説明

光ディスク装置

【課題】
薄型の光ディスク装置において、安定なイジェクト操作を実現すると共に、コスト低減や心地よい操作性を実現するイジェクトロック機構を提供する。
【解決手段】
筐体側に設けられたロック部材と係合してディスクトレイを係止するロックアームと、ロックアームと接合してロックアームをロック部材との係合または係合の解除位置に移動させる駆動アームと、駆動アームと係合される可動プランジャを有するソレノイドと、ソレノイドのプランジャを復帰させるリセットアーム34の3つの駆動アーム部からなり、当該リセットアームはプラスチック等で一体形成された駆動アーム部341と弾性部342とからなり、この弾性部はU字部を有し、駆動アーム部が回動することによりU字部の相互間隔を狭めることでバネ付勢力の安定性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ方式の光ディスク装置に関し、特に、かかる光ディスク装置におけるイジェクトロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータに搭載する光ディスク装置は、光ディスクを搭載するディスクトレイを筐体から進退自在に移動できるトレイ方式を採用したものも多く、かかる装置では、光ディスクを装着する場合、筐体よりトレイを引き出してこのトレイに光ディスクを取り付け(装着し)、再び、筐体内に戻して光ディスクの駆動を開始することが行われる。
【0003】
かかる従来のトレイ方式の光ディスク装置では、一般に、トップケースとボトムケースとを組み合せて構成された筐体に形成した開口から、当該トレイを出し入れする構成が採用されている。なお、このトレイ上には、光ディスクを回転駆動するディスクモータ、光ディスクにレーザ光を照射して信号の記録再生を行う光ピックアップ、光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動させる光ピックアップ送り機構、トレイを装置筐体内の挿入位置にロックするイジェクトロック機構等が搭載されており、そして、当該トレイの両側には、筐体への挿入と排出を案内するレールが設けられている。一方、上記筐体側には、レールを案内するレールガイド、上記トレイをロックするロック部材等を設けており、もって、フロントベゼルのイジェクトボタンを用いてトレイのイジェクト操作を可能としている。
【0004】
なお、かかるトレイ式光ディスク装置における従来のイジェクトロック機構としては、例えば、以下の特許文献1によれば、ロックアームとロックバネ、リセットアームとリセットバネ、駆動アームと駆動バネ、ソレノイドプランジャーなどの構成により、小型でイジェクトを安定に行う機構が既に開示されている。また、同様な構成が、以下の特許文献2にも開示されている。更に、以下の特許文献3によれば、上述したイジェクトロック機構の寿命に対する信頼性を高めるため、複数の部材で構成されたリリースアームを採用した構造が開示されている。
【0005】
また、以下の特許文献4によれば、上記の3部材による構成に代えて、これらを一体にする構成が開示されており、更に、以下の特許文献5には、従来のイジェクトロック機構におけるロックアームを、プラスチックモールドで駆動バネと一体成形することにより、その駆動バネを省略する試みが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−303289号公報
【特許文献2】特開2004−234800号公報
【特許文献3】特開2006−120190号公報
【特許文献4】特開2006−190350号公報
【特許文献5】特開平8−235717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年においては、携帯性に優れたノート型パーソナルコンピュータに対する需要の高まりと共に、当該ノート型パーソナルコンピュータに搭載する光ディスク装置に対しても、更なる薄型軽量化が求められており、より具体的には、光ディスク装置の厚さを12.7mmから9.5mm程度にまて薄型化することが求められている。これに対し、当該光ディスク装置内に挿入される光ディスクの厚さ、或いは、ディスク反り等は従来と変わらないことから、光ディスク装置の厚さを薄型化する必要があり、そのためには、特に、そのトレイ部を薄型化する必要がある。
【0008】
