説明

光データ伝送装置

【課題】搬送台車等の移動設備の走行経路が曲線となっている部分でも、移動設備側と固定設備側とで的確に光通信により通信を行えるようにする。
【解決手段】固定設備に設置され、移動設備との間で光信号を送受信する光データ伝送装置において、所定の波長領域の光を発光する発光部と前記波長領域の光を受光する受光部とを備えた第1光通信ユニット42と、前記第1光通信ユニット42が所定の姿勢及び間隔で配置された長尺の可撓性支持部材41と、少なくとも前記第1光通信ユニット42を被覆する被覆部材43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定設備に設置され、移動設備との間で光信号を送受信する光データ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の工場等の設備内では、自動搬送台車にて物品を自動搬送することが良く行われている。
例えば半導体デバイスの製造設備では、各種の処理装置間で半導体ウェハを自動搬送するために、ウェハキャリア装置を搬送する搬送台車が用いられている。
このような搬送システムでは、所定の搬送経路上を移動する複数台の搬送台車同士の衝突を回避する等のために、搬送台車側と固定設備側との間で制御に必要な情報の通信を行っている。
この通信の手法としては、電波による通信も可能であるが、ノイズによる通信障害を避けるために光通信が用いられる場合も多い。
光通信によって搬送台車側と固定設備側との間で通信を行う場合、走行している搬送台車と確実な通信を確保するために、例えば下記特許文献1に記載のように、搬送台車の走行経路に沿って一定の距離に亘って連続して送受信を行えるようにする構成が考えられている。
【0003】
このような通信の形態について更に説明すると、図14に概略的に示すように、底面にV字状の溝100aを搬送台車の移動経路に沿って並べて形成した板状のライトガイド100と、ライトガイド100の一端側に配置した投光ヘッド101と、他端側に配置した受光ヘッド102とを備えて、搬送台車側と固定設備側とで通信を行うように構成している。
投光ヘッド101から投光された光はライトガイドのV字状の溝100aに当たって、その光の一部が上方側へ進行方向を変える。この光が搬送台車の光通信ユニット103に受光される。
一方、搬送台車の光通信ユニット103から出射された光は、ライトガイドのV字状の溝100aに当たって、その光の一部が受光ヘッド102側へ進行方向を変え、受光ヘッド102に受光される。
これによって、ライトガイド100底面におけるV字状の溝100aの形成範囲全体に亘る距離で、搬送台車と固定設備側とで連続して通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3648629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来構成では、搬送台車の走行経路の直線部分にライトガイドを設置する場合には全く問題はないが、走行経路の曲線部分に設置する場合では、搬送台車側と固定設備側とで効率よく通信が行えなくなってしまう。
すなわち、走行経路に沿うように湾曲させた形状のライトガイドでは、曲率半径が十分大きい緩やかな湾曲であれば投光ヘッドから出射した光がライトガイド内を伝わるが、曲率半径が小さくなると、投光ヘッドからの光がライトガイド外へ放射されてしまい、通信に寄与し得る光量が減少してしまうのである。
更に、通信のための光がライトガイド内を伝わる際の減衰も少なくないため、光伝播方向でのライトガイドの長さ、すわち、搬送台車との通信を行える区間の距離(走行経路に沿った距離)もそれほど長くはできないという不都合もある。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の問題に鑑み、搬送台車等の移動設備の走行経路が曲線となっている部分でも、移動設備側と固定設備側とで的確に光通信により通信を行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的達成をするため、本発明による光データ伝送装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、固定設備に設置され、移動設備との間で光信号を送受信する光データ伝送装置であって、所定の波長領域の光を発光する発光部と前記波長領域の光を受光する受光部とを備えた第1光通信ユニットと、前記第1光通信ユニットが所定の姿勢及び間隔で配置された長尺の可撓性支持部材と、少なくとも前記第1光通信ユニットを被覆する被覆部材とを備えている。
【0008】
