説明

像担持体、並びに画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】耐久性に優れ、画像欠陥のない高画質な画像を形成できる像担持体、及び該像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に少なくとも下引き層と、感光層とをこの順に有してなり、前記下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有することを特徴とする像担持体、並びに該像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の静電複写プロセスの画像形成に用いられる像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」、「静電潜像担持体」と称することもある)、並びに該像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、像担持体用の光導電性素材として、Se、CdS、ZnO等の無機材料に比べて、感度、熱安定性、毒性等に優位性を有する有機材料を用いた像担持体の開発が盛んに行われており、多くの複写機及びプリンタにおいて、有機材料を用いた像担持体が搭載されている。
一般に、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、帯電工程、露光工程、現像工程、及び転写工程という一連のプロセスにより画像形成が行われる。このような画像形成を実施する画像形成装置は、少なくとも帯電装置、画像露光装置、現像装置(特に反転現像装置)、転写装置、及び像担持体を備えている。このような構成の画像形成装置では、長期連続使用時に異常画像が発生しやすく、特に、反転現像時の異常画像として地肌汚れ及び黒ポチの発生が問題となる。そこで、有機系像担持体の特性を改善する技術の一つとして、導電性支持体上に下引き層を設け、該下引き層上に感光層を形成することが提案されている。このような下引き層としては、例えば、樹脂からなるもの、無機顔料(例えば酸化チタン、酸化スズ等)を樹脂中に分散させたもの(特許文献1参照)、などが提案されている。これらの提案の下引き層は、比較的コストも低く、その効果も良好であるため、数多くの像担持体に用いられている。
しかし、前記樹脂のみの下引き層、及び樹脂中に無機顔料を分散した下引き層を設けた構成の像担持体は、初期には良好な特性を有しているが、数万枚以上繰り返して使用すると、徐々に画像上の欠陥(地汚れ、黒ポチ等)が顕著になるという問題がある。
【0003】
また近年、デジタル化が急速に進展しているが、これらのプリンタ、複写機にはデジタル化に対応して単色光である半導体レーザーに対応した像担持体が求められるようになってきている。この対応策の一つとしてモアレ等の異常画像の防止があり、この異常画像の防止には下引き層が大きな役割を果たしており、金属酸化物微粒子及び有機微粒子を下引き層に含有させてモアレを防止することも行われている。このような下引き層の改良に関する先行技術としては以下に示す事例がある。
例えば、特許文献2には、アルミニウム又はアルミニウム合金支持体の表面を陽極酸化した後、機械的研磨処理を行い、その後、熱水封孔処理、封孔処理、又は加湿封孔処理を施して得られる支持体上に感光層を設けてなる像担持体が提案されている。
また、特許文献3には、導電性支持体上に少なくとも下引き層と感光層とが設けられ、該下引き層としてある種のオルガノアルコキシシロキサンにコロイド状アルミナが混合された組成物を加熱硬化させたものから構成される像担持体が提案されている。
また、特許文献4には、導電性支持体上に少なくとも下引き層と感光層とが設けられ、該下引き層における樹脂中に熱処理された酸化チタンが含有されてなる像担持体が提案されている。
また、特許文献5には、支持体上に導電性ポリアニリン層及び感光層を積層した像担持体が提案されている。
また、特許文献6には、支持体上に酸化チタンと熱硬化性樹脂を含有する下引き層及び感光層を有する像担持体において、前記下引き層に含まれる熱硬化性樹脂の体積含有量が0.5〜0.6で、かつ前記下引き層中の酸化チタンの平均粒径が0.4μm以下である像担持体。またこの像担持体を用いた反転現像による電子写真装置が提案されている。
また、特許文献7には、純アルミニウム、アルミニウム−マンガン系合金、アルミニウム−マグネシウム系合金、又はアルミニウム−マグネシウム−シリカ系合金からなる導電性支持体上に金属アルコキシド、有機金属キレート、シランカップリング剤、及びこれらの反応生成物から選択される化合物を含有する下引き層と、光導電層とをこの順に有する像担持体が提案されている。
また、特許文献8には、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導電性支持体上に陽極酸化層及び感光層が形成され、該陽極酸化層表面の山間隔Smが0.3μm〜250μm、かつ最大高さRtが0.5μm〜2.5μmであり、前記陽極酸化層表面における表面光沢度が60グロス以上である反転現像用像担持体が提案されている。
また、特許文献9には、導電性支持体と感光層の間に、表面に少なくとも酸化ジルコニウムが存在する酸化チタン微粉体を含有する下引き層を設けた像担持体が提案されている。
また、特許文献10には、導電性支持体と、該支持体上に積層された感光層との間に下引き層を有し、該下引き層が樹脂中にアナターゼ/ルチル混晶型二酸化チタンを分散させてなる電子写真用像担持体が提案されている。
また、特許文献11には、下引き層に純度が99.0%以上であり、平均粒径の異なる2種の酸化チタンとバインダー樹脂とを含有し、一方の酸化チタン(T1)の平均粒径を(D1)とし、他方の酸化チタン(T2)の平均粒径を(D2)とした場合、1/5<D2/D1≦1/2の関係を満たし、前記酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)が0.05μm<D2<0.20μmであり、かつルチル化率が60%〜30%である電子写真用像担持体が提案されている。
【0004】
これらの先行技術文献は、いずれも支持体と感光層の間の下引き層の構成、含有する物質を変更したり、又は支持体表面に陽極酸化層を設けることにより、反転現像時に支持体から感光層又は電荷発生層へのホールの注入を防止して、黒ポチ、黒斑点の発生を防ぎ、長期間使用時における電気特性の安定化を目的としている。
【0005】
また最近では、画像形成装置の小型化を図るため像担持体の小径化が進み、更に機械の高速化及びメンテナンスフリーの動きも加わって像担持体の高耐久化が切望されるようになってきている。このような高耐久化及び高画質化が望まれている中で、従来の下引き層では、十分な性能が発現されておらず、特に長期間使用時の静電特性変化が大きく、徐々に露光部電位の上昇、帯電遅れなどの現象が見られる。
【0006】
また、像担持体は、通常、支持体上に感光層を塗設して製造されるが、支持体のコストダウンを図るために無切削アルミニウム管が用いられている。このような無切削アルミニウム管としては、例えば特許文献12には、アルミニウム円板を深絞り加工してカップ状とした後、外表面をしごき加工によって仕上げたDI管、アルミニウム円板をインパクト加工してカップ状とした後、外表面をしごき加工によって仕上げたII管、アルミニウム押出管の外表面をしごき加工によって仕上げたEI管、押出加工後冷間引抜き加工したED管が提案されている。
【0007】
しかし、前記特許文献12に記載されているような無切削アルミニウム管は、切削管に比して表面形態が平滑であり、モアレ等の異常画像が発生しやすくなり、表面の物理的形状の差、及び残存付着物から引き起こされるスジ状欠陥が生じることがある。また、特許文献13に記載されているように、ササクレ状の微細凸状欠陥(突起欠陥)が生じることもある。更に、無切削アルミニウム管ではアンカー効果が期待できないため、感光層との密着性が低くなるという問題がある。
【0008】
したがって耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能な像担持体、及びその関連技術としては、未だ十分満足できる性能を有するものは得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−204642号公報
【特許文献2】特開平11−15181号公報
【特許文献3】特開平10−301314号公報
【特許文献4】特開平10−90931号公報
【特許文献5】特開平5−204181号公報
【特許文献6】特開平8−44096号公報
【特許文献7】特開平9−34152号公報
【特許文献8】特開平9−292730号公報
【特許文献9】特開平10−83093号公報
【特許文献10】特開平11−327188号公報
【特許文献11】特許第3878445号公報
【特許文献12】特開平3−192265号公報
【特許文献13】特開平4−326357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能な像担持体、及び該像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に少なくとも下引き層と、感光層とをこの順に有してなり、
前記下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有することを特徴とする像担持体である。
<2> 平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子が、ルチル型酸化チタン微粒子である前記<1>に記載の像担持体である。
<3> 平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、酸化銅微粒子及び酸化セリウム微粒子から選択される少なくとも1種を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の像担持体である。
<4> 平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子が、アナターゼ型酸化チタン微粒子である前記<1>から<3>のいずれかに記載の像担持体である。
<5> 下引き層に含有されている平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子の質量(A)と、下引き層に含有されている平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子の質量(B)とが、次式、1/10≦B/A≦1/1を満たす前記<1>から<4>のいずれかに記載の像担持体である。
<6> 下引き層におけるバインダー樹脂が、アルキッド樹脂及びメラミン樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の像担持体である。
<7> 支持体と、第1の下引き層との間に、第2の下引き層を有し、
前記第1の下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有し、
前記第2の下引き層が、金属酸化物微粒子を含有しない前記<1>から<6>のいずれかに記載の像担持体である。
<8> 第2の下引き層がポリアミド樹脂を含有し、該ポリアミド樹脂がN−メトキシメチル化ナイロンである前記<7>に記載の像担持体である。
<9> 最表層が架橋表面層であり、該架橋表面層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化してなる硬化物を含有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の像担持体である。
<10> 電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリレート及びメタクリレートのいずれかである前記<9>に記載の像担持体である。
<11> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、アクリレート及びメタクリレートのいずれかである前記<9>から<10>のいずれかに記載の像担持体である。
<12> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、トリアリールアミン構造を有する前記<9>から<11>のいずれかに記載の像担持体である。
<13> 架橋表面層が、微粒子を含有する層である前記<9>から<12>のいずれかに記載の像担持体である。
<14> 微粒子が、無機微粒子である前記<13>に記載の像担持体である。
<15> 無機微粒子が金属酸化物微粒子であり、該金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化ケイ素微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子から選択される少なくとも1種である前記<14>に記載の像担持体である。
<16> 微粒子が、炭素を含有する微粒子である前記<13>に記載の像担持体である。
<17> 炭素を含有する微粒子が、ダイヤモンド微粒子である前記<16>に記載の像担持体である。
