説明

優れた初期放出抑制特性を有する徐放性マイクロカプセルの製造方法及びこれにより製造されるマイクロカプセル

【課題】 本発明は、生理活性物質を含有する長期徐放性製剤の製造方法に関し、生理活性物質、生体適合性高分子を含有するエマルションを水性溶液に添加して製造される長期徐放性マイクロカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】生理活性物質、生体適合性高分子を含有するエマルションを、0.02〜0.15Mの塩を含有する水性溶液に添加して製造することを特徴とする長期徐放性マイクロカプセルの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質を含有する長期徐放性マイクロカプセルの製造方法に関し、より詳細には、優れた生理活性物質の初期放出抑制特性を有する徐放性マイクロカプセルの製造方法及びこれによって製造されるマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数10年間、薬物の伝達体として生分解性高分子又は生体適合性高分子を使用して生理活性物質、特に、ペプチドとその塩を含有する長期徐放性製剤の開発は飛躍的な発展を成してきた。このような長期徐放性製剤は、薬物の頻繁な投与による患者の煩わしさを最少化して患者の適応度を改善し、薬物の血中濃度を一定に維持させることによって、副作用を減少させるとともに、治療費用を軽減させることができるメリットがある。
【0003】
特許文献1には、薬剤化合物が溶解されない適当な有機溶媒中に重合体担体物質を溶解させた後、過量の保護コロイドを含有する水性媒質と相誘導剤とを添加してマイクロカプセル形態の徐放性製剤を製造する方法が開示されている。しかし、このような製造方法は、複雑な工程を必要とするのみならず生産収率が非常に低いことから高コストとなる問題がある。
【0004】
特許文献2には、1%未満のシリコンオイル又はヘプタンを含有する線形ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)重合体の酢酸オクトレオチド・マイクロ粒子を製造する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、生理学的に活性であるポリペプチドを2ヶ月以上にかけて0(ゼロ)次放出させるためのマイクロカプセルにおいて、前記ポリペプチドの約20〜70%(w/w)を含有する内部水相および重量平均分子量が7,000〜30,000であり、乳酸/グリコール酸の組成比が80/10〜100/0である共重合体又は単独重合体を含有する油相からなる水中のオイルエマルションを製造した後、マイクロカプセル化させる製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、水中乾燥法によってマイクロエマルションを製造した後、生体分解重合体のガラス転移温度(Tg)以上において加熱乾燥して初期放出を相当程度抑制して有機溶媒を最少化する方法が開示されている。しかし、このような製造方法は、重合体の構成成分中の乳酸の含量が50%以上であり、ガラス転移温度が最小限47℃以上であることを要し、かつ生理活性物質が熱によって変性される問題等を有する。
【0007】
特許文献5には、塩基性基を含有するペプチドから誘導されたカチオンと、カルボキシル末端のポリエステルから誘導されたアニオンからなる新規塩及びこれらの塩の製造方法と、徐放性製剤組成物の製造におけるこれらの塩の用途に関する方法が開示されている。しかし、この方法は、薬物と高分子重合体を凍結及び小滴化し、真空下で乾燥させて透明な膜を得た後、さらにこの膜をジクロロメタン中に分散して再乾燥させ、これを圧縮、成形する過程を経て、比較的大きい直径(例えば、16又は18ゲージ)の注射針によって投与するので、患者に恐怖心を与えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許10−0442931
【特許文献2】韓国公開特許公報10−2005−0086708
【特許文献3】韓国特許10−0194827
【特許文献4】韓国特許10−0409413
【特許文献5】韓国特許10−0293882
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような従来技術の有する問題を解決するためになされたものであって、その目的は、前記従来技術等が有する諸般問題点を解消し、優れた初期放出抑制特性を有する長期徐放性製剤の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記従来技術等が有する諸般問題点を解消するとともに、優れた初期放出抑制特性を有する長期徐放性製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本願第1の発明は、生理活性物質、生体適合性高分子及びポリビニルピロリドンを含有するエマルションを水性溶液に添加して製造される長期徐放性マイクロカプセルの製造方法を提供する。
【0011】
また、本願第2の発明は、生理活性物質、生体適合性高分子を含有するエマルションを、塩を含有する水性溶液に添加して製造される長期徐放性マイクロカプセルの製造方法を提供する。
【0012】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明は、優れた初期の放出抑制特性を有する長期徐放性製剤の製造方法を提供するものであり、また第1の発明は、生理活性物質、生体適合性高分子及びポリビニルピロリドンを含有するエマルションを水性溶液に添加する過程を通じて達成されることができる。
