説明

光ディスク装置

【課題】トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の光ディスク装置は、少なくとも、筐体2と、筐体2に収納または引き出し自在に設けられたトレイ3と、筐体2とトレイ3を係合するイジェクトロック機構と、イジェクトロック機構を構成するリリースアーム15とを備え、リリースアーム15は複数の部材15a、15bにより構成され、複数の部材15a、15bはトレイ3との取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップにより光ディスクに対して情報の記録又は再生の少なくとも一方を行なう光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、CD−ROM/R/RW、DVD−ROM/RAM/R/RWなどがすでに実用化されており、各方面への応用と高性能化への開発が活発に行われている。特に最近では、パーソナルコンピュータの急速な市場拡大に伴い、光ディスク装置のパーソナルコンピュータへの内蔵普及率も高くなっている。電子機器に搭載される光ディスクの装着方法としては筐体よりトレイが引き出され、このトレイに光ディスクを取り付け、再び筐体に戻して装着する方式(以下トレイ方式と称する)が一般的である。以下、従来のトレイ方式光ディスク装置の構成について、図7を参照して説明する。
【0003】
図7は従来の光ディスク装置の外観斜視図である。図7において、1は光ディスク装置、2は筐体、2aは上部筐体部、2bは下部筐体部、3はトレイ、4は光ピックアップモジュール、5はレール、6はレール保持部、7はスピンドルモータ、7aは光ディスク装着部、8は金属製カバー、8aは開口、9はキャリッジ、10はベゼル、11はイジェクトボタン、20は光ピックアップである。
【0004】
図7は従来の光ディスク装置の外観斜視図であり、光ディスク装置1は、筐体2と、筐体2に出没自在に保持されたトレイ3を有している。筐体2は、金属製の上部筐体部2a、下部筐体部2bを組み合わせて袋状であり、筐体2の開口からトレイ3が出没する構成となっている。トレイ3には、裏面から光ピックアップモジュール4が取り付けられている。トレイ3の両側部には移動自在にレール5が設けられ、このレール5は、トレイ3に一体に設けられたレール保持部6に保持されている。なお、図7では、一方の側部にのみレール5が設けられているが、他方の側面部に同様のレールが設けられていてもよい。上部筐体部2aと下部筐体部2bとは図示していない係止手段と螺旋などを用いて、互いに強固に固定されている。
【0005】
光ピックアップモジュール4は、光ディスクを回転駆動させるスピンドルモータ7と、スピンドルモータ7から外周にかけて開口8aを設けた金属製カバー8と、開口8aから一部が露出したキャリッジ9を少なくとも有している。キャリッジ9は、光ピックアップモジュール4に設けられた複数の案内シャフトに移動自在に保持されており、しかも図示していないフィードモータによって、スピンドルモータ7に近づいたり、離れたりするように移動できる。
【0006】
10はトレイ3の前面に設けられたベゼルで、ベゼル10は筐体2の開口を塞ぐ程度の大きさで構成されている。キャリッジ9には、高出力のレーザーダイオード等の光源,各種光学部材及び光ディスク上に光スポットを構成する対物レンズなどが搭載されている。筐体2の奥部には固定して設けられた回路基板があり、回路基板には信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。トレイ3に設けられた図示していない回路基板同士を電気的に接続するフレキシブルなプリント基板は、略U字型に形成され、外部コネクタはコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、この外部コネクタを介して光ディスク装置1内に電力を供給したり、あるいは外部からの信号を光ディスク装置内に導いたり、あるいは光ディスク装置1で生成された電気信号を電子機器などに送出する。トレイ3の前端面に設けられたベゼル10にはイジェクトボタン11が設けられており、このイジェクトボタン11を押すことで、筐体2に設けられた係合部と
トレイ3に設けられた係合部との係合を解除し、トレイ3は筐体2から光ディスクが着脱できるよう引き出すことができる。
【0007】
図8は、従来の光ディスク装置におけるイジェクトロック機構部を示す平面図であり、図7に示す光ディスク装置1のイジェクトボタン11の裏面方向に配置されている。12はソレノイド、13は可動片、14はリセットアーム、15はリリースアーム、16はロックアーム、17はイジェクトスプリング、18はロックシャフト、19はイジェクトアームである。図8はロックアーム16がロックシャフト18に係止した状態を示しており、このとき、トレイ3は閉じた状態となっている。また、イジェクトボタン11を押すことにより可動片13とソレノイド12の吸着が解除されると、リリースアーム15が回動し、リリースアーム15はロックアーム16との接触部を介してロックアーム16を回動させ、これによりロックアーム16がロックシャフト18から離れるとロックが解除されて、トレイ3が開いた状態となる。
