説明

光ディスク装置及び光ディスク再生方法

【課題】複数の符号長が混在する再生信号の中から、符号長毎の波高値を高速にかつ正確に抽出することができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光ディスク装置は、複数の符号長によってデータが記録された光ディスクを、PRML方式を用いて再生する光ディスク装置において、光ディスクの再生信号を多値デジタル信号に変換するAD変換部と、多値デジタル信号を所定のパーシャルレスポンスに基づいて波形等化し、等化再生信号を生成する波形等化部と、等化再生信号から前記光ディスクに記録されたデータに対応する復号データを生成する復号部と、符号長毎の波高値を、復号データと所定のパーシャルレスポンスの種類とに基づいて等化再生信号から抽出する波高値抽出部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置及び光ディスク再生方法に係り、特に、光ディスクの再生信号を多値データとしてサンプリングして記録データを復号する光ディスク装置及び光ディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度記録型の光ディスク、例えば、HD DVD等では、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理方式と呼ばれる再生方式が多く用いられている。
【0003】
PRML信号処理方式は、例えば特許文献1等に開示されているように、意図的な波形干渉を許容する狭帯域な応答特性(PR)と最尤推定(ML)とを組み合わせた信号処理方式である。光ディスクの高密度記録化に伴って雑音成分が増加し、再生信号のS/Nは低下するが、このような低S/Nの環境であってもPRML信号処理方式を用いることによって従来の2値スライス方式に比べると誤検出を大幅に低減することができる。
【0004】
PRML信号処理方式では、アナログ再生信号を多値データとしてサンプリングし、再生信号の振幅情報をデータの復号に積極的に利用する方式であり、この点が従来の閾値による2値スライス方式と大きく異なる点である。
【特許文献1】特開2005−93033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにPRML信号処理方式では再生信号の振幅情報をデータの復号に用いるため、振幅情報の品質が非常に重要となる。
【0006】
一方、光ディスクが記録型の光ディスクの場合、記録時のレーザパワー(記録パワー)や記録パルス波形といった記録パラメータによって再生信号の品質は影響を受ける。この影響は、光ディスク装置の特性や、光ディスクそのものの特性によっても異なってくる。このため、多くの光ディスク装置では、光ディスクの特定の領域にテストデータを試し書きし、このテストデータを再生、評価することにより、現在挿入されている光ディスクに対する最適な記録パラメータを決定する、といった手法を採用している。
【0007】
テストデータの再生信号の評価指標として種々のものが提案されているが、例えば、再生信号の上下の非対称性(アシンメトリ)に関する評価指標として、所謂アシンメトリ値βと呼ばれる評価指標がある。記録型のCDやDVDの多くは、上記のアシンメトリ値βをゼロに近づけるように記録パワーの調整(パルス幅調整による等価的な記録パワー調整を含む)を行っており、これをOPC(Optimum Power Control)と呼んでいる。
【0008】
OPCには種々の手法があるが、一般的には以下のような手法が用いられている。
【0009】
まず、再生波形のDCレベルを基準にピーク検波、及びボトム検波を行い、ピーク値VHとボトム値VLを得る。次に、ピーク値VHとボトム値VLとから、再生波形の対称性を示すアシンメトリ値β(β=(VH+VL)/(VH−VL))を計算する。そして、このアシンメトリ値βがゼロとなるように記録パワーを計算する。
【0010】
しかしながら、従来から用いられているアシンメトリ値βは、全符号長(CDや従来型のDVDの場合、3T乃至11Tの符号長)の平均的なDCレベルの対称性を示す指標であるため、個々の符号長の夫々のアシンメトリがゼロになるとは限らない。例えば、3T符号長のアシンメトリが正側にずれ、4T符号長のアシンメトリが負側にずれていたとしても、平均的なアシンメトリ値βがゼロとなる場合もあり得る。
【0011】
