説明

光ディジタル/アナログ変換方法および光ディジタル/アナログ変換装置

【課題】光ディジタル信号を光のまま超高速で光アナログ信号に変換できる光ディジタル/アナログ変換方法および光ディジタル/アナログ変換装置を提供すること。
【解決手段】上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル信号を入力するとともに前記光ディジタル信号の波長と異なる波長を有する光パルス列を入力する光信号入力ステップと、非線形光学効果を用いて前記光ディジタル信号の光強度によって前記入力した光パルス列の光強度を制御することにより、前記光パルス列を前記光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力する光ディジタル/アナログ変換ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディジタル信号を超高速で光アナログ信号に変換する光ディジタル/アナログ変換方法および光ディジタル/アナログ変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から光ディジタル信号を光アナログ信号に変換する光ディジタル/アナログ変換装置が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された光ディジタル/アナログ変換装置は、光ディジタル信号をいったん電気信号に変換してからディジタル/アナログ変換を行い、その後電気信号を光アナログ信号に変換して出力するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−284274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような電気信号への変換を行う光ディジタル/アナログ変換装置の場合、動作速度がディジタル/アナログ変換を行う電子デバイスの応答速度に制限されるため、近年の超高速の光通信や電子計算機などにおける高速化に対する要求に応えることが難しくなってきている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ディジタル信号を光のまま超高速で光アナログ信号に変換できる光ディジタル/アナログ変換方法および光ディジタル/アナログ変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル信号を入力するとともに前記光ディジタル信号の波長と異なる波長を有する光パルス列を入力する光信号入力ステップと、非線形光学効果を用いて前記光ディジタル信号の光強度によって前記入力した光パルス列の光強度を制御することにより、前記光パルス列を前記光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力する光ディジタル/アナログ変換ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上記の発明において、前記光信号入力ステップは、前記光ディジタル信号の符号化の種類に応じて前記光ディジタル信号の光強度を調整する光強度調整ステップを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上記の発明において、前記光信号入力ステップは、前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応し該上位光ディジタル信号とは異なる波長を有する下位光ディジタル信号とを合成する光合成ステップを含み、前記光ディジタル/アナログ変換ステップは、光干渉計内に備えられた非線形光学媒質に前記合成した光ディジタル信号を入力して、前記光干渉計に入力した光パルス列の光強度を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上記の発明において、前記光ディジタル/アナログ変換ステップは、光干渉計内に備えられた非線形光学媒質に前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを互いに異なる経路を通るように入力して、前記光干渉計に入力した光パルス列の光強度を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上記の発明において、前記光干渉計は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法は、上記の発明において、前記光干渉計は、マハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル信号の入力受付を行う光信号入力部と、前記光ディジタル信号の波長と異なる波長を有する光パルス列を発生する光パルス列発生部と、非線形光学効果を用いて前記光ディジタル信号の光強度によって前記光パルス列の光強度を制御することにより、前記光パルス列を前記光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力する光ディジタル/アナログ変換器と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上記の発明において、前記光信号入力部は、前記光ディジタル信号の符号化の種類に応じて前記光ディジタル信号の光強度を調整する光強度調整器を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上記の発明において、前記光信号入力部は、前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応し該上位光ディジタル信号とは異なる波長を有する下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを合成する光合成器を備え、前記光ディジタル/アナログ変換器は、光入力端子と、光出力端子と、非線形光学媒質を含む光干渉計と、前記光入力端子から入力した前記光パルス列の光を2分岐し、該2分岐した光を、前記光干渉計内を互いに異なる経路で伝搬させた後に結合し、前記光出力端子から出力するように接続した1つ以上の光方向性結合器と、前記光干渉計内の前記非線形光学媒質に前記光合成器から出力される光ディジタル信号を入力する光合波器と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上記の発明において、前記光ディジタル/アナログ変換器は、光入力端子と、光出力端子と、1つ以上の非線形光学媒質を含む光干渉計と、前記光入力端子から入力した前記光パルス列の光を2分岐し、該2分岐した光を、前記光干渉計内を互いに異なる経路で伝搬させた後に結合し、前記光出力端子から出力するように接続した1つ以上の光方向性結合器と、前記光干渉計内の前記非線形光学媒質に前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを互いに異なる経路を通るように伝搬するように入力する2つの光合波器と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上記の発明において、前記光干渉計は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上記の発明において、前記光干渉計は、マハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超高速応答の可能な非線形光学効果を用い、上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル入力信号の光強度によって光パルス列の光強度を制御することで、光パルス列を光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力するので、光ディジタル信号を電気信号に変換せずに光のまま超高速で光アナログ信号に変換できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ディジタル/アナログ変換方法および光ディジタル/アナログ変換装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置の構成の概略を示すブロック図である。本実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置100は、上位ビットと下位ビットとからなる2ビットの2値の光ディジタル信号Sin1を入力すると、1シンボルの4値の光アナログ信号Sout1に変換して出力するものである。なお、光ディジタル信号Sin1の符号化の種類はグレイコードである。
【0021】
図1において、光ディジタル/アナログ変換装置100は、光信号入力部101と、光パルス列発生部102と、光ディジタル/アナログ変換器103とを有する。また、光信号入力部101は、光強度調整器105を備える。
【0022】
光信号入力部101は、2ビットの2値の光ディジタル信号Sin1の入力を受け付ける。光ディジタル信号Sin1は、時刻t1、t2、t3、t4においてそれぞれ3、2、1、0の値を有するアナログ情報がグレイコードで符号化されたものであり、上位ビットに対応する2値の上位光ディジタル信号Sin11と、下位ビットに対応する2値の下位光ディジタル信号Sin12とからなる。上位光ディジタル信号Sin11は、時刻t1、t2では所定の光強度を有し符号“1”が割り当てられ、時刻t3、t4では光強度が実質的に零であり符号“0”が割り当てられている。下位光ディジタル信号Sin12は、時刻t1、t4では光強度が実質的に零であり符号“0”が割り当てられ、時刻t2、t3では所定の光強度を有し符号“1”が割り当てられている。すなわち、光ディジタル信号Sin1は、時刻t1、t2、t3、t4において、それぞれ“10”、“11”、“01”、“00”の値を有する。上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12は同期しており、波長はそれぞれλ11、λ11´である。
【0023】
また、光信号入力部101に備えられた光強度調整器105は、符号化の種類に応じて上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度を調整し、光ディジタル/アナログ変換器103に出力する。
【0024】
一方、光パルス列発生部102は、波長がλ12であり、時刻t1〜t4で所定の光強度を有する光パルス列Sp1を発生し、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12と同期させて光ディジタル/アナログ変換器103に出力する。なお、波長λ11、λ11´と波長λ12とは異なる値を有する。
【0025】
光ディジタル/アナログ変換器103は、非線形光学効果を用いて上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度によって光パルス列Sp1の光強度を制御することにより、光パルス列Sp1を1ビットの4値の光アナログ信号Sout1に変換し、光ディジタル/アナログ変換装置100の外部に出力する。
【0026】
光アナログ信号Sout1は時刻t1、t2、t3、t4においてそれぞれ相対的に3、2、1、0の光強度を有する。すなわち、グレイコードで符号化された2ビットの2値の光ディジタル信号Sin1が、対応する1シンボルの4値の光アナログ信号Sout1に変換される。
【0027】
次に、本実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置100の詳細な構成を説明する。図2は、本実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置100の詳細な構成を説明するブロック図である。光信号入力部101は、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12からなる光ディジタル信号Sin1の入力を受け付ける。次に、偏波コントローラPC1は下位光ディジタル信号Sin12の偏波状態を調整し、さらに可変光減衰器VOAは下位光ディジタル信号Sin12を減衰して光強度を調整する。一方、偏波コントローラPC2は上位光ディジタル信号Sin11の偏波状態を調整する。そして、光合成器OC0は上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12を合成して合成光ディジタル信号Sin13とし、光増幅器OA1は合成光ディジタル信号Sin13を増幅して光強度を調整し、光ディジタル/アナログ変換器103に出力する。上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12は波長が互いに異なるので、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の位相がずれたときでも信号間の干渉が起こらず、合成光ディジタル信号Sin13の強度が不安定にならない。なお、光合成器OC0はたとえば3dBカプラなどである。
【0028】
一方、光パルス列発生部102は、パルス光源LS1から光パルス列Sp1を発生し、光ディレイラインODL1によって合成光ディジタル信号Sin13と同期するように光パルス列Sp1の位相を調整し、光ディジタル/アナログ変換器103に出力する。なお、この位相の調整は、合成光ディジタル信号Sin13の一部を分岐するためのモニタカプラを設け、分岐された光信号をモニタし、モニタの結果を光ディレイラインODL1に入力することによって行うことができる。
【0029】