上述の構成によれば、長尺の可撓性支持部材に第1光通信ユニットを所定の間隔で配置していることで、光データ伝送装置を一体のものとして取り扱えるのはもちろんのこと、可撓性支持部材を移動設備の移動経路に沿って湾曲させて設置することができる。
そのように設置しても、移動設備の移動経路に沿って第1光通信ユニットが所定間隔で配置されているので、いずれかの第1光通信ユニットと移動設備との間で的確に通信を行うことができる。
又、第1光通信ユニットの設置個数次第で、移動設備との通信を行える区間の距離を長くすることも可能である。
更には、少なくとも第1光通信ユニットを被覆部材にて被覆するので、周囲環境から装置を保護すると共に、逆に、装置に付着している塵埃によって周囲環境を汚染してしまうのを防止できる。
【0009】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記被覆部材は、前記波長領域の光を透過する部位を含む可撓性チューブにて構成され、前記可撓性支持部材は、前記可撓性チューブに形成された保持部により所定の姿勢で保持された状態で前記可撓性チューブ内に収容されている。
すなわち、第1光通信ユニット等を被覆する被覆部材としては、種々の材料や形状のものが考えられるが、可撓性支持部材を可撓性チューブ内に収容する構成とすることで、全体としての可撓性を確保しながら、簡便に第1光通信ユニット等を被覆することができる。
又、可撓性チューブ内に収容される可撓性支持部材は保持部によって所定の姿勢に保持されており、姿勢が安定しているので、取扱いも容易である。
【0010】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、各第1光通信ユニットの発光部が共通の送信信号線に接続されるとともに、各第1光通信ユニットの受光部が共通の受信信号線に接続され、前記送信信号線及び受信信号線が前記可撓性支持部材の一端部側に配置された集信装置に接続されている。
すなわち、可撓性支持部材に複数の第1光通信ユニットを設置する場合において、各第1光通信ユニット毎に独立した配線を設けたのでは、通信のための配線が過度に複雑化してしまう。
そこで、受信信号線と送信信号線とを各第1光通信ユニットで共通して使用する通信形態をとることで、通信のための配線の簡素化を図ることができる。
【0011】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記可撓性支持部材の一端部側に、前記送信信号線及び受信信号線を介して上記第三特徴構成を有する他の光データ伝送装置が接続可能に構成されている。
すなわち、受信信号線と送信信号線とを各第1光通信ユニットで共通して使用する通信形態をとることで、同一の構成をとる他の光データ伝送装置に対して、受信信号線同士、送信信号線同士を接続するだけで配線接続が可能であり、一連に接続した複数の光データ伝送装置を1つの光データ伝送装置として取り扱うことができる。
これによって、移動設備の移動経路の形状等に応じて複数個の光データ通信装置を適宜に接続して、光データ伝送装置による通信範囲(移動設備の移動経路に沿った設置長さ)を任意に設定することが可能となり、より汎用性の高いものとすることができる。
【0012】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、前記他の光データ伝送装置との接続箇所に前記第1光通信ユニットへの電源電圧を供給する電源供給部が備えられている。
上述のように、複数の光データ伝送装置を接続して移動設備との通信を行える区間の距離を長くする場合、光データ伝送装置内の第1光通信ユニットへ電源電圧を供給するための配線長も長くなる。この場合、電源電圧を供給するための配線での電圧降下も大となってしまい、装置の安定動作に支障を来す場合をあり得る。
そこで、光データ伝送装置間の接続箇所に第1光通信ユニットへの電源電圧を供給する電源供給部を備えて、第1光通信ユニットへ的確に電源電圧を供給し、第1光通信ユニットの安定動作を確保できるようにしている。
【0013】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五特徴構成の何れかに加えて、前記移動設備が任意の曲率で設置された湾曲部を有する軌道に沿って走行するように構成され、前記可撓性支持部材が前記湾曲部に沿って配置されている。
すなわち、可撓性支持部材に第1光通信ユニットを配置した光データ伝送装置は、もちろん、移動設備の移動経路が直線となっている箇所にも設置して使用することができるが、移動設備の移動経路が曲線となっている箇所において特に有効に機能する。
移動設備の移動経路の曲率が種々に異なる場合にも、可撓性支持部材を湾曲させて移動経路の曲率に適合させることができ、移動経路の状況に応じて柔軟に対応することができる。
