説明

元素鉄の製造方法

鉄鉱石原料を還元性ガスと接触させて、鉄及びオフガスを得ることにより元素鉄を製造する方法において、該還元性ガスが(a)酸素含有ガス及び硫黄含有固体炭素質燃料をバーナーに供給して、該硫黄含有固体炭素質燃料と、担持媒体としてガス状COとからなる混合物を酸素で部分酸化することにより、H、CO、CO及びHSを含有するガスを得る工程、(b)工程(a)で得られたガスからCO及びHSを除去して、H及びCOを含有する還元性ガスと、CO及びHSを含有する第一流とを得る工程、(c)工程(b)で得られたCO及びHSを含有する第一流中のHSの含有量を液体レドックス型方法で低下させる工程、及び(d)工程(c)で得られたCOの少なくとも一部を工程(a)に再循環する工程を行うことにより製造される該製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石原料を、部分酸化法により製造される合成ガス含有還元性ガスと接触させることにより元素鉄を製造する方法に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
鉄の直接還元(DRI)は、炭素質供給原料のガス化により得られる合成ガスから供給可能な還元ガスを用いて鉄鉱石から酸素を除去することにより、固体の形態で金属鉄を生成する。工業的に利用されるDRI法としては、M.Gojic及びS.Kozuhによる“Development of Reduction Process for the Steel Production”Kem.Ind.55(1)1−10(2006)に記載されるように、MIDREX、HyL及びFINMETが含まれる。
【0003】
EP−A−0916739には、DRI法用の還元性ガスを石炭スラリーのガス化で得る方法が記載されている。DRIに供給される還元性ガスはDRIを出た再循環ガス流を含有し、この再循環ガス流からは酸ガスが除去されている。
【0004】
US−A−5871560には、合成ガスをDRI法で生成したオフガスと混合して、還元性ガスとして使用すると共に、還元ガスにHSを供給する方法が記載されている。
【0005】
1951年に出願されたUS−A−2740706には、金属酸化物を、還元性ガスとの接触により還元する方法が記載されている。実施例では還元性ガスは、天然ガスを、二酸化炭素との混合物として部分酸化して、水素の各容積に対し、一酸化炭素の容量の2〜3倍ほど多量に含有する還元性ガスを得ることにより製造されている。この文献によれば、天然ガスに二酸化炭素を加える理由は、このような多量の一酸化炭素含有量を達成するためである。天然ガスの代りに可能な供給原料として石炭を挙げている。この方法では、還元性ガスとスポンジ鉄との接触により、還元性ガスから硫黄が除去される。
【0006】
C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,2003,Elsevier Science, 第5.3章,109−128頁に記載されるような、いわゆる石炭の連行流ガス化法は、1970年以降に開発された(同文献の5頁参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の方法よりも高い効率を有する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的は本発明による以下の方法で達成される。鉄鉱石原料を還元性ガスと接触させて、鉄及びオフガスを得ることにより元素鉄を製造する方法において、該還元性ガスが、
(a)酸素含有ガス及び硫黄含有固体炭素質燃料をバーナーに供給して、該硫黄含有固体炭素質燃料と、担持媒体としてガス状COとからなる混合物を酸素で部分酸化することにより、H、CO、CO及びHSを含有するガスを得る工程、
(b)工程(a)で得られたガスからCO及びHSを除去して、H及びCOを含有する還元性ガスと、CO及びHSを含有する第一流とを得る工程、
(c)工程(b)で得られたCO及びHSを含有する第一流中のHSの含有量を液体レドックス型方法で低下させる工程、及び
(d)工程(c)で得られたCOの少なくとも一部を工程(a)に再循環する工程、
を行うことにより製造される該元素鉄の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
出願人は、COの一部を工程(a)に再循環すると、一層効率的な方法が得られることを見出した。本発明の別の利点は、ガス化反応器中で部分酸化すべき所定量の炭素質燃料に、一層小さい容積の反応器が使用でき、工程(a)にCOが存在しない場合に比べて、設備費用が安くなることである。更に別の利点は、CO及びHSの除去が1工程、即ち、工程(b)で行われるのに対し、US−A−2740706の方法では、この除去は2工程で行われることである。CO及びHSを含有する第一流からの液体レドックス法によるHSの分離は、US−A−2740706の方法のように工程(a)の全流出流からHSを除去するよりもなお一層効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