光ディジタル/アナログ変換器103に入力した光パルス列Sp1は、光サーキュレータOCIR1を通って光干渉計である非線形光ループミラー104に入力する。非線形光ループミラー104は、光入力端子104aと、光出力端子104bと、非線形光学媒質である高非線形光ファイバHNLF1を含む光ファイバループ104cと、光入力端子104aから入力した光パルス列Sp1の光を2分岐し、2分岐した光を、光ファイバループ104c内を互いに異なる経路を通るように反対方向に伝搬させた後に結合し、光出力端子104bから出力するように接続した分岐比が1:1の光方向性結合器OC1と、光ファイバループ104c内の非線形光ファイバHNLF1に光合成器OC0から出力される合成光ディジタル信号Sin13を入力する光合波器OC2と、光ファイバループ内104cを伝搬する光の偏波状態を調整するための偏波コントローラPC4とを有する。
【0030】
非線形光ループミラー104は、高非線形光ファイバHNLF1において発生する非線形光学効果を用いて合成光ディジタル信号Sin13の光強度によって光パルス列Sp1の光強度を制御して1シンボルの4値の光アナログ信号に変換し、光出力端子104bから出力する。以下、非線形光ループミラー104の動作原理について図を用いて具体的に説明する。
【0031】
図3は、非線形光ループミラー104の動作原理を説明するブロック図である。波長がλ12であって光強度がPp1である光パルス列Sp1が光サーキュレータOCIR1を通って光入力端子104aに入力すると、光方向性結合器OC1によって光強度が1:1の光パルス列Sp11および光パルス列Sp12に2分岐され、光パルス列Sp11は光ファイバループ104c内を時計回りの方向d11に伝搬し、光パルス列Sp12は光ファイバループ103c内を反時計回りの方向d12に伝搬する。一方、波長がλ11、λ11´であって所定の光強度を有する合成光ディジタル信号Sin13は偏波コントローラPC3によって偏波状態が調整されて、光合波器OC2により光ファイバループ104c内に入力する。合成光ディジタル入力信号Sin13と光パルス列Sp11は同期しており、時間的に重ね合わせられて時計回りの方向d13から高非線形光ファイバHNLF1に入力する。
【0032】
高非線形光ファイバHNLF1は、光ファイバループ104cを構成する光ファイバよりも光学非線形性が高い光ファイバである。光パルス列Sp11は、高非線形光ファイバHNLF1を伝搬中に、時間的に重ね合わせられて伝搬する合成光ディジタル入力信号Sin13によって非線形光学効果である相互位相変調(Cross Phase Modulation:XPM)を受ける。その結果、光パルス列Sp11は光の位相が変化する。この位相の変化量をφ11、上位光ディジタル信号Sin11の光強度をPin1、下位光ディジタル信号Sin12の光強度をPin2、高非線形光ファイバHNLF1の非線形定数をγ、長さをLとすると、φ11はφ11=2AγLPin1+2BγLPin2で表される。2AγLPin1=φ1は、上位光ディジタル信号Sin11による位相の変化量であり、2BγLPin2=φ2は、下位光ディジタル信号Sin12による位相の変化量である。なお、A、Bは2/3より大きく2より小さい係数であり、Aは光パルス列Sp11と上位光ディジタル信号Sin11との偏波状態の関係により定まり、Bは光パルス列Sp11と下位光ディジタル信号Sin12との偏波状態の関係により定まる。本実施の形態1においては上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12はそれぞれ偏波コントローラPC1、PC2によって別々に偏波状態を調整することができるので、AおよびBが高い値となるように偏波コントローラPC1、PC2を調節して、より少ない光強度で効率よく位相を変化させることができる。
【0033】
一方、光パルス列Sp12は、反時計回りの方向d14から高非線形光ファイバHNLF1に入力するが、高非線形光ファイバHNLF1を伝搬中であっても反対方向に伝播する合成光ディジタル入力信号Sin13によってXPMを受けない。したがって光パルス列Sp12は光の位相はほとんど変化しない。すなわち、光パルス列Sp12の光の位相の変化量をφ12とするとφ12≒0である。
【0034】
高非線形光ファイバHNLF1を通過した光パルス列Sp11、Sp12は、光ファイバループ104c内を伝搬し、光方向性結合器OC1によって結合される。結合した光は光アナログ信号として光出力端子104bから出力される。光出力端子104bから出力される光アナログ信号Sout1の光強度をPout、位相シフト量をΔφ=φ11−φ12≒φ1+φ2とすると、光方向性結合器OC1の光結合の特性に従って、Pout=Pp1(1−cosΔφ)/2が成立する。φ1は上位光ディジタル信号Sin11の光強度であるPin1に比例し、φ2は下位光ディジタル入力信号Sin12の光強度であるPin2に比例するから、非線形光ループミラー104の入力光強度に対する出力光強度は、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度に応じて周期的に変化することになる。その結果、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度を調整して位相シフト量を所定値に設定することにより、非線形光ループミラー104から出力される光アナログ信号Sout1を、光ディジタル信号Sin1をディジタル/アナログ変換した信号とすることができる。
【0035】
次に、具体的な位相シフト量の設定について説明する。図4は、非線形光ループミラー104によってグレイコードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について、位相シフト量に対する光出力端子への出力光強度を示すグラフを用いて説明する図である。なお、このグラフでは位相シフト量は2πまで表示している。
【0036】
上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度を調整して、φ1=π、φ2=1.23となるようにしておくと、以下の特性が実現できる。すなわち、図4において、光ディジタル信号Sin1が“00”の場合、位相シフト量であるΔφは0であるから、出力光強度であるPoutは0である。また、“01”の場合は、Δφ=φ2=1.23となり、cos1.23=1/3であるから、Poutは(1/3)Pp1となる。また、“11”の場合は、Δφ=φ1+φ2=π+1.23となり、cos(π+1.23)=−1/3であるから、Poutは(2/3)Pp1となる。また、“10”の場合は、Δφ=φ1=πとなり、cosπ=−1であるから、PoutはPp1となる。すなわち、光ディジタル信号Sin1が“00”、“01”、“11”、“10”のときに、光アナログ信号Sout1の光強度はそれぞれ0、(1/3)Pp1、(2/3)Pp1、Pp1となり、相対的な光強度は0、1、2、3となるから、グレイコードの光ディジタル信号Sin1をディジタル/アナログ変換したものとなる。
【0037】