他方、HD DVD等の高密度記録型の光ディスクでは、再生信号の品質に対するアシンメトリ(非対称性)の影響は従来のCDやDVDに比べて大きくなっている。このため、アシンメトリを従来よりも細かく調整する必要がでてきている。換言すれば、従来のように全符号長の平均的なアシンメトリをゼロにするだけでなく、個々の符号長の夫々のアシンメトリをもゼロに近づけるような調整手法が必要となってきている。
【0012】
ところで、符号長毎のアシンメトリを算出しようとする場合、符号長毎の波高値(例えば、マークの場合のピーク値とスペースの場合のボトム値)を取得して算出する必要がある。一般にテストデータにはランダムなデータが用いられる。このため、再生信号には符号長が、例えば、2T乃至11Tの種々の符号長のマークやスペースがランダムに混在している。
【0013】
従って、符号長毎のアシンメトリを算出しようとする場合、再生信号のストリームの中から特定の符号長を識別しその波高値を正確に抽出する必要がある。しかしながら、従来このような処理をほぼ実時間で高速に、かつ効率良く行う技術は開発されていなかった。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、複数の符号長が混在する再生信号の中から、符号長毎の波高値を高速にかつ正確に抽出することができる光ディスク装置及び光ディスク再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、請求項1に記載したように、複数の符号長によってデータが記録された光ディスクを、PRML方式を用いて再生する光ディスク装置において、前記光ディスクの再生信号を多値デジタル信号に変換するAD変換部と、前記多値デジタル信号を所定のパーシャルレスポンスに基づいて波形等化し、等化再生信号を生成する波形等化部と、前記等化再生信号から前記光ディスクに記録されたデータに対応する復号データを生成する復号部と、前記符号長毎の波高値を、前記復号データと前記所定のパーシャルレスポンスの種類とに基づいて前記等化再生信号から抽出する波高値抽出部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク再生方法は、請求項7に記載したように、複数の符号長によってデータが記録された光ディスクを、PRML方式を用いて再生する光ディスク再生方法において、(a)前記光ディスクの再生信号を多値デジタル信号に変換し、(b)前記多値デジタル信号を所定のパーシャルレスポンスに基づいて波形等化し、等化再生信号を生成し、(c)前記等化再生信号から前記光ディスクに記録されたデータに対応する復号データを生成し、(d)前記符号長毎の波高値を、前記復号データと前記所定のパーシャルレスポンスの種類とに基づいて前記等化再生信号から抽出する、ステップを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光ディスク装置及び光ディスク再生方法によれば、複数の符号長が混在する再生信号の中から、符号長毎の波高値を高速にかつ正確に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る光ディスク装置、及び光ディスク再生方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
(1)光ディスク装置の構成と全般動作
図1は、本実施形態に係る光ディスク装置1の構成例を示す図である。
【0020】
光ディスク装置1は、HD DVD等の光ディスク100に対して情報の記録及び再生を行うものである。光ディスク100には、同心円状、又は螺旋状に溝が刻まれており、溝の凹部をランド、凸部をグルーブと呼び、グループ又はランドの一周をトラックと呼ぶ。ユーザデータはこのトラック(グルーブのみ又はグルーブ及びランド)に沿って、強度変調されたレーザ光を照射してデータの符号長に対応するマークとスペースを形成することで記録される。
【0021】
データ再生は、記録時より弱いリードパワー(read power)のレーザ光をトラックに沿って照射して、トラック上にある記録マークによる反射光強度の変化を検出することにより行われる。記録されたデータの消去は、前記リードパワーより強いイレースパワー(erase power)のレーザ光をトラックに沿って照射し、記録層を結晶化することにより行われる。
【0022】
