説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク回転時の騒音を効果的に低減するとともに、載置する光ディスクとトレイが接触したりトレイに取り付けた回路基板が静電破壊される恐れがない光ディスク装置を提供すること。
【解決手段】光ディスクを載置するトレイ1の後部領域の裏面には、スピンドルモータ2とピックアップ3を制御する回路基板4が取り付けられる。トレイ1の後部領域には、トレイ1の厚み方向に折れ曲がって貫通する押し切り穴8を形成する。押し切り穴8は、トレイ表面側の開口部8aからトレイ裏面側の開口部8bが見えない構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの回転により発生する騒音を効果的に低減する光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光ディスク装置においては、光ディスクの回転数が増大するに伴い発生する騒音も増加し、その低減策が必要となっている。騒音発生のメカニズムとして、回転するディスクによって誘起された空気流が、該ディスクを載置するトレイや周辺部材に衝突して騒音になると考えられる。よって、騒音低減にはこの空気流を減衰させることが有効であり、トレイの構造として次のような提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、トレイ表面の少なくとも一部に高さ0.1mm以上の凹凸部を形成すること、あるいはトレイ表面の少なくとも一部に繊毛やスポンジ状の部材などを配置した構造が開示される。空気流はこの凹凸部や繊毛に接触することでその流速が減衰され、また繊毛の吸音作用により騒音が低減すると述べられている。
【0004】
特許文献2には、トレイの後部に複数の開口部(貫通穴)を形成した構造が開示される。ディスク回転時に発生する空気流はこの開口部を介して裏面側に配置された回路基板に供給され、基板上の発熱部品の放熱を行うものである。特許文献2は放熱を目的としたものであるが、空気流をこの貫通穴から裏面側に逃がすことで騒音を低減する効果も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−52405号公報
【特許文献2】特開2003−85964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パソコン搭載用の光ディスク装置では、装置の薄型化を実現するため、光ディスクはトレイに所定距離以内に近接して載置される。特許文献1の場合、トレイに設ける凹凸部の突起によりディスクとトレイ面の隙間が小さくなり、ディスク面とトレイ面が接触してディスク面に傷が付く恐れがでてくる。繊毛やスポンジ状の部材を配置する構造でも同様の問題がある。
【0007】
また最近の光ディスク装置では、トレイと装置本体間の配線を簡素化するために、トレイの裏面側にプリント回路基板(PCB)を直接取り付ける構造(PCB一体化構造)が採用されている。このようなPCB一体化構造のトレイにおいて、特許文献2に記載された貫通穴を設けると、静電破壊(ESD)の問題が生じる。すなわち、トレイを引き出した状態で外部から静電気が到来した場合、貫通穴を通して裏面のPCB内の電子部品に放電し、電子部品を破壊する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、光ディスク回転時の騒音を効果的に低減するとともに、載置する光ディスクとトレイが接触したりトレイに取り付けた回路基板が静電破壊される恐れがない光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光ディスクに情報を記録又は再生する光ディスク装置において、光ディスクをローディング/アンローディングする際に光ディスクを載置するトレイと、トレイ上の光ディスクを支持して回転させるスピンドルモータと、光ディスクにレーザ光を照射して情報を記録又は再生するピックアップと、スピンドルモータとピックアップを制御する回路基板とを備え、回路基板は、トレイの後部領域の裏面に取り付けられるとともに、トレイの少なくとも後部領域には、トレイの厚み方向に折れ曲がって貫通する押し切り穴を形成した。ここに、トレイに形成した押し切り穴は、一方の開口部から他方の開口部の大部分が見えない構造とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光ディスク回転時の騒音を効果的に低減することができる。その際、載置する光ディスクとトレイが接触したりトレイに取り付けた回路基板が静電破壊される恐れがなく、実用性に優れる光ディスク装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる光ディスク装置の一実施例を示す装置全体の分解斜視図。
