説明

光ディスク及び光ディスクカートリッジ

【課題】光ディスクを廃棄する際に簡便な手段で光ディスクの機密データを読み取り不能にできる光ディスクを提供する。
【解決手段】光学的に透明なバーストカッティングエリアを持つ光ディスクおいて、前記光ディスクの記録面と反対側のレーベル面の前記バーストカッティングエリアにバーストカッティング情報が付与されたBCAシールを貼り付けた光ディスクであり、前記BCAシールは、その中心部に前記光ディスクのセンター孔より大きい中心孔を持つ略ドーナッツ状の本体部とその本体部に接続されたつまみ部とからなり、前記光ディスクと接続するための前記中心孔の周囲を取り巻く第1の接着領域と、前記光ディスクと接続するための前記BCA最外部に設けられた第2の接着領域と、前記第1と第2の接着領域の間に前記バーストカッティング情報を持つバーストカッティング領域が設けられた請求項1に記載の光ディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が光学的に記録または再生される光ディスクに関し、より詳細には、廃棄処分する光ディスクの記録情報を読み取り不能とするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
安価で長期保存性の良い光ディスクは、その性質上アーカイブ用途に利用されている。特に医療や金融データなどの重要な文書の保存には、指紋や傷などの影響を受けないように、カートリッジで保護されたディスクが使用されている。一方、デジタル化されたデータは容易に複製できるため、堅固なセキュリティシステムが求められている。
【0003】
光ディスクに記録された主情報の機密を守るために様々な技術が考案されているが、その中にバーストカッティングエリア(BCA)の情報を利用した技術が、DVDやBDなどの光ディスクに広く用いられている。これは、ディスク毎に異なる情報が記録されたBCAの情報をスクランブルキーとしてディスクに記録された主情報の暗号を解くものである(例えば、特許文献1参照。)。一般には、ディスク内周の記録層の定められた位置にディスクの固有情報をレーザーで焼き付けてBCAとしている。より高品位のBCA信号を出力するために、BCA情報が記録されたカバーシートを記録媒体に粘着層で接着する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
このような、光ディスク等の記録媒体を廃棄する際には、記録された情報を読み取り不可能にする必要がある。これは、記録された情報には機密情報や個人情報が含まれていることが多いので、第三者が容易に読み取り、不正使用するのを避けるためである。
【0005】
そこで、廃棄する際には、ディスク自体を物理的に破壊する方法が知られている(例えば、特許文献3及び4参照。)。あるいは、ディスク上の記録層の一部を剥離させる方法(例えば、特許文献5参照。)、または光ディスク自体を分解する方法がある(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−196843号公報
【特許文献2】特開2006−252643号公報
【特許文献3】特開2003−217129号公報
【特許文献4】特開2004−039059号公報
【特許文献5】特開平11−134722号公報
【特許文献6】特開2000−030302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、光ディスクを丸ごと廃棄するには、特許文献3のような装置で物理的に破壊する必要があり、人の手で簡易に廃棄することが出来なかった。これは、光ディスクがカートリッジに格納された媒体では、さらに廃棄が複雑になる。すなわち、従来の方法では、光ディスクを廃棄する際に、簡便な手段で光ディスクの機密データを読み取り不能にすることが出来ないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、光ディスクを廃棄する際に簡便な手段で光ディスクの機密データを読み取り不能にできる光ディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光ディスク及び光ディスクカートリッジは、光学的に透明なバーストカッティングエリアを持つ光ディスクおいて、前記光ディスクの記録面と反対側のレーベル面の前記バーストカッティングエリアにバーストカッティング情報が付与されたBCAシールを貼り付けたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク及び光ディスクカートリッジによれば、光ディスクを廃棄する際に、簡便な手段で光ディスクのデータを読み取り不能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるBCAシールの全体図