DRI法では鉄鉱石原料をH及びCOを含む還元性ガスと接触させて、元素鉄及びオフガスを得ている。好例のDRI法は前述した方法である。
【0011】
一般的なDRI法では、鉄鉱石原料は、通常、ペレット状、塊状又はこれら2つの形状の組合わせである。鉄鉱石原料は、加熱炉に、又は反応器内を原料が超大気圧、例えば1.5〜12バールで重力により降下する1組の反応器に供給される。鉄鉱石原料は、前記炉又は1組の反応器内でH及びCOを多量に含有する向流の還元性ガスの作用により還元される。DRI法のプロセス詳細は、例えば“Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology”,第4版,1985,第14巻,John Wiley & Sons,855〜872頁に記載されている。
【0012】
還元性ガスは鉄鉱石原料中に含まれる酸化鉄から酸素を除去するために使用される。この還元方法は、HO及びCOが副生物として得られる下記反応により説明できる。
Fe+H→2Fe+3H
Fe+CO→2Fe+CO
還元性ガスのH/CO比は0.5以上が好ましい。また還元性ガスの“ガス品質”は10以上が好ましい。ガス品質は、下記等式で示すように、還元剤対酸化剤の比として定義する。
ガス品質=(Hモル%+COモル%)/(HOモル%+COモル%)
【0013】
DRI法で得られた鉄は冷却され、シャフト炉の下部で向流ガスにより、下記反応に従って炭化される。
3Fe+CO+H→FeC+H
3Fe+CH→FeC+2H
この方法により、例えばいわゆる冷(cold)DRI製品、熱粉体成形(hot briquetted)鉄、又は熱直接還元鉄を製造することが可能である。
【0014】
DRI法で得られたオフガスは、炉を出る使用済み還元性ガスである。このオフガスは浄去及びCO除去により浄化でき、還元性ガスとして使用するため、好ましくは再循環される。オフガスは、前述のような還元性ガスに対する要件を満足させるため、還元性ガスとして再使用する前に処理することが好ましい。
【0015】
本発明方法の工程(a)では、硫黄含有固体炭素質燃料とCOとからなる混合物は、酸素含有ガスにより部分酸化され、これによりH、CO、CO及びHを含むガスが得られる。
【0016】
部分酸化は、いかなる既知の方法で行ってもよい。好ましくは部分酸化は、C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,2003,Elsevier Science, 第5.3章,109−128頁に記載されるような、いわゆる連行流ガス化により行われる。更に好ましくは工程(a)は、1つ以上のバーナーを備えたガス化反応器中で体炭素質燃料及びCOの混合物と、酸素含有ガスとの反応を行う連行流ガス化法で行われる。このような方法では、酸素含有ガス及び固体炭素質燃料はバーナーに供給される。COは、燃料をバーナーに輸送するための担持媒体として使用される。ガス化反応器には1つ以上のバーナーを備えることができる。バーナーは、垂直方向に長い反応器の頂部から下方に向けた単一バーナーが可能である。好ましくはガス化反応器は、正反対の位置にほぼ水平の複数の発火(firing)バーナーを有する。バーナーは、酸素含有ガス用通路と、燃料及び担体ガス用通路とを有する共環状(co−annular)バーナーが好ましい。炭素質燃料の部分酸化は、1000〜2000℃の範囲の比較的高温及び約1〜70バールの圧力で起こる。圧力は好ましくは10〜70バール、更に好ましくは30〜60バールである。ガスは、水による直接急冷、オフガスによる直接急冷、又は工程(a)又は(b)のいずれかで得られたガスの一部による直接急冷、蒸発する水との間接熱交換、又はこれら冷却工程の組合わせにより冷却される。スラグ及びその他の溶融固体は、好適にはガス化反応器の下端から排出される。
【0017】
固体炭素質燃料という用語は、固体状のいかなる炭素質燃料であってもよい。固体炭素質燃料の例は、石炭、石炭からのコークス、石油コークス、煤、バイオマス、及び油頁岩、タールサンド及びピッチから誘導された粒子状固体である。好ましくは固体炭素質燃料は、石炭、石油コークス、泥炭及び固体バイオマスの群から選ばれる。石炭が特に好ましく、いかなる種類であってもよく、硫黄を含有してもよく、亜炭、亜瀝青炭、瀝青炭及び無煙炭が含まれる。多くのDRI法では燃料として天然ガスが使用されているが、石炭は、豊富なことから、燃料供給源にとって関心のある選択である。石炭は微細粉塵状でバーナーに供給することが好ましい。微細粉塵という用語は、材料の少なくとも約90重量%が90μm未満で、かつ水分が通常2〜12重量%、好ましくは約8重量%未満、更に好ましくは5重量%未満となるような粒度分布を有する少なくとも粉砕した粉塵を含むことを意図する。石炭は、担持媒体としてCOと混合して供給することが好ましい。
【0018】
