説明

優先制御装置およびそれを用いたネットワークシステム

【課題】伝送帯域等の特性が異なるために待ち行列が発生するネットワーク間に優先制御装置を配置して優先制御を行うネットワークシステムでは、複数の優先制御装置の設定を個々に行っていた。このため、優先制御装置によって異なった設定を行うことがあり、トラブルの原因になっていた。本発明は、同じ設定を行うことができる優先制御装置およびそれを用いたネットワークシステムを提供することを目的にする。
【解決手段】制御端末を用いて設定した優先制御装置の設定情報を他の優先制御装置に送信し、他の優先制御装置はこの送信された設定情報を受信して自身の設定を行うようにし、設定が完了したことを表す設定完了情報を送信するようにした。全ての優先制御装置が同じ設定になることを保証でき、かつ設定が完了したことを確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送帯域あるいは通信方式が異なるネットワークを接続する優先制御装置に関し、優先制御の設定を簡単かつ確実に行うことができる優先制御装置、およびこの優先制御装置を用いたネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に、2つのユーザネットワークが通信キャリアネットワークで接続されたネットワークシステムの構成を示す(例えば、特許文献1参照)。図5において、10はユーザネットワークであり、ネットワーク11および優先制御装置12で構成される。優先制御装置12はユーザの宅内に設置される。
【0003】
13は通信キャリアネットワークであり、従来型ネットワーク14、優先制御装置15、ネットワーク16で構成される。従来型ネットワーク14は、優先制御装置12を介してネットワーク11に接続される。従来型ネットワーク14とネットワーク16は優先制御装置15を介して接続される。優先制御装置15は通信キャリアの局内に設置される。
【0004】
17はユーザネットワークであり、ネットワーク16と接続される。18は制御端末であり、優先制御装置12と15の設定を行う。優先制御装置12、15は特性が異なるネットワーク間を接続し、主としてデータの優先制御を行う。
【0005】
データには、音声データのようにリアルタイム性が要求されるデータと、電子メールのように遅延が大きくても問題にならないデータがある。このようなデータの特性を有効に利用して優先制御を行うことにより、通信インフラを効率的に運用することができる。
【0006】
ネットワーク11、16、17は、広く普及しているイーサネット(登録商標)が用いられる。イーサネット(登録商標)はフレーム(パケットとも言う)を用いてデータの送受信を行うネットワークであり、フレーム毎に優先/非優先を振り分ける設定が行われる。個々のフレームは異なるバッファメモリに書き込まれ、フレームを順方向に送信するときは、優先度の高い順にフレームをバッファメモリから読み出し、このフレームを送信する。
【0007】
送信する側(従来型ネットワーク14)の伝送帯域が受信側(ネットワーク11、16)の伝送帯域と等しい場合は受信したフレームをそのまま送信できるので、優先制御を行う必要はない。しかし、送信側の伝送帯域が受信側の伝送帯域より狭い場合は、受信したデータをそのまま送信することはできないので、優先制御を行う必要がある。優先制御とは、優先度が高いフレームを優先して送信する制御のことを言う。
【0008】
イーサネット(登録商標)が普及する前は、ATM(Asynchronous Transfer Mode)専用線、あるいはHSD(High Speed Digital)専用線が主流であったため、従来型ネットワークはこれらの専用線が用いられていることが多い。
【0009】
通常、通信キャリアのネットワークを用いて異なるユーザネットワークを接続する場合は、そのトラフィック量は同一ユーザネットワーク内のトラフィック量と比べて少ないので、従来型ネットワーク14の伝送帯域を狭くして、通信コストを抑制することが一般的に行われている。
【0010】
このため、優先制御装置12が、ネットワーク11から送信されたデータをバースト的に受信すると、この受信データを一度に従来型ネットワーク14に送信することができないので、待ち行列が発生する。同様に、優先制御装置15が、ユーザネットワーク17から送信されたデータをバースト的に受信するときにも、待ち行列が発生する。
【0011】