【図2】本発明の実施の形態1におけるBCAシールの断面図
【図3】本発明の実施の形態1における光ディスクにBCAシールを貼り付けた断面図
【図4】本発明の実施の形態1における光ディスクをカートリッジに入れ、シャッターを開け光ディスクからシールを剥がす図
【図5】本発明の実施の形態2におけるBCAシールの全体図
【図6】本発明の実施の形態3におけるBCAシールの全体図
【図7】本発明の実施の形態4におけるBCAシールの全体図
【図8】本発明の実施の形態5におけるBCAシールの全体図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の光ディスクの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態におけるBCAシールの全体図を示す。BCAシール1の中心Oには、直径が光ディスクのセンター孔(後述の図3では9で示す。)の直径より大きい中心孔20が設けられている。BCAシール1は、光反射膜を持った樹脂製のシートが良い。BCAシール1の構造や材料の詳細は、図2で後述するが、本実施例では、約50μm厚のものを用いた。
【0014】
図1に示すハッチング領域は接着剤が塗布された接着領域であり、中心孔20の周囲に設けられた内側接着領域41とBCAシール1の外側接着領域42との2箇所、設けられている。この接着層に使用する接着剤は、BCAシール1と光ディスクの基材とを接着できるものであれば良く、基材がポリカーボネイトなのでアクリル系接着剤が良い。この接着剤を接着領域41と42に塗布する方法は、既存の塗布方法でよく、本実施例ではスクリーン印刷を用いた。
【0015】
2つの接着領域41と42との間には、バーコードの形で表したBCA情報8を環状に印刷する。この印刷方法は既存のものでよく、本実施例ではインクジェット工法を用いてBCA情報を印刷した。
【0016】
本発明のBCAシール1にはつまみ部2が、図1のように設けられている。また、つまみ部2に連携するように2つのミシン目31、32が設けられている。このミシン目31と32は、BCAシール1が光ディスクに接着されたとき、つまみ部2を引き上げることで、内側接着領域41と外側接着領域42とを残したままBCA情報8が印刷された部分を除くことが出来るように設けられている。環状の内側ミシン目31は内側接着領域41とBCA情報8との間に、外側ミシン目32はBCA情報8と外側接着層42との間に設けられている。外側ミシン目32は、つまみ部2と連携するように、つまみ部2の部分には設けられていない。ミシン目31と32のミシン孔は、つまみ部2を引き上げると無理なくBCA情報8部分が二つの接着領域と分離できる程度の直径と個数があれば良い。
【0017】
図2(a)は図1のA−A’の断面図を示す。本発明のBCAシール1は、樹脂製のベースシート5、金属からなる反射層6、カバーフィルム7からできている。ベースシート5上に反射層6をドライコーティングで形成し、その上にカバーフィルム7を接着剤で貼り付ける。BCA情報8はカバーフィルム7の上に印刷される。
【0018】
ここでBCA情報8は、レーザー光に対して非透過性の黒インクを用いてバーコードとして印刷される。黒インクが付加された部分はレーザー光を透過しない為、反射層6まで達せず十分な反射光は得られない。一方黒インクが付加されていない部分はレーザー光が反射層まで達するため十分な反射光が得られる。光ディスクドライブはがあらかじめ定めたスレッシュレベルに対し大きいか小さいかによってデジタルデータとして情報を得ることができる。
【0019】
接着層21および22はカバーフィルム7に付けられている。本実施例では、ベースシート5とカバーフィルム7には、厚み25μmのポリエチレンタフレート(PET)を使用し、アルミニウムを500Åの厚みで蒸着させ反射層6を作製した。図1に示した内側接着領域41と外側接着領域42に対応するのが、接着層21と22である。接着層21及び22には、アクリル系接着剤を厚み30μmになるように、スクリーン印刷にて塗布した。
【0020】
次に、図2(b)は図1のB−B’の断面図を示す。つまみ部2のカバーシート7には外側接着層22を設けていないことを示している。本実施例では、BCAシール1の寸法は内半径9.5mm、外半径29mm、とし、接着層は半径9.5mmから18mmと26mmから29mmに、BCA情報8は、20mmから24mmに付加した。つまみ部2の長さは12mmx20mmとした。
【0021】
以上のように作製されたBCAシール1は、光ディスクのレーベル面に貼り付けられる。この貼り付けは、光ディスクに予め確保されたBCA領域11にBCAシール1のBCA情報8が覆うように行う。このBCA領域11は記録面からのレーザー光を透過出来るように透明になっている。
【0022】
