光ディスク装置
【課題】光ディスク装置が共振する周波数帯を避けて光ディスクを回転させる。
【解決手段】光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避させた光ディスク10の回転速度が記憶されている回転速度記憶部40と、回転速度記憶部40に記憶されている回転速度でスピンドルモータ20を回転させるスピンドルモータ回転速度制御部30とを有する。
【解決手段】光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避させた光ディスク10の回転速度が記憶されている回転速度記憶部40と、回転速度記憶部40に記憶されている回転速度でスピンドルモータ20を回転させるスピンドルモータ回転速度制御部30とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、特に光ディスク装置が共振する周波数帯を避けて光ディスクを回転させるようにした光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)などの光ディスクに情報を記録、または光ディスクの情報を再生する場合、用いられる光ディスクの回転方式には下記のようなものがある。
【0003】
図1に示す光ディスクの回転方式は、記録線速度が一定のCLV(コンスタント リニア ベロシティー)と言われている方式である。CLV方式は、光ディスクのデータ領域において記録線速度を一定にするために、光ピックアップが光ディスクの内周から外周に移動するに連れて光ディスクの回転速度を低下させる。
【0004】
図1はDVDでの例を示したものであるが、横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図1の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図1の右側の縦軸は記録速度(DVDの基準倍速を1Xとした場合の倍速)を示している。
【0005】
図1を見れば明らかなように、光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて光ディスクの回転速度が徐々に低下し、記録速度は6倍速を保っていることが分かる。
【0006】
図2に示す光ディスクの回転方式は、光ディスクに設定した4つのゾーンごとに図1に示したCLV方式を適用したものであり、Z-CLV(ゾーンCLV)と言われている方式である。Z-CLV方式は、光ディスクのデータ領域において、ゾーンごとに記録線速度を変えゾーンごとに異なる記録速度を実現するために、光ピックアップが1つのゾーンを移動している間にそのゾーン内においてCLV方式で光ディスクの回転速度を低下させる。
【0007】
図2の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。光ディスクの内周24mmの位置から31mmの位置までは第1ゾーンに設定され、31mmから37mmの位置までは第2ゾーンに設定され、以降、37mmから44.5mmまでは第3ゾーンに、44.5mmから外周58mmまでは第4ゾーンにそれぞれ設定される。
【0008】
図2の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図2の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0009】
図2を見れば明らかなように、光ピックアップが各ゾーン内に位置しているときには、光ピックアップがそのゾーンの内周側から外周側に移動するに連れて光ディスクの回転速度が徐々に低下し、隣のゾーンに入った瞬間に光ディスクの回転速度を急激に上昇させる。光ディスクの回転速度の急上昇と滑らかな低下をゾーンごとに繰り返し、第1ゾーンでは6倍速、第2ゾーンでは8倍速、第3ゾーンでは10倍速、第4ゾーンでは12倍速の記録速度が得られる。
【0010】
Z-CLV方式は、ゾーンごとに記録速度を上昇させることができるため、CLV方式に比べて記録時間を短縮させることができるという利点がある。
【0011】
図3に示す光ディスクの回転方式は、光ディスクの回転速度が一定のCAV(コンスタント アンギュラー ベロシティー)と言われている方式である。
【0012】
CAV方式は、光ピックアップが光ディスクの内周と外周の間のどの位置にあっても角速度を一定のまま光ディスクを回転させる。
【0013】
図3の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図3の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図3の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0014】
図3を見れば明らかなように、光ピックアップが内周から外周に移動しても光ディスクは10200rpm程度の一定の回転速度で回転している。記録密度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて小さくなり、記録速度は、内周24mmの時点の6.5倍速程度から外周58mmの時点の16倍速程度までほぼ線形状に上昇する。
【0015】
図4に示す光ディスクの回転方式は、CAV方式とCLV方式を部分的に適用するP-CAV(パーシャルCAV)といわれている方式である。
【0016】
P-CAV方式は、CAV方式を適用する部分とCLV方式を適用する部分の二つのゾーンを有する。
【0017】
図4の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。光ディスクの内周24mmの位置から44mmの位置まではCAV方式が適用されるゾーンであり、44mmから外周58mmまではCLV方式が適用されるゾーンである。
【0018】
図4の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図4の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0019】
図4を見れば明らかなように、光ピックアップが光ディスクの内周24mmから44mmまでの間に位置しているときは光ディスクの回転速度が10000rpmで一定に保たれる。したがって、このゾーンでは記録速度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて大きくなる。
【0020】
そして、光ピックアップが光ディスクの44mmから外周58mmまでの間に位置しているときは記録密度を一定に保つために光ディスクの回転速度が徐々に低下する。このように光ディスクの回転速度を制御することによって、10.39倍速の平均記録速度が得られる。
【0021】
記録速度を上げるには、単純に光ディスクの回転速度を上昇させればよい。しかし、実際には、光ディスクを回転させるスピンドルモータおよび光ディスクの物理的な強度に起因する限界回転数による制約並びに安定した再生が保証できる最高記録速度などの制約を受け、無制限に光ディスクの回転速度を上昇させることはできない。そのため、通常は、正常に記録、再生できる限界に近い回転速度で光ディスクを回転させ、上記のような回転方式を採用して、平均記録速度の向上を図っている。
【0022】
なお、一般的な光ディスク装置に関する技術が下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−115993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の光ディスク装置は、上記のように光ディスクを10000rpm程度から7000rpm程度の間で高速回転させることから、光ディスクの回転速度によっては光ディスク装置が共振し振動する場合がある。
【0024】
すなわち、光ピックアップのフォーカスサーボ系、トラッキングサーボ系およびスピンドルモータのスピンドルモータサーボ系などの機械的な構成要素の固有振動数と光ディスクの回転数とが一致した場合には共振が発生し、各サーボ系の動作に悪影響を及ぼす。
【0025】
共振が発生すると、その振動にサーボ系の動作が追従できず、記録品質や再生品質が悪化し、正確な記録、再生ができなくなる。
【0026】
図5はCLV方式によって12倍速で記録した情報を再生した場合の再生信号の非対称性を示すβの変化状況を光ディスクの回転速度の変化と共に示した図である。
【0027】
図5の横軸は光ピックアップの位置を示している。図5の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図5の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。図5の下側に示している波形は再生信号の非対称性を示すβの波形であり、光ディスクの回転速度に応じてどのように変化するのかを示している。
【0028】
図5を見れば明らかなように、光ディスクの回転速度が9800rpm付近(163Hz付近)および8000rpm付近(133Hz付近)でβの波形に大きな乱れが生じている。この光ディスク装置の場合、共振周波数は163Hz付近および133Hz付近にあることがわかる。
【0029】
この光ディスク装置で共振を考慮することなく、図1に示したCLV方式、図2に示したZ-CLV方式、図4に示したP-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、光ディスクの回転速度が連続的に低下するために9800rpm付近および8000rpm付近を必ず通過する。このときに共振が発生し情報の記録品質が低下する。図3に示したCAV方式を採用した場合、光ディスクの回転数を9800rpm付近または8000rpm付近に設定すると共振が発生し情報の記録品質が低下する。
【0030】
図6は、図2に示したZ-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、図中丸印で囲まれた複数の部分で共振が発生し情報の記録品質が低下することを示している。