また、非線形光ループミラー104によって、2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換することもできる。図5は、非線形光ループミラー104によって2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について、位相シフト量に対する光出力端子への出力光強度を示すグラフを用いて説明する図である。上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度を調整して、φ1=π−1.23、φ2=1.23となるようにしておくと、以下の特性が実現できる。すなわち、図5において、光ディジタル信号Sin1が“00”の場合、位相シフト量であるΔφは0であるから、出力光強度であるPoutは0である。また、“01”の場合は、Δφ=φ2=1.23となり、cos1.23=1/3であるから、Poutは(1/3)Pp1となる。また、“10”の場合は、Δφ=φ1=π−1.23となり、cos(π−1.23)=−1/3であるから、Poutは(2/3)Pp1となる。また、“11”の場合は、Δφ=φ1+φ2=πとなり、cosπ=−1であるから、PoutはPp1となる。すなわち、光ディジタル信号Sin1が“00”、“01”、“10”、“11”のときに、光アナログ信号Sout1の光強度はそれぞれ0、(1/3)Pp1、(2/3)Pp1、Pp1となり、相対的な光強度は0、1、2、3となるから、2進コードの光ディジタル信号Sin1をディジタル/アナログ変換したものとなる。
【0038】
図4および5における位相シフト量に対する出力光強度を示すグラフは、いずれも非線形光ループミラー104の特性を示すものであり、構成を変更しなくても、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度を調整し、位相シフト量の設定を変更するだけで、いずれの符号化がされた光ディジタル信号であっても光ディジタル/アナログ変換を実現することができる。
【0039】
なお、高非線形光ファイバなどのガラス中で発生する非線形光学効果はフェムト秒オーダーの応答速度を持つため、周波数が数百〜数テラHz以上での動作が原理的に可能である。したがって、高非線形光ファイバHNLF1を有する非線形光ループミラー104は、今後の高速化の要求への対応が可能な超高速動作をするものとなる。
【0040】
次に、光ディジタル/アナログ変換器103は、光出力端子104bから出力された光アナログ信号Sout1を光バンドパスフィルタBPF1に入力し、光ディジタル/アナログ変換装置100の外部へと出力する。光バンドパスフィルタBPF1は、波長がλ12の光アナログ信号Sout1を透過するが、波長がλ11、λ11´の合成光ディジタル信号Sin13を透過しないので、光ディジタル/アナログ変換装置100の外部には合成光ディジタル信号Sin13が漏洩しない。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置100は、超高速応答の可能な非線形光学効果を用いて2ビットの2値の光ディジタル信号の光強度によって光パルス列の光強度を制御することにより、光パルス列を光ディジタル信号に対する1シンボルの4値の光アナログ信号に変換して出力するので、光信号を電気に変換せず光のまま超高速でアナログ/ディジタル変換を行うことができる。また、光ディジタル信号の光強度によって光パルス列の光強度を制御するので、光ディジタル信号の光強度を調整するのみで、符号化の種類がグレイコードと2進コードのいずれであっても構成を変更することなくディジタル/アナログ変換を行うことができる。さらに、光ディジタル/アナログ変換装置100は、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12間の位相を同期させる必要がないため、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12が異なる光源から出力されたものでも光伝送路を異なる経路で伝送したものでもディジタル/アナログ変換することができるので、応用範囲の広い光ディジタル/アナログ変換装置となる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る光ディジタル/アナログ変換装置について説明する。本実施の形態2に係る光ディジタル/アナログ変換装置は、上位および下位の光ディジタル信号を合成せずに別々に光ディジタル/アナログ変換器に入力する点が、実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置とは異なる。
【0043】
図6は、本実施の形態2に係る光ディジタル/アナログ変換装置の詳細な構成を説明するブロック図である。図6において、光ディジタル/アナログ変換装置200は、光信号入力部201と、光パルス列発生部202と、光ディジタル/アナログ変換器203とを有する。また、光信号入力部201は、光強度調整器205を備える。
【0044】
光信号入力部201は、実施の形態1における上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12と同様の特性を有する上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22からなる2ビットの2値の光ディジタル信号Sin2の入力を受け付ける。次に、光強度調整器205に備えられた光増幅器OA3は上位光ディジタル信号Sin21を増幅して光強度を調整し、光ディジタル/アナログ変換器203に出力する。また、光増幅器OA2は下位光ディジタル信号Sin22を増幅して光強度を調整し、光ディジタル/アナログ変換器203に出力する。
【0045】
一方、光パルス列発生部202は、パルス光源LS2から光パルス列Sp1と同様の特性を有する光パルス列Sp2を発生し、光ディジタル/アナログ変換器203に出力する。
【0046】
光ディジタル/アナログ変換器203に入力した光パルス列Sp2は、光サーキュレータOCIR2を通って光干渉計である非線形光ループミラー204に入力する。非線形光ループミラー204は、光入力端子204aと、光出力端子204bと、非線形光学媒質である高非線形光ファイバHNLF2を含む光ファイバループ204cと、光入力端子204aから入力した光パルス列Sp2の光を2分岐し、2分岐した光を、光ファイバループ204c内を互いに異なる経路を通るように反対方向に伝搬させた後に結合し、光出力端子204bから出力するように接続した分岐比が1:1の光方向性結合器OC3と、非線形光ファイバHNLF2の一端から下位光ディジタル信号Sin22を反時計回りの方向に伝搬するように入力させる光合波器OC5と、非線形光ファイバHNLF2のもう一端から上位光ディジタル信号Sin21を時計回りの方向に伝搬するように、つまり、下位光ディジタル信号Sin22とは異なる経路を通るように入力させる光合波器OC4と、光方向性結合器OC3によって2分岐した光パルス列Sp2のうち光ファイバループ204cを時計回りに伝搬する光パルス列と上位光ディジタル信号Sin21とが同期するように位相を調整するための光ディレイラインODL2と、2分岐した光パルス列Sp2のうち光ファイバループ204cを反時計回りに伝搬する光パルス列と下位光ディジタル信号Sin22とが同期するように位相を調整するための光ディレイラインODL3と、光ファイバループ204c内を伝搬する光の偏波状態を調整するための偏波コントローラPC7とを有する。また、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22は、光合波器OC4またはOC5に入力する前に、偏波コントローラPC5またはPC6により偏波状態が調整される。また、上記の位相の調整は、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の一部を分岐するためのモニタカプラを設け、分岐された光信号をモニタし、モニタの結果を光ディレイラインODL2またはODL3に入力することによって行うことができる。