【0014】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六特徴構成の何れかに加えて、一方が送受信の光軸を前記第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行前方側に傾けた傾斜姿勢で配置されるとともに、他方が送受信の光軸を前記第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行後方側に傾けた傾斜姿勢で配置され、前記波長領域に対応した発光部及び受光部を夫々に備えた一対の第2光通信ユニットが搭載された前記移動設備に対して、前記第1光通信ユニットは、その何れかが少なくとも一方の第2光通信ユニットと交信可能な状態となる間隔で前記可撓性支持部材に配置されている。
【0015】
すなわち、移動設備が、固定設備側の光データ伝送装置の設置区間の全長に亘って確実に光データ伝送装置との通信が確保できるためには、可撓性支持部材に所定間隔を開けて配置されている複数の第1光通信ユニットのうちの少なくとも1つとの通信が常に確立可能である必要がある。
このためには、第1光通信ユニットの設置間隔を十分に狭くすれば良いが、それでは、第1光通信ユニットの必要数が過度に増加してしまいコストアップを招いてしまう。
【0016】
そこで、移動設備側の第2光通信ユニットの設置姿勢として、受光部と発光部との組を、主に移動設備の走行前方側を担当するものと、主に移動設備の走行後方側を担当するものとの2組を備えている。この2組を1対として、一方の走行前方側を担当するものは、送受信の光軸が、第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行前方側に傾けた傾斜姿勢で配置され、他方の走行後方側を担当するものは、送受信の光軸が、第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行後方側に傾けた傾斜姿勢で配置されている。
このような配置姿勢とすることで、移動設備側での送受信可能範囲(送受信可能角度)が拡がり、第1光通信ユニットの設置間隔を拡げても、複数の第1光通信ユニットのうちの少なくとも1つとの通信が常に確立可能な状態を確保できる。
これによって、移動設備側と固定設備側とで確実な通信を確保しながら、装置コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、搬送台車等の移動設備の走行経路が曲線となっている部分でも、移動設備側と固定設備側とで的確に光通信により通信を行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】固定設備側の概略配置を示す図
【図2】光データ伝送装置の要部を示す斜視図
【図3】光データ伝送装置の要部を示す断面図
【図4】可撓性チューブ等の端部付近を示す斜視図
【図5】第1光通信ユニットと第2光通信ユニットとの位置関係を示す図
【図6】第1光通信ユニットの回路構成を示す図
【図7】光データ伝送装置の接続形態を示す図
【図8】光データ伝送装置を使用する通信システムの概略構成図
【図9】(a)は光データ伝送装置を使用する搬送設備の側面視の断面図、(b)は同搬送設備の正面視の一部断面図
【図10】別実施形態を示し、光データ伝送装置を使用する搬送設備の断面図
【図11】搬送設備の概略斜視図
【図12】移動設備の移動経路を示す図
【図13】移動設備と固定設備との位置関係を示す図
【図14】従来の通信構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光データ伝送装置を半導体デバイスの製造設備に適用した場合の実施形態を説明する。
図13に示すように、半導体デバイスの製造設備1では、半導体ウェハに順次所定の処理を施すための固定設備としての各種の製造装置2が通路8に沿って配設され、製造装置2間で半導体ウェハを自動搬送するために、製造装置2に設けられたロードポート3との間でウェハキャリア装置4を受け渡し搬送する移動設備としての搬送台車20が天井に吊設された走行レール10に沿って走行可能に設けられている。尚、ウェハキャリア装置4の形状は、図13に示す円柱形状のものの他、図11等で示す直方体形状のものにも適宜に対応できる。
【0020】
半導体デバイスの製造設備における各種装置類の概略配置を平面視で図示する図12に示すように、製造装置2は製造工程毎にベイ6,7に分けられて設置されている。