【0031】
本発明は、以上のような従来の問題点を解消するために成されたものであり、光ディスク装置が共振する周波数帯を避けて光ディスクを回転させるようにして、記録品質および再生品質を向上させることができる光ディスク装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するための本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクに情報を記録する機能および光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ディスク装置であり、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度を記憶する回転速度記憶部と、回転速度記憶部に記憶されている回転速度でスピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部とを有している。
【0033】
回転速度記憶部には光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度が記憶されている。したがって、モータ回転速度制御部はスピンドルモータを光ディスク装置が共振を起こさない回転速度で回転させるため、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、記録品質および再生品質を向上させることができる。
【0034】
上記目的を達成するための本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクに情報を記録する機能および光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ピックアップを備えた光ディスク装置であり、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、光ピックアップの光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部と、光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度を光ピックアップの光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶する回転速度記憶部と、光ピックアップ位置検出センサによって検出された光ピックアップの光ディスク面に対する位置に対応させて回転速度記憶部に記憶されている回転速度でスピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部とを有している。
【0035】
回転速度記憶部には光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度が光ピックアップの光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶されている。したがって、モータ回転速度制御部はスピンドルモータを光ディスク装置が共振を起こさない回転速度で回転させるため、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、記録品質および再生品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光ディスク装置の共振を確実に回避することができるため、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明に係る光ディスク装置を図面に基づき「実施形態1」と「実施形態2」に分けて詳細に説明する。
「実施形態1」
実施形態1における光ディスク装置は、CAV方式の回転制御を用いて光ディスク装置の共振を回避するものである。
【0038】
図7は、本実施形態の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の光ディスク装置100は、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20の回転速度を制御するスピンドルモータ回転速度制御部30と、スピンドルモータ20の回転速度を記憶する回転速度記憶部40と、光ディスク10に情報を記録したり、光ディスク10に記録されている情報を再生したりする光ピックアップ50と、光ピックアップ50を光ディスク10の径方向に移動させるアクチュエータ60を有している。
【0040】
光ディスク10の種類としては、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)など、現在店舗で購入できる光ディスクの全てに対して適用することができる。
【0041】
スピンドルモータ20は、光ディスクを最高10500rpm程度の高速で回転させることができるサーボモータである。スピンドルモータ20の回転速度は供給される電圧に応じて変化する。
【0042】
スピンドルモータ回転速度制御部30は、スピンドルモータ20に電圧を供給し、スピンドルモータ20の回転速度をサーボ制御により正確に制御するものである。
【0043】
回転速度記憶部40は、スピンドルモータ20の回転速度を記憶しているものであり、本実施形態では、10190rpmが記憶されている。
【0044】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避できる回転速度である。図6に示したように、この光ディスク装置の場合、9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の範囲が共振を生じやすい周波数帯である。このような周波数帯で共振する可能性のある光ディスク装置の場合、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、9500rpm〜10100rpmおよび7600rpm〜8200rpmから外れた最も大きな回転速度が記録速度の高速化の点から選択される。前述したように、光ディスク10の回転速度は、スピンドルモータ20および光ディスク10の物理的な強度に起因する限界回転数による制約並びに安定した再生が保証できる最高記録速度などの制約を受ける。これらの制約を受けずに共振する周波数帯を外すため、本実施形態の場合、回転速度記憶部40に記憶されている回転速度は角速度が一定の10190rpm(170Hz)に設定している。
【0045】
光ディスク装置100が共振する周波数には個体差があり、また、光ディスク10の種類、温度変化や経時変化の影響を受けることによって変動するため、共振する可能性のある周波数帯は、共振する周波数±3%程度の範囲を目安に設定することが望ましい。
【0046】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が線速度を一定とする方式で記録した光ディスク10の情報を実際に何度も再生してみて、そのときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定する。光ディスク装置100が共振していないときの再生信号の信号品位は非常に安定している。一方、光ディスク装置100が共振しているときの再生信号の信号品位は非常に不安定となる。
【0047】
信号品位は、再生信号の非対称性を示すβ値、再生信号の変調の度合いを示す変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量である。信号品位を示すこれらの物理量は本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば容易に理解することができるので、各物理量の詳細な説明は省略する。これらの物理量を選択する理由は、これらの物理量は再生品質が悪いときには非常に大きく変動するため、共振の有無が容易に判定できるからである。
【0048】
本実施形態の場合、再生信号の非対称性を示すβ値の変化状態(図5参照)を見て、急激に変化した時点の光ディスク10の回転速度を光ディスク装置100の共振が生じる回転速度としている。どの程度の回転速度の時に光ディスク装置100が共振を起こすのかは、上記のように、再生信号のβ値の変化状態を見て求めても良いし、その他に、再生信号の変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーなどの大きさの変化状態を見て求めても良い。
【0049】
なお、光ディスク装置100は様々な種類の光ディスクの記録、再生が可能であり、また、振動特性の個体差もあるので、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、どのような種類の光ディスクの記録、再生を行なっても共振を起こすことのない標準的な回転速度を記憶させておくことが好ましい。
【0050】
次に、図7の光ピックアップ50はアクチュエータ60によって光ディスク10の径方向に直線的に移動できるようになっている。正確には、光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間を移動できるようになっている。
【0051】
光ピックアップ50は光ディスク10のデータ領域に情報を記録したり、そのデータ領域に記録されている情報を再生したりする。記録させる情報および再生した情報は光ピックアップ50に接続されている図示しない信号処理装置(コンピュータ)との間で相互に授受される。
【0052】
本実施形態の光ディスク装置の動作を図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
まず、光ディスク装置100の動作が開始されると、スピンドルモータ回転速度制御部30は回転速度記憶部40に記憶されている回転速度を読み込む。本実施形態ではこの回転速度は10190rpmである。10190rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S1)。スピンドルモータ回転速度制御部30は読み込んだ回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、読み込んだ回転速度になるまでスピンドルモータ20の回転速度を上昇させる(S2)。そして、スピンドルモータ20の回転速度が読み込んだ回転速度まで上昇したら、サーボ制御によってこの回転速度を維持するように制御する(S3)。