<18> 最表層が、水素を含有するダイヤモンド状カーボン及び非晶質カーボン構造のいずれかを有する層である前記<1>から<8>のいずれかに記載の像担持体である。
<19> 前記<1>から<18>のいずれかに記載の像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法である。
<20> 前記<1>から<18>のいずれかに記載の像担持体と、該像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
<21> 前記<1>から<18>のいずれかに記載の像担持体と、該像担持体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
本発明の像担持体は、支持体上に少なくとも下引き層及び感光層をこの順に有し、該下引き層が、バインダー樹脂中に平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子を分散させた層であることにより、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像、及び長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能な像担持体が得られるものである。この理由としては以下の要因が挙げられる。
モアレに対しては、像担持体表面から入射し、感光層を透過した光を下引き層で光散乱させる必要がある。そのためには、バインダー樹脂中に微粒子を分散した下引き層が採用される。この樹脂中に含有している微粒子は、効率的な光散乱を起こすために、少なくとも平均粒径が0.1μm以上の微粒子を分散させる必要がある。ただし、平均粒径が1.0μmより大きな微粒子では、逆に塗工欠陥となりやすい。
また、下引き層は、感光層で発生した電荷を導電性支持体へ移動させ、逆に導電性支持体から感光層への電荷注入を阻止する必要がある。そのために導電性支持体への隠蔽性の高い微粒子として、酸化チタンが挙げられる。これらの中でも、ルチル型酸化チタンは、その隠蔽性が高い点から特に好ましい。
これらの光学的、電気的な特性により、平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子が用いられる。更に下引き層の導電性支持体への隠蔽性を大きくするため、平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子に対して、それよりも粒径が小さい金属酸化物微粒子を含有させる。前記金属酸化物微粒子はその平均粒径が小さくなるほど、粒径が大きい酸化チタンの隙間に充填されやすく、隠蔽性が大きくなる。一方、感光層から注入された電荷は、酸化チタン微粒子及び金属酸化物微粒子の表面を経由しながら支持体へ輸送されている。そのため、金属酸化物微粒子の粒径が小さくなるほど、下引き層の単位体積あたりの微粒子表面積が大きくなり、感光層から注入された電荷輸送効率が高くなり、露光部電位が低減できる。本発明者らが鋭意検討した結果、この露光部電位を低減するために良好な金属酸化物微粒子の平均粒径は、0.01μm以上0.05μm以下であることを知見した。
したがって本発明の像担持体においては、前記下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有することにより、耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能となる。
【0013】
本発明の画像形成装置は、本発明の前記像担持体と、該像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する。該画像形成装置においては、本発明の前記静電潜像形成手段が、前記像担持体上に静電潜像を形成する。前記現像手段が静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する。前記転写手段が、前記可視像を記録媒体に転写される。前記定着手段が、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる。その結果、長期間にわたり、高画質な電子写真画像が形成できる。
【0014】
本発明の画像形成方法は、本発明の前記担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む。該画像形成方法においては、前記静電潜像形成工程において、本発明の前記像担持体上に静電潜像が形成される。前記現像工程において、静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する。前記転写工程において、前記可視像が記録媒体に転写される。前記定着工程において、前記記録媒体に転写された転写像が定着される。その結果、長期間にわたり、高画質な電子写真画像が形成できる。
【0015】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記像担持体と、該像担持体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有する。該プロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であり、利便性に優れ、また、本発明の前記像担持体を用いているので、長期間にわたり、高画質な電子写真画像が形成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能な像担持体、及び該像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(像担持体)
本発明の像担持体は、支持体と、該支持体上に少なくとも下引き層と、感光層とをこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0018】
<下引き層>
前記下引き層は、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0019】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性などの点から、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
【0020】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、活性水素(−OH基、−NH基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物と、イソシアネート基を複数個含有する化合物及び/又はエポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂、オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂、などが挙げられる。前記活性水素を複数個含有する化合物としては、例えばポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂、などが挙げられる。前記イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等と、これらのプレポリマー、などが挙げられる。前記エポキシ基を複数有する化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂としては、例えば、ブチル化メラミン樹脂等を熱重合させた熱硬化性樹脂、などが挙げられる。
更に、不飽和結合を有するポリウレタン、不飽和ポリエステル等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤との組合せ等の光硬化性樹脂もバインダー樹脂として使用できる。
これらのバインダー樹脂の中でも、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子との分散性、電気特性の点から、アルキッド樹脂及びメラミン樹脂の混合樹脂が特に好ましい。前記アルキッド樹脂と前記メラミン樹脂との混合質量比(アルキッド樹脂:メラミン樹脂)は、目的に応じて適宜選定することができる。
【0021】
−平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子−
前記平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子は、硫酸法又は塩素法により製造することができ、高純度の酸化チタンを得るには塩素法が好ましい。前記塩素法は、原料のチタンスラグを塩素により塩素化して四塩化チタンとし、これを分離し、凝縮し、精製した後、酸化して、生成した酸化チタンを粉砕し、分級し、必要に応じて表面処理する。その後、濾過し、洗浄して乾燥した後、粉砕することにより酸化チタンを製造する方法である。
前記酸化チタン微粒子の平均粒径は、0.1μm以上1.0μm以下であり、これにより、酸化生成した酸化チタン微粒子の一次粒径を小さくすることで得ることができる。
前記酸化チタン微粒子の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡、又は透過型電子顕微鏡を用いて、得られた像を観察することにより測定することができる。また、この手法であれば、下引き層を作製後も、像担持体の断面観察を行うことにより、平均粒径の測定が可能となる。
【0022】
前記酸化チタンは、アナターゼ型と、ルチル型という2つの結晶型を有し、この結晶型により比重、屈折率、硬度等の物性が異なる。ルチル型とアナターゼ型間での結晶型のコントロールは、酸化チタン作製時の焼結条件によっており、マイルドな条件ではアナターゼ型となり、焼結温度を上げるにつれてルチル型に転移していくことが知られている。
前記平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子としては、電気特性の点からルチル型酸化チタンが特に好ましい。
【0023】
−平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子−
前記平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子は、液相プロセス、固相プロセス、気相プロセスを用いた手法で合成される。これらの中でも、高純度の化学量論比が制御しやすい気相プロセス、中でもプラズマを用いたプロセスで作製された金属酸化物微粒子が特に好ましい。
前記金属酸化物微粒子の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡、又は透過型電子顕微鏡を用いて、得られた像を観察することにより測定することができる。また、この手法であれば、下引き層を作製後も、像担持体の断面観察を行うことにより、平均粒径の測定が可能となる。
【0024】
前記平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化アルミニウム微粒子、酸化ビスマス微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化コバルト微粒子、酸化銅微粒子、酸化マンガン微粒子、酸化珪素微粒子、酸化錫微粒子、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子、などが挙げられる。これらの中でも、酸化セリウム微粒子、酸化錫微粒子、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化銅微粒子が好ましく、アナターゼ型酸化チタンが特に好ましい。
【0025】
前記下引き層に含有されている平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子の質量(A)と、下引き層に含有されている平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子の質量(B)とが、次式、1/10≦B/A≦1/1を満たすことが好ましい。このように、次式、1/10≦B/A≦1/1を満たすことにより、黒ポチ、黒斑点などの異常画像及び露光部電位に対して良好となる点で好ましい。
前記比(B/A)が1/10未満であると、露光部電位低減及び変動抑制効果が小さくなることがある。一方、前記比(B/A)が1/1を超えると、黒ポチ、黒斑点などの異常画像が発生しやすくなることがある。
【0026】
前記下引き層は、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子と、バインダー樹脂と共に、必要に応じてその他の成分を、溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
更に必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。
前記塗布としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0027】