光ディスク100はスピンドルモータ2によって回転駆動される。スピンドルモータ2に設けられたロータリエンコーダ2aからは回転角信号が提供される。回転角信号はスピンドルモータ2が1回転すると、例えば5パルス発生する。この回転角信号からスピンドルモータ2の回転角度及び回転数を判断でき、スピンドルモータ制御回路62では、これらの情報に基づいてスピンドルモータ2の回転駆動制御を行っている。
【0023】
光ディスク100に対する情報の記録、再生は、光ピックアップ3によって行われる。光ピックアップ3は、送りモータ4とギア4b及びスクリューシャフト4aを介して連結されており、この送りモータ4は送りモータ制御回路5により制御される。送りモータ4が送りモータ制御回路5からの送りモータ駆動電流により回転することにより、光ピックアップ3が光ディスク100の半径方向に移動する。
【0024】
光ピックアップ3には、図示しないワイヤ或いは板バネによって支持された対物レンズ30が設けられている。対物レンズ30は駆動コイル31の駆動によりフォーカシング方向(レンズの光軸方向)への移動が可能である。また、駆動コイル32の駆動によりトラッキング方向(レンズの光軸と直交する方向)への移動が可能である。
【0025】
レーザ駆動回路(記録部)6は、変調部72にてETM(Eight to Twelve Modulation)方式等で変調された記録データ基づいて、書き込み用の駆動電流をレーザダイオード(レーザ発光素子)33に供給する。変調部72には、パーソナルコンピュータ等のホスト装置200からI/F部71を介して記録用のデータが供給される。
【0026】
一方、レーザ駆動装置6は情報読取り時には、書き込み用の駆動電流よりも小さな読み取り用の駆動電流をレーザダイオード33に提供する。
【0027】
フォトダイオード等により構成されるパワー検出部34(フロントモニタ(FM)と呼ぶ場合もある)はレーザ発光素子33が発生するレーザ光の一部をハーフミラー35により一定比率だけ分岐し、光量、即ち発光パワーに比例した信号を受光信号として検出する。検出した受光信号はレーザ駆動回路6に供給される。レーザ駆動回路6はパワー検出部34からの受光信号に基づいて、制御部70の記録パラメータ決定部73等で決定及び設定された記録パワー、記録パルス幅、再生時パワー、及び消去時パワーで発光するように、レーザ発光素子33を制御する。
【0028】
レーザ発光素子33はレーザ駆動装置6から供給される駆動電流に応じてレーザ光を発生する。レーザ発光素子33から発せられるレーザ光は、コリメータレンズ36、ハーフプリズム37、対物レンズ30を介して光ディスク100上に照射される。
【0029】
一方、光ディスク100からの反射光は、対物レンズ30、ハーフプリズム37、集光レンズ38、およびシリンドリカルレンズ39を介して、光検出器40に導かれる。
【0030】
光検出器40は、例えば4分割の光検出セルから成り、これら光検出セルの検知信号は再生部60のRFアンプ64に出力される。RFアンプ64は光検知セルからの信号を処理し、ジャストフォーカスからの誤差を示すフォーカスエラー信号FE、レーザ光のビームスポット中心とトラック中心との誤差を示すトラッキングエラー信号TE、及び光検知セル信号の全加算信号である再生信号を生成する。
【0031】
フォーカスエラー信号FEはフォーカス制御回路8に供給される。フォーカス制御回路8はフォーカスエラー信号FEに応じてフォーカス駆動信号を生成する。フォーカス駆動信号はフォーカシング方向の駆動コイル31に供給される。これにより、レーザ光が光ディスク100の記録膜上に常時ジャストフォーカスとなるフォーカスサーボ制御が行われる。
【0032】
一方、トラッキングエラー信号TEはトラック制御回路9に供給される。トラック制御回路9はトラッキングエラー信号TEに応じてトラック駆動信号を生成する。トラック制御回路9から出力されるトラック駆動信号は、トラッキング方向の駆動コイル32に供給される。これによりレーザ光が光ディスク100上に形成されたトラック上を常にトレースするトラッキングサーボ制御が行われる。
【0033】
上記フォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御が行われることで、レーザ光の焦点は、光ディスク記録面のトラック上を精度良く追従することができる。この結果、光検出器40の各光検出セルの出力信号の全加算信号RFには、記録情報に対応して光ディスク100のトラック上に形成されたマークやスペースからの反射光の変化が正確に反映され、品質の良い再生信号を得ることができる。
【0034】