【0047】
非線形光ループミラー204は、実施の態様1の場合と同様に、高非線形光ファイバHNLF2において発生する非線形光学効果を用いて上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度によって光パルス列Sp2の光強度を制御して1シンボルの4値の光アナログ信号に変換し、光出力端子204bから出力する。以下、非線形光ループミラー204の動作原理について図を用いて具体的に説明する。
【0048】
図7は、非線形光ループミラー204の動作原理を説明するブロック図である。波長がλ22であって光強度がPp2である光パルス列Sp2が光サーキュレータOCIR2を通って光入力端子204aに入力すると、光方向性結合器OC3によって光強度が1:1の光パルス列Sp21および光パルス列Sp22に2分岐され、光パルス列Sp21は光ファイバループ204c内を時計回りの方向d21に伝搬し、光パルス列Sp22は光ファイバループ204c内を反時計回りの方向d22に伝搬する。一方、波長がλ21であって所定の光強度を有する上位光ディジタル信号Sin21は偏波コントローラPC6によって偏波状態が調整されて、光合波器OC4により光ファイバループ204c内に入力する。上位光ディジタル信号Sin21と光パルス列Sp21とは光ディレイラインODL2によって同期しており、時間的に重ね合わせられて時計回りの方向d23から高非線形光ファイバHNLF2に入力する。他方、波長がλ21であって所定の光強度を有する下位光ディジタル信号Sin22は偏波コントローラPC5によって偏波状態が調整されて、光合波器OC5により光ファイバループ204c内に入力する。下位光ディジタル信号Sin22と光パルス列Sp22とは光ディレイラインODL3によって同期しており、時間的に重ね合わせられて反時計回りの方向d24から高非線形光ファイバHNLF2に入力する。
【0049】
光パルス列Sp21は、高非線形光ファイバHNLF2を伝搬中に上位光ディジタル信号Sin21によってXPMを受け、光パルス列Sp22は、高非線形光ファイバHNLF2を伝搬中に下位光ディジタル信号Sin22によってXPMを受ける。その結果、光パルス列Sp21および光パルス列Sp22は光の位相が変化する。この位相の変化量をそれぞれφ21、φ22、上位光ディジタル信号Sin21の光強度をPin1、下位光ディジタル信号Sin22の光強度をPin2、高非線形光ファイバHNLF2の非線形定数をγ、長さをLとすると、φ21はφ21=2AγLPin1=φ1、φ22はφ22=2BγLPin2=φ2で表される。なお、AおよびBは2/3より大きく2より小さい係数であり、Aは光パルス列Sp21と上位光ディジタル信号Sin21との偏波状態の関係により定まり、Bは光パルス列Sp22と下位光ディジタル信号Sin22との偏波状態の関係により定まる。本実施の形態2においても上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22はそれぞれ偏波コントローラPC6、PC5で別々に偏波状態を調整することができるので、AおよびBが高い値となるように偏波コントローラPC6、PC5とを調節して、より少ない光強度で効率よく位相を変化させることができる。
【0050】
次に、高非線形光ファイバHNLF2を通過した光パルス列Sp21、Sp22は、光ファイバループ204c内を伝搬し、光方向性結合器OC3によって結合される。結合した光は光アナログ信号として光出力端子204bから出力される。光出力端子204bから出力される光アナログ信号Sout2の光強度をPout、位相シフト量をΔφ=|φ21−φ22|=|φ1−φ2|とすると、実施の形態1の場合と同様に、Pout=Pp2(1−cosΔφ)/2が成立する。φ1は上位光ディジタル信号Sin21の光強度であるPin1に比例し、φ2は下位光ディジタル入力信号Sin22の光強度であるPin2に比例するから、非線形光ループミラー204の入力光強度に対する出力光強度は、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度に応じて周期的に変化することになる。その結果、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度を調整して位相シフト量を所定値に設定することにより、非線形光ループミラー204から出力される光アナログ信号Sout2を、光ディジタル信号Sin2をディジタル/アナログ変換した信号とすることができる。なお、実施の形態1においては位相シフト量がΔφ=φ1+φ2、つまりφ1とφ2との和で表されたが、本実施の形態2では、位相シフト量はΔφ=|φ1−φ2|、つまりφ1とφ2との差で表される点で異なる。
【0051】
次に、具体的な位相シフト量の設定について説明する。図8は、非線形光ループミラー204によってグレイコードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について、位相シフト量に対する光出力端子への出力光強度を示すグラフを用いて説明する図である。なお、このグラフでは位相シフト量は2πまで表示している。
【0052】
上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度を調整して、φ1=π、φ2=1.23となるようにしておくと、以下の特性が実現できる。すなわち、図8において、光ディジタル信号Sin2が“00”の場合、位相シフト量であるΔφは0であるから、出力光強度であるPoutは0である。また、“01”の場合は、Δφ=|−φ2|=1.23となり、cos1.23=1/3であるから、Poutは(1/3)Pp2となる。また、“11”の場合は、Δφ=|φ1−φ2|=π−1.23となり、cos(π−1.23)=−1/3であるから、Poutは(2/3)Pp2となる。また、“10”の場合は、Δφ=φ1=πとなり、cosπ=−1であるから、PoutはPp2となる。すなわち、光ディジタル信号Sin2が“00”、“01”、“11” 、“10”のときに、光アナログ信号Sout2の光強度はそれぞれ0、(1/3)Pp2、(2/3)Pp2、Pp2となり、相対的な光強度は0、1、2、3となるから、グレイコードの光ディジタル信号Sin2をディジタル/アナログ変換したものとなる。
