面粗さは、表面粗さ形状測定器(サーフコム570A、東京精密社製)を使用し、測定距離2.5mm、走査速度0.3mm/secで測定し、十点平均粗さRzで0.24であった。
次に、その上にこのアルミニウム基材上にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角 (2θ±0.2°) が、7.5°、9.9°、12.5°、16.3° 、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部と、ポリビニルブチラール(エスレックBM-S、積水化学)1部と、酢酸n−ブチル100部と、混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を前記下引き層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層13を形成した。
次に、下記化1のベンジジン化合物2部と、下記化2の高分子化合物 (粘度平均分子量 39,000) 3部とをクロロベンゼン20部に溶解させた塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行なって膜厚22μmの電荷輸送層14を形成した。これを像保持体Aとする。
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
(具体例1)
具体例1の像保持体は、前記比較例1の像保持体Aの表面に、下記構成材料Bをブタノール75部に溶解させたコーティング液を、前記電荷輸送層14の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、130℃で1時間加熱処理して硬化して、膜厚約5μmの表面層15を形成した。これを像保持体Bとする。実験結果を図5に示す。
構成材料B
下記化3の化合物 13質量部
フェノール樹脂(群栄化学 PL4852) 13質量部
ハジキ防止剤 0.1質量部
【0044】
【化3】

【0045】
図5は、実施例1の実験結果の説明図であり、図5Aは保護層を有する像保持体において実施例1の場合と光除電器を従来の位置に配置した場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図5Bは図5Aの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフ、図5Cは保護層を有しない像保持体において実施例1の場合と光除電器を従来の位置に配置した場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図5Dは図5Cの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフである。
図5A、図5Bに示すように、実施例1のように、光除電器2y〜2kを像保持体清掃器CLy〜CLkの像保持体PRy〜PRkの回転方向上流側に配置することで、従来の光除電器、いわゆる、イレーズランプを使用する場合に比べて、必要な電流値が低く抑えられている。また、図5C,図5Dに示すように、像保持体PRy〜PRkに保護層15を設けなかった場合には、必要な電流値はそれほど大きくならなかったが、保護層15を設けることで必要電流値が高くなると共に、実施例1の位置に光除電器2y〜2kを配置することで、従来の保護層15を設けていない場合と同様の電流値になっている。
【0046】
表面層15を設けた像保持体PRy〜PRkにおいて従来の位置で光除電器2y〜2kにより除電する場合に、帯電器CCy〜CCkの放電ワイヤ31y〜31kでの必要電流値が高くなる理由は、以下の原理に基づくものと考えられる。
保護層15を設けた像保持体PRy〜PRkに、従来の位置で光除電器2y〜2kにより光を照射すると、像保持体PRy〜PRkの電荷発生層13で発生して表面層15に移動する正孔、いわゆる、ホールが、表面層15中のトラップサイトにトラップされてしまう。その後、スコロトロンにより構成された帯電器CCy〜CCkで帯電されると、スコロトロン直下では、十分に帯電されるものの、像保持体PRy〜PRkに高電場がかかるため、トラップされたホールが解放され、急速に電位が減衰してしまい、現像領域Q2y〜Q2kでの電位は低くなってしまう。すなわち、暗減衰が大きくなってしまう。
【0047】
そのため、従来の位置では、所定の帯電電位に帯電させるためには、図5A、図5Cに示すように、保護層15を有しない場合に比べて、異常に高い電流値が必要となるものと考察される。電流値が高くなると、放電ワイヤ31yとシールド30y間、放電ワイヤ31yとグリッド32y間などの絶縁距離から決まる安全の観点から最大電圧を満たせなくなり、その最大電圧を満たそうとすると、放電ワイヤ31yの電流値を低くせざるを得なくなり、必要な帯電電位を売ることができなくなってしまうという問題がある。すなわち、安全電圧の範囲では、所望の電位を得られなくなる。そのため、特に、大電流が必要なプロセス速度が400mm/s以上の高速機では、保護膜15を有する像保持体PRy〜PRkを使用が難しい場合がある。
【0048】
