説明

光パルス試験装置および光伝送路試験方法

【課題】長距離伝送に用いるSMF用のものでありながら、MMFを用いた光伝送路の試験が簡易な構成で行えるようにする。
【解決手段】光カプラ22から光源21、コネクタ23および受光器25の間がSMF光路Fa〜Fcによって接続され、信号処理部30には、試験対象の光伝送路1の光ファイバの種類を、SMF、MMFのいずれかに指定させるファイバ種類指定手段31aと、SMFが指定されたとき、その屈折率を含む試験用のパラメータを指定させるSMFパラメータ指定手段31bと、MMFが指定されたとき、その屈折率を含む試験用のパラメータを指定させるMMFパラメータ指定手段31cとが設けられ、指定された光ファイバの屈折率を含むパラメータと戻り光Prの強度データとによって、指定された光ファイバからなる光伝送路1の距離に対する伝送特性を求めて表示部50に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスを試験対象の光ファイバからなる光伝送路に入射し、その戻り光を受光して、光伝送路の試験を行う光パルス試験装置に関し、特に、試験対象の光伝送路のファイバの種類がシングルモードファイバ(SMF)であってもマルチモードファイバ(MMF)であっても光学系を含むハードウエアを変更することなしに試験できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路を形成している光ファイバには、伝送損失が小さく長距離伝送に適したSMFと、伝送損失は比較的大きいが安価で近距離伝送に適したMMFとがある。
【0003】
光ファイバは、コア部の周囲をより屈折率の小さいクラッド部で囲む同軸構造を有し、コア部に入射された光をクラッド部との境界部分で反射(あるいは屈折)させてその長さ方向に伝搬させるものであり、SMFは、コア部を通過する際の伝搬モード(通り道)が1つとなるように細い(一般に9.2μm)コアを有しており、MMFは、伝搬モードが複数となるように太い(一般的に50μm、62.5μm)コアを有している。
【0004】
一方、光ファイバによる伝送路の試験を行うための光パルス試験装置は、図5に示すように、光源11から出射された光パルスPinを、光カプラ12を介してコネクタ13に与え、コネクタ13に接続された試験対象の光伝送路1に入射し、その光伝送路1からの戻り光(後方散乱光やフレネル反射光)Prを、コネクタ13および光カプラ12を介して受光器14に入射させ、光パルスPinの入射タイミングから受光器14で受光される戻り光Prの強度のデータを一定時間連続的に取得し、その取得データから、光伝送路1の障害発生の有無などを調べている。
【0005】
ところで、上記したように、光伝送路1を形成している光ファイバは、遠距離伝搬用にはSMFが使用され、近距離伝搬用にはMMFが用いられているが、従来の光パルス試験装置では、そのコア径の違いにより、単一の試験装置でSMFからなる光伝送路とMMFからなる光伝送路の試験を行うことができなかった。
【0006】
例えば、SMF測定用の光パルス試験装置の場合、コネクタ13の光ファイバのコアの接続部は、SMFのコア径に適したものに設計されており、このコネクタ13に、コア径が格段に太いMMFを接続した場合、光パルスの入射時には小さいコア径から大きいコア径への入射となって大きな損失は発生しないが、MMFからの戻り光には、大きいコア径から小さいコア径への入射となって無視できない損失が発生する。
【0007】
逆に、MMF測定用の光パルス試験装置の場合、コネクタ13の光ファイバのコアの接続部は、MMFのコア径に適したものに設計されているので、このコネクタ13にコア径が格段に細いSMFを接続した場合には、光パルスをSMFに入射する際に無視できない損失が発生する。
【0008】
この種の問題を解決する技術として、MMF測定用の光パルス試験装置において、出射光を低次モード励振することで、MMFからSMFへの光入射時の損失を減少させ、さらに出射光の偏光を変化させることで、光路変換素子(上記光カプラ12に相当)の偏光依存性による受光強度の揺らぎを防止するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−142230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記技術は、基本的にMMF用の光パルス試験装置にSMFの試験機能を付加したものであり、故障による被害が大きい長距離伝送用のSMFの障害試験の精度という点で十分ではなかった。
【0011】
また、試験装置内のファイバに機械的な力を連続的に与えている構造であり、構造が複雑で耐久性に問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、長距離伝送に用いるSMF用のものでありながら、MMFを用いた光伝送路の試験が簡易な構成で行える光パルス試験装置および光伝送路試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の光パルス試験装置は、
光パルスを出射する光源(21)と、
試験対象の光伝送路を接続するためのコネクタ(23)と、
受光器(25)と、