【0054】
そして、この回転速度が維持された状態で、光ピックアップ50が光ディスク10の内周から外周に移動し、光ディスク10のデータ領域に情報を記録する(S4)。
【0055】
本実施形態では、図9に示すように、光ディスク10を一定の速度で回転させ、光ディスク10に情報を記録する。つまり、スピンドルモータ20の回転制御としてCAV方式を用いている。
【0056】
図9の横軸は光ピックアップ50の位置を示し、光ピックアップ50は光ディスク10の内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図9の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図9の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0057】
本実施形態では、図に示した9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の間で共振を起こす危険ゾーンと言われる周波数帯を避けるため、スピンドルモータ20の回転速度を10190rpmに設定している。したがって、光ディスク10は光ピックアップ50の位置にかかわらず一定の角速度で回転し、記録密度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて小さくなり、記録速度は、内周24mmの時点の6.5倍速程度から外周58mmの時点の16倍速程度までほぼ線形状に上昇する。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、光ディスク装置100が共振する周波数帯を実験によって求め、実験の結果に基づいて、スピンドルモータ20の回転速度を光ディスク装置が共振する周波数から外れるように設定しているので、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を維持することができる。
「実施形態2」
実施形態2における光ディスク装置は、光ディスクに設定したゾーンごとに異なる回転速度で光ディスクを回転させるZ−CAV(ゾーンCAV)方式の回転制御を用いて光ディスク装置の共振を回避するものである。
【0059】
本実施形態が採用するスピンドルモータの回転制御は、スピンドルモータの出力の大きさや消費電力の制限がある場合に、実施形態1のように、共振する周波数帯を避けた最高の回転速度まで回転速度を上げることができないときに有効である。また、光ディスクの記録特性や光ピックアップからのレーザーパワーに制限がある場合に、実施形態1のように、記録速度を16倍速まで大きくすることができないときにも有効である。
【0060】
図10は、本実施形態の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【0061】
本実施形態の光ディスク装置100は、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20の回転速度を制御するスピンドルモータ回転速度制御部30と、スピンドルモータ20の回転速度を記憶する回転速度記憶部40と、光ディスク10に情報を記録したり、光ディスク10に記録されている情報を再生したりする光ピックアップ50と、光ピックアップ50を光ディスク10の径方向に移動させるアクチュエータ60と、光ピックアップ50の光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部70を有している。
【0062】
本実施形態でも実施形態1と同様に、光ディスク10の種類としては、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)など、現在店舗で購入できる光ディスクの全てに対して適用することができる。
【0063】
スピンドルモータ20は、光ディスクを最高9500rpm程度から7000rpm程度の間で高速に回転させることができるサーボモータである。スピンドルモータ20の回転速度は供給される電圧に応じて変化する。
【0064】
スピンドルモータ回転速度制御部30は、スピンドルモータ20に電圧を供給し、スピンドルモータ20の回転速度をサーボ制御により正確に制御するものである。
【0065】
回転速度記憶部40は、スピンドルモータ20の回転速度を記憶しているものであり、本実施形態では、光ピックアップ50の位置と関連付けて回転速度を設定している。具体的には、光ピックアップ50が光ディスク10の内周24mmから47.5mmの第1ゾーンに位置しているときには9300rpmが、47.5mmから53mmの第2ゾーンに位置しているときには8400rpmが、53mmから外周58mmの第3ゾーンに位置しているときには7400rpmがそれぞれ設定され記憶されている。
【0066】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、実施形態1と同様に、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避できる回転速度である。図6に示したように、この光ディスク装置の場合、9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の範囲が共振を生じやすい周波数帯である。このような周波数帯で共振する可能性のある光ディスク装置の場合、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、9500rpm〜10100rpmおよび7600rpm〜8200rpmから外れた回転数が選択される。
【0067】
このため、本実施形態では、共振を生じやすい周波数帯から外れた周波数となる9300rpm(155Hz)、8400rpm(140Hz)、7400rpm(123Hz)をそれぞれ設定している。これらの回転速度は共振を生じやすい周波数帯の下限の回転速度(たとえば9500rpm)に安全を見込んだ(たとえば200rpm程度)最も高い回転速度(9300pm)としている。このような回転速度に設定するのは、記録速度を落とさないようにするためである。
【0068】
実施形態1と同様に、光ディスク装置100が共振する周波数には個体差があり、また、光ディスク10の種類、温度変化や経時変化の影響を受けることによって変動するため、共振する可能性のある周波数帯は、共振する周波数±3%程度の範囲を目安に設定することが望ましい。
【0069】
実施形態1と同様に、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が線速度を一定とする方式で記録した光ディスク10の情報を実際に何度も再生してみて、そのときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定する。光ディスク装置100が共振していないときの再生信号の信号品位は非常に安定している。一方、光ディスク装置100が共振しているときの再生信号の信号品位は非常に不安定となる。
【0070】
信号品位は、再生信号の非対称性を示すβ値、再生信号の変調の度合いを示す変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量である。信号品位を示すこれらの物理量は本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば容易に理解することができるので、各物理量の詳細な説明は省略する。これらの物理量を選択する理由は、これらの物理量は再生品質が悪いときには非常に大きく変動するため、共振の有無が容易に判定できるからである。
【0071】
本実施形態の場合、再生信号の非対称性を示すβ値の変化状態(図5参照)を見て、急激に変化した時点の光ディスク10の回転速度を光ディスク装置100の共振が生じる回転速度としている。どの程度の回転速度の時に光ディスク装置100が共振を起こすのかは、上記のように、再生信号のβ値の変化状態を見て求めても良いし、その他に、再生信号の変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーなどの大きさの変化状態を見て求めても良い。
【0072】
次に、図10の光ピックアップ50はアクチュエータ60によって光ディスク10の径方向に直線的に移動できるようになっている。正確には、光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間を移動できるようになっている。
【0073】
光ピックアップ50は光ディスク10のデータ領域に情報を記録したり、そのデータ領域に記録されている情報を再生したりする。記録させる情報および再生した情報は光ピックアップ50に接続されている図示しない信号処理装置(コンピュータ)との間で相互に授受される。
【0074】
アクチュエータ60は光ピックアップ50がディスク面に対してどの位置にあるのかを示す位置信号を出力することができる。
【0075】
光ピックアップ位置検知部70はアクチュエータ60から出力される位置信号によって光ピックアップ50がディスク面のどのゾーンに位置しているのかを検知する。光ピックアップ位置検知部70はスピンドルモータ回転速度制御部30に光ピックアップ装置が第1ゾーンから第3ゾーンのどの位置にあるのかを知らせることができる。
【0076】
本実施形態の光ディスク装置の動作を図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0077】