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜5μmが好ましい。
【0028】
−別の態様の下引き層−
前記下引き層の別の態様として、支持体と、第1の下引き層との間に、第2の下引き層を有するものを用いることができる。
前記第1の下引き層としては、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有し、上述した単層の下引き層と同じものを用いることができる。
【0029】
前記第2の下引き層としては、金属酸化物を含有せず、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電荷の注入を抑制させる必要があるため、絶縁性を有するバインダー樹脂、好ましくは1013Ω・cm以上の比抵抗を有するバインダー樹脂が用いられる。
前記バインダー樹脂としては、前記単層の下引き層で例示したバインダー樹脂と同様のものを用いることができ、これらの中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、N−メトキシメチル化ナイロンが特に好ましい。
前記ポリアミド樹脂は、電荷の注入を抑制する効果が高い上に残留電位に与える影響が比較的少ない。また、前記ポリアミド樹脂は、アルコール可溶性の樹脂であって、ケトン系溶媒には不溶性を示し、また浸積塗工においても均一な薄膜を形成することができ、塗工性に優れている。特に、この下引き層は薄膜にする必要がある上、厚みの均一性が要求されるため、塗工性は画質安定性において重要な意味を持っている。
しかし、一般にアルコール可溶性のポリアミド系樹脂は湿度依存性が大きく、それにより低湿環境下では抵抗が高くなり残留電位上昇が、高湿環境下では抵抗が低くなり、帯電低下が引き起こされ、環境依存性が大きいことが大きな課題であった。ポリアミド樹脂の中でもN−メトキシメチル化ナイロンは、環境依存性が大幅に低減され、画像形成装置の使用環境が変化しても常に安定した画質を維持することが可能であるため、最も好適に用いられる。加えて、N−メトキシメチル化ナイロンを用いた場合には残留電位の厚み依存性が小さく、そのため残留電位への影響を低減し、かつ高い地汚れ抑制効果を得ることが可能となる。
前記N−メトキシメチル化ナイロンにおけるアルコキシメチル基の置換率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、15mol%〜45mol%であることが好ましい。前記アルコキシメチル基の置換率が、45mol%を超えると、湿度依存性が増加することがあり、15mol%未満であると、アルコール溶液とした場合に白濁したりする傾向が見られ、塗工液の経時安定性がやや低下することがある。
前記N−メトキシメチル化ナイロンは単独で使用することも可能であるが、場合によっては各種硬化剤や酸触媒を添加することも可能である。前記硬化剤としては、特に制限はなく、従来公知のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート樹脂等の汎用の材料を、触媒としては酸性触媒が用いられ、酒石酸等の汎用触媒を用いることが可能である。ただし、酸触媒の添加によって下引き層の絶縁性が低下し、地汚れ抑制効果が低減される恐れがあるため、添加量はごく微量にする必要がある。添加量としては樹脂に対して5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
なお、必要に応じて他のバインダー樹脂を混合させることも可能である。混合可能なバインダー樹脂としては、アルコール可溶性を示すポリアミド樹脂が用いられ、液の経時安定性が高まる場合がある。
【0030】
前記第2の下引き層には、更に、導電性高分子、帯電極性に合わせてアクセプター性の樹脂あるいは低分子化合物、その他各種添加剤を加えることも可能であり、残留電位の低減に対し有効となる場合がある。ただし、上層を浸積塗工によって積層させる場合には、それらの添加剤が溶け出す恐れがあるため、添加量は最小限に留める必要がある。
前記第1及び第2下引き層は、バインダー樹脂、及びその他の成分を溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。
前記溶媒としては、バインダー樹脂を溶解できるものであれば一般の有機溶剤をすべて使用することができるが、ポリアミド系樹脂の場合にはアルコール可溶性であることによりアルコール系溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等もしくはそれらの混合溶媒が用いられる。
前記第1の下引き層の厚みは、0.1μm〜3μmが好ましく、第2の下引き層の厚みは、0.1μm〜3μmが好ましい。
【0031】
本発明においては、前記下引き層は、長期的使用において、黒ポチ、黒斑点などの異常画像、及び露光部電位変動の抑制に対して効果が大きい、高耐久を目的とした後述する最表面層との組み合わせにおいて、更に大きな効果を発現する。
【0032】
<像担持体の層構造>
本発明の像担持体は、その層構成について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したように支持体と感光層との間に下引き層を有し、最表面層を有することが好ましい。
前記最表面層としては、架橋表面層、微粒子を含有した層、水素を含有するダイヤモンド状カーボン又は非晶質カーボン構造を有する層などが挙げられる。
ここで、本発明の像担持体の層構成について、図面に基づいて説明する。
図1Aは、支持体21上に、下引き層22と、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層型感光層23とがこの順に設けられた層構成である。
図1Bは、支持体21上に、下引き層22と、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層24と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層25とからなる積層型感光層とがこの順に設けられた層構成である。
図2Aは、図1Aにおいて、微粒子を含有する第1の下引き層22上に金属酸化物微粒子を含有しない第2の下引き層26が形成されたものである。
図2Bは、図1Bにおいて、微粒子を含有する第1の下引き層22上に金属酸化物微粒子を含有しない第2の下引き層26が形成されたものである。
図3Aは、図1Aにおいて、単層型感光層23上に機械的耐久性を有する表面層27が形成されたものである。
図3Bは、図1Bにおいて、積層型感光層28上に機械的耐久性を有する表面層27が形成されたものである。
【0033】
<最表面層>
前記最表面層としては、(1)架橋表面層、(2)微粒子を含有する層、(3)水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層、などが好適に挙げられる。
【0034】
〔架橋表面層〕
前記架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、更に必要に応じてその他の成分とを硬化してなる硬化物を含有する。
【0035】
−電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物−
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの電荷輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0036】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、以下の<式1>で表される官能基が挙げられる。
<式1>
CH=CH−X
ただし、前記<式1>中、Xは、フェニレン基、ナフチレン基等の置換基を有していてもよいアリーレン基;置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(ただし、R10は、水素原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す)、又はS−基を表す。
これらの置換基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、ビニルチオエーテル基、などが挙げられる。
【0037】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、以下の<式2>で表される官能基が挙げられる。
<式2>
CH=C(Y)−X
ただし、前記<式2>中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(ただし、R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、又はCONR1213(ただし、R12及びR13は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等の置換基を有していてもよいアラルキル基、又はフェニル基、ナフチル基等の置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
また、Xは、上記<式1>のXと同一の置換基、単結合、又はアルキレン基を表す。なお、Y及びXの少なくともいずれか一方は、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、又は芳香族環を表す。
これらの置換基としては、例えば、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基、などが挙げられる。
【0038】
なお、これらX、X、及びYについての置換基が更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記3つ以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、水酸基がその分子中に3つ以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応又はエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3つ以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3つ以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以下、「EO変性」と称することもある)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以下、「PO変性」と称することもある)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以下、「ECH変性」と称することもある)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物は、前記表面層中に緻密な架橋結合を形成するために官能基割合(分子量/官能基数)は250以下が好ましい。前記官能基割合が250を超えると、表面層は柔らかく、耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくない。
また、前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、前記表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べて耐摩耗性の飛躍的な向上が達成されないことがあり、80質量%を超えると、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じることがある。
【0041】
−電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物−
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、などが挙げられ、これらの中でも、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が特に好ましい。
前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの電荷輸送性構造、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、かつ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、上記<式1>又は<式2>で示される官能基が挙げられる。
更に具体的には、先のラジカル重合性化合物で示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が好ましく、これらの中でも、下記一般式(1)、又は下記一般式(2)で表される構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
【0042】
【化1】