ガス状CO含有担持媒体は、COを好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上含有する。COは還元性ガスから、またDRI法のオフガスから分離できる。工程(c)で得られたCOを、工程(a)において担持媒体として使用すると、一層効率的な方法が得られることが見出された。
【0019】
工程(a)に供給されるCO含有担持媒体は、バーナーに20m/s未満、好ましくは5〜15m/s、更に好ましくは7〜12m/sの速度で供給することが好ましい。更にCO及び炭素質燃料は300〜600kg/m、好ましくは350〜500kg/m、更に好ましくは375〜475kg/mの密度で供給することが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施態様では、工程(a)でのCO対炭素質燃料の重量比は乾燥基準で0.12〜0.49の範囲、好ましくは0.40未満、更に好ましくは0.30未満、なお更に好ましくは0.20未満、最も好ましくは0.12〜0.20の範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、工程(a)において、CO対炭素質燃料を比較的低い重量比で使用すると、ガス化中、酸素の消費は一層少なくなることが見出された。酸素含有ガスは、ほぼ純粋の酸素又は空気を含む。酸素含有ガスは、酸素を好ましくは90容量%以上含有し、不純物として窒素、二酸化炭素及びアルゴンは許容し得る。空気分離ユニット(ASU)で製造されるような、ほぼ純粋な酸素が好ましい。バーナーに供給して調節剤(moderator)ガスとして働かせるように、酸素含有ガスには水蒸気が存在してよい。酸素と水蒸気との比は、酸素1容量部当たり、好ましくは水蒸気0〜0.3容量部である。下流DRI法(the downstream DRI process)が高いCO対H比を必要とする場合、調節剤ガスとして水蒸気の代りにCOを使用するのが有利である。このCOは、好ましくは工程(c)で得られるCOである。次いで、燃料と酸素含有流からの酸素との混合物は、ガス化反応器の反応帯域中で反応する。
【0022】
工程(a)で得られるガス状流は、合成ガスの主成分であるH及びCOを主として含有し、更にCO、HS、HCN及びCOSのような他の成分を含有できる。工程(a)で得られるガス状流は、本発明方法を実施する際、COを、乾燥基準で、好適には1〜10モル%、好ましくは4.5〜7.5モル%含有する。
【0023】
工程(a)で得られたガス状流に対して乾燥固体除去及び湿潤浄去を行うことが好ましい。
乾燥固体除去ユニットは、サイクロン型を含むいかなる型であってもよい。乾燥固体材料は、乾燥固体除去ユニットから排出され、処分する前に更に処理される。
【0024】
粒状物質、例えば煤粒子を除去するため、工程(a)で得られたガス状流は煤浄去器中で浄去性液体と接触する。ガス化器を出るガス状流は、一般に昇温、昇圧である。追加の冷却及び/又は脱圧工程を避けるため、煤浄去器での浄去工程は昇温及び/又は昇圧で行うことが好ましい。還元性ガスが浄去性液体と接触する際の温度は、好ましくは120〜160℃、更に好ましくは130〜150℃の範囲である。工程(a)で得られたガス状流が浄去性液体と接触する際の圧力は、好ましくは20〜80バール、更に好ましくは20〜60バールの範囲である。
【0025】
本方法は、工程(a)で得られたガスからCO及びHSを除去し、これによりH及びCOを含有する還元性ガスと、CO及びHSを含有する第一流とを得る工程(b)を更に含む。
【0026】
CO及びHSの除去は、後述するCO回収システムで行われる。CO回収システムは、CO/HSの組合わせ除去システムが好ましい。CO/HS除去は、いわゆる物理的及び/又は化学的溶剤法を用いる吸着により行うことが好ましい。CO回収は、工程(a)で得られたガス状流に対して行われる。CO及びHを含有する再循環用還元性ガスと、CO及びことによるとHSを含有する第二流とを得るため、好適には、DRI接触法のオフガスに対しても同じか又は異なるCO回収システムでCO回収を行う。CO回収システムが同じである場合、第二流及び第一流は同じであり、第一流という。
【0027】
工程(a)で得られたガス状流中に存在するCOの80容量%以上、好ましくは90容量%以上、更に好ましくは95容量%以上、かつ99.5容量%以下を除去することが好ましい。
【0028】
吸着方法は、合成ガスを液体溶剤で洗浄することを特徴とする。この液体溶剤は、合成ガスから酸成分(主としてCO及びHS)を選択的に除去する。酸成分積載溶剤は酸成分を放出して再生され、吸着器に再循環される。この洗浄又は吸着法は、通常、例えば充填物又はトレーを備えた塔中で行われる。工業的規模では、酸性成分を吸着する機構に依存して、主として2種類の吸着性溶剤:化学溶剤及び物理溶剤がある。前記“Gasification”の第8.2.1及び8.2.2章,298−309頁;及びPerry,Chemical Engineerings’Handbook,第14章,Gas Absorption参照。
【0029】