しかしながら、上述した従来技術、特に、上記特許文献1〜3に開示された3つのアーム部により構成されたイジェクトロック機構を、更に、薄型化しようとした場合には、以下にも詳細に説明するが、特に、そのイジェクトロック機構において、イジェクト操作の安定性が損なわれるという課題が生じる。また、上記特許文献4に開示された、3部材による構成に代えて、これらを一体にする構成では、上述の3部材構成により達成されるイジェクトロック機構に必要な機能を達成することは難しかった。更に、特許文献5では、ロックアームをプラスチックモールドで一体成形することが開示されているが、しかしながら、かかるロックアームには、比較的強い駆動力を常時印加する必要があるため、プラスチックモールドにより一体成形することには無理があった。即ち、長期の使用により、駆動バネが変形又は破損(即ち、劣化)してしまい、イジェクトロック機構の所要の動作が得られなくなる。
【0009】
そこで、本発明では、上述した従来技術における課題、特に、薄型化に伴う光ディスクドライブ装置におけるイジェクトロック機構の課題に鑑み、イジェクト操作の安定性を実現すると共に、当該機構を実現する部品点数を削減し、且つ、その作業性を容易にし、もって、薄型化に好適なイジェクトロック機構を提案すると共に、当該イジェクトロック機構を採用することにより安価でかつ薄型化が可能な光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【0010】
なお、本発明は、本発明者等により提案された特許文献1である特開2004−303289号公報に開示された光ディスク装置の構成において、特に、そのイジェクトロック機構を、更に薄型化しようとした場合、リセットアームと捻りバネとを積み重ねた構造のバネ強度の確保が厳しくなり、そのため、イジェクト操作の安定性が損なわれるという課題を発見することにより成されたものであり、また、リセットアームと捻りバネの積み重ね構造は、捻りバネの両端を2箇所の小さな係止部にセットする必要があることから、製造時の組立性の上からも改善が必要とされており、安価な光ディスク装置を提供するうえでも改良の必要があるとの新たな認識に基づいて達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明では、上記課題を解決して上述した本発明の目的を達成するため、イジェクトロック機構のリセットアーム自体に弾性部を設けて捻りバネを削除した構造とすることにより、イジェクトロック機構の薄型化を実現する。
【0012】
即ち、本発明によれば、まず、筐体と、前記筐体内に挿入可能なトレイとを備えると共に、前記筐体側にロック部材を設け、前記トレイ側には、前記トレイを前記筐体内に挿入する際の係止と、前記トレイを前記筐体から搬出する際のイジェクトとを行うイジェクトロック機構とを備えた光ディスクドライブ装置において、前記トレイ側に設けられたイジェクトロック機構は、前記筐体側に設けられた前記ロック部材と係合して前記トレイを係止するロックアームと、前記ロックアームと当接して前記ロックアームを前記ロック部材との係合又は係合解除位置に移動させる駆動アームと、前記駆動アームと係合される可動プランジャを有するソレノイドと、そして、前記ソレノイドのプランジャを復帰させるリセットアームとを有しており、かつ、前記リセットアームは、前記トレイを前記筐体の外部に搬出する際、前記ロック部材と当接して回動することにより、前記駆動アームを前記ロックアームの係合解除位置に移動させる駆動アーム部と、前記トレイを前記筐体の内部に搬入する際、前記駆動アーム部を、前記ソレノイドのプランジャを復帰させる位置に付勢する弾性部とを、一体に形成して構成されている光ディスク装置が提供される。
【0013】
なお、本発明では、前記に記載した光ディスク装置において、前記リセットアームの前記弾性部は、前記駆動アーム部の上部を経由して前記リセットアーム側に回りこむU字部を有していることが好ましく、又は、前記弾性部と前記駆動アーム部とから構成される前記リセットアームを、プラスチックにより一体に形成して構成することが好ましい。
【0014】