【0013】
ここで、前記生理活性物質は特に限定されないが、ペプチド又はその塩の中から選択されることが好ましく、例えば、オクトレオチド(octreotide)、ランレオチド(lanreotide)、ゴセレリン(goserelin)、ロイプロリド(leuprolide)、トリプトレリン(triptorelin)、ヒストレリン(historelin)、及び、デスモプレシン(desmopressin)等を挙げることができ、また、これらの塩、例えば酸付加塩等を利用することができる。
【0014】
前記の生体適合性高分子は、生分解性高分子としても知られている物質であって、薬剤学的にマイクロカプセルを製造する際に使用される通常の高分子等を利用することもでき、本発明においては、例えば、ポリラクチド(Polylactides)、ポリグリコリド(Polyglycolides)、これらの共重合体であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)等を挙げることができる。また、前記高分子等は、グルコースが結合された状態のものを利用することが初期放出抑制能をさらに高めるという点から推奨される。このようにグルコースが結合されて初期放出抑制の特性を制御する例は、前記特許文献1に開示されており、その全体の内容は参照することにより本発明に組み込まれることとする。
【0015】
本発明に使用される生体適合性高分子は、好ましくは、重量平均分子量が60,000以下のものを使用することもできる。より具体的には、例えば、分子量が13,000であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(50:50)、分子量が33,000であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(50:50)、分子量が52,000であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(50:50)、分子量が20,000であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(75:25)、分子量が16,000であるポリ(ラクチド)(100:0)等を使用することができる。このような生体適合性高分子は、例えば、ベーリンガーインゲルハイム社のRG502H、RG503H、RG504H、RG752H、R202H等を挙げることができる。
【0016】
前述の本願第1発明の製造方法に使用されるポリビニルピロリドンは、薬物の封入率を向上させるだけなく、薬物の初期放出を抑制する特性を提供する。薬物の封入率と初期放出抑制の特性を考慮するとき、ポリビニルピロリドンの含量は、薬物、生分解性高分子及びポリビニルピロリドンの総重量を基準にして0.01〜5.0w/w%にすることが好ましい。
【0017】
本願第2発明の製造方法に使用されることのできる塩は、生理活性物質の封入率と初期放出抑制の特性を向上させることのできる物質であって、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、又は、硝酸ナトリウム(NaNO)等を使用することができる。塩の添加量は、生理活性物質の封入率と初期放出抑制特性を考慮するとき、0.02〜0.15Mにすることが好ましい。
【0018】
前記本願第1の発明による生理活性物質の優れた初期放出抑制特性を有する長期徐放性製剤の製造方法は、下記のような工程段階を包含することができる。
(a)生理活性物質を含有する非水性溶液1と、生体適合性高分子及びポリビニルピロリドンを含有する非水性溶液2を混合してエマルションを得る段階
(b)前記(a)段階から得られたエマルションを、水性溶液に添加してマイクロカプセルを製造する段階
【0019】
前記段階(a)で使用されることのできる非水性溶液1を構成する溶媒は、使用される生理活性物質を溶解することができる場合、特に限定されなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、酢酸、及び、塩酸等を挙げることができる。
【0020】
また、前記段階(a)で使用されることのできる非水性溶液2を構成する溶媒は、使用される生体適合性高分子とポリビニルピロリドンを溶解することができる場合、特に限定されなく、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及び、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0021】
前記の非水性溶液1と非水性溶液2とを数分〜数十分間強力に撹拌させて混合すると、透明状のエマルションを得ることができる。
【0022】
前記段階(b)は、マイクロカプセルを得るための工程であって、水性溶液は、前記得られたエマルションを加えるための連続相であり、ここには所定の界面活性剤が包含されても良い。このような界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポロキサマー(Poloxamer)407、ポリエチレングリコール4000、アラセル(Arlacel)165、及び、グリセリン、又は、プロピレングリコール等を挙げることができる。このような界面活性剤は、生理活性物質の封入率を増加させる。水性溶液に添加される界面活性剤の添加量は、水性溶液の体積対比5.0%(w/v)程度までが好ましく、これ以上の添加はかえって薬物の封入率を減少させることがある。
【0023】