これに対して、実施例1に示す位置に、光除電器2y〜2kを配置することで、光除電器2y〜2kで光除電する時に発生したホールが保護層15のバルクトラップにトラップされてしまう。しかし、実施例1では、光除電器2y〜2kから帯電器CCy〜CCkまでの距離が、帯電器の直上流に配置されている従来の場合に比べて長くなり、時間がかかるため、ホールが開放される時間が確保され、暗減衰を防止するものと推定される。このため、保護層15を有しない場合とほぼ同様の電流値で、十分な電位に帯電している。
【0049】
(具体例2)
具体例2の像保持体は、前記比較例1の像保持体Aを表面に下記に示す構成材料Cに、メチルアルコール5部、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E)0.3部を加え、室温で攪拌することにより24時間保護基の交換反応を行った。
構成材料C
下記化4の化合物 2部
下記化5の化合物 1部
コロイダルシリカ 0.3部
Me(MeO)2−Si−(CH2)4−Si−Me(OMe)2 2部
(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)メチルジメトキシシラン 0.1部
ヘキサメチルシクロトリシロキサン 0.3部
ZX-022(富士化成工業社製) 0.25部
【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
その後、n−ブタノール10部、蒸留水0.25部を添加し、5分加水分解を行なった。
加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した液に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)0.1部、アセチルアセトン0.1部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4部を加え、このコーティング液を前記電荷輸送層14の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、130℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3μmで架橋性樹脂がシロキサン系樹脂の表面層15を形成した。これを像保持体Cとする。
前記具体例2の場合でも、具体例1の場合と同様に、帯電器CCy〜CCkでの必要な電流値を抑えつつ、十分帯電させることができ、良好な画像形成を行うことができた。
【実施例2】
【0053】
図6は本発明の実施例2の画像形成装置の要部説明図であり、実施例1の図2に対応する図である。
なお、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図6において、実施例2の画像形成装置Uでは、光除電器2y〜2kの位置が、像保持体PRy〜PRkの回転方向に沿って、1次転写器T1y〜T1k、すなわち1次転写領域Q3y〜Q3kの下流側且つプレクリーニングコロトロン1y〜1kの上流側に配置されていること以外は、実施例1と同様に構成されている。
【0054】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の画像形成装置Uにおいて、実施例1の場合と同様に、放電ワイヤ31y〜31kで必要な電流値を計測する実験を行った。
(実験結果)
図7は実施例2の実験結果の説明図であり、図7Aは保護層を有する像保持体において光除電器の位置が実施例1の場合と実施例2の場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図7Bは図7Aの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフである。
【0055】
図7に示されるように、実施例2では、実施例1の場合に比べて、必要な電流値がさらに低減している。
これは、実施例2では、実施例1の場合に比べて、光除電器2y〜2kで光除電されてから、帯電器CCy〜CCkで帯電されるまでの距離がさらに長くなるものに加えて、さらに、別の作用により電流値が大きく低減していると推定される。すなわち、光除電器2y〜2kを実施例1の場合の位置に配置した場合、像保持体PRy〜PRk表面が光除電器2y〜2kにより光が照射される光除電領域に突入する際に、光除電器2y〜2kの上流側のプレクリーニングコロトロン1y〜1kにより放電され、表面が帯電される。したがって、プレクリーニングコロトロン1y〜1kにより表面が−600Vに帯電された状態で光除電器2y〜2kに突入する。
【0056】
これに対して、実施例2では、1次転写直後の電位が光除電器2y〜2kへの突入電位が約−50V〜−200Vとなり、実施例1の場合に比べて絶対値が低い電位となっている。そのため、光除電器2y〜2kで光除電する際に、像保持体PRy〜PRkの電荷発生層13で発生して表面の電荷をうち消すために移動するホールの数が少なくなるため、トラップされるホールも少なく、暗減衰をさらに少なくしているものと推定される。この結果、実施例2では、実施例1の場合に比べて、さらに帯電器CCy〜CCkで必要な電流値を低減している。
