説明

光イオン化検出器及び光イオン化検出方法

【課題】測定感度の低下を低減できると共に、長期間メンテナンスフリー及び高精度測定が可能な光イオン化検出器及び光イオン化検出方法を提供する。
【解決手段】光イオン化検出器は、測定流体中のVOCの検出電極2と、該検出電極2に交流電圧又は交流電流を印加する交流印加回路3と、測定流体に紫外線を照射するUVランプ4と、該UVランプ4の励起回路5と、検出電極2に流れる電流又は電圧を測定する測定回路7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光イオン化検出器及び光イオン化検出方法に関するものであり、特に測定感度の低下を低減でき、高精度測定が可能な光イオン化検出器及び光イオン化検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(以下、Volatile Organ−ic Compounds:VOCという)は光化学スモッグや浮遊粒子状物質の原因となっており、工場などの排出源付近の住環境にも悪影響を及ぼす。したがって、特に排出施設周辺や都心部においてはVOCの削減が重要な課題となっている。
そして、VOCを削減するために大気汚染防止法や環境確保条例による規制等が定められているが、環境保全と産業振興の両立のためには、更なる削減技術の開発が求められている。近年、環境への関心が高まるにつれ、VOCを測定することの必要性も増してきており、より正確に精度良くVOCの測定ができる技術が望まれている。
【0003】
VOC測定装置としては、例えば、水素炎イオン化検出器(公定法)、触媒酸化・非分散形赤外線分析計(公定法)、半導体センサ、触媒燃焼式センサ、ガスクロマトグラフィなどがある。なかでも、水素炎イオン化検出器は公定法として用いられ、簡易で、正確にVOCを測定することができるとしている。しかしながら、水素ボンベなどの設置が必要であることから装置が煩雑であり、また装置自体も高価であるという問題があった。また、触媒酸化・非分散形赤外線分析計も公定法として用いられているが、水素炎イオン化検出器と同様に、大型装置が必要で、装置自体も高価であるという問題があった。
また、半導体センサはコンタミネーションによる感度消失、ドリフトによって出力値が不安定である、濃度により感度差が生じるという問題、触媒燃焼式センサについても同様に感度消失、ドリフト、低濃度(100ppm以下)は測定不可能であること、更に、ガスクロマトグラフィは大型装置であり連続測定はできない、高価であるという問題があった。
【0004】
一方、これらの装置の他に、図9に例示したようなVOC測定装置としての光イオン化検出器(光イオン化センサによる測定法)が知られている。光イオン化検出器(PID)の測定原理は、一対の印加電極が配置された装置内に測定流体を誘導して短波長の紫外線(UV)を照射し、VOCをイオン化させ、そのイオンを印加電極で捕捉することにより、VOC濃度に比例した検出電流を得ることができるというものである。すなわち、UVによってチャージされたイオンが電極に導かれて一対の印加電極間の電流値が変化するため、その電流値を測定することにより、VOC濃度に換算することで、VOC濃度が測定できる。
【0005】
そして、光イオン化検出器は、VOC測定流体FLが導入及び排出される検出室1と、検出室1内に設けられた金属電極2と、金属電極2に直流電圧を印加する直流印加回路13と、検出室1内の測定流体に短波長の紫外線を照射するUVランプ4と、UVランプ4を励起する励起回路5と、金属電極2を流れる電流を測定する測定回路7(例えば、電流計Aを接続する)と、更に電流値からVOC濃度へ換算するための計算を行う演算器8(制御装置)などから構成される。
【0006】
この従来の光イオン化検出器では、VOC測定流体FLは、検出室1に導入されて、UVランプ4による紫外線の照射後、検出室1から排出される。検出室1には、金属電極(直流印加電極)が設けられ、導入された測定流体FLは、検出室1側壁部に設けられたUVランプ4により照射される紫外線によってVOCがイオン化され、このイオン又は電子が金属電極2へ引き寄せられて捕捉されることで印加電極2に電流が生じる。
そして、この電流を測定回路7によって測定する。更に、当該電流値は演算器8により物質ごと(測定VOCの物質)の係数を乗じることで、VOC濃度として出力される。 このような光イオン化検出器は、公定法ではないものの、上述の他の検出器、検出方法と比べて、各VOC成分に対して選択性があるため、特定のVOCを測定するのに適しているうえ、ほとんどのVOC測定に有効な方法であり、装置も大型ではないため、簡易にVOCを測定でき、VOCの測定方法として非常に有用な方法である。
【0007】
しかしながら、従来の光イオン化検出器は、(1)長時間の使用により金属電極表面に絶縁物等のコンタミネーションが蓄積し、イオン化したVOCの電極への到達が阻害されて感度が低下すること、また(2)金属電極が汚染物質で覆われた場合は感度を失いセンサとして機能しなくなること、という問題があった。
したがって、汚染物質が金属電極表面に蓄積すると、再現性を得ることができなくなるため、定期的な電極のメンテナンスを必要とした。