まず、光ディスク装置100の動作が開始されると、光ピックアップ位置検知部70はアクチュエータ60から出力されている位置信号を入力し、光ピックアップ50が第1ゾーンから第3ゾーンの内のどのゾーンに位置しているのかを検知する(S11)。スピンドルモータ回転速度制御部30は、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第1ゾーンであることが検知されている場合(S12:YES)、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を9300rpmに設定する。9300rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S13)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。そして、スピンドルモータ20の回転速度が読み込んだ回転速度になったら、サーボ制御によってこの回転速度を維持するように制御する(S15)。
【0078】
そして、この回転速度が維持された状態で、光ピックアップ50が光ディスク10の内周から外周に移動し、光ディスク10のデータ領域に情報を記録する(S16)。次に、スピンドルモータ回転速度制御部30は、光ピックアップ位置検知部70に光ピックアップ50の現在位置が第3ゾーンの終端まで達したか否かを問い合わせる(S17)。
光ピックアップ50の位置が第3ゾーンの終端に達していれば(S17:YES)、処理を終了し、スピンドルモータ20の回転を停止させる。一方、光ピックアップ50の位置が第3ゾーンの終端に達していなければ(S17:NO)、S11のステップの処理に戻る。
【0079】
以上の処理が進み、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第2ゾーンに入ったことが検知されると(S12:NO、S18:YES)、スピンドルモータ回転速度制御部30は、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を8400rpmに設定する。8400rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S19)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。以降、S15からS17までの処理は以上の通りである。
【0080】
次に、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第3ゾーンに入ったことが検知されると(S12:NO、S18:NO、S20:YES)、スピンドルモータ回転速度制御部30は、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を7400rpmに設定する。7400rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S21)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。以降、S15からS17までの処理は以上の通りである。なお、光ピックアップ50の現在位置が第1ゾーンから第3ゾーンのいずれにもないときには(S12:NO、S18:NO、S20:NO)、処理を中止して、スピンドルモータ20の回転を停止させる。
【0081】
本実施形態では、図13に示すように、光ディスク10をゾーンごとに一定の速度で回転させ、光ディスク10に情報を記録する。つまり、スピンドルモータ20の回転制御としてZ−CAV方式を用いている。
【0082】
図13の横軸は光ピックアップ50の位置を示し、光ピックアップ50は光ディスク10の内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図13の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図13の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0083】
本実施形態では、図に示した9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の間で共振を起こす危険ゾーンと言われる周波数帯を避けるため、スピンドルモータ20の回転速度を第1ゾーンでは9300rpm(155Hz)に、第2ゾーンでは8400rpm(140Hz)に、第3ゾーンでは7400rpm(123Hz)にそれぞれ設定している。したがって、光ディスク10は光ピックアップ50の位置するソーンに応じて異なる一定の角速度で回転し、記録速度は、第1ゾーンから第3ゾーンまで最大12倍速に抑えられる。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、光ディスク装置100が共振する周波数帯を実験によって求め、実験の結果に基づいて、スピンドルモータ20の回転速度をゾーンごとに光ディスク装置が共振する周波数から外れるように設定しているので、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、光ディスクの記録および再生装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】記録密度が一定のCLV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図2】記録密度がゾーンごとに一定のZ−CLV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図3】角速度が一定のCAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図4】CAV方式とCLV方式を部分的に用いるP−CAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図5】CLV方式によって12倍速で記録した情報を再生した場合の再生信号の非対称性を示すβの変化状況を光ディスクの回転速度の変化と共に示した図である。
【図6】図2に示したZ-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、図中丸印で囲まれた複数の部分で共振が発生し情報の記録品質が低下することの説明に供する図である。
【図7】実施形態1の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した光ディスク装置の動作フローチャートである。
【図9】実施形態1の光ディスク装置が採用するCAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図10】実施形態2の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した光ディスク装置の動作フローチャートである。
【図12】実施形態2の回転速度記憶部に記憶されているデータの詳細を示す図である。
【図13】実施形態2の光ディスク装置が採用するZ−CAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 光ディスク、
20 スピンドルモータ、
30 スピンドルモータ回転速度制御部、
40 回転速度記憶部、
50 光ピックアップ、
60 アクチュエータ、
70 光ピックアップ位置検知部、
100 光ディスク装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、特に光ディスク装置が共振する周波数帯を避けて光ディスクを回転させるようにした光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)などの光ディスクに情報を記録、または光ディスクの情報を再生する場合、用いられる光ディスクの回転方式には下記のようなものがある。
【0003】
図1に示す光ディスクの回転方式は、記録線速度が一定のCLV(コンスタント リニア ベロシティー)と言われている方式である。CLV方式は、光ディスクのデータ領域において記録線速度を一定にするために、光ピックアップが光ディスクの内周から外周に移動するに連れて光ディスクの回転速度を低下させる。
【0004】
図1はDVDでの例を示したものであるが、横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図1の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図1の右側の縦軸は記録速度(DVDの基準倍速を1Xとした場合の倍速)を示している。
【0005】
図1を見れば明らかなように、光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて光ディスクの回転速度が徐々に低下し、記録速度は6倍速を保っていることが分かる。
【0006】
図2に示す光ディスクの回転方式は、光ディスクに設定した4つのゾーンごとに図1に示したCLV方式を適用したものであり、Z-CLV(ゾーンCLV)と言われている方式である。Z-CLV方式は、光ディスクのデータ領域において、ゾーンごとに記録線速度を変えゾーンごとに異なる記録速度を実現するために、光ピックアップが1つのゾーンを移動している間にそのゾーン内においてCLV方式で光ディスクの回転速度を低下させる。
【0007】
図2の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。光ディスクの内周24mmの位置から31mmの位置までは第1ゾーンに設定され、31mmから37mmの位置までは第2ゾーンに設定され、以降、37mmから44.5mmまでは第3ゾーンに、44.5mmから外周58mmまでは第4ゾーンにそれぞれ設定される。
【0008】
図2の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図2の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0009】
