説明

光コネクタの組立方法

【課題】 SC型コネクタを相手と結合すると、フェルール20と14は押されて後退する。そのとき、従来の心線14は、剛性が大きいため曲がらなかったが、最近のように細くなると、曲がって、接続損失を増大させることがある。
【解決手段】 コネクタ組立に際して、心線14の先端にフェルール20を取り付け、ストップリング22とバネ24を装着した状態のコネクタを、ダミーコネクタ42と結合する。するとフェルール20と心線14はバネ24を圧縮しながら後退するので、この状態で、テンションメンバ16をストップリング22上に固着する。その後は従来どおり組み立てる。組立後、バネ24は徐々に復元し、フェルール20と心線14も所定位置に戻る。そのとき、心線14は引張歪をまた外被12は圧縮歪を内蔵する。相手コネクタと結合すると、心線14は、上記歪を解消しながら後退するため、心線14が細くても曲がりは生じない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、JIS5973にて規格化されている、いわゆるSCコネクタと言われるF04形単心光ファイバコネクタの組立方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2に、SCコネクタプラグの一例を模型的に示した。10は光コードで、12はその被覆、14は心線、16はテンションメンバである。20はセラミックのフェルール、22はストップリング、24はバネ、26はプラグフレーム、28と30はかしめリング、32はゴムフード、34はつまみ(コネクタハウジング)である。
【0003】[組立方法]上記構造のコネクタの組立方法を、図3について、簡単に述べる。この組立方法は、JISC5973(参考2)に記載された接続方法に準拠する。
■光ファイバコード10に、前もってフード32,かしめリング30,かしめリング28,ストップリング22,バネ24を通しておく(a)。
■光ファイバコード10の端末処理を行い、フェルール20を取り付ける(b)。 ケプラー繊維などのテンションメンバ16は外被12上には折り返しておく。
■バネ24,ストップリング22を所定位置に移動し、ストップリング22をプラグフレーム26に嵌挿する(c)。ここで、フェルール20は、バネ4により接続方向へ付勢されており、つば200がプラグフレーム26の縮径部260に突き当たって停止している状態になる。
■かしめリング28により、テンションメンバ16をストップリング22の後端部上に圧着固定する(d)。かしめによらず、接着による場合もある。
■かしめリング30により、外被12をかしめリング28の後端部上に圧着固定する(e)。
■フード32を所定位置に移動し、つまみ34を装着して終わる(f)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図4のように、相手のコネクタ40と結合したとき、フェルール20は押されて後退し、心線14も後退するが、心線14は剛性があるため、フェルールの後退分だけ心線14は外被12内に潜り込むようになり、フェルール近傍において、心線が極端に屈曲することはない。
【0005】しかし、心線14が細くなると、剛性も小さくなる。そのため、フェルール20が後退するとき、図5のように、心線14がフェルール近傍において極端に曲がるようになる。心線14が極端に曲がると、伝送損失が許容以上に増大する。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、光コネクタの組立に際し、図1に例示するように、・フェルール20を後退させかつバネ24を圧縮した状態において、・テンションメンバ16をストップリング22上に固着すること、を特徴とする。
【0007】フェルール20を接続位置から後退させかつバネ24を圧縮した状態を作る方法は、特に限定されないが、具体的には請求項2に記載のようにダミーコネクタ42と結合した状態にすると、作りやすい。
【0008】上記のようにフェルール20を後退させかつバネ24を圧縮した状態において、テンションメンバ16をストップリング22上に固着して組み立てる。なお、この際コードとストップリング22間において、テンションメンバ16には弛みがないようにして固定する。すなわち、ストップリングを含むハウジング全体が光コードの被覆側に弛みなく固定される。
【0009】ダミーコネクタを取り外し、フェルール20の後退を解除すると、フェルール20が前進するが、光コード内の光ファイバは被覆に接着されておらず、前進量も僅かであるので、当該前進量分の光ファイバは光コード内から引き出される。このようなコネクタが相手コネクタと結合すると、心線14は光コードに入り込むようにして、後退量が吸収される。そのために、心線14が細くても光ファイバフェルール近傍での極端な曲がりが生じない。