そこで、下記特許文献1によれば、揮発性ガス濃度(VOCガス濃度に相当)を継続的に測定し、かつイオン化検出室内の酸素をUVランプによりオゾンに変換させることで、該オゾンによってイオン化検出室内の汚れを取り除くというPIDの自己清浄を行う構成が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献2には、図9に例示の光イオン化検出器とほぼ同様の基本構成を有する光イオン化検出器が開示されている。具体的には、特許文献2の光イオン化検出器は、透過窓と印加電極とが設けられ、測定流体が導入、排出される検出室と短波長の紫外線を照射するランプ、ランプを励起する励起回路、印加電極に電圧を印加する印加回路などから構成されている。
そして、特許文献2の光イオン化検出器では、このような構成に加え、感度の低下を防ぐために、間欠的にランプを動作させると共に、それに同期して測定流体を検出室に滞留させることで、連続して測定流体を導入した場合に比較して、ラジカルなどの原因物質の生成を抑え、感度の低下を防止する構成が開示されている。
【0009】
なお、下記非特許文献1には、光イオン化検出器の基本構成について記載されており、具体的には、多原子化合物をイオン化するのに必要なUVの発生、測定流体の検出室への導入と電極の構成などが記載されている。また、希ガス又は窒素又は水素を用いた放電は、多原子化合物(VOCなど)をイオン化するのに十分なエネルギーを持つ光子を発生可能なこと、電子を計測するためのチャンバ型アノード(C)に囲まれた測定流体の導入管D(カソード)は、遊離したイオンの集電極としても機能することが開示されている。
非特許文献1によれば、光イオン化検出器の金属電極はカソードD(陰極)とアノードC(陽極)から構成されており、電流の流れる向きが決まっていることから、図9、下記特許文献1及び下記特許文献2に例示した従来の光イオン化検出器における金属電極2は、直流印加電極であると理解することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−66008号公報
【特許文献2】特開2003−98153号公報
【非特許文献1】ジェー・イー・ラブロック(J.E.Lovelock)著、化学(CHEMISTRY)、ガス・蒸気の光イオン化検出器(A Photoioniza−tion Detector for Gases and Vapours)、 ネイチャー(NATURE)、ナンバー(No.)4748、1960年10月29日、401頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1記載の構成は、揮発性ガス分子濃度をリアルタイムで測定し、かつPIDを自己清浄できるが、周囲ガスに含まれる酸素をオゾンに変換するようにガス検出ユニットを制御するという複雑な構成である。また、自己清浄後も再び金属電極表面に絶縁物等のコンタミネーションが蓄積するため、依然として定期的な清浄が必要であった。
そして、特許文献2に記載の構成においても、長時間使用すると、依然として、金属電極表面にコンタミネーションが蓄積するため、メンテナンスを必要とした。
【0012】
上述のように、金属電極表面にコンタミネーションが蓄積すると、測定感度が低下する。したがって、測定するVOCの種類や濃度によっては、イオン化による微小な、ノイズよりも小さな信号を検知することはできない。
本発明の課題は、測定感度の低下を低減できると共に、長期間メンテナンスフリー及び高精度測定が可能な光イオン化検出器及び光イオン化検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、測定流体中の揮発性有機化合物を検出する検出電極と、該検出電極に交流電圧又は交流電流を印加する印加手段と、前記測定流体中の揮発性有機化合物をイオン化するために測定流体に紫外線を照射するUVランプと、該UVランプを励起するための励起回路と、前記検出電極に流れる電流又は電圧を測定する測定手段とを有する揮発性有機化合物の光イオン化検出器である。
請求項2記載の発明は、前記測定手段が、位相検波器である請求項1記載の光イオン化検出器である。
請求項3記載の発明は、前記検出電極が絶縁被覆されている請求項1又は2に記載の光イオン化検出器である。
【0014】
請求項4記載の発明は、測定流体中の揮発性有機化合物を検出するための検出電極に交流電圧又は交流電流を印加し、前記測定流体に紫外線を照射して測定流体中の揮発性有機化合物をイオン化させて、前記検出電極に流れる電流又は電圧を測定する揮発性有機化合物の光イオン化検出方法である。
請求項5記載の発明は、前記検出電極に流れる電流又は電圧を位相検波により測定する請求項4記載の光イオン化検出方法である。
請求項6記載の発明は、前記検出電極が絶縁被覆された電極を用いる請求項4又は5に記載の光イオン化検出方法である。
【0015】
(作用)
従来のPIDの金属電極(検出電極)に電圧を印加する手段は、非特許文献1に記載のように、直流印加回路である。なお、直流印加回路を用いることは、上記特許文献1及び特許文献2には明確に記載されていないが、一般的なことである。