【化2】

【0043】
前記一般式(1)及び一般式(2)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(ただし、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基、CONR(ただし、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基表す)を表す。
前記一般式(1)及び一般式(2)において、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは未置換のアリーレン基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(2)において、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは未置換のアリール基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(2)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(2)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表す。
【0044】
前記一般式(1)及び(2)において、Rの置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。
の置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0045】
置換もしくは未置換のAr及びArはアリール基であり、該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
前記非縮合環式炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
前記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0046】
前記一般式(1)及び(2)において、Ar及びArで表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる
(2)炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は、更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基、などが挙げられる。
【0047】
(3)アルコキシ基(−OR)であり、Rは上記(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0048】
(6)下記一般式で表される基である。
【化3】

ただし、前記式中、R及びRは、各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらは炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R及びRは共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、などが挙げられる。
【0049】
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基、又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
前記Ar及びArで表されるアリーレン基としては、前記Ar及びArで表されるアリール基から誘導される2価基である。
【0050】
前記一般式(1)及び(2)において、前記Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
置換基を有していてもよいアルキレン基としては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基、などが挙げられる。
置換基を有していてもよいシクロアルキレン基としては、炭素数5〜7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基、等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基としては、例えば、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表す。なお、これらアルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
【0051】
前記ビニレン基としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【化4】

ただし、前記一般式中、Rは、水素原子、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、又はアリール基(前記Ar及びArで表されるアリール基と同じ)を表す。aは1又は2を表す。bは1〜3を表す。
【0052】
前記一般式(1)及び(2)において、前記Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
前記置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
【0053】
前記1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物としては、更に、下記一般式(3)で表される化合物が好適に挙げられる。
【化5】

ただし、前記一般式(3)中、o、p、及びqは、それぞれ0又は1の整数を表す。Raは、水素原子、メチル基を表す。Rb及びRcは、水素原子以外の置換基を表し、例えば炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s及びtは、それぞれ0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、又は下記式で表される基を表す。
【化6】

上記一般式(3)において、Rb及びRcが、メチル基、又はエチル基である化合物が特に好ましい。
【0054】
前記一般式(1)、(2)、及び(3)で表される1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性化合物との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、像担持体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0055】
前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0056】
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0057】
−2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例−
前記2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0058】
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

【化66】

【化67】

【化68】

【化69】

【化70】

【化71】

【化72】

【化73】

【化74】

【化75】

【化76】

【化77】

【化78】

【化79】

【化80】

【化81】

【化82】

【化83】

【化84】

【化85】

【化86】

【化87】

【化88】

【化89】

【化90】

【化91】

【化92】

【化93】

【化94】

【化95】

【化96】

【化97】

【化98】

【化99】

【化100】

【化101】

【化102】

【化103】

【化104】

【化105】

【化106】

【化107】

【化108】

【化109】

【化110】

【化111】

【化112】

【化113】

【化114】

【化115】

【化116】

【化117】

【化118】

【化119】

【化120】

【化121】

【化122】

【化123】

【化124】

【化125】

【化126】

【化127】

【化128】

【化129】

【化130】

【化131】

【化132】

【化133】

【化134】

【化135】

【化136】

【化137】

【化138】

【化139】

【化140】

【化141】

【0059】
−3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例−
前記3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0060】
【化142】