図2を見れば明らかなように、光ピックアップが各ゾーン内に位置しているときには、光ピックアップがそのゾーンの内周側から外周側に移動するに連れて光ディスクの回転速度が徐々に低下し、隣のゾーンに入った瞬間に光ディスクの回転速度を急激に上昇させる。光ディスクの回転速度の急上昇と滑らかな低下をゾーンごとに繰り返し、第1ゾーンでは6倍速、第2ゾーンでは8倍速、第3ゾーンでは10倍速、第4ゾーンでは12倍速の記録速度が得られる。
【0010】
Z-CLV方式は、ゾーンごとに記録速度を上昇させることができるため、CLV方式に比べて記録時間を短縮させることができるという利点がある。
【0011】
図3に示す光ディスクの回転方式は、光ディスクの回転速度が一定のCAV(コンスタント アンギュラー ベロシティー)と言われている方式である。
【0012】
CAV方式は、光ピックアップが光ディスクの内周と外周の間のどの位置にあっても角速度を一定のまま光ディスクを回転させる。
【0013】
図3の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図3の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図3の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0014】
図3を見れば明らかなように、光ピックアップが内周から外周に移動しても光ディスクは10200rpm程度の一定の回転速度で回転している。記録密度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて小さくなり、記録速度は、内周24mmの時点の6.5倍速程度から外周58mmの時点の16倍速程度までほぼ線形状に上昇する。
【0015】
図4に示す光ディスクの回転方式は、CAV方式とCLV方式を部分的に適用するP-CAV(パーシャルCAV)といわれている方式である。
【0016】
P-CAV方式は、CAV方式を適用する部分とCLV方式を適用する部分の二つのゾーンを有する。
【0017】
図4の横軸は光ピックアップの位置を示し、光ピックアップは光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。光ディスクの内周24mmの位置から44mmの位置まではCAV方式が適用されるゾーンであり、44mmから外周58mmまではCLV方式が適用されるゾーンである。
【0018】
図4の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図4の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0019】
図4を見れば明らかなように、光ピックアップが光ディスクの内周24mmから44mmまでの間に位置しているときは光ディスクの回転速度が10000rpmで一定に保たれる。したがって、このゾーンでは記録速度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて大きくなる。
【0020】
そして、光ピックアップが光ディスクの44mmから外周58mmまでの間に位置しているときは記録密度を一定に保つために光ディスクの回転速度が徐々に低下する。このように光ディスクの回転速度を制御することによって、10.39倍速の平均記録速度が得られる。
【0021】
記録速度を上げるには、単純に光ディスクの回転速度を上昇させればよい。しかし、実際には、光ディスクを回転させるスピンドルモータおよび光ディスクの物理的な強度に起因する限界回転数による制約並びに安定した再生が保証できる最高記録速度などの制約を受け、無制限に光ディスクの回転速度を上昇させることはできない。そのため、通常は、正常に記録、再生できる限界に近い回転速度で光ディスクを回転させ、上記のような回転方式を採用して、平均記録速度の向上を図っている。
【0022】
なお、一般的な光ディスク装置に関する技術が下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−115993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の光ディスク装置は、上記のように光ディスクを10000rpm程度から7000rpm程度の間で高速回転させることから、光ディスクの回転速度によっては光ディスク装置が共振し振動する場合がある。
【0024】
すなわち、光ピックアップのフォーカスサーボ系、トラッキングサーボ系およびスピンドルモータのスピンドルモータサーボ系などの機械的な構成要素の固有振動数と光ディスクの回転数とが一致した場合には共振が発生し、各サーボ系の動作に悪影響を及ぼす。
【0025】
共振が発生すると、その振動にサーボ系の動作が追従できず、記録品質や再生品質が悪化し、正確な記録、再生ができなくなる。
【0026】
図5はCLV方式によって12倍速で記録した情報を再生した場合の再生信号の非対称性を示すβの変化状況を光ディスクの回転速度の変化と共に示した図である。
【0027】
図5の横軸は光ピックアップの位置を示している。図5の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図5の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。図5の下側に示している波形は再生信号の非対称性を示すβの波形であり、光ディスクの回転速度に応じてどのように変化するのかを示している。
【0028】
図5を見れば明らかなように、光ディスクの回転速度が9800rpm付近(163Hz付近)および8000rpm付近(133Hz付近)でβの波形に大きな乱れが生じている。この光ディスク装置の場合、共振周波数は163Hz付近および133Hz付近にあることがわかる。
【0029】
この光ディスク装置で共振を考慮することなく、図1に示したCLV方式、図2に示したZ-CLV方式、図4に示したP-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、光ディスクの回転速度が連続的に低下するために9800rpm付近および8000rpm付近を必ず通過する。このときに共振が発生し情報の記録品質が低下する。図3に示したCAV方式を採用した場合、光ディスクの回転数を9800rpm付近または8000rpm付近に設定すると共振が発生し情報の記録品質が低下する。
【0030】
図6は、図2に示したZ-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、図中丸印で囲まれた複数の部分で共振が発生し情報の記録品質が低下することを示している。
【0031】
本発明は、以上のような従来の問題点を解消するために成されたものであり、光ディスク装置が共振する周波数帯を避けて光ディスクを回転させるようにして、記録品質および再生品質を向上させることができる光ディスク装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するための本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクに情報を記録する機能および光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ディスク装置であり、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度を記憶する回転速度記憶部と、回転速度記憶部に記憶されている回転速度でスピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部とを有している。
【0033】
回転速度記憶部には光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度が記憶されている。したがって、モータ回転速度制御部はスピンドルモータを光ディスク装置が共振を起こさない回転速度で回転させるため、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、記録品質および再生品質を向上させることができる。
【0034】
上記目的を達成するための本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクに情報を記録する機能および光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ピックアップを備えた光ディスク装置であり、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、光ピックアップの光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部と、光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度を光ピックアップの光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶する回転速度記憶部と、光ピックアップ位置検出センサによって検出された光ピックアップの光ディスク面に対する位置に対応させて回転速度記憶部に記憶されている回転速度でスピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部とを有している。
【0035】
回転速度記憶部には光ディスク装置が光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための光ディスクの回転速度が光ピックアップの光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶されている。したがって、モータ回転速度制御部はスピンドルモータを光ディスク装置が共振を起こさない回転速度で回転させるため、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、記録品質および再生品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光ディスク装置の共振を確実に回避することができるため、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明に係る光ディスク装置を図面に基づき「実施形態1」と「実施形態2」に分けて詳細に説明する。