そして、本発明によれば、検出電極に電圧を印加する手段として、交流印加回路を用いて交流電圧又は交流電流を印加する手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
従来のPIDのように、直流印加回路を用いる場合は、電流の流れる方向が一定であることから、二つの直流印加電極のうち、一方の電極にコンタミネーションが蓄積すると、直流印加電極のイオンまたは電子を捕獲できる面積が小さくなる。したがって、電流の流れが妨げられて正確な電流値を測定することができなくなり、測定感度が低下する。すなわち、従来の直流印加回路を用いる場合は、コンタミネーションがイオンと電極との接触を阻害していた。
【0017】
一方、交流印加電極における電流の発生は、イオン電流のみでなく、検出電極そのものがコンデンサとして働くことによっても生じる。イオン化したVOCにより検出電極の誘電損失が変わるため、コンデンサに蓄えられる電荷量が変わり、それによる電流値の変化を測定できる。したがって、検出電極にコンタミネーションが蓄積しても、電極に交流を印加することで測定感度を失うことを防止できる。
【0018】
一般的に、交流印加の場合は直流印加の場合に比べてノイズを拾いやすいということが認知されている。したがって、通常は、交流印加により測定感度を上げるということは考えにくい。しかし、本発明者らは鋭意研究によって、このように電極にコンタミネーションが蓄積するという状況下では、直流印加の場合の方が交流印加の場合に比べて感度が低下するということを突き止め、本発明を完成させるに至った。
また、交流印加の場合は、二つの交流印加電極のうち、一方の電極にコンタミネーションが蓄積しても、他方の電極でイオン化したVOCを捕捉可能であることから、測定感度の低下を防止できる。
【0019】
電極に印加し、検知する方法は、(a)一定の電圧を電極に印加し、出力(電極回路に流れる電流)の変化によって検知を行う場合と(b)一定の電流を電極に印加し、出力(電極回路にかかる電圧)の変化によって検知を行う場合がある。
したがって、請求項1及び4記載の発明によれば、検出電極に交流印加回路を用いて交流電圧又は交流電流を印加することで、検出電極がコンデンサとしても働くため、電流値の測定が可能である。したがって、検出電極がコンタミネーションによって測定感度を失うことを防止できる。
【0020】
また、測定するVOCの種類や濃度によっては、イオン化による微小な信号の変化がノイズに埋もれてしまうことがあるが、検出電極に流れる電流又は電圧を位相検波により測定することで、すなわち交流印加回路の印加電圧の位相と検出信号の位相を同期させれば、ノイズを除去できる。例えば、検出電極に流れる電流信号を位相検波器を用いて測定すると良い。検出電極に流れる検出信号を安定な交流印加回路の信号と同期させることで、検出信号からノイズが除去される。この結果、高精度なVOCの濃度測定が可能となる。 すなわち、請求項2及び5記載の発明によれば、上記請求項1及び4記載の発明の作用に加えて、検出電極に流れる電流又は電圧を位相検波により測定することで、ノイズを除去できる。したがって、高精度なVOCの濃度測定が可能となる。
【0021】
また、検出電極に絶縁膜が被覆された電極を用いても良い。この結果、長期間メンテナンスフリーな電極を得ることができる。
交流印加電極は、イオン化ガスによる電極の静電容量(電気容量)の変化を検知することが可能であるため、絶縁膜を被覆した電極を用いても、電気容量の変化によって電流値を測定できる。絶縁膜を被覆した絶縁膜部は、UV照射による活性物質の発生又は腐食性物質の混入による汚染から電極を防ぐため、長期間のメンテナンスフリーが可能となる。 また、金属電極を用いても電極の金属部は劣化しない。
したがって、請求項3及び6記載の発明によれば、上記請求項1又は2及び請求項3又は4記載の発明の作用に加えて、絶縁膜を被覆した絶縁膜部はUV照射による活性物質の発生又は腐食性物質の混入による汚染が生じないため、電極の導体部にコンタミネーションが蓄積することがなく、長期間のメンテナンスフリーが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光イオン化検出器は、金属電極に交流電圧又は交流電流を印加することで、汚染物質の存在下でもVOC濃度の測定が可能である。
具体的に、請求項1及び4記載の発明によれば、検出電極に交流印加回路を用いて交流電圧又は交流電流を印加することで、コンタミネーションによって測定感度を失うことを防止できる。したがって、VOC濃度の測定感度の低下を低減できる。
【0023】
請求項2及び5記載の発明によれば、上記請求項1及び4記載の発明の効果に加えて、検出電極に流れる電流又は電圧を位相検波により測定することで、ノイズを除去でき、高精度なVOCの濃度測定が可能となる。
請求項3及び6記載の発明によれば、上記請求項1又は2及び3又は4記載の発明の効果に加えて、検出電極として絶縁膜を被覆した電極を用いることで、コンタミネーションの蓄積を防止でき、長期間のメンテナンスフリーが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による光イオン化検出器の構成図である。図1(a)は、交流印加回路に抵抗Rを設けた場合の図であり、図1(b)は、交流印加回路に電流計Aを設けた場合の図である。