より具体的には、筐体側に設けられたロック部材と係合して前記トレイを係止するロックアームと、ロックアームと接合してロックアームをロック部材との係合または係合の解除位置に移動させる駆動アームと、駆動アームと係合される可動プランジャを有するソレノイドと、前記ソレノイドのプランジャを復帰させるリセットアームの3つのアーム部からなり、上記リセットアームはプラスチック等で一体形成されたアーム部と弾性部からなり、アーム部は2つのアーム片を有して、第一のアーム片はロック部材と接合して回動することにより駆動アームをロックアームの係合解除位置に移動させる機能を有し、第二のアーム片は弾性部の付勢力により駆動アームをソレノイドのプランジャ復帰位置に移動させる機能を有し、弾性部は駆動アームの上を経由してリセットアーム側に回り込むU字部を有し、第一のアーム片がロック部材と接合して回動することによりU字部の相互間隔を狭めることでバネ付勢力の安定性を確保する構成としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイジェクトロック機構によれば、光ディスク装置が薄型化しても安定なイジェクト操作を実現するとともに、部品点数削減と手間の掛かる捻りバネの係止作業削除によるコスト低減を可能とする。また、従来のイジェクトロック機構で発生していたトレイロック時の弾き音を消すことができ、心地よい操作性を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
添付の図1は、本発明の一実施例になる光ディスク装置の外観図であり、この図1において、符号1は装置の筐体を構成するトップケース、2は同じくボトムケースを示しており、これらトップケースとボトムケースにより、光ディスク装置本体を構成している。
【0018】
一方、図の符号3は、上記装置筐体に対して摺動可能(図の矢印方向)に取り付けられており、もって、装置本体の内部に収納され、又は、その外部に排出可能なディスクトレイを示しており、即ち、このディスクトレイ3上の所定の位置(図の、略円形の凹部)に光ディスクを装着することにより、当該光ディスクを装置本体内に搬入し、又は、装置本体内から外部に搬出する。また、このディスクトレイ3には、装着した光ディスクを回転駆動するディスクモータ4、光ディスクの記録面にレーザー光を照射して信号の記録または読取りを行う光ピックアップ5、光ピックアップ5を光ディスクの半径方向に移動させる光ピックアップ送り機構6が搭載されている。また、上記装置筐体に対して摺動可能なディスクトレイ3の側面には、その移動方向(図の矢印方向)に沿って案内レール7が設けられており、他方、装置本体(ここでは、ボトムケース2)側には、上記案内レール7を案内するレールガイド8が設けられている。
【0019】
更に、上記のディスクトレイ3には、その正面側(図の左下方向)にはフロントベゼル9が設けられており、その一部には、ディスクトレイの排出(イジェクト)操作用のイジェクトボタン10が取り付けられている。なお、ここでは図示しないが、上記ディスクトレイ3を装置本体内における所定の挿入位置にロック(係止)するイジェクトロック機構も、当該ディスクトレイ3の裏面側であってイジェクトボタン10に近い位置に配されている。
【0020】
そして、上記の構成になる光ディスク装置では、例えば、記録又は再生のために光ディスクを装置本体内に搬入する場合、イジェクトボタン10が押される。このイジェクトボタン10の押下により、上述したイジェクトロック機構が作動して、ディスクトレイ3の装置本体側に対するロック状態を解除し、当該ディスクトレイ3が装置本体側から排出(イジェクト)される。その後、この排出されたディスクトレイ3の所定の位置に光ディスクをセットし(具体的には、図のディスクモータ4の上部に取り付けられたターンテーブルを光ディスクの内孔に挿入する)、再び、装置本体内に挿入する。かかるディスクトレイ3の装着動作により、光ディスクが装置本体内に搬入される。そして、搬入された光ディスクは、ディスクモータ4により回転可能な所定位置にセットされる。一方、ディスクトレイ3は、装置本体内の光ディスクから離間した所定位置において、再び、イジェクトロック機構により装置本体側にロックされる。
【0021】
次に、添付の図2は、上記図1に示した光ディスク装置の分解斜視図であって、特に、上記図1の構成をその裏面側から見た様子を示している。即ち、この図2において、ディスクトレイ3は、上述した光ピックアップ送り機構6を備えており、更にその下方にはアンダーカバー21が取り付けられている。そして、このディスクトレイ3には、図の左下部を中心として、イジェクトロック機構が設けられている。