【0053】
また、実施の形態1の場合と同様に、非線形光ループミラー204によって、2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換することもできる。図9は、非線形光ループミラー204によって2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について、位相シフト量に対する光出力端子への出力光強度を示すグラフを用いて説明する図である。上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度を調整して、φ1=π+1.23、φ2=1.23となるようにしておくと、以下の特性が実現できる。すなわち、図9において、光ディジタル信号Sin2が“00”の場合、位相シフト量であるΔφは0であるから、出力光強度であるPoutは0である。また、“01”の場合は、Δφ=|−φ2|=1.23となるから、Poutは(1/3)Pp2となる。また、“10”の場合は、Δφ=φ1=π+1.23となり、cos(π+1.23)=−1/3であるから、Poutは(2/3)Pp2となる。また、“11”の場合は、Δφ=|φ1−φ2|=πとなるから、PoutはPp2となる。すなわち、光ディジタル信号Sin2が“00”、“01”、“10”、“11”のときに、光アナログ信号Sout2の光強度はそれぞれ0、(1/3)Pp2、(2/3)Pp2、Pp2となり、相対的な光強度は0、1、2、3となるから、2進コードの光ディジタル信号Sin2をディジタル/アナログ変換したものとなる。
【0054】
実施の態様1の場合と同様に、図8および9における位相シフト量に対する出力光強度を示すグラフは、いずれも非線形光ループミラー204の特性を示すものであり、構成を変更しなくても、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度を調整し、位相シフト量の設定を変更するだけで、いずれの符号化がされた光ディジタル信号であっても光ディジタル/アナログ変換を実現することができる。
【0055】
次に、光ディジタル/アナログ変換器203は、光出力端子204bから出力された光アナログ信号Sout1を光バンドパスフィルタBPF2に入力し、光ディジタル/アナログ変換装置200の外部へと出力する。光バンドパスフィルタBPF2は、実施の態様1に係るバンドパスフィルタBPF1と同様の透過特性を有するので、光ディジタル/アナログ変換装置200の外部には上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22が漏洩しない。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態2に係る光ディジタル/アナログ変換装置200は、実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置100と同様に、2ビットの2値の光ディジタル信号を電気に変換せず光のまま超高速でアナログ/ディジタル変換を行うことができる。また、光ディジタル信号の光強度を調整するのみで、符号化の種類がグレイコードと2進コードのいずれであっても構成を変更することなくディジタル/アナログ変換を行うことができる。
【0057】
なお、実施の形態1、2における光ディジタル信号Sin1、Sin2は、遠方の送信ノードで符号化された後に所定の距離の光伝送路を伝送してから、中継ノードに備えた光ディジタル/アナログ変換装置100、200に入力するものでもよいし、所定の光パルス列を光ディジタル/アナログ変換装置100、200に入力する直前に変調器などで符号化して生成したものでもよい。また、光ディジタル/アナログ変換装置100、200の動作確認をする際には、たとえばモードロックした光ファイバリングレーザから出力される所望の繰返し周期を有する光パルス列に対して光時分割多重化装置を用いて繰り返しパターンを変換した後に2つに分波し、さらに分波した2つの光パルス列を別々の光ディレイラインを用いてタイミングをずらすことによって擬似的に符号化して生成した光ディジタル信号を用いることができる。たとえばこの光パルス列の波長は1560nm付近、パルス幅は3.1ps、繰り返し周期は10GHzである。
【0058】
また、実施の形態1、2に係る光ディジタル/アナログ変換装置100、200に備えたパルス光源LS1、LS2として、たとえば図10に示すものを用いることができる。図10は、パルス光源LS1の具体的構成の一例を示すブロック図である。このパルス光源LS1は、波長可変レーザ光源TLSと、偏波コントローラPC8、9と、3dBカプラなどの光合波器OC8と、高非線形光ファイバHNLF3と、光バンドパスフィルタBPF3と、光増幅器OA4と、光時分割多重化装置OMUXとを備える。
【0059】
このパルス光源LS1においては、波長可変レーザ光源TLSは波長がλcwの連続レーザ光Scwを発振し、偏波コントローラPC8は連続レーザ光Scwの偏波状態を調整する。光合波器OC8は、パルス光源LS1の外部に備えたファイバリングレーザFRLが出力する波長がλ11の光パルス列Sp0と連続レーザ光Scwとを合波し、高非線形光ファイバHNLF3に入力する。高非線形光ファイバHNLF3は、非線形光学効果である四光波混合によって波長がλ12であって光パルス列Sp0と同じ繰返し周期を有する光パルス列Sp1を発生する。したがって、高非線形光ファイバHNLF3から出力する光のスペクトルは波長λを横軸として図10に示すものとなる。このとき、λcw、λ11、λ12の間には、1/λ12=2/λ11−1/λcwの関係が成立し、λcwが1550nm、λ11が1560nmならば、λ12は1570nmである。その後、光バンドパスフィルタBPF3は高非線形光ファイバHNLF3から出力する光のうち波長がλ12の光パルス列Sp1のみを透過し、その他の波長の光は遮断する。そして、光増幅器OA4は光パルス列Sp1の光強度を増幅し、光時分割多重化装置OMUXは増幅した光パルス列Sp1を時分割多重して所望の繰り返し周波数とし、偏波コントローラPC9は時分割多重した光パルス列Sp1の偏波状態を調整して出力する。たとえば光パルス列Sp1のパルス幅は2.6ps、繰り返し周期は40GHzである。なお、上述のファイバリングレーザFRLを用いる代わりに、上位または下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の生成に用いる光ファイバリングレーザから出力する光パルス列の一部を分岐して光合波器OC8に入力すれば、光パルス列Sp1と上位または下位光ディジタル信号Sin11、Sin12との同期がとりやすくなるので好ましい。