【図2】本発明の他の実施形態による光イオン化検出器の構成図である。
【図3】本発明の他の実施形態による光イオン化検出器の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態による光イオン化検出器(図1)と従来の光イオン化検出器を用いて、コンタミネーションによる直流電極と交流電極の感度差を比較した測定結果を示した図である。
【図5】本発明の一実施形態による光イオン化検出器(図2)を用いて、ノイズの有無を確認するために電流値の測定を行った結果を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態による光イオン化検出器(図2)を用いた場合のVOC濃度と検出された電流値差との関係及びVOC濃度と位相差との関係を示した図である。
【図7】本発明の一実施形態による光イオン化検出器(図2)と従来の光イオン化検出器を用いて、コンタミネーションによる直流電極と交流電極の感度差を比較した測定結果を示した図である。
【図8】本発明の一実施形態による光イオン化検出器(図3)を用いて、実施例2(図5)と同様にノイズの有無を確認するために電流値の測定を行った結果を示した図である。
【図9】従来例の光イオン化検出器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態による光イオン化検出器を図面により説明する。
図1には本発明の一実施形態による光イオン化検出器の構成図を示す。
図1(a)の光イオン化検出器は、VOC測定流体FLが導入及び排出される検出室1と、検出室1内に設けられた金属電極2と、金属電極2に交流電圧を印加し、抵抗Rが設けられた交流印加回路3と、検出室1内の測定流体に短波長の紫外線を照射するUVランプ4と、UVランプ4を励起するUVランプ励起回路5と、金属電極2に生じる電流を測定する測定回路7と、電流値からVOC濃度へ換算するための計算を行う演算器8などから構成される。
【0026】
なお、本発明は、電流計Aを接続してもよく、この場合は、図1(b)に示すように電流計Aが測定回路7となり、抵抗Rを設ける必要はない。また、図1(a)、図1(b)共に、図9の光イオン化検出器における直流印加回路13を、交流印加回路3とした点で、図9の従来の光イオン化検出器とは異なる。
【0027】
ここで、本発明について更に説明する。VOC測定流体FLは、検出室1に導入されて、UVランプ4による紫外線の照射後、検出室1から排出される。検出室1には、金属電極(交流印加電極)が設けられ、導入された測定流体FLは、検出室1側壁部に設けられたUVランプ4により照射される紫外線によってVOCがイオン化され、このイオン又は電子が金属電極2へ引き寄せられて捕捉されることで印加電極2に電流が生じる。
交流印加回路3によって交流電圧が金属電極2に印加されると、金属電極2はコンデンサとして機能するため、空気の誘電率に依存した電流が交流印加回路3に流れる。電流の計測は抵抗Rの両端の電圧を計測することで行われる。図1(b)に示すように電流計Aにより電流を直接計測する場合も電流計の内部では抵抗の電圧を計測している。
【0028】
測定流体中のVOCは紫外線(UV)照射によりイオン化する。そして、VOCのイオン化により金属電極2の電気容量が変化すること、及びイオン又は電子が金属電極2に引き寄せられることでイオン電流が発生することによって電流値は変化する。
そして、この金属電極2に流れる電流信号を取り出して、イオン発生時の電流値からイオン発生前の電流値を減算し、イオン化による電流値を演算器8によって測定する。なお、一定電流を電極2に印加する場合はイオン電流が発生することによって電圧値も変化するため、イオン化による電極2間の電圧値を測定回路7によって測定しても良い。
【0029】
更に前記電流値は演算器8により物質ごとの係数を乗じることで、VOC濃度として出力される。
イオン化したVOCにより金属電極2の電気容量が変わるため、その変化によって電流値を測定できる。したがって、金属電極2にコンタミネーションが蓄積しても、イオン又は電子の検知が可能であり、交流電極がコンタミネーションによって測定感度を失うことを防止できる。
【0030】
また、二つの交流印加金属電極2のうち、一方の金属電極2にコンタミネーションが蓄積しても、他方の金属電極2でイオン化したVOCを捕捉可能であることから、測定感度の低下を防止できる。
したがって、本実施形態に示すように、金属電極2に交流印加回路3を用いて金属電極2に交流電圧又は交流電流を印加することで、金属電極2がコンデンサとしても働くため、電流値(又は電圧値)の測定が可能である。したがって、金属電極2がコンタミネーションによって測定感度を失うことを防止できる。
【0031】