前記光源から出射された光パルスを受けて前記コネクタへ出射し、該コネクタに接続された光伝送路からの戻り光を前記コネクタを介して受け、前記受光器に入射する光カプラ(22)と、
操作部(40)と、
表示部(50)と、
前記受光器の出力を受け、前記光源から光パルスが出射されたタイミングから前記受光器に入射される戻り光の強度のデータを連続的に取得し、該データと前記操作部によって指定された試験用パラメータとに基づいて、試験対象の光伝送路の距離に対する伝送特性を求めて前記表示部に表示する信号処理部(30)とを有する光パルス試験装置において、
前記光源から前記光カプラまでの間、該光カプラから前記コネクタまでの間および前記光カプラから前記受光器までの間がそれぞれシングルモードファイバからなる光路(Fa〜Fc)によって接続され、
前記信号処理部は、
試験対象の光伝送路の光ファイバの種類を、シングルモードファイバ、マルチモードファイバのいずれかに指定させるファイバ種類指定手段(31a)と、
前記ファイバ種類指定手段によってシングルモードファイバが指定されたとき、該シングルモードファイバの屈折率を含み、該シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させるSMFパラメータ指定手段(31b)と、
前記ファイバ種類指定手段によってマルチモードファイバが指定されたとき、該マルチモードファイバの屈折率を含み、該マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させるMMFパラメータ指定手段(31c)とを含み、
前記シングルモードファイバが指定された時には、前記戻り光の強度データと前記SMFパラメータ指定手段によって指定された屈折率を含むパラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて前記表示部に表示し、前記マルチモードファイバが指定された時には、前記戻り光の強度データと前記MMFパラメータ指定手段によって指定された屈折率を含むパラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて前記表示部に表示することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2の光パルス試験装置は、請求項1記載の光パルス試験装置において、
前記信号処理部には、
前記コネクタに対する試験対象の光伝送路の接続損失を求め、該接続損失が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する接続確認手段(37)と、
前記接続確認手段が判定に用いる許容範囲を、前記ファイバ種類指定手段によって指定される光ファイバの違いに応じてシフトする許容範囲シフト手段(38)とが設けられている。
【0015】
また、本発明の請求項3の光伝送路試験方法は、
試験対象の光伝送路を接続する段階と、
該光伝送路に対応した試験用パラメータを指定する段階と、
光パルスを前記光伝送路に出射する段階と、
前記光伝送路からの戻り光を受光する段階と、
前記光パルスが出射されたタイミングから前記戻り光の強度データを連続的に取得する段階と、
該強度データと前記試験用パラメータとに基づいて、前記光伝送路の距離に対する伝送特性を求めて表示する段階とを有する光伝送路試験方法において、
前記出射する段階は、前記光パルスをシングルモードファイバからなる光路を介して前記光伝送路に出射するようになっており、
前記受光する段階は、前記戻り光をシングルモードファイバからなる光路を介して受光するようになっており、
前記指定する段階は、
前記光伝送路の光ファイバの種類を、シングルモードファイバ、マルチモードファイバのいずれかに指定する段階と、
前記光ファイバの種類にシングルモードファイバが指定されたとき、該シングルモードファイバの屈折率を含み、該シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定する段階と、
前記光ファイバの種類にマルチモードファイバが指定されたとき、該マルチモードファイバの屈折率を含み、該マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定する段階とを含み、
前記表示する段階は、
前記シングルモードファイバが指定されたときには、前記戻り光の強度データと前記指定された屈折率を含む前記シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要な前記パラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて表示し、前記マルチモードファイバが指定されたときには、前記戻り光の強度データと前記指定された屈折率を含む前記マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要な前記パラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて表示することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4の光伝送路試験方法は、請求項3記載の光伝送路試験方法において、
