説明

充電式半田付け装置

【課題】20C,3分間以内で80%電池容量の充電が可能なリチウム二次電池が装填された充電式半田コテを充電機能部材が内蔵された半田コテ載置台に載置することにより前記リチウム二次電池を簡単に急速充電することが可能な充電式半田付け装置を提供する。
【解決手段】把持部材と、この把持部材に取り付けられ、ヒータを内蔵したコテ部材と、前記把持部材内に前記ヒータに接続するように装填され、20C、3分間以内で80%電池容量の充電が可能なリチウム二次電池と備えた充電式半田コテ;および
前記リチウム二次電池が充電を必要とするときに前記充電式半田コテが載置される筐体と、この筐体に内蔵された前記リチウム二次電池を充電するための充電機能部材とを有する半田コテ載置台;
を具備したことを特徴とする充電式半田付け装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半田コテは、例えばプリント配線板にIC、チップ抵抗体やチップコンデンサのような電子部品、またはジャンパー線を半田付けする際に用いられている。
【0003】
従来の半田コテは、プラスチックのような絶縁材料からなる把持部材にヒータを内蔵したコテ部材が取り付けられ、かつ前記把持部材にヒータに電力を供給すための電源コードが取り付けられた構造を有する。しかしながら、この半田コテは半田付け作業において電源コードが邪魔して作業能率を低下させる。
【0004】
このようなことから特許文献1には充電可能なバッテリーを内蔵した半田コテと、この半田コテのバッテリーを充電するための充電器を有するコテ台を備えたコードレス構造の充電式半田コテが開示されている。
【0005】
前記充電可能なバッテリーとしては、ニッケルカドミウム二次電池またはニッケル水素二次電池が用いられている。また、最近では炭素材料を負極材料として含むリチウムイオン二次電池が用いられている。しかしながら、これらの充電可能な二次電池は通常その充電に1時間から2時間を要する。その結果、半田コテの使用頻度が高いか、または半田コテを電池容量を超えて長時間使用するかいずれかにおいて充電を必要とする場合、前記二次電池の充電時間が長い、つまり待ち時間が長いために半田付け作業の効率が低下する。なお、交換二次電池を別途に用意することにより半田付けの作業効率の低下を回避できるものの、新たにコスト的な課題が生じる。
【特許文献1】特開2000−288724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、20C,3分間以内で80%電池容量の充電が可能なリチウム二次電池が装填された充電式半田コテを充電機能部材が内蔵された半田コテ載置台に載置することにより前記リチウム二次電池を簡単に急速充電することが可能な充電式半田付け装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、把持部材と、この把持部材に取り付けられ、ヒータを内蔵したコテ部材と、前記把持部材内に前記ヒータに接続するように装填され、20C、3分間以内で80%電池容量の充電が可能なリチウム二次電池とを備えた充電式半田コテ;および
前記リチウム二次電池が充電を必要とするときに前記充電式半田コテが載置される筐体と、この筐体に内蔵された前記リチウム二次電池を充電するための充電機能部材とを有する半田コテ載置台;
を具備したことを特徴とする充電式半田付け装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充電式半田コテを半田コテ載置台に載置することにより充電式半田コテと載置台を電気的に接続して充電式半田コテ内のリチウム二次電池を急速充電できる、つまり充電の待ち時間を激減できるため、半田付けの作業効率を向上させることが可能な充電式半田付け装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る充電式半田付け装置を図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る充電式半田付け装置の充電式半田コテを示す斜視図、図2は図1の充電式半田コテの回路構成を示すブロック図、図3は実施形態に係る充電式半田付け装置の半田コテ載置台を示す斜視図、図4は図3の半田コテ載置台の回路構成を示すブロック図である。
【0011】