ユーザがデータを送信する際に、優先フレーム、非優先フレームを識別するための情報をフレームのヘッダに付与し、優先制御装置12、15に送信する。優先制御装置12、15は、受信フレーム毎に優先フレーム、非優先フレームを識別し、異なるバッファメモリに書き込む。フレームを順方向に送信する際には、優先度の高いフレームから順にバッファメモリから読み出して送信することにより、双方向で優先制御を行うことができる。
【0012】
図6に、イーサネット(登録商標)のフレーム構造を示す。この構造は、IEEE802.1qタグフレームによって規定されている。フレームはヘッダとデータに分けられる。ヘッダには宛先MACアドレス、送信先MACアドレス、VLANタグ、フレームタイプが格納され、データはIPヘッダとIPデータが格納される。なお、アンタグフレームではVLANタグは定義されず、左詰めにされる。
【0013】
優先制御を行うためには、
(1)優先制御の有効/無効
(2)振り分けキーの種別。この種別は、IPヘッダ内のTOS(3ビットのIPプレシデンス)の値、またはVLANタグ内のUser Priority(3ビット)の値、またはVLANタグ内のVID(12ビット)の値のいずれかで設定する。
(3)振り分けキーの値。この値には、優先フレームの値および非優先フレームの値がある。
(4)各優先度バッファメモリの深さ。この値には、優先フレーム用バッファの深さと非優先フレーム用バッファの深さがある。
等の情報を設定しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−266933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このようなネットワークには次のような課題があった。優先制御装置12と15に設定する優先制御に関する設定値は一致していなければならない。従来は、優先制御装置12と15に別々にログインし、同一の設定内容を別々に設定していた。このため、優先制御装置12と15で異なった値を設定してしまうという課題があった。
【0016】
優先制御装置12と15で異なった値が設定されると、本来優先されるべきフレームが優先されず、非優先フレームが優先して送信されるというトラブルが発生する。
【0017】
このように、非優先フレームが優先して送信されるトラブルの原因は、
(1)優先制御装置12、15を設定する制御端末18における設定ミス、または故障。
(2)ユーザネットワーク10内の優先制御装置12の設定ミス、あるいは故障。
(3)通信キャリアネットワーク13内の優先制御装置15の設定ミス、あるいは故障。
が考えられるが、即座に原因を特定し、対処することは困難であるという課題もあった。
【0018】
本発明の目的は、一方の設定内容を他方の優先制御装置に送信して設定することにより、単純な設定ミスを回避し、トラブル発生の際に迅速に復旧することができる優先制御装置およびこの優先制御装置を用いたネットワークシステムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
特性が異なるネットワークの間に配置され、受信したデータの優先制御を行って送信する優先制御装置において、
優先制御に関する設定を行い、また他の優先制御装置から送信された設定完了情報に関する情報を表示する制御端末が接続される制御端末インターフェイスと、
受信したデータが入力され、この受信したデータの優先制御を行って出力すると共に、前記制御端末インターフェイスの出力によって、優先制御に関する設定が行われる優先制御処理部と、
前記優先制御処理部に設定される優先制御に関する設定情報が入力され、この設定情報を送信する設定情報送信部と、
を備えたものである。他の優先制御装置は送信された設定情報を用いて同じ設定ができ、かつ設定されたことを確認できる。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
受信したデータから前記設定完了情報を識別するデータ識別部を備え、このデータ識別部によって識別された設定完了情報を前記制御端末インターフェイスに出力するようにしたものである。設定情報および設定完了情報を、他のデータと同じ論理回線で送信することができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、
異なるネットワークの間に配置され、受信したデータの優先制御を行って送信する優先制御装置において、