「実施形態1」
実施形態1における光ディスク装置は、CAV方式の回転制御を用いて光ディスク装置の共振を回避するものである。
【0038】
図7は、本実施形態の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の光ディスク装置100は、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20の回転速度を制御するスピンドルモータ回転速度制御部30と、スピンドルモータ20の回転速度を記憶する回転速度記憶部40と、光ディスク10に情報を記録したり、光ディスク10に記録されている情報を再生したりする光ピックアップ50と、光ピックアップ50を光ディスク10の径方向に移動させるアクチュエータ60を有している。
【0040】
光ディスク10の種類としては、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)など、現在店舗で購入できる光ディスクの全てに対して適用することができる。
【0041】
スピンドルモータ20は、光ディスクを最高10500rpm程度の高速で回転させることができるサーボモータである。スピンドルモータ20の回転速度は供給される電圧に応じて変化する。
【0042】
スピンドルモータ回転速度制御部30は、スピンドルモータ20に電圧を供給し、スピンドルモータ20の回転速度をサーボ制御により正確に制御するものである。
【0043】
回転速度記憶部40は、スピンドルモータ20の回転速度を記憶しているものであり、本実施形態では、10190rpmが記憶されている。
【0044】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避できる回転速度である。図6に示したように、この光ディスク装置の場合、9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の範囲が共振を生じやすい周波数帯である。このような周波数帯で共振する可能性のある光ディスク装置の場合、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、9500rpm〜10100rpmおよび7600rpm〜8200rpmから外れた最も大きな回転速度が記録速度の高速化の点から選択される。前述したように、光ディスク10の回転速度は、スピンドルモータ20および光ディスク10の物理的な強度に起因する限界回転数による制約並びに安定した再生が保証できる最高記録速度などの制約を受ける。これらの制約を受けずに共振する周波数帯を外すため、本実施形態の場合、回転速度記憶部40に記憶されている回転速度は角速度が一定の10190rpm(170Hz)に設定している。
【0045】
光ディスク装置100が共振する周波数には個体差があり、また、光ディスク10の種類、温度変化や経時変化の影響を受けることによって変動するため、共振する可能性のある周波数帯は、共振する周波数±3%程度の範囲を目安に設定することが望ましい。
【0046】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が線速度を一定とする方式で記録した光ディスク10の情報を実際に何度も再生してみて、そのときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定する。光ディスク装置100が共振していないときの再生信号の信号品位は非常に安定している。一方、光ディスク装置100が共振しているときの再生信号の信号品位は非常に不安定となる。
【0047】
信号品位は、再生信号の非対称性を示すβ値、再生信号の変調の度合いを示す変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量である。信号品位を示すこれらの物理量は本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば容易に理解することができるので、各物理量の詳細な説明は省略する。これらの物理量を選択する理由は、これらの物理量は再生品質が悪いときには非常に大きく変動するため、共振の有無が容易に判定できるからである。
【0048】
本実施形態の場合、再生信号の非対称性を示すβ値の変化状態(図5参照)を見て、急激に変化した時点の光ディスク10の回転速度を光ディスク装置100の共振が生じる回転速度としている。どの程度の回転速度の時に光ディスク装置100が共振を起こすのかは、上記のように、再生信号のβ値の変化状態を見て求めても良いし、その他に、再生信号の変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーなどの大きさの変化状態を見て求めても良い。
【0049】
なお、光ディスク装置100は様々な種類の光ディスクの記録、再生が可能であり、また、振動特性の個体差もあるので、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、どのような種類の光ディスクの記録、再生を行なっても共振を起こすことのない標準的な回転速度を記憶させておくことが好ましい。
【0050】
次に、図7の光ピックアップ50はアクチュエータ60によって光ディスク10の径方向に直線的に移動できるようになっている。正確には、光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間を移動できるようになっている。
【0051】
光ピックアップ50は光ディスク10のデータ領域に情報を記録したり、そのデータ領域に記録されている情報を再生したりする。記録させる情報および再生した情報は光ピックアップ50に接続されている図示しない信号処理装置(コンピュータ)との間で相互に授受される。
【0052】
本実施形態の光ディスク装置の動作を図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
まず、光ディスク装置100の動作が開始されると、スピンドルモータ回転速度制御部30は回転速度記憶部40に記憶されている回転速度を読み込む。本実施形態ではこの回転速度は10190rpmである。10190rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S1)。スピンドルモータ回転速度制御部30は読み込んだ回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、読み込んだ回転速度になるまでスピンドルモータ20の回転速度を上昇させる(S2)。そして、スピンドルモータ20の回転速度が読み込んだ回転速度まで上昇したら、サーボ制御によってこの回転速度を維持するように制御する(S3)。
【0054】
そして、この回転速度が維持された状態で、光ピックアップ50が光ディスク10の内周から外周に移動し、光ディスク10のデータ領域に情報を記録する(S4)。
【0055】
本実施形態では、図9に示すように、光ディスク10を一定の速度で回転させ、光ディスク10に情報を記録する。つまり、スピンドルモータ20の回転制御としてCAV方式を用いている。
【0056】
図9の横軸は光ピックアップ50の位置を示し、光ピックアップ50は光ディスク10の内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図9の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図9の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0057】
本実施形態では、図に示した9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の間で共振を起こす危険ゾーンと言われる周波数帯を避けるため、スピンドルモータ20の回転速度を10190rpmに設定している。したがって、光ディスク10は光ピックアップ50の位置にかかわらず一定の角速度で回転し、記録密度は光ピックアップが内周から外周に移動するに連れて小さくなり、記録速度は、内周24mmの時点の6.5倍速程度から外周58mmの時点の16倍速程度までほぼ線形状に上昇する。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、光ディスク装置100が共振する周波数帯を実験によって求め、実験の結果に基づいて、スピンドルモータ20の回転速度を光ディスク装置が共振する周波数から外れるように設定しているので、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を維持することができる。
「実施形態2」
実施形態2における光ディスク装置は、光ディスクに設定したゾーンごとに異なる回転速度で光ディスクを回転させるZ−CAV(ゾーンCAV)方式の回転制御を用いて光ディスク装置の共振を回避するものである。
【0059】
本実施形態が採用するスピンドルモータの回転制御は、スピンドルモータの出力の大きさや消費電力の制限がある場合に、実施形態1のように、共振する周波数帯を避けた最高の回転速度まで回転速度を上げることができないときに有効である。また、光ディスクの記録特性や光ピックアップからのレーザーパワーに制限がある場合に、実施形態1のように、記録速度を16倍速まで大きくすることができないときにも有効である。
【0060】
図10は、本実施形態の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【0061】
本実施形態の光ディスク装置100は、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、スピンドルモータ20の回転速度を制御するスピンドルモータ回転速度制御部30と、スピンドルモータ20の回転速度を記憶する回転速度記憶部40と、光ディスク10に情報を記録したり、光ディスク10に記録されている情報を再生したりする光ピックアップ50と、光ピックアップ50を光ディスク10の径方向に移動させるアクチュエータ60と、光ピックアップ50の光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部70を有している。