このようにしてBCAシール1を光ディスク13に貼り付けた断面図を図3に示す。先に説明した通り、光ディスクに予め確保されたBCA領域11にBCAシール1のBCA情報8が覆うためには、光ディスク13のセンター孔9の中心と図1のBCAシール1の中心孔20の中心とを一致させれば良い。ここでは、光ディスク13のセンター孔9は、半径7.5mmである。BCA領域11は、媒体の種類により設けられる場所が異なるが、例えば、Blu−rayディスクでは、半径21.0mmから22.2mmの範囲に設けるように定められている。
【0023】
光ディスク13に貼り付けたBCAシール1のBCA情報8を光ディスクドライブにて読み取るには、ピックアップ10をBCA領域11の下に移動させレーザーを発光し反射層6にフォーカスを合わせて再生する。BCAシール1の反射層6がレーベル面にあるため、NAが0.45の対物レンズで780nmレーザーを用いれば、BCAシール1のBCA情報8を読み取ることが出来る。
【0024】
BCA情報8は、メディアの種類、メディアメーカコード、シリアル番号などの情報が規定されている。これらの情報を組み合わせることで個々のディスク固有のデータを作り出し、ディスクに記録されている主情報の記録再生時の暗号復号の鍵として使用されている。そのため、BCA情報8を剥ぎ取られたディスクは、その主情報を再生することが出来なくなる。
【0025】
図4は、本発明のBCAシール1を貼った光ディスク13をカートリッジ12に入れた状態を示している。この光ディスク13を廃棄する場合には、図4のようにシャッター14を開き、BCAシール1のつまみ部2を紙面と垂直の方向に引っ張り上げる。つまみ部2には粘着層がないので簡単につまむことができる。BCAシール1のBCA情報8が印刷された箇所には接着層が設けられてなく、またミシン目31と32とが設けられているので、つまみ部2を引き上げるだけで、BCAシール1からBCA情報8が印刷された箇所のみを簡単に剥がすことができる。その結果、BCA情報8を剥ぎ取られた光ディスク13は、BCA情報を読み取ることができなくなるため、光ディスク13上に記録された主情報の暗号を復号することができなくなる。
【0026】
このように、本発明のBCAシールを光ディスクに貼り付けることで、光ディスクを廃棄する際に、BCAシールを剥ぐだけで、簡便に光ディスクの情報の読み取りを防止できる。これは、カートリッジに収納された光ディスクを廃棄する際に、特に有用となる。従来であれば、ディスクの情報を全消去するか、カートリッジごと物理的に粉砕するか、またはカートリッジから光ディスクを取り出して物理的に粉砕していたが、本発明であれば、BCAシールを剥ぐだけで良いからである。
(実施の形態2)
図5は本発明の第2の実施の形態におけるBCAシールの全体図である。実施の形態1と異なる点は、つまみ部2が内周側に位置することである。
【0027】
光ディスクを収納したカートリッジでは、光ディスクが静止したときのつまみ部2の位置は不定である。ところが、本実施の形態2では、つまみ部2を内周側に配置したので、カートリッジのシャッターを開ければ、即座につまみ部2をつかむことができる。
【0028】
本実施例では、BCAシール1の寸法は内半径15mm、外半径29mmとし、接着層は半径15mmから18mmと26mmから29mmに、つまみ部2の長さは6.6mmとした。
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態におけるBCAシールの全体図である。実施の形態1と異なる点は、つまみ部2を複数にしたことである。
【0029】
光ディスクを収納したカートリッジでは、光ディスクが静止したときのつまみ部2の位置は不定である。ところが、本実施の形態3では、つまみ部2を複数個付加したので、カートリッジのシャッターを開ければ、即座につまみ部2をつかむことができる。これは、特に、外側につまみ部2を設けたときに有用である。
【0030】
本実施例では、実施形態1につまみ部2を2個付加したものを(a)に、6個付加したものを(b)に示す。また、実施形態2につまみ部2を2個付加したものを(c)に、6個付加したものを(d)に示す。つまみ部2を複数設ける場合には、各つまみの位置を中心孔20の中心と点対称の位置に配置しなければならない。これは、ディスク回転時に重心の偏りに起因して振動を発生させないためである。
(実施の形態4)
図7は、本発明の第4の実施の形態におけるBCAシールの全体図である。実施の形態3と異なる点は、つまみ部2に隣接して孔15を設けたことである。
【0031】
この構成にすると、孔15により指がつまみ部2に入り易いため、つまみ部2がよりつかみ易くなる。また、孔15をBCAシール1の内部に設けることになり、BCAシール1の内周側全体を接着層で囲むことが出来る。そのため、ディスクへの接着力が増し、BCAシール1からBCA情報8を剥がす際に、BCA情報8のみを剥がし易くなる。