受信したデータが入力され、この受信したデータの優先制御を行って出力すると共に、受信した設定情報によって優先制御に関する設定が行われる優先制御処理部と、
前記優先制御処理部の設定が完了したことを表す設定完了情報を送信する設定完了情報送信部と、
を備えたものである。他の優先制御装置と同じ設定を行うことができ、かつ他の優先制御装置は、設定が完了したことを確認できる。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
受信したデータから前記設定情報を識別するデータ識別部を備え、このデータ識別部によって識別された設定情報に基づいて前記優先制御処理部を設定するようにしたものである。設定情報および設定完了情報を、他のデータと同じ論理回線で送信することができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、
第1のネットワークと、
前記第1のネットワークと特性が異なる第2のネットワークと、
前記第2のネットワークと特性が異なる第3のネットワークと、
前記第1のネットワークと前記第2のネットワークとの間に配置され、優先制御を行う請求項1若しくは請求項2に記載の第1の優先制御装置と、
前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとの間に配置され、優先制御を行う請求項3若しくは請求項4に記載の第2の優先制御装置と、
を備えたものである。第1および第2の優先制御装置の優先制御に関する設定を同じにすることができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、
第1のネットワークと、
前記第1のネットワークと特性が異なる第2のネットワークと、
前記第1のネットワークに接続され、優先制御を行う請求項1若しくは請求項2に記載の第1の優先制御装置と、
前記第1の優先制御装置および前記第2のネットワークに接続され、優先制御を行う請求項3若しくは請求項4に記載の第2の優先制御装置と、
を備えたものである。第1および第2の優先制御装置の優先制御に関する設定を同じにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2,3,4,5,および6の発明によれば、1つの優先制御装置に設定した優先制御に関する設定情報を他の優先制御装置に送信し、他の優先制御装置は受信した設定情報に基づいて自身の優先制御に関する設定を行うと共に、設定が完了したことを表す設定完了情報を送信するようにした。
【0026】
全ての優先制御装置の優先制御に関する設定を同じ設定情報に基づいて設定するので、全ての優先制御装置の設定を同じにすることができる。このため、設定が一致しないことによるトラブルを回避することができるという効果がある。
【0027】
また、設定情報を受信した優先制御装置は、設定が完了したことを表す設定完了情報を送信するようにしたので、設定が完了したことを他の優先制御装置で確認することができるという効果もある。
【0028】
また、設定情報および設定完了情報を識別するデータ識別部を設けることにより、設定情報および設定完了情報を、他のデータを送信する論理回線を用いて送信することができる。このため、通信回線を効率的に使用できるという効果もある。
【0029】
本発明は、イーサネット(登録商標)を用いたネットワークと、ATM専用線のような従来回線を用いたネットワークを接続して優先制御を行うことができるだけでなく、伝送帯域が異なるために待ち行列が発生する全てのネットワーク間の優先制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】キャリア側優先制御装置の構成図である。
【図3】ユーザ側優先制御装置の構成図である。
【図4】本発明の他の実施例を示した構成図である。
【図5】従来のネットワークの構成図である。
【図6】フレームの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。なお、図1、図4はそれぞれ請求項5、6に対応し、図2は請求項1および2に、図3は請求項3および4に対応する。
【0032】