前記表示する段階は、
前記光伝送路の接続部における接続損失を求め、該接続損失が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する段階と、
前記判定に用いる許容範囲を、前記指定される光ファイバの違いに応じてシフトする段階とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の光パルス試験装置および光伝送路試験方法は、試験対象の光伝送路を構成するファイバとしてシングルモードファイバが指定された場合には、光源から光伝送路に至る全光路にわたってシングルモードで光を伝搬させるので、長い距離の伝送路の障害検出を正確に行うことができ、しかも、試験対象の光伝送路を構成するファイバとしてマルチモードファイバが指定された場合であっても、そのマルチモードファイバの屈折率を含む試験に必要なパラメータを専用に設定できるので、マルチモードファイバからなる光伝送路の試験もハードウエアを何ら切り替えることなく行うことができる。
【0018】
また、光伝送路の接続部における接続異常を調べている場合でも、指定されるファイバの種類に応じて、接続確認の判定基準となる許容範囲をシフトさせているから、コア径の違いによる損失があっても光伝送路の接続異常を正しく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の全体構成図
【図2】実施形態のデータ取得の方法を説明するための図
【図3】実施形態の測定結果の表示波形の一例を示す図
【図4】コネクタ部分の損失を示す図
【図5】光パルス試験装置の基本構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した光パルス試験装置20の全体構成図である。
【0021】
図1に示しているように、光パルス試験装置波20は、試験用の所定波長(例えば1550μm)、所定パルス幅の光パルスPinを、例えば半導体レーザからなる光源21から所定周期で出射する。なお、光源21が光パルスPinを出射するタイミング、周期、パルス幅は、後述する信号処理部30によって設定されるものとする。
【0022】
この光パルスPinは、シングルモードファイバ(SMF)からなるSMF光路Faを介して光カプラ22に入射される。
【0023】
光カプラ22は、光源21から出射された光パルスPinを受けて、SMF光路Fbを介してコネクタ23へ出射し、そのコネクタ23に接続された試験対象の光伝送路1へ光パルスPinを入射させ、その光パルスPinに対する光伝送路1からの戻り光Pr(フレネル反射光および後方散乱光)を、コネクタ23およびSMF光路Fbを介して受け、光パルスPinが入射される方向と異なる方向に出射し、SMF光路Fcを介して受光器25に入射する。
【0024】
受光器25の出力信号は、増幅器26によって増幅されてA/D変換器27に入力され、所定のサンプリング周期でサンプリングされ、デジタルのデータ値Dに変換され、信号処理部30に入力される。
【0025】
信号処理部30は、光源21から光パルスPが出射されたタイミングから、受光器25に入射される戻り光Prの強度のデータDを一定時間連続的に取得して図示しないメモリに記憶し、その記憶した一連のデータDと、操作部40によって予め指定された試験用パラメータとに基づいて、試験対象の光伝送路1の距離に対する伝送特性を求め、その特性を表示部50に表示する。
【0026】
ここで、信号処理部30は、試験条件設定手段31、データ取得手段32、波形合成手段33、時間・距離換算手段34、特性表示手段35、イベント検出手段36、接続確認手段37、許容範囲シフト手段38を有している。
【0027】
試験条件設定手段31は、試験に必要な情報(測定対象のファイバ種や得座に必要なパラメータ)を操作部40の操作によりユーザーに設定させるためのものであり、ファイバ種類指定手段31a、SMFパラメータ指定手段31b、MMFパラメータ指定手段31cを有している。
【0028】
ファイバ種類指定手段31aは、試験対象の光伝送路1の光ファイバの種類をシングルモードファイバ(SMF)、マルチモードファイバ(MMF)のいずれかに指定させる。
【0029】
SMFパラメータ指定手段31bは、ファイバ種類指定手段31aによりSMFが指定されたとき、そのSMFの屈折率を含み、SMFを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させる。MMFパラメータ指定手段31cも同様に、ファイバ種類指定手段31aによりMMFが指定されたとき、そのMMFの屈折率を含み、MMFを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させる。
【0030】
これらのパラメータとしては、ファイバの屈折率、単位距離当たりのファイバ損失の規格値、伝送路の障害等の有無を判別するための損失のしきい値(イベントロス)、コネクタ23部分の接続異常の有無を判別するための損失の許容範囲およびSMFとMMFのコア径の違いより発生する損失分ΔLなどである。
【0031】