【0022】
即ち、このイジェクトロック機構は、支点周りに回動するアーム部に装置本体側と係合する係合部を備えたロックアーム35と、支点周りに回動するアーム部に上記ロックアーム35と係合する係合部を備えた駆動アーム32と、可動片が上記駆動アーム32に係合されたソレノイドプランジャー50とを備えている。また、上記駆動アーム32には、駆動バネ31が接続されており、ロック解除時には、その弾性復元力により、上記駆動アーム32を、ソレノイドプランジャー50の可動片が当該ソレノイドプランジャー50の固定部から離間する方向であって、かつ、当該駆動アーム32を上記ロックアーム35と係合する方向に回動変位させる。また、図中の符号34は、後に説明する弾性部の復元力で付勢され、もって、ディスクトレイ3が装置本体側にロックされた元の状態に戻るように、上記駆動アーム32を押し戻すリセットアームである。
【0023】
更に、図中の符号36a、36b、36cはそれぞれフックを示しており、符号39はフレキシブル基板を、符号40aはロックアーム35の回動支点部を形成するボスを、符号40bは駆動アーム32の回動支点部を形成するボスを、符号40cはリセットアームの回動支点部を形成するボスを、符号41は、ロックアーム35に対し装置本体側(レールガイドのボス部)に係合するための付勢力を与えるロックバネを、符号42は上記ソレノイドプランジャー50を取り付けるためのネジを、そして、符号43はダンパーゴムを示している。なお、上記の構成において、上記駆動バネ31、駆動アーム32、ソレノイドプランジャー50及びロックアーム35が、イジェクトロック機構部の主要部を構成している。
【0024】
次に、上記図2にその構成を示したイジェクトロック機構部の動作について説明すると、まず、上記図1のイジェクトボタン10が押されると、上記フレキシブル基板39を介して上記ソレノイドプランジャー50のコイルに電圧が印加され、可動片の電磁吸着力が弱められる。なお、このソレノイドプランジャー50のコイル印加電圧に対する可動片保持力(吸着力)の特性の一例が、添付の図10に示されている。即ち、ソレノイドプランジャー50の本ソレノイドプランジャーは、コイルに電圧が印加されない(=コイルに電流が流れない)状態では、その可動片がマグネットにより、上記駆動バネ31の復元力よりも大きい約4Nの力でヨークの固定部側に吸着されている。そこで、コイルに電圧が印加されて電流が供給されると、当該マグネットとは極性が反対の電流磁界が形成されて可動片の吸着力が弱められ、その結果、駆動バネ31の復元力よりも十分小さい値となる。なお、かかる状態においては、駆動バネ31は、その復元力により駆動アーム32を回動変位させる。この駆動アーム32は、その回動変位により、上記ソレノイドプランジャー50の可動片を固定部から離間させる。そして、この離間により、ソレノイドプランジャー50内における当該可動片と固定部との間の電磁吸引力は、急激に減少する。即ち、当該離間状態において、駆動アーム32はロックアーム35に当接し、当該ロックアーム35を回動変位させる。そして、当該回動変位により、上記のロックアーム35は、ディスクトレイ3の装置本体側に対するロック状態を解除し、もって、当該ディスクトレイ3が装置本体側から排出(イジェクト)されるようにする。
【0025】
続いて、添付の図3は、上記図1に示した光ディスク装置において、特に、イジェクトレバーとその周辺構成を示す図である。この図3において、符号11は、上記ディスクトレイ3をイジェクト変位させるためのイジェクトレバーを示しており、符号12は、その復元力によりイジェクトレバー11を介してディスクトレイ3をイジェクト方向に押すイジェクトバネを示している。また、この図中には、回路基板が符号13により示されており、更に、上記のロックアーム35がレールガイド8と共に示されている。そして、この図3の右側には、上記レールガイド8の一部を取り出して拡大した構造が示されており、この図からも明らかなように、このレールガイド8側(即ち、本体側)には、上記ロックアーム35のフック状の係合部をロック(係合)するためのボス部(ロック部材)60が設けられている。なお、このボス部(ロック部材)60は、その他、例えば、ネジ又はピン等を上記レールガイド8の所定の位置に植立することにより形成してもよい。
【0026】