図1は本発明に係るネットワークシステムの一実施例を示した構成図である。図1において、ネットワークシステムはユーザネットワーク20、ユーザ側優先制御装置21、従来回線ネットワーク22、キャリア側優先制御装置23、通信キャリアネットワーク24、および制御端末25で構成される。ユーザネットワーク20、従来回線ネットワーク22、通信キャリアネットワーク24は、それぞれ第3、第2、第1のネットワークに対応し、ユーザ側優先制御装置21は第2の優先制御装置に、キャリア側優先制御装置23は第1の優先制御装置に対応する。
【0033】
なお、この実施例では、ユーザネットワーク20と通信キャリアネットワーク24の伝送帯域は、従来回線ネットワーク22の伝送帯域より広いものとする。すなわち、ユーザネットワーク20と従来回線ネットワーク22は特性が異なり、従来回線ネットワーク22と通信キャリアネットワーク24は特性が異なっている。また、図5に示すように、通信キャリアネットワーク24には他のユーザネットワークが接続されるが、記載を省略している。
【0034】
ユーザネットワーク20および通信キャリアネットワーク24はイーサネット(登録商標)で構成されたネットワークであり、従来回線ネットワーク22はATM専用線等であり、イーサネット(登録商標)が普及する前に実用化された回線で構成されたネットワークである。
【0035】
ユーザ側優先制御装置21はユーザネットワーク20および従来回線ネットワーク22に接続され、ユーザネットワーク20が送信したフレームを受信し、このフレームに優先制御を行って従来回線ネットワーク22に送信する。また、従来回線ネットワーク22が送信したデータを受信し、ユーザネットワーク20に送信する。
【0036】
キャリア側優先制御装置23は従来回線ネットワーク22および通信キャリアネットワーク24に接続される。キャリア側優先制御装置23は、通信キャリアネットワーク24が送信したフレームを受信し、このフレームに優先制御を行って従来回線ネットワーク22に送信する。また、従来回線ネットワーク22が送信したデータ受信し、通信キャリアネットワーク24に送信する。
【0037】
制御端末25はキャリア側優先制御装置23に接続される。制御端末25を用いてtelnetあるいはhttp等のプロトコルによってキャリア側優先制御装置23にログインし、このキャリア側優先制御装置23の優先制御に関する設定を編集、設定した後、送信開始操作を行う。
【0038】
図2にキャリア側優先制御装置23の構成を示す。キャリア側優先制御装置23は、フレーム受信部30、優先制御処理部31、データ送信部32、設定情報送信部33、データ受信部34、データ識別部35、フレーム送信部36、および制御端末インターフェイス37で構成される。
【0039】
フレーム受信部30は通信キャリアネットワーク24が送信したフレームを受信し、この受信したフレームを優先制御処理部31に出力する。優先制御処理部31はフレーム受信部30が受信したフレームの優先制御を行い、データ送信部32に出力する。データ送信部32は、入力されたデータを従来回線ネットワーク22の形式に変換し、この従来回線ネットワーク22に送信する。
【0040】
データ受信部34は従来回線ネットワーク22が送信したデータを受信し、この受信したデータを、データ識別部35を経由してフレーム送信部36に送信する。フレーム送信部36は、入力されたデータを通信キャリアネットワーク24の形式に変換し、この通信キャリアネットワーク24に送信する。
【0041】
制御端末インターフェイス37には制御端末25が接続される。制御端末インターフェイス37は、制御端末25を介して入力された設定値の内容を解析し、優先制御処理部31をこの設定値で設定する。前述したように、設定内容には優先制御の有効/無効、振り分けキーの種別、振り分けキーの値、各優先度バッファメモリの深さ等がある。
【0042】
優先制御処理部31に設定された内容と同じ設定情報は、設定情報送信部33に入力される。設定情報送信部33は、優先制御処理部31に送信要求を発行する。優先制御処理部31は、送信中のフレームが終了すると設定情報送信部33に送信許可を発行する。送信許可が発行されると、設定情報送信部33はデータ送信部32に設定情報を出力する。データ送信部32は、この設定情報を従来回線ネットワーク22に適合したデータ形式に変換し、従来回線ネットワーク22に送信する。
【0043】
図3にユーザ側優先制御装置21の構成を示す。ユーザ側優先制御装置21は、フレーム受信部40、優先制御処理部41、データ送信部42、設定完了情報送信部43、データ受信部44、データ識別部45、およびフレーム送信部46で構成される。