【0060】
また、上述した実施の形態1、2では、いずれも光干渉計として非線形光ループミラーを用いて光ディジタル/アナログ変換器を実現しているが、これにかぎらず、各種の非線形光学効果を用いた光干渉計や光スイッチを用いてもよい。たとえば、非線形光媒質を含む導波路型マハツェンダ干渉計を用いて実現してもよいし、非線形光媒質を含む複屈折性光導波路と偏光子を組み合わせた光カーシャッターを用いて実現してもよい。
【0061】
図11は、実施の形態1の変形例として光ディジタル/アナログ変換器103において光干渉計として導波路型マハツェンダ干渉計110を用いた構成を説明するブロック図である。マハツェンダ干渉計110は、光入力端子110aと、光出力端子110bと、非線形光学媒質である高非線形光導波路部HNLWG1を含む光導波路110dと、光導波路110eと、光入力端子110aから入力した光パルス列Sp1の光を2分岐し、2分岐した光を、互いに異なる光導波路110d、110eを通るように伝搬させた後に結合し、光出力端子110bから出力するように接続した分岐比が1:1の光方向性結合器OC9、OC10と、光導波路110d内の高非線形光導波路部HNLWG1に合成光ディジタル信号Sin13を入力する光合波器OC11とを有する。
【0062】
導波路型マハツェンダ干渉計110は、光導波路110dを構成する導波路よりも光学非線形性が高い高非線形光導波路部HNLWG1において発生する非線形光学効果を用いて合成光ディジタル信号Sin13の光強度によって光パルス列Sp1の光強度を制御して、光パルス列Sp1を1シンボルの4値の光アナログ信号Sout1に変換し、光出力端子110bから出力する。
【0063】
導波路型マハツェンダ干渉計110の動作原理は非線形光ループミラー104とほぼ同様である。すなわち、光方向性結合器OC9が偏波コントローラPC10により偏波状態を調整した光パルス列Sp1を1:1に分岐する。そして導波路110dを伝搬する光パルス列は高非線形光導波路部HNLWG1において合成光ディジタル信号Sin13によってXPMを受けて光の位相が変化し、導波路110eを伝搬する光パルス列はXPMを受けずに光の位相が変化しない。その結果、方向性結合器OC10が2つの光パルス列を合波して出力する出力光強度は、上位および下位光ディジタル信号Sin11、Sin12の光強度に応じて周期的に変化することになる。なお、図10における光バンドパスフィルタBPF4は、図2における光バンドパスフィルタBPF1に対応する。
【0064】
図12は、実施の形態2の変形例として光ディジタル/アナログ変換器203において光干渉計として導波路型マハツェンダ干渉計210を用いた構成を説明するブロック図である。マハツェンダ干渉計210は、光入力端子210aと、光出力端子210bと、非線形光学媒質である高非線形光導波路部HNLWG2を含む光導波路210dと、非線形光学媒質である高非線形光導波路部HNLWG3を含む光導波路210eと、光入力端子210aから入力した光パルス列Sp2の光を2分岐し、2分岐した光を、互いに異なる光導波路210d、210eを通るように伝搬させた後に結合し、光出力端子210bから出力するように接続した分岐比が1:1の光方向性結合器OC12、OC13と、高非線形光導波路部HNLWG2に上位光ディジタル信号Sin21を入力する光合波器OC14と、高非線形光導波路部HNLWG3に下位光ディジタル信号Sin22を入力する光合波器OC15とを有する。
【0065】
導波路型マハツェンダ干渉計210は、光導波路210d、210eを構成する導波路よりも光学非線形性が高い高非線形光導波路部HNLWG2、HNLWG3において発生する非線形光学効果を用いて上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度によって光パルス列Sp2の光強度を制御して、光パルス列Sp2を1シンボルの4値の光アナログ信号Sout2に変換し、光出力端子210bから出力する。
【0066】
導波路型マハツェンダ干渉計210の動作原理は非線形光ループミラー204とほぼ同様である。すなわち、光方向性結合器OC12が偏波コントローラPC13により偏波状態を調整された光パルス列Sp2を1:1に分岐する。そして導波路210dを伝搬する光パルス列は、高非線形光導波路部HNLWG2において、偏波コントローラPC11により偏波状態を調整し光ディレイラインODL4によって光パルス列と同期した上位光ディジタル信号Sin21によってXPMを受けて光の位相が変化する。一方、導波路210eを伝搬する光パルス列は、高非線形光導波路部HNLWG3において、偏波コントローラPC12により偏波状態を調整し光ディレイラインODL5によって光パルス列と同期した下位光ディジタル信号Sin22によってXPMを受けて光の位相が変化する。その結果、方向性結合器OC13が2つの光パルス列を合波して出力する出力光強度は、上位および下位光ディジタル信号Sin21、Sin22の光強度に応じて周期的に変化することになる。なお、図11における光バンドパスフィルタBPF5は、図5における光バンドパスフィルタBPF2に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置の詳細な構成を説明するブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る非線形光ループミラーの動作原理を説明するブロック図である。
【図4】図3に示す非線形光ループミラーによってグレイコードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について説明する図である。
【図5】図3に示す非線形光ループミラーによって2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボル4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る光ディジタル/アナログ変換装置の詳細な構成を説明するブロック図である。
【図7】実施の形態2に係る非線形光ループミラーの動作原理を説明するブロック図である。
【図8】図7に示す非線形光ループミラーによってグレイコードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について説明する図である。
【図9】図7に示す非線形光ループミラーによって2進コードの2ビットの2値の光ディジタル信号を1シンボルの4値の光アナログ信号に変換する場合の位相シフト量の設定について説明する図である。
【図10】実施の形態1に係る光ディジタル/アナログ変換装置に備えたパルス光源の具体的構成の一例を示すブロック図である。
【図11】実施の形態1の変形例として光ディジタル/アナログ変換器において光干渉計として導波路型マハツェンダ干渉計を用いた構成を説明するブロック図である。