走行レール10は、単純な直線部のみならず、カーブ、分岐部、合流部等を備えた複雑な形状をしている。例えば、各ベイ6,7間を結ぶ工程間レール10a、各ベイ6,7に設置された製造装置2間を結ぶ工程内レール10b、工程間レール10aと工程内レール10bを結ぶ分岐レール10c、工程内レール10b内を走行する搬送台車20を一時退避させる退避レール10d、搬送台車20がストッカ5へウェハキャリア装置4を積降するためのバイパスレール10e等で構成されている。
【0021】
分岐レール10cは、工程間レール10aと工程内レール10bとを接続するレールであり、走行する搬送台車20は、分岐レール10cに沿って走行することで、工程間レール10aと工程内レール10bを互いに往来する。
【0022】
退避レール10dは、工程内レール10bから分岐して設けられ、例えば、搬送台車20のメンテナンス等ために、工程内レール10bから搬送台車20を一時退避させる場合に用いられる。
【0023】
バイパスレール10eは、工程間レール10aから分岐し、工程間レール10aを走行する搬送台車20に掴持されたウェハキャリア装置4をストッカ5に一時保管する場合等に用いられる。
【0024】
図9(a),(b)、及び図11に示すように、走行レール10は、その断面が下方に開口する凹形状に形成されている。具体的には、後述する走行部21に備えた走行車輪27を支持する支持部11と、支持部11と連接され、走行部21を囲むカバー部材12で構成されている。尚、走行レール10は、軽さと強度とアルミニウムの引抜材で形成され、支持部材13によって適当な間隔で天井から吊設されているが、材質及び天井への設置方向はこれに限らない。
直線状に配置された走行レールでは、カバー部材12のうち側壁部が部分的に開口され、軽量化が図られている。
【0025】
搬送台車20は、走行レール10の支持部11に沿って走行する走行部21と、走行部21に支持される物品収容部22で構成されている。
走行部21は、基台となるメインフレーム26と、メインフレーム26の前後に備えられた車軸に軸支された左右一対の走行車輪27と、走行車輪27を駆動する走行用モータ(図示せず)を備えている。
さらに、メインフレーム26には、走行レール10のカバー部材12内面と略接触状態となる位置に左右一対のガイド車輪(図示せず)が設けられ、前記ガイド車輪によって走行部21は進行方向の左右にずれることなく走行できるように構成されている。
【0026】
図示を省略するが、メインフレーム26には、走行レール10のカバー部材12内に設けられた分岐用ガイド(図示せず)を選択する分岐ローラが設けられ、例えば、工程間レール10aから分岐レール10cへと走行経路を切り替える際には、搬送台車20の、前記分岐ローラが前記分岐用ガイドの何れか一方を選択することで、走行経路が切り替わるように構成されている。
尚、走行部21は、走行用モータで走行車輪27を駆動して走行する構成に限らず、走行レール10内に敷設された永久磁石と、走行部21側に備えられたコアによりリニアモータを構成して走行する構成であってもよい。
【0027】
メインフレーム26の上部には、左右に給電ユニット30が備えられ、中央部に固定設備側と通信するための台車側送受信ユニット25が取付けられている。給電ユニット30は、E字形状のコア31とコア31の一部に巻回されたコイル32で構成されている。
【0028】
カバー部材12の内壁側面に給電線ホルダ14で支持された給電線15には高周波電力が印加され、コイル32に前記高周波電力が誘導され非接触で電力伝達が行われる。尚、搬送台車20に必要な電力はすべてこの非接触の給電方式により供給される。
尚、搬送台車20への給電手段としては、上述した給電ユニット30と給電線15とによる非接触の給電方式に限定されるものではない。
【0029】
また、カバー部材12の内壁天井面には、台車側送受信ユニット25の通信相手である固定設備側通信ユニット40が設置されている。台車側送受信ユニット25と固定設備側通信ユニット40とは、後述するように、光信号を送受信する。尚、図9(a),(b)では、図面を見易くするために、固定設備側通信ユニット40の寸法を拡大して図示している。
固定設備側通信ユニット40は、図12に設置箇所を概略的に示すように、搬送台車20の走行経路が曲線となっている工程内レール10bの一部、分岐レール10c、及び、バイパスレール10eに設置されている。
【0030】
物品収容部22には、ウェハキャリア装置4を掴むチャック機構23を備えた昇降体24を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構としての昇降用モータ(図示せず)が組み込まれている。
