説明

光ディスク駆動装置

【課題】 部品を追加することなく、ディスクを挟持しているときのディスクに対するクランパの接触面積を少なくすることによって、ディスクのプリンタブル面に対するクランパの貼り付きを防止する。
【解決手段】 共働してディスクを挟持するターンテーブル1及びクランパ5を備える。クランパ5には円環状のディスク受面51が備わっている。クランパ5のディスク受面51の等角度おきの3箇所にディスク受けリブ6を追加し、そのディスク受けリブ6の頂部61の長手方向Xをディスク100の半径方向に一致させる。ディスク挟持時には、ディスク受けリブ6の頂部61が、ディスク100のプリンタブル面110の3箇所に線接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク駆動装置、詳しくは、ターンテーブルとクランパとの共働によりディスクを挟持して回転させるようになっている光ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光ディスク駆動装置の基本的な概略構成を図7及び図8に示してある。図例の光ディスク駆動装置は、ターンテーブル1及びクランパ5を備えていて、ターンテーブル1がモータMによって回転駆動されるようになっていると共に、ターンテーブル1とクランパ5とが共働してディスク100を挟持し得るようになっている。すなわち、ディスクトレイ200に載架されたディスクが、図7のように互いに離間して待機しているターンテーブル1とクランパ5との間に搬入された後、同図矢印Uのようにターンテーブル1が上動してディスクトレイ200からディスク100を受け取ってクランパ5に押し付けるという動作が行われて図8のようにターンテーブル1とクランパ5とが共働してディスク100を挟持する。その後、モータMが始動してターンテーブル1及びクランパ5と共にディスク100が矢印Rのように回転する。そして、回転中のディスク100に対して、図示していない光ピックアップなどによる光学的処理が行われる。これに対し、ターンテーブル1とクランパ5との共働によるディスク100の挟持状態を解除するときには、図8の状態からターンテーブル1が下動するのに伴って、クランパ5から離れたディスク100がターンテーブ1からディスクトレイ200に受け渡される。そして、ディスクトレイ200のディスク搬出動作によってディスク100がテーンテーブル1とクランパ5との間から搬出される。
【0003】
この光ディスク駆動装置において、光ピックアップなどによる光学的処理は、ターンテーブル1とクランパ5とによって挟持されているディスク100の片側の記録面に対して行われる。そして、ディスク100の他側の面は表示面として利用されるようになっていることが多い。
【0004】
図9は従来の光ディスク駆動装置のクランパ5とディスク100との接触状態を説明的に示した側面図である。同図のように、従来の光ディスク駆動装置では、クランパ5に円環状のディスク受面51が備わっていて、図8に示したようにターンテーブル1とクランパ5とが共働してディスク100を挟持しているときには、クランパ5の円環状のディスク受面51がディスク100の他側の面に弾圧状態で接触するようになっている。
【0005】
一方、光ディスク駆動装置の取扱い対象としてのディスク100にあっては、クランパ5のディスク受面51が接触する他側の面がプリンタブル面として形成されているものがあり、そのようなディスク100では、図6に斜視図で例示してあるように、そのプリンタブル面110に、画像をプリントするのに適した所定の処理が行われている。
【0006】
ところで、図6に示したディスク100のようにその片側の面がプリンタブル面110に形成されているものでは、ターンテーブル1とクランパ5とでディスク100を挟持させたときに、クランパ5の円環状のディスク受面51(図9参照)がディスク100のプリンタブル面110に貼り付くという状況の生じることがあり、そのような貼り付きが起こると、ターンテーブル1を下動させてクランパ5との共働による挟持状態を解除させるときにクランパ5がディスク100から円滑に離れなくなくなって図7に示したディスクトレイ200へのディスク100の受け渡しに支障を生じることがある。また、そのような支障を生じると、ディスク100が受け渡されていないディスクトレイ200だけがディスク搬出動作を行うことがあり、そのような状況が生じると、ディスク100の取出しが困難になって当該光ディスク駆動装置に様々な動作トラブルが発生することがある。
【0007】
この点に関し、従来より、光ディスク駆動装置のクランプ手段と光ディスクとの貼り付きを防止するための研究が行われている(たとえば、特許文献1参照)。そして、特許文献1には、ディスクを挟持する一対のクランプ手段のうちの一方側の被駆動板に、表面を硬化被膜でコーティングした多孔質シート状の弾性基材を配備することによって、クランプ手段と光ディスクとの貼り付きを防止するということが記載されている。