【図2A】本実施例におけるトレイの構造を示す平面図。
【図2B】トレイに設けた押し切り穴の構造を示す断面図。
【図3A】比較例として従来のトレイの構造を示す平面図。
【図3B】比較例として従来の貫通穴の構造を示す断面図。
【図4】トレイに設ける押しきり穴の他の構造を示す平面図。
【図5A】トレイに設ける押しきり穴のさらに他の構造を示す平面図。
【図5B】トレイに設ける押しきり穴のさらに他の構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明にかかる光ディスク装置の一実施例を示す装置全体の分解斜視図である。光ディスク装置は、光ディスクをローディング/アンローディングする際に光ディスクを載置するトレイ1と、トレイ1上の光ディスクを支持して回転させるスピンドルモータ2と、光ディスクにレーザ光を照射して情報を記録又は再生するピックアップ3と、スピンドルモータ2とピックアップ3を制御する回路基板(PCB)4と、ボトムカバー5およびボトムケース6を組み立てて構成される。なお、図1では、光ディスクとトップカバーは省略している。
【0013】
回路基板4は、トレイ1の後部領域の裏面にネジ等で固定され、いわゆるPCB一体化構造となっている。トレイ1の前面にはユーザ操作用のフロントパネル7が、またトレイ1の後部領域には騒音低減用の押し切り穴8を多数形成している。よって、押し切り穴8の少なくとも一部は回路基板4と対向して配置されている。押し切り穴8は本実施例特有の形状を有し、その構造については後述する。
【0014】
図2Aは、本実施例におけるトレイの構造を示す平面図である。トレイ1の後部領域には、多数の円形状の押し切り穴8を形成している。寸法の一例を述べると、トレイ1の厚み1〜3mmに対して、直径約2mmの押し切り穴を間隔5〜6mmで2次元状に形成した。トレイ1の後部は、トレイ前部(フロントパネル7側)と比較し周囲がより密閉されているので、ディスク回転により生じた空気流が外部に吹き出しにくく騒音量を大きくしている。よって押し切り穴8を後部領域に優先的に設けるようにした。
【0015】
図2Bは、本実施例におけるトレイに設けた押し切り穴の構造を示す断面図である。押し切り穴8は、トレイ1を厚み方向に貫通しているものの、穴の方向が途中でクランク状に折れ曲がった構造としている。クランク状となっているため、押し切り穴8の一方の開口部から他方の開口部は見えない構造である。
【0016】
このような押し切り穴8は、例えば次のように形成することができる。まず、トレイ1のディスク載置面(トレイ表面1a)側からトレイの厚みの約2/3の深さの凹部(開口部)8aを形成する。次に、トレイ1の回路基板4の取付面(トレイ裏面1b)側から同様にトレイの厚みの約2/3の深さの凹部(開口部)8bを形成する。そのとき、両者(凹部8a,8b)の位置を所定量(ほぼ凹部の直径)だけずらして形成することで、両者の境界が貫通したクランク形状になる。この構造では、押し切り穴8は元のトレイ1の厚み範囲内に形成されるので、光ディスク10とトレイ1の間隙は当初のままで変化せず、狭くなることはない。よって、載置する光ディスクとトレイが接触する恐れはない。
【0017】
図2Bには、空気流と静電気の流れを模式的に示している。まず、ディスク10の回転により誘起された空気流は、トレイ1に設けた押し切り穴8に吸い込まれて抵抗を受ける。また、吸い込まれた空気流の一部は押し切り穴8を介して回路基板4側に流れ出す。その結果、ディスクとトレイの間隙に流れる空気流の流速が減衰して、騒音が低減する。一方、トレイ1の上方から到来する静電気は、押し切り穴8に進入することができる。しかしながら、押し切り穴8はクランク形状となっているので、直進する静電気は凹部8aの底面8cに遮られて回路基板4には到達できない。よって、回路基板4上の電気部品は静電破壊から保護される。
【0018】
なお、押し切り穴8の断面形状は図2Bに示すクランク形状に限定するものではない。押し切り穴8のトレイ表面側の凹部(開口部)8aからトレイ裏面側の凹部(開口部)8bが見えない、あるいは凹部(開口部)8bの大部分が見えない構造であれば、同様に静電破壊防止の効果がある。
【0019】
図3Aは比較例として従来のトレイの構造を示す平面図であり、図3Bは比較例として従来の貫通穴の構造を示す断面図である。トレイ1の後部領域には、多数の円形状の貫通穴9が形成されている。この貫通穴9は図3Bに示すように、トレイ1を厚み方向に直線状に貫通している。図ではトレイ1の載置面1aと垂直方向に貫通しているが、斜め方向に貫通させる場合もある。
【0020】