【0008】
このソレノイド12は、その動作部である可動片13がソレノイド12から離脱する動作の後(非リセット状態)、初期位置(リセット状態)に自己復帰が出来ないため、この可動片13を初期位置(リセット状態)に戻す動作が必要となる。そのため、一般的には、図8に示したリセットアーム14やリリースアーム15の回動を利用して、使用者がトレイ3を筐体2に収納する動作によって、可動片13が初期位置(リセット状態)に戻るように復帰動作させる。
【0009】
以下、イジェクトロック機構の復帰動作について、図9を用いて説明する。
【0010】
図9は、従来の光ディスク装置におけるトレイが筐体に収納される時のイジェクトロック機構部の復帰動作を示す図であり、図9(a)はソレノイド12の可動片13がリセット状態に復帰を開始する状態を示した図であり、図9(b)はソレノイド12の可動片13がリセット状態に復帰する途中の状態を示した図、図9(c)はソレノイド12の可動片13がリセット状態になった状態を示した図である。図9において、12はソレノイド、13は可動片、14はリセットアーム、15はリリースアーム、16はロックアーム、17はイジェクトスプリング、18はロックシャフト、19はイジェクトアームである。
【0011】
図9(a)に示すように、使用者によりベゼル10を介してトレイ3が筐体2に収納されるとき、ロックシャフト18がリセットアーム14に接触し、リセットアーム14は回動する。次に、図9(b)に示すように、リセットアーム14の回転運動はリリースアーム15へ伝達され、リリースアーム15は可動片13をソレノイド12の方へ近づけ接触させ、可動片13はソレノイド12と吸着する。ここで、可動片13とソレノイド12が吸着した状態が図9(c)である。
【0012】
図9(a)〜図9(c)において、トレイ3を筐体2に収納する動作を行う場合、トレイ3と筐体2とにクリアランスが1mm程度あるために、リセットアーム14の回転中心とロックシャフト18の中心間距離、すなわちA寸法がトレイ3の収納条件によって所定の寸法から大きくなったり小さくなったりする。
【0013】
A寸法が最も大きくなった条件、すなわちリセットアーム14がロックシャフト18から最も離れる条件でトレイを収納する場合は、リセットアーム14の回転角度が少なくなり、可動片13の可動距離が最も小さくなる。また、A寸法が最も小さくなった条件、すなわちリセットアーム14がロックシャフト18から最も近づく条件でトレイを収納する場合は、リセットアーム14の回転角度が大きくなり、可動片13の可動距離が最も大きくなる。
【0014】
そのため、一般的には、最悪状態でもロックアーム16とロックシャフト18が係合するように可動片13の可動距離が最も小さい場合を基準に可動片13とソレノイド12の位置関係の設計を行なう。
【0015】
先行例としては、(特許文献1)等がある。
【特許文献1】特開平9−106640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の構成では、図9におけるA寸法が最も小さくなった場合、つまり可動片13の可動距離が最も大きくなった場合、可動片13とソレノイド12の吸着後における可動片13のオーバーストロークも大きくなる。
【0017】
そのため、このオーバーストロークで発生する可動片13によるソレノイド12に対する過大な圧着負荷やリリースアーム15、リセットアーム14にかかる荷重負荷により、イジェクトロック機構の寿命を短くしている。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、少なくとも、筐体と、前記筐体に収納または引き出し自在に設けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを係合するイジェクトロック機構と、前記イジェクトロック機構を構成するリリースアームとを備え、前記リリースアームは複数の部材により構成され、前記複数の部材は前記トレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することを特徴とする光ディスク装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成により、可動片のオーバーストロークに起因する過大な圧着負荷がかかった際に、複数の部材により構成されたリリースアームのそれぞれの部材が、トレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することによって、イジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を吸収することができる。
【0021】
このことにより、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