【化143】

【化144】

【化145】

【化146】

【化147】

【化148】

【化149】

【化150】

【化151】

【化152】

【化153】

【0061】
−1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成例−
前記1官能の電荷輸送性構造を有する化合物としては、例えば、特許第3164426号公報に記載の方法にて合成することができる。
(1)下記構造式Bで表されるヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物の合成
下記構造式Aで表されるメトキシ基置換トリアリールアミン化合物113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌して反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体としてシリカゲル、展開溶媒としてトルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。
以上により、下記構造式Bで表される白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。得られた化合物の融点は64.0〜66.0℃であった。
【0062】
【表1】

【化154】

【化155】

【0063】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(上記例示化合物No.54)
(1)で得られた上記構造式Bで表されるヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分間かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌して反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。
得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして、下記構造式で表される例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。得られた化合物の融点は117.5〜119.0℃であった。
【化156】

【0064】
【表2】

【0065】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、前記最表面層に電荷輸送性能を付与するために重要であり、該電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、前記架橋表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返し使用において感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が生じることがあり、80質量%を超えると、電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き、高い耐摩耗性が発揮されないことがある。
【0066】
前記架橋表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有するものであるが、これら以外にも塗布時の粘度調整、表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的であり、上述した1官能のラジカル重合性モノマー、2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー、又はラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0067】
前記1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0068】
前記2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0069】
前記機能性モノマーとしては、例えばオクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの;特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位;20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート、メタクリレートなどが挙げられる。
【0070】
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
【0071】
なお、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の三次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。このため、これらのモノマーやオリゴマーの含有量は、前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0072】
前記架橋表面層には、更に、電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるために光重合開始剤を含有することができる。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記アセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
前記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどが挙げられる。
前記その他の光重合開始剤としては、例えばエチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0074】
前記光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する化合物の総量100質量部に対し、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0075】
前記架橋表面層には、更に必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤としては公知のものが使用可能であり、前記可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能である。該可塑剤の使用量は表面層塗布液の総固形分に対し20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーなどが挙げられる。該レベリング剤の使用量は表面層塗布液の総固形分に対し3質量%以下が好ましい。
【0076】
前記架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を含有する表面層塗布液を塗布し、硬化することにより形成される。該表面層塗布液は、ラジカル重合性化合物が液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記架橋表面層の形成方法としては、例えば、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。これらの中でも、スプレー塗工法とリングコート法は生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり特に好適である。
前記架橋表面層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜5μmがより好ましい。
【0078】
〔微粒子を含有する層〕
前記最表面層としての微粒子を含有する層に添加される微粒子としては、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれも用いることができる。
前記有機系微粒子としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂微粒子、シリコ−ン樹脂微粒子、炭素を主成分とする微粒子等が挙げられる。
前記無機系微粒子材料としては、例えば銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウム、などが挙げられる。これらの中でも、無機材料もしくは炭素を含有する微粒子を用いることが有利である。前記無機材料としては金属酸化物が好ましく、酸化珪素微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化チタン微粒子が特に好ましい。前記炭素を含有する微粒子としては、ダイヤモンド微粒子が好適である。
これら微粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記最表面層の微粒子濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。前記微粒子濃度は、概ね最表面層の全固形分に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。その下限値は、5質量%である。
【0079】
前記微粒子は少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることが微粒子の分散性の面から好ましい。微粒子の分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。前記表面処理剤としては、従来から用いられている表面処理剤を使用することができるが、微粒子の絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
前記微粒子は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、分散液中での微粒子の平均粒径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下にあることが最表面層の透過率の点から好ましい。
前記微粒子を含有する層の厚みは、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
【0080】
〔水素を含有するダイヤモンド状カーボン又は非晶質カーボン構造を有する層〕
前記最表面層としては、水素を含有するダイヤモンド状カーボン又は非晶質カーボン構造を有する層であることが好ましい。
前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層は、好ましくはSP3軌道を有するダイヤモンドと類似のC−C結合を有する方が好ましい。なお、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものでも構わない。
前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層の添加物元素は、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素が含有されていることが好ましい。
前記前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層の体積抵抗は、10〜1012Ω・cmであることが好ましい。
水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層を作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H、Ar等のキャリアガスを用いる。更に、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるものであれば構わない。例えば窒素を供給するガスとしてNH、N等を用い、フッ素を供給するガスとしてC、CHF等を用い、硼素を供給するガスとしてはB等を用い、リンを供給するガスとしてはPH等を用い、塩素を供給するガスとしてはCHCl、CHCl、CHCl、CCl等を用い、臭素を供給するガスとしてはCHBr等を用い、沃素を供給するガスとしては、CHI等を用いることができる。また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF、BCl、BBr、BF、PF、PCl等を用いる。上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により形成される。特にその製膜法は限定されるものではないが、前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層として良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58−49609号公報)等が知られている。
プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
前記水素を含有するダイヤモンド状カーボン又は非晶質カーボン構造を有する層の厚みは、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
【0081】
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものが好適である。
前記支持体としては、材料、形状、大きさについては特に制限はなく、板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できるが、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの;あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板又はそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0082】
上記以外にも、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工し、導電性層を形成したものも用いることができる。
前記導電性粉体の材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;あるいは導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。前記結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
前記導電性層は、前記導電性粉体と結着樹脂とを溶剤に溶解乃至分散させた塗布液を支持体上に塗布することにより形成することができる。前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
【0083】
なお、前記円筒基体上に、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂等に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも好適である。
【0084】
<感光層>
前記感光層は、積層構造であっても単層構造であってもよい。
積層構造の感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の感光層は、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
【0085】
〔複層型感光層〕
前記複層型感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層をこの順に有してなり、更に必要に応じて、中間層、その他の層を有してなる。
【0086】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
前記無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたもの、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものなどが好適である。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン系顔料、ナフトキノン系顔料、シアニン系顔料、アゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フタロシアニン類が好ましく、特に、チタニルフタロシアニンが好適である。
前記チタニルフタロシアニンとしては、少なくともCu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°及び27.2°±0.2°にある結晶型を有するものが高感度材料として特に好ましい。
【0087】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂等の高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0088】
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0089】
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0090】
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とに大別できる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系又は有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。更に必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0093】
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0094】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ電荷移動性がよいことが要求される。
【0095】