【特許文献1】特開2004−87025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図7又は図8を参照して説明した光ディスク駆動装置において、特許文献1によって提案されている技術を利用してクランパとディスクとの貼り付きを防ぐためには、クランパに表面を硬化被膜でコーティングした多孔質シート状の弾性基材を余分に用いる必要があるので、それだけ部品点数や組立工数が増加してコスト高になるという問題がある。
【0009】
以上の状況の下、本願発明者は、ターンテーブルとクランパとが共働してディスクを挟持しているときのディスクに対するクランパの接触面積を少なくすると、ディスクのプリンタブル面に対するクランパの貼り付きが防止できるであろうと考え、しかも、接触面積を少なくするという対策を講じると、特許文献1に見られるように多孔質シート状の弾性基材を余分に用いる必要性がなくなるであろうと考え、本発明を完成させるに至った。
【0010】
したがって、本発明は、部品を追加することなく、ディスクを挟持しているときのディスクに対するクランパの接触面積を少なくして上記した貼り付きを防止することのできる光ディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光ディスク駆動装置は、共働してディスクを挟持するターンテーブル及びクランパを備える。そして、ディスクの挟持時に、ターンテーブルに載架されたディスクのプリンタブル面の周方向複数箇所に上記クランパのディスク受面に突設されたディスク受けリブの頂部が線接触してそのディスクが上記ディスク受面に対して非接触に保たれるように構成されている。
【0012】
この構成を備える光ディスク駆動装置によれば、クランパとディスクのプリンタブル面との接触箇所が、クランパ側のディスク受けリブの頂部だけになり、しかも、接触状態が線接触状態になるので、ターンテーブルとクランパとの共働によるディスクの挟持状態を解除させたときにディスクがクランパ側に取り残されるような貼り付きが生じる余地がなくなる。言い換えると、貼り付きが生じないか、あるいは、貼り付きが生じたとしてもその貼り付きの強さが非常に小さくなって実質的には貼り付きが生じていないのと同じ状態が作り出される。しかも、ディスク受けリブがクランパのディスク受面に突設されているという構成を採用したので、そのディスク受けリブをクランパに樹脂で一体成形することが可能になり、そうすることによってディスク受けリブを形成するための余分な部品が不要になる。
【0013】
本発明において、上記ディスク受けリブは、その頂部の長手方向が上記ディスクの半径方向に一致していることが望ましい。これによれば、ターンテーブルとクランパとが共働して挟持したディスクを、ターンテーブル側からの回転駆動力によって回転させるときにディスク受けリブの頂部がディスクのプリンタブル面に対して滑りにいので、クランパとディスクとの接触面積が極端に少なくなっているにもかかわらず、ターンテーブルやクランパと共にディスクが円滑に回転するようになる。
【0014】
本発明において、上記ディスク受けリブはその頂部がディスクのプリンタブル面の等角度おきの3箇所に線接触するように上記クランパのディスク受面の3箇所に突設されていることが望ましい。これによれば、ディスク受けリブの数を最少限度に抑えてディスクをがたつきなくターンテーブルとクランパとの共働によって挟持させることが可能になる。
【0015】
本発明に係る光ディスク駆動装置は、共働してディスクを挟持するターンテーブル及びクランパを備え、そのクランパが上記ディスクのプリンタブル面に接触する円環状のディスク受面を備えている光ディスク駆動装置であって、ディスクの挟持時に、回転駆動される上記ターンテーブルに載架されたディスクのプリンタブル面の周方向等角度おきの3箇所に上記クランパの円環状のディスク受面の3箇所に一体成形によって突設されたディスク受けリブの頂部が線接触してそのディスクが上記ディスク受面に対して非接触に保たれるように構成されていると共に、上記ディスク受けリブの頂部の長手方向が上記ディスクの半径方向に一致している、という構成を採用することによっていっそう具体化される。この発明によれば、図9を参照して説明した円環状のディスク受面51を備えるクランパ5にディスク受けリブを追加するだけで、上記した各発明による作用が奏されるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品を追加することなく、クランパとディスクのプリンタブル面との貼り付きを防止することができるようになると同時に、プリンタブル面を備えていないディスクについても従来と同様の取扱いが可能である。しかも、ディスクのプリンタブル面との貼り付きを防ぐための対策として、ディスクを挟持しているときのディスクに対するクランパの接触面積を少なくするという手段、特に、ディスクのプリンタブル面に対してクランパのディスク受けリブの頂部を線接触状態で接触させるという手段を採用したので、クランパの量産性や当該光ディスク駆動装置の組立性などが損なわれず、また、コスト高を来すことがなくなるという効果が得られる。そして、光ディスク駆動装置のユーザにとっては、クランパにディスクが貼り付いてその搬出動作が行えなくなるという事態が起こらなくなるので、それだけ動作安定性が向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る光ディスク駆動装置に採用されるクランパ5の平面図、図2はクランパ5とディスク100との接触状態を説明的に示した側面図、図3はクランパ5の要部の縦断側面図、図4はディスク受けリブ6の作用説明図、図5は変形例によるディスク受けリブ6の作用説明図である。