請求項1記載の発明は、少なくとも、筐体と、前記筐体に収納または引き出し自在に設けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを係合するイジェクトロック機構と、前記イジェクトロック機構を構成するリリースアームとを備え、前記リリースアームは複数の部材により構成され、前記複数の部材は前記トレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することを特徴とするものである。複数の部材により構成されたリリースアームのそれぞれの部材が、トレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することによって、イジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を吸収することができる。
【0023】
このことにより、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を実現することができる。
【0024】
請求項2記載の発明は、イジェクトロック機構が、ソレノイド、可動片、リリースアーム、ロックアーム、イジェクトスプリング、ロックシャフトで構成され、可動片がソレノイドの中へ挿入されており、リリースアームが可動片とイジェクトスプリングとに接続しており、リリースアームが回動することにより、ロックアームを回動させ、ロックシャフトとの係合を解除することを特徴とするものである。可動片がソレノイドの中へ挿入されており、リリースアームが可動片とイジェクトスプリングとに接続しており、リリースアームが回動することにより、ロックアームを回動させ、ロックシャフトとの係合を解除することによって、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構の構成を容易にすることができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、リリースアームが、前記可動片の主平面部と略平行方向で2分割されていることを特徴とするものである。リリースアームが、可動片の主平面部と略平行方向で2分割されているため、リリースアームと可動片との接続構成を薄型で実現することができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、前記2分割されたリリースアームの双方の部材が、リリースアームスプリングと接続し、前記可動片の主平面部と略平行方向に可動することを特徴とするものである。2分割されたリリースアームの双方の部材が、リリースアームスプリングと接続されているため、複数の部材により構成されたリリースアームのそれぞれの部材がトレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して一時的に可動することを容易に行なうことができ、また、可動片の主平面部と略平行方向に可動することによって、2分割されたリリースアームの双方の部材の可動方向とイジェクトロック機構の可動片の可動方向とを同一にすることが可能となり、可動片のオーバーストロークによるソレノイドに対する過大な圧着負荷やリリースアームやリセットアームにかかる負荷を効率良く吸収することができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、前記2分割されたリリースアームの可動方向が、前記リリースアームに設けられた貫通孔の径方向の中心を回転軸にした回転方向であることを特徴とするものである。2分割されたリリースアームの可動方向が、リリースアームに設けられた貫通孔の径方向の中心を回転軸にした回転方向であることによって、最小のスペースで本発明の構成を実現することができる。
【0028】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の外観斜視図である。図1において、1は光ディスク装置、2は筐体、2aは上部筐体部、2bは下部筐体部、3はトレイ、4は光ピックアップモジュール、5はレール、6はレール保持部、7はスピンドルモータ、7aは光ディスク装着部、8は金属製カバー、8aは開口、9はキャリッジ、10はベゼル、11はイジェクトボタン、20は光ピックアップである。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態1におけるイジェクトロック機構部を示す平面図であり、イジェクトロック機構は図1に示す光ディスク装置1のイジェクトボタン11の裏面方向に配置されている。図2において、12はソレノイド、13は可動片、14はリセットアーム、15はリリースアーム、16はロックアーム、17はイジェクトスプリング、18はロックシャフト、21はリリースアームスプリングである。
【0031】