前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0096】
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体としては、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体としては、例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体としては、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体としては、例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0099】
また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0100】
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
【0101】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0102】
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布し、乾燥することにより形成できる。前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外にも、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等が挙げられ、その使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが使用され、その使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が好ましい。
【0103】
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが好適である。また、前記電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が採用可能である。
前記電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
【0104】
前記感光層が積層構造である場合には、電荷輸送層上にラジカル重合性組成物を含有する塗布液を塗布、必要に応じて乾燥後、光エネルギー照射により硬化し、表面層を形成する。前記表面層の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、厚みムラによって耐久性のバラツキが生じ、20μmを超えると電気特性が悪くなることがある。
【0105】
〔単層型感光層〕
前記単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダー樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダー樹脂としては、前記積層型感光層と同様な材料を用いることができ、該電荷発生物質としては、上述したように、チタニルフタロシアニンが好適である。
【0106】
キャスティング法により単層型感光層を設ける場合には、該単層型感光層は、電荷発生物質と低分子及び高分子電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、前記単層型感光層には、必要により、可塑剤を添加することもできる。更に、必要に応じて用いることのできるバインダー樹脂としては、前記電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いることができる。その他、電荷発生層と同様のバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。前記電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様のものが使用できる。バインダー樹脂としては、前記電荷輸送層の項で挙げたバインダー樹脂のほかに、前記電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、前記高分子電荷輸送物質も使用可能である。
【0107】
前記単層型感光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜30μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。
前記単層型感光層中に含有される電荷発生物質は、前記感光層全量に対し1質量%〜30質量%が好ましい。前記感光層の下層部分に含有される結着樹脂は感光層全量に対し20〜80質量%が好ましい。また、前記電荷輸送物質の含有量は前記結着樹脂100質量部に対し10質量部〜70質量部が好ましい。
【0108】
本発明の像担持体においては、耐環境性の改善のため、特に、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、最表面層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0109】
前記酸化防止剤として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0110】
本発明の像担持体は、電子写真方式の複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができ、特に、以下に説明する本発明の画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに好適に用いられるものである。
【0111】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0112】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0113】
−静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成工程は、像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記像担持体としては、本発明の前記像担持体を用いる。
【0114】
前記静電潜像の形成は、例えば、前記像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。前記静電潜像形成手段は、例えば、前記像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0115】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0116】
前記帯電部材の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等のいかなる形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて適宜選択可能である。前記磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属、又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり、張り付けたりすることで帯電器とする。
前記帯電器としては、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器が特に好ましい。
前記帯電器が像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって像担持体表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電器が、像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流及び交流電圧を重畳印加することによって像担持体表面を帯電するものが好ましい。
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0117】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0118】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0119】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記像担持体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該像担持体表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該像担持体表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0120】
前記現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0121】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間記録媒体を用い、該中間記録媒体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記像担持体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の記録媒体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0122】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記像担持体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0123】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0124】
前記除電工程は、前記像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0125】
前記クリーニング工程は、前記像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0126】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0127】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0128】
ここで、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図面を参照しながら説明する。図4は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
この図4の画像形成装置においては、像担持体を一様に帯電させる手段として帯電チャージャ3が用いられている。なお、該帯電チャージャ以外の帯電手段としては、例えばコロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイスなどが挙げられる。
本発明の画像形成装置の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により像担持体組成物が分解するような帯電手段を用いた場合に有効である。ここで、前記接触帯電方式とは、像担持体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方、前記近接帯電方式とは、例えば、帯電ローラが像担持体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプである。前記空隙の大きさは、10μm〜200μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。前記空隙の大きさが、大きすぎると、帯電が不安定になりやすくなることがあり、小さすぎると、像担持体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまうことがある。
【0129】
次に、均一に帯電された像担持体1上に静電潜像を形成するために露光手段5が用いられる。この露光手段における露光光源としては、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するため、例えばシャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0130】
像担持体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法又は二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。像担持体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、像担持体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0131】
次に、像担持体上で可視化された可視像(トナー像)を記録媒体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより効率よく行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。なお、静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
記録媒体9を像担持体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0132】
転写後像担持体上に残された残留トナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他のクリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
必要に応じて像担持体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。該除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャ(不図示)が用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、像担持体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0133】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記像担持体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなり、画像形成装置本体に着脱可能である。
【0134】
ここで、前記プロセスカートリッジは、図5に示すように、像担持体51を内蔵し、帯電手段52、現像手段54、転写手段56、クリーニング手段57、除電手段(不図示)の少なくとも1つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能としたものである。
図5に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、像担持体51は、図中矢印方向に回転しながら、帯電手段52による帯電、露光手段(不図示)による露光53により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段54で現像され、得られた可視像は転写手段56により、記録媒体55に転写され、プリントアウトされる。次いで、転写後の像担持体表面は、クリーニング手段57によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0135】
本発明の画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジでは、耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能な本発明の像担持体を用いているので、長期にわたって、高精細かつ高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡、又は透過型電子顕微鏡を用いて、得られた像を観察することにより測定した。
【0137】
(実施例1)
<像担持体の作製>
−下引き層の形成−
アルミニウム(Al)製支持体(外径30mm)上に、下記組成の下引き層塗工液を乾燥後の厚みが3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
〔下引き層塗工液の組成〕
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・112質量部
・酸化セリウム微粒子(NanoTek CeO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.01μm)・・・56質量部
・メチルエチルケトン・・・170質量部
【0138】
−電荷発生層の形成−
次に、前記下引き層上に、下記組成のオキソチタニウムフタロシアニン顔料を含む電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、加熱乾燥させて、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層塗工液の組成〕
・オキソチタニウムフタロシアニン顔料・・・5質量部
・ブチラール樹脂(エスレックBMS、積水化学株式会社製)・・・2質量部
・テトラヒドロフラン・・・80質量部
【0139】
−電荷輸送層の形成−
次に、前記電荷発生層上に、下記組成の電荷輸送層塗工液を浸漬塗工し、加熱乾燥させて、厚み12μmの電荷輸送層を形成した。
〔電荷輸送層塗工液の組成〕
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート・・・12質量部
・下記構造式で表される電荷輸送物質・・・8質量部
【化157】