【0062】
本実施形態でも実施形態1と同様に、光ディスク10の種類としては、CD(コンパクトディスク)、DVD(ディジタルバーサトルディスク)、BD(ブルーレイディスク)など、現在店舗で購入できる光ディスクの全てに対して適用することができる。
【0063】
スピンドルモータ20は、光ディスクを最高9500rpm程度から7000rpm程度の間で高速に回転させることができるサーボモータである。スピンドルモータ20の回転速度は供給される電圧に応じて変化する。
【0064】
スピンドルモータ回転速度制御部30は、スピンドルモータ20に電圧を供給し、スピンドルモータ20の回転速度をサーボ制御により正確に制御するものである。
【0065】
回転速度記憶部40は、スピンドルモータ20の回転速度を記憶しているものであり、本実施形態では、光ピックアップ50の位置と関連付けて回転速度を設定している。具体的には、光ピックアップ50が光ディスク10の内周24mmから47.5mmの第1ゾーンに位置しているときには9300rpmが、47.5mmから53mmの第2ゾーンに位置しているときには8400rpmが、53mmから外周58mmの第3ゾーンに位置しているときには7400rpmがそれぞれ設定され記憶されている。
【0066】
回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、実施形態1と同様に、光ディスク装置100が光ディスク10の回転により共振する周波数帯を回避できる回転速度である。図6に示したように、この光ディスク装置の場合、9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の範囲が共振を生じやすい周波数帯である。このような周波数帯で共振する可能性のある光ディスク装置の場合、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、9500rpm〜10100rpmおよび7600rpm〜8200rpmから外れた回転数が選択される。
【0067】
このため、本実施形態では、共振を生じやすい周波数帯から外れた周波数となる9300rpm(155Hz)、8400rpm(140Hz)、7400rpm(123Hz)をそれぞれ設定している。これらの回転速度は共振を生じやすい周波数帯の下限の回転速度(たとえば9500rpm)に安全を見込んだ(たとえば200rpm程度)最も高い回転速度(9300pm)としている。このような回転速度に設定するのは、記録速度を落とさないようにするためである。
【0068】
実施形態1と同様に、光ディスク装置100が共振する周波数には個体差があり、また、光ディスク10の種類、温度変化や経時変化の影響を受けることによって変動するため、共振する可能性のある周波数帯は、共振する周波数±3%程度の範囲を目安に設定することが望ましい。
【0069】
実施形態1と同様に、回転速度記憶部40に記憶させる回転速度は、光ディスク装置100が線速度を一定とする方式で記録した光ディスク10の情報を実際に何度も再生してみて、そのときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定する。光ディスク装置100が共振していないときの再生信号の信号品位は非常に安定している。一方、光ディスク装置100が共振しているときの再生信号の信号品位は非常に不安定となる。
【0070】
信号品位は、再生信号の非対称性を示すβ値、再生信号の変調の度合いを示す変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量である。信号品位を示すこれらの物理量は本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば容易に理解することができるので、各物理量の詳細な説明は省略する。これらの物理量を選択する理由は、これらの物理量は再生品質が悪いときには非常に大きく変動するため、共振の有無が容易に判定できるからである。
【0071】
本実施形態の場合、再生信号の非対称性を示すβ値の変化状態(図5参照)を見て、急激に変化した時点の光ディスク10の回転速度を光ディスク装置100の共振が生じる回転速度としている。どの程度の回転速度の時に光ディスク装置100が共振を起こすのかは、上記のように、再生信号のβ値の変化状態を見て求めても良いし、その他に、再生信号の変調度、再生信号の分解能、再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、再生信号から生じるシンボルエラーなどの大きさの変化状態を見て求めても良い。
【0072】
次に、図10の光ピックアップ50はアクチュエータ60によって光ディスク10の径方向に直線的に移動できるようになっている。正確には、光ディスクの内周(24mm)から外周(58mm)までの間を移動できるようになっている。
【0073】
光ピックアップ50は光ディスク10のデータ領域に情報を記録したり、そのデータ領域に記録されている情報を再生したりする。記録させる情報および再生した情報は光ピックアップ50に接続されている図示しない信号処理装置(コンピュータ)との間で相互に授受される。
【0074】
アクチュエータ60は光ピックアップ50がディスク面に対してどの位置にあるのかを示す位置信号を出力することができる。
【0075】
光ピックアップ位置検知部70はアクチュエータ60から出力される位置信号によって光ピックアップ50がディスク面のどのゾーンに位置しているのかを検知する。光ピックアップ位置検知部70はスピンドルモータ回転速度制御部30に光ピックアップ装置が第1ゾーンから第3ゾーンのどの位置にあるのかを知らせることができる。
【0076】
本実施形態の光ディスク装置の動作を図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0077】
まず、光ディスク装置100の動作が開始されると、光ピックアップ位置検知部70はアクチュエータ60から出力されている位置信号を入力し、光ピックアップ50が第1ゾーンから第3ゾーンの内のどのゾーンに位置しているのかを検知する(S11)。スピンドルモータ回転速度制御部30は、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第1ゾーンであることが検知されている場合(S12:YES)、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を9300rpmに設定する。9300rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S13)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。そして、スピンドルモータ20の回転速度が読み込んだ回転速度になったら、サーボ制御によってこの回転速度を維持するように制御する(S15)。
【0078】
そして、この回転速度が維持された状態で、光ピックアップ50が光ディスク10の内周から外周に移動し、光ディスク10のデータ領域に情報を記録する(S16)。次に、スピンドルモータ回転速度制御部30は、光ピックアップ位置検知部70に光ピックアップ50の現在位置が第3ゾーンの終端まで達したか否かを問い合わせる(S17)。
光ピックアップ50の位置が第3ゾーンの終端に達していれば(S17:YES)、処理を終了し、スピンドルモータ20の回転を停止させる。一方、光ピックアップ50の位置が第3ゾーンの終端に達していなければ(S17:NO)、S11のステップの処理に戻る。
【0079】
以上の処理が進み、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第2ゾーンに入ったことが検知されると(S12:NO、S18:YES)、スピンドルモータ回転速度制御部30は、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を8400rpmに設定する。8400rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S19)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。以降、S15からS17までの処理は以上の通りである。
【0080】
次に、光ピックアップ位置検知部70によって光ピックアップ50の現在位置が第3ゾーンに入ったことが検知されると(S12:NO、S18:NO、S20:YES)、スピンドルモータ回転速度制御部30は、回転速度記憶部40に記憶されている図12に示したテーブルを見て、スピンドルモータ20の回転速度を7400rpmに設定する。7400rpmは光ディスク装置100が共振を起こすことのない回転速度である(S21)。スピンドルモータ回転速度制御部30は設定した回転速度に基づいてスピンドルモータ20に電圧を供給し、設定した回転速度になるようにスピンドルモータ20の回転速度を制御する(S14)。以降、S15からS17までの処理は以上の通りである。なお、光ピックアップ50の現在位置が第1ゾーンから第3ゾーンのいずれにもないときには(S12:NO、S18:NO、S20:NO)、処理を中止して、スピンドルモータ20の回転を停止させる。
【0081】
本実施形態では、図13に示すように、光ディスク10をゾーンごとに一定の速度で回転させ、光ディスク10に情報を記録する。つまり、スピンドルモータ20の回転制御としてZ−CAV方式を用いている。
【0082】
図13の横軸は光ピックアップ50の位置を示し、光ピックアップ50は光ディスク10の内周(24mm)から外周(58mm)までの間に位置する。図13の左側の縦軸は光ディスクの回転速度(rpm)を示している。図13の右側の縦軸は記録速度(倍速)を示している。