図1において、筐体2は上部筐体部2aと下部筐体部2bを組み合わせて袋状に構成されている。上部筐体部2aと下部筐体部2bとは好ましくは螺旋などを用いて、互いに強固に固定されている。筐体2の構成材料としては鉄,鉄合金,アルミニウム,アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材料や樹脂材料によって構成される。また、上部筐体部2a及び下部筐体部2bはそれぞれ同種の材料で構成しても良いし、異種の材料で構成しても良い。また、上部筐体部2a及び下部筐体部2bそれぞれの主平面部の平均肉厚は0.2mm〜1.6mmの間であり、この平均肉厚の比較的薄い場合には上部筐体部2a及び下部筐体部2bは金属材料で構成され、例えば、金属板をプレス加工などによって形成される。また、平均肉厚の比較的厚い場合には上部筐体部2a及び下部筐体部2bは樹脂材料やダイカスト(アルミニウム合金やマグネシウム合金など)で構成される。筐体2を樹脂材料で構成した場合には、光ディスク装置1の軽量化を実現できる。3は筐体2に出没自在に設けられたトレイで、このトレイ3は樹脂製のフレームで構成され、光ピックアップモジュール4が設けられている。光ピックアップモジュール(PUM)4には光学系を構成した光ピックアップ20と光ディスクを回転させるスピンドルモータ7及び制御回路(図示せず)で構成されている。光ピックアップ20は、光ディスクに光を照射することで、光ディスクに情報を書き込むかあるいは情報を読み出す動作の少なくとも一方を行なう。スピンドルモータ7には光ディスク装着部7aがあり、光ディスクを装着し回転駆動させる。トレイ3の両側部にはレール保持部6があり、両側部共にレール5と光ディスク引き出し方向に摺動自在に嵌合している。また、レール5は筐体2両側部内面に設けられたレールガイドとも光ディスク引き出し方向に摺動自在に嵌合しており、トレイ3は筐体2から光ディスクが着脱できるよう引き出すことが出来る。
【0032】
筐体2の奥部には固定して設けられた制御基板があり、制御基板には信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。トレイ3に設けられた図示していない制御基板同士を電気的に接続するフレキシブルなプリント基板は、略U字型に形成され、外部コネクタはコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、この外部コネクタを介して光ディスク装置1内に電力を供給したり、或いは外部からの電気信号を光ディスク装置1内に導いたり、あるいは光ディスク装置1で生成された電気信号を電子機器などに送出する。トレイ3の前端面に設けられたベゼル10にはイジェクトボタン11が設けられており、このイジェクトボタン11を押すことで、筐体2に設けられた係合部(図示せず)とトレイ3に設けられた係合部(図示せず)との係合を解除する。
【0033】
トレイ3の前端面に設けられたベゼル10にはイジェクトボタン11が設けられており、このイジェクトボタン11を押すことで、図2に示す筐体2に設けられたイジェクトロック用シャフト18とトレイ3に設けられたロックアーム16との係合を解除する。
【0034】
次に、イジェクトロック機構の詳細について図2を用いて説明する。
【0035】
イジェクトロック機構は、ソレノイド12、可動片13、リリースアーム15、ロックアーム16、イジェクトスプリング17、ロックシャフト18で構成され、可動片13はソレノイド12の中へ挿入されており、リリースアーム15は可動片13とイジェクトスプリング17とに接続しており、リリースアーム15が回動することにより、ロックアーム16を回動させ、ロックシャフト18との係合を解除するものである。
【0036】
図2は、ロックアーム16がロックシャフト18に係止した状態を示しており、このときトレイ3は閉じた状態となっている。また、イジェクトボタン11を押すことにより可動片13がイジェクトスプリング17のばね力によりソレノイド12から離脱し、リリースアーム15が回動し、リリースアーム15はロックアーム16との接触部を介してロックアーム16を回動させ、これによりロックアーム16がロックシャフト18から離れる
とロックが解除されて、トレイ3が引き出すことが可能になった状態となる。
【0037】
次に、イジェクトロック機構のソレノイドについて、図3を用いて説明する。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態1におけるイジェクトロック機構のソレノイドの平面図である。図3(a)は、ソレノイド12のリセット状態であり、図1に示すトレイ3が筐体2に収納された状態である。また、図3(b)は、ソレノイド12の非リセット状態であり、図1に示すトレイ3が筐体2から引き出すことが可能になった状態である。図3において、12はソレノイド、12aはヨーク、12bはマグネット、12cはボビン、12dはコイル、12eは端子、13は可動片である。
【0039】