この再生信号(全加算信号RF)は、プリアンプ/等化器65に入力され、ここで適宜の振幅に増幅されアナログ的な波形整形が行われる。プリアンプ/等化器65の出力は、AD変換部66にて、PLL回路61からの再生用クロック信号によってサンプリングされ、多値のデジタルデータに変換される。
【0035】
デジタル化された再生信号は、波形等化部(適応等化器)67に入力され、所定のパーシャルレスポンスの種類(クラス)に応じた波形等化処理が行われる。波形等化部67は、例えば適応型のトランスバーサルフィルタで構成される。後段の復号部80で復号された復号データに対して理想的なパーシャルレスポンスを持つ基準データを生成し、この基準データと入力データとの誤差がゼロとるようにトランスバーサルフィルタの重み係数を適応させることによって波形等化を行っている。
【0036】
波形等化部67の出力である等化再生信号は復号部80に入力される。復号部80では、例えば、ビダビ復号処理により、入力された等化再生信号の系列から最尤推定によって記録データを復号し、復号データを得る。
【0037】
復号データはエラー訂正部75に入力され、ここでエラー訂正処理が行われた後I/F部71を介してホスト装置200に出力される。
【0038】
他方、波高値抽出部81には、波形等化部67の出力である等化再生信号と、復号部80の出力である復号データが入力され、符号長毎の波高値(ピーク値とボトム値)が等化再生信号から抽出される。波高値抽出部81の詳細な構成例と動作については後述する。
【0039】
波高値抽出部81で抽出された波高値は、評価値算出部82に入力される。評価値算出部82では、最適記録パワーや最適記録パルス幅等の最適記録パラメータを決定するための評価値が算出される。評価値の一例として符号長毎のアシンメトリ値がある。
【0040】
図2は、アシンメトリの概念を示す説明図である。HD DVDでは、符号長は2Tから11T(Tは符号長の単位長)の長さのマーク及びスペースによってユーザデータを記録しており、図2はこれらの各符号長からの再生信号を重ねて表示した図である。
【0041】
図2において、I11HとI11Lは、11Tの符号長のマークとスペースの夫々の波高値、I3HとI3Lは、3Tの符号長のマークとスペースの夫々の波高値、I2HとI2Lは、2Tの符号長のマークとスペースの夫々の波高値を表わしている。このとき、符号長2Tのアシンメトリ値A2Tと符号長3Tのアシンメトリ値A3Tは、夫々次の式で定義されるものである。
[数1]
2T=((I11H+I11L)/2-(I2H+I2L)/2)/(I11H-I11L) (式1)
[数2]
3T=((I11H+I11L)/2-(I3H+I3L)/2)/(I11H-I11L) (式2)
また、符号長nTのアシンメトリ値AnTは、次式となる。
【0042】
[数3]
nT=((I11H+I11L)/2-(InH+InL)/2)/(I11H-I11L) (式3)
【0043】
これらの定義式からわかるように、符合長nTのアシンメトリ値は、最大符号長である11Tのマークとスペースの中央値と、各符号長nTのマークとスペースの中央値の一致の程度を示す指標となっており、上下の対称性が完全に確保された理想的な再生信号波形では、各符号長のアシンメトリ値は総てゼロとなる。
【0044】
実際には、光ディスク自体やこれに記録・再生する光ディスク装置の特性のばらつき等によってアシンメトリ値はゼロとはならない。そこで、記録パワーや記録パルス幅等の記録パラメータを調整することによって、アシンメトリ値をゼロに近づける処理を行っており、このような処理をOPC(Optimum Power Control)と呼んでいる。
【0045】
OPCを精度良く行なうためには、アシンメトリ値を正しく算出する必要があり、このためには正確な波高値の抽出が重要である。また、OPCを短時間で行うためには、波高値の抽出も短時間で行わなければならない。
【0046】
(2)波高値抽出部の構成と動作
図3乃至図5は、本実施形態に係る波高値抽出部81の動作原理を説明する図である。このうち、図3は、パーシャルレスポンスのクラス(種類)がPR(12221)と呼ばれるクラスに対応する図である。図3の左側の列には、異なる符号長の記録データを示しており、右側の列には夫々対応する理想的な等化再生信号の波形(パーシャルレスポンス波形)を示している。
【0047】