工業的に有用であることが証明されている化学溶剤は、第一、第二及び/又は第三アルカノールアミンである。最も多く使用されているアミンは、エタノールアミンから誘導された、特にモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)及びメチルジエタノールアミン(MDEA)である。
【0030】
工業的に好適であることが証明されている物理溶剤は、シクロ−テトラメチレンスフホン及びその誘導体、脂肪酸アミド、N−メチルピロリドン、N−アルキル化ピロリドン及び対応するピペリドン、メタノール、エタノ−ル並びにポリエチレングリコールのジアルキルエーテルの混合物である。
【0031】
周知の商業的方法では、化学溶剤、特にDIPA及び/又はMDEAと、物理溶剤、特に、スルホランとも呼ばれるシクロ−テトラメチレンスフホンとの水性混合物が使用されている。このような系は、適度の投資コスト及び操作コストで良好な吸着能力及び良好な選択性を示す。これらの系は、高圧、特に20〜90バール(絶対圧)で非常によく機能する。
【0032】
溶剤は、N−メチルピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコールのジメチルエーテル(DMPEG)、メタノール、又はジイソプロパノールアミン(DIPA)のようなアミン、或いはアミンとスルホランとの混合物の群から選ばれた1種以上の化合物を含むことが好ましい。更に好ましくは溶剤は、アミン及びスルホランを含有する。
【0033】
工程(b)は、CO/HS除去システムのバックアップとして又は支えとして、防護又は浄去ユニットであってよい1種以上の別の除去システムを有することが好ましい。これらの別の除去システムは、工程(a)で得られたガス中に含まれる可能性がある、HCN及びCOS、又はその他の汚染物、例えばNH、HS、金属、カルボニル、水素化物又はその他、痕跡量の汚染物を除去することを目的とする。
【0034】
工程(b)は、少なくとも2つの工程で行うことが好ましい。第一の工程では工程(a)で得られたガスは、HCN/COS加水分解触媒と接触して、HCNをNHに、またCOSをHSに転化し、次いで該ガスから、冷却及び/又は浄去により水及びアンモニアを除去し、第二の工程では前記第一工程で得られたガスは、前述のようにCO及びHSを選択的に吸収する好適な溶剤と接触する。
【0035】
工程(a)で得られたガスをHCN/COS加水分解触媒と接触させて、HCNをNHに、またCOSをHSに転化させるプロセスは、加水分解ユニット中で接触加水分解により行われる。好適な加水分解工程の例は、WO−A−04105922に開示されている。加水分解帯域は、気体/固体接触器、好ましくは固定床反応器であり得る。HCN及びCOSの加水分解用触媒は当業者には知られ、例えばTiO系触媒、或いはアルミナ及び/又は酸化クロム系の触媒が含まれる。好ましい触媒はTiO系触媒である。
【0036】
本方法は、工程(b)で得られたCO及びHSを含有する第一流中のHSの含有量を低下させる工程(c)を更に含む。工程(c)で得られるCOは、硫黄含有量が好ましくは10ppmv未満、更に好ましくは5〜10ppmvである。工程(c)は液体レドックス型方法で行われる。更に好ましくは工程(c)は、例えばA.Kohl及びR.Nielsenによる“Gas Purification”,Gulf Publishing Company,第5版,670−840頁、更に特に803−840頁に記載されるように、液体レドックス型方法により、工程(b)で得られたCO及びHSの流れを、有機酸又は錯体反応体系の鉄(III)キレートを含む反応体水溶液と接触させて、元素硫黄を生成することによって行われ、生成した元素硫黄は、該反応体の再生前に、又は再生に続いて、本方法の副生物として回収される。
【0037】
工程(c)におけるHS含有量の低下は、CO及びHSを含有する、第一流と第二流との混合物に対しても行うことができる。
本発明方法は、工程(c)で得られたCOの少なくとも一部を工程(a)に再循環する工程(d)を更に含む。工程(a)に再循環されるCOは、CO及びHSを含有する、第一流及び任意の第二流から単離される。
【0038】
工程(b)で得られた還元性ガスは、還元性ガスの圧力が低下し、電力(power)を発生する膨張器に向けられる。次いで、還元性ガスはガスヒーターで加熱されてから、DRI法の炉に入り、ここで還元性ガスは鉄鉱石原料と接触して、鉄及びオフガスを生成する。
【0039】