測定可能なVOCの例としては、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、カルボン酸、芳香族炭化水素など、環境省から公表されている各種の物質が挙げられる。特に感度が高い物質として、p−キシレン、トルエン、ベンゼン、トリクロロエチレン、ブタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。なお、UVランプの種類によって、イオン化ポテンシャルが10.6ev以下の物質のみならず、イオン化ポテンシャルが10.6ev以上の物質でも検知可能である。
また、金属電極2としては、SUS(ステンレス)電極、金電極、白金電極、銅電極などがあり、特に種類は問わない。なお、銅は反応性が良いため、電極表面が変質しやすいので、SUS電極、金電極、白金電極が好ましい。
【0032】
また、UVランプ4としては、クリンプトン、キセノン、アルゴンなどを封入した一般的に使用されるランプを用いればよい。
一例として、トルエンガスをイオン化する場合、UVランプ4には10.6evのイオン化ポテンシャルを持つクリンプトン封入ランプを用いて、UVランプ励起回路5にはクリンプトンを励起させることが可能な13.56MHzの周波数を発振回路とする。
また、非特許文献に記載のように、UVを発生させる方法として、電極を用いて励起させる方法もある。
【0033】
図2には本発明の他の実施形態による光イオン化検出器の構成図を示す。
また、図2の光イオン化検出器は、VOC測定流体FLが導入及び排出される検出室1と、検出室1内に設けられた金属電極2と、金属電極2に交流電圧を印加し、抵抗Rが設けられた交流印加回路3と、検出室1内の測定流体に短波長の紫外線を照射するUVランプ4と、UVランプ4を励起する励起回路5と、抵抗Rに生じる電流の検出信号と交流印加回路3の波長とを同期させてノイズを除去し、該ノイズが除去された信号を電流値に変換するための位相検波器10と、位相検波器10により測定された電流値からVOC濃度へ換算するための計算を行う演算器8などから構成される。
すなわち、図2の光イオン化検出器は、図1の光イオン化検出器とは測定回路7の代わりに位相検波器10を用いた点で異なり、その他の構成は同様である。
【0034】
交流印加回路3によって交流電圧が金属電極2に印加されると、金属電極2はコンデンサとして機能するため、空気の誘電率に依存した電流が交流印加回路3に流れる。
測定流体中のVOCは紫外線(UV)照射によりイオン化し、金属電極2の電気容量が変化すること、及びイオン又は電子が金属電極2に引き寄せられることでイオン電流が発生することによって電流値は変化する。
そして、測定するVOCの種類や濃度によっては、ノイズやドリフトにより出力が安定しない。
【0035】
しかし、金属電極2に流れる電流又は電圧を位相検波器10により測定することで、すなわち位相検波器10によって交流印加回路の位相と検出信号の位相を同期させると、同期しない信号は除去されて出力が安定する。
そして、イオン発生時の電流値からイオン発生前の電流値を減算し、イオン化による電流値を測定する。更に当該電流値は演算器8により物質ごとの係数を乗じることで、VOC濃度として出力される。
したがって、この結果、高精度なVOCの濃度測定が可能となる。
【0036】
また、図3にも本発明の他の実施形態による光イオン化検出器の構成図を示す。
図3の光イオン化検出器は、VOC測定流体FLが導入及び排出される検出室1と、検出室1内に設けられ、金属電極2に絶縁膜が被覆された絶縁膜被覆金属電極11と、絶縁膜被覆電極11に交流電圧を印加し、抵抗Rが設けられた交流印加回路3と、検出室1内の測定流体に短波長の紫外線を照射するUVランプ4と、UVランプ4を励起する励起回路5と、抵抗Rに生じる電流の信号を増幅し、該増幅された検出信号と交流印加回路3の波長とを同期させ、ノイズ除去後の信号を電流値に変換するための位相検波器10と、電流値からVOC濃度へ換算するための計算を行う演算器8などから構成される。
【0037】
すなわち、図3の光イオン化検出器は、図2の光イオン化検出器とは金属電極2が二つとも絶縁被覆されている点で異なり、その他の構成は同様である。なお、二つ金属電極2の両方を被覆するだけでなく、一方のみを被覆することも本実施形態に含まれる。
交流印加電極の金属電極2は、イオン化ガスによる電極2の電気容量の変化を検知することが可能であるため、絶縁膜を被覆した絶縁膜被覆電極11を用いても、電気容量の変化によって電流値を測定できる。絶縁膜を被覆した絶縁膜部は、UV照射による活性物質の発生又は腐食性物質の混入による汚染から電極を防ぐため、長期間のメンテナンスフリーが可能となる。また、金属電極2を用いても絶縁膜で被覆することにより電極の金属部は劣化しないので、長期間メンテナンスフリーな金属電極2を得ることができる。
【実施例1】
【0038】
実施例1には、図1の光イオン化検出器を使用した例を示す。
図4には、図1の光イオン化検出器と図9の従来の光イオン化検出器を用いて、コンタミネーションによる直流電極と交流電極の感度差を比較した測定結果を示す。