例えば、図3(a)は、符号長1Tの単位パルスを示しており、図3(b)は単位パルスに対応する等化再生信号を示している。パーシャルレスポンスは符号間干渉を許容する応答であり、図3(b)からわかるように、符号長1Tに対して、振幅ゼロを除くと5つの位置に広がっている様子がわかる。なお、PR(12221)のカッコ内の数字は、単位パルスに対する応答信号の振幅系列を示しているものであり、パーシャルレスポンスのクラスによって単位パルスに対する応答の長さ(これを応答長と呼ぶものとする)が決まっている。PR(12221)の場合、応答長は5である。
【0048】
図3(c)は、2Tの符号長の記録データであり、図3(d)はその理想的な等化再生信号である。同様に、図3(e)は、3Tの符号長の記録データであり、図3(f)はその理想的な等化再生信号、図3(g)は、7Tの符号長の記録データであり、図3(h)はその理想的な等化再生信号である。
【0049】
図3の各図からわかるように、等化再生信号から波高値を抽出する場合、各符号長の記録データの中央の振幅値を抽出すれば良いことがわかる。
【0050】
この記録データは、復号部80から復号データとして得ることができる。つまり、復号データから符号長を検出し、その中央の位置を特定することによって各符号長に対する波高値を得ることができる。より具体的には、復号データの“0”又は“1”の切り換わり点(エッジ)を検出し、エッジ間の中央を各符号長の中央とし、そのサンプリング点の等化再生信号の振幅値を抽出して波高値とすれば良い。
【0051】
ところで、図3の等化再生信号に二重丸で示したように、中央のサンプリング点といってもその位置が1点に定まる場合と、2点に跨る場合とがある。図3に示したPR(12221)クラスの場合、符号長が奇数のとき中央のサンプリング点は1点となり、符号長が偶数のとき中央のサンプリング点は2点に跨る。
【0052】
本実施形態では、中央のサンプリング点が1点に定まる場合にはその点の等化再生信号をそのまま抽出して波高値とし、中央のサンプリング点が2点に跨る場合には2点のサンプリング点の2つの等化再生信号の平均値を波高値とするものとしている。
【0053】
なお、中央のサンプリング点が1点に定まるか、或いは2点に跨るかは、符号長の偶数と奇数の他、パーシャルレスポンスのクラス、より具体的にはパーシャルレスポンスの応答長が偶数か奇数かによっても異なってくる。
【0054】
図3は、応答長が奇数「5」のPR(12221)の等化再生信号を示した図であるが、これに対して図4は、応答長が偶数「4」のPR(1221)の等化再生信号を示した図である。図4からわかるように、PR(1221)では、符号長が奇数のとき中央のサンプリング点は2点に跨り(図4(b)、(f)、(h))、符号長が偶数のとき中央のサンプリング点は1点に定まる(図4(d))。
【0055】
一方、図5は、応答長が奇数「3」のPR(121)の等化再生信号を示した図である。図5からわかるように、PR(121)では、符号長が奇数のとき中央のサンプリング点は1点に定まり(図5(b)、(f)、(h))、符号長が偶数のとき中央のサンプリング点は2点に跨る(図5(d))。
【0056】
以上の例示からわかるように、パーシャルレスポンスの応答長が奇数の場合(PR(12221)やPR(121)等の場合)、符合長が奇数のときには中央のサンプリング点は1点に定まり、符号長が偶数のときには中央のサンプリング点は2点に跨るという規則となる。
【0057】
一方、パーシャルレスポンスの応答長が偶数の場合(PR(1221)等の場合)、符合長が奇数のときには中央のサンプリング点は2点に跨り、符号長が偶数のときには中央のサンプリング点は1点に跨るという規則となる。
【0058】
本実施形態では、この規則を利用して、符合長の中央の1点の等化再生信号を波高値とするか、中央の2点の等化再生信号の平均値を波高値とするかを判定し、処理の切換を行っている。
【0059】
以上の動作原理に基づいて波高値を抽出する処理はソフトウェアでも実現可能であるが、処理速度の観点からはハードウェアで構成するほうが有利である。
【0060】
図6は、上記の動作原理に基づいてハードウェアで構成した波高値抽出部81の構成例を示す図である。
【0061】
波高値抽出部81は、複数のレジスタ91を具備するデータ保持回路90、符号長検出回路92、選択信号生成回路93、選択回路94を備えて構成されている。また、選択回路94は、3つのマルチプレクサ95、96、98と平均値算出回路97を備えて構成されている。
【0062】
データ保持回路90は、波形等化部67から出力される等化再生信号を、符号長の基本単位Tのクロックによって順次遅延させながら保持する回路である。遅延段数は、最大符号長の数だけ設ければよい。