DRI接触法のオフガスに対しては前述のようなCO回収を行うことができ、これによりCO及びHを含有する再循環用還元性ガスと、CO及びHSを含有する第二流とが得られる。CO及びHを含有する再循環用還元性ガスは、DRI法の炉に再循環することができる。CO及びHSを含有する第一及び第二流からのCOは、工程(a)において、石炭をバーナーに運ぶための担持媒体として使用することが好ましい。過剰のCOは、地表下の貯留所(reservoir)貯蔵することが好ましく、或いは更に好ましくは工程(c)で得られたCOの一部は、強化石油回収(enhanced oil recovery)、CO隔離(sequestration)又は石炭床メタンの抽出を含む方法の1つに使用する。COの一部は、地下帯域から生産される炭化水素含有流の回収を促進するよう前記地下帯域に所望の圧力を得るため、地下帯域中に圧入することができる。工程(c)で得られた還元性ガスの一部は、発電のため、ガスタービンに燃料として使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明方法の工程計画を概略的に示す。
【実施例】
【0041】
図面の詳細な説明
図1の工程計画では、硫黄含有固体炭素質燃料(1)、好ましくは石炭が微細粉塵として、CO含有担体ガス(2)と混合され、ガス化反応器(4)のバーナーに供給され、ここで酸素含有ガス(3)と接触して、H2及びCOを含有する還元性ガス(5)とスラグ(4a)が得られる。還元性ガス(5)は乾燥固体除去ユニット(6)中で処理される。乾燥固体除去ユニット(6)からはライン(6a)経由で乾燥固体材料が排出される。固体を含まない流れ(7)はCO/HS除去システム(8)に入り、ここでCO、HSのような酸ガス、及びHCN、COSのような他のいずれかの汚染物の除去が行われる。CO/HS除去システム(8)を出た後、浄化された還元性ガス(13)は、膨張器(14)中で膨張し、これにより本方法又は別途の方法に使用するための粉末(15)が製造される。ライン(16)経由で膨張器を出る還元性ガスは、ヒーター(17)で更に加熱され、流れ(18)としてDRI炉(19)に供給され、ここで鉄鉱石(20)と接触させるため、還元性ガスとして使用される。得られた鉄は、流れ(21)経由で排出される。DRI炉(19)のオフガス(22)は、CO除去システム(23)に向けられ、ここでCOは分離され、これによりCO及びHSを含有する第二流(24)とCO及びHを含有する再循環用還元性ガス(35)が得られる。CO及びHを含有する再循環用還元性ガス(35)は、流れ(35)を流れ(16)と組合わせることにより、ヒーター(17)経由でDRI炉(19)に再循環される。CO及びHSを含有する第二流(24)の硫黄含有量が10ppmvを超えていれば、前記流れ(24)は流れ(25)として液体レドックス法型ユニット(10)に向けられ、ここで、CO/HS除去システム(8)を出る、CO及びHSを含有する第一流(9)と合流する。ガス処理は、別個のシステム(8)及び(23)中で行うことができ、或いは単一のシステムで行うことができる。液体レドックス法型ユニット(10)で得られた硫黄は流れ(11)経由で排出され、一方、COは流れ(29)として液体レドックス法型ユニット(10)を出る。流れ(29)の一部(30)は他のいずれかの好適なプロセスに向けられ、ここでCOは流れ(32)経由で使用される。流れ(29)の他の一部は、炭素質原料(1)をガス化器(4)に運ぶための担体ガス(4)として使用される。流れ(24)の硫黄含有量が10ppmv未満であれば、ガス流(24)は流れ(34)として液体レドックス法型ユニット(10)を迂回してよい。この流れは前記流れ(32)としても、或いは担体ガス(2)としても使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 硫黄含有固体炭素質燃料
2 CO含有担体ガス
3 酸素含有ガス
4 ガス化反応器
4a スラグ
5 H2及びCOを含有する還元性ガス
6 乾燥固体除去ユニット
7 固体を含まない流れ
8 CO/HS除去システム
9 CO及びHSを含有する第一流
10 液体レドックス法型ユニット
13 浄化された還元性ガス
14 膨張器
15 粉末
17 ヒーター
19 DRI炉
20 鉄鉱石
22 DRI炉のオフガス
23 CO除去システム
24 CO及びHSを含有する第二流
35 CO及びHを含有する再循環用還元性ガス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】EP−A−0916739
【特許文献2】US−A−5871560
【特許文献3】WO−A−04105922
【非特許文献】
【0044】
【非特許文献1】M.Gojic及びS.Kozuhによる“Development of Reduction Process for the Steel Production”Kem.Ind.55(1)1−10(2006)
【非特許文献2】C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,2003,Elsevier Science, 第5.3章,109−128頁
【非特許文献3】“Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology”,第4版,1985,第14巻,John Wiley & Sons,855〜872頁