【0018】
この実施形態に係る光ディスク駆動装置は、図7及び図8を参照して冒頭で説明したところと同様に、モータMによって回転駆動されるターンテーブル1とその相手方部材であるクランパ5とを備えている。そして、ディスクトレイ200に載架されたディスク100が、図7のように互いに離間して待機しているターンテーブル1とクランパ5との間に搬入された後、同図矢印Uのようにターンテーブル1が上動してディスクトレイ200からディスク100を受け取ってクランパ5に押し付けるという動作が行われ、そのような動作を介して、図8のようにターンテーブル1とクランパ5とが共働してディスク100を挟持する。その後、モータMが始動してターンテーブル1及びクランパ5と共にディスク100が矢印Rのように回転する。そして、回転中のディスク100に対して、図示していない光ピックアップなどによる光学的処理が行われる。これに対し、ターンテーブル1とクランパ5との共働によるディスク100の挟持状態を解除するときには、図8の状態からターンテーブル1が下動するのに伴って、クランパ5から離れたディスク100がターンテーブ1からディスクトレイ200に受け渡される。そして、ディスクトレイ200のディスク搬出動作によってディスク100がテーンテーブル1とクランパ5との間から搬出される。なお、光ピックアップなどによる光学的処理は、ターンテーブル1とクランパ5とによって挟持されているディスク100の片側の記録面に対して行われる。そして、ディスク100の他側の面は表示面として利用されるようになっていることが多い。
【0019】
図1〜図4において、51はクランパ5に備わっている円環状のディスク受面を示し、このディスク受面51は、図9で説明した従来例では、ディスク100の他側の面である表示面又はプリンタブル面110(図6参照)に接触するようになっていた部分である。
【0020】
図1及び図2のように、この実施形態では、クランパ5における上記ディスク受面51の等角度おきの3箇所を選定し、それらの3箇所のそれぞれにディスク受けリブ6を樹脂で一体成形してある。そして、図2〜図4に示されているように、それぞれのディスク受けリブ6は、その頂部61の長手方向Xが円板状のクランパ5の半径方向に一致している。図1には、クランパ5の中心Pから半径方向に延びてそれぞれのディスク受けリブ6の頂部61と平行な線を一点鎖線aで示してある。また、図3のように、ディスク受けリブ6の内端面61と外端面62とは、クランパ5のディスク受面51の内側と外側に備わっている各傾斜面52,53に面一に連続する平坦面として形成されている。
【0021】
図1〜図4では、その表面が円弧状に形成されている半円柱状のディスク受けリブ6を示してあるけれども、この点は、図5のようにディスク受けリブ6の断面三角形に形成して、その表面に当該ディスク受けリブ6の頂部で屈曲した2つの平坦な傾斜面を具備させた形状になっていてもよい。あるいは、その他の形状、たとえば断面台形状に形成されていてもよい。
【0022】
上記したディスク受けリブ6を備えるクランパ5を採用した光ディスク駆動装置において、ターンテーブル1とクランパ5とが共働してディスク100を挟持した状態(図8参照、以下同じ)では、図2、図4、図5のようにディスク100の他側の面にディスク受けリブ6の頂部61が接触してディスク受面51がディスク100の他側の面から離れて非接触状態に保たれる。このため、ディスク100の他側の面が仮にプリンタブル面110であったとしても、そのプリンタブル面110に対するクランパ5側の接触箇所がディスク受けリブ6の頂部61だけになって従来と比べると接触面積が極端に少なくなり、ディスク受けリブ6の頂部61がディスク100のプリンタブル面110に貼り付かなくなるか、貼り付いたとしてもその力がきわめて小さくなって実質的には貼り付きが生じていない状態になるという作用が奏される。特に、ディスク受けリブ6はその頂部61がディスク100のプリンタブル面110に線接触するので、この作用が顕著に発揮される。
。その結果、ターンテーブル1とクランパ5との共働によるディスク100の挟持状態を解除させたときにディスク100がクランパ5側に取り残されるような貼り付きが生じる余地がなくなって、ディスク100がいつでも正常にディスクトレイ200に受け渡される。したがって、ディスクトレイ200のディスク搬出動作がクランパ5側に取り残されたディスクによって阻害されるという事態が起こらなくなってその動作安定性が向上する。