【0063】
符号長検出回路92は、復号部80から出力される復号データのエッジを検出し、エッジ間の距離から符号長の長さを検出する回路である。
【0064】
選択信号生成回路93は、パーシャルレスポンスクラスの種類と符号長とから3つのマルチプレクサ95、96、98で用いる選択信号を生成する。
【0065】
符号長とパーシャルレスポンスクラスの応答長とから中央のサンプリング点が1点に定まると判断される場合には、その1点を選択する信号をマルチプレクサ95に出力する。
【0066】
また、マルチプレクサ98に対してはマルチプレクサ95の出力を選択する選択信号を出力する。この結果、符合長の中央1点の等化再生信号が波高値として出力される。
【0067】
一方、符号長とパーシャルレスポンスクラスの応答長とから中央のサンプリング点が2点に跨ると判断される場合には、一方の1点を選択する信号をマルチプレクサ95に出力すると共に他の1点を選択する信号をマルチプレクサ96に出力する。この結果、平均値算出回路97にて両者の平均値が算出される。また、マルチプレクサ98に対しては平均値算出回路97の出力を選択する選択信号を出力する。この結果、符合長の中央2点の等化再生信号の平均値が波高値として出力される。
【0068】
以上説明してきたように、本実施形態に係る光ディスク装置、及び光ディスク再生方法によれば、複数の符号長が混在する再生信号の中から、符号長毎の波高値を高速にかつ正確に抽出することができ、この結果、アシンメトリ値等の評価値を高精度でかつ高速に得ることが可能となる。
【0069】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示す図。
【図2】符号長毎の波高値を用いて符号長毎のアシンメトリ値を算出する方法の説明図。
【図3】各種の符号長の記録データと、これらに対応するPR(12221)クラスの理想的な等化再生信号とを示す図。
【図4】各種の符号長の記録データと、これらに対応するPR(1221)クラスの理想的な等化再生信号とを示す図。
【図5】各種の符号長の記録データと、これらに対応するPR(121)クラスの理想的な等化再生信号とを示す図。
【図6】本実施形態に係る波高値検出部の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0071】
1 光ディスク装置
6 記録部(レーザ駆動回路)
60 再生部
64 RFアンプ
66 AD変換部
67 波形等化部
68 復号部
73 記録パラメータ決定部
81 波高値抽出部
82 評価値算出部
90 データ保持回路
92 符号長検出回路
93 選択信号生成回路
94 選択回路
97 平均値算出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の符号長によってデータが記録された光ディスクをPRML方式を用いて再生する光ディスク装置において、
前記光ディスクの再生信号を多値デジタル信号に変換するAD変換部と、
前記多値デジタル信号を所定のパーシャルレスポンスに基づいて波形等化し、等化再生信号を生成する波形等化部と、
前記等化再生信号から前記光ディスクに記録されたデータに対応する復号データを生成する復号部と、
前記符号長毎の波高値を、前記復号データと前記所定のパーシャルレスポンスの種類とに基づいて前記等化再生信号から抽出する波高値抽出部と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記波高値抽出部は、
前記復号データから符号長を識別し、識別した符号長の中央に対応するサンプリング点における前記等化再生信号の振幅値をその符号長の波高値として抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記波高値抽出部は、
前記中央に対応するサンプリング点の数が1点であるのか2点であるのかを、前記識別した符号長と前記所定のパーシャルレスポンスの種類に基づいて判断し、2点の場合には、それらに対応する前記等化再生信号の2つの振幅値の平均値をその符号長の波高値として抽出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記波高値抽出部は、
前記識別した符号長の長さが偶数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが偶数の場合、又は、前記識別した符号長の長さが奇数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが奇数の場合には、前記中央に対応するサンプリング点の数が1点であると判断し、