データ取得手段32は、光パルスPinを出射したタイミングから一定時間が経過するまでの間、A/D変換器27でサンプリングされたデータDを図示しないメモリに記憶させるが、このデータ取得は、増幅器26の利得を段階的に可変しながら光パルスを複数回出力して行う。
【0032】
即ち、測定対象の光伝送路1の近端からの強い戻り光と遠端からの弱い戻り光の強度の比が大きい(例えば10000倍以上)のに対し、例えば10ビットのA/D変換器27の出力ダイナミックレンジは1000倍程度であり、単一レンジでは対応できない。
【0033】
このため、例えば近傍域からの強い戻り光のデータを正しく得る場合には、A/D変換器27の入力側の利得を低くした状態(例えば3dB)で、光パルス入射時から一定時間経過するまでA/D変換器27の出力を連続的に取得する。図2の(a)はこの近傍領域のデータDaがA/D変換器27の入力レンジにあって、且つノイズに埋もれていない状態を示している。
【0034】
また、中間域の戻り光のデータを正しく得る場合には、A/D変換器27の入力側の利得をやや高くした状態(例えば13dB)で、光パルス入射時から一定が経過するまでA/D変換器27の出力を取得する。図2の(b)はこの中間域のデータDbがA/D変換器27の入力レンジにあって、且つノイズに埋もれていない状態を示している。
【0035】
また、遠端域からの弱い戻り光のデータを正しく得る場合には、A/D変換器27の入力側の利得をさらに高くした状態(例えば23dB)で、光パルス入射時から一定が経過するまでA/D変換器27の出力を取得する。図2の(c)はこの遠端域のデータDcがA/D変換器27の入力レンジにあって、且つノイズに埋もれていない状態を示している。
【0036】
なお、この例では、理解しやすいように3段階としたが、より多くの段階で利得を可変させてもよい。また、実際にはデータ平均化のために利得毎に複数回のデータ取得を行う。
【0037】
このようにして利得毎の各波形データが得られた後、波形合成手段33は、それらの波形データから飽和あるいはノイズに埋もれて不正確となっているデータを除いた正しいデータを抽出して、それぞれの利得分を補正(レベル軸のログ変換も行う)して時間軸上に組合せて近端から遠端までの波形を合成する。
【0038】
この合成された波形は、時間軸上で定義されたものであり、伝送特性としては障害発生位置を特定するために時間軸から距離軸への変換が必要となる。
【0039】
即ち、特性表示に必要な距離は、光速をc(m/秒)、光パルス出射時からの時間をt(秒)、光伝送路1(光ファイバ)の屈折率をIORとすると、c×t/(2×IOR)で表される。
【0040】
時間・距離換算手段34は、この換算式に、前記したSMFパラメータ指定手段31bあるいはMMFパラメータ指定手段31cによって指定された屈折率を与えることで、いずれのファイバを用いた光伝送路に対しても、その特性波形の正しい距離軸を求める。
【0041】
特性表示手段35は、上記合成波形と換算された距離情報とに基づいて、試験対象の伝送路1の特性を、表示部50の画面上に例えば図3のように表示する。
【0042】
また、イベント検出手段36は、上記のようにして得られた特性波形のデータから、予め指定されたイベントロスを超える損失が発生している位置(前後のデータの差分がしきい値を超えている位置)を検出し、これらの位置を例えば特性波形上に識別表示し、その損失をイベント位置に対応付けして一覧表示する(なお損失以外にフレネル反射によって戻り光強度が増加している位置もイベントとして検出する場合もある)。
【0043】
また、接続確認手段37は、コネクタ23に試験対象の伝送路1が正しく接続されているか否かを調べるものであり、図4のように、特性波形の入力端における損失Linを調べ、その損失Linが予め指定された許容範囲にあるか否かを判定し、許容範囲に無いときには例えばアラーム情報を表示部50に表示して、ユーザにこれを知らせる。
【0044】
ここで、接続確認手段37が判定に用いる許容範囲は、前記した試験条件設定手段31において指定されたパラメータに含まれており、試験対象としてSMFからなる伝送路が指定された場合、光源21からコネクタ23に至る光路はSMFで形成されているので、コネクタ接続状態に異常がなければ、接続部分で発生する損失は小さく、上記許容範囲も比較的少ない値を中心に設定することができる。逆に、試験対象としてMMFからなる伝送路が指定された場合、光源21からコネクタ23に至る光路はSMFで形成されているので、コネクタ接続状態に異常がなくても、コア径の違いにより接続部分で無視できない損失が発生する。
【0045】
許容範囲シフト手段38は、このファイバの違いによる損失に対応できるように、MMFが指定されたときに接続確認手段37が用いる許容範囲を、SMFとMMFのコア系の違いによって発生する損失値ΔL分だけ低い方にシフトさせる。なお、この損失値ΔLは、平均的なSMFとMMFのコア系の違いによって発生する損失値が初期設定されていて、ユーザが変更設定できるようになっている。
【0046】
このように構成されているから、実施形態の光パルス試験装置20は、試験対象の光伝送路1がSMFからなる場合には、シングルモードによる光を伝搬させることで、長い距離の伝送路の障害検出を正確に行うことができ、しかも、試験対象の光伝送路1がMMFからなる場合であっても、そのMMFの屈折率を含む試験用のパラメータを専用に設定できるので、そのMMFからなる光伝送路の試験も、光学系を含むハードウエアを何ら変更することなく行うことができる。