絶縁物のコンタミネーションが電極を覆うという条件を疑似的に作り出すため、二つの金属電極2(平行平板電極、縦30mm、横30mm、厚さ0.1mm、電極間距離:0.8mm、材質:SUS304)のうち一方を絶縁フィルム(商品名 パラフィルム、アメリカン ナショナル キャン カンパニー社製)で覆い、他方の電極2には何も覆わない通常の金属電極2を用いて、図1(b)の光イオン化検出器と図9の従来の光イオン化検出器により、UV照射時間を5分から15分の10分間として、測定回路7(電流計A)を電極2と直列に接続し、各電流値(nA)を測定した。
【0039】
測定試料として、トルエンガス100ppmを用い、測定試料にUVランプ励起回路5(ヘレウス社製、C210RF)により励起したUVランプ4(10.6eV、ヘレウス社製、PKR106)から波長117nmの紫外線を5分から15分(照射時間は10分間)照射した。また、交流印加回路3(ファンクション・ジェネレータ、(株)テクシオ製、FG−281、発振波形:正弦波)は280ヘルツ(Hz)の周波数とし、交流印加回路3及び直流印加回路13(アジレント・テクノロジー社製、E3630A)の印加電圧は10Vに設定した。なお、本実施例では、直流及び交流の場合も抵抗Rを用いずに、電流計Aにより直接電流を計測した。
【0040】
検出室(内寸:縦200mm、横200mm、高さ125mm、材質:SUS304)1内を前記トルエンガス(100ppm)で置換し、金属電極2に交流印加回路3又は直流印加回路13による電流を印加し、印加電極2に生じた電流を測定回路7によって電流値として測定した。
測定回路7の電流計Aとして、マルチメータ(アジレント・テクノロジー社製、U1252A)を設置し、電流値の測定は5秒間に1回行い、30秒間(6回分)の平均値をプロットした。
【0041】
図4により、UVランプ4の非照射時(0〜5分、15分から20分)と照射時(5分から15分)を比較すると、直流印加回路13を用いた場合(三角で示す)は、UVランプ4の非照射時と照射時では電流値に差が生じず、ほぼ電流値がゼロであった。この結果から、金属電極2の一方にのみコンタミネーションが生じた場合でも、正確な電流値を測定することができなくなり、測定感度が低下することが確認された。
一方、交流印加回路3を用いた場合(黒丸で示す)は、UVランプ4の非照射時と照射時では電流値に差が生じたことから、金属電極2の一方にコンタミネーションが生じた場合でも、測定感度を失うことなく、電流値の測定が可能であることが確認された。交流印加電極における電流の発生は、イオン電流のみでなく、金属電極2そのものがコンデンサとして働くことによっても生じる。そして、二つの交流印加された金属電極2のうち、一方の電極2にコンタミネーションが蓄積しても、他方の電極2でイオン化したVOCを捕捉可能であることから、測定感度の低下を防止できる。
【実施例2】
【0042】
実施例2には、図2の光イオン化検出器を使用した例を示す。
図5には、図2の光イオン化検出器を用いて、ノイズの有無を確認するために電流値の測定を行った結果を示す。
測定回路7(電流計)の代わりに抵抗Rを接続し、その抵抗Rの両端の電圧を計測する図2の光イオン化検出器の位相検波器10として、ロックインアンプ((株)エヌエフ回路設計ブロック製、5610B)を使用した以外は実施例1と同様の装置を使用した。
また、測定条件として、二つとも何も覆わない通常の金属電極2(平行平板電極、縦30mm、横30mm、厚さ0.1mm、電極間距離:1.6mm、材質:SUS304)を用いて、ロックインアンプ10の設定、測定条件を印加電圧の周波数280Hz、時定数1秒、バンドパスフィルタQ(中心周波数と帯域幅の比)=30とした。
【0043】
実施例1と同様に、測定試料として、トルエンガス40ppmを用い、測定試料にUVランプ励起回路5により励起したUVランプ4から波長117nmの紫外線を5分から15分(照射時間は10分間)照射した。また、交流印加回路3の印加電圧は10Vに設定し、ロックインアンプ10により抵抗R(10キロオーム)に生じる電流の信号を増幅して、該増幅された信号を電流値として測定した。更に増幅信号と交流印加回路3の波長との位相差(度)を測定した。
【0044】
UVランプ4の非照射時において、金属電極2に流れる電流の信号は、交流印加回路3を流れる電流の信号に対して、約90度の位相差がある。そこで、UVランプ4によってトルエンガスに紫外線を照射することで、前記90度からどの程度ずれるのか、すなわち90度からのずれ(Δφ)を測定した。
これら電流値及び位相差の測定は5秒間に1回行い、30秒間(6回分)の平均値をプロットした。
【0045】
図5では、検出された電流値(nA)を左側縦軸に示し、金属電極2の検出信号と交流印加回路3の波長との位相差(度)を右側縦軸に示した。なお、電流出力値(UVオフ)は白丸で示し、電流出力値(UVオン)は黒丸で示し、位相差(UVオフ)は白の三角で示し、位相差(UVオン)は黒の三角で示した。
図5から、UVランプの非照射時(0から5分、15分から20分)と照射時(5分から15分)で、検出された電流値のプロットがほぼ一直線上に横並びとなり、ノイズが生じることなく非照射時と照射時の電流値差が生じることが確認された。この電流値差はイオン電流と、金属電極2の電気容量変化の合計によるものである。UV照射時、金属電極2はコンデンサと抵抗の並列回路として機能するため、電流の位相は交流印加回路3の位相より0度以上90度未満の範囲で進んだものとなる。なお、UV非照射時は金属電極2が完全にコンデンサとして機能するため、電流の位相は交流印加回路3の位相よりも約90度進んだものとなる。