・テトラヒドロフラン・・・80質量部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・0.2質量部
【0140】
−架橋表面層の形成−
次に、前記電荷輸送層上に、下記組成の架橋表面層塗工液をスプレー塗工し、メタルハライドランプを用い、照射強度:700mW/cm、照射時間:20秒間の条件で光照射を行い、130℃で30分間乾燥して、厚み4.0μmの架橋表面層を形成した。以上により、実施例1の像担持体を作製した。
〔架橋表面層塗工液の組成〕
・電荷輸送性構造を有さず極性官能基を有するラジカル重合性モノマー(アクリル酸、日本触媒株式会社製)・・・0.05質量部
・電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート、KAYARAD TMPTA、日本化薬株式会社製、分子量:382、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)・・・9質量部
・下記構造式で表される電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)・・・9質量部
【化158】

・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)・・・2質量部
・テトラヒドロフラン・・・100質量部
【0141】
(実施例2)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化亜鉛微粒子(NanoTek ZnO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.03μm)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0142】
(実施例3)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化錫微粒子(NanoTek SnO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.02μm)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0143】
(実施例4)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0144】
(実施例5)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化銅微粒子(NanoTek CuO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.05μm)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0145】
(実施例6)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化チタン微粒子(MC−90、石原産業株式会社製、平均粒径0.02μm、アナターゼ型)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0146】
(実施例7)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化チタン微粒子(MT150W JR、テイカ株式会社製、平均粒径0.02μm、ルチル型)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0147】
(比較例1)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中に酸化セリウム微粒子を含有せず、全て酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)にした以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0148】
(比較例2)
−像担持体の作製−
実施例1において、下引き層塗工液中の酸化セリウム微粒子を、酸化チタン微粒子(PT401M、石原産業株式会社製、平均粒径0.07μm、ルチル型)に変えた以外は、実施例1と同様にして、像担持体を作製した。
【0149】
(実施例8)
−像担持体の作製−
実施例4において、下引き層塗工液中の酸化チタン微粒子を以下の配合量に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・160質量部
・酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)・・・8質量部
【0150】
(実施例9)
−像担持体の作製−
実施例4において、下引き層塗工液中の酸化チタン微粒子を以下の配合量に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・150質量部
・酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)・・・18質量部
【0151】
(実施例10)
−像担持体の作製−
実施例4において、下引き層塗工液中の酸化チタン微粒子を以下の配合量に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・90質量部
・酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)・・・78質量部
【0152】
(実施例11)
−像担持体の作製−
実施例4において、下引き層塗工液中の酸化チタン微粒子を以下の配合量に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・84質量部
・酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)・・・84質量部
【0153】
(実施例12)
−像担持体の作製−
実施例4において、下引き層塗工液中の酸化チタン微粒子を以下の配合量に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・68質量部
・酸化チタン微粒子(NanoTek TiO、シーアイ化成株式会社製、平均粒径0.04μm、アナターゼ型)・・・100質量部
【0154】
(実施例13)
<像担持体の作製>
実施例4において、架橋表面層を、以下に示す微粒子含有表面層に変えた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
−微粒子含有表面層の形成−
下記組成の微粒子含有表面層塗工液を用いて、スプレー塗工し、130℃で30分間乾燥を行い、厚み6.5μmの微粒子含有表面層を形成した。
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート・・・6質量部
・実施例1と同じ電荷輸送物質・・・4質量部
・酸化ケイ素微粒子(KMPX100、信越化学工業株式会社製)・・・3質量部
・テトラヒドロフラン・・・150質量部
・シクロヘキサノン・・・50質量部
【0155】
(実施例14)
<像担持体の作製>
実施例13において、微粒子含有表面層塗工液を、下記組成の微粒子含有表面層塗工液に変えた以外は、実施例13と同様にして、像担持体を作製した。
−微粒子含有表面層の組成−
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート・・・6質量部
・実施例1の電荷輸送物質・・・4質量部
・酸化チタン微粒子(CR−97、石原産業株式会社製)・・・3質量部
・テトラヒドロフラン・・・150質量部
・シクロヘキサノン・・・50質量部
【0156】
(実施例15)
<像担持体の作製>
実施例13において、微粒子含有表面層塗工液を、下記組成の微粒子含有表面層塗工液に変えた以外は、実施例13と同様にして、像担持体を作製した。
−微粒子含有表面層塗工液の組成−
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート・・・6質量部
・実施例1と同じ電荷輸送物質・・・4質量部
・酸化アルミニウム微粒子(AA03、住友化学株式会社製)・・・3質量部
・テトラヒドロフラン・・・150質量部
・シクロヘキサノン・・・50質量部
【0157】
(実施例16)
<像担持体の作製>
実施例13において、微粒子含有表面層塗工液を下記組成に変えた以外は、実施例13と同様にして、像担持体を作製した。
−微粒子含有表面層塗工液の組成−
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート・・・6質量部
・実施例1と同じ電荷輸送物質・・・4質量部
・ダイヤモンドフィラー(ナノダイヤモンド、北京国瑞昇科技有限公司製)・・・3質量部
・テトラヒドロフラン・・・150質量部
・シクロヘキサノン・・・50質量部
【0158】
(実施例17)
−像担持体の作製−
実施例4において、架橋表面層を、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する層とした以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
まず、電荷輸送層まで作製した像担持体を図6〜図8に示すようなプラズマCVD装置にセットし、架橋表面層を形成した。ここで、図6中107はプラズマCVD装置の真空槽であり、ゲート弁109によりロード/アンロード用予備室117と仕切られている。真空槽107内は排気系120(圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122、ロータリーポンプ123よりなる)により真空排気され、また一定圧力に保たれるようになっている。
真空槽107内には反応槽150が設けられている。反応槽は図7及び図8に示すような枠状構造体102(電極側より見て四角又は六角形状を有している)と、この両端の開口部を覆うようにしたフード108、118、更にこのフード108、118に配設された一対の同一形状を有する第一及び第二の電極103、113(アルミニウム等の金属メッシュを用いている)より構成されている。130は反応槽150内へ導入するガスラインを示しており、各種材料ガス容器が接続されており、それぞれ流量計129を経てノズル125より反応槽150の中へ導入される。
枠状構造体102中には、前記感光層を形成した支持体101(101−1、101−2…101−n)が図7及び図8のように配置される。なおこのそれぞれの支持体は、後述するように第三の電極として配置される。電極103、113には、それぞれ第一の交番電圧を印加するための一対の電源115(115−1、115−2)が用意されている。第一の交番電圧の周波数は、1MHz〜100MHzである。これらの電源は、それぞれマッチングトランス116−1、116−2とつながる。このマッチングトランスでの位相は位相調整器126により調整し、互いに180°又は0°ずれて供給できる。即ち、対称型又は同相型の出力を有している。マッチンズトランスの一端104及び他端114は、それぞれ第一及び第二の電極103、113に連結されている。また、トランスの出力側中点105は接地レベルに保持されている。更に、この中点105と第三の電極、即ち支持体101(101−1、101−2…101−n)又はそれらに電気的に連結するホルダ102の間に第二の交番電圧を印加するための電源119が配設されている。この第二の交番電圧の周波数は、1kHz〜500kHzである。この第一及び第二の電極に印加する第一の交番電圧の出力は、13.56MHzの周波数の場合0.1kW〜1kWであり、第三の電極、即ち支持体に印加する第二の交番電圧の出力は、150kHzの周波数の場合には約100Wである。
以下の条件で、表面層を製膜した。
・C流量:90sccm
・H流量:150sccm
・NF流量:45sccm
・反応圧力:0.02Torr
・第一の交番電圧出力:200W、13.56MHz
・バイアス電圧(直流分):−100V
・厚み:2.0μm
【0159】
(実施例18)
<像担持体の作製>
実施例4において、酸化チタン微粒子を含有する第1の下引き層と、アルミニウム(Al)支持体の間に、下記組成の金属酸化物微粒子を含有しない第2の下引き層を設けた以外は、実施例4と同様にして、像担持体を作製した。
−第2の下引き層の組成−
・N−メトキシメチル化ナイロン(ファインレジンFR−101、鉛市株式会社製)・・・10質量部
・酒石酸(硬化触媒)・・・0.5質量部
・2−ブタノン・・・100質量部
・加熱乾燥条件:130℃、10分間
【0160】
(比較例3)
<像担持体の作製>
実施例13において、下引き層塗工液を、下記組成の下引き層塗工液に変えた以外は、実施例13と同様にして、像担持体を作製した。
−下引き層塗工液の組成−
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・168質量部
・メチルエチルケトン・・・170質量部
【0161】
(比較例4)
<像担持体の作製>
実施例13において、下引き層塗工液を、下記組成の下引き層塗工液に変えた以外は、実施例13と同様にして、像担持体を作製した。
−下引き層塗工液の組成−
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・33.6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・18.7質量部
・酸化チタン微粒子(CR−EL、石原産業株式会社製、平均粒径0.25μm、ルチル型)・・・112質量部
・酸化チタン微粒子(PT401M、石原産業株式会社製、平均粒径0.07μm、ルチル型)・・・56質量部
・メチルエチルケトン・・・170質量部
【0162】
(比較例5)
−像担持体の作製−
実施例14おいて、下引き層塗工液を、比較例3の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例14と同様にして、像担持体を作製した。
【0163】
(比較例6)
−像担持体の作製−
実施例14において、下引き層塗工液を、比較例4の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例14と同様にして、像担持体を作製した。
【0164】
(比較例7)
−像担持体の作製−
実施例15において、下引き層塗工液を、比較例3の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例15と同様にして、像担持体を作製した。
【0165】
(比較例8)
−像担持体の作製
実施例15において、下引き層塗工液を、比較例4の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例15と同様にして、像担持体を作製した。
【0166】
(比較例9)
−像担持体の作製−
実施例16において、下引き層塗工液を、比較例3の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例16と同様にして、像担持体を作製した。
【0167】
(比較例10)
−像担持体の作製−
実施例16において、下引き層塗工液を、比較例4の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例16と同様にして、像担持体を作製した。
【0168】
(比較例11)
−像担持体の作製−
実施例17において、下引き層塗工液を、比較例3の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例17と同様にして、像担持体を作製した。
【0169】
(比較例12)
−像担持体の作製−
実施例17において、下引き層塗工液を、比較例4の下引き層塗工液と同じにした以外は、実施例17と同様にして、像担持体を作製した。
【0170】
次に、実施例1〜18及び比較例1〜12の下引き層及び最表面層の内容を表3に纏めて示す。
【表3】