前記の工程を経て製造されるマイクロカプセルは、薬物である生理活性物質の封入率を増加させると共に、使用される生体適合性高分子の分子量及びラクチドの含有比とは関係なしに薬物の初期放出のない0(ゼロ)次放出の特性が付与される。
【0024】
前記本願第2の発明による生理活性物質の優れた初期放出抑制特性を有する長期徐放性製剤の製造方法は、下記のような工程段階を含めることができる。
(a’)生理活性物質を含有する非水性溶液1と、生体適合性高分子を含有する非水性溶液2とを混合してエマルションを得る段階
(b’)前記段階(a’)から得られたエマルションを、塩を含有する水性溶液に添加して長期徐放性マイクロカプセルを製造する段階
【0025】
前記段階(a’)で使用されることのできる非水性溶液1を構成する溶媒は、使用される生理活性物質を溶解することができる場合、特に限定されなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、酢酸、及び、塩酸等を挙げることができる。
【0026】
また、前記段階(a’)で使用されることのできる非水性溶液2を構成する溶媒は、使用される生体適合性高分子を溶解することができる場合、特に限定されなく、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及び、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0027】
前記非水性溶液1と非水性溶液2を数分〜数十分間強力に撹拌させて混合すると、透明状のエマルションを得ることができる。
【0028】
前記段階(b’)は、マイクロカプセルを得るための工程であって、水性溶液は前記得られたエマルションを加えるための連続相であり、ここには所定の界面活性剤が包含されても良い。このような界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポロキサマー(Poloxamer)407、ポリエチレングリコール4000、アラセル(Arlacel)165、及び、グリセリン、又は、プロピレングリコール等を挙げることができる。このような界面活性剤は、生理活性物質の封入率を増加させる。水性溶液に添加される界面活性剤の添加量は、水性溶液の体積対比5.0%(w/v)程度までが好ましく、これ以上の添加はかえって薬物の封入率を減少させることがある。
【0029】
前記段階(b’)の水性溶液に含有される塩は、薬物の封入率を増加させ、薬物の初期放出率を効果的に抑制する。すなわち、前記工程を経て製造されるマイクロカプセルは、薬物である生理活性物質の封入率を増加させると共に、使用される生体適合性高分子の分子量及びラクチドの含有比とは関係なしに薬物の初期放出のない0(ゼロ)次放出特性が付与される。
【0030】
前述のように製造される第1及び第2に係る本発明のマイクロカプセルは、動物に投与されるとき、薬物の血中濃度パターンは異なるが、28日間まで3ng/ml以上の薬物血中濃度を維持することができるので1ヶ月以上の長期徐放性製剤として製剤化が可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、生理活性物質、特にペプチドとその塩を含有する長期徐放性製剤の製造方法を提供し、特に、優れた初期放出抑制特性を有する徐放性製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によって製造されたマイクロカプセルの粒子分布を測定した実験結果を示す図である。
【図2】本発明によって製造されたマイクロカプセルの粒子形態を測定した実験結果を示す図である。
【図3】本発明によって製造されたマイクロカプセルの粒子のオクトレオチドの封入率を測定した実験結果を示す図である。
【図4】本発明によって製造されたマイクロカプセルの粒子のインビトロ(in vitro)長期溶出実験の結果を示す図である。
【図5】本発明によって製造されたマイクロカプセルの粒子のインビボ(in vivo)薬物動態プロファイル実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の内容を実施例を通じてより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるだけであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されないことは勿論のことである。
【0034】
<比較例> 一般的な水中油型乳化法(oil−in−water emulsification method)によるマイクロカプセルの調剤
酢酸オクトレオチド(GMP級)0.15gを表1及び表2に提示されている含量に従ってメタノールに溶解させ、生体適合性高分子1.85gを塩化メチレンに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した(DP:分散層(Dispersion phase))。このエマルション溶液を、L4Rミキサ(Silverson社)によって強力に攪拌しながら、25℃で0.5%ポリビニルアルコール(Mw=30,000〜70,000、シグマ)水溶液中に徐々に滴下した。10分後、温度を41℃に上昇させて攪拌速度を落して有機溶媒を2時間揮発させた。その後、マイクロカプセルを硬化させるために、温度を25℃に維持しながら30分間冷却させた。次いで5.0μmのセルロース膜で真空ろ過して蒸留水で3回洗浄した後、常温下で48時間真空乾燥した。
【0035】
<比較例1> 固有粘度の異なる生体適合性高分子を利用するオクトレオチド含有マイクロカプセルの調剤
【0036】
【表1】

