説明

光パルス試験器

【課題】測定にかかる時間を予めユーザに通知することができる光パルス試験器を提供する。
【解決手段】測定時間演算手段は、フォトカウント部でのカウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、光ファイバの測定距離範囲と、フォトカウント部を有効とするゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出する。表示手段は、測定時間演算手段により算出された前記時間を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスを光ファイバに向けて射出するパルス発生部と、前記光パルスに基づくレイリー後方散乱光に含まれるフォトンを検出するフォトン検出部と、フォトン検出部で検出されたフォトンをカウントするフォトンカウント部とを備える光パルス試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの特性を測定する装置として、フォトンカウンティング方式を用いたOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が知られている。この装置では、レーザパルスを光ファイバに照射し、そのレイリー後方散乱光(RBS;Rayleigh Backscatter Signal)に含まれるフォトンをアバランシェ・フォトダイオードで検出することで光ファイバの特性を測定している。アバランシェ・フォトダイオードはゲート信号が印加されたときにガイガーモードで動作し、ゲート信号が印加されたときのみフォトンを検出する。ゲート信号を印加するタイミングを少しずつ変えながら、そのときに検出されたフォトンをカウントすることでファイバの距離とフォトンのカウント数との関係を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2008/0231842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置ではレーザパルスを1回照射するたびにゲート信号を1回ずつ印加している。このため、長い光ファイバを充分なダイナミックレンジで測定するためには、レーザパルスを多数回照射する必要があり、測定に長時間を要する。しかし従来の装置ではユーザは測定がいつ終了するのかが分からず、測定終了まで待つしかないという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、測定にかかる時間を予めユーザに通知することができる光パルス試験器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光パルス試験器は、光パルスを光ファイバに向けて射出するパルス発生部と、前記光パルスに基づくレイリー後方散乱光に含まれるフォトンを検出するフォトン検出部と、フォトン検出部で検出されたフォトンをカウントするフォトンカウント部とを備え、前記フォトン検出部における検出を有効とするゲート信号を前記フォトン検出部に印加するタイミングを変えながら前記フォトンカウント部でのカウントを行うことで前記光ファイバの距離とフォトンのカウント数との関係を求める光パルス試験器において、前記カウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、前記光ファイバの測定距離範囲と、前記ゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出する測定時間演算手段と、前記測定時間演算手段により算出された前記時間を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
この光パルス試験器によれば、カウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、光ファイバの測定距離範囲と、ゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出し、表示するので、測定にかかる時間を予めユーザに通知することができる。
【0007】
前記カウント数に基づく測定のダイナミックレンジ、前記光ファイバの測定距離範囲、または、前記ゲート信号のゲート幅の設定を受け付ける測定条件設定手段を備えてもよい。
【0008】
前記表示手段により表示される前記時間を測定中にカウントダウンするように制御する制御手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光パルス試験器によれば、カウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、光ファイバの測定距離範囲と、ゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出し、表示するので、測定にかかる時間を予めユーザに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態の光パルス試験器の構成を示すブロック図。
【図2】表示部の表示画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による光パルス試験器の一実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の光パルス試験器の構成を示すブロック図、図2は表示部の表示画面を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の光パルス試験器1は、レーザパルスを被試験体である光ファイバ2に向けて射出するパルス発生部11と、アバランシェ・フォトダイオードにより構成され、光ファイバ2から戻るレイリー後方散乱光に含まれるフォトンを検出するフォトン検出部12と、フォトン検出部12で検出されたフォトンをカウントするフォトンカウント部13と、フォトンカウント部13におけるカウント数に基づく測定結果を表示する表示部14と、測定のダイナミックレンジの値を保存するダイナミックレンジ・パラメータ保存部15と、測定開始位置から測定終了位置までの各区間距離の値を保存する測定距離パラメータ保存部16と、フォトン検出部12に与えるゲート信号の時間幅(ゲート幅)の値を保存するゲート幅パラメータ保存部17と、測定に必要な時間を算出する測定時間演算部18と、測定条件の選択を受け付ける測定条件設定部19と、パルス発生部11、フォトン検出部12、フォトンカウント部13、表示部14、ダイナミックレンジ・パラメータ保存部15、測定距離パラメータ保存部16、ゲート幅パラメータ保存部17、測定時間演算部18および測定条件設定部19を制御する制御部20と、を備える。
【0014】
測定時には、ダイナミックレンジ・パラメータ保存部15、測定距離パラメータ保存部16およびゲート幅パラメータ保存部17からそれぞれ与えられる測定のダイナミックレンジの値、測定開始位置から測定終了位置までの各区間距離の値およびフォトン検出部12に与えるゲート信号の時間幅(ゲート幅)の値に基づき、パルス発生部11におけるレーザパルスの射出タイミング、フォトン検出部12におけるフォトンの検出タイミングが制御される。
【0015】