ソレノイドはヨーク12a、マグネット12b、ボビン12c、コイル12dで構成され、可動片13、イジェクトスプリング17と共に用いるのが一般的である。リセット状態においては、マグネット12bから発生する磁力によりヨーク12aと可動片13が吸着しており、使用者によりイジェクトボタン11が押されるとイジェクトロック機構の端子12eに電圧がかかり、ボビン12cに巻線されたコイル12dに電流が流れ、マグネット12bから発生する磁力と相反する方向へ磁力が発生し、イジェクトスプリング17の引張り荷重と合成され、可動片13がヨーク12aから離脱し非リセット状態つまりトレイ3が筐体2から引き出し可能な状態に移行する。一度、非リセット状態になるとイジェクトロック機構の端子12eに電圧をかけるのをやめても、マグネット12bから発生する磁力だけでは可動片13をヨーク12aまで引き寄せることができない。そのため、非リセット状態からリセット状態への移行は使用者がトレイ3を筐体2に収納する動作により行なわれる。
【0040】
次に、本発明の特徴部分であるリリースアームについて説明する。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態1におけるリリースアームとソレノイドの接続を示す外観図であり、図4(a)は複数の部材で構成されたリリースアームが一体となって可動している様子を示す図であり、図4(b)は複数の部材で構成されたリリースアームの一部が独立して可動している様子を示す図である。図5は、本発明の実施の形態1におけるリリースアームを示す外観図であり、図5(a)は複数の部材で構成されたリリースアームが一体となって可動している様子を示す図であり、図5(b)は複数の部材で構成されたリリースアームの一部が独立して可動している様子を示す図である。図4、図5において、12はソレノイド、13は可動片、15aは上部リリースアーム、15bは下部リリースアーム、15cは貫通孔、21はリリースアームスプリングである。また、リリースアームが一体となって可動している場合とは、図4、図5に示すB寸法が0の場合をいい、リリースアームの一部が独立して可動している場合とはB寸法が0以外の場合をいう。
【0042】
リリースアーム15は、可動片13の主平面部と略平行方向に2分割された、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bで構成され、7mm×18mm程度の大きさで、厚みが約5mmの樹脂などにより形成されている。ここで、略平行とは、可動片13に対して±5°程度のものをいう。
【0043】
上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bは、それぞれ腕部を有し、上部リリースアーム15aには更に可動片13に設けられた貫通孔との接続に必要な突起が設けられている。設けられる突起は、上部リリースアーム15aに限定されるものでは無く、下部リリースアーム15bでも良いのであるが、その場合、リリースアーム15の上下構成を逆にする必要がある。
【0044】
リリースアーム15には、上部リリースアーム15aの貫通孔と下部リリースアーム1
5bの貫通孔で形成された貫通孔15cが設けられ、その貫通孔15cの中にトレイ3に設けられたリリースアーム15の取り付け軸(突起)が挿入され、リリースアーム15の可動は、上部リリースアーム15a、下部リリースアーム15b共に、リリースアーム15に設けられた貫通孔15cの径方向の中心を回転軸にして回転する。また、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bは、それぞれが一体で回転したり、下部リリースアーム15bのみが回転自在となるように、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bはリリースアームスプリング21と接続されている。
【0045】
リリースアームスプリング21は、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bの間に一定の回転負荷がかかると、下部リリースアーム15bのみが可動するように、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bに接続されている。
【0046】
以下、本発明の実施の形態1におけるイジェクトロック機構の復帰動作について、図6を用いて説明する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態1におけるトレイが筐体に収納される時のイジェクトロック機構部の復帰動作を示す図であり、図6(a)はソレノイド12の可動片13がリセット状態に復帰を開始する状態を示した図であり、図6(b)はソレノイド12の可動片13がリセット状態に復帰する途中の状態を示した図、図6(c)はソレノイド12の可動片13がリセット状態になった状態を示した図である。図6において、12はソレノイド、13は可動片、14はリセットアーム、15aは上部リリースアーム、15bは下部リリースアーム、16はロックアーム、17はイジェクトスプリング、18はロックシャフト、19はイジェクトアーム、21はリリースアームスプリングである。