*SFR:架橋表面層
*FR(KMPX):酸化ケイ素微粒子含有層
*FR(CR−97):酸化チタン微粒子含有層
*FR(AA03):酸化アルミニウム微粒子含有層
*FR(Dia):ダイヤモンドフィラー含有層
*DLC:ダイヤモンド状カーボン含有層
【0171】
次に、得られた各像担持体について、以下のように評価した。画像形成装置(イマジオMF2200、株式会社リコー製)を用いて、長期通紙試験(30万枚、A4サイズ)を行い、以下のようにして画像評価及び静電特性を評価した。結果を表4に示す。
【0172】
<画像評価>
画像評価としては、暗部電位(VD)を−900Vとし、初期、10万枚後、20万枚後、30万枚後にA4サイズ白紙部に白画像を出力し、A4サイズ中央部、10cm×10cm領域の画像を目視により下記基準で評価した。
〔評価基準〕
A:良好(黒点の発生なし)
B:画像上に1〜3個程度の0.1mm以下の黒点発生
C:画像上に3〜10個程度の0.1mm以下の黒点発生
D:画像上全面に黒点発生(0.1mm以上のものも含む)
【0173】
<静電特性の評価>
像担持体の静電特性として、画像形成装置(イマジオMF2200、株式会社リコー製)を用い、暗部電位を−700Vとし、初期、10万枚後、20万枚後、30万枚後の露光部電位(黒ベタ画像書き込み時の像担持体表面の電位)を測定した。
【0174】
【表4】

表4の結果から、支持体上に少なくとも下引き層及び感光層を有する像担持体において、該下引き層を、バインダー樹脂中に平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを分散させた層とすることにより、良好な画像を長期間維持できる長寿命で、かつ高性能な像担持体を提供できることが分かった。また、本発明の像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジが高性能、高信頼性を有していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の像担持体は、耐久性に優れ、モアレの発生を防止し、黒ポチ、黒斑点等の異常画像のない高画質な画像を形成でき、長期的使用における露光部電位変動を抑制が可能なので、プロセスカートリッジ、電子写真方式の画像形成装置、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1A】図1Aは、本発明の単層型感光層を有する像担持体の一例を示す概略断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の積層型感光層を有する像担持体の一例を示す概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の単層型感光層を有する像担持体の他の一例を示す概略断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の積層型感光層を有する像担持体の他の一例を示す概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の単層型感光層を有する像担持体の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の積層型感光層を有する像担持体の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図6】図6は、実施例17で用いたプラズマCVD装置の概略図である。
【図7】図7は、図6のプラズマCVD装置の反応槽を示す図である。
【図8】図8は、図6のプラズマCVD装置の反応槽を示す図である。
【符号の説明】
【0177】
1 像担持体
2 除電手段
3 帯電手段
5 露光
6 現像手段
7 転写前チャージャ
9 記録媒体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
21 支持体
22 下引き層
23 感光層
24 電荷発生層
25 電荷輸送層
26 第2の下引き層
27 表面層
28 感光層
51 像担持体
52 帯電手段
53 露光
54 現像手段
55 記録媒体
56 転写手段
57 クリーニング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に少なくとも下引き層と、感光層とをこの順に有してなり、
前記下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有することを特徴とする像担持体。
【請求項2】
平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子が、ルチル型酸化チタン微粒子である請求項1に記載の像担持体。
【請求項3】
平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、酸化銅微粒子及び酸化セリウム微粒子から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から2のいずれかに記載の像担持体。
【請求項4】
平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子が、アナターゼ型酸化チタン微粒子である請求項1から3のいずれかに記載の像担持体。
【請求項5】
下引き層に含有されている平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子の質量(A)と、下引き層に含有されている平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子の質量(B)とが、次式、1/10≦B/A≦1/1を満たす請求項1から4のいずれかに記載の像担持体。
【請求項6】
下引き層におけるバインダー樹脂が、アルキッド樹脂及びメラミン樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の像担持体。
【請求項7】
支持体と、第1の下引き層との間に、第2の下引き層を有し、
前記第1の下引き層が、バインダー樹脂と、平均粒径0.1μm以上1.0μm以下の酸化チタン微粒子と、平均粒径0.01μm以上0.05μm以下の金属酸化物微粒子とを含有し、
前記第2の下引き層が、金属酸化物微粒子を含有しない請求項1から6のいずれかに記載の像担持体。
【請求項8】
第2の下引き層がポリアミド樹脂を含有し、該ポリアミド樹脂がN−メトキシメチル化ナイロンである請求項7に記載の像担持体。
【請求項9】
最表面層が架橋表面層であり、該架橋表面層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化してなる硬化物を含有する請求項1から8のいずれかに記載の像担持体。
【請求項10】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリレート及びメタクリレートのいずれかである請求項9に記載の像担持体。
【請求項11】
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、アクリレート及びメタクリレートのいずれかである請求項9から10のいずれかに記載の像担持体。
【請求項12】
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、トリアリールアミン構造を有する請求項9から11のいずれかに記載の像担持体。
【請求項13】
最表面層が、微粒子を含有する層である請求項1から8のいずれかに記載の像担持体。
【請求項14】
微粒子が、無機微粒子である請求項13に記載の像担持体。
【請求項15】
無機微粒子が金属酸化物微粒子であり、該金属酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子、酸化ケイ素微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子から選択される少なくとも1種である請求項14に記載の像担持体。
【請求項16】
微粒子が、炭素を含有する微粒子である請求項13に記載の像担持体。
【請求項17】
炭素を含有する微粒子が、ダイヤモンド微粒子である請求項16に記載の像担持体。
【請求項18】
最表面層が、水素を含有するダイヤモンド状カーボン及び非晶質カーボン構造のいずれかを有する層である請求項1から8のいずれかに記載の像担持体。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれかに記載の像担持体と、該像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項1から18のいずれかに記載の像担持体と、該像担持体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有することを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−69410(P2009−69410A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236976(P2007−236976)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】