【0037】
<比較例2> ラクチド/グリコリドの組成が異なる生体適合性高分子を利用する調剤
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例1> 生体適合性高分子と賦形剤の有機溶媒相(DP)の混合によるマイクロカプセルの調剤
(i)RG502HとPVP−17PFの混合による調剤(Lot.sizeが2.0gであるとき、PVP−17PFの添加比率:0.5〜5.0%)
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.08gに溶解させて、下記表3に提示された含量によって生体適合性高分子と、ポリビニルピロリドンを塩化メチレン4.32gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は比較例と同様に実施した。
【0040】
【表3】

【0041】
(ii)RG752HとPVP−17PFの混合による調剤(Lot.sizeが2.0gであるとき、PVP−17PFの添加比率:0.5〜5.0%)
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.39gに溶解させて下記表4に提示された含量に従って生体適合性高分子とポリビニルピロリドンを塩化メチレン5.50gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は比較例と同様に実施した。
【0042】
【表4】

【0043】
<実施例2> 水溶液相(CP)のポリビニルアルコールの濃度変化によるマイクロカプセルの調剤
(i)RG502HとPVP−17PFの混合による調剤
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.08gに溶解させてRG502H 1.83gとポリビニルピロリドン0.02gを塩化メチレン4.32gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は、比較例と同様に実施し、水溶液相のポリビニルアルコールの濃度は次の表5のようにした。
【0044】
【表5】

【0045】
(ii)RG752HとPVP−17PFの混合による調剤
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.39gに溶解させてRG752H 1.83gとポリビニルピロリドン0.02gを塩化メチレン5.50gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は比較例と同様に実施し、水溶液相のポリビニルアルコールの濃度は下記の表6のようにした。
【0046】
【表6】

【0047】
<実施例3> 水溶液相(CP)の添加剤としての塩を利用するマイクロカプセルの調剤
(i)RG502Hによる調剤
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.08gに溶解させてRG502H 1.83gを塩化メチレン4.32gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は比較例と同様に実施し、水溶液相の塩化ナトリウムの濃度は次の表7のようにした。
【0048】
【表7】

【0049】
(ii)RG752Hによる調剤
酢酸オクトレオチド0.15gをメタノール1.08gに溶解させてRG752H 1.83gを塩化メチレン4.32gに溶解させた後、2つの有機溶媒相を約10分間強力に撹拌及び混合して透明なエマルションを作製した。以下の製造過程は比較例と同様に実施し、水溶液相の塩化ナトリウムの濃度は次の表8のようにした。
【0050】
【表8】