なお、上記図3に示す構成において、上記ロックアーム35が回動変位してそのフック状の係合部が上記ボス部60から外れ、もって、ディスクトレイ3の装置本体側に対するロック状態を解除した時、上記のイジェクトバネ12は、イジェクトレバー11を介してディスクトレイ3をイジェクト方向に押す。これにより、ディスクトレイ3はそのレール7(図1を参照)がレールガイド8により案内された状態で移動し、イジェクト(排出)が行われる。
【0027】
以上のように、本発明では、基本的に、光ディスク装置のイジェクトロック機構を、ディスクトレイを排出する際、イジェクト操作による励磁電流がソレノイドプランジャーに流れたとき、駆動バネの弾性復元力により駆動アームを回動変位させ、先ず上記ソレノイドプランジャーの可動部を固定部から離間させ、該離間後にロックアームを回動変位させ装置本体側との係合を解除する構成とする。
【0028】
次に、上記にも構成を説明した光ディスク装置のイジェクトロック機構について、その更なる詳細な構造を、その各種の状態と共に、以下に添付の図4〜図9を参照しながら説明する。
【0029】
まず、添付の図4は、ディスクトレイ3が装置本体側にロックされている状態を示す図である。この図4において、ディスクトレイ3は、そのロックアーム35を、装置本体側に設けられたレールガイド8に設けられたボス部(ロック部材)60にロック(係合)している。また、この図においても、符号31は駆動バネを、符号32は駆動アームを、そして、符号34はリセットアームを示しているが、特に、このリセットアーム34の詳細な構造の一例を、添付の図5に示している。
【0030】
即ち、この図5からも明らかなように、このリセットアーム34は、外形が略三角形状の駆動アーム部341と、当該駆動アーム部341の上部からを経由して前記リセットアーム側に回りこむ湾曲部(U字状弾性部)342を有している。なお、駆動アーム部341は、その一部に、上記ディスクトレイ3上に形成された上記ボス40cが挿入される回動支点孔343が形成されており、そして、その湾曲部342の先端のループ部には、やはり、上記ディスクトレイ3上に形成されたボス40dが挿入されている。なお、このリセットアーム34は、上記駆動アーム部341と上記湾曲部(U字状弾性部)342などを、例えば、POM(ポリアセタール)のような弾性を備えたプラスチック材により、例えば、駆動アーム部341と一体として、射出成型などにより製造される。
【0031】
なお、かかる構成のリセットアーム34によれば、図に破線で示すように、上記駆動アーム部341がその位置を移動(回動)しても、その湾曲部(U字状弾性部)342のU字部の相互間隔を狭めることで、バネ付勢力を駆動アーム部341に対して確保する構成となっている。即ち、常に、当該湾曲部(U字状弾性部)342には、常に張力などが掛かることはなく、そのため、長時間の使用により変形や破損を生じることもない。加えて、上記リセットアーム34の構造によれば、当該アームをトレイに装着する際にも、当該駆動アーム部341の回動支点孔343に、トレイ側に植立されたボス40cを挿入すると同時に、その湾曲部(U字状弾性部)342の先端のループ内にボス40dが位置するように配置するだけでよく、従来のリセットアームと捻りバネを積み重ねた構造に比較して、その組立作業が簡単になる。
【0032】
ここで、再び、図4に戻り、図中のその他の符号35、50、37は、それぞれ、上述したロックアーム、ソレノイドプランジャー、ソレノイドプランジャーの可動片を示しており、また、図中の符号41はロックバネを、符号cは、上記駆動アーム32とロックアーム35との間の空隙を、そして、符号dは、ソレノイドプランジャー50内にける可動片37と固定部との吸着部を示している。
【0033】
この図4に示した状態(ロック状態)、即ち、ソレノイドプランジャー50内において、コイルに電流が流されない状態では、可動片37は、マグネットの吸引力により固定部側に吸着されている。より詳細には、当該可動片37には駆動アーム32の一部が係合されており、そして、当該駆動アーム32には駆動バネ31が接続されている。そして、駆動アーム32の係合部(第2の係合部)は、上記ロックアーム35に対し、空隙cだけ隔てた、所謂、非接触状態にある。かかる状態では、上記駆動バネ31の復元力は、ソレノイドプランジャー50内における可動片37の固定部への吸着力よりも小さいため、駆動アーム32は、駆動バネ31による回動変位をせず、ロックアーム35との間に上記空隙cを保っている。また、この状態では、ロックアーム35は、先端部のフック状の係合部(第1の係合部)が、装置本体側に設けられたレールガイド8のボス部(ロック部材)60に係合され、もって、ディスクトレイ3を装置本体側にロック(係合)している。