フォトン検出部12を構成するアバランシェ・フォトダイオードはゲート信号が印加されたときにガイガーモードで動作し、ゲート信号が印加されたときのみフォトンを検出する。ゲート信号を印加するタイミング(レーザパルス射出からの経過時間)を少しずつ変えながら、そのときに検出されたフォトンをフォトンカウント部13でカウントすることでファイバの距離とフォトンのカウント数との関係を得ることができる。ゲート信号はパルス発生部11からレーザパルスを1回照射するたびに1回ずつフォトン検出部12に印加される。
【0016】
図2に示すように、表示部14の画面上の領域14aには、フォトンカウント部13でのカウント数に従って、ファイバの距離とフォトンのカウント数との関係を示すグラフが測定結果として表示される。このグラフでは横軸に光ファイバ2の距離(測定位置)が、縦軸にフォトンのカウント数に基づくレイリー後方散乱光の強度が、それぞれ示される。横軸に示す光ファイバ2の距離は、パルス発生部11によるレーザパルス射出からフォトン検出部12におけるフォトンの検出時(ゲート信号を印加するタイミング)までの経過時間に対応している。
【0017】
測定時間演算部18は、測定に先立って、ダイナミックレンジ・パラメータ保存部15、測定距離パラメータ保存部16およびゲート幅パラメータ保存部17からそれぞれ与えられる測定のダイナミックレンジの値、測定開始位置から測定終了位置までの各区間距離の値およびフォトン検出部12に与えるゲート信号の時間幅(ゲート幅)の値に基づき測定に必要な時間を算出する。
【0018】
例えば、20km長の光ファイバの全体を測定する場合には以下の計算により測定時間が求められる。
【0019】
ファイバ端面の2次反射を抑制するためには、レーザパルスの繰り返し周期は20kmの2倍以上に相当する0.4ms以上に設定する必要がある。ゲート信号の幅を40nsとすると、20km長のファイバは10の区間に区切られる。測定のダイナミックレンジを20dB(5log10表示)とすると、1つの区間当たり10回のゲート印加回数が必要となる。したがって、測定時間は、ゲート印加回数(10)×レーザ周期(0.4ms)×区間数(10)で算出され、4×10秒となる。すなわち、測定時間は11時間を越えることになる。
【0020】
図2に示すように、測定時間演算部18における演算結果は表示部14の画面上の領域14bに表示される。この例では、測定に要する時間が11時間6分40秒である旨を表示している。長い光ファイバを充分なダイナミックレンジで測定するためには、測定に長時間を要するが、本実施形態によれば予め測定時間が表示されるため、ユーザは測定終了時刻等を知ることができる。なお、測定時間演算部18における演算に際して、測定距離のマージンや装置の制御にかかる時間等を加味してより精緻な計算を実行してもよい。
【0021】
表示部14の画面上の領域14bに表示される時間は、制御部20による制御に従って測定開始とともにカウントダウンさせることができる。それにより測定終了までの残り時間が明示されるので、ユーザは、測定時、常に測定の終了時刻を知ることができる。
【0022】
測定条件設定部19は、ダイナミックレンジ・パラメータ保存部15、測定距離パラメータ保存部16およびゲート幅パラメータ保存部17に格納される測定のダイナミックレンジの値、測定開始位置から測定終了位置までの各区間距離の値およびフォトン検出部12に与えるゲート信号の時間幅(ゲート幅)の値を設定するためのユーザの操作を受け付けるインタフェースとして機能する。測定条件を規定するこれらの値は、測定条件設定部19を介するユーザの操作に従って変更可能とされ、測定時間演算部18における演算結果に反映される。このため、ユーザは測定に要する時間を参照しながら、測定条件を選択することが可能となる。測定条件を選択後、測定を開始させれば、設定後の測定条件に従って測定が実行される。この場合にも、表示部14の画面上の領域14bに表示される時間を測定開始とともにカウントダウンさせることができる。
【0023】
測定条件設定部19は、光パルス試験器1に設けられたボタンやスイッチ類を用いて構成することができる。また、インタフェース機能を光パルス試験器1の外部のコンピュータ等に設け、有線または無線による通信機能を介して測定条件を設定可能としてもよい。
【0024】
なお、測定条件設定部19を省略し、測定条件を固定してもよい。
【0025】
以上説明したように、本発明の光パルス試験器によれば、カウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、光ファイバの測定距離範囲と、ゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出し、表示するので、測定にかかる時間を予めユーザに通知することができる。
【0026】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、光パルスを光ファイバに向けて射出するパルス発生部と、前記光パルスに基づくレイリー後方散乱光に含まれるフォトンを検出するフォトン検出部と、フォトン検出部で検出されたフォトンをカウントするフォトンカウント部とを備える光パルス試験器に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
11 パルス発生部
12 フォトン検出部
13 フォトンカウント部
14 表示部(表示手段)
18 測定時間演算部(測定時間演算手段)
19 測定条件設定部(測定条件設定手段)
20 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスを光ファイバに向けて射出するパルス発生部と、前記光パルスに基づくレイリー後方散乱光に含まれるフォトンを検出するフォトン検出部と、フォトン検出部で検出されたフォトンをカウントするフォトンカウント部とを備え、前記フォトン検出部における検出を有効とするゲート信号を前記フォトン検出部に印加するタイミングを変えながら前記フォトンカウント部でのカウントを行うことで前記光ファイバの距離とフォトンのカウント数との関係を求める光パルス試験器において、
前記カウント数に基づく測定のダイナミックレンジと、前記光ファイバの測定距離範囲と、前記ゲート信号のゲート幅とに基づいて測定に要する時間を算出する測定時間演算手段と、
前記測定時間演算手段により算出された前記時間を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする光パルス試験器。
【請求項2】
前記カウント数に基づく測定のダイナミックレンジ、前記光ファイバの測定距離範囲、または、前記ゲート信号のゲート幅の設定を受け付ける測定条件設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光パルス試験器。
【請求項3】
前記表示手段により表示される前記時間を測定中にカウントダウンするように制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光パルス試験器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−75521(P2011−75521A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230200(P2009−230200)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】