【0051】
<実験例> マイクロカプセルの調剤
(i)粒子分布
製造されたマイクロカプセルの約100mgを蒸留水50mlに懸濁し、沈殿防止のために攪拌しながら632nmのHe−Neレーザ源によって回転パターンを検出した後、粒子分布を測定した。
図1に測定結果を示した。これによって、ポリビニルピロリドンの含量が増加するほど、約20μmより小さい直径を有するマイクロカプセルの分布が減少することを確認することができる。
【0052】
(ii)マイクロカプセルの調剤
マイクロカプセルの外観を観察するために、約50mgのマイクロカプセルをアルミニウムスタブに固定させて、真空度0.1torr及び高電圧(10kV)下で15分間白金コーティングした後、SEM本体に装着してイメージ分析プログラムによってマイクロカプセルの形態を観察した。
測定結果を図2に示した。これによれば、ポリビニルピロリドンの含量が増加するほど、製造されたマイクロカプセルの多孔性が減少されていることを確認することができる。
【0053】
(iii)オクトレオチドの封入率測定
約100mgのマイクロカプセルをテトラヒドロフラン25mlに入れて完全溶解させた後、0.1Mアセテート緩衝液(pH4.0)75mlを加えて水相に抽出した後、0.45μmシリンジフィルタでろ過した後、HPLCでマイクロカプセル内に封入されているオクトレオチドの含量を測定した。このとき、使用されたカラムはYMC C−18 ODS(4.6×150mm)で、注入量は20μlで、検出波長は210nmであった。移動相としては0.1%TFAが含有された水(a)と、0.1%TFAが含有されたアセトニトリル(b)を使用した。濃度勾配は、0−20分;15% → 70%(B)、20.1−30分;15%(B)である。
測定結果を図3に示した。これによれば、水溶液相の塩化ナトリウム濃度が増加するほど、薬物の封入率が増加するが、塩の濃度が0.5Mではかえって減少していることを確認することができる。
【0054】
(iv)インビトロ(in vitro)長期溶出試験
製造されたマイクロカプセルの約50mgを内容量12mlの試験管に入れて、10mlの0.033Mリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.0)で25rpmで回転させた。以後、37℃で培養し、所望の測定時間で上澄液を取って遠心分離し、HPLCによって溶出されたオクトレオチドの溶出量を測定した。
測定結果を図4に示した。これによれば、初期の溶出率が非常に少ないながら1ヶ月以上の間0(ゼロ)次放出特性を示していることを確認することができる。
【0055】
(v)インビボ(in vivo)薬物動態プロファイル
1.試験材料
ウサギ、マンニトール、ベンジルアルコール、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ヘパリン、遠心分離機、マイクロピペット、シリンジ
2.オクトレオチドの血中濃度
製剤化されたマイクロカプセルを懸濁溶液1.5mlに希釈してオクトレオチドとして5mg/kgの容量を8匹のウサギに筋肉注射(i.m.)で投与した。その後、1、3、6、12時間、1、2、4、7、14、21、28、35、42、49日間、血液試料の約2mlを採取した。採取した血液をヘパリン化して4℃で10分間遠心分離し、上澄液を分離した。以後、血漿中のタンパク質等を除去してLC/MS/MSを利用して血中オクトレオチドの濃度を測定した。
図5に測定結果を示した。これによれば本発明によって製造されたマイクロカプセルは血中に放出される薬物の最大血中濃度を適切に調節することができることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によると、生理活性物質、特に、ペプチドとその塩を含有する長期徐放性製剤の製造方法を提供し、特に、優れた初期放出抑制特性を有する徐放性製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性物質、生体適合性高分子を含有するエマルションを、0.02〜0.15Mの塩を含有する水性溶液に添加して製造することを特徴とする長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記エマルションは、生理活性物質を含有する非水性溶液1と、生体適合性高分子を含有する非水性溶液2とを混合して得られることを特徴とする請求項1に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記生体適合性高分子が、ポリラクチド−コ−グリコリド又はポリ(ラクチド−コ−グリコリド)グルコースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記生体適合性高分子が分子量約60,000以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記非水性溶液1を構成する溶媒がメタノールであることを特徴とする請求項2に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記非水性溶液2を構成する溶媒が塩化メチレンであることを特徴とする請求項2に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記生理活性物質がオクトレオチド又はこれらの塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の長期徐放性マイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193212(P2012−193212A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158071(P2012−158071)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2009−537091(P2009−537091)の分割
【原出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(509139324)ドンコック ファーマシューティカル コー. エルティーディー. (2)
【氏名又は名称原語表記】DONGKOOK PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】997−8, Daechi 3−dong, Kangnam−gu, Seoul 135−502 KOREA
【Fターム(参考)】