【0034】
次に、添付の図6には、上記ソレノイドプランジャー50のコイルに電圧が印加され、可動片37が、駆動バネ31の復元力により駆動アーム32を介して引っ張られ、可動片37がその固定部から離間したときの状態を示す。
【0035】
即ち、上記図1のイジェクトボタン10が押され、ソレノイドプランジャー50のコイルに電圧が印加され、電流が供給されると、可動片37の固定部への吸着力が弱められ、駆動バネ31の復元力よりも十分小さい値となる。その結果、駆動バネ3の復元力により駆動アーム32が回動変位(図の矢印を参照)し、ソレノイドプランジャー50の可動片37を固定部から離間させる。この離間により、当該可動片37の、固定部との間の電磁吸着力は、急激に減少する。そして、電磁吸着力が減少し、かつ、当該可動片37が固定部から離間した状態で、駆動アーム32はその係合部(第2の係合部)によりロックアーム35に対する当接を開始し、更に回動変位することで、当該当接したロックアーム35を回動変位させる(図の矢印を参照)。つまり、駆動アーム32は、可動片37を離間させた後に、ロックアーム35に対して第2の係合部で当接し、その後、更に回動変位して当該ロックアーム35を回動変位させる。そして、当該ロックアーム35の回動変位により、ロックアーム35の先端部に形成したフック状の係合部(第1の係合部)も移動変位して、もって、レールガイド8のボス部(ロック部材)60と間の係合が浅くなる。
【0036】
添付の図7は、上記駆動アーム32が、上記図6の状態から更に駆動バネ31の復元力で回動変位してロックアーム35が回動変位した結果、ディスクトレイ3のロックを解除したときの状態を示す図である。
【0037】
即ち、上記図6の状態から更に駆動アーム32が回動変位すると、ソレノイドプランジャー50の可動片37は、固定部から更に遠い位置に離間し、固定部との間の吸引力は一層小さくなる。かかる状態において、当該駆動アーム32は、ロックアーム35を更に回動変位させる。そして、当該ロックアーム35の回動変位により、ロックアーム35の先端部に形成したフック状の係合部(第1の係合部)が移動変位し、レールガイド8のボス部(ロック部材)60との間の係合が外れ、図7の状態となる。
【0038】
そして、当該ロックアーム35の係合部がボス部(ロック部材)60から外れると、ディスクトレイ3の装置本体側に対するロック状態が解除され、イジェクトバネ12(図3を参照)は、イジェクトレバー11(図3)を介してディスクトレイ3をイジェクト(排出)する方向に押す。その結果、ディスクトレイ3はそのレール7(図1を参照)がレールガイド8に案内されて移動し、イジェクト(排出)される(図の矢印を参照)。
【0039】
以上の結果、即ち、ディスクトレイ3が、上記の図7に矢印で示すように、イジェクト(排出)されると、レールガイド8のボス部(ロック部材)60は、添付の図8に示すように、上記のディスクトレイ3に対して、相対的に、図の矢印方向に移動することとなる。そして、このボス部(ロック部材)60の移動により、上記リセットアーム34の駆動アーム部341の先端部に当接し、もって、当該駆動アーム部341をボス40dを中心に矢印方向に回転する。この時、リセットアーム34は、その湾曲(U字部)部342が引っ張られる。
【0040】
その後、レールガイド8のボス部(ロック部材)60が、更に、上記図8の矢印方向に移動すると、添付の図9に示すように、上記リセットアーム34の駆動アーム部341の先端部は、上記ボス部(ロック部材)60との当接から開放される。なお、この時、上記リセットアーム34の駆動アーム部341は、上記図8に示したように、一旦は、レールガイドのボス部(ロック部材)60に押されて回転し(図8の矢印を参照)、その先端部を図の右方向に引っ込めるが、その後、その湾曲(U字部)部342の弾性により、上記リセットアーム34の駆動アーム部341を所定の位置に戻す、即ち、駆動アーム部341を、トレイ3を本体内に搬入する際、駆動アーム32を元の方向に回転駆動してソレノイドのプランジャを復帰させる位置に付勢することとなる。