【0046】
図5から、UVランプの非照射時と照射時とでは、増幅された検出信号と交流印加回路3の波長との間に位相差(90度からのずれ)が生じることが分かり、ガスのイオン化を確認することができた。そして、UVランプの非照射時と照射時で、位相差を表すプロットがほぼ一直線上に横並びとなり、ノイズが生じることなく、測定可能であることも確認できた。
このように、図2の光イオン化検出器を用いた場合は、検出された電流値だけではなく、上記位相差によってもVOCを検知することができるため、直流印加回路13を用いた場合はもちろん、図1の光イオン化検出器を用いた場合に比べても、より正確にVOC濃度を測定することができる。
【0047】
そして、図6には、図2の光イオン化検出器を用いた場合のVOC濃度と電流値差との関係及びVOC濃度と上記位相差との関係を示す。
測定試料として、トルエンガス(4,40,100ppm)及びブタノールガス(40,100ppm)を用い、それぞれの測定試料にUVランプ励起回路5により励起したUVランプ4から波長117nmの紫外線を5分から10分(照射時間は10分間)照射した。また、交流印加回路3の印加電圧は10V、ロックインアンプ10の設定、測定条件を印加電圧の周波数280Hz、時定数1秒、バンドパスフィルタQ(中心周波数と帯域幅の比)=30とし、ロックインアンプ10により抵抗R(10キロオーム)に生じる電流の信号を増幅して、該増幅された信号を電流値として測定し、UV照射時と非照射時との電流値差を求め、該電流値差と各物質の濃度との関係(検量線)を表した。また、同時にロックインアンプ10により信号と交流印加回路3の波長との位相差(度)を測定し、UV照射時の位相差と各物質の濃度との関係(検量線)を表した。なお、電力値差は実線で示し、位相差は点線で示した。また、トルエンガスの電流出力値差は黒丸で示し、位相差(UVオン)は白丸で示し、ブタノールガスの電流出力値差は黒の三角で示し、位相差(UVオン)は白の三角で示した。
【0048】
図6から、各物質の濃度と電流出力値差及び位相差には比例関係があり、このように検量線を物質ごとに求めておけば未知の濃度を計測することが可能となる。
実際の計測器としては、演算器8により電流出力値と位相差に物質ごとの係数を乗じることで、VOC濃度を求めることができる。
【0049】
更に、図7には、図2の光イオン化検出器と図9の従来の光イオン化検出器を用いて、コンタミネーションによる直流電極と交流電極の感度差を比較した測定結果を示す。
実施例1と同様に、絶縁物のコンタミネーションが電極を覆うという条件を疑似的に作り出すため、二つの金属電極2(実施例1と同じ)のうち一方を絶縁フィルム(パラフィルム)で覆い、他方の電極2には何も覆わない通常の金属電極2を用いて、図2の光イオン化検出器と図9の従来の光イオン化検出器により、UV照射時間を5分から15分の10分間として各電流値(nA)を測定した。
【0050】
なお、測定回路7(電流計)の代わりに抵抗Rを接続し、その抵抗Rの両端の電圧を計測する図2の光イオン化検出器の位相検波器10として、ロックインアンプ((株)エヌエフ回路設計ブロック製、5610B)を使用した以外は実施例1と同様の装置を使用した。測定条件は印加電圧の周波数280Hz、時定数1秒、バンドパスフィルタQ=30として、電流値の測定は5秒間に1回行い、30秒間(6回分)の平均値をプロットした。
【0051】
図7により、UVランプ4の非照射時(0〜5分、15分から20分)と照射時(5分から15分)を比較すると、直流印加回路13を用いた場合(三角で示す)は、UVランプ4の非照射時と照射時では電流値に差が生じず、ほぼ電流値がゼロであり、金属電極2の一方にのみコンタミネーションが生じた場合でも、正確な電流値を測定することができなくなり、測定感度が低下することが確認された。
一方、交流印加回路3を用いた場合(黒丸で示す)は、UVランプ4の非照射時と照射時では電流値に差が生じたことから、金属電極2の一方にコンタミネーションが生じた場合でも、測定感度を失うことなく、電流値を測定が可能であることが確認された。交流印加電極における電流の発生は、イオン電流のみでなく、金属電極2そのものがコンデンサとして働くことによっても生じる。そして、二つの交流印加された金属電極2のうち、一方の電極2にコンタミネーションが蓄積しても、他方の電極2でイオン化したVOCを捕捉可能であることから、測定感度の低下を防止できる。
【0052】
また、図1の光イオン化検出器を用いた図4に示す場合(実施例1)に比べて、UVランプ4の照射時のプロットのバラツキが少なく安定しており、位相検波器10によってノイズが除去されることが確認された。
測定するVOCの種類や濃度によっては、イオン化による微小な信号がノイズに埋もれてしまうことがあるが、金属電極2に流れる電流又は電圧を位相検波器10により測定することで、ノイズを除去できる。したがって、高精度なVOCの濃度測定が可能となる。