【非特許文献4】C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,2003,Elsevier Science, 第8.2.1及び8.2.2章,298−309頁
【非特許文献5】Perry,Chemical Engineerings’Handbook,第14章,Gas Absorption
【非特許文献6】A.Kohl及びR.Nielsenによる“Gas Purification”,Gulf Publishing Company,第5版,670−840頁、更に特に803−840頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石原料を還元性ガスと接触させて、鉄及びオフガスを得ることにより元素鉄を製造する方法において、該還元性ガスが、
(a)酸素含有ガス及び硫黄含有固体炭素質燃料をバーナーに供給して、該硫黄含有固体炭素質燃料と、担持媒体としてガス状COとからなる混合物を酸素で部分酸化することにより、H、CO、CO及びHSを含有するガスを得る工程、
(b)工程(a)で得られたガスからCO及びHSを除去して、H及びCOを含有する還元性ガスと、CO及びHSを含有する第一流とを得る工程、
(c)工程(b)で得られたCO及びHSを含有する第一流中のHSの含有量を液体レドックス型方法で低下させる工程、及び
(d)工程(c)で得られたCOの少なくとも一部を工程(a)に再循環する工程、
を行うことにより製造される該元素鉄の製造方法。
【請求項2】
CO及びHを含有する再循環用還元性ガスと、CO及びHSを含有する第一流とを得るために、前記接触方法のオフガスからCO及びHSが除去され、還元性ガスとして該再循環用還元性ガスが使用され、かつCO及びHSを含有する、第一流と第二流との混合物に対し工程(c)が行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)におけるCO対炭素質燃料の重量比が、乾燥基準で0.5未満である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体炭素質燃料が、石炭、石油コークス、泥炭及び固体バイオマスの群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)で得られたガスがHCN及びCOSも含有し、かつ工程(b)が、
(i)工程(a)で得られたガスをHCN/COS加水分解触媒と接触させて、HCNをNHに、またCOSをHSに転化し、次いで該ガスから、冷却及び/又は浄去により水及びアンモニアを除去する工程、
(ii)工程(i)で得られたガスを、CO及びHSを選択的に吸収する好適な溶剤と接触させる工程、
により行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶剤が、N−メチルピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコールのジメチルエーテル(DMPEG)、メタノール、又はジイソプロパノールアミン(DIPA)のようなアミン、或いはアミンとスルホランとの混合物の群から選ばれた1種以上の化合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶剤がアミン及びスルホランを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)が、液体レドックス型方法により、工程(b)で得られたCO及びHSの流れを、有機酸又は錯体反応体系の鉄(III)キレートを含む反応体水溶液と接触させて、元素硫黄を生成することによって行われ、生成した元素硫黄は、該反応体の再生前に、又は再生に続いて、本方法の副生物として回収される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)で得られたCOの一部が、油回収、CO隔離又は石炭床メタン抽出を促進する方法の一つに使用される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
地下帯域から生産される炭化水素含有流の回収を促進するよう地下帯域中で所望の圧力を得るため、前記COの一部が該地下帯域中に圧入される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)で得られた還元性ガスの一部が、発電のため、ガスタービン中で燃料として使用される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503363(P2011−503363A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534459(P2010−534459)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065797
【国際公開番号】WO2009/065843
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】