【0048】
図6(a)に示すように、使用者によりベゼル10を介してトレイ3が筐体2に収納されるとき、ロックシャフト18がリセットアーム14に接触し、リセットアーム14は回動する。次に、図6(b)に示すように、リセットアーム14の回転運動はリリースアーム15へ伝達され、リリースアーム15は可動片13をソレノイド12の方へ近づけ接触させ、可動片13はソレノイド12と吸着する。ここで、可動片13とソレノイド12が吸着した状態が図6(c)である。
【0049】
図6(a)〜図6(c)において、トレイ3を筐体2に収納する動作を行う場合、トレイ3と筐体2とにクリアランスが1mm程度あるために、リセットアーム14の回転中心とロックシャフト18の中心間距離、すなわちA寸法がトレイ3の収納条件によって所定の寸法から大きくなったり小さくなったりする。
【0050】
従来の光ディスク装置では、図9(a)〜図9(c)に示すA寸法が最も大きくなった条件、すなわちリセットアーム14がロックシャフト18から最も離れる条件でトレイを収納する場合は、リセットアーム14の回転角度が少なくなり、可動片13の可動距離が最も小さくなる。また、A寸法が最も小さくなった条件、すなわちリセットアーム14がロックシャフト18から最も近づく条件でトレイを収納する場合は、リセットアーム14の回転角度が大きくなり、可動片13の可動距離が最も大きくなる。そのため、この場合においては、可動片13とソレノイド12の吸着後における可動片13のオーバーストロークも大きくなり、このオーバーストロークで発生する可動片13によるソレノイド12に対する過大な圧着負荷やリリースアーム15、リセットアーム14にかかる荷重負荷により、イジェクトロック機構の寿命を短くしている。
【0051】
ところが、図4〜図6に示す本発明の実施の形態1では、可動片13に力を伝達するリリースアーム15が複数の部材により構成され、複数の部材の少なくとも一部である上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bがリリースアームスプリング21と接
続していることにより、一定以上の力が加わらない限り、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bは共に可動するため、以下の動作となる。
【0052】
まず、リセットアーム14からの回転運動を下部リリースアーム15bが受け止める。下部リリースアーム15bは、上部リリースアーム15aと共に可動し、可動片13をソレノイド12の方へ近づけ接触させる。これは、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bが接続しているリリースアームスプリング21は、可動片13が可動する範囲内においては、一定以上の力とならないためである。
【0053】
可動片13がソレノイド12と接触し吸着した後は、可動片13の可動が止まる。このとき、図6(a)〜図6(c)に示すA寸法が最も小さくなった条件、すなわちリセットアーム14がロックシャフト18から最も近づく条件でトレイ3を収納する場合は、リセットアーム14の回転角度が大きくなり、可動片13の可動距離が最も大きくなり、可動片13がソレノイド12と接触し吸着した後にも可動片13はソレノイド12に対して過大な圧着負荷を与えるような場合には、上部リリースアーム15aのみが可動し、過大な圧着負荷を吸収する。トレイ3が収納され、過大な圧着負荷の発生が止まった場合には、リリースアームスプリング21の復元力により、上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bが一体となり元の状態になる。
【0054】
このようにして、可動片13とソレノイド12の吸着後にも継続して発生する過大な圧着負荷を上部リリースアーム15aと下部リリースアーム15bの独立した可動によって、吸収することが可能となる。
【0055】
そのため、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を実現することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、リリースアーム15が可動片13の主平面部と略平行方向で2分割されていることとしたが、略平行方向で2分割されていることに限定されるものでは無い。リリースアーム15と可動片13との接続構成を薄型で実現しようと思えば、リリースアーム15が可動片13の主平面部と略平行方向で2分割されていることが好ましい。
【0057】