【0047】
また、接続確認手段37によってコネクタ23に対する接続異常を調べている場合でも、指定されるファイバの種類に応じて、接続確認の判定基準となる許容範囲をシフトさせているから、コア径の違いによる損失があってもコネクタに対する接続異常を正しく判定することができる。
【0048】
なお、上記光パルス試験装置20によって行われる光伝送路試験方法は、上記説明から明らかなように、試験対象の光伝送路1をコネクタ23に接続する段階と、その光伝送路1に対応した試験用パラメータを試験条件設定手段31により指定する段階と、光パルスPinを光伝送路1に出射する段階と、光伝送路1からの戻り光Prを受光する段階と、光パルスPinが出射されたタイミングから戻り光Prの強度データDを連続的に取得する段階と、取得した強度データと試験用パラメータとに基づいて、光伝送路1の距離に対する伝送特性を求めて表示する段階とを有し、光パルスPinをシングルモードファイバからなる光路(Fa、Fb)を介して光伝送路1に出射し、戻り光Prをシングルモードファイバからなる光路(Fb、Fc)を介して受光するようになっており、基本的にはシングルモードファイバからなる光伝送路の試験に適したものとなっている。
【0049】
ただし、パラメータを指定する段階として、ファイバ種類指定手段31aにより、光伝送路1の光ファイバの種類を、シングルモードファイバ、マルチモードファイバのいずれかに指定させ、光ファイバの種類にシングルモードファイバが指定されたとき、SMFパラメータ指定手段31bにより、そのシングルモードファイバの屈折率を含み、そのシングルモードファイバを用いた光伝送路1の試験に必要なパラメータを指定させ、光ファイバの種類にマルチモードファイバが指定されたとき、MMFパラメータ指定手段31cにより、そのマルチモードファイバの屈折率を含み、そのマルチモードファイバを用いた光伝送路1の試験に必要なパラメータを指定させる。
【0050】
そして、光伝送路の特性を求めて表示する段階では、シングルモードファイバが指定されたときには、戻り光の強度データと指定された屈折率を含むシングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータとによって、距離に対する光伝送路1の伝送特性を求めて表示し、マルチモードファイバが指定されたときには、戻り光の強度データと指定された屈折率を含むマルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータとによって、距離に対する光伝送路1の伝送特性を求めて表示している。
【0051】
したがって、前記したように、試験対象の光伝送路1がSMFからなる場合には、シングルモードによる光を伝搬させることで、長い距離の伝送路の障害検出を正確に行うことができ、しかも、試験対象の光伝送路1がMMFからなる場合であっても、そのMMFの屈折率を含む試験用のパラメータを専用に設定できるので、そのMMFからなる光伝送路の試験も、光学系を含むハードウエアを何ら変更することなく行うことができる。
【0052】
また、伝送特性を表示する際に、接続確認手段37により、光伝送路1の接続部における接続損失を求め、接続損失が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する段階を含むものにおいては、許容範囲シフト指定手段38により、その判定に用いる許容範囲を、指定される光ファイバの違いに応じてシフトしているので、コア径の違いによる損失があっても光伝送路の接続部での接続異常を正しく判定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1……試験対象の光伝送路、20……光パルス試験装置、21……光源、22……光カプラ、23……コネクタ、25……受光器、26……増幅器、27……A/D変換器、30……信号処理部、31……試験条件設定手段、31a……ファイバ種類指定手段、31b……SMFパラメータ指定手段、31c……MMFパラメータ指定手段、32……データ取得手段、33……波形合成手段、34……時間・距離換算手段、35……特性表示手段、36……イベント検出手段、37……接続確認手段、38……許容範囲シフト手段、40……操作部、50……表示部、Fa〜Fc……SMF光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスを出射する光源(21)と、
試験対象の光伝送路を接続するためのコネクタ(23)と、
受光器(25)と、
前記光源から出射された光パルスを受けて前記コネクタへ出射し、該コネクタに接続された光伝送路からの戻り光を前記コネクタを介して受け、前記受光器に入射する光カプラ(22)と、
操作部(40)と、
表示部(50)と、
前記受光器の出力を受け、前記光源から光パルスが出射されたタイミングから前記受光器に入射される戻り光の強度のデータを連続的に取得し、該データと前記操作部によって指定された試験用パラメータとに基づいて、試験対象の光伝送路の距離に対する伝送特性を求めて前記表示部に表示する信号処理部(30)とを有する光パルス試験装置において、