充電式半田コテ1は、把持部材2を備えている。この把持部材2は、例えばプラスチックからなる第1円筒状絶縁体3と、この第1円筒状絶縁体3の先端に同心円状に嵌着され、この円筒状絶縁体3より径が小さい例えばプラスチックからなる第2円筒状絶縁体4と、この第2円筒状絶縁体4の先端に同心円状に嵌着され、この第2円筒状絶縁体4より径が小さいコテ固定キャップ5を有する。リング状をなす正負の接続端子6,7は、前記第1円筒体把持部材3の先端側外周面および前記第2円筒状絶縁体4の先端側外周面にそれぞれ形成されている。後述するヒータ8を内蔵し、先端が尖がった円筒状コテ部材9は、前記把持部材2のコテ固定キャップ5に同心円状に嵌着されている。後述する20C,3分間以内で80%容量の充電が可能なリチウム二次電池10は、前記第1円筒状絶縁体3内に装填され、かつ前記ヒータ8および前記接続端子6,7に接続されている。前記ヒータ8への電力供給をオン・オフするスイッチ11は、前記第1円筒状絶縁体3に取り付けられている。スライド式スイッチ12は、前記第1円筒状絶縁体3に取り付けられ、後述する可変抵抗器13の抵抗値の調節(前記ヒータ8への供給電力の調節)が行なわれる。
【0012】
このような充電式半田コテ1の回路構成を図2を参照して説明する。20C,3分間以内で80%容量の充電が可能なリチウム二次電池10および充電制御回路14は、接続端子6,7間に直列接続されている。この充電制御回路14は、マイクロコンピュータで制御され、充電時におけるリチウム二次電池10の電圧、温度を検出する監視機能、過充電防止機能、およびリチウム二次電池10の過放電防止機能を有する。ヒータ8、スイッチ11および可変抵抗器13は、前記接続端子6,7間に直列接続されていると共に、前記二次電池10および充電制御回路14に対して並列接続されている。なお、可変抵抗器13は前記スライド式スイッチ12による抵抗値の調節によって、前記リチウム二次電池10からヒータ8への供給電力を調節(例えば2段階の調節)し、そのヒータ8の加熱温度を制御する。
【0013】
半田コテ載置台21は、図3に示すように前記リチウム二次電池10が充電を必要とするときに前記充電式半田コテ1が載置される例えばプラスチックからなる筐体22と、この筐体22に内蔵された前記二次電池10を充電するための後述する充電機能部材23とを有する。
【0014】
前記筐体22は、傾斜面24を有するブロックから構成されている。この傾斜面24には、前記充電式半田コテ1が載置されたときに前記把持部材2の第1円筒状絶縁体3を挿入する第1半円柱状溝25が上部側に形成され、かつ前記第2円柱状絶縁体4を挿入し、前記第1半円柱状溝25より小さい半径の第2半円柱状溝26がその第1半円柱状溝25と連通してその下部側に形成され、さらに前記固定キャップ4およびコテ部材9を挿入し、前記第2半円柱状溝26より小さい半径の第3半円柱状溝27がその第2半円柱状溝26と連通してその下部側に形成されている。半リング状をなす一方の充電端子28は、前記第2半円柱状溝26との境界に位置する前記第1半円柱状溝25部分に埋設されている。つまり、前記充電端子28は前記第1、第2の半円柱状溝25、26間で形成される段差部が位置する第1半円柱状溝25部分に埋設されている。一方の充電端子28より半径の小さい半リング状をなす他方の充電端子29は、前記第3半円柱状溝27との境界に位置する前記第2半円柱状溝26部分に埋設されている。つまり、前記充電端子29は前記第2、第3の半円柱状溝26、27間で形成される段差部が位置する第2半円柱状溝26部分に埋設されている。
【0015】
前記ブロック状の筐体22には、前記充電機能部材23を配置するための空洞部(図示せず)が形成されている。充電監視灯30は、前記筐体22の側面上部に設けられている。
【0016】
このような半田コテ載置台21の回路構成を図4を参照して説明する。AC/DCコンバータ31は、電源コード32を通して商用電源33に接続されている。このコンバータ31は充電回路34を通して前記充電端子28,29に接続されている。充電監視灯回路35は、前記コンバータ31と前記充電回路34間の配線に接続されると共に、前記充電監視灯30に接続されている。前記充電回路34において、前記充電式半田コテ1のリチウム二次電池10の充電中に所定の充電がなされたことを検出すると、充電監視灯回路35はその検出信号を受けて充電監視灯30を点灯する。このようなAC/DCコンバータ31、充電回路34および充電監視灯回路35により前記充電機能部材23を構成している。
【0017】
前記リチウム二次電池は、リチウムチタン酸化物を活物質として含む負極を備え、20C,3分間以内で80%電池容量の充電が可能である。活物質であるリチウムチタン酸化物は、特開2005−123183に開示されるとおり、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、リチウムイオンの挿入・離脱が1.4Vから1.7V/Li付近で行われる。このため、この二次電池は大電流での急速充電を行っても、従来の負極活物質に炭素材料を用いた場合と比べてリチウムの析出が起こらずに安全性を確保できる。また、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮が生じるのを抑制することができるため、20C電流の急速充電を繰り返し行った際にも負極活物質の構造破壊を抑えることができる。その結果、充放電を繰り返し行った場合においても長い寿命を維持できる。