【0041】
即ち、図9からも明らかなように、このリセットアーム34の駆動アーム部341の先端部には、その後、再び、ディスクトレイ3を装置本体(筐体1、2)の内部に搬入するために移動する際(図の矢印を参照)、上記レールガイド8のボス部(ロック部材)60の反対側の面が、確実に当接し、もって、当該リセットアーム34の駆動アーム部341を矢印方向に回転することとなる。即ち、図にも明らかなように、このリセットアーム34の駆動アーム部341の回転により、上記駆動アーム32を矢印方向に回動し、もって、ソレノイドプランジャー50の可動片37を元の位置(その固定部と接触)に押し戻すと同時に、ロックアーム35をそのロックバネ41の働きにより元の位置に戻す。これにより、光ディスク装置のイジェクトロック機構は、再び、上記図4の状態に戻ることとなる。
【0042】
即ち、上述したように、駆動アーム部341と、当該駆動アーム部341の上部からを経由して前記リセットアーム側に回りこむ湾曲(U字部)部342を有しており、これらを一体として形成したリセットアーム34によれば、上記図5において破線で示すように、駆動アーム部341がレールガイド8のボス部(ロック部材)60により回動されても、その後、その湾曲(U字部)部342の働きにより、駆動アーム部341を所定の位置(即ち、トレイ3を本体内部に搬入する際、駆動アーム32を戻すことが出来る位置)に復帰させる(付勢する)ことが可能になる。このことによれば、イジェクトロック機構をロック状態か解除してディスクトレイ3を装置本体(筐体1、2)の外部に搬出した状態においても、従来のように、セットアームに捻りバネを積み重ねた構造を採用することなく、一体化したリセットアーム34を取り付けるだけで、その後、ディスクトレイ3を装置本体に搬入する際に、確実に、イジェクトロック機構を元のロック状態に戻すことが可能になる。また、特に、その際、従来の捻りバネを積み重ねた構造に代え、駆動アーム部341と湾曲(U字部)部342とを一体に形成した構造によれば、従来のイジェクトロック機構で発生していたトレイロック時の金属の弾き音による不快な音を解消して、トレイロック時の音を心地よいものとすることが出来ることから、光ディスク装置の心地よい操作性を実現することが可能となる。
【0043】
また、以上の本発明の実施例によれば、光ディスク装置において、上記に述べた効果に加え、ディスクトレイ3のイジェクト動作を行う際、(a)ソレノイドプランジャー50の可動片37を固定部から離間させる時は、駆動アーム32にロックアーム35が当接していないため、該ロックアーム35は該駆動アーム32及び駆動バネ31の負荷になっていない。このため、該駆動アーム32及び駆動バネ31は、ソレノイドプランジャー50の可動片37のみを負荷として、該可動片37を固定部から離間させればよいため、可動片37の固定部への吸着力が、生産時の部品特性のばらつきや使用環境の状態変化等に起因して増大した場合にも、確実に該可動片37を固定部から離間させ、駆動アーム32を回動変位させることができる。(b)また、駆動アーム32を介したロックアーム35の回動変位も、ソレノイドプランジャー50の上記可動片37が固定部から離間した後に行う構成のため、可動片37の固定部への吸着力が、駆動バネ31の復元力に比べ十分に小さくなった状態で、該駆動アーム32を介し該ロックアーム35の回動変位を行うことになる。このため、上記可動片37の離間後は、駆動バネ31の復元力の大部分を、駆動アーム32を介したロックアーム35の回動変位のために使うことができ、該ロックアーム35の回動変位を確実に行うことができる。従って、上記(a)、(b)に基づき、本実施例によれば確実なイジェクト動作が可能となる。
【0044】
なお、上記実施例では、ソレノイドプランジャー50の可動片37が固定部に吸着している状態では、駆動アーム32とロックアーム35との間に空隙を設け、該吸着状態では駆動アーム32がロックアーム35に当接しない構成として説明したが、本発明はこれにのみ限定されることはない。即ち、可動片37が固定部から離間した後に、駆動バネ31の復元力が駆動アーム32を介しロックアーム35に伝達される構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態になる光ディスク装置において、ディスクトレイを排出した状態の全体構成を示す斜視図である。