【図12】実施の形態2の変形例として光ディジタル/アナログ変換器において光干渉計として導波路型マハツェンダ干渉計を用いた構成を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
100、200 光ディジタル/アナログ変換装置
101、201 光信号入力部
102、202 光パルス列発生部
103、203 光ディジタル/アナログ変換器
104、204 非線形光ループミラー
104a、110a、204a、210a 光入力端子
104b、110b、204b、210b 光出力端子
104c、204c 光ファイバループ
105、205 光強度調整器
110、210 導波路型マハツェンダ干渉計
110d、110e、210d、210e 光導波路
BPF1〜5 光バンドパスフィルタ
FRL 光ファイバリングレーザ
HNLF1〜3 高非線形光ファイバ
HNLWG1〜3 高非線形光導波路部
LS1、2 パルス光源
OA1〜4 光増幅器
OC0 光合成器
OC1、OC3、OC9〜10、OC12〜13 光方向性結合器
OC2、OC4〜5、OC8、OC11、OC14〜15 光合波器
OCIR1、2 光サーキュレータ
ODL1〜5 光ディレイライン
OMUX 光時分割多重化装置
PC1〜13 偏波コントローラ
Sin1、Sin2 光ディジタル信号
Sin11、Sin21 上位光ディジタル信号
Sin12、Sin22 下位光ディジタル信号
Sin13 合成光ディジタル信号
Sout1、Sout2 光アナログ信号
Sp0〜Sp2 光パルス列
Scw 連続レーザ光
TLS 波長可変レーザ光源
VOA 可変光減衰器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル信号を入力するとともに前記光ディジタル信号の波長と異なる波長を有する光パルス列を入力する光信号入力ステップと、
非線形光学効果を用いて前記光ディジタル信号の光強度によって前記入力した光パルス列の光強度を制御することにより、前記光パルス列を前記光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力する光ディジタル/アナログ変換ステップと、を含むことを特徴とする光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項2】
前記光信号入力ステップは、前記光ディジタル信号の符号化の種類に応じて前記光ディジタル信号の光強度を調整する光強度調整ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項3】
前記光信号入力ステップは、前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応し該上位光ディジタル信号とは異なる波長を有する下位光ディジタル信号とを合成する光合成ステップを含み、
前記光ディジタル/アナログ変換ステップは、光干渉計内に備えられた非線形光学媒質に前記合成した光ディジタル信号を入力して、前記光干渉計に入力した光パルス列の光強度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項4】
前記光ディジタル/アナログ変換ステップは、光干渉計内に備えられた非線形光学媒質に前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを互いに異なる経路を通るように入力して、前記光干渉計に入力した光パルス列の光強度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項5】
前記光干渉計は、非線形光ループミラーであることを特徴とする請求項3または4に記載の光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項6】
前記光干渉計は、マハツェンダ干渉計であることを特徴とする請求項3または4に記載の光ディジタル/アナログ変換方法。
【請求項7】
上位ビットと下位ビットとからなり2値の光強度を有する光ディジタル信号の入力受付を行う光信号入力部と、
前記光ディジタル信号の波長と異なる波長を有する光パルス列を発生する光パルス列発生部と、
非線形光学効果を用いて前記光ディジタル信号の光強度によって前記光パルス列の光強度を制御することにより、前記光パルス列を前記光ディジタル信号に対応し1シンボルで4値の光強度を有する光アナログ信号に変換して出力する光ディジタル/アナログ変換器と、
を有することを特徴とする光ディジタル/アナログ変換装置。
【請求項8】
前記光信号入力部は、前記光ディジタル信号の符号化の種類に応じて前記光ディジタル信号の光強度を調整する光強度調整器を備えることを特徴とする請求項7に記載の光ディジタル/アナログ変換装置。
【請求項9】
前記光信号入力部は、前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応し該上位光ディジタル信号とは異なる波長を有する下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを合成する光合成器を備え、
前記光ディジタル/アナログ変換器は、
光入力端子と、
光出力端子と、
非線形光学媒質を含む光干渉計と、
前記光入力端子から入力した前記光パルス列の光を2分岐し、該2分岐した光を、前記光干渉計内を互いに異なる経路で伝搬させた後に結合し、前記光出力端子から出力するように接続した1つ以上の光方向性結合器と、
前記光干渉計内の前記非線形光学媒質に前記光合成器から出力される光ディジタル信号を入力する光合波器と、
を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の光ディジタル/アナログ変換装置。
【請求項10】
前記光ディジタル/アナログ変換器は、
光入力端子と、
光出力端子と、
1つ以上の非線形光学媒質を含む光干渉計と、
前記光入力端子から入力した前記光パルス列の光を2分岐し、該2分岐した光を、前記光干渉計内を互いに異なる経路で伝搬させた後に結合し、前記光出力端子から出力するように接続した1つ以上の光方向性結合器と、
前記光干渉計内の前記非線形光学媒質に前記光ディジタル信号の上位ビットに対応する上位光ディジタル信号と下位ビットに対応する下位光ディジタル信号とを互いに異なる経路を通るように伝搬するように入力する2つの光合波器と、
を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の光ディジタル/アナログ変換装置。
【請求項11】
前記光干渉計は、非線形光ループミラーであることを特徴とする請求項9または10に記載の光ディジタル/アナログ変換装置。
【請求項12】
前記光干渉計は、マハツェンダ干渉計であることを特徴とする請求項9または10に記載の光ディジタル/アナログ変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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