【実施例3】
【0053】
実施例3には、図3の光イオン化検出器を使用した例を示す。
図8には、図3の光イオン化検出器を用いて、実施例2(図5)と同様にノイズの有無を確認するために電流値の測定を行った結果を示す。
測定条件として、金属電極2(平行平板電極、縦30mm、横30mm、厚さ0.1mm、電極間距離:0.8mm、材質:SUS304)に絶縁膜被覆電極11(二つの金属電極2の両方を絶縁フィルム(パラフィルム)で覆い、擬似的に両金属電極2に絶縁膜で覆うという条件を作り出した)を用いて、トルエンガス濃度を100ppmに、印加電圧の周波数を1kHzに変え、抵抗Rを5オーム、照射時間を5分間とした以外は、実施例2(図5)と同じ条件とした。
【0054】
測定試料として、トルエンガス100ppmを用い、測定試料にUVランプ4から波長117nmの紫外線を5分から10分間(照射時間は5分)照射した。また、交流印加回路3の印加電圧は10Vに設定し、ロックインアンプ10により抵抗R(5オーム)に生じる電流の信号を増幅して、該増幅された信号を電流値として測定し、更に増幅信号と交流印加回路3の波長との位相差(度)を測定した。
これら電流値及び位相差の測定は5秒間に1回行い、30秒間(6回分)の平均値をプロットした。
【0055】
実施例2の図5と同様に、検出された電流値を左側縦軸に示し、ロックインアンプ10により増幅された検出信号と交流印加回路3の波長との位相差を右側縦軸に示した。
図8に示したように、UVランプの非照射時(0から5分、10分から15分)と照射時(5分から10分)では、ほぼプロットが横並びとなり、UVランプ照射と非照射で出力差が生じることが確認され、絶縁膜被覆電極11を用いた電極でもVOC濃度が測定可能であることが確認できた。
【0056】
なお、電極2の両方に絶縁膜被覆を行った場合、イオン電流は発生せず、電極2の電気容量の変化のみによって出力が変わるためと考えられる。
また、交流印加回路3の場合は、金属電極2がコンデンサとして働くために金属電極2の電気容量が変わって検出信号と交流印加回路3の電源の波長とに位相差が生じて両者の位相がずれる。
【0057】
そして、図8からも、図5と同様に、UVランプの非照射時と照射時では、ロックインアンプ10により増幅された検出信号と交流印加回路3の波長との間に位相差が生じることが分かり、ガスのイオン化を確認することができた。
このように、交流印加した金属電極2は、イオン化ガスによる金属電極2の電気容量の変化を検知することが可能であるため、絶縁膜を被覆した場合でも、電気容量の変化によって電流値を測定できる。絶縁膜を被覆した絶縁膜部は、UV照射による活性物質の発生又は腐食性物質の混入による汚染から電極を防ぐため、電極の導体部にコンタミネーションが蓄積することがなく、長期間のメンテナンスフリーが可能となる。また、金属電極2を用いても電極の金属部は劣化しない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、VOC濃度の測定装置及び測定方法として、環境分野のみならず、工業分野においても利用可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1 検出室 2 金属電極
3 交流印加回路 4 UVランプ
5 UVランプ励起回路 7 測定回路
8 演算器 10 位相検波器(ロックインアンプ)
11 絶縁膜被覆電極 13 直流印加回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定流体中の揮発性有機化合物を検出する検出電極と、該検出電極に交流電圧又は交流電流を印加する印加手段と、前記測定流体中の揮発性有機化合物をイオン化するために測定流体に紫外線を照射するUVランプと、該UVランプを励起するための励起回路と、前記検出電極に流れる電流又は電圧を測定する測定手段とを有することを特徴とする揮発性有機化合物の光イオン化検出器。
【請求項2】
前記測定手段が、位相検波器であることを特徴とする請求項1記載の光イオン化検出器。
【請求項3】
前記検出電極が絶縁被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光イオン化検出器。
【請求項4】
測定流体中の揮発性有機化合物を検出するための検出電極に交流電圧又は交流電流を印加し、前記測定流体に紫外線を照射して測定流体中の揮発性有機化合物をイオン化させて、前記検出電極に流れる電流又は電圧を測定することを特徴とする揮発性有機化合物の光イオン化検出方法。
【請求項5】
前記検出電極に流れる電流又は電圧を位相検波により測定することを特徴とする請求項4記載の光イオン化検出方法。
【請求項6】
前記検出電極が絶縁被覆された電極を用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の光イオン化検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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