【0044】
フレーム受信部40は、ユーザネットワーク20が送信したフレームを受信し、この受信したフレームを優先制御処理部41に出力する。優先制御処理部41はフレーム受信部40が受信したフレームの優先制御を行い、データ送信部42に出力する。データ送信部42は、入力されたデータを従来回線ネットワーク22の形式に変換し、この従来回線ネットワーク22に出力する。
【0045】
データ受信部44は従来回線ネットワーク22が送信したデータを受信し、この受信したデータを、データ識別部45を経由してフレーム送信部46に出力する。フレーム送信部46は、入力されたデータをユーザネットワーク20の形式に変換し、このユーザネットワーク20に送信する。
【0046】
データ受信部44には、従来回線ネットワーク22を経由してキャリア側優先制御装置23から送信された、優先制御処理部31の設定情報も入力される。データ識別部45は設定情報であることを識別すると、この設定情報を優先制御処理部41に出力し、この設定情報で優先制御処理部41の優先制御に関する設定を行う。そしてこの設定情報を設定完了情報送信部43に通知する。
【0047】
設定完了情報設定部43は、入力された設定情報から設定が完了したことを通知する設定完了情報を生成し、優先制御処理部41に送信要求を発行する。優先制御処理部41は、送信中のフレームが終了すると、送信許可を発行する。設定完了情報送信部43は、送信許可が発行されると設定完了情報をデータ送信部42に出力する。データ送信部42は、この設定完了情報を従来回線ネットワーク22に適合する形式に変換して送信する。
【0048】
設定完了情報送信部43が作成した設定完了情報は、キャリア側優先制御装置23によって受信される。キャリア側優先制御装置23内のデータ識別部35はこの設定完了情報を識別し、制御端末インターフェイス37に出力する。制御端末インターフェイス37は、設定が完了したことを制御端末25に表示する。
【0049】
このような構成により、優先制御装置21は優先制御装置23と同一の設定を行うことができる。また、制御端末25をチェックすることにより、優先制御装置21の設定が完了したことをチェックすることができる。
【0050】
次に、優先制御装置21と23が設定情報および設定完了情報を交換する手法について説明する。これらの情報を交換する手法には次に説明する2つがあるが、それぞれ得失がある。なお、図1〜図3を用いて説明した実施例では、第2の手法を用いている。
【0051】
第1の手法は、設定情報および設定完了情報交換のために、論理回線の1つを専用に割り当てる手法である。多くの場合、1本の物理回線には複数の論理回線を収容することができる。これらの論理回線の1つを設定情報等の交換のために割り当てるようにする。
【0052】
設定情報等の交換のために専用の回線を割り当てるので、設定情報等の交換が、他のデータを交換する回線(以下ユーザ回線と言う)に全く影響を与えないという利点はあるが、使用する回線の数が増加するので、通信コストが高くなるという欠点がある。また、1本の物理回線の全回線を1つの論理回線として使用する場合には、適用することができない。
【0053】
この第1の手法は設定情報と設定完了情報を送信する専用の論理回線が設定されるので、設定/設定完了情報と他のデータを識別する必要はない。このため、データ識別部35、45は不要である。優先制御処理部41は、この専用回線を通じて設定情報を受信するとこの設定情報で自身を設定し、受信した設定情報を設定完了情報送信部43に出力する。また、優先制御処理部31は、専用回線を通じて設定完了情報を受信すると、この情報を制御端末インターフェイス37に出力する。
【0054】
第2の手法は、ユーザ回線と同一の回線を用い、設定情報等を送信するときは、この回線に割り込む手法である。専用回線を用いないので通信コストを抑えることができるという利点はあるが、一時的にユーザ回線を占有するので、設定情報等のサイズをユーザ回線に影響を与えない程度に小さくする必要があるという欠点がある。
【0055】
イーサネット(登録商標)のフレームサイズは64〜1518バイトなので、設定情報を64バイト以下にすると、設定情報を1つのフレームに入れることができる。優先制御の設定情報は通常20〜30バイト程度の大きさなので、設定情報を64バイト以下にすることは十分可能である。他のデータを送信するフレームと設定情報を送信するフレームを識別できるようにすることにより、他のデータの交換に影響を与えることなく、設定情報を交換することができる。