図3Bには、空気流と静電気の流れを模式的に示している。ディスク10の回転により誘起された空気流は、貫通穴9に吸い込まれて抵抗を受け、その一部は貫通穴9を介して回路基板4側に流れ出す。その結果、ディスクとトレイの間隙に流れる空気流の流速が減衰して、騒音が低減する。一方、トレイ1の上方から到来する静電気は、貫通穴9に進入し、そのまま直進して回路基板4に到達する。その結果、静電気は回路基板4上の電気部品に放電し、電気部品が破壊される恐れがある。なお、貫通穴を斜めに形成しても斜め方向から到来する静電気が存在するので、静電破壊を回避することはできない。
【0021】
このように、トレイに直線状の貫通穴を設ける構造では、騒音低減には有効であるものの、静電破壊の問題が存在する。これに対し図2A、図2Bに示す本実施例の押し切り穴構造とすることで、騒音低減に有効であるとともに静電破壊の恐れがなくなるので、実用性に優れる光ディスク装置を実現する。
【0022】
本実施例において、トレイに設ける押しきり穴の形状は種々の変形が可能であり、以下いくつかの変形例を示す。
図4は、トレイに設ける押しきり穴の他の構造を示す平面図である。この例では、押し切り穴8の開口部を四角形に形成した。この場合も、穴方向は図2Bと同様にトレイの厚み方向にクランク状に折れ曲がった構造として、空気流がトレイの裏面側に流れ出すことができる。これにより、騒音低減と静電破壊防止の効果を有する。開口部の形状は、これ以外にも楕円形、長方形、任意の多角形など各種可能であることは言うまでもない。
【0023】
図5Aと図5Bは、トレイに設ける押しきり穴のさらに他の構造を示す平面図である。これらの例では、トレイ1に押し切り穴8を形成するだけでなく、非貫通の凹部11と連結した構造としている。
図5Aでは、トレイ1のディスク載置面側に円弧状の凹部11を形成し、凹部11の両端と連結する押し切り穴8を設けている。すなわち、空気流は凹部11に引き込まれた後、押し切り穴8を介してトレイの裏面に抜ける構造である。
【0024】
図5Bでは、トレイ1のディスク載置面側に長方形の凹部11を形成し、凹部11の両側辺と連結する押し切り穴8を形成している。この場合凹部11の深さは、ディスク内周側で浅くディスク外周側で深くなるよう、凹部底面には階段状の段差12を設けている。この場合も、空気流は凹部11に引き込まれた後、押し切り穴8を介してトレイの裏面に抜けることができる。
【0025】
このように、押し切り穴8と凹部11を連結した構造では、より多くの空気流を凹部11に引き込むことことができるので、ディスクとトレイ間の空気流を大幅に減衰させ、よって騒音低減効果を増大させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…トレイ、
2…スピンドルモータ、
3…ピックアップ、
4…回路基板(PCB)、
5…ボトムカバー、
6…ボトムケース、
7…フロントパネル、
8…押し切り穴、
9…貫通穴、
10…光ディスク、
11…凹部、
12…段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに情報を記録又は再生する光ディスク装置において、
前記光ディスクをローディング/アンローディングする際に前記光ディスクを載置するトレイと、
該トレイ上の前記光ディスクを支持して回転させるスピンドルモータと、
前記光ディスクにレーザ光を照射して情報を記録又は再生するピックアップと、
前記スピンドルモータと前記ピックアップを制御する回路基板とを備え、
前記回路基板は、前記トレイの後部領域の裏面に取り付けられるとともに、前記トレイの少なくとも後部領域には、前記トレイの厚み方向に折れ曲がって貫通する押し切り穴を形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記トレイに形成した前記押し切り穴は、一方の開口部から他方の開口部の大部分が見えない構造としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記トレイには前記押し切り穴を多数個形成し、該押し切り穴の少なくとも一部は前記回路基板と対向して配置したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記トレイに形成した前記押し切り穴は、前記トレイのディスク載置面側に形成した非貫通の凹部と連結した構造としたことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2011−96326(P2011−96326A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250389(P2009−250389)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)