前記光源から前記光カプラまでの間、該光カプラから前記コネクタまでの間および前記光カプラから前記受光器までの間がそれぞれシングルモードファイバからなる光路(Fa〜Fc)によって接続され、
前記信号処理部は、
試験対象の光伝送路の光ファイバの種類を、シングルモードファイバ、マルチモードファイバのいずれかに指定させるファイバ種類指定手段(31a)と、
前記ファイバ種類指定手段によってシングルモードファイバが指定されたとき、該シングルモードファイバの屈折率を含み、該シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させるSMFパラメータ指定手段(31b)と、
前記ファイバ種類指定手段によってマルチモードファイバが指定されたとき、該マルチモードファイバの屈折率を含み、該マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定させるMMFパラメータ指定手段(31c)とを含み、
前記シングルモードファイバが指定された時には、前記戻り光の強度データと前記SMFパラメータ指定手段によって指定された屈折率を含むパラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて前記表示部に表示し、前記マルチモードファイバが指定された時には、前記戻り光の強度データと前記MMFパラメータ指定手段によって指定された屈折率を含むパラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて前記表示部に表示することを特徴とする光パルス試験装置。
【請求項2】
前記信号処理部には、
前記コネクタに対する試験対象の光伝送路の接続損失を求め、該接続損失が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する接続確認手段(37)と、
前記接続確認手段が判定に用いる許容範囲を、前記ファイバ種類指定手段によって指定される光ファイバの違いに応じてシフトする許容範囲シフト手段(38)とが設けられていることを特徴とする請求項1記載の光パルス試験装置。
【請求項3】
試験対象の光伝送路を接続する段階と、
該光伝送路に対応した試験用パラメータを指定する段階と、
光パルスを前記光伝送路に出射する段階と、
前記光伝送路からの戻り光を受光する段階と、
前記光パルスが出射されたタイミングから前記戻り光の強度データを連続的に取得する段階と、
該強度データと前記試験用パラメータとに基づいて、前記光伝送路の距離に対する伝送特性を求めて表示する段階とを有する光伝送路試験方法において、
前記出射する段階は、前記光パルスをシングルモードファイバからなる光路を介して前記光伝送路に出射するようになっており、
前記受光する段階は、前記戻り光をシングルモードファイバからなる光路を介して受光するようになっており、
前記指定する段階は、
前記光伝送路の光ファイバの種類を、シングルモードファイバ、マルチモードファイバのいずれかに指定する段階と、
前記光ファイバの種類にシングルモードファイバが指定されたとき、該シングルモードファイバの屈折率を含み、該シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定する段階と、
前記光ファイバの種類にマルチモードファイバが指定されたとき、該マルチモードファイバの屈折率を含み、該マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要なパラメータを指定する段階とを含み、
前記表示する段階は、
前記シングルモードファイバが指定されたときには、前記戻り光の強度データと前記指定された屈折率を含む前記シングルモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要な前記パラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて表示し、前記マルチモードファイバが指定されたときには、前記戻り光の強度データと前記指定された屈折率を含む前記マルチモードファイバを用いた光伝送路の試験に必要な前記パラメータとによって、距離に対する前記光伝送路の伝送特性を求めて表示することを特徴とする光伝送路試験方法。
【請求項4】
前記表示する段階は、
前記光伝送路の接続部における接続損失を求め、該接続損失が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する段階と、
前記判定に用いる許容範囲を、前記指定される光ファイバの違いに応じてシフトする段階とを含むことを特徴とする請求項3記載の光伝送路試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42231(P2012−42231A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181282(P2010−181282)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】