説明

光パルス時間多重制御方法および光パルス時間多重制御装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は短光パルス信号がRZ(Return to Zero)フォ−マットとなるよう変調される光通信システムの、光パルス時間多重制御方法および光パルス時間多重制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の光パルス時間多重装置の構成を図9R>9に示す。この図において、100はレーザダイオード(LD)等を用いて短光パルスを発生する短光パルス発生回路、101は短光パルスを1系,2系の2つに分岐する分波回路、102は1系の光パルスを伝送情報信号1により変調する変調器、103は変調された光パルスを遅延する半固定遅延回路、104は変調器102および半固定遅延回路103からなる1系、105は2系の光パルスを伝送情報信号2により変調する変調器、106は変調された光パルスを遅延する半固定遅延回路、107は変調器105および半固定遅延回路106からなる2系、108は1系104から出力される光パルスと2系107から出力される光パルスを合成することにより、光パルス時間多重信号を出力する合波回路である。
【0003】このように構成された光パルス時間多重装置において、短光パルス発生回路100からは図に示すような短光パルスaが所定周期毎に連続して発生されており、短光パルスaが分波回路101に入力されて2つの光導波路に分岐される。分岐された一方の短光パルスは1系104に入力されて、変調器102において短光パルスの繰返し周期に同期した伝送情報信号1により光強度変調されて、図に示すようなRZフォ−マットの変調短光パルスbとされ、さらに半固定遅延回路103において所定時間遅延される。
【0004】また、分岐された他方の短光パルスは2系107に入力されて、変調器105において短光パルスの繰返し周期に同期した伝送情報信号2により光強度変調されて、図に示すようなRZフォ−マットの変調短光パルスcとされ、さらに半固定遅延回路106において所定時間遅延される。そして、1系からの変調短光パルスbと2系107からの変調短光パルスcとは、合波回路108に入力されて時間軸上で合成され、図に示すような時間多重信号dとされて出力される。この時間多重信号dの周期は、短光パルス発生回路100から発生される短光パルスの繰返し周期の1/2(繰返し周波数は2倍)とされる。
【0005】なお、半固定遅延回路103および半固定遅延回路106は、時間多重信号dの周期が短光パルス発生回路100から発生される短光パルスの繰返し周期の1/2となるには、合波された時に変調短光パルスb間の中央に変調短光パルスcが位置する必要があるため、変調短光パルスbと変調短光パルスcとの時間関係を調整するために設けられているものである。このように、1系と2系の光パルス信号を時間多重化することによって伝送容量を2倍以上にすることができ、効率的な光通信システムとすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記した従来の光パルス時間多重装置においては、半固定遅延回路103と半固定遅延回路106との遅延時間が最適になるよう調整した後で、それぞれの遅延時間を固定している。しかしながら、変調短光パルスb,cを生成するために必要な区間、すなわち分波回路101の出力から合波回路108の入力までの経路は、装置構成上および製造上の理由で空間的に夫々異なる場所に設置される場合が多い。さらに、夫々の経路長は、多くの場合一般に異なるものとされている。
【0007】ところで、短光パルスの経路は通常光ファイバにより構築されるが、光ファイバは温度により伸縮する温度特性を有しているため、夫々の環境温度の変動により光ファイバの長さがランダムに変動するようになる。従って、経路長が異なると合波回路108の出力の時間多重信号dの変調短光パルス間の相対時間が、ランダムに変動するようになる。一方、受信側で時間多重信号dから変調短光パルスbと変調短光パルスcとを分離するためには、時間多重信号dのパルス繰返し周波数を抽出し、抽出されたパルス繰返し周波数に基づくタイミングで変調短光パルスbと変調短光パルスcとを分離する必要がある。
【0008】しかしながら、前記したように時間多重信号dのパルス繰返し周期に揺らぎがあると、パルス繰返し周波数にジッタが生じてしまい、変調短光パルスbと変調短光パルスcとを受信側において正確に分離することができず、伝送特性が劣化するようになり、良好な通信を行うことができないという問題点があった。さらに、伝送速度20Gbpsの光ソリトン通信においては、受信端でのタイミングジッタが伝送特性の主たる劣化原因とされているが、タイミングジッタにより誤り率が10-10 に制限されている場合、送信側の光時間多重装置においてタイミングが2ピコセカンド(2×10-12 sec;2ps)揺らぐと、誤り率は1桁以上劣化することが知られている。
【0009】そこで検討するに、送信装置の時間揺らぎを誤り率に反映させないためには、ビット間隔の1/50以下の精度で複数の光パルス列を配置する必要がある。前記の約2psの時間揺らぎは、光ファイバ長の揺らぎに換算すると約0.4mmの長さに相当する。この換算は、「光ファイバの長さ」=「伝搬時間(2ps)]×「光速度(3×108 )」÷「光ファイバの伝搬係数(1.47)」により行うことができる。しかしながら、一般に使用されるナイロン被覆で保護された光ファイバの伸縮率は約3×10-5(℃-1)であるから、例えば2系統の光回路が同じ温度環境で、光ファイバ長に1mの差がある場合、1℃の温度変化において3×10-5mの変動が生じてしまう。さらに、14℃の温度変化が起こった場合、光ファイバ長の変動は0.4mmを越え、前記の誤り率の制限を越えるようになるため、伝送特性が劣化してしまうようになる。
【0010】さらに別の例を用いて説明すると、例えば2系統の光回路が異なった位置に設定されており、それぞれの光ファイバ回路を構成する光ファイバの長さが10mで同一の長さとされている場合に、それぞれの光回路を収容している周辺温度の差が1℃生じると3×10-4mの変動が生じ、さらに、2℃の温度差が生じてしまった場合、2系統の光回路を構成する光ファイバ長の変動は6×10-4m(0.6mm)となり、0.4mmの制限を越えて伝送特性が劣化してしまうようになる。したがって、従来の光パルス時間多重装置においては、長期間に亘り伝送特性を劣化させることなく安定に動作させることができないという問題があった。さらに、伝送速度が20Gbpsを越える光通信を実現するためには、前記の光ファイバ長の揺らぎの制限はさらに厳しくなる。
【0011】そこで、本発明は長期間にわたり伝送特性を良好に維持することができると共に、安定に動作する光パルス時間多重制御方法および光パルス時間多重制御装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の光パルス時間多重制御方法は、複数系統の光パルスをそれぞれ分岐して、それぞれの光パルスの繰返し周波数信号を抽出し、抽出された複数系統の内の一つの繰返し周波数信号を基準信号として、残りの複数系統の繰返し周波数信号とそれぞれ位相検出を行うと共に、前記複数系統の光パルスが時間多重された場合に、前記複数系統の光パルスが等間隔で配置されるように、前記残りの系統の光パルスの遅延時間を、前記位相検出した結果に応じてそれぞれフィードバック制御するようにしたものである。
【0013】また前記光パルス時間多重制御方法において、光パルス発生回路より出力される光パルスが複数に分岐され、該分岐されたそれぞれの光パルスに伝送情報により変調が施されて、前記複数系統の光パルスとされるようにしたもの、さらに、前記抽出から位相検出までを行う位相検出手段が一系統のみ設けられており、前記分岐された複数系統の光パルスを時分割して、前記一系統のみ設けられている位相検出手段に供給され、該位相検出手段の出力がそれぞれの系統に分配されて遅延時間を制御するようフィードバックされるようにしたものである。
【0014】また、本発明の光パルス時間多重制御方法を具現化した光パルス時間多重制御装置は、複数系統の光パルスをそれぞれ分岐して、それぞれの光パルスの繰返し周波数信号を抽出する抽出手段と、複数系統の光パルスが時間多重された場合に、それぞれの光パルスが等間隔で配置されるように、それぞれの光パルスの経路に挿入された遅延時間を可変することのできる遅延手段と、前記抽出手段により抽出された複数系統の内の一つの繰返し周波数信号を基準信号として、残りの複数系統の繰返し周波数信号との相対位相をそれぞれ検出する位相検出器とを備え、前記遅延手段の遅延時間を前記位相検出器より出力される位相検出信号によりフィードバック制御する手段を備えることにより、前記複数系統の光パルス列が等間隔で時間多重配置されるようにしたものである。
【0015】また前記光パルス時間多重制御装置において、光パルス発生回路の光パルス出力を複数に分岐する多分岐回路と、複数に分岐された光パルスのそれぞれを伝送情報により変調する複数の変調器とを備え、該複数の変調器から前記複数系統の光パルスを出力するようにしたもの、前記複数系統の光パルスをそれぞれ分岐する光分波器と、該光分波器に後置されると共に、前記複数系統の光パルスを合成することにより時間多重するようにした光合波器とを備え、前記光分波器と前記光合波器とを接続する光線路の伝搬時間が悪影響を与えない程度に、前記光線路を短くするようにしたもの、前記複数系統の光パルスをそれぞれ分岐する光分波器と、該光分波器により分岐された光パルスを光検波する光検波器とを備え、前記光分波器と前記光検波器とを接続する光線路の伝搬時間が悪影響を与えない程度に、前記光線路を短くするようにしたもの、前記抽出手段から位相検出器までの位相検出部が一系統のみ設けられており、前記分岐された複数系統の光パルスを時分割して、前記一系統のみ設けられている位相検出部に供給され、該位相検出部の出力がそれぞれの系統に分配されて前記遅延手段にフィードバックされているようにしたものである。
【0016】
【作用】本発明によれば、時間多重される複数の光パルスの相対時間位置が揺らぐことのないようフィードバック制御しているため、複数の系統の光パルスの時間位置がそれぞれ揺らぐことなく等時間間隔を保持して時間多重することができる。従って、誤り率の低い伝送特性を長期間に亘って維持することのできる良好な光通信システムを構築することができるようになる。また、時間多重できる系統も2系統に限らず、3系統以上の光パルスを誤り率の低い良好な伝送特性を維持しながら安定に時間多重することができる。
【0017】
【実施例】本発明の光パルス時間多重制御方法を具現化した光パルス時間多重制御装置の第1実施例のブロック図を図1(a)(b)に示す。この図1(a)において、40はレーザダイオード(LD)等を用いて短光パルスを発生する短光パルス発生回路、41は短光パルスを1系,2系の2つに分岐する分波回路、42は1系の光パルスを伝送情報信号1により変調する変調器、43は2系の光パルスを伝送情報信号2により変調する変調器である。
【0018】また、図1(b)において、1,3は入力された光パルス信号A,Bを、それぞれ所定時間遅延する半固定遅延回路、2は半固定遅延回路1により遅延された光パルス信号Bdを2つに分岐する光分波器、4は外部より印加される制御信号に応じて半固定遅延回路3により遅延された光パルス信号を遅延する外部制御型可変遅延回路、5は外部制御型可変遅延回路4により遅延された光パルス信号Adを2つに分岐する光分波器、6は光分波器2で分岐された一方の光パルス信号Bdと光分波器5で分岐された一方の光パルス信号Adを合成することにより、光パルス時間多重信号Cを出力する光合波器である。
【0019】また、7,11は光分波器2で分岐された他方の光パルス信号Bdあるいは光分波器5で分岐された他方の光パルス信号Adを受光して電気信号に変換する受光器、8,12は受光器7,11より出力される電気信号とされた夫々のパルス信号を増幅する増幅器、9,13は増幅器8,12により増幅された夫々のパルス信号の繰返し周波数成分を抽出する帯域通過フィルタ(BPF)、10,14はBPF9,13により抽出された周波数成分の位相を夫々移相する移相器、15は移相器10,14より出力される周波数成分の相対位相を検出する位相検出器、16は位相検出器15より出力される位相差に応じた位相検出信号を濾波することにより位相検出信号に含まれる雑音成分を除去するための低域通過フィルタ(LPF)、17はLPF16より出力される濾波信号を増幅する増幅器、18は増幅器17より出力される誤差電圧に応じて、外部制御型可変遅延回路4の遅延量を制御する位相調整制御回路である。
【0020】このように構成された光パルス時間多重制御装置において、図1(a)に示す短光パルス発生回路40からは図に示すような短光パルスaが所定周期毎に連続して発生されており、短光パルスaが分波回路41に入力されて2つの光導波路に分岐される。分岐された一方の短光パルスは1系に入力されて、変調器42において短光パルスの繰返し周期に同期した伝送情報信号1により光強度変調されて、RZフォ−マットの変調短光パルスAとされる。また、分岐された他方の短光パルスは2系に入力されて、変調器43において短光パルスの繰返し周期に同期した伝送情報信号2により光強度変調されて、RZフォ−マットの変調短光パルスBとされる。
【0021】変調短光パルスBは図1(b)に示す半固定遅延回路1に入力され、所定時間遅延されて図に示すような光パルス信号Bdとされて、次いで光分波器2において分岐され、分岐された一方の光パルス信号Bdが光合波器6に、分岐された他方の光パルス信号Bdが受光器7に入力される。また、半固定遅延回路3に入力される変調短光パルス信号Aは、半固定遅延回路3および外部制御型可変遅延回路4において所定時間遅延されて図に示すような光パルス信号Adとされて、次いで光分波器5において2つに分岐され、分岐された一方の光パルス信号Adが光合波器6に、分岐された他方の光パルス信号Adが受光器11に入力される。
【0022】ここで、本発明は光合波器6における光パルス信号BdとAdの位相関係を最適化するように自動調整させるものであるから、それぞれの位相状態を検出するための光受光器7および11の出力は、光合波器6における光パルス信号BdとAdの位相関係を忠実に表すものでなくてはならない。しかし光分波器2と光合波器6、光分波器2と受光器7、光分波器5と光合波器6、および光分波器5と受光器11との間の光ファイバの長さの変動は、上記の光合波器6における光パルス信号BdとADの位相関係の検出精度に誤差を与えるものであるから、これらの光ファイバの長さを安定に保つことが光合波器6における位相検出の精度を上げることにほかならない。そして、光ファイバの長さを安定に保つためには以下の方法が考えられる。
【0023】■ 図5に示すように、光分波器2および5、光合波器6、受光器7および11を一体化し、これらを接続する光ファイバをなくし、位相検出の誤差要因を排除する。
■ 光分波器2および5、光合波器6、受光器7および11を同一温度環境上に設置し、例えば同一の基板上あるいはケースに収容して、光分波器2−光合波器6の間と光分波器2−受光器7の間、光分波器5−光合波器5の間と光分波器5−受光器11の間の長さが、それぞれ50cm以下になるようにすることによって誤差の少ない位相検出が可能となる。これはナイロン被覆の光ファイバ心線を使用した場合であり、紫外線硬化樹脂等の伸縮率の小さな被覆を使用した光ファイバの場合には5m以下になるようにすれば十分な位相検出精度を保つことができる。
【0024】前記説明を続けると、光合波器6において入力された光パルス信号Adと光パルス信号Bdとが合成されて、図に示すような光パルス時間多重信号Cとされる。この光パルス時間多重信号Cのパルス繰返し周波数は、光パルス信号Adあるいは光パルス信号Bdのパルス繰返し周波数の2倍とされるが、光パルス信号Adと光パルス信号Bdとが交互に等時間間隔で配列されるように、外部制御型可変遅延回路4の遅延時間が後述するように制御される。
【0025】すなわち、受光器7で受光された光パルス信号Bdは、電気信号に変換され次いで増幅器8において増幅された後、BPF9によりパルス繰返し周波数成分が抽出される。また、受光器11で受光された光パルス信号Adは、電気信号に変換され次いで増幅器12において増幅された後、BPF13によりパルス繰返し周波数成分が抽出される。そして、BPF9よりのパルス繰返し周波数成分およびBPF13よりのパルス繰返し周波数成分は、夫々移相器10,14において相対的な位相が調整された後、位相検出器15において両周波数成分fa,fbの位相差が検出される。(位相器10,14の調整については後述する。)
【0026】位相検出器15よりの出力信号は、LPF16および増幅器17により処理されて誤差電圧が出力される。この誤差電圧が位相調整制御回路18を介して、外部制御型可変遅延回路4に遅延量制御信号として印加されることにより、光パルス信号Adと光パルス信号Bdとの相対的時間位置が揺らぐことがないようにフィードバック制御される。従って、光パルス信号A,Bが揺らいでも光パルス信号Bd間の中央に光パルス信号Adを配列させた時間多重信号Cを生成することができる。
【0027】なお、半固定遅延回路1,3および移相器10,14の初期調整は次のようにして行なわれる。まず、外部制御型可変遅延回路4の遅延量を動作範囲の中央に設定した後、光合波器6より出力される光パルス時間多重信号Cを観測して、光パルス信号Adと光パルス信号Bdとの時間配置が最適になるように半固定遅延回路1および半固定遅延回路3の遅延量を調整する。次に、増幅器17より出力される誤差電圧がゼロになるように移相器10および移相器14の移相量を調整する。このように調整すると、位相検出器15に入力される光パルス信号Adのパルス繰返し周波数成分faと光パルス信号Bdのパルス繰返し周波数成分fbとの位相関係はπ/2ラジアンとなる。ここで、外部制御型可変遅延回路4の遅延制御範囲が十分ある場合、半固定遅延回路1等を省略しても外部制御型可変遅延回路4の初期値を時間配置が最適になるように設定することができる。また、位相器10,14の移相範囲が90°以上ある場合、位相器10,14のいずれかを省略することができ、経済化が図れる。
【0028】この位相検出器15は図2(a)に示すように乗算器により構成されており、その位相検出特性は同図(b)に示すようになる。すなわち、位相検出器15の入力における光パルスAdのパルス繰り返し周波数成分faと光パルスBdのパルス繰返し周波数成分fbの位相関係が、π/2および−π/2の時に出力がゼロ(位相一致状態)とされる。従って、周波数成分faと周波数成分fbの位相関係が0〜πと−π〜0の2つの領域において位相検出が可能であることがわかる。
【0029】ここで、周波数成分faと周波数成分fbの位相関係が0〜πの条件において、周波数成分faの最適値(π/2)からの相対時間変化をθとすると、誤差電圧はcos(π/2+θ)、すなわち−sinθとなる。従って、光パルス時間多重信号Cとされた光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相関係が最適な時、位相検出器1 5の出力の誤差電圧はゼロとなり、一方光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相関係が最適値から変動した場合には誤差電圧が生じるようになる。この誤差電圧は位相変動方向および時間変動量に対応した極性および振幅とされる。
【0030】さらに、図3を参照しながら説明すると、図3(a)は光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相関係が最適とされている場合を示しており、上段に示すように光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相差がπ/2とされている。この時は、下段に示されるように誤差電圧がゼロとされる。また、図3(b)は、環境温度等の変動により光ファイバの長さが変動して光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相関係が最適時と比べて大きくなった場合を示している。この時の位相検出器15の入力における光パルス信号Adのパルス繰返し周波数成分faと光パルス信号Bdのパルス繰返し周波数成分fbとの位相関係が上段に示されており、下段に誤差電圧が示されている。この誤差電圧は負となり、位相調整制御回路18は外部制御型可変遅延回路4の遅延量を徐々に短くすることにより、誤差電圧がゼロになるよう制御することにより、同図(a)に示される最適条件に引き込んでいる。
【0031】また、図3(c)は、環境温度等の変動により光ファイバの長さが変動して光パルス信号Adと光パルス信号Bdの位相関係が最適時と比べて小さくなった場合を示している。この時の位相検出器15の入力における光パルス信号Adのパルス繰返し周波数成分faと光パルス信号Bdのパルス繰返し周波数成分fbとの位相関係が上段に示されており、下段に誤差電圧が示されている。この誤差電圧は正となり、位相調整制御回路18は外部制御型可変遅延回路4の遅延量を徐々に長くすることにより、誤差電圧がゼロになるよう制御することにより、同図(a)に示される最適条件に引き込んでいる。
【0032】一方、受光器7および受光器11から位相検出器15までの電気的経路の電気長の差によって、周波数成分faと周波数成分fbの位相関係を−π〜0の状態にした方が、位相器10および位相器14の調整上都合が良い場合がある。このようにすると、最適状態における周波数成分faと周波数成分fbの位相関係は−π/2となる。また、周波数成分faの最適値(−π/2)からの相対時間変化をθとすると、誤差電圧はcos(−π/2+θ)、すなわちsinθとなる。従って、誤差電圧の極性は、前記周波数成分faと周波数成分fbの位相関係を0〜πにした場合と逆となるが、外部制御型可変遅延回路4の遅延量の増減の制御方向を逆とすれば、最適条件に引き込むことができるようになる。
【0033】次に、外部制御型可変遅延回路4の構成の一例を図4に示す。この図において、4−1はプリズムでありアクチュエータ等により前後に移動可能とされている。すなわち、位相調整制御回路18よりの誤差電圧によりプリズム4−1が、例えば破線で示すように距離dだけ後退したとすると、入力光Ainの経路は2dだけ長くなり、その分遅延された出力光Aoutが出力される。このようにして、誤差電圧に応じてプリズム4−1を前後に制御することにより所定量遅延することができる。
【0034】次に、2つ以上の系統の光パルス信号を光パルス時間多重することのできる本発明の第2実施例の光パルス時間多重制御装置のブロック図を図6に示す。この図において、光分波器21に入力される光パルス信号Rが、外部制御型可変遅延回路1,2,3・・・Nに入力される光パルス信号1,2,3・・・Nを時間多重化する場合の時間基準信号とされており、変調されてRZフォ−マットとされた光パルス信号Rは、光分波器21において2つに分岐され、分岐された一方の光パルス信号Rが光合波器23に、分岐された他方の光パルス信号Rが受光器24に入力されている。
【0035】受光器24に入力された光パルス信号Rは電気信号に変換されて増幅器25により増幅される。そして、BPF26によりそのパルス繰返し周波数成分が抽出されて、さらに増幅器27により増幅されてディバイダ(DIV)32においてN個に分配される。また、外部制御型可変遅延回路1に入力される変調されてRZフォ−マットとされた光パルス信号Aは、外部制御型可変遅延回路1において所定時間遅延されて光パルス信号A1とされ、次いで光分波器22−1において2つに分岐され、分岐された一方の光パルス信号A1が光合波器23に、分岐された他方の光パルス信号A1が受光器28−1に入力される。
【0036】受光器28−1に入力された光パルス信号A1は電気信号に変換されて増幅器29−1により増幅される。そして、BPF30−1によりそのパルス繰返し周波数成分が抽出されて、さらに移相器31−1により移相されて位相検出器33−1に入力され、分配器32において分配された光パルス信号Rのパルス繰返し周波数成分と乗算されることにより位相検出が行なわれる。位相検出器33−1よりの出力信号はLPF34−1で濾波されて、増幅器35−1により増幅されることにより、誤差電圧1とされる。
【0037】なお、外部制御型可変遅延回路2〜Nに入力される変調されてRZフォ−マットとされた光パルス信号2〜Nの処理も光パルス信号1と同様に行われて、光パルス信号Rとの位相誤差に応じた誤差電圧2〜Nが増幅器35−2〜35−Nから夫々出力される。この誤差電圧1,2,・・・Nは位相調整制御回路36を介して外部制御型可変遅延回路36−1,36−2,・・・36−Nに夫々印加されて、光パルス信号1,2,・・・Nの位相が調整される。
【0038】ところで、光合波器23において入力された光パルス信号Rおよび光パルス信号A1〜ANとが合成されて、図7Cに示すような光パルス時間多重信号Cとされる。この光パルス時間多重信号Cのパルス繰返し周波数は、光パルス信号Rあるいは光パルス信号1,2,・・・Nのパルス繰返し周波数の(N+1)倍とされるが、光パルス信号Rと光パルス信号1,2,・・・Nが等時間間隔で、その時間位置が揺らぐことなく配列されるように、外部制御型可変遅延回路1,2,・・・Nの位相量がフィードバック制御される。このフィードバック制御の動作は前記図1に示す実施例と同様に行われるので、その説明は省略する。
【0039】次に、外部制御型可変遅延回路1,2,・・・Nおよび位相器31−1,31−2,・・・31−Nの初期調整について図7を参照しながら説明する。光パルス信号Rと光パルス信号1,2,・・・Nは、短光パルス発生回路よりの短光パルスを分岐した後、強度変調されることによりR〜Nとして図に示すように生成されている。初期調整時には、まず光合波器23より出力される光パルス時間多重信号Cを観測して、光パルス信号R間に配置される光パルス信号1,2,・・・Nの時間配置が最適になるように外部制御型可変遅延回路1,2,・・・Nの遅延量を調整する。この場合、光パルス信号Rの周期をTとすると、光パルス信号Rに対して光パルス信号1,2,・・・Nは、図7にA1〜ANとして示すように夫々1T/(N+1),2T/(N+1),・・・NT/(N+1)づつ遅延されることになる。
【0040】次に、増幅器35−1,35−2,・・・35−Nより出力される誤差電圧1,2,・・・Nが夫々ゼロになるように移相器31−1,31−2,・・・31−Nの移相量を調整する。このように調整すると、光パルス時間多重信号Cとされた光パルス信号Rと光パルス信号1,2,・・・Nとの位相関係は2π/(N+1),4π/(N+1),・・・2Nπ/(N+1)ラジアンとなり、また、位相検出器33−1,33−2,・・・33−Nに入力される光パルス信号Rのパルス繰返し周波数成分と光パルス信号1,2,・・・Nのパルス繰返し周波数成分との位相関係は夫々π/2ラジアンとされる。
【0041】これにより、光パルス信号Rと光パルス信号1,2,・・・Nとの相対的時間位置が揺らぐことがないように制御することができる。従って、図7にCとして示すような光パルス信号R間に等時間間隔で光パルス信号1,2,・・・Nを配列させた時間多重信号Cを生成することができる。
【0042】次に、前記本発明の第2実施例の変形例の構成を図8に示すが、この変形例は光パルス信号1,2,・・・Nの位相誤差をそれぞれ検出するために、一組の受光器28、増幅器29、BPF30、移相器31を共通に使用するものである。すなわち、光分波器22−1,22−2,・・・22−Nにより分岐された光パルス信号A1,A2,・・・ANは選択回路37において、その一つ、例えば光パルス信号A1が選択されて受光器28、増幅器29、BPF30、移相器31により、その繰返し周波数信号が抽出されると共に所定位相とされる。そして、位相検出器33により光パルス信号Rとの相対位相が検出され、さらにLPF34で濾波され増幅器35により増幅されて誤差電圧とされる。この誤差電圧は分配回路38に入力されて、分配回路38により位相調整制御回路36−1に分配されて、外部制御型可変遅延回路1の位相量を制御する信号とされる。
【0043】従って、光パルス信号1の位相量が所定位相量となるよう制御されるようになる。このように、選択回路37が選択する系統の光パルス信号の位相を制御するよう、分配回路38が選択された系統の位相調整回路36−1,36−2,・・・36−Nのいずれかに誤差電圧を供給するよう分配している。これにより、光パルス時間多重制御装置の構成を簡略化することができるようになる。なお、この変形例における他のフィードバック制御の動作については第2実施例と同様であるので、その説明は省略するものとする。
【0044】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されているので、時間多重される複数の光パルスの相対時間位置が揺らぐことのないようフィードバック制御することができ、複数の系統の光パルスの時間位置が揺らぐことなく等時間間隔を保持するよう時間多重することができる。従って、誤り率の低い良好な光通信システムを長期間に亘って構築することができるようになる。また、多重できる系統も2系統に限らず、3系統以上の光パルス信号を伝送特性を良好に維持しながら安定に時間多重することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光パルス時間多重制御装置の第1実施例のブロック図である。
【図2】本発明の光パルス時間多重制御装置における位相検出器の位相検出特性を示す図である。
【図3】本発明の光パルス時間多重制御装置における位相検出器の位相検出動作を説明するための図である。
【図4】外部制御型可変遅延回路の一例を示す図である。
【図5】2系統の光分波器と受光器および光合波器とをパッケージした構造を示す図である。
【図6】本発明の光パルス時間多重制御装置の第2実施例のブロック図である。
【図7】第2実施例の光パルス時間多重制御装置の光パルス信号のタイミングを示す図である。
【図8】第2実施例の変形例の構成を示すブロック図である。
【図9】従来の光パルス時間多重制御装置のブロック図およびタイミングを示す図である。
【符号の説明】
1,3,103,106 半固定遅延回路
2,5,21,22−1〜22−N 光分波器
4 外部制御型可変遅延回路
6,23 光合波器
7,11,24,28−1〜28−N 受光器
8,12,17,25,29−1〜29−N,35,35−1〜35−N増幅器
9,13,26,30−1〜30−N 帯域通過フィルタ(BPF)
10,14,31−1〜31−N 移相器
15,33−1〜33−N 位相検出器
16,34,34−1〜34−N 低域通過フィルタ(LPF)
18,36 位相調整制御回路
32 ディバイダ
37 選択回路
38 分配回路
40,100 短光パルス発生回路
41,101 分波回路
42,43,102,105 変調器
104 1系
107 2系
108 合波回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数系統の光パルスをそれぞれ分岐して、それぞれの光パルスの繰返し周波数信号を抽出し、抽出された複数系統の内の一つの繰返し周波数信号を基準信号として、残りの複数系統の繰返し周波数信号とそれぞれ位相検出を行うと共に、前記複数系統の光パルスが時間多重された場合に、前記複数系統の光パルスが等間隔で配置されるように、前記残りの系統の光パルスの遅延時間を、前記位相検出した結果に応じてそれぞれフィードバック制御することを特徴とする光パルス時間多重制御方法。
【請求項2】 光パルス発生回路より出力される光パルスが複数に分岐され、該分岐されたそれぞれの光パルスに伝送情報により変調が施されて、前記複数系統の光パルスとされることを特徴とする請求項1記載の光パルス時間多重制御方法。
【請求項3】 前記抽出から位相検出までを行う位相検出手段が一系統のみ設けられており、前記分岐された複数系統の光パルスを時分割して、前記一系統のみ設けられている位相検出手段に供給され、該位相検出手段の出力がそれぞれの系統に分配されて遅延時間を制御するようフィードバックされていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の光パルス時間多重制御方法。
【請求項4】 複数系統の光パルスをそれぞれ分岐して、それぞれの光パルスの繰返し周波数信号を抽出する抽出手段と、複数系統の光パルスが時間多重された場合に、それぞれの光パルスが等間隔で配置されるように、それぞれの光パルスの経路に挿入された遅延時間を可変することのできる遅延手段と、前記抽出手段により抽出された複数系統の内の一つの繰返し周波数信号を基準信号として、残りの複数系統の繰返し周波数信号との相対位相をそれぞれ検出する位相検出器とを備え、前記遅延手段の遅延時間を前記位相検出器より出力される位相検出信号によりフィードバック制御する手段を備えることにより、前記複数系統の光パルス列が等間隔で時間多重配置されることを特徴とする光パルス時間多重制御装置。
【請求項5】 光パルス発生回路の光パルス出力を複数に分岐する多分岐回路と、複数に分岐された光パルスのそれぞれを伝送情報により変調する複数の変調器とを備え、該複数の変調器から前記複数系統の光パルスを出力することを特徴とする請求項4記載の光パルス時間多重制御装置。
【請求項6】 前記複数系統の光パルスをそれぞれ分岐する光分波器と、該光分波器に後置されると共に、前記複数系統の光パルスを合成することにより時間多重するようにした光合波器とを備え、前記光分波器と前記光合波器とを接続する光線路の伝搬時間が悪影響を与えない程度に、前記光線路を短くしたことを特徴とする請求項4あるいは5記載の光パルス時間多重制御装置。
【請求項7】 前記複数系統の光パルスをそれぞれ分岐する光分波器と、該光分波器により分岐された光パルスを光検波する光検波器とを備え、前記光分波器と前記光検波器とを接続する光線路の伝搬時間が悪影響を与えない程度に、前記光線路を短くしたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の光パルス時間多重制御装置。
【請求項8】 前記抽出手段から位相検出器までの位相検出部が一系統のみ設けられており、前記分岐された複数系統の光パルスを時分割して、前記一系統のみ設けられている位相検出部に供給され、該位相検出部の出力がそれぞれの系統に分配されて前記遅延手段にフィードバックされていることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の光パルス時間多重制御装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3313536号(P3313536)
【登録日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【発行日】平成14年8月12日(2002.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−60129
【出願日】平成7年2月24日(1995.2.24)
【公開番号】特開平8−237228
【公開日】平成8年9月13日(1996.9.13)
【審査請求日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【出願人】(000208891)ケイディーディーアイ株式会社 (2,700)
【参考文献】
【文献】特開 平2−107034(JP,A)
【文献】特開 平7−38575(JP,A)
【文献】特開 平3−117236(JP,A)
【文献】特開 昭60−90443(JP,A)
【文献】特開 平6−141002(JP,A)
【文献】特開 平4−100016(JP,A)
【文献】特開 平8−23303(JP,A)