昇降体24は、昇降機構と複数のベルト29で連結されている。昇降用モータは、ベルト29を巻き取り、繰り出しをすることで、昇降体24を昇降させるように構成されている。尚、ベルト29には走行部21からチャック機構23へ給電する給電線や信号線が組み込まれている。
【0031】
チャック機構23は、ウェハキャリア装置4の上面の被掴持部4aを掴持するための一対の爪部と掴持用モータ(図示せず)で構成され、掴持用モータを駆動することで前記爪部が掴持姿勢または開放姿勢となることでウェハキャリア装置4の被掴持部4aを掴持または開放するように構成されている。
【0032】
図9(a),(b)では、メインフレーム26の上部に台車側送受信ユニット25が配置され、カバー部材12の内壁天井面に固定設備側通信ユニット40が設置された例を説明したが、台車側送受信ユニット25及び固定設備側通信ユニット40の取付位置は特に制限されるものではなく、適宜通信可能な位置に取り付けることができる。例えば、図10(a),(b)に示すように、搬送台車20を構成する物品収容部22の走行方向前面に台車側送受信ユニット25が配置され、走行レール10の支持部11の下面に固定設備側通信ユニット40が配置されていてもよい。
【0033】
以下に、図9(a),(b)で説明した移動設備側の台車側送受信ユニット25と固定設備側通信ユニット40との間の通信について説明するが、図10(a),(b)で説明した両者の取付位置であっても、基本的には同様である。
本発明の光データ伝送装置の主要部である固定設備側通信ユニット40は、カバー部材12に取り付けた状態での底面視すなわち台車側送受信ユニット25側から見た概略形状を図示する図1、要部を斜視図で図示する図2、及び、長手方向の断面を図示する図3に示すように、長尺の薄板短冊形状を有する可撓性支持部材41に所定の姿勢及び間隔で第1光通信ユニット42を配置し、その第1光通信ユニット42を含む可撓性支持部材41の略全体を被覆部材である透明の可撓性チューブ43にて被覆した構成としている。
【0034】
可撓性チューブ43の内壁には、長手方向に延びる上下一対の凹溝43aが形成されており、この一対の凹溝43aに可撓性支持部材41の上下両端が係合して、可撓性チューブ43内に収容された状態の可撓性支持部材41を所定の姿勢で保持している。
可撓性支持部材41を可撓性チューブ43で被覆する構成としていること、更には、可撓性チューブ43の外径が10mm程度と小径であることから、固定設備側通信ユニット40は容易に湾曲させることができ、上述のような搬送台車20の走行経路が曲線となっている箇所に容易に設置することができる。
例えば、分岐レール10cとバイパスレール10eとのように、搬送台車20の走行経路が湾曲する形状が異なっても、容易にその湾曲形状に適合させて設置することができ、移動設備が任意の曲率で設置された湾曲部を有する軌道に沿って走行する場合でも、その任意の曲率に適合させることができる。
【0035】
第1光通信ユニット42は、図2及び図3に示すように、可撓性支持部材41上に取り付けた基板42a上に、赤外発光LEDを有する発光部とフォトダイオードを有する受光部とを一体化した赤外通信モジュール42bと、周辺回路部品42c(図2では図示を省略)とを実装している。
図1では、2個の第1光通信ユニット42のみを抜き出して図示しているが、十数cm程度のピッチでさらに多くの第1光通信ユニット42が配置されている。
【0036】
図2等では図示を省略しているが、複数の第1光通信ユニット42間は信号配線によって接続されており、その接続状態を図6の回路図に示す。
図6で図示する各赤外通信モジュール42bが、各第1光通信ユニット42に備えられているものである。
赤外通信モジュール42bには、発光部の主要部である赤外発光ダイオード51,受光部の主要部であるフォトダイオード52及びトランジスタ53等が備えられており、各赤外通信モジュール42bの発光部は図6において「Tx」で示す共通の送信信号線54に接続され、各赤外通信モジュール42bの受光部は図6において「Rx」で示す共通の受信信号線55に接続されている。
さらに、各赤外通信モジュール42bは、「+5V」として示す電源ラインと「0V」として示すGNDラインとに接続され、これらを含めて、各第1光通信ユニット42間は4本の配線にて相互に接続されている。
【0037】
固定設備側通信ユニット40の長手方向端部には、図4の斜視図に示す、コネクタ部44が取り付けられており、コネクタ部44には、上記の4本の配線に対応する4個の電極44aが備えられている。
このコネクタ部44は、図7に概略的に示すように、固定設備側通信ユニット40の一端部側(換言すると、可撓性支持部材41の一端部側)に配置される集信装置45のコネクタ45aと連結され、上記送信信号線54及び上記受信信号線55が集信装置45に接続されている。
【0038】
さらに、固定設備側通信ユニット40は、図7に示すように、連結用コネクタユニット46を使用することで、同一構成の他の固定設備側通信ユニット40と接続することができる。図7に示すように、固定設備側通信ユニット40同士を連結用コネクタユニット46にて接続した状態では、各固定設備側通信ユニット40の送信信号線54及び受信信号線55等の配線が一連につながる状態となっており、固定設備側通信ユニット40同士を連結しても、単に固定設備側通信ユニット40の長さが長くなったのと同等の状態となるようにしている。
但し、配線長が長くなることによる電源ラインの電圧降下に対処するために、連結用コネクタユニット46には電源供給部である電源ユニット47が接続され、固定設備側通信ユニット40同士の接続箇所において、「+5V」として示す電源ラインと「0V」として示すGNDライン間(図6参照)に5Vの電源電圧を供給している。
【0039】
上記構成の固定設備側通信ユニット40の通信相手となる台車側送受信ユニット25は、台車側送受信ユニット25のみを抜き出して、固定設備側通信ユニット40との相対的な位置関係を図示する図5に示すように、本体部25aの上端に備えられた透明窓25b内に、2個の第2光通信ユニット28が備えられている。図5では、各第2光通信ユニット28を構成する主要部である赤外通信モジュール28aのみを図示している。赤外通信モジュール28aは、固定設備側通信ユニット40の赤外通信モジュール42bと同一構成のものである。
【0040】
図5において各赤外通信モジュール28a,42bの送受信の光軸を破線Cで示すように、搬送台車20の進行方向が図5において矢印Aで示す方向であるとして、一対の台車側送受信ユニット25のうちの一方の進行方向前方側に位置する赤外通信モジュール28aは、それの光軸Cを、第1光通信ユニット42の並び方向と直交する方向(図5において矢印Bで示す方向)から走行前方側に傾けた傾斜姿勢で配置されている。さらに、他方の進行方向後方側に位置する赤外通信モジュール28aは、それの光軸Cを、第1光通信ユニット42の並び方向と直交する方向(図5において矢印Bで示す方向)から走行後方側に傾けた傾斜姿勢で配置されている。
【0041】
上記の赤外通信モジュール28aの光軸Cの傾斜角度は何れも略45度に設定しており、このような配置姿勢とすることで、固定設備側通信ユニット40側の第1光通信ユニット42の並び間隔を十数cmにまで拡げることができ、そのように拡げても、搬送台車20が走行している状態において、第1光通信ユニット42の何れかが少なくとも一方の赤外通信モジュール28aと交信可能な状態を維持し続けることが可能となっており、台車側送受信ユニット25と固定設備側通信ユニット40との間隔が15mmから200mmの範囲で上記の通信状態を確保できる。
【0042】
台車側送受信ユニット25と固定設備側通信ユニット40との間の通信は、いわゆるIrDA規格にて通信を行うように構成されており、赤外通信モジュール25c及び周辺回路部品42cの発光部は870nm帯の波長領域の光を出射し、これに対応して、可撓性チューブ43や透明窓25bも、少なくともその波長領域で透明となる材料を使用している。もちろん、赤外通信モジュール25c及び周辺回路部品42cの受光部は、その波長領域で十分な感度を有しており、発光部が出射した赤外光を的確に受光する。
可撓性チューブ43は、それの全体が上記波長領域において透明であるが、透明であるのは通信のための赤外光が通過する部分だけで足りる。
【0043】
図12に示すように、走行レール10の複数箇所に設置される固定設備側通信ユニット40は、図8に示すように、夫々の集信装置45を経て地上側コントローラ16に接続されている。
集信装置45は、上記のIrDA規格の信号をいわゆるCAN規格の信号に変換して、地上側コントローラ16と、固定設備側通信ユニット40を経由した台車側送受信ユニット25との通信を中継する。
地上側コントローラ16は、さらに、製造設備1全体を管理する上位のコントローラに接続されている。
【0044】
図8に示す通信体系によって、地上側(固定設備側通信ユニット40側)からは、固定設備側通信ユニット40を識別するための信号、すなわち、複数箇所に設置されている固定設備側通信ユニット40のうちの何れの固定設備側通信ユニット40の通信エリアに進入したかを示す信号を送信し、搬送台車20側からは、その搬送台車20の識別信号を返信する。
【0045】
このような通信によって、例えば、いずれかの固定設備側通信ユニット40の通信エリアに搬送台車20が進入したときに、その先の合流地点等に接近してくる他の搬送台車20が存在するような場合、搬送台車20に対して停止信号を送信して衝突を回避するような制御が行える。
尚、詳細な説明は省略するが、上述のように、各搬送台車20に固有の識別信号を設定していることとの関係で、1つの固定設備側通信ユニット40のエリア内に複数台の搬送台車20が進入した場合でも、その識別信号を利用して、各搬送台車20と個別に通信を行うこともできる。
【0046】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記実施の形態では、固定設備側の第1光通信ユニット42と移動設備側の第2光通信ユニット28との間の通信を、IrDAにて行う場合を例示しているが、可視光域の波長を利用する等、通信に使用する波長域は適宜に変更可能である。
(2)上記実施の形態では、第1光通信ユニット42や可撓性支持部材41を被覆する被覆部材として可撓性チューブ43を使用する場合を例示しているが、透明の樹脂モールド等によって少なくとも第1光通信ユニット42を被覆する構成としても良い。
(3)上記実施の形態では、本発明の光データ伝送装置を、半導体デバイスの製造設備1に適用する場合を例示しているが、各種の工場や倉庫設備等における移動体が自動走行する設備に本発明を適用できる。
(4)上記実施の形態では、可撓性支持部材41を保持する保持部として、可撓性チューブ43の内面に凹溝43aを形成しているが、可撓性チューブ43の内面に、可撓性支持部材41を両側から挟み込む凸部を形成する等、保持部の具体構成は適宜に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、製造設備等に使用され、空間を伝播する固定設備と移動設備間の通信を行なう光データ伝送装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0048】
20 移動設備
28 第2光通信ユニット
41 可撓性支持部材
42 第1光通信ユニット
43 可撓性チューブ
45 集信装置
47 電源供給部
54 送信信号線
55 受信信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定設備に設置され、移動設備との間で光信号を送受信する光データ伝送装置であって、
所定の波長領域の光を発光する発光部と前記波長領域の光を受光する受光部とを備えた第1光通信ユニットと、前記第1光通信ユニットが所定の姿勢及び間隔で配置された長尺の可撓性支持部材と、少なくとも前記第1光通信ユニットを被覆する被覆部材とを備えている光データ伝送装置。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記波長領域の光を透過する部位を含む可撓性チューブにて構成され、
前記可撓性支持部材は、前記可撓性チューブに形成された保持部により所定の姿勢で保持された状態で前記可撓性チューブ内に収容されている請求項1記載の光データ伝送装置。
【請求項3】
各第1光通信ユニットの発光部が共通の送信信号線に接続されるとともに、各第1光通信ユニットの受光部が共通の受信信号線に接続され、前記送信信号線及び受信信号線が前記可撓性支持部材の一端部側に配置された集信装置に接続されている請求項1又は2記載の光データ伝送装置。
【請求項4】
前記可撓性支持部材の一端部側に、前記送信信号線及び受信信号線を介して請求項3記載の他の光データ伝送装置が接続可能に構成されている請求項3記載の光データ伝送装置。
【請求項5】
前記他の光データ伝送装置との接続箇所に前記第1光通信ユニットへの電源電圧を供給する電源供給部が備えられている請求項4記載の光データ伝送装置。
【請求項6】
前記移動設備が任意の曲率で設置された湾曲部を有する軌道に沿って走行するように構成され、前記可撓性支持部材が前記湾曲部に沿って配置されている請求項1から5の何れかに記載の光データ伝送装置。
【請求項7】
一方が送受信の光軸を前記第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行前方側に傾けた傾斜姿勢で配置されるとともに、他方が送受信の光軸を前記第1光通信ユニットの並び方向と直交する方向から走行後方側に傾けた傾斜姿勢で配置され、前記波長領域に対応した発光部及び受光部を夫々に備えた一対の第2光通信ユニットが搭載された前記移動設備に対して、前記第1光通信ユニットは、その何れかが少なくとも一方の第2光通信ユニットと交信可能な状態となる間隔で前記可撓性支持部材に配置されている請求項1から6の何れかに記載の光データ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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