なお、実施例2では、光除電器2y〜2kで光除電された後に、プレクリーニングコロトロン1y〜1kにより表面が帯電されるために、プレクリーニングコロトロン1y〜1kが帯電ムラなく帯電させる能力が高くない場合、すなわち、いわゆる電位レベリング能力が高くない場合には、プレクリーニングコロトロン1y〜1kをコロトロンではなく、電位レベリング能力が高いスコロトロンにより構成することが望ましい。これにより、帯電器CCy〜CCkへの像保持体PRy〜PRk表面の突入時の電位が均一になり、帯電器CCy〜CCkでの帯電ムラが低下する。
【実施例3】
【0057】
図8は本発明の実施例3の画像形成装置の要部説明図であり、実施例1の図2に対応する図である。
なお、この実施例3の説明において、前記実施例1、2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例3は、下記の点で前記実施例1、2と相違しているが、他の点では前記実施例1、2と同様に構成されている。
図8において、実施例3の画像形成装置Uでは、実施例1と同様の位置に配置された第1光除電器2y〜2kと、従来の場合と同様に像保持体PRy〜PRkの回転方向に対して像保持体清掃器CLy〜CLkの下流側且つ帯電器CCy〜CCkの上流側の位置に配置された第2光除電器41y〜41kとを有する。
【0058】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の画像形成装置Uでは、第1光除電器2y〜2kによる光除電により保護層15のバルク中にトラップされたホールは、解放される時間が長いために十分解放されており、光除電後の電位もおよそ0〜−50Vと十分低い値に除電される。したがって、その後、第2光除電器41y〜41kでさらに光除電してもホールの発生はほとんどない。したがって、実施例3の画像形成装置Uでも、実施例1の放電ワイヤー31yの必要電流値と同様の電流値で、帯電器CCy〜CCkにより帯電される。仮に、残留トナーが多く、付着した残留トナーにより像保持体PRy〜PRkの表面が遮蔽されることにより、十分除電しきれない部分も発生しても、第2光除電器41y〜41kにより除電され、帯電器CCy〜CCkにより帯電ムラなく確実に帯電される。
【0059】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H06)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置としての複写機を例示したが、これに限定されず、FAXやプリンタあるいはこれらすべてまたは複数の機能を備えた複合機とすることも可能である。また、多色の画像形成装置に限定されず、単色、いわゆる、モノクロの画像形成装置にも適用可能である。
【0060】
(H02)前記実施例において例示された各部材の材料や、電位、速度等の具体的数値は、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
(H03)前記実施例において、像保持体の構成は、実施例に例示した構成に限定されず、任意の構成を採用可能である。例えば、下引層12は省略することができ、下引層12と基体11との間に導電層を追加する等任意の構成を採用することができる。
(H04)前記実施例において、不織布等を使用したクリーニングローラを使用したが、これに限定されず、クリーニングブラシ等、任意の像保持体回転清掃部材を採用可能である。また、前記実施例では、帯電器、除電器(プレクリーニングコロトロン)に非接触のコロトロン、スコロトロンを用いているが、上記に限定するものではなく、例えば、帯電器を接触型の帯電ロールにしたり、除電器を接触させたブラシロールを用いたりしても、同様の効果が発揮される。
【0061】
(H05)前記実施例において、像保持体PRy〜PRkは、中間転写ベルトBの回転方向に対して上流側からY,M,C,Kの順に配置したが、これに限定されず、配置順は任意に変更可能である。また、中間転写ベルトBが無く、像保持体PRy〜PRkから媒体に直接転写される構成としたり、中間転写ドラムを有する構成とすることも可能である。また、像保持体PRy〜PRkの数は4つ、すなわち、4色に限定されず、3色以下や5色以上とすることも可能である。
(H06)前記実施例において、像保持体装置は、像保持体PRy、帯電器CCy、プレクリーニングコロトロン1y、光除電器2yおよび像保持体清掃器CLyにより構成する場合を例示したが、これに限定されず、いずれかの部材を別ユニット化したり、現像器Gyやその他の部材を有する像保持体装置とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は実施例1の画像形成装置の要部拡大説明図である。
【図3】図3は本発明の実施例1の像保持体の説明図である。
【図4】図4は像保持体清掃器の要部拡大説明図であり、図4Aは本発明の実施例1の像保持体清掃器の要部拡大説明図、図4Bは従来の像保持体清掃器の要部拡大説明図である。