【0010】
【発明の実施の形態】図1について、具体的組立方法を述べる。
■光ファイバコード10にフード32,かしめリング30,かしめリング28,ストップリング22,バネ24を通しておく(a)。
■光ファイバコード10の端末処理を行い、光ファイバ素線にフェルール20を取り付ける(b)。テンションメンバ16は折り返しておく。
■バネ24,ストップリング22を所定位置に送り、プラグフレームに嵌挿してストップリング22をプラグフレーム26内に取り付ける(c)。ここまでは、従来の場合と同じである。
【0011】■上記まで組み立てた組立途中のコネクタに、コネクタ接続状態を作り出すためのダミーコネクタ42を結合する(d)。44はアダプタである。こうすると、上記のように、フェルール20と心線14はバネ24を圧縮しながら後退して、フェルール20のつば200とプラグフレーム26の縮径部260との間には間隙aが形成される。
■この状態で、かしめリング28により、テンションメンバ16をストップリング22の後端部上に圧着固定する(e)。
このとき、コードとストップリングに張られたテンションメンバ16には弛みがないようにするが、フェルール後退量と伝送損失の許容値に応じて多少の弛みを許容することもできる。
【0012】この後は、従来同様に、■かしめリング30により、外被12をかしめリング28の後端部上に圧着固定する(f)。
■フード32を所定位置に移動し、つまみ34を装着し、ダミーコネクタ42を取り外す。
■しばらくすると、上記のようにバネ24が伸び、フェルール20,心線14は所定位置に復元して、間隙aは解消する(g)。
【0013】
【発明の効果】コネクタ結合したとき、心線14が細くても曲がらない。そのため、局所的な曲げによる伝送損失の増大が回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組立方法を工程順に示す説明図。
【図2】本発明のコネクタと同種のコネクタの説明図(本発明の従来技術に共通)。
【図3】従来のコネクタの組立方法を工程順に示す説明図。
【符号の説明】
10 光ファイバコード
12 外被
14 心線
16 テンションメンバ
20 フェルール
200 つば
22 ストップリング
24 バネ
26 プラグフレーム
260 縮径部
28 かしめリング
30 かしめリング
32 ゴムフード
34 つまみ
40 相手コネクタ
42 ダミーコネクタ
44 アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光ファイバコード10の心線14の先端にフェルール20が取り付けられ、当該フェルール20の後半部を含む前記心線14の回りにストップリング22が装着され、前記ストップリング22とフェルール20はプラグフレーム26に嵌挿され、当該ストップリング22と前記フェルール20のつば200との間にバネ24が装着され、前記光ファイバコード10のテンションメンバ16が前記ストップリング22の上に固着されていて、相手のコネクタと結合したとき、当該相手コネクタに押されて前記フェルール20が後退しかつそのとき前記バネ24を圧縮するようになっている光コネクタの組立に際し、前記フェルール20を後退させかつ前記バネ24を圧縮した状態において、前記テンションメンバ16を前記ストップリング22上に固着することを特徴とする、光コネクタの組立方法。
【請求項2】 光ファイバコード10の心線14の先端にフェルール20が取り付けられ、当該フェルール20の後半部を含む前記心線14の回りにストップリング22が装着され、当該ストップリング22はプラグフレーム26に嵌挿され、当該ストップリング22と前記フェルール20のつば200との間にバネ24が装着された状態の組立途中のコネクタを、相手のコネクタと結合することにより、前記フェルール20を後退させかつ前記バネ24を圧縮した状態にすることを特徴とする、第1項記載の光コネクタの組立方法。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開平10−332975
【公開日】平成10年(1998)12月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−154566
【出願日】平成9年(1997)5月28日
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)