また、リリースアーム15の可動は、上部リリースアーム15a、下部リリースアーム15b共に、リリースアーム15に設けられた貫通孔15cの径方向の中心を回転軸にして回転することとしたが、リリースアーム15に設けられた貫通孔15cの径方向の中心を回転軸にして回転することに限定されるものでない。リリースアーム15のそれぞれの部材がトレイ3との取り付け部に対して、それぞれ独立して一時的に可動することを容易にすることや可動片のオーバーストロークによるソレノイド12に対する過大な圧着負荷やリリースアーム15やリセットアーム14にかかる負荷を効率良く吸収することや最小のスペースで本発明の構成を実現しようと思えば、リリースアーム15の可動は、上部リリースアーム15a、下部リリースアーム15b共に、リリースアーム15に設けられた貫通孔15cの径方向の中心を回転軸にして回転することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、トレイと筐体を係合するイジェクトロック機構のソレノイドやリリースアームやリセットアームにかかる負荷を低減することができ、イジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めた光ディスク装置を実現することができ、光ピックアップにより光ディスクに対して情報の記録又は再生の少なくとも一方を行なう光ディスク装置などに適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスク装置の外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるイジェクトロック機構部を示す平面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるイジェクトロック機構のソレノイドの平面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるリリースアームとソレノイドの接続を示す外観図
【図5】本発明の実施の形態1におけるリリースアームを示す外観図
【図6】本発明の実施の形態1におけるトレイが筐体に収納される時のイジェクトロック機構部の復帰動作を示す図
【図7】従来の光ディスク装置の外観斜視図
【図8】従来の光ディスク装置におけるイジェクトロック機構部を示す平面図
【図9】従来の光ディスク装置におけるトレイが筐体に収納される時のイジェクトロック機構部の復帰動作を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 光ディスク装置
2 筐体
2a 上部筐体部
2b 下部筐体部
3 トレイ
4 光ピックアップモジュール
5 レール
6 レール保持部
7 スピンドルモータ
7a 光ディスク装着部
8 金属製カバー
8a 開口
9 キャリッジ
10 ベゼル
11 イジェクトボタン
12 ソレノイド
13 可動片
14 リセットアーム
15 リリースアーム
15a 上部リリースアーム
15b 下部リリースアーム
16 ロックアーム
17 イジェクトスプリング
18 ロックシャフト
19 イジェクトアーム
20 光ピックアップ
21 リリースアームスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、筐体と、前記筐体に収納または引き出し自在に設けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを係合するイジェクトロック機構と、前記イジェクトロック機構を構成するリリースアームとを備え、前記リリースアームは複数の部材により構成され、前記複数の部材は前記トレイとの取り付け部に対して、それぞれ独立して可動することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記イジェクトロック機構は、ソレノイド、可動片、リリースアーム、ロックアーム、イジェクトスプリング、ロックシャフトで構成され、前記可動片は前記ソレノイドの中へ挿入されており、前記リリースアームは前記可動片と前記イジェクトスプリングとに接続しており、前記リリースアームが回動することにより、前記ロックアームを回動させ、前記ロックシャフトとの係合を解除することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記リリースアームは、前記可動片の主平面部と略平行方向で2分割されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記2分割されたリリースアームの双方の部材は、リリースアームスプリングと接続し、前記可動片の主平面部と略平行方向に可動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記2分割されたリリースアームの可動方向は、前記リリースアームに設けられた貫通孔の径方向の中心を回転軸にした回転方向であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−120190(P2006−120190A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304119(P2004−304119)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】