【0056】
設定情報を送信する手法は、従来回線の種類によって異なる。以下、ATM専用線を用いる場合と、HSD専用線を用いる場合について説明する。
【0057】
最初にATM専用線を用いる場合について説明する。ATMでは、5バイトのヘッダ部と48バイトのペイロード部で構成されるATMセルを単位としてデータを交換することが規定されている(TTC JT−1361)。交換するデータは、ペイロード部にマッピングされる。
【0058】
イーサネット(登録商標)のフレームサイズはATMセルのサイズより大きいので、1つのフレームを伝送するためには、複数のATMセルが必要になる。通常は、AAL5(ATM Adaptation Layer Specification Type5 TTC JT−1363.5で規定)プロトコルが用いられ、ATMセルのヘッダ部にフレームの最終セルを表示するフラグが付与される。
【0059】
前述したように、通常設定情報のサイズはATMセルのサイズより小さいので、1つのATMセルに設定情報を入れ込むことにより、1つのATMセルで設定情報を伝送することができる。また、常に最終セルを表示するフラグを付与することで、受信側で他のデータと識別することができる。
【0060】
次に、HSD専用線を用いる場合を説明する。HSDにはATMのような伝送単位の規定がないので、伝送単位を含めて規定しなければならない。例えば、設定情報や他のデータに1バイトのヘッダ部を追加し、このヘッダ部で設定情報を識別するようにすればよい。拡張性を考慮して、ヘッダ部を含めて48バイト程度の単位になるように伝送するデータを分割して伝送すればよい。この程度の単位にすると、設定情報は1単位で伝送することができる。
【0061】
図4に、本発明の他の実施例を示す。この実施例は従来回線ネットワークを持たないネットワークシステムに本発明の優先制御装置を適用したものである。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0062】
図4において、50はユーザネットワークであり、ユーザネットワーク20およびユーザ側優先制御装置51で構成される。52は通信キャリア側ネットワークであり、キャリア側優先制御装置53および通信キャリアネットワーク24で構成される。ユーザ側優先制御装置51とキャリア側優先制御装置53は接続される。また、キャリア側優先制御装置53には、制御端末25が接続される。
【0063】
54はユーザ側ネットワークであり、通信キャリアネットワーク24に接続される。ユーザ側ネットワーク54はユーザ側ネットワーク50と同様の構成を有しているが、記載を省略する。ユーザネットワーク20、通信キャリアネットワーク24はいずれもイーサネット(登録商標)を用いたネットワークである。通信キャリアネットワーク24、ユーザネットワーク20はそれぞれ第1、第2のネットワークに相当し、キャリア側優先制御装置53、ユーザ側優先制御装置51はそれぞれ第1、第2の優先制御装置に相当する。
【0064】
ユーザ側優先制御装置51、キャリア側優先制御装置53は、それぞれ図2、図3と同様の構成を有している。キャリア側優先制御装置53は制御端末25で設定され、この設定情報はユーザ側優先制御装置51に伝送される。ユーザ側優先制御装置51はこの伝送された設定情報で設定され、設定完了情報をキャリア側優先制御装置53に送信する。キャリア側優先制御装置53はこの設定完了情報を制御端末25に送信する。
【0065】
通信コストを抑制するために、ユーザネットワーク20、通信キャリアネットワーク24の伝送帯域が1Gbpsであり、優先制御装置51、53間の伝送帯域が100Mbpsであるとする。この場合も、通信キャリアネットワーク24とユーザネットワーク20相互間の送信で待ち行列が発生するので、優先制御を行わなければならない。
【0066】
優先制御はユーザ側優先制御装置51、キャリア側優先制御装置53で行われる。これらの優先制御装置51、53として図3、図2構成の優先制御装置を用いることにより、これらの優先制御装置を同じ設定とすることができる。
【0067】
すなわち、イーサネット(登録商標)を用いたネットワークと従来回線ネットワークとの相互接続だけでなく、イーサネット(登録商標)同士の接続であっても、伝送帯域が異なると待ち行列が発生し、優先制御を行わなければならない。本発明による優先制御装置は、優先制御を行わなければならないネットワーク間の接続に適用することができる。