【0083】
本実施形態では、図に示した9500rpm〜10100rpm(158Hz〜168Hz)、7600rpm〜8200rpm(127Hz〜137Hz)の間で共振を起こす危険ゾーンと言われる周波数帯を避けるため、スピンドルモータ20の回転速度を第1ゾーンでは9300rpm(155Hz)に、第2ゾーンでは8400rpm(140Hz)に、第3ゾーンでは7400rpm(123Hz)にそれぞれ設定している。したがって、光ディスク10は光ピックアップ50の位置するソーンに応じて異なる一定の角速度で回転し、記録速度は、第1ゾーンから第3ゾーンまで最大12倍速に抑えられる。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、光ディスク装置100が共振する周波数帯を実験によって求め、実験の結果に基づいて、スピンドルモータ20の回転速度をゾーンごとに光ディスク装置が共振する周波数から外れるように設定しているので、光ディスク装置の共振を確実に回避することができ、光ディスクの安定した記録品質および再生品質を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、光ディスクの記録および再生装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】記録密度が一定のCLV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図2】記録密度がゾーンごとに一定のZ−CLV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図3】角速度が一定のCAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図4】CAV方式とCLV方式を部分的に用いるP−CAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図5】CLV方式によって12倍速で記録した情報を再生した場合の再生信号の非対称性を示すβの変化状況を光ディスクの回転速度の変化と共に示した図である。
【図6】図2に示したZ-CLV方式によって光ディスクの回転制御を行なった場合、図中丸印で囲まれた複数の部分で共振が発生し情報の記録品質が低下することの説明に供する図である。
【図7】実施形態1の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示した光ディスク装置の動作フローチャートである。
【図9】実施形態1の光ディスク装置が採用するCAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【図10】実施形態2の光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した光ディスク装置の動作フローチャートである。
【図12】実施形態2の回転速度記憶部に記憶されているデータの詳細を示す図である。
【図13】実施形態2の光ディスク装置が採用するZ−CAV方式を用いた場合の光ディスクの回転速度と記録速度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 光ディスク、
20 スピンドルモータ、
30 スピンドルモータ回転速度制御部、
40 回転速度記憶部、
50 光ピックアップ、
60 アクチュエータ、
70 光ピックアップ位置検知部、
100 光ディスク装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに情報を記録する機能および前記光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記光ディスク装置が前記光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための前記光ディスクの回転速度を記憶する回転速度記憶部と、
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度で前記スピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに情報を記録する機能および前記光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ピックアップを備えた光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記光ピックアップの光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部と、
前記光ディスク装置が前記光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための前記光ディスクの回転速度を前記光ピックアップの前記光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶する回転速度記憶部と、
前記光ピックアップ位置検知部によって検出された光ピックアップの前記光ディスク面に対する位置に対応させて前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度で前記スピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度は角速度が一定の回転速度であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度は前記光ピックアップが位置する前記光ディスクの内周から外周に渡って複数に区分したゾーンごとに異なる回転速度で前記光ピックアップの位置にかかわらず角速度が一定であることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記回転速度記憶部に記憶させる回転速度は、前記光ディスク装置が線速度を一定とする方式で記録した光ディスクの情報を再生したときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記信号品位は、前記再生信号の非対称性を示すβ値、前記再生信号の変調の度合いを示す変調度、前記再生信号の分解能、前記再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、前記再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量であることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項1】
光ディスクに情報を記録する機能および前記光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記光ディスク装置が前記光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための前記光ディスクの回転速度を記憶する回転速度記憶部と、
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度で前記スピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに情報を記録する機能および前記光ディスクの情報を再生する機能のうち少なくともいずれか一方の機能を有する光ピックアップを備えた光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記光ピックアップの光ディスク面に対する位置を検知する光ピックアップ位置検知部と、
前記光ディスク装置が前記光ディスクの回転により共振する周波数帯を回避させるための前記光ディスクの回転速度を前記光ピックアップの前記光ディスク面に対する位置と関連付けて記憶する回転速度記憶部と、
前記光ピックアップ位置検知部によって検出された光ピックアップの前記光ディスク面に対する位置に対応させて前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度で前記スピンドルモータを回転させるスピンドルモータ回転速度制御部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度は角速度が一定の回転速度であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記回転速度記憶部に記憶されている回転速度は前記光ピックアップが位置する前記光ディスクの内周から外周に渡って複数に区分したゾーンごとに異なる回転速度で前記光ピックアップの位置にかかわらず角速度が一定であることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記回転速度記憶部に記憶させる回転速度は、前記光ディスク装置が線速度を一定とする方式で記録した光ディスクの情報を再生したときの再生信号の信号品位の局所的な変化の有無を見て決定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記信号品位は、前記再生信号の非対称性を示すβ値、前記再生信号の変調の度合いを示す変調度、前記再生信号の分解能、前記再生信号の揺らぎ量を表すジッタ、前記再生信号から生じるシンボルエラーの内の少なくとも1つの物理量であることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図13】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図13】
【公開番号】特開2010−152961(P2010−152961A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328206(P2008−328206)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
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