【図2】上記図1に示した光ディスク装置のディスクトレイの詳細を示す、裏面側から見た分解斜視図である。
【図3】上記図1に示した光ディスク装置においてディスクトレイを内部に収容した状態の全体構成を示す一部展開斜視図である。
【図4】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構において、ディスクトレイがロックされた状態を示す一部拡大図である。
【図5】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構におけるリセットアームの具体的な構造の一例を示す斜視図である。
【図6】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構においてディスクトレイがロック状態から外れる途中の状態を示す一部拡大図である。
【図7】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構においてディスクトレイがロック状態から外れた状態を示す一部拡大図である。
【図8】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構においてディスクトレイがロック状態から外れた後、ディスクトレイが移動する状態を示す一部拡大図である。
【図9】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構においてディスクトレイがロック状態から外れた後、ディスクトレイが再度挿入される状態を示す一部拡大図である。
【図10】上記光ディスク装置のイジェクトロック機構にけるソレノイドプランジャーの特性例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…トップケース、2…ボトムケース、3…ディスクトレイ、4…ディスクモータ、5…光ピックアップ、6…光ピックアップ送り機構、7…レール、8…レールガイド、9…フロントベゼル、10…イジェクトボタン、11…イジェクトレバー、12…イジェクトバネ、13…回路基板、21…アンダーカバー、35…ロックアーム、32…駆動アーム、31…駆動バネ、34…リセットアーム、341…駆動アーム部、342…湾曲部(U字状弾性部)、343…回動支点孔、36a、36b、36c…フック、37…可動片、39…フレキシブル基板、40a、40b、40c、40d…ボス、41…ロックバネ、42…ネジ、43…ダンパーゴム、50…ソレノイドプランジャー、60…ボス部(ロック部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に挿入可能なトレイとを備えると共に、前記筐体側にロック部材を設け、前記トレイ側には、前記トレイを前記筐体内に挿入する際の係止と、前記トレイを前記筐体から搬出する際のイジェクトとを行うイジェクトロック機構とを備えた光ディスクドライブ装置において、
前記トレイ側に設けられたイジェクトロック機構は、前記筐体側に設けられた前記ロック部材と係合して前記トレイを係止するロックアームと、前記ロックアームと当接して前記ロックアームを前記ロック部材との係合又は係合解除位置に移動させる駆動アームと、前記駆動アームと係合される可動プランジャを有するソレノイドと、前記ソレノイドのプランジャを復帰させるリセットアームとを有しており、かつ、
前記リセットアームは、前記トレイを前記筐体の外部に搬出する際、前記ロック部材と当接して回動することにより、前記駆動アームを前記ロックアームの係合解除位置に移動させる駆動アーム部と、前記トレイを前記筐体の内部に搬入する際、前記駆動アーム部を、前記ソレノイドのプランジャを復帰させる位置に付勢する弾性部とを、一体に形成して構成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記リセットアームの前記弾性部は、前記駆動アーム部の上部を経由して前記リセットアーム側に回りこむU字部を有していることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記弾性部と前記駆動アーム部とから構成される前記リセットアームを、プラスチックにより一体に形成して構成したことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate