説明

光ディスク検査装置及び検査方法

【課題】光ディスクの欠陥の有無を確実に検査する。
【解決手段】検出部52は、再生部50からの信号を用いて光ディスクの内周から外周に向けてRF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号からそれぞれ欠陥を検出する。欠陥検出時において、光学ヘッドをステッピングモータで半径方向に送り駆動するとともに、光学ヘッドの対物レンズを半径方向正弦波で振動させる。正弦波の振動振幅をステッピングモータの送り幅以上とすることで、送り幅より小さい欠陥も検出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク検査装置及び方法に関し、特にRF信号やトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等を用いた欠陥検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ディスクの欠陥の有無を検査する検査装置が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、光ディスクからの反射光に基づいて光ディスクの障害の有無を検出する技術が開示されている。
【0003】
図11に、この従来技術の構成を示す。従来技術の説明によれば、1はCD−Rディスク、2はディスク1を回転駆動するスピンドルモータ、3は該スピンドルモータ2の駆動制御を行うスピンドルサーボ回路、4はディスク1に照射するレーザービームを出射し、ディスク1により反射される反射ビームを受光する光検出器(図示せず)を有する光学ヘッド、5はディスク1に照射するレーザービームのフォーカシング制御及びトラッキング制御を行うと共に、送りモータ6を駆動して光学ヘッド4自体をディスク1の径方向に送るスレッド送り制御を行うヘッドサーボ回路、7はスピンドルサーボ回路3及びヘッドサーボ回路5を制御するサーボ制御回路、8は光学ヘッド4の光検出器からディスク1の記録信号であるRF信号を生成するべく光検出器を構成する特定の受光素子から得られる各受光出力を加算してメイン信号出力を生成するRF信号生成回路、9は該RF信号生成回路8により生成されるメイン信号出力のレベル検出をしてディスク1の反射光量を検出する反射光量検出回路としている。RF信号生成回路8により生成されるメイン信号出力は、前記反射光量検出回路9に供給される他にRF信号を2値化してそのデジタルデータを復号するメイン信号処理系の回路に供給される。
【0004】
また、10は送りモータ6の回転に伴う検出出力を発生するセンサ、11は光学ヘッド4のディスク1の最内周側における初期設定位置を検出するためのスイッチ、12は該スイッチ11が切り換えられる位置を基点として前記センサ10の検出出力により光学ヘッド4のディスク1の径方向における変位量を検出する変位量検出回路、13は反射光量検出回路9からの検出出力及び変位量検出回路12からの検出出力を後述するホストとなるパソコンAにより解釈が可能なデジタルデータとして作成するデータ作成回路、14はパソコンAとの整合を行うインタフェースとしている。
【0005】
また、ホストとなるパソコンAには、接続端子16に接続される外部記憶装置に対して要求するコマンドを発生するコマンド発生手段17と、外部記憶装置との整合を行うインタフェース18が備えられている。コマンド発生手段17は、ディスク1を駆動する回転速度、反射光量検出回路9及び変位量検出回路12による検出タイミング、及び光学ヘッド4によるディスク1のスレッド送り速度の各検査条件をそれぞれ設定するコマンドを発生し、その各検査条件は設定手段19により設定され、キーボード等の入力手段20により任意に変更できるようにしている。また、パソコンAには、データ作成回路13により作成されたデジタルデータから反射光量検出回路9により得られた検出出力の反射光量情報、及び変位量検出回路12により得られた検出出力のディスク位置情報をそれぞれ反射光量データ及び位置データとして抽出するデータ抽出手段21と、該データ抽出手段21により抽出される反射光量データからディスク1の障害を判断するディスク障害判断手段22と、該データ抽出手段21により抽出される位置データ及びディスク1が駆動される回転速度を考慮してディスク位置を検出する位置検出手段23と、ディスク障害判断手段22による判断出力及び位置検出手段23によるディスク位置検出出力に応じてパソコンAに接続されるディスプレイ25を制御する表示制御手段24とが備えられているとしている。位置検出手段23は、入力される位置データにより前記ディスク障害判断手段22によるディスク障害の判断が行われる反射光量データを取り込んだディスク1の径方向におけるディスク位置を検出すると共に、ディスク1が駆動される回転速度を算出してその回転速度から前記反射光量データを取り込んだディスク1の回転方向におけるディスク位置を検出する。ディスク障害判断手段22は、ディスク1を正常状態と判断できる反射光量の正常レベル範囲の平均レベルとしてあらかじめ基準光量レベルデータが設定され、入力される反射光量データをその基準光量レベルデータと比較し、その比較によるレベル差がディスク1を正常状態と判断できる反射光量の正常レベル範囲を外れることを検出してディスク1の障害を判断する。そして、ディスク障害判断手段22は、前記位置検出手段23により検出されるディスク位置データを取り込んで障害と判断された時点におけるディスク位置を検出して障害箇所を特定する。27はパソコンAから発生されたコマンドの解釈を行うコマンド解釈回路、28は該コマンド解釈回路27により解釈されたコマンドに応じて光学ヘッド4によるディスクのトレース位置を変位させるアクセス動作を制御するアクセス制御回路としている。
【0006】
さらに、特許文献2、3、4にも欠陥を検出する技術が開示されている。例えば、特許文献4には、ディスク表面を検査するための浮上型ヘッドに、振動検出素子と対物レンズを搭載し、振動検出素子により検出されるディスク表面上の振動と、対物レンズを通して照射される光の反射光強度の減少という、検出原理を異にする2つの検出方法でディスク上の欠陥を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−86286号公報
【特許文献2】特開昭63−168837号公報
【特許文献3】特開2008−165846号公報
【特許文献4】特開2001−41901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスクレンタル店などにおいては、迅速かつ確実に光ディスクの欠陥の有無を検出することが要請されるとともに、光ディスクをレンタルして再生するユーザが種々の光ディスク装置を用いて再生することを考慮すると、たとえ再生条件が望ましい条件に設定されていない光ディスク装置であっても再生可能なことを保証できる程度に光ディスクの欠陥の有無を検査することが望まれる。例えば、光ディスクに傷の欠陥が発見された場合、ある光ディスク装置ではその欠陥により再生不能となるが、別の光ディスク装置ではその欠陥の存在にもかかわらずサーボゲイン等がたまたま好条件に設定されているため再生可能であったとする。この光ディスクをレンタルするユーザが後者の光ディスク装置で再生するとは限らないから、このような光ディスクは結果として欠陥のある光ディスクであって使用不可(NG)と判別しなければならないであろう。
【0009】
一方、光ディスクの欠陥を検出する際には、一般にステッピングモータを用いて光ピックアップを光ディスクの半径方向に駆動して欠陥の有無を検出するが、光ピックアップを駆動するためのステッピングモータの送りピッチは比較的粗く、このピッチよりも細かい欠陥を検出することができないおそれがある。
【0010】
例えば、ステッピングモータが20極で、各極あたり16マイクロステップで制御されており、ステッピングモータとスレッドを連結しているスクリューのピッチが2mmであるとすると、ピッチ=2mm/20/16=6.25μmとなる。これに対し、例えばDVD−ROMのトラックピッチは0.74μmなので、トラック8本を覆い隠す程度の欠陥であっても欠陥を検出できないおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、光ディスクの欠陥の有無を確実に検査できる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光ディスクの欠陥を検査する光ディスク検査装置であって、光学ヘッドを光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、前記光学ヘッドで得られる光ディスクの再生信号から前記欠陥を検出する欠陥検出手段とを有し、前記駆動手段は、前記光学ヘッドを所定の送り幅で前記半径方向に駆動するとともに、前記光学ヘッドの対物レンズを前記半径方向に振動させることを特徴とする。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、前記駆動手段は、前記振動の振幅を前記送り幅以上に設定する。
【0014】
また、本発明の他の実施形態では、さらに、検出された前記欠陥の位置を記憶する記憶手段と、前記欠陥の位置において、再生条件を劣化させて前記光ディスクからデータを再生してエラーレートを検出するエラーレート検出手段とを有する。
【0015】
また、本発明は、光ディスクの欠陥を検査する光ディスク検査方法であって、光学ヘッドを光ディスクの半径方向に駆動するステップと、前記光学ヘッドで得られる光ディスクの再生信号から前記欠陥を検出するステップとを有し、前記駆動するステップでは、前記光学ヘッドを所定の送り幅で前記半径方向に駆動するとともに、前記光学ヘッドの対物レンズを前記半径方向に振動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光ディスクの欠陥の有無を確実に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の構成ブロック図である。
【図2】実施形態の対物レンズ駆動部の構成図である。
【図3】RF欠陥部の回路構成図である。
【図4】FE欠陥部の回路構成図である。
【図5】TE欠陥部の回路構成図である。
【図6】欠陥と対物レンズの軌跡(正弦波信号の重畳なし)との関係を示す説明図である。
【図7】欠陥と対物レンズの軌跡(正弦波信号の重畳あり)との関係を示す説明図である。
【図8】欠陥と対物レンズの軌跡(振幅H<送り幅W)との関係を示す説明図である。
【図9】欠陥と対物レンズの軌跡(振幅H>送り幅W)との関係を示す説明図である。
【図10】欠陥部における再生を示すタイミングチャートである。
【図11】従来装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に、本実施形態における光ディスク検査装置の機能ブロック図を示す。再生部50は、図11におけるスピンドルモータ2や光学ヘッド4、送りモータ6、サーボ制御回路7、RF信号生成回路8、センサ10等を備え、光ディスクにレーザ光を照射してその反射光を受光して再生信号を得る。そして、再生信号からさらにRF信号を生成する。また、再生信号からトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号を生成し、これらのエラー信号に基づいてサーボ制御部7にてフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実行する。RF信号生成回路8には、RF信号の所定周波数成分、例えば3T(Tは基準クロック周期)信号を所定量だけブーストするイコライザ(EQ)が設けられる。図では、再生部50の代表部材として、イコライザ(EQ)、フォーカスサーボ部、トラッキングサーボ部を示す。再生部50において生成されるRF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号は、検出部52に供給される。
【0020】
検出部52は、RF信号の欠陥の有無を検出するRF欠陥部、トラッキングエラー(TE)信号の欠陥の有無を検出するTE欠陥部、フォーカスエラー(FE)信号の欠陥の有無を検出するFE欠陥部、及び再生信号のエラーレートを検出するエラーレート検出部を有する。各欠陥部及び検出部の検出結果はCPU54に供給される。
【0021】
CPU54は、例えば図11におけるパソコンAのCPUとして構成される。また、光ディスク装置内のCPUで構成してもよい。すなわち、図1の構成ブロック図が全て光ディスク装置内に設けられていてもよい。CPU54は、各欠陥部からの欠陥信号に基づいて、検査対象である光ディスクの欠陥候補の位置をメモリ56に順次記憶する。すなわち、RF信号の欠陥位置、FE信号の欠陥位置、TE信号の欠陥位置をそれぞれ個別にメモリ56に記憶する。
【0022】
具体的な手順は以下のとおりである。まず、検査対象の光ディスクを再生部50にセットし、各種パラメータの調整を行った後にフォーカスサーボ及びトラッキングサーボをONにする。次に、ステッピングモータ等の送りモータ6を用いて光学ヘッド4を光ディスクの最内周に移動する。最内周とは、より正確にはデータ再生を行うべき領域のうちの最も内側のトラックであり、RF信号やTE信号が得られる領域である。データ再生を行うべき最も内側のトラックの半径位置をrin、データ再生を行うべき最も外側のトラックの半径位置をroutとする。光学ヘッド4をrinの位置に移動した後、トラッキングサーボをOFFにする。このときのTE信号は、オープンエラーが生じている状態であり、また、RF信号はトラック横断に同期して振幅が変化する状態となる。この状態のまま、送りモータ6を用いて光学ヘッド4をroutの位置まで移動する。光学ヘッド4が移動するに従い、RF信号、TE信号、FE信号は順次変化していき、光ディスクに欠陥があればその位置においてそれぞれRF信号、TE信号、FE信号のいずれか、あるいはこれらの信号の複数に異常が生じることになる。この異常を各欠陥部で検出する。そして、検出した半径位置をメモリ56に記憶する。
【0023】
また、CPU54は、RF信号、TE信号、FE信号の欠陥位置をそれぞれメモリ56に記憶した後、光ディスクを再び再生してメモリ56に記憶されたこれらの欠陥位置に光学ヘッド4を移動し、再生条件を変化させて再生する。CPU54は、これらの欠陥位置がRF信号、FE信号、TE信号のいずれの欠陥であるかを判別し、欠陥位置における信号の種類に応じて再生条件を一時的に変化させる。例えば、イコライザ(EQ)のブースト量(Q値)を変化させる、フォーカスサーボのゲインを変化させる、トラッキングサーボのゲインを変化させる等である。但し、本実施形態においては、CPU54は、欠陥位置において再生条件を劣化させるように変化させる。例えば、イコライザ(EQ)に関しては、通常再生時の3T信号のブースト量がA(dB)である場合、これよりも小さいブースト量Bに一時的に設定して欠陥位置を再生する。また、トラッキングサーボ及びフォーカスサーボに関しては、通常再生時のゲイン量よりも大きいゲイン量に一時的に設定して欠陥位置を再生する。そして、このように再生条件を劣化させて欠陥位置を再生したときのエラーレートを検出し、検出エラーレートが規定値以下であるか否かを判定する。このように再生条件を劣化させるのは、ユーザ側の光ディスク装置は種々であり、その中には再生条件が必ずしも適当でない光ディスク装置も想定され得るため、再生条件を劣化させてこのような光ディスク装置で再生したと想定した場合の欠陥の影響を評価するためである。再生条件を劣化させて得られたエラーレートが規定値以下と少ない場合には、ユーザ側の任意の光ディスク装置でも同様に問題なく再生できるとして欠陥はない(OK)と判定する。一方、再生条件を劣化させて得られたエラーレートが規定値より大きい場合には、ユーザ側の任意の光ディスクでも同様に再生時に問題が生じるとして欠陥がある(NG)と判定する。OK/NGの判定結果は、例えば図11と同様にパソコンAのディスプレイ25に表示する。あるいは、光ディスク装置に設けられたLEDを点灯、点滅する等によりOK/NGを表示してもよい。
【0024】
図2に、本実施形態における光学ヘッド4の主要部を示す。光学ヘッド4は対物レンズ46を備え、この対物レンズ46で図示しない半導体レーザから照射されたレーザ光を光ディスク1に集光する。対物レンズ46は、アクチュエータドライバ42及びトラッキングコイル44により光ディスク1の半径方向に駆動される。アクチュエータドライバ42は、通常、トラッキングサーボ回路(図11におけるヘッドサーボ5及びサーボ制御7)からのトラッキングサーボ信号に基づいてトラッキングコイル44を駆動するが、欠陥を検出する際にはトラッキングサーボをOFFとし、対物レンズ46を半径方向に振動させる。すなわち、光学ヘッド4を送りモータ6で所定の送り幅で半径方向に送り駆動するとともに、光学ヘッド4の対物レンズ46を半径方向に振動させる。アクチュエータドライバ42は、基準電圧Refに正弦波発生器40からの所定周波数の正弦波信号を重畳してトラッキングコイル44を駆動する。図2に、基準電圧Refに正弦波信号を重畳したときのトラッキングコイル44への駆動信号波形を示す。この駆動信号により、対物レンズ46は基準電圧Refを中心に正弦波状に振動する。
【0025】
正弦波発生器40は別個設けてもよいが、ヘッドサーボ5あるいはサーボ制御部7にはサーボ回路の特性をチェックするために外乱を印加するブロックがある。このブロック内の信号発生器をそのまま援用するのが好適である。正弦波発生器40からの正弦波の周波数及び振幅についてはさらに後述する。
【0026】
図3に、検出部52におけるRF欠陥部の構成を示す。再生部50で得られたRF信号はLPF60で高周波ノイズが除去された後、ピーク検波器62及びボトム検波器64に供給される。ピーク検波器62及びボトム検波器64は、それぞれRF信号のピーク値及びボトム値を検波して差動アンプ66に供給する。
【0027】
差動アンプ66は、ピーク検波器62からのピーク検波信号及びボトム検波器64からのボトム検波信号を入力し、これらの信号の差分を演算してVRF信号を生成する。VRF信号は、コンパレータ70に供給される。
【0028】
コンパレータ70は、VRF信号としきい値(Vref+Vth)68とを大小比較することでRF信号の欠陥部検出信号を生成する。
【0029】
図4に、検出部52におけるFE欠陥部の構成を示す。再生部50で得られたFE信号はLPF72で高周波ノイズが除去された後、コンパレータ74、76にそれぞれ供給される。
【0030】
コンパレータ74は、FE信号のプラス側としきい値(Vref+Vth)78を大小比較する。また、コンパレータ76は、FE信号のマイナス側としきい値(Vref−Vth)80を大小比較する。それぞれの比較結果を示す信号はORゲート82に供給される。
【0031】
図5に、検出部52におけるTE欠陥部の構成を示す。再生部50で得られたTE信号は、微分アンプ84で微分波形に変換されてゼロクロスコンパレータ86に供給される。ゼロクロスコンパレータ86は、微分信号としきい値88を大小比較する。F−V変換回路90は、ゼロクロスコンパレータ86からのゼロクロス信号の周波数を電圧信号に変換して出力する。高周波成分において電圧値が高くなる。
【0032】
コンパレータ92は、F−V変換回路90からの電圧信号としきい値(Vref+Vth)94を大小比較してTE信号の欠陥部検出信号として出力する。電圧がしきい値以上で高くなるタイミングで欠陥部検出信号のレベルがLowからHiに変化する。
【0033】
以上のようにしてRF、TE、FE各信号の欠陥部を検出し、その位置がメモリ56に格納される。本実施形態では、光学ヘッド4の対物レンズ46を正弦波状に振動させているので、送りモータ6の送りピッチよりも細かい欠陥を検出することが可能である。
【0034】
図6に、光学ヘッド4の対物レンズ46を一定の基準電圧Refで半径方向に送り駆動したときの軌跡200を示す。既述したとおり、例えば、送りモータ6のステッピングモータが20極で、各極あたり16マイクロステップで制御されており、ステッピングモータとスレッドを連結しているスクリューのピッチが2mmであるとすると、ピッチ(送り幅)W=2mm/20/16=6.25μmとなる。したがって、このピッチ(送り幅)Wより小さい欠陥100が存在する場合には、この欠陥100を検出できない。
【0035】
一方、図7に、基準電圧Refに正弦波信号を重畳して半径方向に送り駆動したときの軌跡300を示す。図において、破線は図6に示す軌跡200である。対物レンズ46は正弦波状に振動するため、欠陥100はその軌跡300上に存在する確率が高くなり、欠陥100を検出し得る。駆動正弦波の周波数は、高ければ高い程、細かな欠陥100を検出することが可能であるが、アクチュエータドライバ42の電気的、機械的特性により、通常、20KHz程度が上限となる。また、駆動正弦波の振幅は、送りモータ6の送り幅W以上とするのが好適である。
【0036】
図8及び図9に、欠陥100と光学ヘッド4の対物レンズ46の軌跡300の関係を模式的に示す。図8は、駆動正弦波の振幅Hが送りモータ6の送り幅Wよりも小さい場合であり、図9は、駆動正弦波の振幅Hが送りモータ6の送り幅Wよりも大きい場合である。図8、図9において、駆動正弦波の1周期幅Tは同一、つまり駆動正弦波の周波数は同一である。図8では欠陥100を検出することはできないが、図9では欠陥100が軌跡300上に存在するため欠陥100を検出することができる。具体的には以下のとおりである。駆動正弦波周波数が20KHz、振幅H=送り幅W、光ディスク1の回転数が2400rpm、光学ヘッド4の半径位置が40mmのとき、
スピンドルモータの回転周波数=2400/60=40Hz、
軌跡円の円周=2×π×40mm=251mm、
周期幅T=251mm×40Hz/20KHz=0.50mm
となる。したがって、少なくとも0.5mm長程度の欠陥100は検出することができる。回転数を小さくすれば、周期幅Tはそれだけ小さくなり、検出できる欠陥100の長さも小さくなる。駆動正弦波周波数を大きくする代わりに回転数を小さくすることで、同様の効果を得ることができる。
【0037】
以上のようにして、検査対象の光ディスクの最内周から最外周まで欠陥を検出した後、再度光学ヘッド4を最内周まで移動し、メモリ56に記憶された欠陥位置でデータを再生してそのエラーレートを検査する。
【0038】
図10に、RF信号、TE信号、FE信号の各欠陥部における再生条件を示す。各欠陥部において、その欠陥部の信号の種類に応じて再生条件を意図的に「劣化」させる。図10(a)に、FE信号の欠陥部を示し、図10(b)に、RF信号の欠陥部を示し、図10(c)に、TE信号の欠陥部を示す。各図において、矢印の部分に各信号の欠陥部が存在していることを示す。また、図10(d)に、再生エラーレート検査を行う範囲と、各欠陥部に応じた再生条件の劣化を示す。FE信号の欠陥部が存在する場合、フォーカスサーボゲインを一時的に増大させて再生する。例えば、FE信号の欠陥部が存在する場合、その位置の前後1mmにわたってフォーカスサーボゲインを所定量あるいは所定比率だけ増大させる。フォーカスサーボゲインを増大させることは、傷などの欠陥があればそれに追従しようとしてフォーカス位置が大きく変動することを意味する。また、RF信号の欠陥部が存在する場合、RF信号の3T成分をブーストするイコライザのブースト量を一時的に所定量あるいは所定比率だけ減少させる。イコライザのブースト量を減少させることは、その分だけ3T成分の抽出及び再生が困難になることを意味する。一時的にブースト量を減少させる期間はFE信号の欠陥部の場合と同様である。また、TE信号の欠陥部が存在する場合、トラッキングサーボゲインを一時的に増大させて再生する。トラッキングサーボゲインを増大させることは、傷などの欠陥があればそれに追従しようとしてトラッキング位置が大きく変動することを意味する。このように、再生条件を意図的に劣化させて欠陥部を再生してそのエラーレートを検査する。そして、得られたエラーレートが所定の規定値以下と小さい場合には、再生条件が必ずしも適当でない光ディスク装置であっても問題なく再生できる程度の欠陥部にすぎないとして、検査対象の光ディスクは問題なし(OK)と判定する。一方、得られたエラーレートが所定の規定値を超えて大きい場合には、再生条件が必ずしも適当でない光ディスク装置では再生できない程度の欠陥部であるとして、検査対象の光ディスクは問題あり(NG)と判定する。
【0039】
なお、図10(d)において、RF信号、TE信号、FE信号の各欠陥部が近接して存在している場合、各欠陥部の前後1mmにわたって再生条件をそれぞれ劣化させるため、結果として複数の再生条件の劣化が重複することになる。例えば、FE信号の欠陥部とTE信号の欠陥部が近接して存在する場合、フォーカスサーボゲインを増大させるとともに、トラッキングサーボゲインも増大させる期間が存在する。このような重複を許容することで、フォーカスサーボゲインとトラッキングサーボゲインがともに適当でないような光ディスク装置の再生条件を再現することも可能となる。
【0040】
本実施形態では、エラーレートの程度により光ディスクのOK/NGを判定してディスプレイに表示しているが、欠陥部の有り無し及びエラーレートの良否などを表示してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、欠陥位置の前後1mmにわたって再生条件を劣化させているが、これは例示であり、他の範囲を設定してもよい。例えば、前後1mmではなく、前後数〜数十トラックでもよい。
【0042】
また、本実施形態では、再生条件の劣化として、イコライザのブースト量(Q値)の減少、トラッキングサーボゲインの増大、フォーカスサーボゲインの増大を例示しているが、これらに限定されるものではない。再生条件の劣化とは、光ディスク装置のいわゆる傷耐性を小さくすることを意味するものであり、これに該当する任意のパラメータを調整することができる。例えば、再生パワーを低下させて再生することも該当し得る。
【符号の説明】
【0043】
50 再生部、52 検出部、54 CPU、56 メモリ、100 欠陥、200,300 軌跡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの欠陥を検査する光ディスク検査装置であって、
光学ヘッドを光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
前記光学ヘッドで得られる光ディスクの再生信号から前記欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を有し、
前記駆動手段は、前記光学ヘッドを所定の送り幅で前記半径方向に駆動するとともに、前記光学ヘッドの対物レンズを前記半径方向に振動させる
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記駆動手段は、前記振動の振幅を前記送り幅以上に設定することを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の装置において、さらに、
検出された前記欠陥の位置を記憶する記憶手段と、
前記欠陥の位置において、再生条件を劣化させて前記光ディスクからデータを再生してエラーレートを検出するエラーレート検出手段と、
を有することを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記欠陥検出手段は、前記再生信号から生成されるRF信号から前記欠陥を検出し、
前記エラーレート検出手段は、前記欠陥の位置において前記RF信号をブーストするイコライザのブースト量を減少させることで前記再生条件を劣化させることを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項5】
請求項3記載の装置において、
前記欠陥検出手段は、前記再生信号から生成されるトラッキングエラー信号から前記欠陥を検出し、
前記エラーレート検出手段は、前記欠陥の位置においてトラッキングサーボゲインを増大させることで前記再生条件を劣化させることを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項6】
請求項3記載の装置において、
前記欠陥検出手段は、前記再生信号から生成されるフォーカスエラー信号から前記欠陥を検出し、
前記エラーレート検出手段は、前記欠陥の位置においてフォーカスサーボゲインを増大させることで前記再生条件を劣化させることを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項7】
光ディスクの欠陥を検査する光ディスク検査方法であって、
光学ヘッドを光ディスクの半径方向に駆動するステップと、
前記光学ヘッドで得られる光ディスクの再生信号から前記欠陥を検出するステップと、
を有し、
前記駆動するステップでは、前記光学ヘッドを所定の送り幅で前記半径方向に駆動するとともに、前記光学ヘッドの対物レンズを前記半径方向に振動させる
ことを特徴とする光ディスク検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−54257(P2011−54257A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204366(P2009−204366)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】