【0023】
また、この実施形態では、ディスク受けリブ6の頂部61の長手方向Xをディスク100の半径方向に一致させていることにより、ディスク100の他側の面がプリンダフル面110として形成されている場合は勿論、非プリンタブル面すなわち滑りやすい表示面として形成されている場合であっても、ディスク受けリブ6がターンテーブル1と共に回転するディスク100に対して滑りにくい状態に保たれ、そのために、光ピックアップによる記録再生に際してディスク100の回転が不安定になるという事態も生じない。
【0024】
他方、ディスク受けリブ6は、クランパ5に樹脂で一体成形されているために、ディスク受けリブ6を形成するための余分な部品を用いる必要がない。そのため、当該光ディスク駆動装置の組立工程を従来例の場合と同様の手順で行うことができるので、光ディスク駆動装置の量産性が損なわれず、また、組立に際して特別な熟練を必要とするという事態も来さない。
【0025】
また、この実施形態では、ディスク受けリブ6をディスク受面51の周方向3箇所に設けてあるけれども、この点は、ディスク受けリブ6をディスク受面51の周方向3箇所よりも多い等角度おきの箇所に設けてもよい。しかし、実施形態のように、ディスク受面51の周方向3箇所に設けてあると、ディスク100ががたつきなく挟持させやすいという利点がある。また、ディスク受けリブ6をディスク受面51に設ける利点は、ディスク受けリブ6の高さを背低にしておいても、そのディスク受けリブ6の頂部61がディスク100のプリンタブル面110に接触するとディスク受面51が確実にフリンタブル面110から離れるという点にある。
【0026】
なお、図1〜図9では、説明の便宜上、同一又は相応する部分に同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスク駆動装置に採用されるクランパの平面図である。
【図2】クランパとディスクとの接触状態を説明的に示した側面図である。
【図3】クランパの要部の縦断側面図である。
【図4】ディスク受けリブの作用説明図である。
【図5】変形例によるディスク受けリブの作用説明図である。
【図6】他側の面がプリンタブル面として形成されているディスクの斜視図である。
【図7】ディスクが搬入された状態での光ディスク駆動装置の基本的な概略構成を示した説明図である。
【図8】ターンテーブルとクランパとが共働してディスクを挟持した状態での光ディスク駆動装置の基本的な概略構成を示した説明図である。
【図9】従来の光ディスク駆動装置に採用されているクランパの作用を示した側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ターンテーブル
5 クランパ
6 ディスク受けリブ
51 ディスク受面
61 ディスク受けリブの頂部
100 ディスク
110 ディスクのプリンタブル面
X ディスク受けリブの頂部の長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共働してディスクを挟持するターンテーブル及びクランパを備え、そのクランパが上記ディスクのプリンタブル面に接触する円環状のディスク受面を備えている光ディスク駆動装置であって、
ディスクの挟持時に、回転駆動される上記ターンテーブルに載架されたディスクのプリンタブル面の周方向等角度おきの3箇所に上記クランパの円環状のディスク受面の3箇所に一体成形によって突設されたディスク受けリブの頂部が線接触してそのディスクが上記ディスク受面に対して非接触に保たれるように構成されていると共に、上記ディスク受けリブの頂部の長手方向が上記ディスクの半径方向に一致していることを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項2】
共働してディスクを挟持するターンテーブル及びクランパを備える光ディスク駆動装置であって、ディスクの挟持時に、ターンテーブルに載架されたディスクのプリンタブル面の周方向複数箇所に上記クランパのディスク受面に突設されたディスク受けリブの頂部が線接触してそのディスクが上記ディスク受面に対して非接触に保たれるように構成されていることを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項3】
上記ディスク受けリブは、その頂部の長手方向が上記ディスクの半径方向に一致している請求項2に記載した光ディスク駆動装置。
【請求項4】
上記ディスク受けリブはその頂部がディスクのプリンタブル面の等角度おきの3箇所に線接触するように上記クランパのディスク受面の3箇所に突設されている請求項2又は請求項3に記載した光ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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