【図5】図5は、実施例1の実験結果の説明図であり、図5Aは保護層を有する像保持体において実施例1の場合と光除電器を従来の位置に配置した場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図5Bは図5Aの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフ、図5Cは保護層を有しない像保持体において実施例1の場合と光除電器を従来の位置に配置した場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図5Dは図5Cの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフである。
【図6】図6は本発明の実施例2の画像形成装置の要部説明図であり、実施例1の図2に対応する図である。
【図7】図7は実施例2の実験結果の説明図であり、図7Aは保護層を有する像保持体において光除電器の位置が実施例1の場合と実施例2の場合でのスコロトロンワイヤーの必要電流値とを示す実験結果の一覧表、図7Bは図7Aの実験結果について縦軸にスコロトロン必要電流値をとったグラフである。
【図8】図8は本発明の実施例3の画像形成装置の要部説明図であり、実施例1の図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0063】
1y,1m,1c,1k…清掃前除電器、
2y,2m,2c,2k…光除電器、
11…基体、
13…電荷発生層、
14…電荷輸送層、
15…保護層、
41y,41m,41c,41k…第2光除電器、
CCy,CCm,CCc,CCk…帯電器、
CLy,CLm,CLc,CLk…像保持体清掃器、
Gy,Gm,Gc,Gk…現像器、
PRy,PRm,PRc,PRk…像保持体、
ROS…潜像形成装置、
T1y,T1m,T1c,T1k…転写器、
U…画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の基体と、電荷を発生させる電荷発生層と、前記電荷発生層で発生した電荷を輸送する電荷輸送層と、表面に形成され内部を保護する保護層とを有する回転する像保持体と、
前記像保持体表面を帯電する帯電器と、
帯電された表面に形成されたトナー像が転写される転写領域を通過した前記像保持体表面を清掃する像保持体清掃器と、
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置され、前記像保持体表面に電荷を付与する非接触放電型の清掃前除電器と、
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置され、像保持体表面に除電用の光を照射する光除電器と、
を備えたことを特徴とする像保持体装置。
【請求項2】
前記像保持体回転方向に対して前記清掃前除電器の下流側且つ前記像保持体清掃器の上流側に配置された前記光除電器、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の像保持体装置。
【請求項3】
前記像保持体回転方向に対して前記転写領域の下流側且つ前記清掃前除電器の上流側に配置された前記光除電器、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の像保持体装置。
【請求項4】
電荷を発生させる放電部と、放電部で発生された電荷により前記像保持体表面に均一に帯電させるための放電均一化部材とを有する前記清掃前除電器、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の像保持体装置。
【請求項5】
前記像保持体回転方向に対して前記像保持体清掃器の下流側且つ前記帯電器の上流側に配置された第2光除電器、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の像保持体装置。
【請求項6】
架橋性樹脂と架橋構造を作る反応基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料を含有する架橋構造を有する前記保護層、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の像保持体装置。
【請求項7】
前記架橋性樹脂がフェノール誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の像保持体装置。
【請求項8】
前記架橋性樹脂がシロキサン系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の像保持体装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の像保持体装置と、
前記像保持体表面を帯電する非接触放電型の帯電器と、
前記帯電器により帯電された像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体表面に形成された静電潜像を現像する現像器と、
前記像保持体表面のトナー像を転写する転写器と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−164664(P2008−164664A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350928(P2006−350928)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】