【0068】
なお、本実施例ではキャリア側優先制御装置に制御端末を接続して設定を行い、この設定値をユーザ側優先制御装置に伝送するようにしたが、ユーザ側優先制御装置に制御端末を接続し、その設定値をキャリア側優先制御装置に伝送するようにしてもよい。要は、1つの優先制御装置で設定を行い、この設定値を他の優先制御装置に伝送して設定するようにすればよい。
【0069】
また、これらの実施例では2つの優先制御装置を用いた例を示したが、3つ以上の優先制御装置を用いてもよい。この場合は、1つの優先制御装置で設定を行い、この設定値を他の優先制御装置に伝送して設定するようにすればよい。
【符号の説明】
【0070】
20 ユーザネットワーク
21、51 ユーザ側優先制御装置
22 従来回線ネットワーク
23、53 キャリア側優先制御装置
24 通信キャリアネットワーク
25 制御端末
30、40 フレーム受信部
31、41 優先制御処理部
32、42 データ送信部
33 設定情報送信部
34、44 データ受信部
35、45 データ識別部
36、46 フレーム送信部
37 制御端末インターフェイス
43 設定完了情報送信部
50、54 ユーザ側ネットワーク
52 通信キャリア側ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性が異なるネットワークの間に配置され、受信したデータの優先制御を行って送信する優先制御装置において、
優先制御に関する設定を行い、また他の優先制御装置から送信された設定完了情報に関する情報を表示する制御端末が接続される制御端末インターフェイスと、
受信したデータが入力され、この受信したデータの優先制御を行って出力すると共に、前記制御端末インターフェイスの出力によって、優先制御に関する設定が行われる優先制御処理部と、
前記優先制御処理部に設定される優先制御に関する設定情報が入力され、この設定情報を送信する設定情報送信部と、
を備えたことを特徴とする優先制御装置。
【請求項2】
受信したデータから前記設定完了情報を識別するデータ識別部を備え、このデータ識別部によって識別された設定完了情報を前記制御端末インターフェイスに出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の優先制御装置。
【請求項3】
異なるネットワークの間に配置され、受信したデータの優先制御を行って送信する優先制御装置において、
受信したデータが入力され、この受信したデータの優先制御を行って出力すると共に、受信した設定情報によって優先制御に関する設定が行われる優先制御処理部と、
前記優先制御処理部の設定が完了したことを表す設定完了情報を送信する設定完了情報送信部と、
を備えたことを特徴とする優先制御装置。
【請求項4】
受信したデータから前記設定情報を識別するデータ識別部を備え、このデータ識別部によって識別された設定情報に基づいて前記優先制御処理部を設定するようにしたことを特徴とする請求項3記載の優先制御装置。
【請求項5】
第1のネットワークと、
前記第1のネットワークと特性が異なる第2のネットワークと、
前記第2のネットワークと特性が異なる第3のネットワークと、
前記第1のネットワークと前記第2のネットワークとの間に配置され、優先制御を行う請求項1若しくは請求項2に記載の第1の優先制御装置と、
前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとの間に配置され、優先制御を行う請求項3若しくは請求項4に記載の第2の優先制御装置と、
を備えたことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項6】
第1のネットワークと、
前記第1のネットワークと特性が異なる第2のネットワークと、
前記第1のネットワークに接続され、優先制御を行う請求項1若しくは請求項2に記載の第1の優先制御装置と、
前記第1の優先制御装置および前記第2のネットワークに接続され、優先制御を行う請求項3若しくは請求項4に記載の第2の優先制御装置と、
を備えたことを特徴とするネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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