【0018】
具体的には、以下のような方法で組み立てたリチウムイオン二次電池は20Cで3分間充電することにより約80%電池容量まで充電することが可能な急速充電二次電池であることを確認した。ここで、『C』は充放電率を表す単位であり、完全放電から完全充電(または完全充電から完全放電)までを定電流充電した場合に計算上1時間で行えるレートを1Cとして表現する。1/10時間の場合、10Cと表現する。したがって、例えば20C充電とは、1C充電の20倍の電流が必要になる。
【0019】
<負極の作製>
活物質として、平均粒子径5μmでLi吸蔵電位が1.55V(vs.Li/Li+)のチタン酸リチウム(Li4Ti512)粉末と、導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。
【0020】
なお、活物質の粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社 型番SALD−300)を用いた。まず、ビーカー等に試料約0.1gを入れた後、界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入した。2秒間隔で、64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析し、累積度数分布が50%の粒径(D50)を平均粒子径とした。
【0021】
次いで、厚さ10μmのアルミニウム箔(純度99.99%)を負極集電体に前記スラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより電極密度2.4g/cm3の負極を作製した。
【0022】
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電材として黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で87:8:5となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極密度3.5g/cm3の正極を作製した。
【0023】
<二次電池の組み立て>
容器(外装部材)の形成材料として、厚さが0.1mmのアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。このアルミニウム含有ラミネートフィルムのアルミニウム層は、膜厚約0.03mmであった。アルミニウム層を補強する樹脂には、ポリプロピレンを使用した。このラミネートフィルムを熱融着で貼り合わせることにより、容器(外装部材)を得、さらに金属アルミニウムの容器に収めた。
【0024】
次いで、前記正極に帯状の正極端子を電気的に接続すると共に、前記負極に帯状の負極端子を電気的に接続した。厚さ12μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを正極に密着させて被覆した。セパレータで被覆された正極に負極を対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回して電極群を作製した。この電極群をプレスして扁平状に成形した。容器(外装部材)に扁平状に成形した電極群を挿入した。
【0025】
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチルラクトン(GBL)が体積比(EC:GBL)で1:2の割合で混合された有機溶媒にリチウム塩であるLiBF4を1.5mol/L溶解させ、液状の非水電解質を調製した。得られた非水電解質を前記容器内に注液し、リチウム二次電池を組み立てた。この二次電池は、満充電時電圧2.8V、放電終止電圧1.5Vで使用できた。
【0026】
このような構成の充電式半田付け装置において、充電式半田コテ1のスイッチ11をオンしてヒータ8を加熱することによりコテ部材9の温度を半田の溶融温度まで上昇させる。例えばプリント配線板の所望のランドにICの端子を挿入し、コテ部材9の尖った先端をランドに挿入された端子に当てながら、例えばコイルから引き出した半田線をコテ部材9先端に接触させ、溶融した半田を端子に流して半田付けを行う。なお、可変抵抗器13の調節により半田の種類等に応じてコテ部材9の温度を高温または低温に制御することができる。
【0027】