【0032】
本実施例では、BCAシールの寸法は内半径9.5mm、外半径29mm、とし、接着層は半径9.5mmから18mmと26mmから29mmに、孔は3.3mmx12.5mm、つまみ2は3.3mmx12.5mmとした。
(実施の形態5)
図8は、本発明の第5の実施の形態におけるBCAシールの全体図である。実施の形態4と異なる点は、ミシン目16を円弧状に設けたことである。
【0033】
ミシン目16を円弧状にすることで、つまみ部2を引き上げたときにミシン目3に誘導されBCAシールを一方向に回転しながら剥がせるようになる。本実施例では、実施形態4にミシン目16を円弧状にしたものを図8(a)に、つまみ部を6個付加したものを図8(b)に示す。また、外周部につまみ部2と孔15を2個ずつ付加したものを図8(c)に、6個ずつ付加したものを図8(d)に示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる光ディスク媒体は、簡易な手段で光ディスクの機密データを読み取り不能にすることができる機能を有し、医療や金融関連の保存義務のある機密データの保管媒体として有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 BCAシール
2 つまみ部
3 ミシン目
5 ベースシート
6 反射層
7 カバーフィルム
8 BCA情報
9 光ディスクのセンター孔
10 ピックアップ
11 光ディスクのBCA領域
12 カートリッジ
13 光ディスク
14 シャッター
15 孔
16 円弧状のミシン目
20 中心孔
21 内側接着層
22 外側接着層
31 内側ミシン目
32 外側ミシン目
41 内側接着領域
42 外側接着領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に透明なバーストカッティングエリアを持つ光ディスクおいて、
前記光ディスクの記録面と反対側のレーベル面の前記バーストカッティングエリアにバーストカッティング情報が付与されたBCAシールを貼り付けた光ディスク。
【請求項2】
前記BCAシールは、その中心部に前記光ディスクのセンター孔より大きい中心孔を持つ略ドーナッツ状の本体部とその本体部に接続されたつまみ部とからなり、
前記本体部には、前記光ディスクと接続するための前記中心孔の周囲を取り巻く第1の接着領域と、
前記光ディスクと接続するための前記BCA最外部に設けられた第2の接着領域と、
前記第1と第2の接着領域の間に前記バーストカッティング情報を持つバーストカッティング領域が設けられた請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
前記BCAシールは、樹脂からなるベースシートに光を反射する金属層を形成し、その
金属層の表面にカバーフィルムを貼り付け、そのカバーフィルム上に接着剤を塗布した請求項2に記載の光ディスク。
【請求項4】
前記バーストカッティング情報が、前記カバーフィルム層に形成された請求項3に記載の光ディスク。
【請求項5】
前記バーストカッティング領域と前記第1と第2の接着領域の間に、各々ミシン目が設けられた請求項2に記載の光ディスク。
【請求項6】
前記ミシン目が、円弧状を描いている請求項5に記載の光ディスク。
【請求項7】
前記つまみ部が、少なくとも一つ以上前記BCAシールの外側に設けられた請求項2に記載の光ディスク。
【請求項8】
前記つまみ部が複数のとき、各々のつまみ部は前記中心孔の中心に点対称の位置に配置されている請求項7に記載の光ディスク。
【請求項9】
前記つまみ部が、少なくとも一つ以上前記中心孔の内側に設けられた請求項2に記載の光ディスク。
【請求項10】
前記つまみ部が複数のとき、各々のつまみ部は前記中心孔の中心に点対称の位置に配置されている請求項9に記載の光ディスク。
【請求項11】
前記つまみ部が、少なくとも一つ以上前記中心孔と前記バーストカッティング領域との間に設けられ、そのつまみ部に隣接した孔を持つ請求項10に記載の光ディスク。
【請求項12】
前記つまみ部が複数のとき、各々のつまみ部は前記中心孔の中心に点対称の位置に配置されている請求項11に記載の光ディスク。
【請求項13】
光ディスクを収納した状態でこの光ディスクに情報を記録再生することのできるカートリッジに、請求項1から12に記載の光ディスクを格納した光ディスクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−192358(P2011−192358A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59064(P2010−59064)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】