前記識別した符号長の長さが奇数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが偶数の場合、又は、前記識別した符号長の長さが偶数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが奇数の場合には、前記中央に対応するサンプリング点の数が2点であると判断する、
ことを特徴とする請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記波高値抽出部は、
前記等化再生信号を、前記符号長の単位長のクロックで遅延保持するデータ保持回路と、
前記復号データのデータ変化点を検出して前記符号長を検出する符号長検出回路と、
前記パーシャルレスポンスの種類からそのパーシャルレスポンスの応答長を判定すると共に、判定した応答長と前記符号長検出回路にて検出した前記符号長とから選択信号を生成する選択信号生成回路と、
前記選択信号に基づいて、検出した前記符号長の中央に対応するサンプリング点の前記等化再生信号の振幅値を、前記データ保持回路から選択する選択回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記選択回路は、前記サンプリング点が2点ある場合に、該当する前記等化再生信号の2つの振幅値を平均する平均値算出回路、
をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
複数の符号長によってデータが記録された光ディスクをPRML方式を用いて再生する光ディスク再生方法において、
(a)前記光ディスクの再生信号を多値デジタル信号に変換し、
(b)前記多値デジタル信号を所定のパーシャルレスポンスに基づいて波形等化し、等化再生信号を生成し、
(c)前記等化再生信号から前記光ディスクに記録されたデータに対応する復号データを生成し、
(d)前記符号長毎の波高値を、前記復号データと前記所定のパーシャルレスポンスの種類とに基づいて前記等化再生信号から抽出する、
ステップを備えたことを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項8】
ステップ(d)では、
前記復号データから符号長を識別し、識別した符号長の中央に対応するサンプリング点における前記等化再生信号の振幅値をその符号長の波高値として抽出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光ディスク再生方法。
【請求項9】
ステップ(d)では、
前記中央に対応するサンプリング点の数が1点であるのか2点であるのかを、前記識別した符号長と前記所定のパーシャルレスポンスの種類に基づいて判断し、2点の場合には、それらに対応する前記等化再生信号の2つの振幅値の平均値をその符号長の波高値として抽出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の光ディスク再生方法。
【請求項10】
ステップ(d)では、
前記識別した符号長の長さが偶数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが偶数の場合、又は、前記識別した符号長の長さが奇数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが奇数の場合には、前記中央に対応するサンプリング点の数が1点であると判断し、
前記識別した符号長の長さが奇数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが偶数の場合、又は、前記識別した符号長の長さが偶数であり、かつ、前記所定のパーシャルレスポンスの応答長の長さが奇数の場合には、前記中央に対応するサンプリング点の数が2点であると判断する、
ことを特徴とする請求項9に記載の光ディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282511(P2008−282511A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128283(P2007−128283)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】