前述した半田付け作業において、充電式半田コテ1のリチウム二次電池10の容量が低下すると、スイッチ11をオフし、充電式半田コテ1を図5に示すように半田コテ載置台21の筐体22に載置する。すなわち、充電式半田コテ1を斜めにし、その把持部材2の第1円柱状絶縁体3を筐体22の傾斜面24の第1半円柱状溝25に挿入すると、把持部材2の第1円柱状絶縁体3が第1半円柱状溝25に沿って下降し、第1円柱状絶縁体3先端(下端)が第1、第2の半円柱状溝25、26間で形成される段差部に係合され、同時に把持部材2の第2円柱状絶縁体4先端(下端)が第2、第3の半円柱状溝26、27間で形成される段差部に係合されて、充電式半田コテ1が筐体22の所定位置にセットされる。このとき、充電式半田コテ1の第1円柱状絶縁体3の先端外周面に形成されたリング状接続端子6と筐体22の第1半円柱状溝25に埋設された半リング状の充電端子28とが接触して接続される。また、充電式半田コテ1の第2円柱状絶縁体4の先端外周面に形成されたリング状接続端子7と筐体22の第2半円柱状溝26に埋設された半リング状の充電端子29とが接触して接続される。この状態で半田コテ載置台21の充電機能部材23を電源コード32を通して商用電源33に接続すると、商用電源33からの交流電力がAC/DCコンバータ31で直流に変換され、充電回路34を通して前記リチウム二次電池10に適合した電圧の直流電力が充電用端子28,29、接続端子6、7から前記リチウム二次電池10に供給され、20C,3分間以内で80%電池容量の充電、つまり急速充電がなされる。前記充電回路34において、リチウム二次電池10の充電完了を検出すると、充電監視灯回路35はその検出信号を受けて充電監視灯30を点灯する。この充電監視灯30が点灯した後、充電式半田コテ1を半田コテ載置台21から取り外すことにより、充電式半田コテ1のヒータ8を再度半田溶融に適した温度まで加熱し得る状態、つまり半田付け作業に適用可能な状態に復帰できる。
【0028】
以上説明した実施形態によれば、充電式半田コテ1による半田付け作業で、内部に装填した急速充電可能なリチウム二次電池10の容量が低下したときに、スイッチ11をオフし、充電式半田コテ1を半田コテ載置台21に載置してリチウム二次電池10側の接続端子6,7と充電機能部材23側の充電端子28,29をそれぞれ接続することにより、前記リチウム二次電池10を20C,3分間以内で80%電池容量の充電、つまり急速充電を行うことができるため、充電の待ち時間に伴う作業のロスを激減できる。その結果、プリント配線板へのICの端子接続(IC実装)等での半田付け作業を効率よく行うことが可能な充電式半田付け装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る充電式半田付け装置の充電式半田コテを示す斜視図。
【図2】図1の充電式半田コテの回路構成を示すブロック図。
【図3】実施形態に係る充電式半田付け装置の半田コテ載置台を示す斜視図。
【図4】図3の半田コテ載置台の回路構成を示すブロック図。
【図5】充電のために充電式半田コテを半田コテ載置台に載置した状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1…充電式半田コテ、2…把持部材、3…第1円筒状絶縁体、4…第2円筒状絶縁体、6,7…接続端子、10…リチウム二次電池、11…スイッチ、21…半田コテ載置台、22…筐体、23…充電機能部材、25,26,27…半円柱状溝、28,29…充電端子、30…充電監視灯、31…AC/DCコンバータ、34…充電回路、35…充電監視灯回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部材と、この把持部材に取り付けられ、ヒータを内蔵したコテ部材と、前記把持部材内に前記ヒータに接続するように装填され、20C、3分間以内で80%電池容量の充電が可能なリチウム二次電池とを備えた充電式半田コテ;および
前記リチウム二次電池が充電を必要とするときに前記充電式半田コテが載置される筐体と、この筐体に内蔵された前記リチウム二次電池を充電するための充電機能部材とを有する半田コテ載置台;
を具備したことを特徴とする充電式半田付け装置。
【請求項2】
前記充電式半田コテは、前記把持部材に前記リチウム二次電池と接続される接続端子を有し、
前記半田コテ載置台は、前記充電式半田コテが載置されたときに前記把持部材と係合される溝が前記筐体に形成され、かつ
前記半田コテ載置台の前記充電機能部材は、商用電源に接続されるAC/DCコンバータと、このコンバータに接続される充電回路と、前記筐体の前記溝に取り付けられ、前記充電回路に接続される共に、前記充電式半田コテが前記筐体に載置したときに前記把持部の接続端子と接続される充電端子とを有することを特徴とする請求項1記載の充電式半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−307594(P2007−307594A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140304(P2006−140304)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)